【人馬】赤眼の魔獣

七海真砂

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シナリオID:1815

オープニング

 ケンタウロス襲来の報に、南部鎮守都市ヴィントは揺れていた。
 ただの略奪に留まらない大規模な侵攻が行われているのだ。明らかに普通の状況ではない。
「何かが起こっているのは間違いないだろう。しかし、一体何故このような事になっているのか……」
 バルディオンは思わず呟くが、答えを知る者は誰もいない。
 状況を把握するためにも、東部を偵察する部隊を派遣せねばなるまい。だが普通の兵士には荷が重すぎる。バルディオンの脳裏に浮かんだのは、冒険者の存在であった。

「ふーむ」
 東部を偵察する者を募るという話を聞き、クーネさんは少し考えこんでいるようだった。
「ケンタウロスなど全て倒してしまえば良いのだろうが……しかし……」
 帝国東部で一体何が起こっているのか、クーネさんも気になるのだろうか?
「………うん、決めた。その偵察、私も一緒に行こう」
 一つ頷くとクーネさんは集まっていた冒険者達に向かって、そう言った。

 こうしてヴィントを発った偵察部隊は、ケンタウロスとの接触を避けながら東へ進んだ。
「この森の先あたりから来たようだが……なんだ?」
 ずるっ、ずるっ、ずるっ。
 何かを引きずるような、這うような物音が聞こえてくるのに気付き、一行は警戒を深めた。音はどんどん大きくなるばかりで――やがて、それは姿を現す!
「グルオォォォォォ!!」
「これは……トカゲ、か!?」
 それは巨大な黒い塊にも似た何か、だった。だが曖昧な位置に残った二つの赤い眼と口元、その後ろに生える尾の形にトカゲと思わしき名残りがある。
 吼えた魔獣の口元からは炎が迸り、冒険者達に向けて吐き出される。すかさず、魔獣は突進すると回避する間を与えず尻尾を振り回して強烈に叩きつけた。

 強力な魔獣だ。
 だが、ここで足止めされて偵察ができないまま、帰還することなどできない。
 ならば。
「……」
 一部の冒険者が、素早く視線を交わす。そして臨戦態勢に入りながら仲間達に向けて告げた。
 ここは任せて先に行け、と。

解説

 偵察部隊の中で、この場に残り、魔獣と戦うことを選んだ皆さん、ようこそ。  敵は五メートル程の大きさの、黒いトカゲっぽい魔獣です。  戦って戦って戦ってください。  オープニングにクーネさんが登場していますが、クーネさんは先へ進む組と一緒に行くので、このシナリオには同行していません。

マスターより

 こんにちは、七海真砂です。 「ここは任せて先に行け」って言ってみたくないですか?  今回は、そういうシナリオです。  それでは、ご参加をお待ちしています。

リプレイ

「こいつ……トカゲか? っはー、でけぇトカゲだなぁおい」
 吐き出された炎を転がって回避したナハシュは、蠢く黒い塊に残るいくつかの特徴に、やれやれと息をついた。自分の身長の倍以上はあろうかという巨体は、トカゲにしては随分と大きい。
「まあ、良い素材が来たってことで」
 敵(素材)の足止めは任せとけ、ってことでいっかと回復のための燈花を浮かべるサイラス。頷いて、アルベルト=V=シュタールシュヴェーアトは仲間達の方を一瞥した。
「みんな! ここは俺達に任せて先に行け! 俺達もすぐに追いつく!」
 そのまま竜鉄の大太刀を抜くと、瞬間的に加速したアルベルトは魔獣へ落雷のように鋭く苛烈な一撃を叩き込んだ。
 頷き返し、仲間達が進んでいくのを見届けながらヒールで回復したサラは、魔獣と彼らとの間に立ち塞がるように位置取る。
「ここから、先には、行かせない、の……」
 偵察は、なんとしても成功させなくてはいけない。皆を追わせる訳にはいかなかった。
「あれは目か? なら――」
 積極的に狙っていこうと、露出した赤い部位目掛けてセリオス・オーガストは竜骨の強弓を構える。気付いた魔獣は微かに身をよじらせて直撃を避けたものの、すかさずサラが風のエーテルを纏った矢を、反対の目に向かって放つ。
「これで終わりじゃねーんだな」
 サラの矢がまなじりに突き刺さった瞬間、ナハシュの死齎刃が眼球を貫いた。
「うるるぉぉぉぉ……!!」
 呻くように悲鳴を上げる魔獣。その死角へ素早く回り込んだアルベルトが鋭い一撃を叩き込むと、反対に魔獣の健在な眼のすぐ前にサイラスが立つ。
「うるるぉぉぉぉ……ってか?」
 魔獣の咆哮を真似して嘲るように笑いながら、シーザーロアを叩きつけるサイラス。ギョロリと動いた目が、その動きを追いかける中、密集を避けるように側面に回り込んだキーゼが竜骨の魔弓を射た。
 しかし、それを意に介さず魔獣はサイラスのいる方に向けて火炎を吐き出す。間を置かず、そのまますぐ体を振りかぶって尻尾を叩きつけていく魔獣へ、キーゼは再び弓を構えた。
 今度は、魔力を込めて矢を放つ。
(硬い鱗は矢の威力を削いだようですが、かといって、魔力を込めた矢が特別に効果的という訳でも無さそうですね)
 攻撃の手応え、その反応からデータの収集と分析を試みたキーゼは判断する。どちらかが効果的となるような、弱点らしい弱点は持っていないと言い換える方が適切だろうか。
 魔獣の防御に穴が無いのであれば、キーゼが本来持つ適性を加味し、魔力を込めた矢を放つ方が良いだろう。そう考え、新たな矢にエーテルを込める。
「ジュジュ、あんまり、わたしから、離れ過ぎないよう、に、気をつけ、て」
 サラの言葉に頷き返し、エーテルリンクを結んだジュジュが適度な間合いを保ちながら攻撃を繰り出す中、サラも重力波のエーテル力場を収束させた矢弾を放つ。炸裂したエーテルが魔獣へ纏わりつく中、更にナハシュの破鎧砕が繰り出され、魔獣の身体を蝕んでいく。
「はああああっ!」
 そこに叩き込まれたアルベルトの鋭い一撃に、魔獣の口元から呻きがこぼれる。まるで歯ぎしりするかのように鈍い音が漏れたそこが、燈花で傷を癒すサイラスに向かって大きく開け放たれると、ちろちろと赤い火炎が放たれる前触れが現れる。
「そこだ――」
 その瞬間、飛来したのは破壊力と速度を増大させたセリオスの一射だった。光と共に力を貯め込んだそれは、一気に解き放たれ魔獣の喉へ突き刺さる。
「ぐっ、ぐる、ぐろっ……!」
 もどがしそうに身を震わせる魔獣だが、矢が抜けることはない。おそらく、思うように火炎を吐き出せないのだろう。口を天に向けて開け放ったまま体をよじらせている。
「そういう事なら、尻尾の方も切り落としてみる価値がありそうかな」
 目を狙い、口内を狙い、効果を挙げられているのなら。次は尻尾の切断が良いだろうとサイラスは、魔獣の素材を自ら加工して作り上げた刃を構え、鋭く叩き込んだ。
「トカゲ型ですし、尾を他に活用してくる可能性もあるでしょう。先んじて切断してみる価値はありますね」
「よし、狙ってみるか」
 単なる攻撃の手段というだけに留まらず、他にも何か仕込み――たとえば、故意に落とした尾を囮に逃亡を試みるなど――がある可能性も否定できない。それを阻止する事にも繋がるかもしれないとキーゼが言及すると、出来るだけ速やかに尻尾を落とせるよう、ナハシュはその動きに注視する。
「そらっ!」
 魔獣が体を揺らし、サイラス目掛けてそれを繰り出した瞬間、ナハシュは竜牙の暗針をその根元に突き立てた。そこに反対側から素早くアルベルトの一撃が振り下ろされ、裂傷が広がっていく。
「ぐるおおおおっ!」
 その時、口内の炎で矢を焼き尽くした魔獣が、再び火炎を撒き散らしてくる。正面側にいたセリオスは後ろに向かって飛び退きながら、魔獣の無事な方の目を狙った。
 破壊力を増したその一撃が、瞼を縫い付けるようにして赤眼へと突き刺さる。ぎりりっと歯ぎしりのような音が響く中それでも、魔獣は動きを鈍らせることなく、冒険者達に向かって攻撃を重ねようとしてくる。
(視覚だけではなく……気配を辿って攻撃してきているのか?)
 両眼を潰されても標的を定められるのは、それ以外の感覚で補っているからだろうか。しかしサラの矢で行動を阻害されている事もあってか、精度は決して高くはないように見受けられた。
「っしゃ、貰った!」
 その間も尻尾を狙い続けていたナハシュの一撃に、魔獣の尾が千切れ飛ぶ。
 立て続けに浴びた攻撃に、体の一部を失い続けたことで感覚がじわじわ狂っているのだろうか。惑うように身じろぎした隙をキーゼは見逃さなかった。傷口を更に抉るかのように、尾の根元目掛けて矢を飛ばすキーゼだったが――。
「! 何か生えて……!」
 その矢を、弾くようにしながら、魔獣の尻尾が再び生えてくる。
 伸びた長さは先程までの尻尾よりも短い。だが――!
「うるるおおお!!」
 魔獣が吼える。吐き出された炎と共に、振り回された尻尾が一気に間近にいたナハシュを襲う。回避に集中していたナハシュも、これには虚を突かれた形だった。
「おいおいおいおい、復活するんかい!」
 それでもツッコミを入れらられる程度に余裕があったのは、復活した尻尾には先程までの威力は無かったお陰だろう。どうやら復活するとはいっても、完全に元通りとはいかないらしい。
「トカゲ型ってそういう事かよ……完全に封じられないなら、複数相手に撒き散らしてくる炎を封じる方を優先するか?」
「そうだな」
 サイラスの提案にセリオスが頷き返す。サラは、「わたし達、は、足元を狙って、みようか」とジュジュに目配せしながら、新たな矢を魔獣の足らしき位置に向けて放った。巨体の割に小回りの利いた動きをする魔獣の機動力を削げれば、攻略しやすくなるはずだと考えたからだ。
「足――かどうかは解りませんが――効果はありそうですね」
 蠢く黒い塊の下部を足と呼べるかは謎だったが、ジュジュから放たれた魔法の刃や、サラが重力波のエーテル力場を収束させて放った矢を食らった魔獣の動きは、ゆるやかに緩慢になったように見える。
「鱗の無い口内はダメージを与えやすい部位でもありそうです。狙っていきましょう」
 キーゼは分析すると、自らも矢を番える。
 そういう事なら、とアルベルトは敢えて魔獣の背を強打した。衝撃に一瞬、顎先が上がり口に隙間が開いた瞬間を見逃さず、キーゼの矢が飛ぶ。
「ぐる、るぉぉ……!!」
 再び炎を封じられた魔物は呻きながら尻尾を振り回すが、先程までとの間合いの違いも災いして冒険者達には当たらない。今だ、と畳みかけるかのようにナハシュが破鎧砕を繰り出し、セリオスが破壊力の増した矢を魔獣の喉奥へ突き刺していく。
「ジュジュ、跳ぶよ……」
 突進しながら距離を詰め、尻尾を叩きつけようとしてくるのを見たサラは、母蜘蛛糸のロープを伸ばしながら上に跳ぶ。その方向への回避は、魔獣にとっても想定外だったのだろう。尻尾は空振りして地面に叩きつけられる。そこに、サイラスの刀が突き刺さった。
「ぎるっ、ぐぁ!」
 口からの火炎を封じられ、尻尾も刃が突き刺さり思うように動かせない。じたばたもがくように蠢く魔獣だったが、
「魔獣め! 貴様を倒す!」
 そこにアルベルトが大太刀を構えると、鋭い動きで魔獣の口内へ叩き込んだ。力を込めたその瞬間、刃が喉を突き破って……裂ける!
「……………!!!」
 声にならない咆哮と呼吸が魔獣からこぼれる。それでもなお、動きを完全には止めない魔獣の胸部目掛けてキーゼとサラ、セリオスの矢が立て続けに飛び……魔獣はうつ伏せになりながら倒れ込んだ。

「……息絶えているようだな」
 尻尾が再生するような魔獣だ、どのような動きを見せるかわからない。慎重に近付き、確かめるセリオスだったが、その呼吸も鼓動も完全に止まっており――仕留められたようだ、と大きく息を吐き出した。
「食ったらうめぇのかな、これ」
 こういうデカいのはケンタウロスにとっても害獣だったりするのだろうか……調理の仕方で食べられるのなら、活用の仕方もありそうなもんだが、と思わず呟いてしまうナハシュである。
「ま、どうでもいいか」
「いいのか? あ、でも尻尾は俺にくれ。素材にしたい」
 試すなら新鮮なうちがいいぞと言いつつ、さっき千切れ飛んだ尻尾を拾いに行くサイラスである。
「偵察の、人たち……ちゃんと、行けたか、な……」
 サラは皆が向かった方を見やる。
 今のような戦いを繰り返すのは難しいかもしれないが、まだ他に魔獣がいるのであれば、加勢はできるかもしれない。いずれにせよ、合流してから帰還すべきだろうと、仲間達が向かった方へ進み始める。
 ――しばらくして。見えてきた一団は、見覚えのある仲間達のものだった。どうやら偵察は無事に完了したらしい。
「魔獣を強化する実験、ですか」
 どうやら、そのようなものが行われているらしいと聞いたキーゼは成程と唸った。
 先程の魔獣のあの外見は。微かな面影だけを残して変容した姿だったのかもしれない。
 放たれてきたあの攻撃も人工的に強化されたもので。魔獣の尾が再生したのも、実験によってトカゲの持つ能力が強化された結果だったのだとしたら――?
「あのような魔獣を、一匹のトカゲから何度でも作り出せる? いや、しかし……でも、そうなのだとしたら……」
 とんでもない事ではありませんか、と吐き出すキーゼの傍らで、アルベルトも、サイラスも、サラも、セリオスも、ナハシュも、言葉を失うのだった。

マスターコメント

 足止め成功、撃破成功! です!  お疲れ様でした!
ショートシナリオ

ショートシナリオ難しい 報酬:標準6 / 4〜6人

2022年02月10日 10時44分41秒 公開

大成功

相談掲示板

  1. キーゼ

    さて、よろしくお願いします。 あと一人参加すれば成立、ですかね ひとまず整理すべき敵の情報としては ・体躯は五メートル程の大きさ(ほぼ1hex分相当) ・巨大な黒い塊にも似た何か(トカゲっぽい) ・曖昧な位置に残った二つの赤い眼と口元 ・その後ろに生える尾の形にトカゲと思わしき名残り ・口元から炎を吐き出す ・突進可能 ・尾の振り回し攻撃 このぐらいですかね。 知能ベースはトカゲが基準でしょうか? あとは、トカゲの特色を残している、となると。尻尾を犠牲に逃げる、あるいは攻撃に用いる、という転用も可能かと。 少々情報も足りませんからね。単純かつ分かりやすく、抑えと攻撃、補助に分かれるのが無難かもしれません。

  2. サラ

    えっと、シューターの、サラ、です。よろしくお願い、します。 人数、揃った、ね。 ウォーリアとシューターが2人ずつ、シーフとヒーラーが1人ずつ、だよ。 トカゲさんぽい魔獣、なら……尻尾切りは、弱体化を狙えるかも?早めに切るのも、良いかもって、思う、よ。尻尾の再生は、力、使うし……。 後は、眼を潰したり、口をロープか何かで、塞げたら、良いのかな。 わたしは、付与攻撃が得意、だから、後ろから攻撃して、弱体化を狙う、つもり。

  3. No.3

    サイラスだ、よろしくなー とりあえずシーザーロアで注視乗せて魔錆持ち込もうかと。物理型多そうだし、シューターだと撹乱の命中、重撃の回避、ハーツなんかのスリップだから被らんやろと。

  4. セリオス・オーガスト

    ・・・ん、シューターのセリオスだ、よろしく頼む トカゲだからな、尻尾切手身軽になって逃走とかもあるからサイラスの言う通りBSで縛りつけて逃がさないようにしておいた方がよさそうだ サラのほうが弱体化だから俺はかぶらないようにスリップダメージのほうを付与するか

  5. ナハシュ

    シーフのナハシュだ。今回はよろしく。 言われてる通り情報少ねえしな、基本的に火力、遊撃、補助で別れる形で異論ない。 トカゲのしっぽ霧は単純にありえそうだ。ササッと尻尾を切るなり、BS等で阻害を与えるのも賛成だ。 その上であんま普段こういうことを言いたくねえんだが、スリップや物防低下は俺が持って行ってもいいかな!というのも、もともと俺は付与よりのパッシブをとっているのでセリオスやサイラスの方が単純に火力が高い。倍近く違う。 どう考えてもあんたらが殴ったほうがダメージが出るし、俺ぁ遊撃や弱体化はできても火力を兼ねるのは単純に役不足だと思う。

  6. キーゼ

    では、こちらも後方起点になりますかね 回復はもちろん持ち込みますが、あまり回復量には期待しないでください。基本的にそこを重視していないビルドになりますので。

  7. No.8

    取り急ぎ一応攻撃にはした

  8. セリオス・オーガスト

    ん、では火力重視に変更しておく

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0