偽りのデイウォーカー
革酎
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シナリオID:1886
オープニング
リーンエス王国メルゲンガー伯爵領都アジェルマハーの冒険者ギルド支部に、全身傷だらけとなった血まみれの男性が飛び込んできた。
一体何事かと、受付嬢ティマニ・エレザンが受付カウンターから慌ててロビーへと廻り込む。男性は板張りの床に倒れ込みながら、息絶え絶えに喘いだ。
曰く、彼の住んでいた村セルメスが突如、吸血鬼の集団に襲われて壊滅したというのである。
セルメス村はここアジェルマハーから徒歩で数時間程度の距離で、周辺に点在する村や集落の中では最も近い位置にある人里のひとつであった。
件の吸血鬼集団は極めて残忍且つ好戦的で、次はアジェルマハーを襲撃するかも知れない。ティマニはすぐさま領主メルゲンガー伯爵邸へと早馬を走らせると同時に、現在この冒険者ギルド支部に滞在している授恵者達に緊急の依頼が出る可能性があると触れ回った。
それからおよそ30分後、領主マグラウリー・メルゲンガー伯爵が馬を駆って、直々に冒険者ギルド支部へと急行してきた。
「すぐに討伐隊を派遣したい。敵が吸血鬼というのなら、授恵者で編成された討伐隊を送り出す必要がある」
メルゲンガー伯爵の意向を受けて、ティマニは大慌てで依頼票を書き上げた。
その間、メルゲンガー伯爵はセルメス村の生き残りだという男性の聴取に当たった。男性はロビー脇の休憩スペースでギルド職員による応急手当を受けていた。辛うじて命に別状は無いらしい。
男性の話によれば吸血鬼は全部で五名。そして襲撃を受けたのは村人達が朝食を終えて、畑仕事に出ようかという頃合いだった。
つまり、吸血鬼共は陽光を浴びながら日中堂々と襲い掛かってきたということになる。
「まさか……デイウォーカーか」
厄介な敵が現れたものだ――メルゲンガー伯爵は忌々しげに奥歯を噛み鳴らした。
●改造吸血鬼とハンター
静まり返ったセルメス村。
村道や畑、家屋、馬小屋、広場――至る所に村人達の遺体が放置されている。老若男女お構い無しの凄惨な虐殺が行われた直後だった。
そんな中を、五つの人影が勝ち誇った様に肩で風を切りながら闊歩している。
セルメス村を壊滅させた下位吸血鬼共であった。
「素晴らしい肉体改造だ……陽光をまるで受け付けないとはな」
吸血鬼のひとりが、広場中央の大樹の根元に腰を下ろした異形の怪人に賞賛の声を贈った。
その怪人はジュラッツァ・ゲ・ラカンカ。肉体改造の達人たる混沌魔術師である。ジュラッツァは人外の奇相を不気味な笑みの形に歪めた。
「我が改造実験に付き合ってくれたのだ。諸君には感謝しておるとも」
「まぁお互い、利害が一致したという訳だ。今後も宜しく頼むぞ」
別の吸血鬼が不敵な笑みを返した。彼らはジュラッツァの肉体改造術により、皮膚表面に対日光の特殊な防御膜を施されていた。だがその防御膜の維持には、定期的に村ひとつ分の人口の血液摂取が必要となる。
この日セルメス村が襲われたのは、その定期血液摂取の第一回目だったに過ぎない。
次なる標的は別の村か、或いは領都アジェルマハーかと吸血鬼共が凶暴な笑みを見せた時、村の入り口に長剣を携えた人影が現れた。
背の高い女性だった。どうやら狼の半獣人らしく、灰色の尾と狼の耳、そして鋭い眼光が、しなやかな肉体美の中で鮮やかに際立っていた。
「はて、随分早いな。さっき死に損ないをひとり逃がしてやってから、まだそんなに時間は経ってない筈なんだがなぁ」
吸血鬼のひとりが不思議そうに小首を傾げた。
狼の半獣人美女は金色の瞳に怒りの念を燃え上がらせながら、ゆっくりと広場へ近付いて来る。
すると、吸血鬼のひとりが不意に何かを思い出した様に軽く両掌を打ち合わせた。
「そういえば聞いたことがあるぞ。吸血鬼ハンターを気取る馬鹿な半獣人女が居るってな。確かロレッタ・レーゼンとかいう奴らしい。もしかして、お前のことか」
「……だからどうした。お前達はここで滅びる」
狼の半獣人美女ロレッタは長剣の切っ先を跳ね上げながら、手近の吸血鬼に襲い掛かった。ほとんど一瞬で間合いを詰められ、吸血鬼は慌てて回避行動を取るのが精一杯だった。
反撃に転じたのはしかし、吸血鬼ではなくジュラッツァだった。ロレッタが滅ぼそうとしている五人は、吸血鬼の序列としては下位に当たる。腕の良い授恵者が相手となれば、討ち取られるかも知れない。
「……邪魔をするな。私が斃すべきは吸血鬼。お前の様な人外の怪物は眼中には無い」
「そうはいかん。彼らは我が実験素体だ。簡単に討ち取らせる訳にはいかんのだ」
ところが吸血鬼のひとりが、俺達に任せろと声高に応じた。下位とはいえ、自分達も吸血鬼なのだから、ひとりの授恵者如きに負ける筈はないというのである。
「ふん……ならば好きにするが良い。諸君が負ける様ならば、我が研究はまだまだ道半ばということで今後の課題のひとつとさせて貰おう」
ジュラッツァは驚くべき機動力を発揮して、ロレッタから間合いを取った。
代わって、五人の吸血鬼達がロレッタの周囲で包囲陣形を組んだ。
「たったひとりで何が出来る……吸血鬼ハンターだか何だか知らんが、その思い上がりを後悔させてくれる」
ロレッタは長剣の柄を握り直した。
この吸血鬼共は確かに序列は下位相当だが、しかしその実力は侮れない。
油断は禁物であった。
解説
マスターより
リプレイ
金属と金属が激しくぶつかり合う、甲高い響き。
或いは、知性を余り感じさせない下品で野太い男達の、幾つもの怒号。
陽光が中天から僅かに傾き始めた頃、セルメス村の入り口に到達した冒険者達は既に何者かが戦いに突入している気配を察知した。
「あれ……もう誰か戦ってます? 仲間割れじゃないですよね!」
ルアンナ・ミュラーは一瞬足を止め、傍らで同じ様に村中央方面に耳を澄ませているグレイブ・ヤードに、怪訝そうな表情を向けた。
グレイブは仮面の奥で、黒い瞳を僅かに煌めかせた。ルアンナと同じく、複数の気配が激闘を繰り広げている様子を確かに感じ取っていた。
「これはまた珍妙な……デイウォーカーが堂々と暴れ回っているだけでもおかしな話ですのに、更に別の何者かと戦っている様子」
仲間割れにしろ、別の誰かが先手を打って吸血鬼との戦闘に突入しているにしろ、駆け付けた冒険者達にとっては決してマイナスになる話ではない。ここは早々に参戦して、藪蚊の退治と参りましょうとグレイブは静かに応じた。
ならばと、先陣を切ったのはハヤト=ガラン=ヴォルファングだ。接敵速度ならこの面々の中では彼が一番速い。
僅かに遅れてアーテミシアとアルベルト=V=シュタールシュヴェーアトの両名も続いた。
「吸血鬼かー。何か良い素材取れりゃあ良いけどなぁ」
サイラスは相変わらず呑気に、己の欲求を素直にさらけ出しながら先を走る三人の後に続いた。ルアンナとグレイブは後衛の為、一番最後に村中央の広場へと駆ける。
「おいおい……どー見てもあの美女を囲んでるのが吸血鬼共だろッ!」
広場到達と同時に、ハヤトは呆れ気味に叫んだ。灰色狼の半獣人美女が長剣を構えて、彼女を取り囲む五人の男達と激闘を繰り広げている。
冒険者ギルドで敵の特徴をある程度聞いていた他の面々も、包囲陣形を組んでいる側の五人が吸血鬼であることはすぐに推測出来た。
その五人のうちの一部が、駆け付けた冒険者達に意識を向けた。いずれも病的に顔色が悪く、両眼が異様に血走っている。極めつけが、唇から覗く牙の様な犬歯だ。吸血鬼と見て間違い無い。
「獲物がぞろぞろと雁首揃えてご到着だッ! テダ、ジョレン、お前達はその女をさっさと始末しろッ! 俺とロイス、ビレイスであいつらを殺るッ!」
大剣を振り回す男が、アーテミシア目掛けて踏み込んできた。その後に戦斧を携えた吸血鬼と、短弓を構えた別の個体が冒険者に矛先を切り替える。
「フン……夜中にコソコソしてりゃまだ長生き出来ただろうがよ……仕方ねぇ。かるーく揉んでやるか」
大剣使いの接近を敢えて許したアーテミシアは、愛用の戦槌を豪快に振り上げて敵の第一撃を簡単に弾き返した。大剣使いはアーテミシアの反応速度と想像以上のパワーに、明らかに驚いている様子。
一方、ビレイスと呼ばれた戦斧使いにはサイラスが一瞬で接近し、風雷坊を振るって殺界を発動。しかしどうにも手応えが薄く、通常の接近戦を余儀無くされそうな気配だ。
「五対一で殺し切れないとかあり得ねぇーなぁ。蝙蝠とか蛭からやり直したら?」
サイラスの挑発に、戦斧使いは獰猛に吠えた。この程度の煽りで冷静さを失うということは、同じ吸血鬼でも下位に属するのではと推測したサイラス。少なくとも、目の前の敵だけは他の仲間に向かわせぬようにと考えることにした。
「喰い方も汚いからお里が知れるわねぇ」
戦斧使いビレイスはサイラスの挑発にまんまと引っかかり、サイラスだけに照準を絞り切っていた。
残る短弓使いロイスには、ハヤトとアルベルトが向かった。
「うるぁ! 美女の味方、ブレイブファング傭兵団のハヤト=ヴォルファング様のお出ましだぁ!」
ハヤトの神速に近しい接近速度に、ロイスは明らかに動揺していた。そのロイスの隙を衝く格好で、アルベルトの大太刀が雷鳴の如き勢いで宙空を一気に切り裂く。
「その首、貰った!」
まさに有言実行。
ハヤトの連撃を回避することに必死になっていたロイスは、アルベルトの剣戟を受けてあっさりと首を刎ね落とされていた。
すると、短弓使いの肉体は頸部の切断面から急速に黒い塵と化し、あっという間に消し飛んでしまった。吸血鬼の中には日光を浴びると陽に焼かれ、消し炭となって霧散する種も居るらしいが、この五人はまさにそのタイプなのかも知れない。
「ほう、これは興味深い。デイウォーカーになり切れていなかったという訳ですか?」
後方支援に徹し、戦況を俯瞰していたグレイブは小首を傾げた。初手で仲間の防御を向上させてからは治癒術とカウンターの魔法攻撃に意識を集中させていたグレイブだったが、敵の死に様には多少の興味を覚えた。
その傍らで、ルアンナが獰猛な勢いで魔力を炸裂させていた。
謎の半獣人美女が長剣によるひと薙ぎで、徒手空拳の格闘技スタイルで戦う吸血鬼に間合いを取らせたところへ威力を増幅させた魔力の破壊波を叩きつけたのである。格闘家吸血鬼は派手に吹っ飛ばされた。
残る二刀流短剣使いは、直前までルアンナの緑光弾を散々に浴びていた為か、防御力がずたずたに切り崩されており、半獣人美女の剣戟に手を焼きまくっている。半獣人美女は全身で円を描く独特の剣法を披露し、短剣使いを次第に追い詰めてゆく。
この調子なら楽勝だ――冒険者の誰もがそう思ったその時、広場中央にそびえる大樹の上から巨大な影が地上へ降下してきた。余りに異様なそのいでたちに、初見の冒険者は一瞬目を奪われた。
「てめぇは……ジュラッツァ! 一枚噛んでやがったかッ!」
アルベルトとのコンビで早々にロイスを仕留めたハヤトが、獰猛に吠えた。
その魔人ジュラッツァ・ゲ・ラカンカはしかし、姿こそは見せたものの、冒険者達に挑みかかる様な仕草は見せなかった。寧ろ、冒険者や半獣人美女に翻弄されている吸血鬼共を、興味深そうに観察するといった雰囲気さえ漂わせていた。
●彼女の名は
ルアンナから極大威力の魔法攻撃を浴びた格闘家吸血鬼が、悲鳴に近しい情けない声を上げた。
「邪導師、て、手を貸してくれッ!」
しかしジュラッツァは、動かない。それどころか大樹の根元にどっしりと腰を下ろしてしまった。
敵の間に不協和音が流れている。この好機を見逃す冒険者達ではない。
まず大剣使いを相手に廻しているアーテミシアが、攻勢に出た。二撃、三撃と戦槌を打ち込んで防御力を完全に砕き切ったところへ、渾身の強打一閃。アーテミシア自身も反撃を受けて多少の傷は負っていたが、それ以上の破壊力で敵を圧倒した。
「き、貴様……エルフの小娘如きが……ッ!」
「ひとつ教えてやろうか。オレに構った時点でこっちの狙い通りなンだよ。表が出たらオレの勝ち。裏が出たらテメーらの負けだってことだよ」
つまり、どう転んでも吸血鬼には勝機は無い。アーテミシアの間合いに入れば最後、この吸血鬼には生き残る道は残されていなかったのだ。
「単純な殴り合いでオレを凹ませたきゃ、今の倍は腕力付けな!」
続くスイングで戦槌の先端を大剣使いの肩口にめり込ませたアーテミシア。破壊された右肩から、不意に煙の様なものが立ち上がり始めた。
「ま、拙い……傷口から、に、日光が……邪導師、は、速く防護膜をッ!」
アーテミシアに右肩を叩き潰された吸血鬼は、涙目になっていた。しかし、ジュラッツァは相変わらず動かない。
その間にハヤトとアルベルトは、半獣人美女から慌てて間合いを取った短剣使いに殺到した。
「お美しい騎士殿、俺達が来たからにはもう大丈夫だ!」
「いや、彼女が騎士かどうかは分からんだろう……が、まぁ良い。吸血鬼め、貴様を殲滅するぜ!」
妙に浮かれているハヤトと、苦笑を漏らしつつもいつもの決め台詞で敵に迫るアルベルト。敵は短弓使いを仕留めたアルベルトの大太刀の威力を警戒していたらしく、ハヤトの機動力には意識が向いていない。
今度はハヤトが必殺の蹴りと二刀流による連撃で、敵を一体仕留めた。
冒険者が加勢して僅か数分、早くも吸血鬼はふたり目が斃され、圧倒的不利な状況へ追い込まれた。
ジュラッツァの登場で戦局がどう転ぶかと危惧されたが、そのジュラッツァは未だ動く気配が無い。強敵が動かぬのなら、ここで一気呵成に勝負を仕掛けるべきだろう。
不利を悟った格闘家吸血鬼が、後衛のルアンナとグレイブに狙いを定めたらしい。距離が離れていればルアンナの魔力は大いに脅威だが、近づけば何とかなると踏んだ様だ。
「ま、そう来るでしょうね」
この動きを、グレイブは予め読んでいた。
無銘祭祀刀にエーテルを注ぎ込み、カウンターの一撃を放つ。格闘家吸血鬼は思いも寄らぬ反撃で苦悶の表情を浮かべたが、それでも足を止めようとはしない。ここでルアンナかグレイブの生命力を奪わねば、己の命が無いことを悟っている様子だった。
「ただ身体能力に任せて戦う程度ではない、とは思っていましたが……想定以上のタフさですね」
グレイブは敵がルアンナに接近する前に招霊呪怨縛を発動させた。
「貴方がかつて糧にした何方かです。どうぞ存分に足を曳かれるが宜しいかと」
その宣告通り、目に見えて動きが鈍くなった吸血鬼だが、それでもルアンナに迫る足は止めようとはしない。ここまでくると、グレイブも少しは称賛してやっても良いかも知れないという気分になってきた。
一方、ルアンナは敵をぎりぎりまで引き付け、仲間との距離が十分に取れたところで最後の一撃を叩き込んでやろうと考えた。
が、その発想は一瞬で覆った。自身に迫ろうとする吸血鬼の頭上に、半獣人美女のしなやかな体躯が陽光を遮って舞っていた。その直後に振り下ろされた長剣の切っ先が、吸血鬼の両腕を切り落としたのである。
敵は防御する術を失った。
ならば――ルアンナは手にした杖を両手で構え、横薙ぎの豪快なスイングで、目の前にまで迫っていた吸血鬼の頭部を盛大に破壊した。
ぐしゃり、という嫌な手応えだが、ルアンナ自身は気分爽快だった。腕を落とされ、足を引きずり、頭部を破壊された吸血鬼は矢張り他の吸血鬼と同じく、消し炭と化してこの世から消え失せた。
杖を振り切ったフォロースルーの態勢のままのルアンナの肩を、半獣人美女が軽く叩いた。
「見事なスイングだ。君なら良い吸血鬼ハンターになれる」
そのひと言を受けて、ルアンナの頬が僅かに上気した。
「あ、あの、戦士殿……と、とってもカッコ良かったです!」
「ロレッタ・レーゼンだ。ロレッタと呼んで貰って結構」
冒険者達はここで初めて、半獣人美女の名を知った。後で聞いた話だが、ロレッタは吸血鬼ハンターとして行動している授恵者であるとの由。
但し覚醒したのは数年前の話であり、その当時は冒険者ギルドへの登録義務は無かった為か、今もロレッタは冒険者ギルドには所属せず、ひとりで吸血鬼を狩り続けているらしい。
いわば、孤高の吸血鬼ハンターであった。
●不穏なる予感
アーテミシアに肩口を破壊された吸血鬼も、その傷口から侵入した陽光に肉体が耐え切れず、数秒と経たないうちに消し炭と化して宙空へ霧散した。
残る吸血鬼はサイラスが動きを封じている戦斧使いのビレイスただひとり。
サイラスはデイウォーカーという珍しい敵から何らかの素材が得られないかと密かに期待していたが、他の個体が次々と消え失せている現状を鑑み、何も得られないと諦めた。
「仕方ねぇなぁ。何も持って帰れねぇんじゃあ、モツを捌いて引きずり出すってのも意味無さそうだなー」
やれやれと肩を竦めるサイラス。
一方、戦斧使いは一向に動かぬジュラッツァに見切りをつけたのか、慌てて踵を返し逃亡を図る。
だがその行く手に、ハヤトとアルベルトが驚く程の速さで割り込んできた。
ならば別方面に脱出路を見出だそうとしたビレイスだったが、グレイブとロレッタが既に逃げ道を塞ぎ、完全に万事休す。
ビレイスは戦斧を放り出し、その場に跪いて命乞いを始めようとしたが、それよりも早くロレッタの長剣が一閃し、他の吸血鬼同様、完全に滅ぼした。命乞いする暇すら与えない、絶対的な殺意がそこにあった。
その清々しいまでの確固たる意志に、ルアンナは内心惚れ惚れする気分だった。
ルアンナにとっては吸血鬼は全て燃やし尽くし、慈悲などを与える相手ではない。いわば見敵必殺の宿敵たる存在である。
そのルアンナ以上にロレッタはまるで容赦が無い。吸血鬼ハンターの鑑の様な女性だった。
ともあれ、五体の吸血鬼は全て斃した。残るは未だ動こうとしないジュラッツァである。
ルアンナはデイウォーカーを造り出した張本人がジュラッツァであることを本能的に理解し、その肩口に蠢く巨大な眼球に魔弾を撃ち込んだ。
が、その一撃はジュラッツァに至る直前で、角度を変えてあらぬ方向へ飛んでいった。
「……あいつは見てくれこそ格闘家みてぇな接近戦タイプだけどよ、実際は混沌魔術師だ。魔法攻撃の類はあんまり効かねぇかもな」
ハヤトが二刀流の構えでゆっくりと間合いを詰めようとしたその時、ジュラッツァの巨体が不意に地中へ溶け込む様にして消えた。
一体どの様な術を行使したのかとグレイブが慌てて近づいてみたが、大樹の根元の地面には特に変わった様子も無い。
「また妙な術を使いやがる奴だな……今度は何したんだ?」
「確か壊密宗ってのは反対側に空洞のある壁や床をすり抜ける技を操るらしいな。多分、この下に地下空洞か何かがあるんじゃねぇか」
アーテミシアに問われ、ハヤトは小さく肩を竦めた。
しかしロレッタは、然程関心が無さそうな様子で長剣を鞘に収めている。ハヤトもジュラッツァに対する興味は薄れ、その意識はロレッタに向けられていた。
「いやー、しかし同じ狼の半獣の血をひいてるだなんて奇遇ですねぇ」
「……以前、どこかでお会いしたことがあったかな?」
不意に返ってきた問いかけに、ハヤトの笑顔が怪訝な色に染まった。曰く、ロレッタは過去にハヤトと良く似た銀狼の半獣人戦士と共に、吸血鬼の群れを撃退したことがあるらしい。
ハヤトのナンパ気分は一瞬で消し飛んでしまった。
サイラスとアーテミシアがセルメス村の被害者達を埋葬しようと動き出した時も、ハヤトはまだ呆然としたままであった。
その後、アジェルマハーに戻った冒険者達は、冒険者ギルドで事の顛末を報告した。
その際ルアンナが、
「あの、肩に目のある舌を噛みそうな名前の怪人が関わっていました」
と告げると、依頼主たるマグラウリー・メルゲンガー伯爵は渋い表情を浮かべていた。
ジュラッツァ率いる壊密宗は既に叩き潰されているが、ジュラッツァ自身は未だ健在である。
再び何か良からぬ事態が迫っているのではないか――メルゲンガー伯爵は眉間に皺を寄せ、何度もかぶりを振った。
マスターコメント
ショートシナリオR難しい 報酬:多い6 / 4〜8人
2022年02月07日 10時10分41秒 公開
相談掲示板
No.1
サイラスだ、よろしくなー とりあえず物理型がほとんどでいいのかねぇ今回の相手。まあ足止め置いて早いのと弓優先で一体ずつ狩るか、一気に狙うかとかはメンツ次第かね
キャスターのルアンナです、よろしくお願いします。 吸血鬼はみんな物理型のようですね。 敵の位置にもよりますが、アシッドブリッドで弱体化した後に範囲魔法攻撃を炸裂させたいです。
ああ、成立してたか 相手が物理型ならオレはどれに当たっても問題ねぇな。 足止めも出来るぜ。人数が増えねえとちょい厳しいが
ヒーラー、グレイブ・ヤードです。 多少の安全マージンとしてお手伝いさせていただきますね。
おーっす! ブレイブファング傭兵団のハヤト=ヴォルファングだ、よろしくな!! 美人騎士…助太刀に入らねぇわけにはいかねぇぜ!! ってなわけで面倒臭そうな二刀流と短弓使いか? そっちを優先して斃しに動くぜ。
とりあえずは防御/回避と回復関係重視でセットしておきましょうか。 状態異常に関してはなさそうですし・・・。
ウォーリアのアルベルト=V=シュタールシュヴェーアトだ。 よろしくな。 とりあえず、一体ずつ確実に仕留めて行った方が良いと思うな。 そんなわけで、ヴォルファングさんが狙っている「テダ・アリ」か「ロイス・ウロド」を俺も狙っていこうと思うぜ
No.8
とりあえず弓以外まともな遠距離なさそだし殺界かなぁと。足止めしつつ嬲る。 上手く行けば足止めも兼ねるから巻込考えずにまとめて範囲とか行けるし。
弓以外はどれも大差ないか 一体づつ片付けていくってンなら上から行くか?