【魂禍】探しモノは何ですか
革酎
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シナリオID:1736
オープニング
一年を通して温暖な気候に恵まれているシグモル火山帯。
大規模な噴火は観測されていないが、降灰が多く、お世辞にも生活に適した土地とはいえない。それでもこの地に未だ多くのひとびとが居住しているのは、ここが神の地であると信じられているからだろう。
多くの町、多くの村、多くの集落は神殿による統治のもと、神徒と呼ばれる授恵者を中心とした武力組織によって守られている。
神徒の力は絶大で、近隣に出没するクリーパーや魔獣等は難なく蹴散らし、ひとびとの生活に多大なる安定性をもたらしていた。
ところが年の瀬が押し迫ったある時期、辺獄と呼ばれる不毛の地に近い村々や集落の一部が、謎の戦闘集団によって蹂躙されるという事件が相次いだ。
それらの地に常駐していた神徒の戦士達は当然ながら迎撃に打って出たが、敵の数が多い上に、妙な力を具えた授恵者と思しき強者には相当に手こずり、結果として襲われた村や集落に被害が出る有様だった。
このままでは更に破壊の波が拡大するばかりである。
その地域一帯を任されている双子の神徒サジェルとルデラの姉妹は、冒険者ギルドに支援要請の申し入れを頼み込んだ。曰く、謎の戦闘集団を共に追い払ってくれる冒険者を募集したい、と。
シグモル火山帯の海沿いの街ブルアスの冒険者ギルド支部。
その受付カウンターに、革鎧を着込んだ長身の美女がひとり。彼女の名は神徒ルデラ。最近、自身が管轄する村や集落を襲う謎の敵に対処してきたが、どうにも手が回らないとして、冒険者ギルドに支援要請を申し入れているところであった。
「その武装集団は、どんな連中なんです?」
若い受付嬢プリエッタ・カリーが尋ねると、ルデラは何ともいえぬ表情で小首を傾げた。
「それがどうも、よく分からん連中なのだ。やたらと重武装な輩が大半なのだが、指揮官は随分と軽装で、しかも妙な髪型だった。おまけに十代半ばの年若い少年も居たのだが、こちらは臆病そうな顔の割には、やたらと戦闘力が高い。重武装の連中はそうとは思えなかったが、指揮官と少年のあの力量は間違い無く授恵者だ」
それも相当に熟練の恐るべき強敵だ、とルデラは溜息交じりに語った。
更に曰く、この連中は何か、或いは誰かを探している様子でもあった。時折、アンはまだ見つからないのか、といった様な意味の声が飛び交っていたことからも、この推測は間違っていないだろう。
ただ単にモノ探し、或いはひと探しをしているだけなら捨て置けば良かったのだが、この戦闘集団は捜索対象をシグモルの住民が匿っているのではと邪推し、そこかしこの村や集落の住宅を破壊し、土地を根こそぎひっくり返す様な勢いで蹂躙しまくっているのだという。
流石にこれは見逃すことなど出来ず、ルデラは姉のサジェルと共に立ち向かったのだが、いかんせん敵の数が多く、しかも指揮官と少年の相手をするだけで手一杯となり、とてもではないが連中を完全に追い払うことなど出来ないのだという。
「承知致しました。では冒険者募集の告知を出しますね。そんな酷い連中、とっちめてやりましょう」
プリエッタの義憤に満ちた声に、ルデラは宜しく頼むと頭を下げた。
●暗殺師と少年
チェイ・ツァンウは傍らの少年と共につい先程、破壊の限りを尽くしたばかりの集落を後にした。
襲撃の際、当然ながら神徒の下級戦士隊が迎撃に出てきたが、チェイと少年、そしてチェイの点穴打術で身体能力を強化された帝国過激派の戦士達にとっては、取るに足らない雑兵共であった。
「んー……結局ここにも、アンは居ませんでしたネェ」
ちょび髭を人差し指の背で撫でながら、チェイはいよいよ困ったぞと眉間に皺を寄せた。
傍らの少年はというと、ただただ怯えた様子で全身を小刻みに震わせている。この少年がつい今の今まで、まるで何かに取り憑かれたかの如き勢いで集落を襲っていたなどとは、知らない者が見ればきっと想像も出来ないだろう。
「さて次はどこを探しましょうかネェ。ワタクシが決めても良いデスガ、たまにはオノショタ様がお決めになっても良いんじゃないでしょうカ」
薄ら笑いを浮かべるチェイ。
オノショタと呼ばれた少年はびくっと肩を大きく震わせ、恐ろしいものを見る目つきでチェイを見上げた。
このオノショタというのは、チェイが勝手に付けた呼び名である。巨大な戦斧を駆使する少年、という意味合いで、オネショタからの連想で半ば駄洒落的に命名したらしい。
しかし少年オノショタはひたすら怯えるばかりで、チェイの言葉には明確な反応は返さない。仕方が無いとばかりに、チェイは地図を開いて次なる襲撃先を適当に決めた。
「まぁどの道、虱潰しに探す必要がある訳ですし……さくっと決めてしまいまショウ」
どうやら次なる捜索地は、簡単に決まった様だ。
チェイは休憩に入っている帝国過激派の戦士達に呼びかけ、進軍を再開した。
●降臨
後の歴史書に“辺獄戦役”と記されるシグモル火山の異変は、その日初めて記録の上に登場した。
しかし、その前兆は既に表れた後――。
「聞いての通り、シグモル火山の地下、“辺獄”と呼ばれる地にクリーパーが大量に現れ、魔獣と争っている。このクリーパーは、殺した相手の魂を喰らい、自分の力に変えてしまう厄介な力を持つ。クリーパーが魔獣と争うのは、その魂を我が物とする為だ。放置すれば今にも地下を平らげ、地上をも貪り尽くす程の怪物となるだろう。元来コイツは、私が封じていた存在なのだが――」
さる冬の日、幾つかの仕事が冒険者ギルドに依頼されたことを、歴史的な事件として当地のギルド員が伝えている。
その理由は、依頼主が神様だったからだ。
「倒さず封印した理由は単純だ。奴は私でも倒し切れなかった。だから封じる他なかったのだ。ところで、肝心の依頼内容だが」
少女の姿をした火神は口元に弧を描き、ことも無げにこう続けた。
「このクリーパーを、倒して貰う。最終的にはな。だが、方々の妙な動きも無視出来まい。従って、まずはこれら全てに対処し、戦果を挙げて来い……期待しているぞ?」
解説
マスターより
リプレイ
シグモル火山帯は、西側が海に面している。
海岸沿いには数多くの人里や町などがあるが、ブルアスもそれら沿海の町のひとつである。このブルアスの冒険者ギルド受付ロビーで年若い受付嬢プリエッタ・カリーは何枚もの地図を開き、隣の応接卓と往復を重ねていた。
双子の美貌姉妹サジェルとルデラが募集した冒険者達に、姉妹が手を焼いているという謎の戦闘集団の足跡を調査して貰って、次なる襲撃先をある程度絞り込む為であった。
サジェルもルデラも神徒であり授恵者でもあったが、戦闘能力だけを見れば今回依頼を引き受けた冒険者達よりも幾分劣る。
それでも彼女達の土地勘や周辺地理知識は敵を捕捉する為には絶対に必要であり、この姉妹の協力無くして依頼達成は見込めないだろう。
「ふむ……こうして具体的に図示すると、大体次の襲撃先が絞り込めてくるな」
卓上の何枚もの地図を交互に見比べながら、ベルク・オスマットは腕を組んだ。
その傍らでユズがサジェルとルデラから、蹂躙された村や集落の襲撃日を地図上に書き込んでいる。場所と日時を明確にすることで、敵の移動ルートが分かる。移動ルートが分かれば、次に向かいそうな場所をある程度推測することが出来る。敵も馬鹿ではないから、一度襲った村や集落を再度手にかける様な二度手間はしないだろう。
「確かにルートは出鱈目……でも、連続性は、ある……次に襲われるのは、この予測円の中……」
人数は決して少なくないから、敵が選択するルートもある程度絞り込むことが出来る。次に襲われる候補は三つにまで限定することが出来た。
「敵はどんな戦法、戦術を取っていたか教えてくれますか?」
それまで地図を覗き込んでいたロイ・アウレアが顔を上げると、サジェルとルデラは異口同音ながら大体似た様な説明を口にした。
一方は軽装の中年男で暗器と点穴打術なる接近戦を駆使していた。もう一方は十歳過ぎぐらいの少年で、戦闘直前までは随分怯えていたが、いざ戦いが始まるとひとが変わった様に戦闘狂と化す巨大戦斧使いという話であった。
「辮髪っぽい髪型……点穴打術……ちょび髭……やっぱどう考えても、あのちょび髭おじさんだよね……」
アルマ・ヴァレンタインが露骨に嫌そうな顔を見せた。頭の中に、よく知っている名前が何度も浮かんでは、消えた。
「絞り込めたんなら、さっさと行こうぜ。今も連中はどんどん進んでるんだしさ」
窓の外を眺めていたハヤト=ガラン=ヴォルファングが、仲間達に視線を戻した。当初ハヤトは、
「美人姉妹に頼まれちゃ嫌とはいえねぇもんな」
などと随分浮かれた様子を見せていたが、敵の移動ルートから予測襲撃ポイントが絞り込まれてゆくにつれ、その眼光は本来の鋭さを回復しつつあった。矢張り傭兵団長、やるべきところはやる、といったところか。
「おねーさん方、一緒に来てくれるかな? 敵は多いから、こっちも人数揃えておきたいしね」
アルマの申し入れを、美女姉妹は快諾した。寧ろ、最初から一緒に行く気満々だったらしい。
余談だが、薄着の戦闘衣を纏った美女姉妹のスタイル抜群なボディラインを、この依頼期間中ずっと拝むことが出来るとなって、ハヤトが尚一層機嫌が良くなったという事実を受付所プリエッタはしっかりメモに書き留めておいたという。目的はよく分からない。
それは兎も角、一同が冒険者ギルドを出ると、すぐ隣の厩舎ではエヴァン・ピオネロとハルハン・ツァガーンナルが人数分の馬に鞍を乗せ、手綱をかけ終えたところであった。アルマやハヤト、エヴァンが連れてきた黒汗馬達も、それら馬影の中でおとなしく主の登場を待っていた。
他の馬は全てルデラがプリエッタに依頼して用意させたらしい。
「先頭はボクとロイで敵を警戒しながら進むことにします。で、良いですよね?」
ツァガーンナルのこの台詞の最後はロイに向けられたものであった。ロイは頷き返しながら、懐で眠っていた相棒の栗鼠ポーラを自身の肩に乗せ、その場で分身させていた。
「では、ぼくは中列辺りを進みます。初手に大技を叩き込む為にも、接敵したら早めに馬を降りて準備に入ることも忘れない様にしなければいけませんね」
エヴァンが軽やかな所作で鞍上に飛び乗り、慣れた手つきで手綱を握った。他の面々も次々と馬上のひととなり、いよいよ出発の準備は整った。
●奇襲
追跡は、驚く程の順調さで進んだ。
ロイとツァガーンナル、そしてユズの超聴覚で、前方からの暖かい空気に乗ってくる音という音を片っ端から拾い、一方でハヤトの超嗅覚が敵の得物に付着した血臭を追った。
更にエヴァンの超視覚も余計な情報を削ぎ落し、敵集団追跡の一助となった。超聴覚や超嗅覚ではどうしても確定出来ない情報は、大体エヴァンの目で最終の取捨選択に至るという手順であった。
途中アルマとロイで地図を何度も確認し、美女姉妹の周辺土地情報を加味して、この人数だからこそ通行可能な近道を通るなどして、徹底的に時間を短縮した。
ロイが放った栗鼠とその分身による周辺索敵も大いに威力を発揮した。途中で魔獣やクリーパーに捕捉されてしまうと、突破戦で余計な時間を消費してしまう。だが栗鼠とその分身が事前に邪魔者の位置を把握し、ロイに視覚情報として伝達することで、遭遇を避けることが出来た。追跡戦のあらゆる基本を徹底した恩恵といえるだろう。
やがて彼らの努力の甲斐もあって、一行は標的たる敵集団の背中を捉えることに成功した。冒険者ギルドを出発して、僅か三時間後のことであった。
「この方面で正解だった、という訳か」
ベルクは鞍上で地図を開きつつ、遥か前方の荒れた馬車道の向こうに見え隠れする一団の影を、じっと凝視した。人数はおよそ30。間違い無く、この近辺を蹂躙し続けている件の戦闘集団であろう。
思わず、奥歯を噛み締めるベルク。あの連中が帝国兵であることは、エヴァンの超視覚から得た情報で、ほぼ間違い無かった。装備、隊列、行軍歩法のいずれをとっても、帝国で訓練された者達のそれであることは疑いの余地が無い。
事が片付いたら、サジェルとルデラに詫びなければならない――ベルクは渋い表情のまま、より一層奥歯を噛み締める力を強めた。
更に距離を詰めてから、敵に気付かれないぎりぎりの位置で馬を降りる。馬蹄を響かせてしまってはこちらの接近を捕捉される可能性が高く、そうなってしまっては先手必勝の奇襲は不発に終わるだろう。
如何にして最初に大打撃を叩き込み、敵の数を減らせることが出来るか。
勝負は、その一点に尽きるといって良かった。
「やっぱり、ちょび髭おじさんだったよ……生きてたんだね」
エヴァンからの視覚情報を事細かに聞き出したアルマは、複雑な表情を浮かべた。まだ生きていたのかという嫌悪感と、今度こそはっきりした形で決着をつけてみせるという気合が、頭の中でぐるぐると渦巻いていた。
ベルクとハヤト、ロイが並んで走り出し、馬車道沿いの岩場の陰から陰へと身を隠しながら敵集団の背後へと近づいてゆく。
残りの面々は馬車道を大きく迂回しながら、駆けに駆けた。横合いから最初の一撃を喰らわせ、その後は接近戦メンバーで一気に距離を詰めるという作戦だった。
数分後、件の戦闘集団は大混乱に陥った。
まずエヴァンが仕掛けた巨大火力の魔術が炸裂し、30人程の戦士のうち、およそ半数が薙ぎ倒された。魔術師の面目躍如、渾身の一撃である。
あの戦闘集団はひと探しか何かの為に、相当強引に各村や集落を荒らして廻り、蹂躙を重ねた。強引な相手にはこちらも強引なまでの破壊の嵐を叩き込むのがベストであろう。
その直後に背後から迫っていたハヤトとベルクが敵陣内へと猛スピードで突入してゆく。ロイは敵集団の鼻先に跳び出し、進行方向を阻害する位置から鏃の雨を叩き込んだ。
三人はアルマが事前に仕掛けた蒼白い光の効果で、いつも以上の戦闘力を発揮している。
逆に、残り半数となった帝国兵共はハヤトとロイの至近と中距離双方からの攻撃に翻弄され、思う様に陣形が組めない。
更にそこへ追いついてきたツァガーンナルとアルマが、辮髪男の対処に入った。
辮髪男、即ちチェイ・ツァンウは流石に冷静ではあったが、直後にアルマが仕掛けた光縛封に封じ込められ、早い段階で他の兵力と分断される格好となった。
●暗殺師の脅威
サジェルとルデラも戦線に突入し、ハヤトと肩を並べて帝国兵らと激闘を演じ始めた。
最初にエヴァンが極大火力の魔術を叩き込んだ先制攻撃は、矢張り効果抜群であった。敵は更なる魔法攻撃を警戒しているのか、若干腰が引けている。初手でいきなり半分の兵力を削られたという心理効果は、間違い無く冒険者達にとって有利に働いていた。
だが、局面を完全に支配し切れているかといえば、そうでもない。
戦斧を振るう少年の、恐るべき戦闘能力が冒険者側の勢いを削ぐ形となっていたのである。
「何で幼子がこんなところに居る? 家はどこだ?」
ベルクが呼びかけても、少年は狂った様な怒りの形相でひたすら戦斧を振り回すばかりである。すると光縛内のチェイが呑気に腕を組んだまま、喉の奥で嫌味な笑い声を漏らした。
「今お話をなさるのは無理ですネェ。オノショタ様は不完全な試作品ですのでネ。一度戦闘に突入すると、狂人化する様に設計されているのデス。どちらかが倒れるまで、その状態は続きますヨ」
ならば仕方が無い――ツァガーンナルが何とか力で組み伏せて落ち着かせようと、大声で咆哮を放ってオノショタなる少年戦士の注意を引いた。
戦闘開始前は、心の底から怯えている様に見えた。それが今では、誰よりも狂った様に戦闘行為に没入し、如何なる声に対しても聞く耳を持たぬという有様だ。
一体この少年に、何があったのか。
ツァガーンナルは何とかして、この幼い子供を保護したいと考えていた。確かにこの少年は、戦闘力だけを見れば強い。だが何かに怯えるあの表情を見る限り、精神はとても弱そうだ。その部分だけに着目すれば、怖がりを自認するツァガーンナル自身にも、どこか通じるものがある様に思えてならなかった。
「どうか……どうか、落ち着いて下さい。ボク達の目を見て、声を聴いて下さい……!」
ツァガーンナルは防御に徹しながらも必死に呼びかけた。オノショタの中に、僅かにでも理性が残されていると信じて。
ベルクはオノショタの意識がツァガーンナルに集中している隙に、オノショタの斬撃軌道や回避運動をじっと観察していた。然程に洗練された技能ではない為、見切るのは決して難しくはない。それに動き自体も、徐々にではあるが鈍りつつある。ツァガーンナルに対する全力攻撃の為、少しずつ持久力が落ち始めているのかも知れない。
この様子ならツァガーンナルが希望する通り、何とか力で押え込めるかも知れない。幸い、ハヤトとロイ、サジェル、ルデラ、そしてエヴァン達五人での戦闘で、残りの帝国兵の始末も目処が見えていた。
ところが、そう思い通りにいかないのが戦いの流れというものだ。突然、アルマが仕掛けた光縛が眩い光を撒き散らして霧散した。チェイが力づくで、叩き割ったのである。
チェイがツァガーンナルとベルクに接近戦を仕掛けようとしたところで、今度はユズがチェイに攻撃を集中させた。今の今まで魔術の行使を控えていたのは、チェイに全力を注ぐ為であったらしい。
「絶対に……当ててみせる、よ……」
魔糸がチェイの四肢に絡みついた。逃亡する様子は見られないことから、ユズは魔法火力での集中砲火に意識を切り替えた。
チェイもユズに標的を絞ったらしく、オノショタへの援護を放棄し、ユズとの間合いを詰め始めた。
ここが勝負どころだ――ユズはメテオライトで牽制を叩き込んだが、しかしチェイは打撃を受けつつもまるで動じた様子が無く、どんどん距離を詰めて来る。
嫌な予感を覚えたユズは、更に爆炎を発動させた。炎弾がチェイの頭上で炸裂し、紅蓮の炎がその周辺を一気に焼き尽くした。
それでもチェイは斃れない。衣服は燃え、辮髪も焦げ、皮膚の大半が重度の火傷を負っている。なのに何故この男は平然と歩を詰めて来るのか。
慌ててアルマがユズの前に走り込み閃光塗弾を叩きつけたが、チェイは閃光で視界を潰された様子など、微塵にも見せなかった。
「更に出来る様になったね! ちょび髭おじさん!」
余裕を演出して叫ぶアルマ。だが内心では、このままでは拙いという焦燥の念が湧き起こっている。
そしてユズとアルマは見た。焼けただれているチェイの表皮が、恐るべき速度で回復しつつあるのを。
しかしチェイの余裕もそこまでであった。
帝国兵を全て始末し終えたハヤトとロイが、チェイの心臓目掛けてそれぞれ一撃を繰り出してきたのである。チェイは慌てて回避した為に直撃は免れたが、胸や肩口には大きな傷が入った。
「ふん、やっぱりな……壊密の秘儀で肉体強化したって情報は聞いてるぜ。でもってビューティフルガッツが心臓を貫いて自害したって話もな」
ハヤトの落ち着いた声に、チェイは苦虫を噛み潰した表情を見せた。周辺を巻き込む面攻撃は通用しないが、心臓一点への直接攻撃は有効らしい。
どうやらここが潮時か――チェイも退き際を悟った様だ。
直後、チェイは全身の毛穴という毛穴から朱色の霧を噴き出し始めた。アルマやロイが、それが酸霧だと気付くのに1秒とかからなかったのは、壊密宗との激闘の経験が思わぬ形で活きたからである。
冒険者達は距離を取らざるを得なかった。
そして数分後、酸霧が大気中に散った後には、チェイとオノショタの姿は消えていた。残されたのは、討ち斃された帝国兵30名分の骸ばかりであった。
チェイとオノショタには逃げられたものの、無法な戦闘集団の討伐は為った。依頼は成功裏に終わったといって良い。
その後ベルクは、帝国過激派がシグモル火山帯で狼藉を働いている事実を謝罪して廻った。しかしツァガーンナルが蹂躙された村や集落の後片付けへと動いたことで、被害に遭った村人や集落民の怒りが冒険者に向けられることは無かった。絶妙なフォローであろう。
尚、ロイとエヴァンが、チェイ達が探していた何かについて心当たりが無いかと聞いて回ったが、こちらは収穫らしい収穫は得られなかった。
ブルアスへの帰還の道中、ツァガーンナルは複雑そうな面持ちで東の方角へ視線を向けた。その先には辺獄と呼ばれる死の世界が広がっている筈であった。
「何とか、助けてあげたいですね」
再びオノショタと相まみえるチャンスがあれば、今度こそ――。
ツァガーンナルは奥歯をぐっと噛み締めた。
マスターコメント
ショートシナリオ普通 報酬:標準7 / 4〜8人
2021年12月27日 10時22分59秒 公開
相談掲示板
シューターのロイ・アウレアです。宜しくお願いします。 既に出発可能に成って心強い限りです。 >敵の襲撃地点を予測して先回りするか、素直に足跡を辿って追撃するかは、冒険者の判断に委ねられます。 今回、まずここを合せたいと思ってますが、どうかな? 自分の希望は《予測して先回り》だが 『次なる襲撃先を"適当"に決めた』とある時点で、素直に足跡を巡るのが確実かな…と迷い中です。 その他にも相談した方が良い点があれば聞かせて頂けると助かります。
ウォーリア、ツァガーンナルです! よろしくおねがいします! >方針 迷うところですね。ボクは、ある程度、絞り込めそうなら、先回りできたら。と 素直に足取りを追うと、時間は掛かりそうです 規則性がなく、出鱈目に動いていても、そこまで極端に離れた場所を移動したりは、しなさそうですから、襲撃された順番がわかれば……
シーフのベルクだ、よろしく頼む。 >方針 被害を押さえるなら先回りなのだろうが、規則性なく地図で適当にとなると悩むところだな。 適当は適当でも、どこかを中心としているとか、襲撃した場所を起点とし決めているとかならまだ絞りやすいのだが。情報が足りんな。
ヒーラーのアルマだよ、どーぞよろしくねー ちょび髭おじさん……生きとったんかいワレェ……(二回目) >方針 足跡を辿るだと移動5以上とかお馬さんが必要になりそうー…? 出来れば先回りしたいけど規則性がないって言われると困っちゃうねー しらみ潰しって言ってるから直近で襲撃を受けた所から近い場所とか 重武装30人の団体さまなので通れない(通りにくい)るーとを除外して絞りこむとかー…?
移動5は武器を魔弓にしても無理だな…手ぶらでは戦えない。 移動4、或いは馬を使って体力を温存するよ。 (ペットを連れ歩きたいので移動4で行くと思う) ルデラさんが実際に戦ってるので 必要な情報と一番新しい(又は一手前の)被害集落は判るので 30名が移動するルートで考えるのは良いかもね。 それに合わせる形で、超聴覚で地面から音を拾ってみよう思う。 地を伝わる音の速さは空中を伝わる速度の5倍以上(毎秒1660m)だそうなので 30名が進軍してる音なら拾えるかもしれない。 それに合わせリス先導で小型クリーパーや魔獣を避けるようにして だめなら、素直に足跡を辿って追撃しようか? ちょび髭おじさんはソロソロ手傷を負わせたいね。 パワーアップ済みとの事なので、用心し連携して追込みたいと思うがどうかな? ……がその前にオノショタかなぁ。向かってくる順にやるしかないね。
キャスター、ユズ。よろしく。 チェイ、……今度こそ、攻撃、当てたい。(真顔で素振り) 30名が通れそうなルート、考えるのは良いと、思った。 問題は、候補が複数、あった時。 ボクも超聴覚、持ってるから、一緒に音、拾う。 駄目そうなら、素直に追跡、で。 オノショタ対応、してる間にチェイ、逃げられたら、困る。 アーケインで逃走ルート、塞ぐ、か、光縛封で、チェイ、閉じ込める?
書き忘れてた気になってる点だけ書かせてね。 30名を倒す事が先だろうし、人数バランス的にもう少し人手が欲しいので 参加を迷われてる方が居ましたらご協力ください。 それと、移動力を揃えるのが難しいだろうから 先頭(移動5のお二人)との差が大きくなるなら、リスの分身で後続の案内をするのも考えてます。 ……と、まだ全員の意見を聞けた訳ではないが、話しておくね。
30名なら音や振動もかなり出そうだし超聴覚よさそうー おおよその方向でも絞りこめて追いかけるor先回りで移動するなら ジモティーな双子姉妹さんに間道とかがないか確認してみたり 地図と照らし合わせて蜘蛛糸込みでショートカット検討するの入れようかなと せってぃんぐは当てやすくなるように?ブルーフレアと閉じ込め用?で光縛封にするね 一応チェイさん予定だけど味方と同座標に潜り込まれて置き損ねるけーすがあったので 場合によってはオノショタさん(見捨てて逃走はしなさそうだし?)に使うかも
足止めなら、殺界も有効そうですね 味方の足も止めてしまうので、使いどころは限られると思いますが あとは、シーザーロアでチェイかオノショタを引きつけておこうと思います! 超聴覚持ちがいるなら、ボクは嗅覚か、視覚の方を持っていきますね 小型の魔獣もいるみたいですし、奇襲に注意したいです
おーっす! ゴブリンのシーフ、ブレイブファング傭兵団のハヤト=ヴォルファングだ、よろしくな!! 賭けに出て先回りを目指すか跡を追うかってのもなかなか判断に悩むが…確実なのは追いかける方だろーな。 足並みを揃えんのが難しいだろうがオレとベルクなら脚で追える(移動力5)として、馬なら誰かに貸出して乗ってって貰うことは出来ると思うぜ。 ユズとアルマ辺りなら二人乗りでも行けんじゃねーか?
推測し先回りする手段が何か思いつけば是非に先回りしたいね。 現状は、今迄に被害に遭った村の順を参考にしつつ 直近の襲われた村の位置から30名で移動できるルート&足音で追うとプレにさせて貰いますね。 途中の襲撃に用心するのと、追いつけたらオノショタ(+チェイ)の足止めをして貰ってる間に、自分は30名を先に倒すよ。 それと人数に空きが有るままなら身内を参加させるかも知れないのでご了承ください。 (その場合には相乗りを想定して馬を連れて来て貰うね。)
現状では追撃ルートだな。了承した。 移動力5でいいなら装備を調整するとしよう。
相談の進行どうもありがとー それじゃあ一応自分のお馬さん(黒汗馬)も持ち込みと 騎乗3と動物交感のセットでプレに入るねー
下で話した、超聴覚で敵を追う事、移動力の差をリスで補佐する事に加えて サジェルとルデラから敵と戦った際の様子を聞いて戦闘に備える事と 敵を見つけたら2手に分れ 背から先制攻撃と前に回り込んで村への侵入を阻止する内容でプレを提出したよ。 侵入済みなら、チェイ達へ攻撃して30名の気を此方へと向けさせるつもりです。 また、追跡バレしてたら挟撃されないように背を守りながら連携するとも入れましたので 不都合や《戦闘ではこう動く》が決まってる方は教えてください。 間に合う限り合わせますね。 尚、自分の優先は、人命>>30名≧チェイ=斧です。
相談進行ありがとうございます! このまま、追いかける方向で良さそうですね 先行組は、見つからないようにお気をつけください ボクは、どうしても移動重視すると軽装になってしまうので、チャージングを併用していく予定です
追跡、分かった。えと、良かったらアルマさん、馬、乗せてもらえると、嬉しい。 体格的に、ハヤトさんも言ってた通り、多分、アルマさんとなら2人乗り、出来ると思うから。 ひとつは超聴覚、もうひとつは悩み中。今のところは超視覚、かな。 まず、アーケインで、逃亡阻止。その後、メテオライト、撃っていく、予定。 ……チェイ、いきなり動く、かな。今までを思うと、最初は見てるだけのような、気も? 魔糸で回避、落とせたら、って思う。
キャスターのエヴァン・ピオネロです。よろしくお願いします。 戦闘は敵集団に範囲技を掛ける事からスタート。 馬の支度もしてプレには 「移動力の不足と体力温存に馬を利用【騎乗】 同じく遅い方が居たら相乗りして頂き追いかけますね」と入れました。 ハルハンさんか、ユズさんと同乗歓迎です。 これ以上、被害が広がる前に追いつきたいですね。
お馬さんの相乗りもユズさん(もしくはハルハンさん)で書いてきたよー そろそろ忘れそうだったけど点欠対策でマント被ったり解呪のセットもしてるからねー
相乗りの提案、ありがとうございます! お言葉に甘えて、同乗させてもらいますね。 逃亡阻止や移動阻害は、大丈夫そうなので、ボクは、特性はシーザーロアとカバリングを持ち込みますね 相手の数が多いので、それを利用して集中攻撃されると、厳しそうですから