その天啓は是か非か、それとも
狐野径
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シナリオID:1677
オープニング
フィルエス大森林の隅であり、ヒューマンの住む領域と接する里。
人の動きが大きいところでもあるけれども、平和や平穏そのものの日々が続いていた。
昼間は働き、夜は安全な家で眠ることができる――そんな平穏な日々が続くと誰もが思える、そのような里だった。
ニーアもそうだと思っていた。赤子のレーチェの世話をして、眠っている間に、大人のごはんの支度をする。夫のリイヤがいて、その両親がいて、穏やかな日々が続く、と。
ニーアは鍋を火にかけている間、子の様子を見るため、その部屋に入った。
赤子の用のベッドの中にいる赤子はすやすや寝ている。
何か違和感はあった。
布団が乱れているけれども、赤子が動いたからかもしれない。
枕代わりに使っている、畳んだ布が、赤子の顔にかかっているのはおかしい。
それでも、赤子が何かしたのかも、と思ってごまかした。
赤子の顔にかかっている布をどける。
違和感が、現実になった。
そこに眠っている赤子は、自分の子ではなかった。
「いやああああああああああああああああああ! レーチェ、レーチェはどこっ!?」
ニーアは悲鳴を上げた。
震えながら周囲を見る。
赤子以外の違和感を探すように。
窓は?
窓は閉まっている。
部屋の隅に、ベッドの下に、天井に……何かいないか、いるのか――。
目に見える範囲である違和感は、赤子のみ。
赤子は突然起こされたため、泣き叫ぶ。
赤子からすれば、匂いが違うし、おかしいと感じる。
それでも、それを確かめるすべはなかった。
夫やその両親が部屋に入る。
妻の言葉を聞かずとも、赤子を見れば何かが起こっているのはわかる。
家の外にも彼女の声は響く。
尋常ではない声に、近隣住民は武器となるものを手に駆けつける。
中に入ると、住民たちは、何か言う。
聞き取れず、
「落ち着け。何が、あったんだい」
と、いうことしかできない。
リイヤたちは慌てて何度か言う。落ち着いてきたのか、伝わるように、
「……レーチェが……レーチェが連れ去られたんだ」
と言えたのは、里人が駆けつけてから若干時間は経っていた。
里人たちは、赤子の泣き声がするため困惑する。
ただ、言われれば赤子の声が違うかもしれないし、ニーアも誰もあやそうとしないことがおかしい。
赤子がいないのに赤子の泣き声がする?
そこに、何等かで赤子がいるということだ。
駆けつけた人たちは戦慄した。
「取り換え子か……」
駆けつけた人のうち誰かがぽつり言った。
その瞬間、ようやく赤子がいる意味をニーアやリイヤたちは今知ったかのように、目を見開く。
「なんでうちの子がっ!」とリイヤが叫び、壁をこぶしでたたき、
「うわあああああああああああああああああああああああああ」
と、慟哭する。認めたくないどころか、排除していた知識。
里人も、彼の両親も止められない。
ニーアも泣き、どうしようもできない。
リイヤは口をつぐみ、肩で息をしていた。
そして、口をついた言葉は、「殺してやる! 犯人を見つけて、殺してやる」だった。
里人は押しとどめる。
「だめだ! それはしてはならない」
それをしてしまえば、赤子が取り戻せても、穏やかに暮らせるわけがない。
気持ちはわかる。
しかし、絶対それはさせてはいけない。
「なんで、なんでっ!」
リイヤは叫ぶ。
「落ち着け。とりあえず、子どもを取り返そう。そして、その子は戻そう」
里の人は提案する。
リイヤは血を吐くように「頼む」と言った。
リイヤにしてみれば、冷静になったところで、許すことはできない。
初めてできた子。
いや、初めてでなくとも、何人目でも子どもが変わっていたら許せない。
「その子はこちらで面倒見るよ」
里の人が告げる。
たぶん、見知らぬ赤子がここにいることは、リイヤたちにとって不安定になるだろうから。
犯人に腹を立てるとしても、ここにいる赤子に八つ当たりをするのは違う話だから。
いや、里の人にとっても、赤子は気持ちがいいものではない。
もしかしたら、自分たちに牙をむける、魔獣のようなものかもしれないから。
違うとわかっているけれども、理性と感情は一致するわけではない。
●取り換え子について
取り換え子の話は、この里の人すべてが常に意識しているわけではないが、記憶していることではあった。
フィルエス大森林のとある氏族が行うもの。
その氏族は奥地に住まう小さな規模だ。
天啓により、時折、子を入れ替える、ことがある。
自分たちの血が濃くなるのを防ぐためという話もあるが定かではない。
それも、取り換え、はエルフだけでなく、ヒューマンとも行っていると風の噂で聞いている。替えられた方は情報を持っていなければ、取り戻すことはできないので泣き寝入りするしかない。
その見知らぬ子をわが子のように育てられる親や人がいるかどうかは別である。そこから、赤子は捨てられる――可能性が高い。
そうなると、その氏族の子は、育つかは不明だ。
なお、ここ数十年、この里では被害は起こらなかった。
だから、ニーアとリイヤの子レーチェが取り換えられたという報告を受け、族長はうめいた。
「まだ、続いていたのか」
エルフが閉鎖的な生活を送ることは多々ある。
この里はたまたまヒューマンと生活圏が交わるため、互いに行き来しているというだけにすぎない。
奥地になればなるほど、出入りするのは限られる。
「そういうことか、どうかは……」
族長とてわからない。
ただ、明確にわかることは、こういったことはやめてもらいたいということ。
最悪、その子をこの里で育てるにしても、平等に育てられるかというと自身はない。
「エルフ同士でもそうだ。もし、ヒューマンのところに、エルフの子がおれば」
十中八九、捨てられる可能性がある。
そうなれば、その氏族の子は自力で何もできないのに、死と隣り合わせの環境に置かれるだろう。
そこの里の族長は考える。
冒険者に頼むべきことは、レーチェの奪還であり、ここにいる子の返還だ。
「ただ、返したところで……どうなるかは」
族長はわからない。
その氏族にとって、取り換え子として外に出した子の位置づけは不明だから。
レーチェの奪還について、近くの冒険者ギルドに依頼を出した。
●元の里
フィルエス大森林の奥地にあるその里は、里の様子自体は他の氏族の里と変わらない。
森の恵みを受け、暮らす。
極端に、里以外との交流がない。
時折、天啓があり、生まれてきた子が外に出され、子をもらってくる。
子を渡す代わりに、子をもらう。
問題ない行為だと認識している。
氏族で、今回、取り換え子を実施している。
去年はなかった。子を産んだのがヒューマンの女性だったから。
今回は、里に住まうエルフの夫婦の間の子だったため、天啓があった。
そして、天啓は速やかに実行された。
首も据わらぬ赤子が、別の里に出された。
そこにいた、首が据わらぬ赤子がここに戻された。
母親であるエルフの女性は理解し、受け入れる。腕の中の子をあやし、乳を飲ます。
この子は私の子なのだ、と。
別のところ間違って生まれて、ここに戻ってきたのだ、と。
「よかったわね」
赤子を見つめる目は、どこまでも慈愛に満ちたものだった。
解説
マスターより
リプレイ
コルネリウス・アーラは今回の依頼で、自分の境遇を考えた。
フィルエス大森林に捨てられていたのを、育ての父に拾われた。
取り換え子の風習がかかわるのではないかと考えた。
「私の出自に関係あるかもしれないですが、推測はやめておきましょう。この先、惨劇が起こらないようにすることが必要です」
依頼のことに集中した。
ララノアは取り換え子が風習であることは、氏族全体のことであり、ハイアルヴから告げられることの可能性があると考えた。それはハイアイヴに対する見方が変わるものだ。
さらに、コルネリウスの境遇に取り換え子がかかわるかもしれないと感じられる。
「取り換え子、愛した人と、愛しいわが子がある日突然変わっていたら……私ならどうするのでしょう……コルネさまのお心を考えると、心が痛みます」
その行為には怒りという感情が強いが、コルネリウスの気持ちには寄り添いたかった。
ハヤト=ガラン=ヴォルファングは、義姉のコルネリウスの顔色がさえないのが気になる。
(捨て子だって聞いてるし、もしかしてこの風習の被害者なのか?)
現在は可能性であり、わからないため特に問わない。
ただ、取り換え子については怒りを覚える。
「勝手に赤ん坊を入れ替えちまうなんて風習は野放しにできねぇぜ!」
その風習は止めないと、今後も同じことが起こりかねない。
サフィラ・アズラク・ナハルハルアリーブは取り換え子の話に、やるせない気持ちになる。
「必要なことかもしれないけど、黙ってやるのはよくないよねっ」
氏族全体がかかわっているならば巫女の発言があるだろうと考えると、落ち着かない。
「……その時は、話しておいた方がいいよね」
サフィラはちらりとコルネリウスを見た。
必要なら、自分の知ることを話そうと決意した。
ハリーヌ・ヨツユビは取り換え子の風習について、苛立つ。
「このようなことをして、今まで里に攻め込まれなかったのはただの幸運でございますよ」
イズレンディル・パラリムはその言葉を聞いて「確かに」と返す。
「……ヨツユビさんがいうように、これまで、話が大きくならなかったことが不思議です」
「その里に、ガツンとわからせてやる必要がございます」
ハリーヌが言っていることから、イズレンディルは考える。
誰も文句を言わなかったというのは、泣き寝入りをしていたり、争いを好まないとかあったのかもしれない。
大森林やそこに住まうエルフの安寧を守るためには、今回のことは放置できない。
人々が悲しむことがないこと、が大切だから。
どこかで落としどころを見出さないとならない。
一行は依頼人の里に到着する。
レーチェ奪還とそれに付随することを考えるため、不足する情報を集めるために動き出す。
フリューリングスルフト=ティエラは赤子の様子を見た。
泣く赤子は、あやす彼女の指をしっかりと握り返す。
「名前も知りたいと思うさねぇ」
それから、調査に向かった。
●調査
ハリーヌはヒューマンの村に足を延ばす。
取り換え子がエルフと行われるとは限らない。
「コルネリウス様、大変失礼ではございますが、ご年齢をお伺いしても?」
コルネリウスはハリーヌが問う意味がわかり瞳は揺れた。
「関係するかどうかって考えてしまいますよね」
「考えてしまうのも、知りたいと思うのも致し方がないでございましょう」
コルネリウスは年齢を答える。礼を述べ、ハリーヌは出かけて行った。
村で話を聞くと、20年ほど前にエルフの赤子にすり替えられるということはあったという。
その赤子をどうしたかについては、誰もが口をつぐんだ。
「森に捨てたということでございますか?」
ハリーヌが正面から切り込むと、肯定を表すような沈黙が返る。
悲しみと後悔を感じるものはあったが、嫌な雰囲気だった。
コルネリウスはララノアとともに、取り換え子をしている氏族の里近くで聞き込みをする。
コルネリウスは取り換え子の調査だとしても、自分の出身がかかわるかもしれないと思うと、どこか落ち着かなかった。だから、ララノアが来てくれるとほっとした。
聞き込みでわかるのは、取り換え子をしているという噂はあるが、近いところでは行わないということだった。
二人は情報を持って、仲間と合流する。
サフィラとハヤトは被害に遭った夫婦ニーアとリイヤから、探すべき赤子レーチェの特徴を聞いた。
赤子を見つけても、本人かどうかわからないで連れ戻すことはできない。
さらに、ハヤトはレーチェが使っていた布の匂いを鋭い嗅覚を用い嗅ぎ、覚えた。手がかりが多いほうがいい。
そのあと、サフィラとハヤトはエルフの里への聞き込みに向かった。
現在いる里を中心に、取り換え子の被害の状況や噂などあれば収集する。
被害があったのは数十年前ということもある。忘れたころに事件化するのかもしれない。
それに、子が生まれたら必ず取り換えるとは限らないのかもしれないし、複数の場所を選んでいるようだった。
フリューリングスルフトは問題の里の周辺地理を確認しにく途中、聞き込みをした。他に取り換え子の記録や犯人を見たという情報を得たかった。
かつて被害が遭ったということはあっても、最近、それらしい人を見かけたということはなかった。
問題の里には到着はできた。
見る限り、どこにでもあるエルフの里だ。ただ、静寂に包まれてはいる。
里に入った瞬間、見張りのエルフが現れた。
「何をしに来た」
「勝手に入ったらいけなかったん? それは謝るさぁ。うちは風習についての調査をして――」
「ここは特に何もない」
「それはわかんないよ。服装でも、取り換え子とか……」
見張りらしいエルフは通してくれず、族長たちに指示を仰ぐというので、フリューリングスルフトはその場を離れた。
イズレンディルは仲間の情報を待つ間に、同交渉するかなど考えていた。
彼自身は、冒険者ギルドにおいて一つの確認をしていた。
孤児となった子の里親を募集できるかや、もしも引き取りたいというのはどうかということだ。ギルドには情報も集まるところであるため、相談相手としては可能だ。
今ある問題は、取り換え子をせずに済む方法、里を出された子をどうするかが現在ある。
最善を尽くし、現在の問題と今後の憂いを取り除きたい。
●対決
調査の結果をもとに現地に向かう。
ただし、里に入る前にレーチェの居場所を捜索しておく。
サフィラが【偽りの示寂】や【静寂の揺籃】を駆使し、調査する。
耳を澄ませ、赤子の声や、最近生まれた子の話がないかなど探す。
子どもの声がした方に向かうと、ヒューマンの女性がよちよち歩きの子と散歩をしていた。
サフィラは目を見張った。今は関係ないことなため、捜索を続行した。
すると、赤子の泣き声がした。そちらに向かうと、家の中から、赤子をあやすエルフの女性が現れた。
確認のためできる限り近づく。赤子はレーチェであった。
家の場所や、女性を覚え、戻る。
イズレンディルは里に足を踏み入れた。
「仲裁のため、パラリムの氏族としてここに来ました。なぜ我々が来たか、心当たりはあると思いますが」
見張りのエルフは「何のことかわからない」と告げる。
ハヤトは激怒し、前に出る。
「おぅおぅ! 何の権利があって、他人の子をさらって入れ替えるなんてことしやがってんだ!?」
ララノアがそれに加わり、訴える。
「子供が取り換えられた悲しいです。里の未来は守るとしても、子どもの人生は守られません」
見張りが対処に困っていたところに、他のエルフが来る。族長や武装をしている者も。
ハリーヌが紙の束を見せ言葉を紡いだ。
「武装しているとは、それ相応の覚悟はおありだったのでございますか。とはいえ、これはヒューマンの村々で調べた取り換え子の被害の記録と当事者たちの声でございます。このようなことを続けて、いつまでも里が無事でいられると思うのでございますか? それに、取り換えられた子の運命をご存じでございますか?」
継ぐようにララノアがいう。
「赤子のまま死ぬ子もいます! ここの里で生まれた子の未来は保証できないではないですか! 取り換え子をするのは、氏族が生き延びるというだけの、ただの保身です! 子どもは保身や道具ではありません!」
フリューリングスルフトはもしもを考え、周囲の警戒をする。今は黙っているけれども、収取がつかなくなれば対応は考える。
イズレンディルは氏族の出方をうかがいつつ、言葉を紡ぐ。
「取り換え子を行っているということでよろしいですね? 大森林のエルフたちも怒りを覚えているようです。その上、ヒューマンの方でも行われているそうですね」
淡々と現実を突きつけると、族長が答えた。
「小さな氏族であり、ひっそりと暮らしている。生き延びるため、他の血を入れることは考える。昔からしていることであり、いつどの子で行うかは、どこの子なのかはハイアイヴからの告げだ」
ララノアは怒りの感情が一気に冷える。
「ハイアイヴからいただくのですか? ハイアルヴはもっと優しい存在なのかと思っていました……時に厳しく、ということでしょうか? それとも、誰か偽っている……?」
サフィラが首を横に振る。
「巫女さんの発言力の大きさとか影響力ってイヤになるほど知っているんだけど、お告げってその人たちにとって、絶対的で、たとえよくないことだとしても盲目的に信じ切っちゃうんだよね」
サフィラは氏族の者を見渡す。
「えっと、何が言いたいかっていうと。お告げも大事だけど、外にかかわることなら、ちゃんと外の人たちと話し合わないとトラブルになっちゃうよ?」
「周囲に混乱まき散らしているやつらに理解できるわけねぇだろ!」
と、ハヤトが吐き捨てるように言う。
氏族から「お告げが」「その子が必要で」といった声が聞こえる。
イズレンディルが「子を換える以外に考えないのですか?」と問うと、答えがある。
「……その子がこの里に必要な子だから、だ」
「親がいる子であれば、相手方に同意を得てからすべきではないのですか。それでも、相手の親が許してくれることは相当まれでしょう」
イズレンディルはこの氏族の言い分も聞いたところで、次に移る。
「冒険者ギルドに協力を仰ぎ、身寄りのない子を探して、引き取るのでもいいのでは? ギルドならば津々浦々にありますから、天啓に適う子を探せるかもしれません」
コルネリウスは一歩前に出た。
「この里に生まれた子たちの幸せを第一に考えてください」
氏族は動揺し、集まっている一組のエルフをちらりと見た。
冒険者もその視線の動きに気付く。
それにより、コルネリウスの両親らしい男女のエルフと、その子としているヒューマンの女性を知る。
コルネリウスは言葉を紡ぐが、それは震える。
「私はヒューマンの村に置かれ、森に捨てられたんですね。取り換え子だったんです……私は不要だったということですね」
イズレンディルが「ネリー」が声をかけると、コルネリウスは気丈にも微笑む。
「私は運よく、義父に拾われ、これまで幸せに育ててもらいました。一番、大切な人にも出会えた……けれど、つらい経験をした子もいるでしょう」
コルネリウスは真っ直ぐ要求を突き付けた。
「レーチェさんの帰りを待つ人がいます。返していただけませんか」
エルフの女性が前に出て「あの子が私の子よ!」と言う。
ハヤトは彼女からレーチェの匂いをかすかに感じた。
「里の風習で必要なことで割り切ってんのかもしんねぇーが、本当はお腹を痛めて産んだわが子を取り上げられて、心は苦しいんじゃねぇのかよ」
彼女の心理面を揺さぶるように言う。
「確かに、私が産んだわ。でも、あの子が私の子だもの! 返してもらったのよ!」
「はぁああ? てか、てめぇはそれでいいだろうが、相手は自分の子が取り上げられたんだぞ」
ハヤトが困惑する。
フリューリングスルフトは、女性に向かって優しく言う。
「生まれてくる前にさ、どっちに似ているんだろうとか、話したりせんかった? 子の未来を瞼の裏に描いてみたりしなかったさぁ?」
一旦切り、反応を見た。
「トクトクとおなかの中から伝わる命の音に嬉しくなって、名前を考えたり、本当に何も思わなかったさぁ? その間に培った気持ちは割り切れるかな?」
女性の瞳は揺れたが、悲鳴に近い声を上げた。
「仕方がないのっ! あの子は! フェアエは……別の子だったんだもの!」
イズレンディルは「このままだと」と声を張る。そして、目を引き付け、続けた。
「族長の合議の場に訴えることも必要かもしれません。ヒューマンにも影響を出していますし、最悪な場合、武力闘争につながるかもしれません」
里の者は息を飲んだ。
「こちらの要求はレーチェを引き渡してもらうこと。今後、このような強引な手段は行わないということです」
沈黙が流れる。相談するわけでもなく、族長にすべてゆだねるような。
族長は「わかった」と告げた。
そして、冒険者にレーチェを引き渡した。
イズレンディルは頭を下げた。
「ありがとうございます。養子縁組などの今後につていては、穏便に願いします」
コルネリウスは先ほどの家族と目が合った。泣きたいような、笑いたいような、よくわからない感情がわく。
「私の親は『父さん』ただ一人。家族は父さんの実家の兄弟です。……この世に生を与えてくれたことは、感謝しています」
コルネリウスは両親に頭を下げた。
仲間の気遣う表情を見ると自然と笑みが浮かんだ。
「レーチェさんのためにも早く戻りましょう!」
●帰路
「……あのさ、あたしも昔、地元で巫女さんやってたんだよね。それで……」
サフィラの告白にコルネリウスは首を横に振る。
ララノアはどこか寂し気に見えるコルネリウスに言う。
「コルネ様の周りには、素敵な方がたくさんいますし!」
コルネリウスは「ありがとう」と微笑んだ。
ハリーヌがフェアエという名の赤子の対応を切り出す。
「どちらも受け入れ難いようでございますから、孤児院に預けるのがよいでございますか」
イズレンディルは「そうなりますね」という。
コルネリウスは「いえ」ときっぱり言う。
「里子の希望があればよいですが、なければ私の実家に連れていき育てます」
その決断に、フリューリングスルフトがうなずく。里であやしたとき、しっかり握りしめてきた小さな手を思い出していた。
「名前もわかったのはよかったさぁ。あとは、母親の気持ちがどう動くかな……」
ハヤトは「そういうもんかなぁ」と言いつつも、
「でも、どうなるかなんて、わかんねぇからなぁ」
と続ける。良い方向へ変わってほしい。
レーチェは里で大歓迎され、驚いて大泣きする。
フェアエという名の赤子は、一旦、コルネリウスの実家に連れて行くということになりそうだった。
マスターコメント
ショートシナリオR難しい 報酬:多い7 / 4〜8人
2021年12月30日 19時28分53秒 公開
相談掲示板
改めてご挨拶…は不要な気もしますけれど。 ウォーリアのコルネリウスです、よろしくお願いします。 レーチェさんをどのように取り戻すかと、今いる赤子の先の事についてどうするか。 あとは里に対してどうすべきか、でしょうか。 ……私も、捨て子でしたので、エルフの赤子を放置して捨てられてしまうのは避けたいです。 それと、過去にも同じ記録があったというのも調べておきたいなと思っています。
改めましてイズレンディル・パラリムです。皆さんよろしくお願いしますね! 個人的な考えですと、取り換え子の風習事態を否定するつもりはないのですが… 少なくとも「無断で行っている」という点は大問題ですね。 大森林の中で氏族間のトラブルにも発展しかねない、いえ、外とのトラブルにもなりうる問題だと思っておりますので、その危険性を指摘した上での交渉を行いたい、というのがひとまずの所感になります。 行うのであればあくまでも双方の同意の上で。血を濃くしない事が目的なのであれば、養子縁組や里親の制度を根付かせたい、と感じました。 過去の記録についても調べたいですね。 里側の譲歩を引き出せれば過去についての調査も里内で行えるかもしれません。
ワタクシはハリーヌ。しがないヨツユビハリネズミでございます。 皆様、今回はよろしくお願いするでございますよ! それにしても、取り換え子でございますか。 天啓とはいえ、奇妙な風習でございますね。血を濃くしないため…でございますか。 個人的には、イズレンディル様が仰るように、取り換えるなら孤児院なり何なりと交渉するなり、もめ事になりにくい方法をとってほしいところでございますが…。 過去にも行われていたようでございますが、その時取り換えられた子供たちは今どのように過ごしているのでございましょうか? 記録を調べるのは良いでございますね。もし取り換えられたご当人に辿り着けたなら、その方々が今までどのような気持ちで生きてこられたかをお聞きしたうえで、問題の氏族の皆様への交渉を行いたいでございます。
おーっす! ブレイブファング傭兵団のハヤト=ヴォルファングだ、よろしくな!! 子供を無断で取り換えちまう風習ってないただけねぇな… やってる方に悪気がなかろーが、勝手に自分の子供を攫われた方からしたらただの犯罪に巻き込まれたに過ぎねぇもんな。 その辺の理屈が通用するくれーならそんな風習も続いちゃいねーだろーし難しい問題だよな。 手っ取り早く思いつくのはそんな風習の村を潰しちまうってとこだがそれじゃ解決しねーだろうし、やってる側は罪の意識もねーんだろ? クソっ!なんか良い案が思い浮かばねーな…
ハリーヌさん、ハヤトさん、宜しくお願いしますね! そうですね、理屈は通用しないでしょうから、実力行使も手段の一つですが、個人的には避けたいとは思いますので…そうすると、相手が納得しない前提での交渉になりますね。 少しわかりやすくする為に例え話にしてみますね。メタ要素はご勘弁下さい。 今回の件、構図としては「法には抵触しないが迷惑行為を続ける隣人にどう対処するか」という問題に似ております。 対処としては「迷惑行為をやめないと裁判所に訴えるぞ」と脅すのが有効です。 この時のポイントは実際に訴えなくてもいい事ですね。 相手に「本当に訴えられる」「訴えられたら負ける」と思わせるのが重要です。 その上で、「譲歩すれば訴えられずに丸く収まる」という道を用意すれば解決に至ります。 >具体的な方策 まず本気度を示す…ようは怒鳴り込むのが必須ですね。 それと、こういうのは単独の訴訟より集団訴訟の方が強いです。他に被害のあった集落を探し名簿でも作って突きつけてしまいましょう。被害者の会を作るようなものですね。 そして交渉のまとめ役が譲歩の案(互いの了承の元に取り換える事。養子縁組等)を提示し、相手に吞ませます。 役割分担はこのような形でしょうか。 ①怒鳴り込み役。相手側に本気の怒りを示す。 ②他集落での被害状況の調査役。単独ではなく周辺集落の総意だと示す。 ③交渉を纏める役。譲歩しないと大問題になると示して案を飲ませる。 交渉案で記載しましたが、最終手段として実力行使で脅す、というのも一つの手ですね。
ハリーヌさんはお久しぶりですね、よろしくお願いします! そうですね、流れとしてはイズさんの仰っているように同意の上で行う事が出来るのならば、一番穏便に行くと思います。 実力行使で潰すのは、同朋でもありますし、いよいよの最終手段とはしたいですが…致し方ない場合には私も同意します。 >具体的な方策 分担纏め、ありがとうございます。 役割を絞って動ければ説得力も増しそうですし良いですね。 最近は無かった、との事ですが複数事例があがりそうですし…私自身も、少し気になる事もあるので調査役をメインに動いても良いでしょうか? 取り換えられた子は…取り換え先で無事に育てられていればいいのですけれど、もしかしたら族長さんの懸念通り捨てられている子も多く居るのかもしれません。 ハリーヌさんの仰るようにご本人に接触が出来ればその情報も集めたいですね。 それも含めてデメリットが大きい事を突きつけたいです。
コルネリウス様、お久しぶりでございます。 お祝いを申し上げる機会がなかったのでございますが、生徒会役員へのご当選もおめでとうございます! ワタクシもいち学園生として応援しているでございますよ。 イズレンディル様、ハヤト様も、どうぞよろしくお願いするでございます! さて… 役割分担のご提示、ありがとうございます。 ワタクシはこのナリでございますから…怒鳴り込んでもナメられてしまいそうでございますね。 また、エルフの集落での調査も異種族でございますゆえ…少し不安でございます。 できれば、ワタクシは近隣のヒューマンの町や集落で、取り替え子やそのご家族の情報を集めたいでございます。 その後、交渉役の方のサポートに回れたらと思うでございます。
にゃ!シーフのサフィラだよっ! みんなよろしくねっ! 取替え子かぁ…何だか一筋縄では解決しそうにない問題だよねー(むむむとしかめっ面) 相手が『悪い事であるという認識がない』って言うのが1番のネックだよねっ イズの提案どおり、この集落だけじゃなくて他の集落でも被害がないか聞いて回って みんなで取替え子の集落に乗り込むのが効果ありそうだね! んー、あたしは②の変形で 『取替え子の風習ある里の突き止め』 『里に潜り込んでレーチェを探す』 って感じで動いてみよっかな
えと、えとあの!ヒーラーのララノアでし! よろしゅくおねがいしまし!!(がばちょ礼 こ、子供を取り替えるなど… 同意もなく、行く先も分からずともなれば…親御様達はどれほど不安でありましょう…(しゅん 取り替え子の里の天啓というものは、どのようにしてもたらされるのでしゅかね…巫女様、というものでしょうか…それとも別の? 気になりましゅのは、報復をしてはならない、という点でしょうか… 風習に反対することで何か悪いことが起きる…でしと、他の集落の方を説得していく必要もありそうにおもいましが…(ぅぅん
シーフのフリューリングスルフト、長いからフリューって呼んでさぁ♪ よろしくね! 取り換え子、そういう風習があるんやね。ふむ。 イズレンディルさんはわかりやすい例と、役割分担をありがとうさぁ♪ コルネさんは調査希望なんね、良いと思うさぁ 気になる事は納得いくまで調べた方が自分の為にもきっと良いと思うんさぁ。 うちはどうしようかな。 サッフィー(サフィラさん)と似たような感じで、レーチェを探したり、代わりに置いて行かれた子が……もし、もし本当の親元に帰っても、どうなるかわからんとあるから……万が一に備えて引き取ってくれる方を同時に探して置く(里子を募集しているという話を集める程度)のもしておきたいなと思う。 けど、怒鳴りこむ役が人数不足しそうなら、こう、こう、演技とかスキルを用いてうちもそっちに参加することも考えているさぁ。
提案のご確認ありがとうございます! 怒鳴り込む、と書きましたが真剣に怒りを訴える形であれば怒鳴らなくても大丈夫ですよ! ヒューマンの村々の調査もありがたいです。森の外にまで問題が波及する、となれば、問題化すると大変だ、という事により説得力を持たせられますね。 >取り替え子の里の天啓 通常、フィルエスで天啓といえばハイアルヴの巫女様ですね。この村にハイアルヴ様と交感出来る巫女様がいらっしゃるか……あるいは、それとは全然違う何か、ただの慣習という事もあり得ますが…。この辺りはわからないですね。 >報復をしてはならない おそらく里同士の衝突に繋がってはいけないから、という事かと思っておりました。 今のところ他の理由が思いつかないのですが、もしも何かあれば教えて頂けると助かります! >個人 私は怒鳴り込み役か交渉役か、と思っておりますが、今のところ交渉役でしょうか。 交渉に関しては、下記のように骨子を定義して詳細を肉付けしていこうとは思っております。 *** 交渉骨子 ①慣習の"目的"に理解を示す ②慣習を継続すると問題になるとの危機感を醸成する ③解決案を呑ませる
ハリーヌさんはありがとうございます。 生徒会のお仕事も冒険者のお仕事も頑張りたいので、一緒に過ごしていけると嬉しいです。 イズさんはまとめてくださってありがとうございます。 怒鳴り込み…もとい訴え役、でしょうか。 字数の関係にもよりますけれども、そちらにもなるべく回れたらいいなと思っています。 >取り替え子の里の天啓 ハイアルヴ様の天啓、私は全く触れたことがないのでどういったものか分からないのですけれど 取り替え子の天啓がどういった経緯で行われているかは気になりますし、確認はしても良い気がしました。 >里子 取り換えられたもともとのエルフの子については、おそらく元の里では暮らせない、ですよね…。サフィラさんやフリューさんが探してくださる引き取り手が見つかれば、そちらで優先して預けたいです。もし、いよいよ居ない場合は、私の実家の方にも掛け合っておきますね。
見たところ、調査役が多いようでございましょうでしかね… えと、大丈夫でありましたら、怒鳴り込み?訴え役?のようになれたらなと思いましで(がばちょ ハイアルヴといいますと、神聖なもなのようなイメージを持っていました…ハイアルヴというもの自体が分かりませんが、習慣の経緯については聞いてみたいかなと思いましゅた(ぺこ なるほど、部族間の衝突を避けるためにでしか(てぽむ それでも泣き寝入りや諦めとなると悲しいでしね…
う〜む… んじゃ、俺は怒鳴り込むほうでうごいてみるとすっかな~ やってる側の里の母親も自分が腹を痛めて産んだ子を取っかえられてよ、風習だからって理性で理解したとしても感情っつーか本能的な部分に訴えかけたらやっぱり嫌だって想いを引き出せんじゃねーかと思ってよ。 同意もなく無理矢理子どもを取り換えるなんざ金輪際やめねぇなら村ごと潰すぞって凄んでみんのもありかと思ってんぜ! 反対があればやめとくけどな。 そーいや、コルネも捨て子だったって言うが、ひょっとしてこの里の取り換え子だったり可能性もあんじゃねーのって思っちまうな。 もし、そうだとしたら里帰りってことになんのかね?
妄信している方もいるとは思いますが、内心はいやいやながらも天啓だから従っている、という方も、中にはいらっしゃるかもしれませんものね。 私も、それは少し、考えていました…。 父さんが詳しく知っているのかどうか解らないのですが、エルフの子が捨てられている状況なんて、そうそう無いと思いますし。 20年ほど前の事例を中心に調べてみますね。もし里帰りになったとして…両親が健在だとしても、複雑な気持ちにはなりそうですけれど。
天啓のやりかた、とかそういうんのか。ふむ。 手を伸ばせそうならそっちの調査もしてみるってするね。 一応こっちの調査の事前準備として、被害にあった里付近の地図とか入手出来たらと思うさぁ ……も、森だからあればいいなってぐらいの気持ちやけど。 それに周辺の里のある位置とか書き込んで、サッフィーと調査範囲被らんようにとか。 あとは移動距離から予想して里の特定に役立てられたらと思うさぁ。 首の座ってない赤子を抱いたまま何日も森の中は移動できないと思う、ので。 実際に怒鳴る必要はない!了解したさぁ! こう、こう……なんていうんやろ、堂々と毅然とした態度でって事やね。 ハヤトさんが目に見える「怒り」を見せて、それを誰かが「おさえる」っていうのも 良いかもしれん? コルネさんの里帰り……んむむ。むむむ。……なんていうたらいいのかはごめん、わからんのやけど…………はい!ぎゅっ!(コルネさんの手をぎゅっと握ろうとする) 解決出来るよう頑張るさぁ!
なんと。 もしコルネリウス様が例の里のご出身だとすると、取り替えによって一度ヒューマンの街か村に置かれてしまった可能性も…? そのような記録がないか、ワタクシのほうでも注意して調べてみるでございますよ。 過去に被害に遭われた赤ちゃんのご家族は、きっと今でも強い怒りを覚えておいででございましょう。 ワタクシはそれらをとりまとめ、例の里の皆様がいかに人々の恨みを買っているかを突きつけたいでございます。 このようなことを続ければ、いつ被害家族が武器を持って乗り込んでくるかわからないぞ。という風に、でございます。
コルネさんの過去に繋がる情報を得たい所ですね…。 交渉は此方で頑張りますので、しっかりと調べて下さい。 無事に情報が見つかる事を祈っております。 ララノアさん、訴え役ありがとうございます。では私は交渉役で動いてみますね。 ふふ、ハヤトさんに凄んで頂ければ、反論が出来る人はそうそういらっしゃらなさそうですね。 反対はありませんので是非。フリューさんに仲裁頂けるのも良い塩梅になりそうですよね。良いと思います。 >交渉 具体的には以下のように話を進めるつもりでおります。何かあればご指摘下さいね。 <交渉内容> 「血を濃くしない」「天啓である」という点には理解を示す事で、先方が感情的に話しを受け入れやすい状況をまず作ります。 但し、手法が”問題ある行為(周辺集落との軋轢が生じる)”をいう事を突き付けます。怒りの声や、集めて頂いた情報が、根拠であり説得力に繋がると思います。 最後に解決法の提示…双方の同意の上で取り換え子を行う、具体的には養子縁組や、捨て子を積極的に探して拾う、といった内容を提示いたします。
にゃ…取替え子の風習がある集落ってそう多くはないから、コルネの生まれ故郷…なのかもしれないんだね… (フリューの反対側から手をギュッと) レーチェ探すのとか取替え子の調査はあたし達にまっかせて! そしたらフリューと手分けして他の集落で取替え子が無かったか調査して、取替え子の集落を特定! それからニーアにレーチェの特徴や目印になるような痣とかあれば聞いて探す手ががりにしようっかな!
お気遣いなどもたくさんありがとうございます。 私もハッキリさせられたらいいな、と思いますので、過去分の調査頑張りますね。 (フリューさんとサフィラさんの手をギュッと握り返して) 取り替えられてしまった我が子を、今でも探している方もいらっしゃるかも知れませんものね。 出発まであと僅かですし、良い結果になりますように。 宜しくお願いします。