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革酎

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シナリオID:2111

オープニング

●謎の地下室
 闇夜の中で、オレンジ色に輝く炎の群れが躍っている。
 リーンエス王国メルゲンガー伯爵領都アジェルマハーの倉庫街で、使われなくなって久しい木造の古倉庫が一棟、盛大に燃えた。
 隣接する倉庫の借主達は延焼を恐れ、我先にと荷を運び出してゆく。その一方でメルゲンガー伯爵の私兵団が消火の為にと人員を派遣し、近隣の川から手桶や木製バケツ等を駆使して水を汲み出して、懸命なる消火活動に当たった。
 夜が明ける頃にはおおよそ鎮火し、周辺の現役倉庫は外壁が多少焦げる程度の被害で済んだ。
 鎮火後、私兵団の班長は火災の原因となる火元の特定を急ぐ為に、数名の兵に消火後調査へと当たらせた。
 原因は恐らく、浮浪者が食事の為に火を起こすか何かをしたのだろう。そしてここ何週間かは晴天が続き、空気も随分と乾燥していた。ちょっとした火元でも木造の古倉庫を一棟焼くぐらいのことは、別段不思議でも無かった。
 ところが消火後調査を進めてゆくうちに、奇妙な事実が分かった。
 焼けた古倉庫に、地下室へと続くものと思われる金属製の床扉が隠されていたのである。古倉庫の持ち主は、その様な床扉の存在など見たことも聞いたことも無いと首を傾げるばかり。
 実際、この金属製床扉は古倉庫の床板の下に隠されてあったらしい。
 しかし、このまま放っておく訳にもいかない。或いは、この床扉が今回の火災に何か関係しているのかも知れない。
 私兵団の班長は部下に命じて床扉を開けさせ、一次調査の為に三名の兵士を問題の地下へと派遣することにした。
「最近、誰かが通った跡があるな」
 兵士のひとりが、小首を傾げた。
 上に建っていた倉庫は古く、この地下への石段も相当に歴史を感じさせるのだが、土埃の中で比較的新しい足跡が往復している。
 この形跡だけを見ると、つい数日前に誰かが通っている様にも思える。
「所有者以外の誰かが頻繁に往復していたということか? それはそれで、けしからん話だ。ならば尚のこと、しっかり調査しないとな」
 私兵団の班長が放った台詞は、誰の耳にも実に尤もな意見であると聞こえた。
 ところが、この判断が思わぬ事態を招いた。
 件の階段を下りていった兵士達のうち、ふたりが物凄い形相で悲鳴とも奇声ともつかぬ恐ろしげな叫び声を上げながら、地上へ逃げ帰ってきたのである。
 このふたりの兵士達は完全に正気を失っており、まともに話せる状態ではなくなっていた。
 そして、残るひとりの兵士は未だ、帰ってこない。
 一体、この古びた床扉の下で何が起きたというのだろうか。

●嫌な予感
 アジェルマハーの冒険者ギルド支部のロビーで、授恵者アーギス・マーレイは受付嬢ティマニ・エレザンから事の次第について説明を受け、何ともいえぬ渋い表情を浮かべていた。
 依頼主はマグラウリー・メルゲンガー伯爵。依頼内容は、三人の兵士のうち、ふたりが正気を失って逃げ帰ってきた謎の地下室の調査。そして可能であれば、未だ帰ってこない兵士一名の捜索と安否確認。
 話を聞いている分には然程難しくもなさそうな依頼だが、アーギスの冒険者としての経験が、この依頼は何かおかしいと警鐘を鳴らしている。
「あ、勿論おひとりで、だなんていいませんよ。他にも何人か依頼を受けて下さる冒険者さんを募集中です」
「本当に大丈夫かぁ? 何だかすんげぇ嫌な予感しかしねぇんだけど」
 アーギスは露骨に顔をしかめた。
 大体この手の依頼では、ろくな目に遭った試しが無いというのがアーギス個人の経験であった。
 しかしメルゲンガー伯爵はアーギスの技量と奇妙な程の運の良さを買っているらしく、是非にと依頼受諾を呼びかけてきたとの由。
「まぁ別に暇だから良いけどよぉ……ホント、頼むぜ。腕の良いのを見繕ってくれよぉ」
「はい、それは勿論」
 にこやかに頷き返したティマニだが、そういう安請け合いが一番怖いんだよ、とアーギスは悪態をついた。

●やあ、こん、こんに、こんにちはははうへへへはははは
 うれしいなあきききてきてきてくれきてくれたんだあ
 ずっとまってたよふふうふふふうふへあははははっはははははひひひひいいひひひ
 こここれこれこここここれからねいっしょにねえへへへへへいっしょいっしょいいいいいっいっしょにね
 あのねあのあの
 うれしいなああああああうれしいうれうれうれひひひひひひひひひひひぃっひひひひひひぃひひひひ
 かっかかかかかわいいいいいいかわいいいいなあああああ

解説

状況:  PCの皆様はアジェルマハー冒険者ギルド支部での依頼を受け、アーギス・マーレイと共に問題の地下へと潜ろうとしているところからスタートして頂きます。  事態は意外と、面倒です。三人の兵士のうち、正気を失ったふたりしか帰ってこなかった為、地下に何があるのかは全くの未知数です。何が起きているのか皆目分かりません。  戦闘が発生するかも知れないし、或いはもっと恐ろしい何かが待ち受けているのかも知れません。  明確な敵が居れば討伐することも視野に入れて下さい。  また可能であれば、未帰還の兵士の捜索と救助も、依頼内容に含まれています。但し、既に死亡していた等の理由で救助不可だった場合は、その限りではありません。 敵:  現段階では明確な敵性存在は確認されていない為、どこでどんな敵と遭遇するかは全く分かりません。  逃げ帰ってきたふたりは精神が崩壊しており、何の情報も得られていない状況です。 NPC:  ヒューマンの重戦士アーギス・マーレイ、冒険者ギルド受付嬢ティマニ・エレザンが主な登場NPCです。

マスターより

 皆様、こんにちは。  恐怖に満ちた謎の地下室を探れ的なショートシナリオRをご提供致します。  OP本文を見て頂ければ分かる通り、色々心理的にヤバそうな依頼です。  何が待ち受けているのかは、皆様ご自身でご確認下さい。

リプレイ

●謎の地下室へ
 地下へと延びる石段は、陽の光が届く範囲はこれといって何の変哲も無い、ただの無機質な段の連なりにしか見えなかった。
 しかし、何かがおかしい――黒衣の戦士だわは、地底の奥底から這い出る様な冷たく不気味な空気の流れに、幾らかの違和感を抱いた。
「地下で死体を見た……と、その様に仰っていましたね」
 だわの傍らで、ウスターシュ・ド・バティーニュが端正な面に若干の不安を滲ませた。
 この少し前、冒険者達はマグラウリー・メルゲンガー伯爵配下の兵士達と顔を合わせ、気が触れてしまったふたりの帰還兵への処置を試みていた。
 最初にだわとキリクのふたりで軽く頬を叩いたり、水を浴びせる等で正気に戻らないか試してみたが、まるで効果が無かった。
 そこでルイドが精神感応を妨げる術を仕掛けたところ、少しばかり時間が経過した後、ふたりの帰還兵は興奮状態ではあったものの、辛うじて正気を取り戻すことが出来た。
「何があったんだ?」
 片目が賢者の石という異様な風貌のルイドに迫られたふたりの帰還兵は、ややおっかなびっくりの様子で地下に黒焦げの遺体があったとを告げた。
 明確な記憶が残っていたのはそこまでで、その直後、帰還兵達は甲高い女の悲鳴の様な声を耳にした瞬間、恐ろしい状況に陥った。
 ひとりは全身の皮膚の裏側に、無数の黒い甲虫が蠢くという現象。それらが、肉体の表面の至る所を食い破って皮膚の外へ這い出してきた。
 もうひとりは、全身が酸でも浴びた様にただれ、溶解し、肉という肉が削げ落ちるという現象。激痛と恐怖で完全に正気を失った。
 ふたりはルイドに施術されるまで、これらの状況に襲われ続けていた。
 明らかに、何らかの精神攻撃であった。
「三人が入って、ふたりしか帰ってこなかったんだろ? 地下室に何かが居て、残りのひとりはそいつに捕まるなり殺されるなりしたって、どうしても考えちゃうな」
 当初キリクはその様に考えていたが、正気に戻った帰還兵達の証言から、少し意見を変えた。何かが居るのは間違い無いのだろうが、殺すのではなく、精神を破壊することを目的としている――少なくとも、今はその様に解釈するのが自然だろう。
「下手をしたら、俺達も相当に酷いものを見させられるかもね」
 最後尾を行くジュスト・ヴェルジーは、表情を引き締めた。先頭を切って石段を下り始めただわと、その後に続くウスターシュの背中から、ふと後方に視線を転じた。逃げ帰ってきたふたりの帰還兵は自力で地下を脱出してきた。ということは、退路確保には何の問題も無い筈なのだが、地下に潜む何者かが、こちらが授恵者であることを察知すれば、戦法を変えるかも知れない。
「残留思念感応……用意してくりゃ良かったな」
 ジュストの隣りで、サイラスが頭を掻きながらぼやいた。帰還兵の着衣や石段そのものから何らかの思念を読み取ることが出来ればとも考えたサイラスだが、今回はサイラスを含め誰ひとりとして、残留思念を読む解く為の技術を用意していなかった。
 仕方が無いので、閃光塗弾をいつでも投擲出来る準備だけは整えることにした。
「アーギス様は、何が居るとお考えですか?」
 ウスターシュに続いて石段を下り始めたフリーダ=ブロムヴィストが、肩を並べている重戦士アーギス・マーレイに淡々とした表情で問いかけた。毒ガス系の罠を考慮し、バンダナで口元を覆っている為、声がややくぐもっている。
 そんなフリーダに、アーギスはさぁねぇと呑気に肩を竦めるばかりだ。余り緊張感が見られないのは、いつものことである。

●天井の女
 俺がどうにかなったら、殴って貰って構わない――だわは、僅かに距離を置いて後に続くウスターシュにそんな台詞を残して地下へと到達し、石段の奥に広がる空間へと足を踏み込んだ。
 直前にフリーダが閃光塗弾を投げ込もうとしたが、こちらの存在を敵に態々知らせて逆に警戒させてしまっては、イニシアチブが失われてしまうということで、取りやめとなった。何人かの冒険者は暗闇でも見通せる用意をしている為、光源は絶対的に必要、という訳でも無かったのである。
 ともあれ、だわは警戒に警戒を重ねて地下室内へと足先を忍ばせた。
 中から、音がする。どうやら、ひとの声の様だ。
「うひひひひひひひきてきてててきたきたよかかかかわいいいいいかわいいいいいいいいい」
 気配はひとつ。声の主は、未帰還兵か。
 だわは闇の中を凝視した。矢張り間違い無い、装備や年恰好から見て、声の主は未帰還兵だ。明らかに、精神に異常をきたしている。
 漆黒の世界で精神異常に陥った男がひとり、手にした何かを無心に貪り食っている。だわは、戦慄した。
 未帰還兵の前に黒焦げの性別不明遺体が、横たわっている。未帰還兵は、その遺体からもぎ取ったらしい何かを愛しそうに頬ずりしていた。
 罠らしい罠は無い。敵と思しき気配も、今のところは見当たらない。異様なのはただ、黒焦げ遺体の一部をうっとりと恍惚の表情で愛撫する気の触れた未帰還兵だ。
 それからややあってウスターシュとフリーダ、アーギス、ルイドと続いた。遺体と未帰還兵以外は何も見当たらないというだわの報告を受けて、フリーダとルイドがランタンの遮蔽窓を開き、灯を解放した。
「清々しい程に、何も無いな」
 ルイドがやや呆れ気味に呟いた。何か異音が響いていないかと耳を澄ませてみたものの、未帰還兵が遺体の脛を齧る音以外は、これといって気になる物音は何ひとつ聞こえてこない。
 ウスターシュとフリーダ、アーギスで未帰還兵に呼びかけても、反応は無い。意味不明な言葉の羅列を並べ、一心に遺体の一部を愛撫し続けている。
 試しにルイドがふたりの帰還兵に対処した場合と同じく、目の前の男にも精神感応を妨げる術を施してみた。が、効果らしい効果は見られない。男には何の変化も生じなかった。
 少し間を置いてキリクとジュスト、サイラスの三人も地下室内に足を踏み入れてきた。
「壁や床にも特におかしな点は無いなぁ」
 左右をぐるりと見廻すサイラス。使えそうな素材も無く、若干残念そうな面持ちだ。人間の焼死体など、何の役にも立たない。
「犯罪者や訳あり者の隠れ家か遊び場。非合法の薬品を隠す為の倉庫。非人道的な魔術や技術の実験場……いずれかに該当する場所かとも思ったけど」
 ジュストは、散乱している遺物や魔法陣の痕跡でもあれば推測は可能だと考えていた。そして、その目算は的中した。
 床一面に、絵図らしきものを描いた跡が見られたのである。何かの儀式の痕跡らしい。
 その隣でキリクが、精神異常をきたしている未帰還兵に歩を寄せながら、ふと天井を見上げた。彼の捜索感覚に、何かが引っかかったのである。
 そこに、黒い影が張り付いていた。人間の女性の様だ。血に濡れた長い黒髪が垂れ下がっている。だが何より異様だったのは、その女の首が180度反対を向いていることだった。
 女の眼孔は空洞だった。眼球が無かった。ただ、滴り落ちる血が涙の様に頬を伝い落ちていた。
 敵だと認識し、弓を構えたその瞬間、キリクの視界が靄に包まれたかの様に茫漠と霞んだ。それでも何かが居ると周囲に警鐘の声を放ったのは、いざ敵が出現した際には真っ先に知らせるという意識を最初から持っていたからに他ならない。

●幻覚地獄
 未帰還兵に暴れられては困るということで、ジュストは気の触れた憐れな男をそっと眠らせた。
 その直後にキリクが呻く様な声を漏らし、その場にうずくまった。凄まじい形相で脂汗を流している。必死に何かに耐えているといった様子だった。
 ウスターシュは得物を抜き払い、天井の女に刃を向けた。
 フリーダが居るにも関わらず、男ばかりでむさくるしいなどと内心でぼやいていたウスターシュだったが、まさかこの様な形で、それも相当に不気味な姿の異性と遭遇することになろうとは、流石に想定外だった。
 天井の女は金切り声の様な叫びを地下室内に響かせた。
 と同時に、ウスターシュの肉体に異変が生じた。腹部に違和感が走る。自身の臓物内で何かが蠢ているという感覚だった。
(これはまさか……幻覚……!)
 事前にふたりの帰還兵から話を聞いていなければ、即座に気が触れてしまったかも知れない。ウスターシュは辛うじて正気を保っていたが、それでも自身の腹を突き破って、肉体の内側から巨大な羽虫の群れが飛び出してくるという光景を目にした時には、背筋の毛が逆立つ様な悪寒に襲われた。
 その傍らで、フリーダは虚空から現れた無数の刃によって、一瞬で自身の肉体を串刺しにされた。激痛が全身に走る。幻覚だと分かっている筈なのに、この耐え難い痛みは脳天を突き抜ける様な刺激に満ちていた。
(発狂ゲージが溜まると面倒なことになるという啓示は、本当でしたか……!)
 確かに何の訓練も受けていない素人が突然この様な幻覚を見せられれば、いきなり精神が崩壊してもおかしくはないだろう。
 フリーダはしかし、歯を食いしばって跳躍した。鞘から抜き放った大剣にエーテルを纏わせ、その切っ先を真っ直ぐ天井の女へと突き込んでゆく。
 天井の女は驚く程の速さで回避した。天井に張り付いたまま、黒い害虫の様な素早い身のこなしを発揮し、フリーダの剣戟を躱したのである。
 しかし、後が続かない。ウスターシュとキリクは何とか幻覚の罠から脱しようと精神を集中させており、すぐには動けそうになかった。
 だわも、同様だった。
「守らなければ……守らなければ……」
 矢張り彼も精神攻撃による幻覚世界の中に、引きずり込まれていた。かつて故郷を滅ぼした魔物に隊を潰された時の様な重圧が、だわの精神を押し潰そうとしている。
「幻覚だと分かってても、これだけのプレッシャーかよ。一般人なら確かに、頭が狂っちまうな」
 アーギスですら、その場にうずくまったまま動けない。辛うじてその視線は敵を捉えているものの、満足に動ける状態ではなさそうだ。
「こ、こいつは中々、厳しいな」
 サイラスががっくりと膝を付いて、両手で自身の頭を押さえている。彼が見ている幻覚は、己の脳が何者かに引きずり出され、汚らしい咀嚼音を響かせながらゆっくり食われるという場面だった。
 更に頸椎、脊椎と引き抜かれ、がりがりと嫌らしい音を立てて喰われ続けた。
(骨引っ張りだすなら、せめて素材にでも使ってくれよな……)
 そんなことを考えながら、サイラスは必死に視界を凝らした。天井の女は再び、此方の間合いの中に戻ってきている。仲間の攻撃ならば、十分に手の届く距離だ。
 誰かが仕掛ければ、何とかなるのでは――サイラスが左右に視線を走らせた時、ジュストの怒りを含んだ詠唱が聞こえてきた。
「呼び掛けに応え、至れ。至りて流れよ、地の果てと。海の果てまで流れ、我らの敵を貫き運べ」
 直後、魔力の奔流が渦を巻いて、天井の女を冷たい石床上に叩き落とした。
 同時に、ルイドが自身を襲う幻覚に耐えながらも、目に見えぬ波動を放射状に射出した。すると、冒険者達を襲っていた幻覚の嵐が、次第に薄れていった。
「何者かは知らないけど、よくも俺の婚約者を侮辱したな」
 ひとり怒りに燃えるジュスト。
 天井の女は、どうやらジュストに対しては彼の最愛の女性を幻覚の中に投影し、無残な目に遭わせるという愚を働いたらしい。この幻覚はジュストの中に恐怖や絶望ではなく、怒りを招き寄せてしまった。

●死者に打ち勝つ精神
 異形の女にだわ、ウスターシュ、フリーダ、アーギスの四人が殺到した。繰り出される波状攻撃を素早く躱した敵だが、その回避軌道上にキリクの鏃が待ち受けていた。
 しかしどうにも、手応えが薄い。繰り出される刃、撃ち込まれる鏃は悉く異形の女の体をすり抜けてしまっている様にも見えた。
 敵はどうやらアンデッド、それも幽霊タイプの怪物らしい。
 武器にエーテルを纏わせれば、或いはエーテルそのものをぶつければ有効打になるのだろうが、それだけではどうにも決定力に欠けた。
 ならばとジュストが魔力の弾丸を叩き込み、更にルイドが光弾の群れを殺到させた。
 異形の女は堪らず、その場に叩き伏せられた。魔法攻撃は何の問題も無く通用するらしい。
「魔法攻撃なら、おれも用意してきたぜぃ」
 サイラスが続けて恐ろしげな魔物を模した魔力弾を召喚し、その破壊の奔流で敵を押し包んだ。異形の女は表情こそ変えないものの、動きが目立って悪くなってきている。
 もうあと、ひと押しだ。
 ここまで押し込めば、後は前衛組の刃に纏わせたエーテルでも十分にとどめを刺すことが出来るだろう。
 まずフリーダが、次いでウスターシュが気合の入った剣戟を宙空に走らせ、最後にだわが渾身の刃を突き入れる。
 とどめを刺したのは、キリクの放った光り輝く矢の一撃だった。
 異形の女は、冒険者達に幻覚を見せた時と同じ様な響きの甲高い声を轟かせ、そして消滅した。
「……やったか?」
 だわは珍しく、肩を一度だけ大きく上下させて呼吸を整えた。肉体的な苦痛や疲労などではなく、精神に受けた打撃を何とか回復させようとしているらしい。
 ジュストは未だに怒りが収まらぬ様子だったが、しかし冷静さは残されている。彼は焼け焦げた遺体を動かして、その下に窪みを発見した。
 中には人間のものと思しき頭蓋骨が押し込まれていた。
 冒険者達を襲った異形の女を生み出したのは、この頭蓋骨に施された死霊術なのかも知れない。
「まだ、比較的新しいみたいですが」
 ウスターシュが額の汗を拭いながら、傍らから覗き込んできた。焼死体にしても、まだ然程に古くはない。比較的つい最近まで、この地下で死霊術が行われていたと考えて良いだろう。
 一体誰が何の目的で、とは誰も考えない。死霊術師ならば、様々なアンデッドを造り出そうとすることは決して不思議な話でもなかった。
 蠢く屍の乱造や吸血鬼の誕生だけが、死霊術の目的ではないのである。
「兎に角、この帰還兵を連れて帰らないとな」
 ジュストが眠らせていた帰還兵を、ルイドが担架に乗せていた。
 この帰還兵は一体、どこまで覚えているのだろうか。精神異常をきたすまでの記憶であれば良いのだが、自身が焼死体の一部を愛でていたという事実を認識してしまえば、その時こそ本当に人格が破壊されてしまうかも知れない。
 何とも気の毒な話であった。
「にしても、彼は何に対してかわいい、っていってたんだろうな」
 キリクは小首を傾げたが、流石にこればかりは誰にも分からなかった。
 ともあれ、一同は地下室を出て地上へと帰還した。穏やかな陽射しが、この時は何よりも有り難かった。

マスターコメント

 皆様お疲れ様でございました。  最初にふたりの帰還兵から事情聴取するという前段階を踏んでいたのが、良い結果に繋がりました。何の予備知識も無く地下に突入していたら、もっと悲惨な目に遭っていたかも知れません。  自分で出しておいて何ですが、死霊術師って本当にろくなことしませんね。
ショートシナリオR

ショートシナリオR難しい 報酬:標準7 / 4〜8人

2022年04月30日 16時29分20秒 公開

大成功

相談掲示板

  1. だわ

    ウォーリアだ。だわと呼んでもらえれば。よろしく頼む。 ……これは。一癖も二癖もある依頼のようで。 ひとまず突入前に兵士から単語だけでも情報が得られないかと考えている。 正気に戻すためといって他所領の兵を殴るのもなんだから、水袋でも頬に当ててみるのは……んん。逆効果だろうか。 あとは突入時に松明を投げ込むなど先んじて光源確保できないかと考えている。それで深さもある程度想像がつくだろうしな。 ……洞察スキルなど積むと却ってアイデアロール成功、みたいになってしまうやつだろうか。

  2. ウスターシュ・ド・バティーニュ

    ウォーリア、ウスターシュと申します。 正気を失った兵士を殴って正気になるなら安いものではないですか? あちらは正気を失っているので正当防衛などと言い訳をつければそこまで角が立たないかと。 まあ、殴る前に冷水をかけるなりして呼びかけてみるなどが先でしょうか。 火災のあった後なので松明などの火を投げ込むのは少々不安がありますね。 可能であれば光源は別に確保したいように思います。

  3. だわ

    既に保護済のようだが状況次第では可能か。 殴るなら非授恵者を負傷させない程度の力加減に留意して、だな。念の為ヒールも持っていこう。 んん……。火を使うと、これから探索する場所の酸素を消費し煙が出るのも拙いか。 火以外で先行させられる光源となると、閃光塗弾の内袋を投げ込む形になるだろうか。先行しない光源としては定番のランタンやエンライトで。

  4. キリク

    シューターのキリクだ、よろしく。 逃げてきた兵士から断片的にでも何を見たのか教えて貰えれば良いんだけどな…。帰って来ない1人の事もあるし、一体地下になにがあるんだ? 視界確保には暗視を持って行く。 >精神分析(物理) まあ、素手で手加減すれば死にはしないんじゃないか?(

  5. ジュスト・V・ケレス

    キャスターのジュストだ、よろしく頼む。 情報が殆どないというのが悩ましいね。 光源に関してはエンライトが用意できるけど、灯りの使用は中に誰かないし何かがいた場合こちらの位置がすぐに割れてイニシアチブをとられてしまうリスクもあるから奇襲には気をつけたいところ。 とはいえ、灯りなしでは罠などのリスクがぐんと上がるし一長一短かな。 感覚系なら俺も暗視や超聴覚の類は持っていけるけど、兵士が存命なら保護しなきゃだし、その兵士も心神喪失状態ならヒプノシスで眠らせたり、中での情報収集用スキルも必要になりそうだし何を持っていくかは考え中。 出来れば捜波や探波持ちに索敵や地形把握して貰いながら慎重に進みたいね。

  6. ウスターシュ・ド・バティーニュ

    失礼、飼い猫が途中でじゃれてきて発言してしまったようです。 光源の使い方は悩ましいですね。 地下室の広さも分からなければ通路の広さや天井の高さも入るまでわかりませんから、 もしかなり狭い通路の先々に部屋があるような構造だと獲物を振り回すのも難しいので そこで戦闘が必要になる状況は避けたいですね。 エンライトの範囲は12hexほどですからかなり先の方まで照らすことは可能でしょうが、 灯りを付ける前に暗視や超聴覚で気配を探りつつ、でしょうか。

  7. ルイド

    ウォーリア、ルイド。 よろしく頼むわ。 ほんと情報無いのがどうすっかね、とりあえずは戻った2人から調べてみるのに賛成だ。 個人的にゃ正気を失う至ったトリガーを何とか知りてぇな。 見たせいか、聞いたせいか、触れたせいか、なんか他にあるのか。 精神感応系スキルの線もあんのかね? ならアンチ・サイやらジャマーやらも試せるんだが。 どっちか持ってって良けりゃ、2人に対しても一度使ってみようかと思う。 灯りもそうだな、可能なら点ける前に探り入れてみたいのに同意。 そこら辺上手いこと分担できりゃと思うんで、足りないもんありゃ取得して持つわ。

  8. だわ

    ……なかなか動き方が頭の中で纏まらない。 少し自分用に整理させてくれ。 ・帰還兵からの聴取 正気に戻す(水袋、拳、アンチ・サイ、ジャマー) ・探索 灯りを点ける前に探り(暗視、超聴覚) 灯り(エンライト、ランタン) ・残留兵の対応 鎮圧(ヒュプノシス) 保護 === 帰還兵の自我喪失は一種のバッドステータスによるものの線もあるから、ヒーラーがいれば解呪など試してもらいたいところだが不在だな……。 > ルイド ジャマーかアンチ・サイのどちらかを持ち込むのであれば、ジャマーの方が良さそうだと俺は思う。 効果範囲だけでなく、カバーできる種類の幅もジャマーの方が広かったはずだ。 聴取時だけでなく、突入後に何かと相対する際にも使えると思う。 > キリク 今のところシーフ・シューターがキリク1人だから名指しでの確認になってすまん。 捜波系の持ち込みは可能だろうか?

  9. キリク

    捜波は持って行けるぞ。 早めに敵の気配を見つけられれば戦闘でも探索でもそれだけ有利に立ち回れるし。 何かいたらすぐに知らせる。

  10. ジュスト・V・ケレス

    キリク君は捜波の持ち込みありがとう、助かるよ。 エンライトに関してはウスターシュ殿が触れてくれたように事前に探りを入れてから使用するのに同意だ。 ああ、そうだ。 帰還兵からの情報収集に関してはOPで「アーギス・マーレイと共に問題の地下へと潜ろうとしているところからスタート」と記載があったので、もしかしたら出来ない可能性もある。 その場合、中で未帰還兵が生存していれば、現状出ている方法は試せるのではないかと思ったよ。 精神感応系スキルに関してはジャマーがあるとこちらの自衛にもなるし、持って行ける人がいれば是非お願いしたいね。

  11. ルイド

    あいよ了解、意見感謝だ。そんじゃジャマー持って行って試してみるわ。 これも感知される可能性はあるかもしれないんで、使用タイミングとしては…… エンライトと同時くらいでいっかね。問題ありゃ変更するぜ。 あー、 未帰還兵の安否確認を最優先に、とかになると確かに帰還兵に関わる時間あるかわかんねぇな。 そんときゃジュストの言うよう未帰還兵か、最悪俺ら自身対象に試すことになるか。 発生するかどうかは不明だが、戦闘方針も少しずつ詰めねぇとな。 BSの線警戒するなら今んとこ個々で抵抗高めておくか、 速攻寄りで固めて付与重ねられる前に始末するか、とかになんのかね。

  12. フリーダ=ブロムヴィスト

    ウォーリアのフリーダです。よろしくお願いします。 >帰還兵への聞き取り ジュスト様の言う様にスタート時点で聞き取れない可能性を考慮すると、 未帰還兵が中にいる場合に試す形になりそうです。 ただ、状況的に生きてる可能性はあるのでしょうか…? >探索 地下室という事ですし、照明の類は用意すべきでしょう。 後は一度に全員突入して全員発狂した……なんて事にならない様に、 突入のタイミングをずらした方が良いかもしれません。 ただ、何が原因で発狂したのかわからない以上、気休めかもしれませんが… >戦闘 仮に敵がいるとするならば状態異常がメインとなる相手だと思いますし、 こちらは抵抗を固めておけば有利に立てそうな気がします。 何かされる前に速攻という選択肢も良いかもしれませんが、 相手の情報がわからない以上、むやみに突っ込むのはリスクがありますね。

  13. ウスターシュ・ド・バティーニュ

    ひとまず地下室の探索方針としては ・エンライト等灯りを付ける前に一通り周辺状況を探る(暗視、聴聴覚等) ・突入の順番を考慮? でしょうか。 突入順に関しては全員地下室に入った後もそのまま隊列を組む事になりそうなので 先頭に来る方に少々重荷を背をわせてしまう気がしますが。 中が広いことを祈りますね… もし未帰還兵が負傷、もしくは帰還兵同様に正気を失っている場合 ・治療の結果自力で移動が出来るのであればそのままついてきてもらうかどうか ・治療不可かつ移動も困難な場合誰が抱えて移動するかどうか また、残念ながら生存していなかった場合の遺体をどうするかが気がかりです

  14. だわ

    > キリク 捜波の持ち込み、助かる。頼んだ。 > 突入 ん……そうか。帰還兵との接触時間が取れない可能性もあるか。 俺で良ければ先頭、行けるぞ。 先頭と後続との距離を少し……数hexほど開けておけば、一斉に食らうリスクは減らせるだろう。 > 未帰還兵の扱い 未帰還兵を生存状態で保護できた場合、発狂をどうにもできなければ一旦昏倒させて連れ帰ることになるか。 歩けなければ搬送に「担架」など使う手も。 死……遺体になっていても可能なら回収したい。 放置して腐敗が進んでも困るし、死霊術師などに拾われても本意でないだろうしな。 回収時は「看破」で周辺の罠等に警戒予定だ。 いずれにしても、中でこちらの安全を確保できてからになるか。

  15. No.16

    サイラスだ、今更ながらよろしくなー とりあえずジャマー重ねる様にするのとエンパシーとか残留思念感応あたり持ち込もか?拾いやすそうな気もするしどういうものが原因か感情分かると何かあるかもやし 戦闘は少し後ろから術で殴ろかと

  16. だわ

    早いもので、明朝出発だな。 俺はこのように動こうと思う。 > 突入前 もし帰還兵との接触時間が取れれば、水袋を頬に当てたりと正気に戻すことを試み、少しでも情報を聴取したい。 時間が取れない可能性もあるからさらっと。 > 突入時 先頭を行く。暗視と看破で警戒。 何かあれば手で制するなどして知らせる。俺がどうにかなったら殴って対処してくれ。 > 戦闘発生時 狭所と想定して対象識別攻撃(闘気槌)と単体攻撃を何か準備をしていく。 ヒールも持っていく予定だ。

  17. ルイド

    未帰還兵の扱いはそうだな、生きてるんなら依頼の内なんで連れ帰り優先でいいと思うわ。 担架は用意しておくが、未帰還兵の発見と何らかの敵との戦闘が同時発生した場合は、 状況次第では個人としちゃ戦闘に注力させてもらうかもしれねぇ。 つっても極力巻き込まれない位置に誘導なり運ぶなりは手伝うが。 あとはまぁ、死んでたら回収するにしても安全確保の後にで同意。 サイラスはジャマー重ね感謝。そんじゃ俺は警戒用の超聴覚持つか。 アイテム面はランタン・水袋(小)・担架の予定。 隊列は……前衛集まり過ぎても動けるかわかんねぇしな、俺も杖持って後衛寄りにしとく。 対象識別も持つわ、未帰還兵がどうしても邪魔になる場合とかもあるかもしれねぇし。 効きそうなら魔錆あたりで支援もしようかと。

  18. ジュスト・V・ケレス

    >未帰還兵 ルイド殿は担架の持ち込みありがとう。 俺は暴れた際の抑え込み用と、もし亡くなっている時の為にマントを持っていこうかと。 あと鎮静用のヒュピノシスは用意したよ。 >突入 だわ殿は先陣を切ってくれてありがとう。 では俺は通路の狭さなどにもよるが、少し間を開けてから他の後続メンバーと一緒に続こう。 >調査 エンライトは用意したので、状況に合わせて使用可能だよ。 生活ないし何かしらの活動をしていた痕跡の有無など調べるつもりだ。 あとは何かしらの活動をしていたとしたら、どんな活動をしていたのか、そのあたりを探る予定。 >撤収目安 とりあえず未帰還兵を確保したら一旦撤収した方が良いかと考えていたんだけど、問題ないかな? 搬送中に襲撃されることも想定しているけれど、その場合は撤収優先で考えている。 その時に使えるかなと思って閃光塗弾は用意しておいたよ。 搬送を行う場合は担架と搬送役を間に挟んで進んだ方が良いだろうね。 >戦闘 対象識別な範囲魔法を2種、単体攻撃魔法を1つ。 あとはヒール、追跡妨害用のスタティックフィールドを持参予定。

  19. フリーダ=ブロムヴィスト

    >突入 それでは私はだわ様に続いて進む形にしましょう。 >調査 とりあえず照明の類は用意しておきます。 今後の調査を考えると、仮に戦闘があった場合でも室内への被害は避けたい所ですね。

  20. ウスターシュ・ド・バティーニュ

    >突入 先陣を切る役ありがとうございます。 私は遠距離武器に持ち替える用意がないためだわ殿が入った後早めに後を追いましょう。 >調査 暗視と……そうですね、聴覚を持っていってくださる方がいますので超視覚を持っていって 視界確保に努めます。嗅覚も少々迷いましたが… >戦闘 ウォーリア多めの構成ですので前衛が渋滞しそうですが、純アタッカー構成の予定です

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0