【魂禍】ロコと魔獣達、参戦す

岩岡志摩

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シナリオID:1832

オープニング

●ある思想家の格言
 この世界の人間と呼べるものは、我々選ばれしものと我々に従順に従う者しか定義されない。
 我々は、その迸る知性によって全ての人々を導く尊い存在である。
 我々に管理され、我々によって導かれることで、はじめて世界とそこで暮らす人々は生き延びることができる。
 それが正しい我々と世界の在り方だ。
 我々に従わぬものは、存在してはならない。
 我々は確信する。
 我らに逆らう者は、我々と我々が護る人々に迷惑をかけ、吐き気を催すために生まれてきた。
 そんな存在するだけで周囲を毒していく者は、それ自体害悪だ。
 この大陸は我々と我々に従う子羊達が生きることを約束された地である。
 お前達のような汚らわしい連中は生きていてはならない。
 地虫のように這いつくばり、踏みつぶされることが運命だ。
 お前達は笑ってはいけない。不幸でいなければいけない。
 我々は世界に覇を唱える剣なり。

●道化師2人
 この日道化師アルルカンは、『ロコ』と名乗る存在の訪問を受けていた。
 道化師といっても、アルルカンは道化服を着ているからそう見えるだけで、本当のところはわからない。
 そんなアルルカンを真似るように、仮面と道化師の衣装で素性を隠すロコは、まともな人間には見えない。
 平伏の姿勢を見せるロコに対し、アルルカンは用件を聞く。
「これから先、ある場所で争いを起こしマス。少しの間で構いませんノデ、関知しないというフリをしてもらえないでしょうカ?」
「それはオメェのやることに目をつぶれってことかい?」
 その場所の詳細を聞いたアルルカンは、愉快そうに確認する。
「おっしゃる通りデス。この件に関しましては貴方様にコール(応じる)を求めることはいたしまセン」
 コールの単語に、アルルカンは仮面の奥で唇の端を吊り上げる。
「オメェのホールカード(伏せたカード)を見せろとは言わねえよ。それはショウ・ダウンの時まで見せないルールだからな」
 それはアルルカンが、ロコのやることを黙認するという意味でもある。 
「ありがとうございマス。ではお見せできる内容はこちらでございマス」
 そう言ってロコは懐から何かの書類を取り出し、アルルカンの前に置くと再び後方に退いて平伏する。
 書類を拾い上げたアルルカンは、無言のまま内容に目を走らせる。
「確かにこれなら利害は一致するし、面白そうだ。オメェは好きに動きな」
「かしこまりマシタ」
 アルルカンの言葉を受け、ロコが頭をたれるとふわりとその場から姿を消した。

●炎の蹂躙
 人間は慣れる生き物だ。
 そして人は、どんなに問題を抱えていても、まずはその日を生きなければならない。
 生活という名の呪縛が、住民達の行動力や思考力を徐々に奪う。
 それはどのような地域でも変わらない。
 たとえこの日、魔獣達の暴力に襲われ炎を上げる村であっても。
 燃える家で。
 広場で。
 水車小屋で。
 村の領主の家で。
 村の住民達がこれでもかとばかりに走り回っている。
 荷物を積んだ荷車が駆け回り、その上で小さな子供達が泣き叫んでいる。
 近くまで調査に赴いていたギルド職員アルヒ・ラスカスは、炎を上げる村を見て調査を切り上げ、同じ調査依頼に参加していた冒険者達と共に、村へと駆けつける。
 アルヒや冒険者達の姿を認めた村の住民達が、少しでも安全な場所を求めてこちらへと群がってくる。
「誘導は授恵者でない職員にやらせろ! 戦闘はこちらで引き受ける」
 アルヒが同行していたギルド職員に指示を出し、避難誘導へと当たらせる。
 その視線の先には、魔獣の気配が複数確認できた。
 空を飛び、叫喚を発して炎を叩きつける鳥めいた魔獣が複数。そして地上で暴れる大柄な獣も数体いる模様だ。
 炎の饗宴は、既に始まっている。
 空からつんざく叫喚と共に家屋を打ち据え、焼いていく音。
 人々の悲鳴。
 それらは不愉快な不協和音となって、冒険者達の鼓膜に届いている。
 やがて炎の向こうに、村を襲った元凶が姿を見せる。
 仮面と派手な衣装で顔や全身を隠す道化師が、そこにいた。
 過去には帝国難民キャンプの周囲で暗躍し。
 ある時はディズル大湿原帯の周囲で魔獣達を各集落に差し向け。
 最近ではフィルエス大森林の里ムーセルの周囲で、植物型魔獣による蹂躙を手助けした。
 魔獣を操って人々を襲い、理不尽と暴力を押し付け続けてきた災厄。
 その名は、ロコ。
 メドゥの指先との関係が指摘されているが、そのロコは片手で1人の男を引きずっていた。
 それまで襟首をつかんでいた男を、ロコは放り投げ、地面に叩きつける。
 既に男はこと切れており、全身がほぼ炭化していたが、かろうじて残る顔の部分は苦悶の表情で固まっていた。
「私の用件は済みまシタ。後はご自由にドウゾ」
 ロコはアルヒや冒険者達の姿を見るなり、大きく後方に跳躍して逃走に移る。
「待て! この村を襲ったのはお前か!?」
「その通りデス。そこにいる男を『同じ方法で』殺すため、村ごと焼きました」
 あっさりと犯行を自供したロコは炎の向こうへと身を翻し、消えていく。
 アルヒは追いかけようとしたが、周囲で燃える家々と魔獣達が追跡を阻む。
 アルヒはロコの追跡を諦め、同行した皆様に依頼内容の変更を伝える。
「調査は中止だ。これよりこの村の人々を救う」
 これは後日判明することだが、ロコは『ある人物』がこの村にいたため、村ごと襲撃するという手段をとった。
 その人物は過去にロコの大切な人達を焼き殺したため、同じ方法で殺されたことも。
 また今回ロコが行った襲撃をアルルカンが黙認したのは、この襲撃によって冒険者達の注意を引き付ける陽動代わりになると考えたためだ。
 しかし今は、そのような思惑に意識を向ける余裕はない。
 目の前で助けを求める人々の救助を支援する方が急務だ。
「責任は私が負う。炎に追われて逃げ惑う人々を、安全な場所まで避難させることができるまで」
 アルヒは改めて皆様に、やってほしいことを告げる。
「人々の避難を妨げ、人々を襲う魔獣達を倒してくれないだろうか?」
 そう言ってアルヒは頭を下げ、助力を求める。
 目の前には炎を上げる村。
 周囲には逃げ回る人々と、空陸から人々を追いかける魔獣達。
 今救いの手を伸ばすことができるのは、この場にいる皆様のみ。
 一人でも多くの命を救うために。
 皆様は、どうしたい?

解説

●目標  村にいる魔獣達を撃破する  失敗条件:魔獣達を全て倒す前に人々のもとへ向かうor下記ロコを警戒するだけで何もしない  登場  ロコ  過去に【CP】【蟲毒】【呪輪】などで暗躍を続け、各地に災厄をもたらした道化師。  メドゥの指先に属している模様。能力は未知数。  既に目的を達成したため、この村より退いた。再びこの村に現れることはない。  PL情報:今回ロコが殺した人物は、過去同じ方法でロコが大切にしていた人達を殺していた。   魔熊×6  全高2.5m、体長4mくらいの熊型魔獣。外見通りのタフさと獲物への執念深さを持つ。巨体のわりに機動力がある。略称『熊』。  骨鳥×6  骸骨めいた殻を頭に被った姿が特徴の、全長2m程の鳥めいた姿をした魔獣。通称『鳥』。  機動力に非常に優れる。近接戦闘手段はないが炎を放つ。常に下記見取り図内の上空6へクスの空域を飛ぶ。  PL情報:今はロコの指示を受け、下記見取り図より外には飛行しない。  ・炎撃  相手の頭上より一気に降下し、着弾すると範囲1へクス内の全てにダメージを与える炎を放つ。識別可。  急降下の際に叫喚を発して降下するので注意すれば避けられる。  アルヒ・ラスカス  今回唯一の増援。皆様の指示に従う。使用スキルはヒールと解呪。  なお他の職員達は、下記人々の避難誘導で手一杯のため、皆様のいかなる要請にも応じられない。  人々  ロコの仇がいたからという理由で襲われた村の住民達。  それまでパニックになっていたが、ギルド職員達の避難誘導を受け避難中。  状況  シグモル火山帯の中でも辺獄に程近い場所に存在する村。  現地時刻は正午で快晴。現在魔獣達の襲撃を受け住民達は避難中。  皆様は調査目的で近くまで来たところ、魔獣達がこの村を襲う場面に遭遇し、救援に駆けつけた。  このため調査依頼は魔獣達の討伐へと依頼内容が変更されている。  以下簡易見取り図。1マスあたり10×10m。皆様は好きな場所よりスタートできる。重複可。  ↑北   ABCDEFGHI  1壁壁壁壁  壁壁壁  2※  家  ※家※  3壁熊※  ※熊※壁  4※  家 熊  ※~→避難先  5壁家    ※  6  家※ 熊家 壁  7壁 ※家 家  壁  8壁熊  熊※ 家※  9壁壁壁壁  壁壁壁  壁:村の防壁。高さ5mだが登れない。  熊:魔熊。  家:平屋の家屋。高さ3m程度。  ※:瓦礫。通行可。

マスターより

 道化師ロコが【魂禍】でも暗躍を始めました。  このシナリオでホムンクルスは登場せず、あくまでロコ配下の魔獣達のみが敵です。  避難先へ魔獣を向かわせることなく、全て撃破することができれば目標は達成されます。  戦闘中やその前に職員を呼んで何かをさせる行為は原則却下です。  使用できるものは装備や携帯品のみとなります。  ただ全体を俯瞰、ロコを警戒して魔獣達と戦わない、魔獣達を全滅させる前に住民達と関わろうとする、といった行動はマスタリング対象です。  ご不明な点がございましたら、出発36時間前まででしたらアルヒが答えられる範囲は答えます。

リプレイ

●開始
 上空を飛ぶ鳥型魔獣(以下『鳥』と略)の発した炎を受け、村にある建物は焼かれ、発した黒煙が陽光を遮っていく。
 その中を村人達は冒険者ギルド職員の誘導を受けて必死に走り、入れ違いに冒険者達が村の中へと散開して、侵入してきた鳥や熊型魔獣(以下『熊』と略)を迎え撃つ。
「ロコだと……? 記憶に無いからよく分からん」
 村の中央に陣取るサイラスは、これまで道化師ロコとの面識はなかったが、頭上を飛び回る鳥達には見覚えがあった。
「骨鳥なら知ってるぞ。此奴ら帝国小都市の……なんとか郊外にいた奴だな」
 正確にはヴェルターゼンという小都市だが、サイラスはその郊外で同種の魔獣と交戦した経験がある。
「それなら俺は対空優先だ」
 仲間達を支援するため、サイラスは鳥達との交戦を開始する。
 まずは比較的鳥達がまとまっている空間に向け、サイラスは岩砲を行使。
 サイラスのエーテルが砲塔や弾丸を作成し、砲塔より撃ち放たれた弾丸状エーテルが、宙で爆発を巻き起こす。
 爆発に巻き込まれた鳥達は、その威力をまともに浴びて身を裂かれ、血霧を撒いて墜落する。
 サイラスが鳥達を抑える間にナキルは天眼を駆使して、この村を襲う魔獣の動向を把握していく。
「オレは北東側にいる熊から叩くぞ!」
 そして戦術眼/BattleSenseを使い、ナキルは最適な行動を導き出す。
「村人達が避難した方向へ、魔獣は通さないし近寄らせないつもりだ」
 東には行かせないよう、ナキルはチャージングを行使。
 一気に加速したナキルは熊の1体との距離を詰め、破鎧砕3を行使。
 肉体を蝕むエーテルを纏った蒼剣アルサリアへと刺突の形で繰り出され、熊の身に突き刺さる。
 熊は血を撒いて身悶えし、ナキルに腕を振り下ろすも、既に行使した見切り2によって、その軌道を読んだナキルは真横に飛んで回避する。
「ロコめ……今度はここで悪事を働くとは!」
 ナキルの近くにいるアルベルト=V=シュタールシュヴェーアトは、この場所でロコがなした所業に憤りを隠さない。
「とは言え、今回はロコよりも魔獣の殲滅が優先だな!」
 その一方でアルベルトは自身の戦術眼から、この村で暴れまわる魔獣を排除することで、非難する村人達を守る結果につながるとの判断を下す。
 まずは1体ずつ着実に倒すべく、アルベルトはチャージングを行使。
 一瞬加速したアルベルトは、先程ナキルが攻撃を加えた熊へと一気に肉薄する。
 そのままアルベルトは雷神剣を行使。
 竜鉄の大太刀が落雷のように鋭く苛烈な一撃と化して振り下ろされる。
 斬撃を浴びた熊はその一撃で生命を断たれ、脇腹から胸にかけ鮮血を噴き、転倒する。
 その間にも、ライナ・フレイヴァルツとフロマーシュ・ダイヤドロップが村の北西方面に駆けつける。
「ロコ……か。相変わらず得体が知れないな」
 ――魔獣も放ったままだし、まだこの村に禍根を残しているのか?
 ライナがロコの意図を推し量る一方で、フロマーシュはロコがこの村にもたらした被害に怒りを見せる。
「ロコ……あの道化師がまた動いているのですね……自分の復讐に関係のない人を巻き込むなんて……!」
 フロマーシュから見ても、ロコの行動は復讐の範疇を越えている。
「マーシュ、準備はいいか? 魔獣を全て掃討してこれ以上の被害は出させないぞ」
 ライナの冷静な声を受け、フロマーシュは感情を鎮めて頷く。
「はいっ! そのためにも全力で戦い、ライナ様を始め、皆様をお守りして参りますのでっ!」
 フロマーシュは自身の務めを果たすべく、ライナの前に出て、眼前にいる熊に向けシーザーロアを行使。
 熊へと叩きつけられたフロマーシュからのエーテルが、熊の感情を刺激した結果、熊はフロマーシュへと突進を始める。
 それを見たライナは熊の側面へと回り込み、空間爆砕を行使。
 ライナより不可視の波紋が走り、熊に到達した瞬間、目に見えない爆発めいた衝撃が炸裂した。
 一気に拡散した衝撃波が熊の身を切り裂き、熊はその身から血をしぶかせて身悶えする中、熊へと肉薄したフロマーシュが鋼の大剣を滑り込ませ、その首筋を下から叩き斬る。
 その一撃で生命を失った熊はのけぞり、仰向けに倒れ込み動かなくなる。
 そんなライナ達の攻防を、フセイン ラファは近くにある家屋の中から視界にとらえていた。
「正直こういう戦闘はあんまり得意じゃないのだけど……ま、何とかするしかないわね」
 ラファは自身が防衛戦には不向きだと言いながらも、できることで魔獣退治を支援するつもりでいる。
 既にラファはエリアサイレンスを駆使して周囲の物音を遮断することで、周囲から自身を秘匿することに成功していた。
 そのままラファは村の南西方面にいる熊へと密かに接近していく・
 熊がライナ達の動きに目を向けたところで、ラファはその背後からフリーズボルトを行使。
 突き出したダマスカス鋼の暗針Reより氷の矢が射出され、熊の背に命中すると、あわせて行使した呪法強化の効果も相まって、解放された冷気が熊の身に絡みつき、その移動を阻害していく。
「うーん、キャスターなのに魔法が苦手なのはやっぱりちょっとあれなのかなぁ~」
 手応えを感じながら、ライナがそう呟くのと前後して、上空にいる鳥達が次々と叫喚を発した。

●殲滅
 急降下する鳥達が炎を放ち、地上にいくつもの火炎の花が咲く。
 冒険者達はそれぞれ回避や防御でこれを凌ぐも、着弾した家屋は炎に包まれた。
 鳥の炎を竜鱗の盾で防いだサイラスは、フェロモンで熊を誘引できないか試していた。
 それに釣られたのかは不明だが、南東方向から熊がサイラス目掛けて突進してくる。
「クマに関しては、ドラチャリで上にカチ上げるとか、かな」
 ――効果が半減しても、10m以上は飛ぶだろうし。
 頭上で旋回する鳥と、こちらに迫る熊を見比べたサイラスは、今の段階では熊の方が脅威だと判断しドラゴンチャリオッツを行使。
 射程まで迫った熊に向け、エーテル光を全身に纏ったサイラスが盾を構え、熊へと自身を射出する。
「これで地面に強かに打ち付けられればダメージ入るやろ」
 衝突の瞬間、発生した強烈な衝撃が熊の呼吸を詰まらせ、その身を後方へと吹き飛ばす。
 その近くでは、アルベルトとナキルが連携して別の熊と交戦している。
「魔獣を村人達の避難先に向かわせないためにも、ここで速やかに殲滅させる必要があるな」
「そうだな。上にいる骨鳥はオレの天眼で把握済みだから、殲滅そのものは難しくなさそうだ」
 アルベルトに天眼で得た情報を報せたナキルは、熊に誘いをかけるべく前に出ると、それに釣られた熊が急速に迫る。
「ここは複数の方角から同時攻撃が妥当だな」
「了解だ。アンタがオレの動きに合わせる形のほうがいいだろう?」
 アルベルトとナキルが短いやり取りを交わす間にも、熊が一気に駆け寄り、その腕をナキルへと叩きつける。
 ナキルは見切り2を行使して、その軌道を読むと跳躍して熊に空を切らせ、入れ違いにその下へ潜り込むように身を屈めたまま、チャージングを行使したアルベルトが熊との距離を一気に詰める。
「魔獣共め! ここで貴様達を殲滅する!」
 宣告と共にアルベルトは鋭撃2を行使。
 威力を重視した鋭い一撃が、アルベルトの大太刀より繰り出され、熊の胴を斬り裂いた。
 深々と胴を斬られた熊が血霧を噴いて後退すると、その頭上よりナキルが体ごと落下して襲いかかる。
「こっから先には行かせねぇ!」
 ナキルは落下する中で雷神剣/レグ・フルグスを行使。
 ナキルの剣が落雷の速度で縦に一閃して熊の頭を頭蓋ごと叩き割り、その命を断った。
 顔を割られ、絶命した熊が地響きを上げて倒れ伏す中を、ナキルは着地する。
 一方で村の西方面では、ラファが南と南西方面にいた熊達を誘導しながら、北へと疾走していた。
「ごっめーん、わざわざ行くより連れてきたほうがいいかなって思って~」
 ラファが声をかけたのは。ライナとフロマーシュ。
「というわけで、手伝ってくれるとありがたいかな?」
 ラファは相手にも行動を選ぶ権利があると思い直し、若干言い方を修正している。
 判断をライナやフロマーシュに委ねたラファの要請に、まずライナが応じる。
「もともと向こうにいる熊も倒す予定だったからな。マーシュ、そっちは頼むぞ!」
 ラファは超聴覚で頭上を飛ぶ鳥達の動きも警戒していたが、今のところ割り込んでくる気配はない。
「かしこまりました。全力献身で仲間を守ります!」
 ライナの指示に従い、フロマーシュはチャージングを行使してラファのもとへと急ぐ。
 そのままフロマーシュは全力献身を行使。
 誰かの守護を誓うフロマーシュの想いが顕現したかのように、そのままラファと熊との間に強引に割り込んだフロマーシュは、翼めいた何かで包み込むように、ラファを守る。
 直後、熊の振り下ろした腕が命中し、フロマーシュはダメージを負いながらもその場に屹立する。
「ありがとう。ここから先は私もヒット&アウェイで攻め立てるよ」
 ラファがフロマーシュに礼を述べると、熊に向け毒撃2を行使。
 熊の真横へ回り込んだラファは、光を纏った暗器を熊に突き刺し、肉体を蝕むエーテルを熊に纏わせて損傷を蓄積させる。
「これ以上の犠牲を出さないためにも、敵の侵攻を食い止めないと!」
 フロマーシュは超聴覚で鳥の動きを調べながらそう叫ぶと、眼前の熊を押し戻し、後方より迫る別の熊に向け衝撃刃3を行使。
 大剣が勢いよく振り下ろされ、その先にいた熊の動きが止まる。
 その顔と胸に朱色の線が走り、そこから鮮血を噴いて熊は体勢を崩す。
 フロマーシュが2体の熊を食い止める間に、ライナはその内の1体を射程に捉えていた。
「私たちの手で助けられる命は……必ず全て救い出す!」
 宣告と共に、ライナは魔糸3を行使。 
 蜘蛛糸のようなエーテルが熊に向けて射出され、熊の身に絡みつくと、回避を低下させ身動きを鈍らせていった。

●後処理
 鳥の掃討に移行したラファは鳥の群れを射程に捉え、豪風を行使する。
「このまま撃破といきたいところよね」
 呟きと共に、ラファの指定した空間へと光り輝くエーテルが急速に収縮し、爆散した。
 拡散した爆風が鳥達の身を引き裂き、宙に血霧を噴出させる。
 その間に眼前の熊を屠ったライナは心燃を行使して、自身の魔力を増幅する。
「これで終わりだ。一気に撃ち落とす」
 そのままライナは鳥に向け魔弾を行使。
 黒い炎めいた何かに包まれたライナより光球が撃ち放たれ、ラファの豪風を受けた鳥を貫いた。
 射抜かれた鳥は血霧を撒いて墜落し、地面に叩きつけられ絶命する。
「ライナ様には指一本触れさせませんっ!」
 フロマーシュもライナを守りながら、最後に残った鳥に向け衝撃刃3を行使。
 大剣が頭上へと跳ねあがり、不可視の衝撃が、叫喚を発して降下する鳥の身を打ち据えた。
 その一撃で生命を断たれた鳥は、血飛沫をあげて地面に叩きつけられる。
「空の敵は片付いたわ。残るのは地上にいる熊だけよ」
 ラファが周囲の空を見渡し、鳥の全滅を確認する。
 そして最後の熊を、ナキルとアルベルトが追い詰めていた。
「テメェもオレの武勇伝にしてやるぜ!」
 アルベルトの大太刀を浴び、深手を負った熊に向け、ナキルは宣告と共に紫電一閃を行使。
 ナキルの蒼い刀身が力と速度を兼ね備え、研ぎ澄まされた鋭い一撃と化して熊の首筋を叩き斬り、最後の熊を斬り倒す。
 その一撃で生命を断たれた熊は倒れ伏し、沈黙する。
 こうして魔獣達を殲滅した冒険者達は、そのまま戦後処理に移る。
「奴がこのまま何もしてこないとは思えない。どんな時でも警戒は最大限にしておくべきだ」
 ――奴もまた、エルフを。すべての種族を憎む者だからな。
 ライナは【呪輪】事件の時、ロコが垣間見せた憎悪を覚えていた。
 そのためライナはロコが再び現れる可能性を考慮し、超聴覚を駆使して周囲の警戒にあたる。
「負傷された方はいらっしゃいますか?」
 フロマーシュはライナの護衛に戻ると、仲間達に負傷の度合いを聞いて回り、ライナと共にヒールを行使して、治療も行っていく。
 ラファは人手が必要な場所を見かけると、自身に出来る形で戦後処理を手伝っていた。
 破壊された家屋の復旧。
 負傷した人々の治療。
 破られた柵の建て直しなど、やることは多い。
「犠牲になった方は何人いらっしゃるのですか?」
 アルベルトが村人達に被害状況を尋ねたところ、村は半壊状態に近く負傷者はいるものの、犠牲者は1名のみだという。
 その犠牲者は、先にロコが殺した人物だった。
「ところで彼はどのような経歴を持つ方だったのですか?」
 ――ロコの『敵』として殺された奴は、過去に何をしていたのだろうか?
 アルベルトが聞き出した話では、今回犠牲となった男は傭兵めいた経歴を持ち、各地を転々としていたらしい。
 その話の中でアルベルトが気になったのは、男が生前語っていたという話の1つだった。
 男は『義勇兵』として、犯罪者の巣窟と化した集落を滅ぼした、と。 
 アルベルトが村人達から情報を収集する間に、ナキルは焼けた残骸や撃破した魔獣の遺体を処理すべく後始末に奔走する。
 既に鳥達の放った炎は消し止められ、ナキルは仮の集積場を設けると、焼け落ちた家屋の残骸や壊れた家具などを運んでいく。
 なお魔獣の始末については、サイラスより処理を引き受けるという申し出があったので、冒険者達はサイラスに魔獣の処理を任せることにした。
「先に『コレ』を回収だな」
 サイラスはロコが殺したと思しき人物の骸のもとに近づくと、残留思念感応を駆使して残る思念を読み取り始める。
「感情は残り易いらしいし何か手に入るやろ」
 そうサイラスは呟く一方、入手できそうな情報はある程度見当がついている。
 ――どうせ迫害とか差別とかだろうな。思想や種族が違うだけで虐げること、よくあることじゃん。
 残留思念感応を駆使して読み取ったところで、サイラスは近くで負傷した村人達の治療に当たるアルヒ・ラスカスに、把握できた内容を伝える。
「後は熊とか骨鳥から軽めに素材が回収できそうならしておくか」
 ――熊なら毛皮に爪。薬の材料になるのもあるけど此奴はどうだろう?
 もちろん戦闘で荒らされた村の後片付けを終えたからと、サイラスはやることの優先順位をつけ、行動に移していく。
「犠牲者が最小限に抑えられたことは、不幸中の幸いだな」
 散乱する残骸を片付けながら、ナキルは自分を納得させるような呟きを漏らした。

●救助成る
 戦後処理にある程度目途がついたところで、冒険者達は村人達に後を任せ、帰還していく。
 今回道化師ロコが引き起こした事件は、ひとまず収束させることができた。
 だが皆様が考えている通り。
 今回の一件は周辺で立て続けに起きている事件の、ほんの一幕でしかなかった。

マスターコメント

 今回は避難先となる方角へ魔獣達を向かわせることなく、迅速に倒すことが求められていました。  その中で皆様は手分けして空と地上にいる敵に対処し、全て倒すことができましたので、目標は達成されました。  敵を全て倒した後も、情報収集や後片付けに動き回り、村へのアフターフォローも行われていましたので、プラスアルファの成果があったと見なし、大成功と判定いたしました。  MVPは空にいる敵の群れを釘づけにして、被害を抑えることに最も貢献された方を選出しています。  改めましてこのたびはご参加下さりありがとうございました。  また機会がございましたらよろしくお願いいたします。
ショートシナリオ

ショートシナリオ普通 報酬:標準6 / 4〜6人

2022年01月29日 02時07分32秒 公開

大成功

相談掲示板

  1. ライナ・フレイヴァルツ

    ライナ・フレイヴァルツ、キャスターだ。 皆よろしく頼む。 大森林でも暗躍していたロコがこちらの地でも活動しているのか。 ロコの仇というのが気になるところだ。 依頼の達成条件としては、「村にいる魔獣達を撃破する」ことだが…。 村には既に火が放たれて、その周囲には逃げ回る人々と空から人々を追いかけるロコの魔獣。 勿論全ての人を助けたいが、この魔獣を倒せるのは現状私たちだけだ。 職員は避難誘導にあたっているので、 私たちはそれを任せ戦況を把握し迅速に魔獣を倒すことが、多くの人を救う事に繋がるはずだ。

  2. フロマーシュ・ダイヤドロップ

    ウォーリアのフロマーシュ・ダイヤドロップと申します。 皆様よろしくお願いいたしますっ! あの道化師がまた動いたのですね… 復讐が絡んでいたとしても、無関係な人を巻き込むのは…! そんな人達を急いで助けるためにも、向かってくる魔獣を倒し、侵攻を防いでいなかいと! 魔熊の侵攻だけでなく、見取り図には乗っていない骨鳥の攻撃にも警戒して、どちらからもしっかりお守りしていけましたらっ!

  3. アルベルト・V・シュタールシュヴェーアト

    ウォーリアのアルベルト=V=シュタールシュヴェーアトだ。 よろしくな。 ロコめ・・・また自分の復讐に関係のない人を巻き込んでいるのか! とにかく魔熊を斬りまくって村人を救うぜ! 魔獣を全滅させて余裕が有ったら村人に「ロコの敵として殺された奴」がどんな奴で過去に何をしていたのか聞いてみようと思っているぜ

  4. ナキル

    「ナキルだ、よろしく頼むぜ!! ロコのやつ、また出やがったな…!って言っても、直接やり合うにせよ何にせよ 先ずは熊をぶっ倒す必要がありそうだな。 >アルベルト あぁ、確かに…そりゃ気になるな…前の情報を考えるとエルフに関係しそうな気もするが…。 >対熊 とりあえず、G4の熊から叩きに行くとすっかな。 避難先に素通りさせるワケにもいかねーし。」

  5. アルベルト・V・シュタールシュヴェーアト

    >対熊 俺はF4→F6→E8→B8の順に倒しに行く予定だ >骨鳥 残念ながら俺には空中の敵を攻撃する手段が無いからな・・・ 正直、他のメンバーにお願いしたいところだな

  6. ライナ・フレイヴァルツ

    では上空の敵はなるべく私が担当するようにしよう。 初期位置はB4からスタートさせて頂く。 ナキルとアルベルトさんの討伐順から見て、私は西側から攻撃していった方が良さそうだ。 マーシュにも来てもらえればバランスは良くなるはず。 鳥がいない間はB3の熊を優先し、状況を見てB8の熊。 討伐次第東の方向へずれていく形だ。 それと現状ヒーラーはアルヒさんのみとなるが、 単独行動させるわけにもいかないから誰かにつけるのが良いだろう。 私もマーシュもヒールを持っていくだろうから、西側の回復手段は心配はなさそうだ。 後はアルベルトさんとナキルの初期位置にもよるが、二人をカバーできる位置にアルヒさんが居てもらえれば戦域全体に回復は行き届くと思いたいな。

  7. フロマーシュ・ダイヤドロップ

    接近戦が強い熊とライナ様が正面からぶつかるのは危険が伴いますし 大丈夫でしたら、私もB4から開始して、ライナ様をお守りしていけましたらっ! 回復の為のヒールはもちろん、 衝撃刃が届けば鳥型の敵にも対応できそうですので、そちらも念のため用意して参りますっ。 もし届かないようでしたら、攻撃の方は熊の方を狙いますっ。 また、アルヒ様が狙われても危険ですから、皆様共々 シーザーロアやカバリングで引き付けたり庇ったりしてお守りしていきますのでっ。

  8. No.8

    サイラスだ、よろしくなー 空が薄めなら対空担当しよか。まあ本職より火力はないが杖あるし。 E5辺り開始して、南の空側にいる可能性あるしそちらに回ろうかと。 自己回復あるから近場の熊の攻撃受けたりしつつ地上はF6とか削ろかと。 ところでナキルさんのはG3でええのよな?

  9. フセイン ラファ

    ラファよ 見知った顔があったからつい飛び込んじゃった♪ とりあえず顔出しだけ

  10. ナキル

    「>フセイン お、よろしくなー! >サイラス あぁ、まぁそっちも必然的に対処できると思うけど G4スタートのつもりだったけど、アルベルトがF4から周るなら G3で動くとするか。 その後は手近なヤツから叩きに行くのと、衝撃刃で多少上空へも仕掛けるとするぜ。」

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0