【聖祭】病院でチャリティコンサートを
岩岡志摩
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シナリオID:1723
オープニング
ここはリーンエス王国の王都グランスパーダ。
王国の都には、様々な人が住んでいる。
亜人と呼ばれる種族の人々への風当たりはそれなりに強いものの、この都には王侯貴族といった上流階級の人々の他にも、平民や貧民といった下級に属する人々が暮らす区域も存在している。
そうした下級と言われる人々が暮らす区域の1つに、その病院はある。
この病院は患者を選り好みすることなく、幅広く受け入れている。
特に院長は他の医師や冒険者に、自身の培った医療や薬学を教えることができるほど、腕は確かだ。
それもあってか、決して裕福とは言えない家庭の子供達がこの病院に助けを求めることも少なくない。
その結果、この病院では局所的に発生した流行り病の影響もあってか、大人だけででなく子供の患者も増大し続けている。
その病院は人手が足りない中で人員をやりくりして、患者である大人や子供達の治療にあたっているものの、限界もある。
さらに病院の財政状態も良いとは言い難い。
ある冒険者や有志からの寄付があるものの、貧困層の患者から治療費を回収するのは難しく、患者を受け入れれば受け入れるほど経営は赤字になっていく。
そこで院長は職員達からの要望を受け、チャリティコンサートを開催することにした。
慈善活動として、演奏会という形で歌や演奏を披露し、入院中の子供達や患者にも喜んでもらえるようにする。
そこまでは話がまとまったのだが、この病院には楽器を演奏できる人の数はごく少数で、とても病院が単独で行うには無理がある。
そこで病院は院長の許可を得て、冒険者ギルドにチャリティコンサートへの協力を求める依頼を出すことにした。
●支援の申し出
応対したギルド職員アルヒ・ラスカスは、病院職員から一通り話を聞くと自身の持つ人脈を使い、あるところへ連絡をとる。
連絡をした相手の名は、フローラ・ウォレス伯爵。
以前より冒険者ギルドへ依頼を出すことが多く、自身の私兵団も冒険者達に鍛え上げてもらった恩義もあって、冒険者ギルドや冒険者に対しては好意的な態度を示している。
そんなウォレス伯爵はアルヒからの要請に対し、直接冒険者ギルドまで足を運んできた。
アルヒは来てくれたウォレス伯爵に頭を下げると、個室へ通す。
「私ができる支援をしてほしいということですが、私は何をすればいいのです?」
ウォレス伯爵はアルヒからの要請内容を確認すると、アルヒは病院から持ち込まれた依頼について話を始める。
アルヒが見たところ、チャリティの演奏会を行うにしても、その収益が病院に還元されなければいずれ病院が苦しくなる。
しかし患者達は貧しい暮らしをしている大人や子供達であることが多く、彼らからお金をとる真似などできない。
「それなら冒険者への報酬と、病院が演奏会で受け取る興行収入を私も出すというのはいかがですか?」
あまり知られていないが、ウォレス伯爵は王国内での芸術活動に対する興味がそれなりにある。
「お話を聞いた限りでは、その病院の院長を務める人は、名医であり医療や薬学の先生だとか」
たとえ1病院が行う演奏会であったとしても、将来芸術が花開く可能性があり、人材の育成や保護に繋がるのなら、支援は惜しまない。
なおウォレス伯爵ことフローラは、これまでこの病院に寄付を続けていた冒険者の意向を尊重するため、チャリティに必要な資金は出すものの、その内容に口は挟まないと表明し、詳細はアルヒと院長の間で決めることになった。
「今回ですが、チャリティを行うまでの間、病院内で人手が足りない業務を手伝ってもらうことも依頼内容に含めるのはいかがでしょう?」
――コンサートの準備や実演だけでなく、人手の足りない病院の各業務を手伝える範囲で冒険者達も行う。
アルヒが院長に対し、そんな提案をすると院長も「お願いします」と頭を下げる。
人手が足りないという話は本当のようだった。
ある程度話がまとまったところで、フローラは院長やアルヒに対し、1つの提案を出す。
「私の領内に動物達と触れ合うことのできる温泉宿があります。そこにいる『従業員』をこちらの病院に派遣するよう手配しましょうか?」
フローラの説明によると、その温泉宿ではペットの療養にも利用できる温泉が整備され、『従業員』の仔犬や仔猫達と触れ合うことや、一緒に遊ぶことができるという。
その温泉宿の主とフローラは面識があるので、フローラが要請すれば仔犬や仔猫達を病院に派遣することも可能という話だ。
その温泉宿にいる仔犬や仔猫達を病院に派遣し、入院中の患者の中で比較的症状が軽い者や子供達と触れ合ってもらうことで、患者や子供達の心の療養にもなるのでは、とフローラは説明する。
「もちろん必要がないということでしたら、断ってくれても構いません」
話し合いの末、この件については今回チャリティコンサートを引き受けてくれる冒険者達の判断に委ねる形で落ち着く。
その他にも、冒険者の方で希望があればある程度のものは用意できるよう、そちらの資金も出すとフローラは請け負った。
――入院中の子供たちや患者にも喜んでもらえる演奏会にしたいので、協力して欲しい。
そんな依頼が新たに冒険者達に向け斡旋された。
●やること
今回皆様は、王都グランスパーダにある病院のチャリティコンサートに協力するという形で依頼を受けています。
本来は無償で歌や演奏を披露して、病院の患者や子供達を楽しませたり、イベントで得た収入を病院に寄付したり、といった形をとることが多いです。
今回はアルヒ・ラスカスがフローラ・ウォレス伯爵に協力を要請し、必要な資金を用意できたので、コンサートを行う皆様にも報酬を支払うことが可能となりました。
皆様にはコンサートに向けての準備や、コンサートで歌や演奏を行うことがこの依頼では求められています。
ただこの病院では慢性的に人手が足りていないため、病院内ではあらゆるところで人手が欲しい状況のようです。
書類の整理や毎日発生する洗濯物を洗って干す、取り込む作業や病院内の清掃、患者や子供達に提供される食事の用意など、病院内の動きを見ていれば人手が必要な業務が各所にありますので、時間のあるときにでも病院で働く人達の手伝いをすれば、歓迎されるでしょう。
なお皆様がコンサートやその準備を行うにあたり、アルヒからはよほど希少なものや高価なものでなければ、大概のものは用意できると請け負っています。
伯爵は今回の依頼期間中アルヒと共に病院内の一室にいますので、何かあれば伯爵やアルヒに頼むのも一つの手です。
また伯爵は自身の領地にある温泉宿から『従業員』の仔犬仔猫達を病院に派遣し、触れ合ってもらうことで患者や子供達に喜んでもらう、という方法も皆様に提示しています。
ただ伯爵はこれまでこの病院に寄付を続けていた冒険者の意志を尊重したいため、仔犬仔猫達との触れ合いを行う機会を受け入れるか否かの判断は皆様冒険者に委ねられています。
ちょうど今は聖霊節の時期。
この機会に、皆様の手でこの病院にチャリティ演奏会という名のお祭りを開催して、一緒に楽しんでみませんか?
解説
マスターより
リプレイ
院長先生、ごきげんいかがですか?
聞いてください。私、パンクリアース学園の編入試験に合格したんです。
子供たちや患者さんたちのため。……それからお世話になっている院長さんたちのため。
学園でたくさん学んで、腕を磨いてきますね。
●準備
ミアは仲間達と共に慣れ親しんだ病院を訪れ、院長や職員達に挨拶して回る。
「こちら同期のルベアさん、ちょっと先輩の江流さん、もっと先輩のシルヴィアさんです」
まずミアは一緒に来てくれた仲間達を紹介していく。
ルベア・ベルニ。
海神・江流。
シルヴィア・A・カペル。
いずれもミアが学園で得た友人達であり、今回病院からの依頼に応じた冒険者達だ。
「ギーゼラさんは学園生ではありませんが、頼れる仲間です!」
「ご紹介に預かりましたギーゼラと申します。重そうですか? ふふ、肉叩きを振り回す僕にはこのくらい軽いものですよぉ!」
ミアの紹介を受けながら、ギーゼラは持参した鍵盤楽器を軽々と扱い、職員達の注目を集める。
その場を友人や仲間達に任せたミアは、早速チャリティコンサートの準備にとりかかる。
まずミアは椅子と膝掛を人数分用意できるよう、病院の各所へと足を運ぶ。
「ミアさんの縁のある病院、ね」
ルベアは挨拶の後、感慨深そうに病院を見渡す。
「……病院の力になりたいって志はほんと凄いと思うし、私はそんな彼女の力になれたら……」
ルベアはそう決意すると、病院の職員に人手が必要な作業を尋ねる。
話し合った結果、どちらかと言えば書類の整理よりも、荷物や機材の運搬に人手が必要だとわかる。
「これでちょっとでも負担が軽くなれば良いんだけど……」
ルベアは職員達と協力して搬送作業に従事しながら、そんな願いを口にする。
そのルベアが他の人に任せた方がいいと考えた事務作業は、シルヴィアが引き受けていた。
「こちらは決済最優先の書類ですね。そしてこちらは後回しでもいい書類になるのでしょうか?」
シルヴィアは職員に聞きながら、書類情報の共有やナンバリングを行い、優先度の高いものから処理できるよう工夫を施す。
「こちらの書類は保管庫にしまってもいい書類ですか。では保管庫の整理も行います」
シルヴィアは処理の済んだ書類を集めると、保管庫としている部屋へと運び、その部屋の中でも積まれた書類の整理にあたる。
「僕は力仕事も得意なので、しつこい汚れもお任せください!」
一方でギーゼラは、病院内を清潔に保つことを目指し、洗濯や病院内の清掃を率先して行う。
「フフフ、力はヒール力ですからねぇ!」
独特の言い回しで、ギーゼラは洗濯物を運び、ゴミを片付けていく。
「敵をミンチにする方が力は要りますからねぇ!」
ギーゼラの発言に、思わずその光景を想像した職員がいたとかいなかったとか。
その間に江流は、今回のコンサート会場となる空き倉庫の下見を行う。
「掃除が必要そうなら先にやっちまおう」
江流は掃除が必要そうな範囲に目星をつけると、掃除用の道具を借りて倉庫内の掃除を始める。
コンサートができるくらいに倉庫内の清掃を終えたところで、江流は音の響き具合を確認する。
「ミアさんの歌声が埋もれない程度の音量で演奏する意識が必要だ」
江流はコンサートの主役がミアの歌声だと位置づけ、自身の演奏が主役を押しのけて前に出ないよう心がける。
やがて病院内での作業を終えた冒険者達も続々と合流し、設営が終わったコンサート会場で音合わせを行い始めた。
●実演
準備も終わり、チャリティコンサートがいよいよ始まる。
「まずはここにいる皆さんの楽器を紹介します」
会場に集まった観客たちに向け、ミアは演奏する仲間達を紹介していく。
「これは竹笛と言う楽器だけれど、馴染みのない人も居るだろうからシャルガネの祭囃子を短くやってみるよ」
江流は持参した竹笛を掲げて、観客にも見えるように動かした後、竹笛を吹き鳴らす。
鋭さを秘めた音曲が軽快なリズムで流れ出す。
その音色も旋律も観客である患者達には馴染みの薄いものだったが、江流が使い慣れた七穴六本調子の笛はその演奏スキルも相まって、楽しげな雰囲気を醸し出す。
「シャルガネの新年だとこんな感じかな」
吹き終えた江流は、拍手を送った観客に向けてそう言った。
続いてミアの紹介を受けたのは、ルベアの横笛(フルート)。
「私のフルートは、先程江流さんが演奏された竹笛とは違う音色です。お聞きください」
そう言うとルベアは演奏スキルを駆使して、横笛を吹き始める。
ルベアの言った通り、今度は高い音域の曲が流れ、明るく澄んだ音色が観客の鼓膜を震わせる。
「触りたいですか? では指はこう添えて下さい」
触りたがる子供がいたので、ルベアは横笛の持ち方や指の置き方を簡単に説明する。
「ではソロで一曲……といっても僕は王国の音楽は詳しくないので、帝国で人気だった音楽ですけど」
ギーゼラは観客に頭を下げるとそう言って、演奏スキルを駆使して床に設置した鍵盤楽器を弾き始める。
「王国でも知ってる人がいると嬉しいなぁ」
同じようなテンポ、音の繰り返しを行い、一拍の間を空けた後から水の流れのごとく旋律があふれ出る。
エンディングをつけてギーゼラの指が鍵盤より離れると、拍手が巻き起こる。
そしてシルヴィアがミアの紹介を受け、持参したフィドルの演奏を始めた。
このフィドルはある職人がシルヴィアのために作ったもので、高く澄んだ音色がシルヴィアの演奏スキルも相まって、心地よい調べとなって観客達に届く。
「ここにいる全ての人々にユールの祝福を」
拍手をした患者に向けシルヴィアは一礼し、全ての楽器の紹介が終了したところで。
「これからの曲目ですが、皆さんにも馴染みのある聖霊節の曲をいくつか披露いたします」
――みんなも歌や手拍子で参加できるように。
ミアが曲名を告げて、全員での演奏が始まる。
ミアは歌い始めた。
朗々と麗々と――普段の物憂げな雰囲気とは異なるトーンで、ミアは歌い上げる。
そんなミアの歌声に、シルヴィアもフィドルを奏でながら合唱する。
江流の竹笛はシャルガネの表現で言えば雅な音色を吹き鳴らし、ルベアの横笛が柔らかい音色で周囲を包み込む。
片方が剛、もう片方が柔となり、江流とルベアの響きが入り混じる。
シルヴィアが弓を動かし、フィドルの調べが控えめながらも澄んだやわらかな旋律となって、周囲の演奏や歌声を励ますように、優しく響く。
そしてミアとシルヴィアの歌声は、異なるパートをそれぞれ歌い上げるというよりも、ミアが主となりシルヴィアは他の奏者の持ち味を引き立てるように、それぞれの役割をこなしていた。
(病院の方々が楽しめるよう、心からの演奏を)
歌に演奏にとシルヴィアは忙しいが、自分達の選んだ音楽を自分のものとしていた。
(帝国が崩壊する前も、こうやってあの子と祝歌を奏でたな)
内心しんみりしながらも、ギーゼラの鍵盤楽器は仲間達の演奏や歌を押し上げていく。
(僕の伴奏に、シルヴィアさんのフィドル、江流さんとルベアさんの横笛。それにミアさんの歌が重なって……うん、なかなか綺麗なんじゃないでしょうか?)
ギーゼラの予想通り、観客となった患者達の中でも音楽に通じる人達の鼓動は弾み、心は震えていた。
やがてミアの紹介した歌が終わり、静寂が訪れる。
「素敵な演奏だった。皆、ありがとう」
シルヴィアが余韻を残して演奏の手を止め、仲間や観客に頭を下げる。
ここで観客達は精一杯のお礼を5人に差し出した。
倉庫内で爆発が起きた。
そう思えるほどの歓声と拍手、だった。
●ふれあい
コンサートが大盛況で終わり、冒険者達はこの病院の患者達へもう一つプレゼントを用意する。
それは仔犬仔猫達との触れ合い。
発端は、チャリティコンサートへの出資を行ったフローラ・ウォレス伯爵からの申し出だった。
「動物との触れ合いは患者達の心を癒す妙案ですが、中には動物の毛により喘息が悪化してしまう人もいるかもしれませんね」
シルヴィアが触れ合いにあたり懸念となることを口にする。
「医師と相談の上で、許可された範囲でなら犬猫と患者との触れ合いは賛成よ」
ルベアは条件付きで犬猫達の受け入れに賛意を示す。
「呼吸器系の疾患を持っている子には、各種の配慮が必要よね。ここはミアさんやスタッフの判断を仰ぎたいところだわ」
ルベアは思いついた対策も口に出すも、自身がそれほど詳しくないことを正直に明かす。
「呼吸器疾患の患者たちがもしいる場合は風通しの良い庭先で、鼻と口を三角筋で覆ってのふれあいをお願いしたいです」
そんなルベアを援護するように、ミアは触れ合うにあたっての条件を職員達に説明する。
「ふれあいの後は服を着替え、湯船でさっぱりしてもらう形でアフターケアも行って下さい」
後にやることも伝えると、ミアは調理場に向かい、患者達への夕食作りに参加する。
「医師に事前に可否の判断を委ねる点については、俺も同意見だね」
江流も患者の容体が急変する事態を避けるため、「自分達で制御できる範囲で派遣してもらう」と条件を出す。
「医師の許可がある人なら問題ないでしょう」
決めるのは病院の医師だとギーゼラは意見を出し、その上で賛成票を投じる。
その上で自身のできる対策を、仲間や病院職員達へ提示した。
「はしゃいで熱を出す子供がいるかもしれませんので、サーマルアイでチェックはしておきます」
そして病院側も冒険者達の意見を受け入れ、フローラ伯爵に受け入れる旨の返答を行ったことで、仔犬仔猫達が病院の一室へと運ばれてきた。
部屋の中には既に絨毯が敷かれ、その上に無数の毛玉……もとい仔犬仔猫達がとてとて、と動き回っている。
ここで江流は子供達の前に膝を降ろし、視線の高さを同じにすると、自身の同伴した揺満月を子供達の前に見せる。
「『揺満月』という鳥だ。それなりに意思疎通できるんだよー」
江流がそう言って仕草や言葉で揺満月を誘導すると、揺満月は江流の手や肩を飛び渡る。
「数が少ない鳥なんだ、見つけたら守ってやってね」
揺満月について詳しい説明を終えると、江流は子供達に片手を持ち上げるよう促す。
子供が言われた通りに動くと、江流は子供の手の上に少しだけ揺満月を渡らせ、手の上で飛ぶ感触を楽しませる。
江流は動物交感スキルをフル活用し、子供や患者と仔犬仔猫達のふれあいを手助けしていった。
「ふわふわだね」
シルヴィアの視線の先には、ころんころんと転がり、すぴーと寝ている仔犬仔猫達。
シルヴィアは患者の様子を見守りながらも、子供達と一緒に仔犬や仔猫達とふれあいを始める。
そんなシルヴィアに仔猫達がもきゃっと飛びつき、仔犬達も混ぜて~、と集まってくる。
子供や患者達が仔犬仔猫達と戯れる中、ルベアはフード付コートに自分の身や頭を包み、耳を隠していた。
「気にしなくて大丈夫だってことなら話は別だけど、ハフビの耳とか尻尾で迷惑かけるのも、ね」
ルベアは子供や患者に何らかの影響が出ないよう、自分の耳だけでなく尻尾も露出を避けるべく、服にしまいこんでいた。
ルベアは絨毯の上に座り込み、子供や患者達の動きを注視していたが、そのルベアが隠した尻尾を狙う視線が複数。
それはルベアの膝までよじよじと登っていた仔猫達だった。
そんな仔猫達の動きに釣られ、子供達もルベア――正確には隠したはずの尻尾にキラキラした視線を向けてくる。
「え? もふもふしたいということなの?」
ルベアは子供達からの要望に驚いたものの、拒否はせず尻尾や耳をフードや服から引っ張り出す。
そんなルベアの尻尾にていていと子猫達が飛びつき、ぺしぺし叩いたりもふっと抱きついてきた。
ルベアの耳も、興味津々な子供達に触られ、もふられている。
「あまりコレがあって良かったって思える体験には恵まれてこなかったけど……これで心が安らいでくれるのなら、それはそれで嬉しい」
ルベアは子供や仔猫達の反応に戸惑いながらも、不快ではないようだ。
ギーゼラはきらきらした目で仔犬や仔猫達と触れ合う子供達をうまくさばきながら、サーマルアイを駆使して温度を視覚化する。
ギーゼラの見る限り、子供達の体温はほぼ問題はない。
「そろそろ休憩の時間ですよぉ」
熱がありそうな子供を発見したギーゼラは、そう言いながら優しい手つきで子供を抱き上げ、職員へと引き渡す。
「僕にも子供を慈しむ心はありますよぉ多分!」
そんなことを言いながら、ギーゼラは自分にしがみついてくる仔犬や仔猫達の相手も忘れない。
わふわふと後を追いかけてくる仔犬を、ギーゼラが踏まれないよう拾い上げると、仔猫達がギーゼラの足に掴まってわーいと大はしゃぎだ。
冒険者達が、患者や子供達と仔犬仔猫達との触れ合いを手助けする中、ミアは調理場で調理スキルをフル活用していた。
「今日はジンジャークッキーのデザートつきです!」
ミアは患者だけでなく職員達の夕食も作り終えたところで、デザートづくりに移行する。
ミアは常温に戻したバターを泡立て、クリーム状にしたところで甘味を加え、溶き卵を2回に分けて加えていく。
なめらかになったところで、皮付きのまますりおろしたジンジャーを加え、混ぜたところで薄力粉などをさらに加え、生地にまとめていく。
その後均一に生地をのばし、ある程度寝かせたものをオーブンで焼き、焼けたら取り出して冷ます。
冷めてカリッとしたところで、ミアは皿にジンジャークッキーを盛り付け、患者だけでなく職員達にも提供していく。
ミアの作った料理やデザートは、病院内で大変好評だった。
●閉幕
コンサートを見届けて、帰ろうとするフローラ伯爵にシルヴィアが面会し礼を述べる。
「此度の支援に心からの感謝を」
その上でシルヴィアはこんな要望も口にする。
「芸術の保護活動を行っているという点で、畏れながらウォレス領とカペル領には共通点があると感じています。今後も末永いお付き合いが出来ればと願っております」
シルヴィアの要望に、フローラは「こちらこそよろしくお願いします」と応じ、病院を後にした。
ミアもまた、フローラ伯爵にお礼をしたかったが、後片付けなどの作業に追われ時間が取れなかったらしい。
「それならばお礼のお手紙を出します」
――かわいいわんちゃん、ねこちゃんたちの派遣を提案してくださってありがとうございます。
――なかなか外に出られない子供たちも喜んだと思います。
ミアの書いた手紙は、後日フローラ伯爵のもとに届けられた。
「過去には戻れませんけど、新たな仲間と奏でるのも悪くありませんでしたねぇ」
ギーゼラは今回のコンサートに手ごたえを感じていた。
そしてギーゼラは祈った。
「ここにいるすべての人へ神のご加護がありますように」
マスターコメント
ショートシナリオR易しい 報酬:標準5 / 4〜8人
2022年01月08日 06時58分00秒 公開
相談掲示板
メリーユールフェス!…ちょっと過ぎてしましましたが…ミア=リゼルです。 このたびはお集まりいただきありがとうございます。また、引き受けてくださった岩岡MSに感謝を。 解説にある通り、コンサートへの参加以外にも行動が可能ですので、どうぞ。 仔猫仔犬たちの受け入れは、喘息の方がいるかもしれませんので、接触の際に気を遣っていただければ大丈夫かな、と思います。
お招きいただきありがとう。 海神江流だよ。 一先ず、奏者として参加できるように竹笛なぞ持参してみましたよと。 シャルガネの囃子で演奏するのもいいし、他の皆との合奏に参加するのもいい。 そのへんは詰めていければ。合奏するなら事前にちょっと合わせしておきたいね。
お誘いに心からの感謝を。 シルヴィアだ。今回もよろしくね。 合奏するのは良いね。もし良かったら合わせ・本番ともに参加させて貰いたいな。私が演奏出来るのはフィドル、リュート、大型ハープで、歌唱も可能だよ。シャルガネの笛と合わせるのも面白そうだ。 仔猫仔犬たちの受け入れについてはミアと同じ意見。動物との触れ合いは患者の息抜きになると思うけど、喘息になってしまったら大変だからね。その辺りを医師が気に掛けてくれればと思う。
合奏!素敵ですね 私はお歌くらいですが…がんばります お世話になっている病院なので、子供たちが好きなお歌から年配の方が好むものまで…手広くやれたらな、と。知ってる曲なら、一緒に歌えますからね。
お招きありがとうございます。 ギーゼラです。よろしくお願いします。 僕が得意なのは鍵盤楽器ですねぇ。 合奏するのであれば協力しますよ。 犬猫についても医師の許可がある患者であれば問題ないかと。 演奏会の他にも洗濯や掃除は手伝いたいと思っています。
そうだな、合奏するなら聞いてもらう側に馴染みのある曲がいいのかもしれないね。 王国の国歌とか、国や地域に纏わる曲があるならそういうのを選んでみるのが良さそうか。 仔犬仔猫については事故の心配さえなければせっかくのご厚意だし、活用してやりたい気はするね。 そのへんはお医者さんにちょっと判断を仰ぐのがいいのかな。
ミアは歌、江流はシャルガネの横笛、ギーゼラは鍵盤楽器だね。私はフィドルを演奏しようと思うよ。 曲目は江流が言ってくれたように、国や地域にまつわる曲が良さそうだ。或いは大陸で有名な聖霊節の祝歌とかかな。患者さんや子供達と一緒に楽しく歌えると良いね。
すっかり遅くなっちゃった。 お誘いありがとう。ルベアよ、宜しく。 合奏ね……。 私も吹けるのは横笛なんだけど、シャルガネのものとは違うし被らないかしら。 他にも色々と手伝えたらと思ってる。
コンサートの最初の方で、トークがてら皆の楽器を紹介する時間があってもいいかなとか。 そこで音の違いをアピールしておけば、ルベアさんとお互いに被った感じを出さずに行けるんじゃないかな。 軽く、1分程度ソロ演奏聴かせてもいいと思うしね。 スキルなんだけど、演奏の他に動物交感持っていこうかなと。 仔犬仔猫達と子供や患者の間に入ってコミュニケーションの手伝いをしてみようと思うよ。
皆さんありがとうございます。これで現在参加されている人は全員、ですね。 >曲目 そうですね せっかくの聖霊節ですから、関わりのある曲目で揃えてみましょうか。 楽器の紹介もいいと思います。子供たちはそういうものに触れる機会が少ないですから…
ルベアの横笛も楽しみだ。改めてよろしく頼むよ。 演奏前にそれぞれの楽器を紹介したり、軽く歌ったりは良いかもしれないね。顔を覚えてもらえば他のお手伝いもしやすくなるし……勿論演奏前に仲良くなるのも良いと思う。 聖霊節の曲目というのも了解だ。私のスキルは演奏と、コーラス用に歌唱にするね。