【雲集】銀狐は夜に哭く
真柄 葉
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シナリオID:1715
オープニング
「はぁぁっ!? また百人規模で入ってくる!?」
フェンガリの大工クルートが、兵士の報告にあんぐりと口を開ける。
この居住地は当初フェンガリの民の移住地として、百名規模の集落を予定して作られたものだったのだが、リカルダの頼みもあり避難民を受け入れる為の場所として提供していた。
しかし、予想を上回る数の避難民が押し寄せた事で、拡張工事を余儀なくされ、工事を仕切るクルートは多忙を極めていた。
「ともかく場所の確保だ! 魔獣の侵入を防ぐ為に、森を拓いて外柵を建て直すぞ!」
避難民達も自らの住む場所だと手伝ってはいるが、それにしても入植速度が速すぎる。それに、もうすぐ本格的な大雪になる。
ここに避難してきた者はすべて帝国北部の出身だ。冬の厳しさも怖さも重々承知している。
手遅れになる前に、屋根を――。
誰もがそれを理解し、懸命に汗を流す。
●
場所は変わり、フェンガリの極行遣北使ベースキャンプ。
指令所でリカルダ=アーレンスは一人の男と会っていた。
「……そういう事情だったのか」
「はい……不甲斐なき生を晒しております」
男が視線を下げる。
「そんな事はない、よくぞ生きていてくれた。……しかし、そうか。まさか貴公がな」
そう言ってリカルダは改めて男を見た。
眉間に深い皺の刻まれた銀胡狼のハーフビーストがそこにいる。
「名を聞いてもいいか」
「……ありません。この名は返す予定のものですから」
「そうか……だが、流石に名がないのは不便だな」
と、リカルダはしばらく何やら考え、はっと顔を上げる。
「『銀髭公』と名乗るのはどうだろうか」
「……『銀髭公』、ですか」
「その見事な髭にあやかったのだがな。気に入らぬか」
「……とんでもない。生き恥を晒す者には過分な名です。ありがたく頂戴いたします」
「そうか、気に入ってくれたのなら嬉しい」
リカルダは大きく頷き笑みを作ると、改めて男――銀髭公に向かう。
「帝国北部方面軍指揮官リカルダ=アーレンスが申し渡す。銀髭公よ、今これより我が元へ参じ、帝国復興の為にその身を捧げよ」
「はっ!」
銀髭公は跪きリカルダに頭を垂れた。
「よし、堅苦しいのは終わりだ。貴公の働き期待しているぞ」
「畏まりました。卑小非才の身なれど、閣下の信頼に報いるべく全てを捧げましょう」
誓いを立てた銀髭公は顔を上げる。
「だから堅苦しいのは終わりだと言っただろう」
「す、すみません……それで、私は何をすればよろしいでしょうか」
「うむ、この地に身を寄せた避難民から戦える者達を選び、訓練して欲しい。私が直接手をかけてやれればいいのだが、色々と忙しい身でな」
「オルセン健在とはいえ、広大な帝国北部を見ておられるのです。当然でしょう」
「そう言う事だ。だから、できるだけ沢山の人材が必要だ。避難民の中から才ある者を見つけ、鍛えてくれ。中には授恵者もいるはずだ。武神と称えられし貴公には適任だろう」
「うっ……その呼び名はご勘弁を」
「はは、そうか。すまないな。では頼んだぞ、銀髭公」
「はっ、必ずや閣下の助けとなりましょう」
そう言って銀髭公は再び深く頭を下げた。
●
再び場所は変わり、辺境都市群のとあるギルド。
「――そうなんです。だから、もしかしたら生きているかもって」
一人の男が依頼受付のカウンターに訪れていた。
「せめて安否の確認だけでもしてもらえればと思うんですけど……あ、金は何とか用意しました。これでお願いできませんか」
そう言って男はカウンターに金を置く。
「わかりました。では――」
と、受付係が金と書類を確認していると――。
「すみません、そのお話詳しく伺ってもよろしいですか?」
男の背後から、女性の声がした。
男が振り向くと、そこには眼鏡が特徴的な帝国軍服に身を包む女性が立っている。
「いま、ヤーデと聞こえたのですが、聞き間違えでなければ鉱山都市ヤーデの事でしょうか」
「そ、そうです。えっと……」
「申し遅れました。私は帝国北部方面軍所属エメと申します」
「帝国軍っ!?」
「よろしければ先ほどの話、私にも詳しく聞かせていただけないでしょうか」
そう言ってエメは驚く男に軍式の礼をすると、二者の話に参加する。
ヤーデ出身だという男は、改めてエメと受付嬢に経緯を話して聞かせた。
「しかし、帝国崩壊からすでに一年。本当に生存の可能性はあるのですか?」
「俺もある人に聞いただけだから、本当の事はわからないんです……でも、もし族長さんの能力が本物ならきっと……! それに、あの街は元々彼等の居住地でしたから、土地勘もあると思うんです!」
熱弁する男に、受付嬢は半信半疑。
「受付係殿、この件に関して我々帝国軍も動く方針です。もしヤーデの民が生きているのなら、救出は我々の使命ですから」
と、そんな受付嬢にエメが提案した。
「――なるほど……それでは、こういうのはどうでしょうか」
しばらく考え込んでいた受付嬢が出した答えは、男の依頼を一先ず軍で預かり、軍から正式な依頼としてギルドに申し込むというものだった。
「ええ、問題ありません。そちらの方はいかがでしょうか」
受付嬢からの答案に、エメは本来の依頼人である男に問いかけた。
「……えっ!? あ、はい、大丈夫です! あの子達の無事が確認できるのなら!」
「そうですか、ありがとうございます。では、我々が一旦引き受けます。貴方はどうされますか? 同行を――――いえ、そうですね、危険な場所ですし」
思い切り首を横に振っている男に頷くと、エメは改めて受付嬢へ向き直り依頼の手続きを始めた。
(無事でいてくれよ……眼鏡の子)
手際よく進んでいく契約を見ながら、男は心の中で小さく呟く――。
●
「皆、息を殺して。紋具の灯も消すのよ」
小さく囁かれた声に、10ほどの気配が頷いた。
闇に飲まれた暗い部屋。
息を殺し『外の音』に耳をそばだてる。
――ズドーンズドーンズドーン……。
とてつもなく重い何かが近づいてきて――――離れていった。
「……もう大丈夫。灯をつけてもいいわ」
声を合図に真暗だった部屋に明かりが灯り、安堵のため息が幾つも聞こえる。
「これで後2時間は平気よ。今のうちに食事をしましょう」
「族長、それはいいんだが。ここの備蓄ももうそんなにないぜ」
族長と呼ばれた声の主に、男が話しかけた。
「そう……また別の場所を探さなくてはね」
「そんな事より族長! 一体いつまでこんな事を続ければいいんですか……! もう一年ですよ! 助けは本当に来るんですか!?」
別の男から悲痛な叫びが上がると同時に、部屋に不安げな気配が広がっていく。
帝国崩壊から一年。地の利と特殊な能力によって何とか生を繋いできたが、それも限界が見えてきた。残された同族達は日々死と隣り合わせの恐怖におびえ、心身ともに疲弊している。
「……みんなの不安もわかるわ。でもおちついて、きっと大丈夫だから」
何の根拠もないただの慰めだとわかっていても、そう呟くしかなかった。
救援は来るのか、それとも世界が滅びたのか。
このちっぽけな街の中からでは、世界の『今』がどうなっているのかわからない。
だから待ち続けるしかない。例え臆病だと言われても、それが仲間達を生き延びさせる最善だと信じて――。
解説
マスターより
リプレイ
「何に反応したと思いますか?」
小高い丘から街を見下ろしながらトーラが皆に問いかけた。
街の入口にはゴーレムらしき敵がじっと佇んでいる。
「わたし的には感波のようなスキルかなって思ったんですが」
街へと進軍した一行は入口にゴーレムを見つけ、偵察のためにと双波を放つ。すると突然ゴーレムが動き出し襲い掛かってきた。一行は迎撃態勢をとるも、街の中からどんどんと増援がわいてきたのだ。
一行は迎撃を諦め、一旦体勢を立て直すため街から距離を取り、作戦会議を開いていた。
「でも双波に反応したんなら、増援が出てきたのはどういう事だろう。範囲外からも来たよね」
アスティン・ヴェルラインがトーラの推測に疑問を投げる。
「感波以外だと……単純に目視とか?」
「それならもっと手前で反応するんじゃねぇか?」
ララベル・サン・ディーベルやハヤト=ガラン=ヴォルファングも加わり、議論は白熱しだした。
「何にせよ、あの量のゴーレムを相手取るには戦力が足りません」
議論を交わす中、Alexandra・Hexe・Claudiaが冷静に状況を分析する。
トーラの双波に反応して出て来たゴーレムの数だけでも10はいた。中にまだ居る可能性を考えれば、すべて倒す選択肢は取れない。
「ともかく何に反応するか調べないとな。さて――」
そう言ってセリオス・オーガストが立ち上がると、弓に矢を番えた。
「何をする気だ。こんな所からでは流石のオーガスト殿でも届かぬぞ」
「当てるつもりはない」
驚くベルク・オスマットにそう答えたセリオスが入口に向け矢を放つ。
矢はエーテルを纏い一直線に街の入口へ向かい。炸裂。濛々とした煙幕が立ち込めた。
「あっ、反応してる……っていうか攻撃してるよ!」
聴視覚を持つララベルが煙幕を確認すると、入り口のゴーレムが反応。更に増援が出てきて、煙幕に攻撃までしかけだした。
「……エーテルに反応している?」
その状況を見てセツリが呟く。
「なるほど、エーテルに反応ですか。可能性は高いですね」
セツリの呟きにトーラが答える。確かにエーテルの流れや強弱に反応するのであれば色々と辻褄が合う。
「もう少し詳しく調べてみる必要があるな。どの程度反応するのか、感知範囲はどの程度なのか」
リカルダの意見に頷いた冒険者達は、時間をかけゴーレムの特性を調べていった。結果、やはりエーテルに反応しているという結論に至った。
この結果を受け、冒険者達は救出の作戦を練り直す。そして――。
「では、作戦開始だ」
リカルダの号令と共に、改めて捜索・救出作戦が開始された。
●
「……去ったか」
「う、うん……大丈夫みたい」
城壁の上に立ったベルクとララベル、そしてトーラがじっと息を殺す。
三人は壁歩きを利用し、入り口から遠い城壁を登ったのだが――。
「壁歩きにまで反応するなんて……」
「うん、中のゴーレムまで反応するなんて……やっぱりかなり広い索敵能力があるね」
改めてゴーレムの索敵能力の高さに驚きながらも、三人は壁下へロープを垂らすと、それを伝い仲間達も上がってきた。
城壁の上に揃った冒険者達が街の様子を見下ろす。
「見える場所以外にもかなりの数だな」
鷹の眼を持つセリオスが調べると、建物の死角にまで敵の気配を感じた。索敵範囲内でさえこの数だ。街全体には一体どれほどいるのか見当もつかない。
「こんな状況で、本当に生存者なんているのかな」
「そうですね……痕跡でも見つかれば確信できるんですけど」
アスティンとトーラはそう呟きながらも、ゴーレムの動きに注視する。
「きっと居ます」
と、そんな二人の呟きを聞いてセツリが断言した。
「随分はっきりというんだな。確証でもあるのか?」
「族長の能力を持ってすれば、この状況でも生存は可能です」
「族長の能力? ああ、振動を聞けるんだっけか?」
「はい、この様に――」
そうハヤトに答えると、セツリはコツコツと一定のリズムで城壁を叩きだす。すると――。
「……あ、何か聞こえる」
アスティンの耳に街の中から、セツリの奏でたリズムと似たような音が届いた。
「……よかった」
返ってきた音に安堵したセツリは、音の正体と自分の出自を皆に説明する。
「なるほどな、そう言う事なら話は早ぇ」
「うむ、北壁の民が我等を待っている。急ぎ救出にかかろう」
ハヤトとベルクが早速と準備を始めた。
「これで第一段階はクリア。生存確認が取れました。救出作戦へ移行しましょう」
壁下に残ったAlexandraが城壁からの合図をリカルダに伝える。
「そうか、では手筈通りに」
リカルダの返事に頷いたAlexandra。帝国軍もまた冒険者達に連動する様に動き出した。
●
冒険者達は万が一に備え、複数のルートで音の発生源を目指していた。
「意外と壊されてないんですね」
そんなルートの一つ。トーラとセツリが隠れるように裏道を進んでいた。
街に多数のゴーレムが徘徊しているにもかかわらず、建物は驚くほど原形を保っている。
「よかったですね、故郷が無事で――って、どうかしましたか?」
トーラがふとセツリを見ると、彼女は立ち止り何かの店だろうか、ある建物をじっと見ていた。
「あ、いえ。すみません、なんでもありません」
しかし、セツリはすぐに建物から視線を外すとトーラの元へと駆けてくる。
「生存者でも発見したのかと思いました」
「すみません、ここには居ません」
二人は再び歩き出す――。
別のルートではアスティン達が音の方角を目指していた。
「これでよし。気付いてくれるかな――――聞こえた。よしっ」
アスティンがリズムよく壁に傷をつけると、それに反応したようにリズムが返ってきた。
「それにしてもすごいなぁ。こんな小さな音も聞き分けるなんて」
「セツリの言うには振動を感知してるらしいけど、それにしてもすごい精度だよね」
隣ではララベルがアスティンと同じように壁に何度も武器を打ちつけ、セツリのリズムをまねた。するとやはり同じ符丁のリズムが返ってくる。
「ゴーレムが音に反応しなくてよかったね」
「ほんとに。もし音も感知されていたら、さっきみたいにわらわらと……」
ララベルは先ほど入口に押し寄せたゴーレムの群れを思い出しぞっとした。
「とにかくエーテルだけは使わないよう慎重にいこう」
アスティンの言葉に頷いたララベル。二人は更に街を奥へと進んでいく。
「……何故あんなところに足跡が」
皆の眼となる為、一人城壁の上に残ったセリオスは地面に刻まれた足跡を注意深く見つめていた。
それは城壁の上からでも見える巨大な足跡。
確認できたゴーレムのルートから大きく外れた場所に刻まれたそれに、セリオスは訝しむ。
「巡回に規則性はないのか、それとも何かを発見して突発的に動いただけなのか……」
相変わらず同じ所を行ったり来たりしているゴーレムを注意深く見つめながら、セリオスは城壁を移動し始めた。
「潜入は成功したようです」
「そうか、無事発見してくれるといいが」
セリオスからの合図を受けたAlexandraは、帝国軍と共に城外で待機していた。
Alexandraは仲間達からの要請を受け次第、帝国軍と共に迅速に救助活動に赴く為、馬車や担架を用意し万全を期している。
「しかし、救助者に壁を登らせるわけにはいかんか」
「当然城門のどれかを解放する必要があります。なれば、アレの排除が必要でしょう。将軍の力頼りにします」
「ああ、そうなれば全力で排除しよう」
そう言って二人は城門を守るゴーレムを睨み付けた。
●
「無事か!」
音の出所へ真っ先に辿り着いたのはベルクとハヤトだった。
二人は薄暗い建物の中へと足を踏み入る。
「助けか」
奥から出てきたのは一人の銀狐のハーフビーストだった。
「貴殿が族長殿か?」
その威厳のある佇まいに、ベルクが問いかける。
するとその人物は頷き、カルラと名乗った。
「我は北壁の防人が一壁、オスマットのベルクと申します。帝国軍リカルダ将軍の命を受け、貴殿等の救出に馳せ参じました」
ベルクはカルラの前で膝を付き首を垂れると、リカルダの親書を差し出す。
「そう、帝国の将軍が……」
親書を受け取ったカルラは、どこか複雑な表情を浮かべつつも、二人に礼を述べた。
「しかし、1年もよく生きてたな。正直、生きてるか半信半疑だったぜ」
「逃げる事だけは得意なのよ」
「いや、純粋にすげぇと思うぜ」
自嘲気味に笑ったカルラにハヤトはにかりと笑い返す。
「もうすぐ他の者も合流します。撤収の準備を」
「待って、他にも仲間達が隠れている場所があるの」
撤収を急かすベルクに、カルラは街の地図を書き住民が隠れ潜んでいる場所を示した。
「こんなにも……」
その人数に二人は驚く。合計で100名ほどが3か所に別れて隠れているらしい。
二人がどう救出したものかと思案していると、他の仲間達も合流してきた。
「熱感知……近寄れねぇって事か。つまり――」
「やっぱり城門を押さえてるアレを何とかしないと駄目って事だね」
カルラの話ではゴーレムは熱でも敵を感知との事だった。冒険者達は新たな情報を元に作戦を練り直していく。
結果、四方に逃れている住民達を冒険者達が手分けして東門へ集め、囮役がゴーレムを引っ張っている間に通り抜けるという作戦が立案された。
「カルラ、先に門へ。大丈夫、仲間達に任せておけば何も問題ありません」
「……わかったわ、セツリがそう言うのなら」
ここにいる住民達はセツリが受け持つこととなり、冒険者達は各々散っていく。
「じゃ正午に!」
最後にララベルが飛び出し、本当の救出作戦が始まった。
●
「なるほど、そう言う事か」
「うん、囮役、結構重要かも」
再び城壁に登ったアスティンがセリオスに作戦の概要を話す。同時に相棒のディディを使いAlexandra達にも情報を伝えたアスティンはチラリと天を仰いだ。
「作戦開始までもうすぐだね」
もうすぐ日が天頂を指す。アスティンはセリオスに目配せすると、二人は城壁を走り東門を目指した。
●
街の中に散った冒険者達はそれぞれ担当する避難場所へと向かっていた。
「これでいいのかな……?」
ララベルはカルラに教えてもらったリズムで壁を打ちしばらく待つと、ドアがゆっくりと開いた。
中からは住民と思しき人々が不安気に顔を覗かせている。
「僕はララベル。皆を助けに来た冒険者だよ!」
ララベルは人好きのする笑顔を浮かべ住民達に挨拶しつつ、事の経緯を説明する。
「僕達が必ずこの街から出してあげるから、安心して着いてきて!」
ララベルは足が悪いという老人を背負うと、避難民たちを連れ裏道を東門へと急ぐ。
ララベルと同じように四方に散った、ベルク、トーラもそれぞれ住民と合流を果たし、ゴーレムの眼を掻い潜りつつ東門へと近づいていた――。
●
帝国軍はリカルダを主とする陽動班と、東門へと向かう救出班の二手に分かれる。
「正午だな。作戦を開始するぞ!」
南門に残ったリカルダの声に兵達が応え、いよいよ救出作戦が開始された。
「動いてもらいましょう」
不動のまま動こうとしないゴーレムへ向け、Alexandraが魔法を放つ。
「リカルダ将軍、後は任せます」
「うむ!」
Alexandraの魔法に反応し、動き出したゴーレムにリカルダが切り込む。
一足に距離を詰めたリカルダがゴーレムに向け真紅の大剣を一薙ぎすると、硬質な身体がまるでバターでも切るように真っ二つに両断された。
「……これが帝国将軍の実力」
Alexandraはリカルダの力量を測りつつ、ゴーレムを寄せる為の魔法を城門付近から街中へと打ち込んでいく。
そして、エーテルに釣られたゴーレムを、狭所で待ち構えるリカルダが両断していった。
その頃、街中では――。
「はっは! 鈍いぞ、お前等!!」
ハヤトがスキル全開で街中を駆け回る。
当然ゴーレムはハヤトのエーテルに惹かれるようにわらわらと集まってくるのだが、その速度にまったくついて行くことが出来ず、飛ばした腕も明後日の方向へと飛んでいく。
「一体どんだけいやがんだよ」
ハヤトは建物の屋根に上り眼下を見下ろした。
いつしかハヤトを追う数は、通りを埋め尽くすまでに膨れ上がっている。
「こうなりゃ、どこまで集まるかやってみるか」
ハヤトは不敵に微笑むと、再びスキル全開で別の屋根へと飛び移り、街の西門を目指す。
引き連れたゴーレムが感知範囲外に出ないギリギリをキープしつつ、ハヤトは街を駆け回る――。
一方、東門では――。
「ディディ、ちょっと辛いけど、引き付け頼むよ」
相棒の大鼬とおでこを合わせたアスティンは、城壁から城門近くへとディディを放つ。
途端、エーテルリンクに反応したのか、城門を守っていたゴーレムが城外へと釣られていった。
「セリオス!」
「追撃はさせんさ」
アスティンの合図を受け、セリオスが街中へ煙幕を放ち、門番を追おうとしたゴーレム達を新たなエーテル反応で釣った。
この二人の連携により、東門はがら空きとなる。
「今だ」
その好機にベルクが合図を送ると、意を決した住民達が東門へと駆け出した。
同時に、ララベル、トーラ、セツリが導いてきた住民達も無人の東門へと殺到する。
「一度に抜けるには狭いので、順番に!」
小さな子供を3人も抱えたトーラが声を上げる。
「居た、帝国軍だ! 先に行くよ!」
門の先に帝国軍を見つけ、ララベルは老人を背負ったまま飛び出した。
「さぁ、カルラも」
「私は最後でいいわ。皆の脱出を確認してからよ」
「……わかりました、では私も付き合います」
そう言ってセツリは目の不自由なカルラの手を取る。
「最後の一人です!」
そうしているうちに、トーラが最後の住民を帝国軍に引き渡し、救助はすべて完了した。
「終わったな。ではとっとと逃げるぞ」
城壁の上から避難を見守っていたセリオスが、最後に一発打ち込み城壁から飛び降りる。
「ディディ!」
それに合わせ、アスティンがエーテルリンクを切った。
すると、ディディを追っていたゴーレムが対象を見失い、城門へと戻ってくる。
「さて、北壁の民を閉じ込めていた報いを受けてもらおうか」
「そうだね。彼等を一年も苦しめた罰はきっちり清算してもらわないと」
単体で戻ってくるゴーレムを前に、ベルクとララベルが剣を取った。
二人はうっぷんを晴らすかのように苛烈に切り込んでいく――。
●
避難民を引き連れ街を脱した一行。
「3体ばかしやったがキリがねぇな。どんどんわいてきやがるぜ」
最後にハヤトが合流し、作戦は終了となった。
「ゴーレムを生み出している何かが居るのかもしれませんね」
遠ざかってく街を眺めトーラが呟く。
「いつか奪還できるときは来るのかねぇ……」
「必ずや、奪還して見せるとも」
ハヤトの呟きにベルクが決意を滲ませ答えた。
こうして城壁に閉じ込められていたヤーデの民は無事に救出された。
果たしてヤーデを取り戻す日は訪れるのか。それはまだ誰にもわからない――。
マスターコメント
ショートシナリオR難しい 報酬:多い8 / 4〜8人
2021年12月16日 12時54分10秒 公開
相談掲示板
うーん、思わぬ里帰りとなりました……考えなかったわけではないですが、1人でいけるものでもなかったですし……帝国軍が依頼を持ってくれる、というのは有り難いですね(※正式な形で依頼された帝国軍のものしか認識してない あ、ヒーラーのセツリと言います。よろしくおねがいします。 色んな意味で、生き残りがいれば「会えば話は分かる」ので、どうやって入って探すか、だけですね。 陽動をかける、にしても大騒ぎになれば探すどころでもなく……発見できて、連れて逃げる段階になれば必要になるかもしれませんが。
>進入 とりあえずは入り口を突破しないとどうにもなりませんか。 全ての入り口に見張りが立っている、ということですが……そう簡単に通り抜けられるなら「見張り」にはならない、ですね。 逆に言えば、城壁部分ならあまり見咎められることなく街に近づけそうなので、そこからなんとか壁を乗り越えるか、中にいるだろうk……じゃなく、族長に連絡を取るか。 「冒険者が来たことを伝える」だけならどうにか、どうとでもなりそうなんですが、「それを向こうが承知したことの確認」「あちらからの連絡の受け取り方」が問題、と。 そこをどうにかクリアすれば、クリーパーの能力(特に感知関係)が分かるので大分動き易くなるはず、です。
シーフのトーラです。 救出作戦頑張りましょう! 半数がシーフですし、壁を越えるのは壁歩きで登ってからロープを下ろせば何とかなりそうですね。 あとは捜波なども使って人を見付けれれば情報も得れそうです。 あとは、その情報からどうやって住人の方を脱出させるか決めておきたいですね。
シーフのベルクだ、よろしく頼む。 とりあえず早めに救出対象たちと接触を持ちたいな。 OPを見る限りだと限界が近いようだし、放置しておくと暴走されて被害が出るかもしれん。 リカルダ将軍に一筆手紙を書いてもらって我らが帝国軍の先遣隊であり、将軍をはじめ帝国軍も来ていることを伝えればだいぶ御しやすくはなりそうか?
キャスター、クラウディアです。よしなに。 …私事ながら、セツリさんの御姿を見て少しほっとしました。 今回の依頼…非常に個人的な理由で申し訳ないのですが。 隠密行動に関して、私が加わっての連携は難しそうです。 と言うのは、敵戦力の【エーテル感応】…主立って魔法やスキルに反応とありますが。 体質(〈スキル:なきものの慟哭〉に記載)上、黙っていても私に対して刺さりそうで。 都合、行動は陽動がメインとなりそうです。
あ、先に話した【エーテル感応】のことを考えると… 〈スキル:捜波〉をはじめ、エーテル操作を伴う行動は逆探知を受ける可能性が極めて高い。 単独で利用するのはリスクが高いと考えられる点、諌言として。
あ。確かに捜波は感知を受けそうですね。 それなら、ゴーレムの情報を聴けてそれが分かったら、捜波をあえて使って誘導するのはどうでしょうか?
?(首かしげ)……ああ、その節はお騒がせしました(かるく頭を下げる)>姿を見てほっとした >進入 壁登りからロープ、というのが手堅そうですね。 (進入時点ではPL情報の)エーテル感知で壁歩きも反応しそうですが、そこまで言うと何もできなくなりますし……「感知してからこちらに寄ってくるまで」の間に潜伏状態に移行出来れば良し、といったところでしょうか。 「見えない場所にいようがスキルを使えば寄ってくる」「その割には距離が近くてもスキル等使ってなければばれない」あたりである程度推察できれば、その後の行動にも(族長接触からの情報を得る前でも)スキルによる誘導等は繋げられる、かも? >接触 生き残っているなら私の知り合いだと思うので、話自体は出来ますが……外の状況を信じてもらったり、希望を与える、という意味でなら避難先含めて帝国軍からの手紙はあってもいいかもしれません。 とにかく、どう早く見つけるか、ですね。 んー……捜波等が積極的な捜索よりも陽動的な使い方になってしまうなら、族長側からの感知を信じてエーテルを伴わない方法で振動(自然なものやクリーパーのものと区別できるもの)で「敵ではない誰かが来た」と知らせて、あちらからのアクションを期待するという手も?
・・・・ん、遅くなったがシューターのセリオスだ、よろしく頼む とりあえず壁登りからロープで俺も異論無い。中に入らないと話にならないからな。 接触することも優先でいいと思う、まずは見つけないと始まらん。 あとはどうやってクリーパーの目をかいくぐるかだな すでに言われてるがエーテル感応が厄介だな。 セツリの言う通りある程度能力を把握しないとおちおちスキルも使えんだろうしな
おーっす! ゴブリンのシーフ、ブレイブファング傭兵団のハヤト=ヴォルファングだ、よろしくな!! さて、このゴーレムのエーテル感知ってのは族長さんの《超聴覚》らしきスキルには反応してなさそーだが汎用スキルには反応しねぇ感じなのかな? もしそうなら隠れてる民衆を探すのに匂いや音で辿るってのは有効になりそーだがな。 今んとこは民衆を探してる間は囮になって引き付けとこーかと考えてるがみんなの意見によっては違う動きでも問題ねーぜ!
手紙もさることながら、知名度のある人物も一つの手段となりましょう。 特に今回は、リカルダさんの率いる帝国兵が同行します。 彼らの存在。特に旧体制で将軍、さらに末席とはいえ皇族の剣術指南役であるリカルダさんその人。 この存在が与える影響は大きいと思います。 ―帝国兵から、現場への同行者を募る ないし引き抜くのはいかがでしょう? それと…やはり民を連れ帰るわけです、帰りの道筋も必要となりましょう。 標的そのものではないものの、城門を遮るゴーレム型を1体は排除すべきと考えます。 また、避難にあたり負傷者の手当てや移送の手段も確保できると、帰りがスムーズとなるやも。 目立ちますが、こちらで荷馬車も用意しておくことを視野に入れます。 さて、そこで…なのですが。 今回は帝国兵を含めて、チームを3つに分けるのはいかがでしょう? 内訳は以下、こちらです。 [陽動・退路確保] [救護・護送] [潜入・捜索] ここまでの話で、私達は主に[潜入・捜索]にあたっての相談を進めております。 こちらはやはり冒険者から大部分をあてがう形となるでしょうが、先に話した通り帝国兵からの起用も効果ありかと。 次に[陽動・退路確保]。 こちらは逆に、授受者でさえあれば帝国兵のみでも対応のしようがあります。 が、排除まで求めるなら冒険者からの立候補が少数でもあれば…と。 最後に[救護・護送]。 こちらは安全さえ確保できれば帝国一般兵でも可能と見積もります。 彼らは非授受者ながら"一般人"ではありませんで、【絶叫】で一気に恐慌状態に…ということはなさそうですし。 此方への冒険者の配置…は、作戦次第でしょうか。
―ちなみに、下記草案に沿う場合は私が[陽動・退路確保]にあたろうかな と。 始めに話した通り隠密行動に向きではない、火力型のキャスターであります故。
班分けですけど、同時にやる事ばかりでも無いですし、[潜入・捜索]を全員もしくは希望者でやって、その後[陽動・退路確保]と[救護・護送]で分かれた方が良くないでしょうか? カルラさんに会えたら村の方の数と居場所は把握できるでしょうし、その後二班に分かれる感じで。
<班分け そうだな。全員でやっても見つかりやすくなるだけだし、潜入するところはすでに出てる壁歩きロープで侵入。そのあとは分かれて長老たちを探す組とそれらが動きやすいように、かつ脱出しやすいよう陽動で分かれていいと思う とりあえず俺は陽動を希望しておくな。
顔出し遅れてごめん。 シューターのアスティン。よろしく。 ・・・少し気になったんだけど。エーテル感応って ペットとのエーテルリンクにはどう反応するんだろう・・・? もしエーテルリンクにも反応するなら、逆に大鼬や狼の機動力を生かして 陽動、注意の引きつけがしやすいかもだけど。 あとハヤトの言うように汎用技能だけど、 テレパスとか幽体離脱とか体の外に働きかけるものは 感知されやすいんじゃないかな。 五感強化系や知識系はエーテルが外に出てるとはあんまり思えないし。
>エーテル感知 エーテルを伴わない身体感覚によるスキル等は反応しないように見受けられますね。 そういったスキルは積極的に利用してもいいのでは、と。 エーテルリンクは……動物と冒険者、両方に反応しそうな気もします。 >班分け 班を分けること自体には異論はありません。ただ、トーラくんのいうように最初はある程度まとまって(必要に応じて一時的に敵を引き付ける役など出すことはアリ)になるかと。 陽動・退路確保にしても「生存者がどこにどれだけいるのか」が分からないと「敵をどこに引き付けるか」「退路はどう取るか」が決めにくい気がします。別れた状態で細かいやりとりは難しいでしょうし。 生存者と接触し、陽動・退路確保と護送・救護で段取りを確認出来てから役割ごとに行動、という感じかなと。 いずれにせよ、私は生存者対応メインのつもりです。
わかりました。実動の指針はトーラさん、セツリさんのそれでいきましょう。 それでは私は、帝国兵とのやり取りをメインとして救護・護送・退路確保の段取りに集中しようかと。 ーさておき、先程 "「敵ではない誰かが来た」と知らせてアクションを期待する" との話が出てましたが。 例えばの話、捜索の道中でマーキングを行うのはいかがでしょう? 具体的には、通りがかった壁ないし柱に武器で傷を入れるか、閃光塗料を使うとか。 明確な痕跡を残す動作は相応の意思ある音を立てますから、これを拾ってもらえれば或いは…と。
<マーキング マーキングは確かに普通ではない振動が起きるだろうから、いいかもね。 地面の微細な振動を感じ取るってことだし、地面に武器で文字を書くように削る とかもいいかもね。文字を書く動きって長く曲がりくねった動きになるから、 普段と明らかに違う振動の痕跡、に気が付いてもらえるかも。
我は生存者対応に回ろう。 壁歩きと蜘蛛糸を持っていくとしよう。
>マーキング 異存ありません。 目印にもなりますし。