リンゴの実の香り、新酒を添えて

狐野径

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シナリオID:1658

オープニング

 辺境都市群でもドワーフ王国との国境にある、小さな領地にある町。
 果樹農業・果実酒醸造が盛んであり、今は、リンゴの収穫の最盛期である。
 リンゴの酒であるシードルを作るところもある。
 そのための果樹園では、リンゴの熟成を待ち、落下する寸前のものを取るところもあるため、リンゴの香りが強い。さらに、収穫されたリンゴを屋外で外気にさらすため、空気はリンゴの香りをまとう。
 熟成したリンゴは絞られ、樽に詰められ発酵される。
 すぐに飲めるようになるわけではなく、発酵・熟成させるため、時間がかかる。

 収穫や酒を造る過程が進むとともに、新酒の解禁日がやってくる。
 去年作った酒を外に出し、新たな酒を造る始まりとなる。
 一年の区切りともいえるのが解禁日だ。
 新酒解禁日は酒の買い付けに来る人が多い日でもある。
 だから、領内はある風習があった。
 訪れる人を歓迎しもてなすとともに、収穫祭を行うのだ。

 リンゴがあるから、人々は生きられる。
 リンゴによって、人と人がつながる。
 リンゴという恵みがあるからで、それへの感謝は自然に生じるもの。
 買ってくれる人への感謝も。
 リンゴが重要、人も大切。
 それが、新酒解禁日かつ収穫祭、リンゴ祭りだ。

 新酒の樽の解禁は夕方、日が落ちた直後。
 日が落ちる前後から、町は本格的に賑わいを見せる。

 とはいえ、解禁日は朝から、酒を造る蔵はやってくる人々を迎える準備で忙しい。
 買い付けの商人はもちろん、新酒を楽しみに来る一般の人々も来る。
 そういった人に酒を勧め、そして、販売する。
 シードルは甘口から辛口があるし、発泡しているものしていないものある。蔵が使うリンゴの種類や、門外不出のレシピなどあり、味が異なる。
 酒が好きな人は飲み比べに来るかもしれない。
 新酒は、解禁時間が来てからであるので、待たないとならない。その前でも飲めなくはないけれども?

 蔵で作るものは、酒ばかりでもない。
 量が少ないとされるけれども、ジュースもある。それは、通常のリンゴジュースから、シードルを作るのと同じ製法で絞られるものもあるという。
 そもそも、リンゴ自体を楽しむことも可能なのだ。

 蔵には建物の見物に来る人もいる。
 古い建物が多く、それを大事に直しつつ使っている。そのため、時代を感じさせる建物は、直す人や持ち主の個性も反映され、様々変化しているという。だからこそ、建物を研究する人や見るのが楽しみな人もやってくる。

 蔵や町の広場にできた市で、酒の販売はもちろん、それに合った料理もふるまわれる。
 肉の煮込みや、焼いたもの、ジャガイモを揚げたものなどある。酒や場所の準備と異なり、料理はその日に始める必要があるものもある。
 だからこそ、朝から人は活動する。
 リンゴを使った料理もある。焼いた肉とリンゴを合わせた料理、薄い生地(クレープ)にリンゴのコンポートを挟んだもの、リンゴを使った焼き菓子などがある。
 リンゴ好きだけでなく、菓子好きにもたまらないものが販売される。

 酒を楽しむのは大人の特権だとしても、子どもだってリンゴへの感謝や愛はある。昼間にリンゴを食べたり、リンゴジュースを飲んだりしたい。
 果樹園では、リンゴもぎもできるところがある。
 料金を払うとはいえ、毎年そこでたくさんもいで、ジャムを作ったりすることを楽しみにする人もいるとか?

 街並みを見て、料理にした包みを打ち、酒を食らう。
 リンゴを生業する人やリンゴを愛する人のための行事だ。
 街角には歌や踊りを披露する旅の芸人も来る。

 冒険者だって来る。
 ドワーフ王国へ行く途中や帰る途中かもしれないし。
 商人の護衛としてやってきて、帰りまでは自由時間があるのかもしれない。
 あるいは、友人に誘われてやってくるのかもしれない。
 さて、新酒解禁日の一日が始まる――。

解説

●目的・目標  新酒の解禁に居合わせる。  飲んだり、食べたり、のんびりしたり……。  町が一番にぎわうのは、新酒解禁時間前後からである。 ●町の様子  中心部には広場があり、飲食店などもそこから広がりを見せる。  広場はイベントの最中、露天が並ぶため、市場の様相になる。  建物は全体的に、古くからある様式のものが多い。  酒の蔵は畑との兼ね合いもあり郊外になる。解禁日は、蔵及び、町の露天や借りた店で販売している。ただし、蔵でも町でも、飲める酒が新酒になるのは解禁後なのは変わりない。  蔵めぐりもできるし、リンゴもぎを楽しめる畑もあるらしい。  旅芸人は広場に多いけれども、蔵のあるところや住宅街でも軒先などが広いところで借りている場合もある。  ※フリーアタックなシナリオとなります。  きっかけとか、できそうなことなどは、OPも参考にしてくださいませ。  公序良俗を乱すようなプレイングだと、生かせないという恐怖が待っておりますので、その所だけご注意を。

マスターより

 こんにちは、狐野径です。  リンゴの外見でリンゴの名前がわかったり、リンゴの味でリンゴの名前がわかったりしませんが、リンゴは好きです。高級スーパーで見た紅玉が「小玉」と言いながら「大きいんだが」と思える程度のレベルです。大きかった……本当……。  さて、今回は、新酒解禁日でございます。  リンゴ祭りの雰囲気なのは……酒限定だと飲めない人もいるからです。  新酒解禁日における交流や商談や何やらなかもしれません。食事を楽しみ、大道芸を楽しみ、そして、交友を楽しむ……などなど。  未成年は酒は飲めませんので、ストレートジュースで飲み比べでも?  よろしくお願いします。

リプレイ

●やってきました
 エリザ・A・ミシャールは依頼の関係でドワーフ王国に立ち寄った帰り。
 町で祭りについて聞き、参加することにした。
「酒が飲めるならば、心が弾む」
 自然と顔はほころぶ。

 ストレガ・L・リベルガストラは学者として、食に興味がある者として、朝から活動を開始だ。
 独りが得られる知識には限界がある、と先達から教えがその通りだと思うからこそ、だ。
「新酒だけでなく、料理も色々ありそうなのだ」
 地図を片手に進む。

 イズル・M・ヴォルゴールは里帰りであり、エフィルミアとヘレン・ワーグナーが同道している。
 エフィルミナは畑を見て歓声を上げる。
「ここがイズルくんの故郷! 噂通り、リンゴいっぱい!」
「うむ、リンゴの香りがするね……」
 と、ヘレンは応じる。歩いているのに、眠そうだ。
 エフィルミアは「お酒がいっぱい飲めるぞー」と元気一杯だ。
 イズルは彼女に「飲みすぎるなよ」と注意はした。
 町の酒場「微睡みの雀亭」でイズルと二人は一旦別れた。

 御邑 奈月と御邑 都はドワーフ王国での手伝いの帰り道。
 甘いリンゴの香りが漂う中、祭りのようだ。
 都が町の人に話を聞くと、リンゴ栽培が盛んで、その酒の解禁日かつ収穫祭だと知る。
「お仕事の帰りにこんなお祭りに巡り会ってちょうどよかったよぉー!」
 奈月は「まるで町全体がアップルパイみたいです」と思う。それとリンゴの土産を買おうかなど色々考える。喉の渇きを潤してから、動きたいところだ。
「……ま、まずは……ジュースでも飲みますか? お姉ちゃん?」
「そうだね。のど、カラカラだよ。月ちゃんの提案に大賛成だよ! どこで飲もうか?」
 町の地図を見た。

 シグルド・オルセンは新酒の解禁や祭りの内容を聞き興味をひかれた。
「ほぉ、リンゴ酒に合う料理もあるのか」
 町の中を歩くとすでに活気が出ていた。
「酒が一番の楽しみだなぁ。シードルか、俺は甘いのも辛いのもどれでも好きだぞ」
 流れる音楽に耳を傾け、どう過ごすか考えた。

●忙し
 ストレガは新酒だけでなく、他の酒や料理も、と忙しい。
 料理を味わいレシピを想像し、屋台だと作っているところを見る。
 煮込み料理をストレガは食べる。
「……肉とリンゴがこう……ワイン煮のようだけれども違うのだ?」
 何となく店の人に問うていた。
 店の人が会話の中でレシピを教えてくれた。
「リンゴをここで使うのがポイントなのだ。ありがとなのだ」
「構わんさ。それより、物好きだね」
「学者みたいなものだから気にしないでいいのだ」
「そうなのかい」
「今日はあちこち回るのだ」
「そりゃ大変だ。でも、楽しんでくれ」
「もちろん、楽しむのだ!」
 ストレガは隣の店に移動した。

 イズルは領主館の変わらぬ雰囲気にほっとする。
 父親への挨拶はつつがなく終わる。直後、十以上はありそうな妻及び側室候補の肖像画を示された。
 イズルは、脱兎のごとく逃げた。
(わかってるけど、わかっているけど……領地のことも、伝承も、習慣も)
 女性と代をつなぐだけの関係を持つのに嫌悪感がある。
 恋愛小説の「酸いも甘いも」は無理でも、一般的な恋愛と結婚にあこがれている。
(母上も、父上も嫌いじゃない、でも……)
 イズルは目的の蔵に向かう。
 蔵から新酒を「微睡みの雀亭」に運ぶのが仕事だった。

 エフィルミアは輝く目で酒や料理を見る。
「お店も市もいいわね。お酒と料理と!」
 ヘレンはエフィルミアに腕を取られて移動だけはしていく。
 そうしている間にもエフィルミアは「おじさん、このシードルください」と着々と買い物をしていく。
 エフィルミアは頼んだ品を受け取るまでも見える範囲の店を見る。
 酒などを受け取り、まずは喉の渇きを潤す一杯。
「ふわっ! 甘くて飲みやすい! これにジャガイモが合う」
 次の店に向かう。
「この匂いは……煮込み? あ、串焼き……ヘレンちゃん持ってくれる?」
「え、あ……ふわぁ……あ、そのリンゴ……」
 と、ヘレンは答えつつ、リンゴ販売をしているところが気になった。
 エフィルミアはそれをくみ取り、対応する。
「ヘレンちゃん! 種類がいくつかあるわね。じゃ、これとこれを……。せっかく来たんだから、いっぱい食べようよ! あ、これも……まだ寝ないでー!」
「うん、うん、わかったから……でも、リンゴの香りが眠りを誘う……あ、それと、酔いすぎ、注意……」
 ヘレンはエフィルミアに注意は促しておいた。

 奈月と都ははぐれないように手をつなぎ、飲食店や出店を見る。
 何軒かでジュースを見つけた。その上、種類もいくつもある。
 見ているだけで楽しいが、選ぶのは大変だ。
 迷っている間に、奈月はこういう賑わいにはスリが多いということを思い出した。
 財布は鍵付きショルダーバッグの中だから盗られることはないはずだ。
 奈月は不安になり、都の手をきゅと握る。
 握られた都は奈月をちらちら見る。
(月ちゃん、仕事の時みたいな真剣な顔になってる。やっぱり、人込みとか苦手なのかな)
 奈月に声を掛けようとしたが、都は何者かに体当たりされる。
 財布と都をつなぐ紐が伸びる。
「あっ、ああぁ、スリでぇ……!?」
 都は奈月を背中にかばうようにしてから、紐を引っ張る。
 スリは引っ張られ、バランスを崩して倒れた。すぐに警備の人がきて、犯人を確保してくれた。
 財布を取り戻し、都は奈月を連れて、その場を離れた。
「大丈夫だよぉ~。ちゃんとお財布あるよぉ」
「はい!」
「そうだ、蔵の方でも色々やっているんだよね。そっちに行ってみよう」
 二人は蔵のリストを頼りに移動した。

 エリザは町の中をめぐる。どういう酒があるか、料理があるかなど見る。
「新酒と前の酒はどう違うのか、蔵によっても違うというのは、気にはなるな……この際、急ぐわけではないのだからゆっくりしていこう」
 蔵の話を聞き、そちらに自然と向かう。
 試飲をしたり、買ってみたりと移動していく。
 飲み比べに自然となっていった。

 シグルドは蔵をめぐる。
 二軒、三軒といくと、酒の種類や蔵の雰囲気も違う。
「そういえば、完熟したリンゴも食べてみたいが」
 販売しているところを見ていない。
 蔵の人に聞いてみるが、困った様子を見せる。
「せっかくこういう機会だし食べてみたいと思ったんだ」
「あー、そんなに食べてみたい?」
「ぜひ」
 蔵の人は偉い人と話したのかしばらくして戻ってくる。
「特別に……の前に、こちらの料理もぜひ」
 デザートとしてつけてくれることになる。
 シグルドは酒も付け料理を購入する。
 早速、リンゴを食べてみた。
 「なるほど」と納得し、料理と酒を味わった。

●祭り本番
 都と奈月は街中より幾分人の少ない蔵で、リンゴジュースを飲む。
「うわ、リンゴ食べるより甘い! これまでのリンゴジュースって何っ!」
「とてもおいしい……です」
 乾いていた身に染みわたる一杯のリンゴジュース。
 奈月はジュースを飲みながら、蔵の中を見ていた。
 年季のある建物であり、時代が違う造形だと感じられた。
 奈月と都に蔵の人が気づいた、蔵で働く女性が話しかけてきた。
「建物に興味があります?」
 奈月は緊張したが面持ちで、顎を縦に引いた。
 女性は穏やかに、わかりやすい言葉で蔵の歴史など話してくれた。
 都は本を読んでいるときの気持ちになり、おとなしくジュースを飲む。真剣に話を聞く奈月がかわいらしく、後ろからぎゅっと抱きしめていた。
 奈月は緊張しつつ聞いていたけれども 都のぬくもりに勇気づけられ、途中から落ち着いて話を聞けた。
「……なるほど。か、かなり……昔から果樹酒や……ジュースを作っていたんでふ……ですね……」
「そうですよ。さて、ご清聴ありがとうございます。ゆっくりしていってね。他の蔵も違うところあるから、よろしければ楽しんでいってね。料理やお菓子もあるから」
「あ、はい」
「……はっ! ドワーフの人たちってワインばっかりじゃなくて、リンゴの果実酒ものむのかなぁ」
 と、都が不意に疑問を口にした。
 女性は「好みによると思うわ」と答えた。
 さらに、奈月が質問をする。
「……焼き菓子、を……売っている場所……って……わかります……か?」
「どういう焼き菓子がいいかしら?」
「えと……アップルパイ……とか」
 女性がマップに書き込んで渡してくれたので、二人は礼を述べた。
「早速、アップルパイ食べに行こう!」
 都に促され、奈月は大きくうなずいた。

 ストレガは新酒を手にする。
「ふむ、味わいが、若いというのはこういうことなのだ」
 違いが判るのは楽しい。
 どちらがいいかどうかは好みだ。
「料理に使うとなるとそこは検討が必要なのだ」
 夜に合わせて料理も加わる。
 そこを目指していく。
「リンゴではかさばるが、シードルならば冒険中の飲料、調味料として使えるのだ。ジャムも汎用性が高い……のだ」
 リンゴ菓子もそこから派生する。
「リブラネスタにも卸してくれるのか聞いてみるのだ」
 ストレガは思い立ったら吉日とばかりに行動に移した。

 イズルは新酒を運び終えると、新酒解禁時間が迫る。
「あの二人見つけられるかな」
 広場で待ち合わせであるけれども。
 探している間に、新酒解禁となり、一段と賑わいが来る。
 テーブル席があるところに、食べ終わった料理と酒を積んだ二人を見つけた。
「……寝てる……? 二人とも。エフィ、酒臭い!」
「あ、イズルくん! え、なに、私だって、ただ飲んでいたわけじゃないんだよ! ちゃんとお店に仕入れるお酒を厳選しているんだから! ここからここまで全部おいしかったので……ほしい!」
「それはよかった」
 イズルはエフィルミアのコメントを淡々と流した。
 飲んでいたものは銘柄はカップの状況から判断する。大半は仕入れた銘柄だ。
 イズルはヘレンを見た。リンゴに歯を立てたところで、止まっている。
「ヘレンは起きてから食べろ。のどに詰まるどころか窒息するぞ」
「……あ、イズル……うん」
 シャリショリと食べ始めた。
 突然、エフィルミアがカップを手に、
「そうだ、新酒、カンパーイ」
 と、いう。入手したらしい。
 領主のところの末っ子長男のイズルが女二人といるのは、あっという間に周囲に広がる。
 嫁または妾候補、どっちがどうなのかという声が聞こえてくる。
「嫁を連れてきたわけじゃないんです。候補もでもないです」
 と、否定するけれども、エフィルミアとヘレンが余計なことを言う。
「私がかわいいから、イズルくんの領地の人がお嫁にしたくなる気持ちわかるよね!」
「そうか……いやぁ……お嫁さんとか言われてもまだ結婚していないし、実感わかないなー」
 イズルは否定を続ける。
「俺は人の手垢がついた女性はお断りなんだ」
 エフィルミアはきょとんとしたが、顔を真っ赤にする。
「てててて手垢とか! まだ付き合ってないし! 旦那じゃないし!」
 エフィルミアは雰囲気がいい相手を思い出して、動揺し、持っていた酒を飲み干した。
 ヘレンは聴衆の言葉に答えていく。
「どういう関係か……。一つ屋根の下で養ってもらっている……身?」
「寝言は寝ていえ! 違う! ここは、ちゃんと起きて意思のこもった返事をして」
 イズルはヘレンの肩をつかんで揺さぶる。
 さらにヘレンは答える。
「イズルのことはもちろん好きだよ。一宿一飯の恩もあるから」
 後半は周囲に聞き取られず、聴衆は盛り上がる。
 それから、会場を巡ることができる状況になるのは――。

 エリザは町の中心部に戻ってきた。
 新酒の解禁時間にはエリザも杯を取る。
 新しい酒の味は確かに違う。
「なるほど」
 面白いと思う。
「飲み比べ……するには……」
 とつぶやくと、近くにいたシグルドが声をかける。
「一緒にどうだろう? 飲み比べするつもりで買ったけれども、結構あるし」
 シグルドの方は町にある蔵の店をめぐり、気になる酒をまとまった単位で買っていた。結構な量ではあるが、誰かと楽しめたらと思っていたのだ。
 エリザはシグルドが持つ酒を見て「よばれていいのか?」と問う。
「もちろんだ」
「何も持たずに合流するのも悪いな。料理でも買ってこよう。あと、私が気になる酒も買ってこよう。何か買ってきてほしいものあるか?」
「おすすめとかあればそれで……リンゴを使った料理があると聞いた。あと、パイが定番か?」
 荷物もあるためシグルドは席を確保し待っていた。
 エリザが合流すると飲み比べの始まりだ。
 ある程度飲み食いしたところで、「誰が一番飲めるか競争というのもありか?」とシグルドが提案する。
「小樽程度なら飲み干した経験もある」
「ほほう。それは面白そうだな」
 エリザが言い、周りの客たちも興味をもったらしい。
 そして、客たちがシグルドに酒を進める。
 陽気な客たちは、シグルドの飲みっぷりを見て満足して立ち去った。
 エリザは苦笑した。
「みんな、忙しいな」
「それなりに歳を食っているし、負ける気はしなかったんだがな」
 シグルドが残念そうに言う。
「歳を食っているなら、のんびり飲むのも悪くない」
「馬鹿なことをするのも楽しいんだがな」
「いや、これだけ買っていれば十分馬鹿なことだよ」
「確かに」
 二人は笑った。

●広場
 奈月と都はアップルパイなど菓子を買い、広場の空いているところで食べた。
「これ、おいしいよ」
「……味が違う……ですけど、これもおいしいです」
「どれどれ」
 アップルパイの食べ比べになっている。
 土産もたくさんあるし、目一杯楽しむ。

 ストレガは祭りのにぎわいを見て、静かに飲食する。
「食は万世共通の幸福なれば。リンゴを作るもの、加工するもの、卸すもの、食べるもの……この世に生まれし新たなリンゴと、食に携わる人に祝福あれ」
 杯を天に捧げ、中に入っているシードルを飲み干した。

 シグルドは宴会がお開きになった後、屋台を見て回る。
「酒はうまい……が……食い物、どういうものがあるのか……」
 とはいえ、結構酒代がかさみ、小遣いが限界に来ている。
「また働けばよいし、少し切り崩すか」
 ほろ酔い気分で巡った。

 エリザはテーブル席に残り、周囲の喧噪を見ていた。
 冷たい風が頬を撫でる。
「もう少し飲もうかな」
 また、少し、店を覗こうと立ちあがった。

 イズルは一人で新酒を飲む。
 エフィルミアは飲食し、完全に酔いつぶれ、そこにいる。
 ヘレンもテーブルに突っ伏し寝ている。
「リンゴ料理……香りもいいし、寝る前に食べたら快眠できそう」
 と言っていたが。
「楽しい時間は短いな、ホント」
 祭りの時間だけでなく、冒険者でいられる時間も限られてくる。
 家や領民の対度から。
 少しでも、長く、今を――。

マスターコメント

 削りたくないところ、たくさんありました。  結果、かなり、ざっくりなりました。  ご縁があれば、お会いしましょう。
ショートシナリオR

ショートシナリオR易しい 報酬:無し8 / 4〜8人

2021年12月08日 04時31分24秒 公開

大成功

相談掲示板

  1. イズル・M・ヴォルゴール

    【ご挨拶】 遅ればせながら失礼します。 今回は、領地のお祭りに参加くださり誠にありがとうございます。 収穫祭実行委員(MS)の出す約束を守りつつ、ごゆっくりお楽しみ下さい。 皆様が大事な方との、楽しい時間が過ごせますように。

  2. エリザ・A・ミシャール

    酒が飲めるんだって? ドワーフはまあ、そこまで好きではないが……酒を造るって点においては敵わないね。 何はともあれ楽しくやろうじゃないか。

  3. 御邑 奈月

    こ、こんにちは…でふ。 えと…御邑 奈月です。よろしゅくお願いしましゅ…。 あ、アップルパイ…好き、なので…屋台を…探そうと思ってます。 ……ジュースも気になる…ところですね…。

  4. エフィルミア

    酒が飲める♪酒が飲める♪酒が飲めるぞ~♪ という事で、お酒とおつまみとお菓子を堪能しにきました! エフィルミアです。よろしくお願いします! 皆で楽しみましょー!

  5. シグルド・オルセン

    シグルド・オルセンだ。よろしく頼む。 酒かぁ。新酒が飲めるというし、楽しみだな。

  6. ヘレン・ワーグナー

    ヘレン・ワーグナーだよー。りんごの香りに包まれて寝たい・・・。

  7. ストレガ・L・リベルガストラ

    ストレガなのだ。よろしくなのだ 何かレシピ考えたいとか思うのだ。

  8. 御邑 都

    御邑 都だよぉ~♪ よろしくお願いしまーす。 妹の月ちゃんと~、一緒に美味しい林檎を食べに行くよぉー。

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0