【聖祭】ハッシリ村の札の縁結び2021
椿油
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シナリオID:1640
オープニング
●メリーユールフェス!
今年もハッシリ村には、大きなモミの木が飾られる。
「固定よし! さぁ、札を用意するぞ!」
今年からは次期村長のミルキーも主戦力だ。この一年で大出世である。
――なぜ札を用意するのか。それは、ハッシリ村の風習【札の縁結び】に由来がある。木製の札(木の板とも言う)に願いを書き、モミの木に吊るす。ジド・ルウの加護により、モミの木に掛けたその願いは叶うと言われているのだ。よって、モミの木もひときわ大きな特別な物が運ばれてくる。
「出し物は決まったのか?」
村長キーオス・スカイシップスが愛娘ソフィネとその婿のミルキーに尋ねる。最近は若者の行動を見守るのも悪くないと思っているのか、若干退いた位置で見守っている事が多いキーオス。
「はいお父様、まずは先日の西の市で好評だったスパイス入りスープを出そうと思ってます!」
「あと相変わらずベジタブルさんがホットココアを用意してるそうです」
ミルキー曰く、カカオ技術を学んだ農家のベジタブルは、今やすっかりココアづくりに夢中らしい。
「ふ、そうか……。ダオシエはどうした?」
ダオシエは、西の市で盗みを働いていた若いゴブリナだったが、更生して村の一員となって働いている。
「ダオシエちゃんは、せっせと札を作るお手伝いをしているみたいです」
ソフィネが微笑んで答える。同性だからか、ダオシエを妹のように感じているようだ。
そんな話をしていると、ダオシエが木の札を沢山抱えて走ってくる。
「村長、ダオシエ札作った! ちょっと、いびつ! でも出来た!」
「うむ、初めてにしては上出来だ。完成した札はあの机に置いて布をかけておいてくれ」
「布かける、分かった!」
机まで再び走るダオシエ。彼女はゴールディに属していなかったからかは不明だが、若干言葉が片言である。勉強中ではあるらしい。
「今年はどれ位盛り上がるか楽しみですね、お父様!」
「そうだな。後はライトアップも忘れずにせねばな。頼んだぞ、ミルキー」
「えっ……あ、はい!」
キーオスから任される事が増えた事に、責任を感じつつ、ミルキーは次期村長としての役目を果たしながら飾りつけをするのだった。
今年もハッシリ村には、大きなモミの木が飾られる。
「固定よし! さぁ、札を用意するぞ!」
今年からは次期村長のミルキーも主戦力だ。この一年で大出世である。
――なぜ札を用意するのか。それは、ハッシリ村の風習【札の縁結び】に由来がある。木製の札(木の板とも言う)に願いを書き、モミの木に吊るす。ジド・ルウの加護により、モミの木に掛けたその願いは叶うと言われているのだ。よって、モミの木もひときわ大きな特別な物が運ばれてくる。
「出し物は決まったのか?」
村長キーオス・スカイシップスが愛娘ソフィネとその婿のミルキーに尋ねる。最近は若者の行動を見守るのも悪くないと思っているのか、若干退いた位置で見守っている事が多いキーオス。
「はいお父様、まずは先日の西の市で好評だったスパイス入りスープを出そうと思ってます!」
「あと相変わらずベジタブルさんがホットココアを用意してるそうです」
ミルキー曰く、カカオ技術を学んだ農家のベジタブルは、今やすっかりココアづくりに夢中らしい。
「ふ、そうか……。ダオシエはどうした?」
ダオシエは、西の市で盗みを働いていた若いゴブリナだったが、更生して村の一員となって働いている。
「ダオシエちゃんは、せっせと札を作るお手伝いをしているみたいです」
ソフィネが微笑んで答える。同性だからか、ダオシエを妹のように感じているようだ。
そんな話をしていると、ダオシエが木の札を沢山抱えて走ってくる。
「村長、ダオシエ札作った! ちょっと、いびつ! でも出来た!」
「うむ、初めてにしては上出来だ。完成した札はあの机に置いて布をかけておいてくれ」
「布かける、分かった!」
机まで再び走るダオシエ。彼女はゴールディに属していなかったからかは不明だが、若干言葉が片言である。勉強中ではあるらしい。
「今年はどれ位盛り上がるか楽しみですね、お父様!」
「そうだな。後はライトアップも忘れずにせねばな。頼んだぞ、ミルキー」
「えっ……あ、はい!」
キーオスから任される事が増えた事に、責任を感じつつ、ミルキーは次期村長としての役目を果たしながら飾りつけをするのだった。
解説
札の縁結びを楽しみましょう!
【出来る事】
・モミの木に願いを書いた札をかける
好きな願いを書き、好きな位置にかけて構いません。内容は「世界征服」や「彼女と結婚できますように」や「最強に俺はなる」であろうが自由です。願いなら良いのです。
・暖かい飲み物を頂く
前回のハッシリ村シナリオ(西の市)でも出ましたが、スパイス入り野菜スープとホットココアが楽しめます。
・自由に過ごす
夕方~夜の開催なので、星空を見たり、手を繋いで暖まったり……お好きな方と自由な時間を過ごして下さい。
【NPC】
ソフィネ・スカイシップス(ヒューマン/女性)
前年に引き続き、司会進行担当。今年はミルキーも一緒なので心強いとか。
ミルキー・スカイシップス(ヒューマン/男性)
今年の2月に恋人になり、夏にスカイシップス家に婿入りした次期村長。最近は村長からの期待が重い。
上の二人は進行役として出ますが、農家のベジタブルや村長キーオスは必要がなければシナリオには出ません。
マスターより
2年目の札の縁結び! 椿油です。
なお1年目のシナリオとは構成が全く変わっている(ミルキーやダオシエが居る、ベジタブルがカカオを学んでいる等)ので、1年目参加者の方も2年目がお初の方もご自由に参加下さいませ。
皆様のアツいプレイング、お待ちしております。
リプレイ
札の縁結び。それはハッシリ村の冬の風物詩である。ソフィネ達村人がスープやココアを配り、来場者達は札を取って願いを書き記し、モミの木にぶらさげていく。
●願いと想いと云々と
(『竜化』以外ないというか。いやもう理由もわからんけどその為に色々磨いてる訳だし)
リザードマンらしいサイラスの願いだった。他にも鍛冶ギルドの煩い連中が黙ってて欲しいとか、良い鉱石を確保したいとか色々浮かぶが、まぁ一番はこれだろう、と『竜化』と大きく書かれた札をモミの木にぶらさげた。
「後は飲んで食べて遊ぶだけよ」
鍛冶屋の仕事納めの後のサイラスは気楽に札の縁結びを楽しみ始めた。
「にしても綺麗な夜空だな、空気がどれ位澄んでるんだか……」
そう言いながら、スープを飲み身体を暖めていくのだった。息は白くはっきりと見える。
(あ~……今年も終わりって感じがする。――来年は何するかな。新しい事でもするか迷うが、まぁいつも通りか)
年の暮れのスープの暖かさ、そして仕事を終えた達成感が身に染みていくサイラスであった。
「酒はないか、ならば有るもので楽しむのみ。このココアとスープも実にうまい」
ベルク・オスマットは受け取ったココアとスパイス入りのスープを飲み舌鼓を打ちながら、星空を眺めていた。
「この村から見える星空は格段と綺麗に見えるな」
冬という季節も関係しているかもしれないが、田舎の星空というのは綺麗に感じてしまうものである。
「おかわり、頼めるか?」
ついつい、ココアをおかわりしてしまうベルクだった。
(――飽きさせない濃さ。このココアを作った人は手練れだな)
それもそのはず、カカオブームの時に数か月間のカカオ栽培修業に行った農家ベジタブルの手作りなのである。それ以降ことある事に彼女はココアを振る舞っているのだ。
(スープの香辛料も良い物を使っている。野菜が食べやすいサイズにカットされていて匙もさほど要らない、良く出来てるな)
シャキシャキと噛みごたえのある野菜も恐らく農家の物だろう。実は一番祭りに貢献しているのは彼女なのかもしれない。
アルマ・ヴァレンタインは、彼氏のエヴァン・ピオネロと手を繋いで来場した。
「寒いですねー……吐く息が白いです」
早速スパイスのスープを受け取り、二人で飲む。このスープは気持ちも身体もほっこりする。
「やっぱり温まるねー」
エヴァンはソフィネを見かけると、呼び止めた。
「アイーロニヴさんに伝言頼めますか? 『お祭りで作った指輪、大切にしてます』――って」
「はい、分かりました! ――素敵な指輪ですね」
先日の祭りで作ったペアリング。今も肌身離さず身につけている。二人で四つ葉の形に合わせてソフィネに見せたりしながら、アルマはソフィネに報告があった。
「ソフィネさん、去年の願掛け叶ったよー」
「まぁ、それは良かったです! ジド・ルウ様に感謝ですね」
「良かったですねー、ぼくも期待して書きます!」
札を取りに行くと、札の縁結びの裏方として働いていたダオシエを見つけた。先日の祭りで村の仲間となったゴブリナの子だ。
「札作りしてくれてたんだ、元気そうでよかったー」
「ダオシエ、今すごい頑張ってる! みんなの願い叶う、楽しみ!」
ダオシエは先日の祭りの血相が嘘のように、明るくニコッと笑った。
――さて、アルマの願いは『エヴァくんともっと仲良くなれますように』。エヴァンの願いは『ずっとずっと、アルマと並んで歩めますように』。お互いの気持ちがこもった札だ。
「今年のお願いは何にしましたか?」
「エヴァくんはなんてお願いしたのー?」
見せあう二人。何だかお互い照れている。
「高い所に結びましょうか」
「か、肩車……ボク重くない?」
「重くないですよー」
エヴァンはよいしょとアルマを肩車して、高い所に二人分の札を結んだのだった。
ララベル・サン・ディーベルはアリエッタを誘って、札の縁結びに来ていた。
「相変わらず大きい樹……これならどんな願いも叶いそうだよね」
ララベルはにこやかにアリエッタに語りかける。
「そうなんだー……」
アリエッタは相変わらず? と思って若干耳がピンと立ったが、まぁ深い事は気にせずに、今を楽しむつもりだ。ララベルは札に願いを書くアリエッタの手をそっと挟み込むようにして暖めてあげた。
(願い事はそうだなぁ……美味しいものが食べられます様に、とか色々思い付くけれど、やっぱり……)
『来年もこうして一緒に来れますように』。アリエッタの願いだ。ララベルは『もっと一緒に色んな世界を見て、ずっと側に寄り添いあえますように』と書いて、モミの木に吊り下げた。
「どんなお願いをしたの?」
ララベルが尋ねた。
「ふふっ、見る?」
それぞれの書いた札を見て、思わず笑顔がこぼれた。
「――叶うといいね、お互い」
星空を眺めながら語り合い、互いを暖めながら。
「大丈夫?寒くない?」
そっと、ララベルは口づけをアリエッタにしたのだった。
「札の縁結び? 面白い風習だね、願い事かぁ」
スフィカは、シンプルに『お金欲しい』と書いた。
(聖霊節の時期って、気がつけばお財布軽くなってて……。年越し準備もあるから使っちゃだめだってわかってるんだけどこればっかりはねー)
分かる人なら分かる、年末の切実な願いである。そしてスフィカはココアを目的にやって来ていた。ココアを一口飲むと、まろやかなぬくもりが口の中に広がっていく。
「んー、ほんのり甘くて美味しい。これはほっとする暖かさだねー。初めて見る飲み物なんだけど、これ何からできてるのかな?」
何気なくソフィネに尋ねただけだった。が、
「原材料はカカオですね」
「え。カカオ……って、チョコの材料!? 超贅沢品じゃん! ――しかも甘いってことは、もしかしてお砂糖まで!?」
「ふふふ、製法は秘密らしいんですけどね」
メイドイン・ベジタブルな、ホットココア。これは飲まずにはいられない。今飲まねばもったいない。
「うわー、今年一番の贅沢かもしんない」
機会を逃さぬよう沢山貰っておこうと、何回もおかわりしたスフィカであった。なお甘さの秘訣は砂糖ではなく動物の乳なのだが、それはここだけの秘密である。
アルテ・ルナフィニスとレイラ=ルナフィニスも、共に祭りを楽しみに来ていた。アルテは名前でレイラが苗字、運命のルナフィニス繋がりのカップルである。
アルテは札に『レイラと面白おかしく過ごす』と書き、レイラは『これからも、アル君と共に過ごせますように』と書き記した。
「ん、ボクの願いなんてこれくらい! レイラのそれと一緒に見易いところに飾らしてもらおうかな!」
二人で近い場所に吊るしたのち、くっついて暖を取るレイラ。
「……寒くは、ないかしら? アル君?」
「ちょっと寒いかも。レイラが冷えたら大変だ」
レイラの頬を撫でたアルテ。
「ホットココアでも頂きましょうか」
レイラの提案で、ホットココアを貰いに行く事にした。勿論、二人分である。手元に二つ、ホットココアの入った容器。レイラは手を暖めつつ、
「さて……どこかでゆっくりしていきます? アル君」
アルテに肩を寄せながら尋ねた。アルテは少し考えたのち、
「騒がしいかもだけど、飲み物を作ってるところにいこっか」
温かい飲み物を作っているなら火があるはず。恐らくこれがレイラにとって最適だろう。色々と彼氏は考える事が多いのである。
「はい♪ そうしましょうか♪」
腕を絡ませながら、アルテと共に暖を取りに飲み物コーナーへと向かったのだった。
(これと同じ位の樅の木と飾りも買って、ご馳走もプレゼントもたくさん用意して……ふふっ、喜んでくれるかしら)
ルフィナ・ヴィオレットは、故郷の皆への聖霊節のサプライズを考えていた。
(たくさんお金が必要ね。仕事を選り好みしなければ間に合う筈)
「なぁ、一緒にモミの木に願い事を吊るしに行かないか?」
アルフィー・リッパーは、色々と思案中のルフィナを誘う事にしたようだ。
「願っても叶わない事はいっぱいあるけど、でもこうやって書くことで自分自身のやらなきゃいけないこと、とかが明確になったりするよな」
「……そうね、叶わない願いもあるわ」
二人で札に願いを書いていく。アルフィーは『大切な人達の笑顔を守れるように』と書いた。
「アルフィーの願いは……うん、叶いそうじゃない」
「そのためには自分自身がもっと力をつけなきゃいけないけど……。あ、大切な人の中にはルフィナも入っているぞ。ルフィナも大切な友人だからな」
その言葉にルフィナは優しく微笑んで、願いを書いた。
「優しいのね、ありがとう。私の願いも決まったわ、『アルフィーが強くなれますように』よ。さ、一緒に吊るしましょ」
「えっ」
思わずアルフィーは真っ赤になりながら毛がピンとなってしまったが、照れながらルフィナと二人で木に札を吊るした。
「さてと……身体冷えてないか? あったかい飲み物もせっかくだからもらいに行こうか」
照れて尻尾を揺らしながら、飲み物を貰いに行ったアルフィー。彼の感情はバレバレであったが、ルフィナは特に気にせずスパイス入りスープをアルフィーから受け取る。
「あちっ」
猫舌なアルフィーはフーフーと勢いよくスープを冷ましていた。
「あら、猫舌なのね。大丈夫よ、お喋りしてたらすぐに飲み頃になるわ」
飲み頃になるまで語らいながら、二人だけの時間を過ごしたのだった。
牛・奶は、西の市以来のハッシリ村に訪れ、すっかりイルミネーション等で景色が変わった村を満喫していた。
「メリーユールフェスアルね。初めて来た時の西の市から変わって、今回は縁結びアルか」
札には『シャルガネの更なる発展と平和』と故郷の願いを書き、木に吊るした。
「スープとココア頂きたいアル」
たまに行列の出来る飲み物コーナーに並び、両方を注文する奶。
「はい、お待たせしました!」
ソフィネが直々に渡してくれた。スパイスの効いたスープもオツだし、ココアはついうっかり飲みすぎそうな中毒感を味わえる。二種類の飲み物を味わっていると、ソフィネの夫ミルキーにであった。
「お、この前西の市で手伝ってくれた……牛さんで合ってたかな」
「牛・奶アル。この度は会場設営お疲れ様アルよ」
「いやぁ、今年は運営にもなれてこの一年出世したなぁって思うんですよ。去年の縁結びのお陰かなって」
「ミルキーさんは何を去年願ったアルか?」
「ええと……『ビッグになりたい』って」
「縁結び効果アルねー」
はははと談笑しながら、その後もせっせとココアの追加をしているベジタブルに会ったりと、祭りを楽しんだ奶であった。
「おらの仕事多過ぎっど!」
「お疲れ様アル。美味しいアルよこのココア」
「んならええんだ。作った甲斐があんだ」
「願いを書いた札をモミの木に吊るす、か」
「モミの木、おっきい、ね……。願いごと、書いて吊るしたら、いいの?」
だわとサラは、札に願いを書く机からモミの木を見上げていた。
「文字、あんまりうまく、書けない……大丈夫、かな……」
「……苦手なら、俺が代わりに書くか?」
だわの提案に、サラはぶんぶんと首を横に振って断った。
「……う、ううん、だいじょう、ぶ。わたし、自分で書く、よ。だわおにいちゃんは、自分のを、書いて、て……」
「……そうか」
さらりとした、丁寧な字で『故郷の平穏が永く続くように』と書き終えた、だわ。サラの方を見ると、悪戦苦闘しながらも頑張って真剣な面持ちで書いているようである。
「でき、た……」
吊るす場所を検討する為、モミの木の下に移動した二人。
(さて、どの辺りに飾るかな)
「よい、しょ……」
サラは飾りたい場所に届かず、ぴょんぴょんと跳ねていた。
「……失礼」
それを見てだわは、急にサラを担ぎ持ち上げる。
「……ひゃっ! うぁ、……ぁ、ぁりがと……」
あまりに急だったので顔を赤くしながら、札を吊り下げたサラ。札の内容は読めず判読出来ないが、吊り下げ終わるとすぐにだわはサラを降ろし、自分の札をサラの吊るしたすぐ近くに吊るすのだった。
「……少し、寒い、ね。あったかいの、飲みに、行こ……?」
「そうだな。俺は野菜スープを貰うか。スパイスが効いていて美味いとか」
二人で手を繋ぎながら飲み物コーナーに向かいながら。
(だわおにいちゃんと、一緒にいられますように)
サラは星空を見上げ、願いを復唱するのだった。
●締めの挨拶
札を飾る者が居なくなり、札も全て使い切られたところで、司会のソフィネとミルキーが広場で挨拶をし始めた。
「皆様、本日はお集まり頂きありがとうございます!」
「おかげ様で『札の縁結び』は今年も無事賑やかに終えられる事かと思います。皆様には感謝の気持ちで一杯です!」
交互に挨拶を述べたのち、二人でお辞儀をしながら、
「本当にありがとうございました! メリー・ユールフェス!」
その言葉と同時に、ライトがチカチカと眩く光り、今年最後の行事の締めを演出したのだった。会場は温かい拍手に包まれ、その後仲良く手を繋いで帰る者、運営の二人に言葉を交わしながら帰る者などがいつつ、札の縁結びは幕を閉じたのだった。
●願いと想いと云々と
(『竜化』以外ないというか。いやもう理由もわからんけどその為に色々磨いてる訳だし)
リザードマンらしいサイラスの願いだった。他にも鍛冶ギルドの煩い連中が黙ってて欲しいとか、良い鉱石を確保したいとか色々浮かぶが、まぁ一番はこれだろう、と『竜化』と大きく書かれた札をモミの木にぶらさげた。
「後は飲んで食べて遊ぶだけよ」
鍛冶屋の仕事納めの後のサイラスは気楽に札の縁結びを楽しみ始めた。
「にしても綺麗な夜空だな、空気がどれ位澄んでるんだか……」
そう言いながら、スープを飲み身体を暖めていくのだった。息は白くはっきりと見える。
(あ~……今年も終わりって感じがする。――来年は何するかな。新しい事でもするか迷うが、まぁいつも通りか)
年の暮れのスープの暖かさ、そして仕事を終えた達成感が身に染みていくサイラスであった。
「酒はないか、ならば有るもので楽しむのみ。このココアとスープも実にうまい」
ベルク・オスマットは受け取ったココアとスパイス入りのスープを飲み舌鼓を打ちながら、星空を眺めていた。
「この村から見える星空は格段と綺麗に見えるな」
冬という季節も関係しているかもしれないが、田舎の星空というのは綺麗に感じてしまうものである。
「おかわり、頼めるか?」
ついつい、ココアをおかわりしてしまうベルクだった。
(――飽きさせない濃さ。このココアを作った人は手練れだな)
それもそのはず、カカオブームの時に数か月間のカカオ栽培修業に行った農家ベジタブルの手作りなのである。それ以降ことある事に彼女はココアを振る舞っているのだ。
(スープの香辛料も良い物を使っている。野菜が食べやすいサイズにカットされていて匙もさほど要らない、良く出来てるな)
シャキシャキと噛みごたえのある野菜も恐らく農家の物だろう。実は一番祭りに貢献しているのは彼女なのかもしれない。
アルマ・ヴァレンタインは、彼氏のエヴァン・ピオネロと手を繋いで来場した。
「寒いですねー……吐く息が白いです」
早速スパイスのスープを受け取り、二人で飲む。このスープは気持ちも身体もほっこりする。
「やっぱり温まるねー」
エヴァンはソフィネを見かけると、呼び止めた。
「アイーロニヴさんに伝言頼めますか? 『お祭りで作った指輪、大切にしてます』――って」
「はい、分かりました! ――素敵な指輪ですね」
先日の祭りで作ったペアリング。今も肌身離さず身につけている。二人で四つ葉の形に合わせてソフィネに見せたりしながら、アルマはソフィネに報告があった。
「ソフィネさん、去年の願掛け叶ったよー」
「まぁ、それは良かったです! ジド・ルウ様に感謝ですね」
「良かったですねー、ぼくも期待して書きます!」
札を取りに行くと、札の縁結びの裏方として働いていたダオシエを見つけた。先日の祭りで村の仲間となったゴブリナの子だ。
「札作りしてくれてたんだ、元気そうでよかったー」
「ダオシエ、今すごい頑張ってる! みんなの願い叶う、楽しみ!」
ダオシエは先日の祭りの血相が嘘のように、明るくニコッと笑った。
――さて、アルマの願いは『エヴァくんともっと仲良くなれますように』。エヴァンの願いは『ずっとずっと、アルマと並んで歩めますように』。お互いの気持ちがこもった札だ。
「今年のお願いは何にしましたか?」
「エヴァくんはなんてお願いしたのー?」
見せあう二人。何だかお互い照れている。
「高い所に結びましょうか」
「か、肩車……ボク重くない?」
「重くないですよー」
エヴァンはよいしょとアルマを肩車して、高い所に二人分の札を結んだのだった。
ララベル・サン・ディーベルはアリエッタを誘って、札の縁結びに来ていた。
「相変わらず大きい樹……これならどんな願いも叶いそうだよね」
ララベルはにこやかにアリエッタに語りかける。
「そうなんだー……」
アリエッタは相変わらず? と思って若干耳がピンと立ったが、まぁ深い事は気にせずに、今を楽しむつもりだ。ララベルは札に願いを書くアリエッタの手をそっと挟み込むようにして暖めてあげた。
(願い事はそうだなぁ……美味しいものが食べられます様に、とか色々思い付くけれど、やっぱり……)
『来年もこうして一緒に来れますように』。アリエッタの願いだ。ララベルは『もっと一緒に色んな世界を見て、ずっと側に寄り添いあえますように』と書いて、モミの木に吊り下げた。
「どんなお願いをしたの?」
ララベルが尋ねた。
「ふふっ、見る?」
それぞれの書いた札を見て、思わず笑顔がこぼれた。
「――叶うといいね、お互い」
星空を眺めながら語り合い、互いを暖めながら。
「大丈夫?寒くない?」
そっと、ララベルは口づけをアリエッタにしたのだった。
「札の縁結び? 面白い風習だね、願い事かぁ」
スフィカは、シンプルに『お金欲しい』と書いた。
(聖霊節の時期って、気がつけばお財布軽くなってて……。年越し準備もあるから使っちゃだめだってわかってるんだけどこればっかりはねー)
分かる人なら分かる、年末の切実な願いである。そしてスフィカはココアを目的にやって来ていた。ココアを一口飲むと、まろやかなぬくもりが口の中に広がっていく。
「んー、ほんのり甘くて美味しい。これはほっとする暖かさだねー。初めて見る飲み物なんだけど、これ何からできてるのかな?」
何気なくソフィネに尋ねただけだった。が、
「原材料はカカオですね」
「え。カカオ……って、チョコの材料!? 超贅沢品じゃん! ――しかも甘いってことは、もしかしてお砂糖まで!?」
「ふふふ、製法は秘密らしいんですけどね」
メイドイン・ベジタブルな、ホットココア。これは飲まずにはいられない。今飲まねばもったいない。
「うわー、今年一番の贅沢かもしんない」
機会を逃さぬよう沢山貰っておこうと、何回もおかわりしたスフィカであった。なお甘さの秘訣は砂糖ではなく動物の乳なのだが、それはここだけの秘密である。
アルテ・ルナフィニスとレイラ=ルナフィニスも、共に祭りを楽しみに来ていた。アルテは名前でレイラが苗字、運命のルナフィニス繋がりのカップルである。
アルテは札に『レイラと面白おかしく過ごす』と書き、レイラは『これからも、アル君と共に過ごせますように』と書き記した。
「ん、ボクの願いなんてこれくらい! レイラのそれと一緒に見易いところに飾らしてもらおうかな!」
二人で近い場所に吊るしたのち、くっついて暖を取るレイラ。
「……寒くは、ないかしら? アル君?」
「ちょっと寒いかも。レイラが冷えたら大変だ」
レイラの頬を撫でたアルテ。
「ホットココアでも頂きましょうか」
レイラの提案で、ホットココアを貰いに行く事にした。勿論、二人分である。手元に二つ、ホットココアの入った容器。レイラは手を暖めつつ、
「さて……どこかでゆっくりしていきます? アル君」
アルテに肩を寄せながら尋ねた。アルテは少し考えたのち、
「騒がしいかもだけど、飲み物を作ってるところにいこっか」
温かい飲み物を作っているなら火があるはず。恐らくこれがレイラにとって最適だろう。色々と彼氏は考える事が多いのである。
「はい♪ そうしましょうか♪」
腕を絡ませながら、アルテと共に暖を取りに飲み物コーナーへと向かったのだった。
(これと同じ位の樅の木と飾りも買って、ご馳走もプレゼントもたくさん用意して……ふふっ、喜んでくれるかしら)
ルフィナ・ヴィオレットは、故郷の皆への聖霊節のサプライズを考えていた。
(たくさんお金が必要ね。仕事を選り好みしなければ間に合う筈)
「なぁ、一緒にモミの木に願い事を吊るしに行かないか?」
アルフィー・リッパーは、色々と思案中のルフィナを誘う事にしたようだ。
「願っても叶わない事はいっぱいあるけど、でもこうやって書くことで自分自身のやらなきゃいけないこと、とかが明確になったりするよな」
「……そうね、叶わない願いもあるわ」
二人で札に願いを書いていく。アルフィーは『大切な人達の笑顔を守れるように』と書いた。
「アルフィーの願いは……うん、叶いそうじゃない」
「そのためには自分自身がもっと力をつけなきゃいけないけど……。あ、大切な人の中にはルフィナも入っているぞ。ルフィナも大切な友人だからな」
その言葉にルフィナは優しく微笑んで、願いを書いた。
「優しいのね、ありがとう。私の願いも決まったわ、『アルフィーが強くなれますように』よ。さ、一緒に吊るしましょ」
「えっ」
思わずアルフィーは真っ赤になりながら毛がピンとなってしまったが、照れながらルフィナと二人で木に札を吊るした。
「さてと……身体冷えてないか? あったかい飲み物もせっかくだからもらいに行こうか」
照れて尻尾を揺らしながら、飲み物を貰いに行ったアルフィー。彼の感情はバレバレであったが、ルフィナは特に気にせずスパイス入りスープをアルフィーから受け取る。
「あちっ」
猫舌なアルフィーはフーフーと勢いよくスープを冷ましていた。
「あら、猫舌なのね。大丈夫よ、お喋りしてたらすぐに飲み頃になるわ」
飲み頃になるまで語らいながら、二人だけの時間を過ごしたのだった。
牛・奶は、西の市以来のハッシリ村に訪れ、すっかりイルミネーション等で景色が変わった村を満喫していた。
「メリーユールフェスアルね。初めて来た時の西の市から変わって、今回は縁結びアルか」
札には『シャルガネの更なる発展と平和』と故郷の願いを書き、木に吊るした。
「スープとココア頂きたいアル」
たまに行列の出来る飲み物コーナーに並び、両方を注文する奶。
「はい、お待たせしました!」
ソフィネが直々に渡してくれた。スパイスの効いたスープもオツだし、ココアはついうっかり飲みすぎそうな中毒感を味わえる。二種類の飲み物を味わっていると、ソフィネの夫ミルキーにであった。
「お、この前西の市で手伝ってくれた……牛さんで合ってたかな」
「牛・奶アル。この度は会場設営お疲れ様アルよ」
「いやぁ、今年は運営にもなれてこの一年出世したなぁって思うんですよ。去年の縁結びのお陰かなって」
「ミルキーさんは何を去年願ったアルか?」
「ええと……『ビッグになりたい』って」
「縁結び効果アルねー」
はははと談笑しながら、その後もせっせとココアの追加をしているベジタブルに会ったりと、祭りを楽しんだ奶であった。
「おらの仕事多過ぎっど!」
「お疲れ様アル。美味しいアルよこのココア」
「んならええんだ。作った甲斐があんだ」
「願いを書いた札をモミの木に吊るす、か」
「モミの木、おっきい、ね……。願いごと、書いて吊るしたら、いいの?」
だわとサラは、札に願いを書く机からモミの木を見上げていた。
「文字、あんまりうまく、書けない……大丈夫、かな……」
「……苦手なら、俺が代わりに書くか?」
だわの提案に、サラはぶんぶんと首を横に振って断った。
「……う、ううん、だいじょう、ぶ。わたし、自分で書く、よ。だわおにいちゃんは、自分のを、書いて、て……」
「……そうか」
さらりとした、丁寧な字で『故郷の平穏が永く続くように』と書き終えた、だわ。サラの方を見ると、悪戦苦闘しながらも頑張って真剣な面持ちで書いているようである。
「でき、た……」
吊るす場所を検討する為、モミの木の下に移動した二人。
(さて、どの辺りに飾るかな)
「よい、しょ……」
サラは飾りたい場所に届かず、ぴょんぴょんと跳ねていた。
「……失礼」
それを見てだわは、急にサラを担ぎ持ち上げる。
「……ひゃっ! うぁ、……ぁ、ぁりがと……」
あまりに急だったので顔を赤くしながら、札を吊り下げたサラ。札の内容は読めず判読出来ないが、吊り下げ終わるとすぐにだわはサラを降ろし、自分の札をサラの吊るしたすぐ近くに吊るすのだった。
「……少し、寒い、ね。あったかいの、飲みに、行こ……?」
「そうだな。俺は野菜スープを貰うか。スパイスが効いていて美味いとか」
二人で手を繋ぎながら飲み物コーナーに向かいながら。
(だわおにいちゃんと、一緒にいられますように)
サラは星空を見上げ、願いを復唱するのだった。
●締めの挨拶
札を飾る者が居なくなり、札も全て使い切られたところで、司会のソフィネとミルキーが広場で挨拶をし始めた。
「皆様、本日はお集まり頂きありがとうございます!」
「おかげ様で『札の縁結び』は今年も無事賑やかに終えられる事かと思います。皆様には感謝の気持ちで一杯です!」
交互に挨拶を述べたのち、二人でお辞儀をしながら、
「本当にありがとうございました! メリー・ユールフェス!」
その言葉と同時に、ライトがチカチカと眩く光り、今年最後の行事の締めを演出したのだった。会場は温かい拍手に包まれ、その後仲良く手を繋いで帰る者、運営の二人に言葉を交わしながら帰る者などがいつつ、札の縁結びは幕を閉じたのだった。
マスターコメント
札の縁結び2021への参加ありがとうございました!
この調子ならひょっとしたら札の縁結び2022があるかもしれませんね。その頃にはまた村の情勢も大分変っているかもしれません(キーオスが村長を退いてミルキーが村長になる等)。
スープとココア大人気でした! ベジタブルさん良く頑張った。
来年のハッシリ村のシナリオのご参加もお待ちしております!
イベントシナリオ易しい 報酬:少ない14 / 4〜25人
2021年12月15日 20時19分28秒 公開
大成功
参加者
相談掲示板
エヴァン・ピオネロです。よろしくです! 札を掛けて温かいスープを頂いてのんびり過ごしますね。
アルマだよ、どーぞよろしくねー 1年目の結果報告と2年目の願掛けをする予定だよー
レイラといいますの。 恋人のアルテ君共々よろしくお願いしますわ。 わたし達は願い札をかけた後、あまり人気のない場所でゆっくり過ごそうと思っています♪
ルフィナと言うわ。よろしくね。 お友達のアルフィーとのんびりと過ごせたらと思っているわ。 皆も素敵な一日を過ごせますように。