夜空に舞うは鴉
影絵 企鵝
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シナリオID:1557
オープニング
シャルガネ居住区、とある豪商の屋敷。ミネルヴァはその倉庫に通され、整然と並べられた武具や装飾品の数々を眺めていた。金銀で作られた、見て楽しむだけの美しい剣もあれば、血や脂が沁み込んでうっすらと赤黒く染まっている、曰くを積み重ねた鎧もある。数寄者でなくとも目を奪われそうな景色を前に、ミネルヴァは目を皿のようにしている。
「どうです? 貴女のお眼鏡に適うものはありましたか?」
背後に立った商人が目を細める。商人故に売る時には売るとはいえ、この蒐集物は彼の自慢だった。しかしミーナは不満げに唸る。
「ないですね。どれもこれも、私の興味をそそるものではありません」
ミーナの淡々とした答えに、思わず商人はずっこけた。
「ない? どれもここでしか見る事の出来ないような代物なのに?」
「どれも素晴らしい価値を持つものだということはわかります。でも、私が探しているのは『鴉の弓』ただ一つですから」
「鴉の弓?」
聞きなれない、とでも言いたげに商人は首を傾げる。
「知りませんか? ここにあるような、漆塗りの黒弓とは違います。かつて人里を狙って下りてきた巨大な竜を屠るため、エルフの木工師とドワーフの鍛冶屋と人間の数学者が手を結んで作り上げた傑作のリカーブボウです。……あるいは、『マイルシューター』と言えばお判りになるでしょうか」
「『マイルシューター』……それならば微かに噂を聞いたことがあります。エーテルを矢に吹き込むことで、一マイル先の獲物すら射貫く剛弓だと。リーンエスの零細貴族が家宝として守り続けていると聞きましたが……」
商人はミネルヴァの顔をじっと窺う。着物に身を包み、大人しそうな佇まいをしているが、それでもその眼には武門の娘らしい強い光が宿っている。
「まさか」
「ええ。その零細貴族は貧しさに喘ぐあまり家宝を手放しました。でもその家宝は、ただのしがない弓兵から身を立てた家の誇り。何としても探し出さなければならないんです」
「ふむ。私も一度は見てみたい気もしますが、生憎シャルガネには流れてこなかったようですな」
「そうでしたか。……残念です。時に商人さん。このシャルガネで噂に詳しい情報屋は――」
その時、不意に外が騒がしくなる。哄笑と悲鳴の中、何かが弾けるような音も混じる。ミーナは眉を顰め、音のする方角に振り返った。
「何ですか?」
「……傾奇者です。クリーパー討伐に自警団が出ている隙を突いて、我が物顔で街を荒らす荒くれ者どもですよ」
商人が顔をしかめる。少女がパタパタと倉庫へ駆け込んできた。
「お父さん! あいつらこっちに来てる! 数もたくさんいるよ!」
「……急いで表門を閉めるんだ。そしてお前は裏口から出て冒険者ギルドから助けを呼んで来い。大抵はクリーパー退治に行ってるだろうが、それでも二、三人は拾えるはずだ」
「みんなは?」
「助けが来るまでは何とかする。今更傾奇者どもにおびえるつもりはない」
ミーナはしばらく黙って二人のそんなやり取りを聞いていたが、やがて小さな笑みを浮かべて一歩踏み出す。
「ふむ。事情は分かりました。それでは私も何かしら手をお貸ししましょうか」
「君が?」
「私も冒険者ですから。……多少のお礼は頂きますけど」
少女は倉庫の隅に置かれたシグネットリングを一つ摘み取り、ピンと弾いてみせた。
●鴉流忍者推参
飯屋の戸を乱暴に蹴倒し、派手な着物に身を包んだ傾奇者達がぞろぞろと歩く。飯屋の客から奪い取った串焼きを喰らいながら、彼らは揚々と屋敷を目指していた。
「いい眺めだなあ! 誰も道を出歩いてやがらねえ!」
「俺達にビビってやがるんだ。ゆっくり襲ってやろうぜ」
自警団が留守にしているだけなのにいい気なものである。彼らは銘々武器を構えると、手近な屋敷に狙いを定める。大斧を担いだ男がその刃にエーテルを纏わせると、一気に門を突き破ろうと振り上げた。
「待てーい!」
その時、少女の声が響く。見上げると、番傘を開いた少女が屋根の上に立っていた。傾奇者達は首を傾げる。
「誰だ!?」
「誰だ? 知らざぁ言って聞かせやしょう! 遠からん者は音に聞け! 近くば寄って目にも見よ! 我は遥か南、リーンエスの大地より馬を駆ってシルトラースへ至り、船で大洋を渡りシャルガネへと至る者なり!」
少女は番傘を振り回しながら、詩を吟じるように朗々と名乗りを上げ始める。一人の男が焦れて短刀を投げたが、少女は番傘の骨であっさり受け止める。
――遠くから少女の声を聞いた君達は、何事かと思い走り始める。
「ある者は私の事を当代一の阿呆嬢(あほおじょう)と呼ぶ! またある者は身の程知らずの阿婆擦れ女と後ろ指を指す! しかしその正体は、唯一無二の鴉流忍者なのである!」
彼女が番傘を空高くに放り上げると、紺色の装束に柿色の襟巻きを身につけたその姿が月光の下に晒される。
――彼女の名乗り口上が近くなる。屋敷の屋根に足を掛けた彼女は、有象無象の荒くれ者達を前に一つも怯まず振る舞っていた。
「刮目せよ!」
今度は手斧が投げつけられる。彼女は宙へ跳んで木の葉のようにひらひら舞い、再び屋根の上へと降り立つ。
「ティロールのミネルヴァってのは、私のことよ!」
君達が現場に駆けつけると、今まさにミーナが名乗りを堂々とやり遂げたところだった。ちらりと君達に目配せすると、刀を静かに抜き放つ。
「鴉流忍者ってなんだよ!」
「んなもん聞いたことねーよ! ハッタリだ!」
ミーナは軽やかに敵の目の前へ降り立つと、刀を構えて不敵に笑う。
「当たり前! 私シノビじゃないもんね! ということで……お覚悟召されよ!」
ぼうっと見てはいられない。君達も銘々武器を取った。
解説
マスターより
リプレイ
屋敷町に響き渡るミネルヴァの声。コルネリウス・アーラは通りの中で彼女の声を聞いていた。彼女は訓練用の木剣を手に取り、声のする方角を窺う。
(やっと見つけたと思ったら……また変な事に首を突っ込んでるの?)
ミーナが奇矯な振る舞いをする時は何かの事件に相対している時。コルネも少し理解してきた。駆けつけてみれば、案の定ミーナは着物を乱した傾奇者達と向かい合っている。ちょっと視線を他所へ向けてみると、コルネ以外にもミーナの様子を窺いに来た冒険者達がちらちらと壁や屋根の影から様子を窺っていた。
(へえ、聞いたことのある声がしたと思ったら、何だか面白そうなことしてる)
傾奇者達の背中を屋根の影から眺め、ベアトリーチェ・カロッサは心の奥で呟く。紫色の着物を着付けてもらってすっかり観光気分だったが、事件の香りを嗅ぎつけたら黙ってはいられない。
「ほらほら、どこに目ぇ付いてんの?」
ミーナが早速傾奇者達に突っ込む。飛び掛かった男達の股下を潜り抜けた彼女は、ちらりとベアトに視線を送ってくる。ミーナの意図するところを察して、ベアトはこくりと頷いた。
「そっかそっか……よし!」
早速ベアトは立ち上がると、屋根の棟木に足を掛け、ぐっとその身を乗り出す。
「どうも、傾奇者さん達。好き勝手暴れてるみたいだけど、それも今日でお終いよ!」
ミーナに負けじと高らかに言い放つと、ベアトは懐から閃光塗弾を取って投げつける。ベアトの出現に気を取られた傾奇者達は、正面から閃光の直撃を喰らう。眼がくらんでふらついた奴らに向かって、ベアトは軽やかに跳び蹴りを見舞った。胸の真芯を勢いよく蹴り抜かれた一人が、うっと息を詰まらせ気を失う。ベアトは短剣を取り出すと、ミーナへ向かってウインクを送った。
「助太刀するよ、お嬢さん!」
「ありがとう!」
ベアトとミーナは背中合わせになり、喚く荒くれ者達と対峙する。駆けつけたアスカ・タチカゼは、走りながらそんな彼らの様子を見つめていた。
「あー、いいなぁ、カッコいい!」
荒くれ者達に向かって、一歩も引かずに堂々と名前を明かす。その姿は、まるでアスカの憧れるモノノフのよう。
「……よぅし、あたしも負けてらんない!」
傾奇者達がミーナを取り囲む。刀を水平に構えたまま、ミーナはアスカへ一瞬視線を送った。アスカはその意図を察すると、刀を鞘ごと抜いて地面を踏み込んだ。
「鉄の山よりアスカ・タチカゼが参った! 大人しくお縄につけ!」
神速で傾奇者達の間合いに踏み込んだアスカは、振り返った奴に一撃を叩き込む。
「このチビ!」
腹を抱えて蹲る仲間の横で、もう一人の男がアスカの脳天目掛けて木槌を振り下ろす。アスカは咄嗟に太刀を振って弾き返した。
「チビ上等! クリーパーのお陰で皆困ってるってのに、それにつけ込んで好き勝手するようなヤツラには、ばっちりお灸を据えてあげるよ!」
大勢の男達を前にして大立ち回りを演じる三人娘。リディリディ・トゥラ・イェレミースは壁の陰から様子を窺うコルネのさらに後ろから、じっとその戦いの様子を窺っていた。
「あの子のあの名乗り……はなんでしょうか?」
ミーナの口上は、引っ込み思案の彼女にとっては困惑するしかない。ついでに、後から乗り込んできたアスカまで派手に乗り込んだものだから、リディはすっかり気圧された。
「私も、あんな風な名乗りを上げたほうが良いのでしょうか……」
「そんな事ないですよ。大丈夫です」
コルネが首を振ると、リディは安堵の溜め息を零す。
「そうですか……よかったです。私にはまだちょっと早そうで……」
安堵したリディは、ようやく冷静に戦況を見渡せた。三人は軽やかに傾奇者達と渡り合っているが、数の差を覆すほどではなく、敵の武器が何度も掠っている。
「……ともかく、あれでは多勢に無勢です。仕方がありませんから、あのヒューマンの女の子に加勢してあげましょう」
「はい。相手の実力もおおよそわかりましたし、一気にやっつけてしまいましょうか」
エルフ二人は頷き合うと、一斉に戦場へと躍り出た。飛ぶような勢いでコルネは傾奇者の群れの中へと飛び込み、一人の脛を思い切り木剣で打ち据えた。
「ああああっ!」
致命傷ではないが、骨に直接響く激痛が男を襲い、その場でバタバタとのたうち回る。男達はその悲鳴を聞いて思わずたじろぐ。
「くそっ! また新手かよ!」
数人が投石器を振り回し、コルネ達目掛けて石ころを素早く投げつけてくる。コルネは盾を掲げて受け止め、後ろにいたリディはその身にエーテルの逆巻く風を纏い、石ころを纏めて撥ね退けてしまった。リディは杖を掲げると、お返しとばかりに大量の光の礫を浮かべる。
「……噂は聞きました。美味しいご飯屋さんも、襲っているらしいですね」
光の礫が降り注ぎ、得物を持つ授恵者達を的確に打ち据えていく。リディのありったけの感情が、そこに籠っていた。
「どんな理由があっても、それだけは……ダメです」
エーテルを自在に操る冒険者達が次々に雪崩れ込んできて、静かな屋敷町が上を下への大騒ぎになってくる。アウレーリア・フォン・ネーベルベルクはそんな様子を天からの視点で窺っていた。
「あの子もやりたい放題ね……」
船上で勝手にお目付け扱いしてきたものだから、ならばよろしいと、彼女がシャルガネにいる間ずっと様子を窺っていたアウレーリア。シノビの真似事だけして帰るかと見せて、結局切った張ったを始めてしまった。予想通りである。
アウレーリアは塀に飛び移ると、力場を形成して数人の傾奇者を抑え込んだ。そのまま杖を振るい、彼女は傾奇者の周囲に不可視の波紋を走らせる。
「古くからの慣わしでは、挨拶前の奇襲は一回だけ許されるのですってね」
彼女が指をぱちりと鳴らすと、指先から火花が散り、その瞬間に次々と衝撃波が傾奇者達に襲い掛かる。投石器を持った一人は、その直撃をまともに受けて吹き飛んだ。
「こんばんは。ネーベルベルクのアウレーリアよ。以後お見知りおきを」
アウレーリアはぺこりとお辞儀すると、シーフと切り結ぶミーナへ目を向けた。
「弓を探しに来てるのに、一芸の勉強にも余念がないわね」
「せっかくシャルガネに来たのに手ぶらで帰れないってもんですよ」
ミーナはぺろっと舌を出す。無邪気で呑気な彼女に溜め息を吐くと、杖を再び取り直した。
「……別に止めはしないけど。怪我だけはしないで頂戴。いつもの事だけど」
次々に参入してくる女冒険者達。棍棒や匕首を持っているだけの与太者達は、彼女達の圧力に屈して尻尾を巻こうとする。
「くそっ! 何なんだよ、次から次に……」
「馬鹿野郎! 男が女に背を向けんのか!?」
授恵者の傾奇者がそんな男の肩を掴み、冒険者達の前に突き出そうとする。敵の連携はすでにボロボロである。そこへ、さらに悲劇が迫ろうとしていた。
「派手に啖呵を切りおって。若い者はいいのう、すっかりわらわのおかぶを奪われてしもうたわ」
ク・サーヤ・クッセーワは暗器を手に取ると、足音も立てずに走り出す。
「一つ、人よりいい匂い」
サーヤが戦場に飛び込んだ瞬間、何の花かもわからないどぎつい芳香が辺りに振り撒かれる。まともに嗅いだ男達は眉間の痛みを感じる。
「二つ、不埒な悪臭三昧」
洗濯していない装備が放つ腐臭黴臭が重なるように追いかけてくる。男達の眼に沁みて、一瞬隙が生まれてしまう。
「三つ、魅せるぞ最臭奥義♪」
サーヤは両腕を広げ、これでもかと体臭をばら撒きながら、光の刃を纏った暗器を振り抜く。防御が間に合わなかった傾奇者達は、直撃を受けて次々に倒れ込む。攻撃を免れた連中は、石やナイフを投げつけ臭いの元を仕留めようとする。サーヤは右に左に身を捻って躱すと、腐臭とエーテルを周囲に撒き散らす。男達は思わず顔を背けた瞬間、サーヤの姿は傾奇者達の中から影も形も無くなっていた。
「どこだ!」
一人が叫んだ瞬間、サーヤはその背後に姿を現し、膝裏を蹴りつけて転ばせる。体臭はこれでもかと澱んでいるが、その動きは滑らかだ。
「これこそ玄人はだしの仕事じゃのう。何という英雄の介添え人じゃ」
ミーナの活躍を支えるこれ以上ない支援であろうと、サーヤは悦に浸っていた。
「うわぁ……お近づきになりたくない……」
当のミーナは鳥肌を立て、通りの隅でこそこそと立ち回っていた。彼女の積極的な攻勢が鈍った隙に、怖気づいた傾奇者達はさっさと戦場を離れようとする。
「逃がさないよ!」
ベアトはそんな傾奇者達を見逃さない。屋根の上に飛び乗ると、疾風のように駆け抜けた。そのまま軽やかに傾奇者達の正面へと飛び降りると、鋭い足払いで男の脛を打ち、その場で昏倒させる。
「くそっ……」
いかにも盗人な雰囲気の傾奇者が、壁を飛び越え逃げようとする。ベアトは袖口から母蜘蛛糸のロープを取り出すと、その背中に引っ付け強引に引きずり下ろす。
「ダメダメ、逃がさないったら!」
ベアトの大立ち回りで塞がれる道。傾奇者達は踵を返すと、反対側を突破して逃げようとする。しかし、そっちには何よりも固い『壁』があった。
「通しませんよ」
コルネは突っ込んできた傾奇者目掛けて盾を突き出す。胸元に直撃を喰らった男は、うっと息を詰まらせくの字になる。その隙にコルネは破脚砕の一撃を喰らわせ、がくりと膝をつかせた。コルネは剣を振り抜き、目の前の傾奇者達を威嚇する。
「私がいる以上、ここから先は通れませんよ」
エルフのせんしは頼もしい限りである。リディはその隣で杖を地面に突き立て、目の前に銃眼の開いた光の壁を展開した。
「……ええと、私も、いますので……」
銃眼の穴から杖を突き出すと、その先端から放った光でエーテルの矢を作り出す。彼女が念じると、あっという間に矢は槍のように鋭くなり、一人の男の足に突き刺さった。
「そろそろ、諦めていただけると助かるのですが……」
右から左から挟み撃ちを受けて、いよいよ進退窮まる傾奇者達。背中合わせになって身を固める彼らの中に、アスカが揚々と飛び込んだ。
「さあて、宴もたけなわだよ!」
アスカは剣を担ぎ、力強くその場で踏み込む。放たれたエーテルが、傾奇者達を絡め取る。方陣の中に突っ込んできたドワーフ娘を男達は叩きのめそうとするが、彼女は剣を背中に担いで捌き、そのまま力任せに振り抜いた。
「ぐわーっ!」
男達は一気に撥ね飛ばされ、地面を舐める。そんな彼らに、アウレーリアは静かに杖を向ける。その石突に炎が灯った。
「大人しくしなさい。これ以上の抵抗は意味が無いわよ」
「くそ……何で女どもなんかに……」
一人が悪態をつく。しかし女達七人が一斉に詰め寄ると、男は黙って項垂れるのだった。
●ミネルヴァの戦略
かくして冒険者達の活躍により、傾奇者達全員が縄目を受ける事になった。数珠繋ぎになった彼らを陣所まで連れていくのはサーヤの役目であった。
「ほら、歩くがよい。素直にすれば少しは罰を緩めてくれるかもしれんぞ?」
「近寄んじゃねえ! 鼻が取れる!」
「嗅いでるうちに癖になってくるぞ」
「なったらもう人間としてお終いなんだよ!」
騒がしい声を上げながら、傾奇者達が屋敷町からいなくなっていく。ミーナはその背中をぼんやりと見送っていた。
「ミーナさん」
そこへコルネがやってくる。白けたような顔をしていたミーナだったが、急に満面の笑みになって振り返る。
「コルネ! 今日はありがとう。助かりました」
「ええ。……その格好、先日のシノビさん達の影響が……?」
「せっかく修業したんですからね。お洒落でしょう?」
紺色の装束はミーナの引き締まった身体の線を引き立てている。相変わらずの美少女ぶりだ。
「そうですね。よく似合ってますよ」
コルネはミーナに頷いてやりつつ、ぎゅっと眉根を寄せる。今のコルネの気がかりは、ミーナの美貌よりもそのお転婆ぶりである。
「それはともかく、貴女も大分お節介ですね、ミーナさん。毎回ハラハラしますよ」
「大丈夫ですよ。これでも時と場所は選んでますから」
控えめな胸を張るミーナ。リディはコルネの背後からこっそりと顔を覗かせる。
「時と場所を選んだ結果が、屋敷町で盛大に名乗りを上げる事に繋がるんですか……?」
「何事も勢いが大事なんですよ。あなたも一緒にどうですか?」
ミーナは腰を折り、下から見上げるようにリディを見つめる。リディはひょこりとコルネの背後に隠れつつ、自分が敵の前で名乗りを上げる様子を思い浮かべる。しかしすぐに掻き消した。
「無理です……私にはそんな……」
「楽しいですよ? 敵がぽかんとしてたら」
ミーナの眼が悪戯っぽくきらりと光る。コルネまで呆れそうになった。
「大切な家宝を探すために冒険者になったんですよね……?」
「その通りですよ。……まあそっちは空振りだったんですけど。ただの黒い弓でした」
「大切な家宝? 何それ?」
ベアトが話に食いついた。ミーナは両手を一杯に広げて答える。
「『鴉の弓』です。材木を板金で補強した真っ黒な弓ですよ。貴方はご存じですか?」
「うーん……」
ベアトは流浪の記憶を探ってみる。しかしそんな弓の噂は今のところ聞いたことが無かった。ベアトは首を傾げた。
「聞いた事ないかなあ。自分があんまり使わないからかもしれないけど……」
「そうですか。……一旦家に帰って、また探りを入れないと厳しそうですね」
ミーナは小さく肩を落とした。
「やあやあミネルヴァ、お疲れ!」
そこへ、愛刀を肩に担いだアスカが揚々とやってくる。下からじっとミーナを見上げ、にっと白い歯を見せた。
「いやぁ、東方様式のいーい名乗り上げだったね! それもあって演劇っぽさもあったし何より超カッコよかったけど……なんであんなことしたの?」
アスカのアホ毛がピンと揺れる。ただ見る限りはただの自由人なお嬢様だが、彼女の本質は曲者なのだとアスカの直観は告げていた。
「それを言っちゃあおしめぇよ、ってね?」
案の定、ミーナは手をひらひらさせ躱そうとする。アウレーリアは溜め息を吐き、その後頭部を本の背で軽く小突いた。
「隠すほどの事じゃないでしょ。大騒ぎして相手の気を引いてる間に、誰かが駆けつけてくるのを待っていた、ってとこね」
「あー、言っちゃった」
ミーナは口を尖らせる。むすっとする彼女の鼻先を、アウレーリアはぴしりと指差した。
「目立つのは結構なことだけど、これだけ騒いで収穫無しじゃ、本当にただの阿呆嬢よ?」
「大丈夫ですよ。今日のは種蒔きです。これから肥料と水をやるところですよ」
彼女は目をきらりとさせる。本に名を遺す策略家には程遠い顔つきだが、相変わらず深謀は抱えているらしい。アウレーリアは肩を竦めた。
「“良い収穫”になるといいわね」
シャルガネでの戦いはまだ続く……
マスターコメント
ショートシナリオ易しい 報酬:少ない6 / 4〜6人
2021年11月16日 16時27分44秒 公開
参加者
コルネリウス・アーラ
- イェレミース トゥラ リディリディ
アスカ・タチカゼ
ベアトリーチェ・カロッサ
アウレーリア・フォン・ネーベルベルク
ク・サーヤ・クッセーワ
相談掲示板
No.1
あの・・・、キャスターのリディリディです。 えっと、よ、よろしくお願いします・・・。 か、かぶきもの?ですか・・・。 その・・・、今はとりあえず単純に戦闘依頼として考えますね。 フィーギルさんがBS主体で動くということですし、(クラスは違いますが)私は火力方面を担当します。 といってもシューターが怖いので、矢を防ぐ術は用意していきます。
ウォーリアのアスカだよーよろしく! 遅くなってごめんねぇ。 まあシチュエーションが面白……もといちょっと特殊だけど目的自体はシンプルだよね。 大捕物、とか言うのかな? 相手取るとなるとやっぱり授恵者がちょっと厄介になるかな……うまいことやりやすいのと相対できるように誘導するか2人1組くらいで確実に順次倒していくかでどうだろう? 私達も個人個人で動くかもだけど、開始位置くらいは共有できるとスムーズにいくかなって思う。
遅くなってすみません、ウォーリアのコルネリウスです。よろしくお願いしますね。 ミーナさん、先日のシノビ道場の影を響受けているのでしょうか…。 全員捕縛が目標ですので、一般人を殺してしまわないよう気をつけないといけませんね。 混戦状態だと狙って加減するのは少々難しい事もあるかもしれませんが、授恵者を引き付けて致命傷を与えないようには注意したいです。
キャスター、アウレーリアです。宜しく。 あの子もなかなかミーハーね……。 とりあえず、私は足止めと識別範囲攻撃で授恵者から制圧します。 シーフ辺りは壁を越えて逃げるかも知れないから、手早く片付ける心算。 一般人は逃がさないようにだけしておいて、手が空いたら光縛呪で縛っていくわ。 配置は退路を断つよう敵の後方か、塀の上でも良いかと思っています。
うーんどうしよっかなーと思ってたけど、囮の意味も込めて真っ正面から突っ込もうかなと思ってるよ。 全員捕縛って依頼だし、逃げられても面倒だから一般人から狙ってこうかな。 見た目じゃわからなそうだから勘っぽくはなるけどね。