【FF】クソデカボチャをやっつけろ
おおくまねこ
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シナリオID:1538
オープニング
「はい、みんなちゅうもーく! これを見て下さい! どうですか、この立派なカボチャは!」
「すごい……! こんな巨大な実が実るなんて……!」
「800キロぐらいあるんじゃねえか……!?」
「さすがは長老だ……!」
エルフたちは、長老の家の前に集まって驚嘆の声を上げていた。この村のエルフたちは人間たちに教わり、今年から農業を始めたのだが、長老の家の裏の畑で巨大なロスガリアジャイアントカボチャが収穫できたのだ。
「ほっほっほ、儂にこんな才能があったとは、自分でも驚きじゃ。まだまだ若いもんには負けんぞ!」
長老はご機嫌だ。しかし、隣にいたティカはすまし顔で反論する。
「何を言っているんですか、おじい様。これは私の祈りがきっとカボチャに通じたんです!」
「ちがうよ。わたしがまいにちいっぱいおみずをあげたからだもん!」
ティカの妹まで自己アピールを始め、長老一家の間には火花がバチバチと散った。
「まあまあ。とにかくみんなでお祝いしようじゃないですか。他の畑でも大きなカボチャがたくさん獲れてますよ。さすがに常識的なサイズですが」
おのおのが自らの手柄だと猛アピールする長老ファミリーを宥め、村の青年が言った。青年の言う通り、長老の家ほどめざましい成果は無かったが、他の場所の畑でもカボチャが収穫できたのだ。ビギナーファーマーであるエルフ達でもちゃんと形になったあたりは、さすがは肥沃なことで知られるリーンエス王国の大地の恵み、と言ったところか。もっとも、味の方はさすがに本職の農家達にはまだまだ及ばないのだが。
「そうですね。じゃあみんなでお祝いしましょう! 人間たちは収穫のお祝いをする時は特別な衣装を着るそうですよ! 具体的には、白い布を頭から被り、目の部分に穴を空けます! これを『OBAKE』といいます。そしてこの格好で『BON―ODORI』なるダンスを踊るんだそうです」
村で一番人間社会に詳しいと自負するティカはドヤ顔で収穫祭の知識を村人たちに披露した。もちろん、色々間違っている。たぶん難民キャンプの小さな子供あたりから仕入れた知識か、酔っ払いの冗談でも真に受けたのだろう。
「む。そうなのか。よく分からん風習だな……」
「とはいえ、何か文化的な意味があるのかもしれん。我々もやってみよう」
エルフたちはみんなで布団のシーツを頭からかぶり、輪になって踊り始めた。人間が見れば爆笑するか、邪教の村に迷い込んでしまったと勘違いするであろう光景だ。
エルフたちはそんな風に、彼らなりに楽しく収穫のお祝いをしていたのだが。
「おや、長老のカボチャの様子が……?」
突然、広場に飾ってあった長老の巨大カボチャがガタガタと揺れ始めたのだ。さらに、テーブルに置いてあった他の未調理カボチャも一斉にプルプルと震えはじめた。
「なんだ? カボチャが動いてるぞ!?」
「まさか、心霊現象か!?」
ビシリ。
500キロを優に超える巨大カボチャには目と口のような亀裂が入り、それはついに大きく口を開けた!
「KISYAAAAA!!」
「や、野菜がしゃべったー!」
●難民になったエルフ達
「あれ、エルフ村の人達じゃないっスか。みんな、一体どうしたッスか? そんなに慌てて」
たまたま近くを通りかかった行商人ウィーズルは難民キャンプ跡地にたむろしていたエルフたちに声をかけた。彼女はエルフたちとは顔見知りだ。何を隠そう、エルフたちに野菜の種や苗を(ぼったくり価格で)売りつけたのも実は彼女である。もっとも、売りつけたのはごく普通の野菜であり、野菜が暴れ出したのは決して彼女の陰謀とかではない。
「あ、ウィーズルちゃん! 実は収穫したカボチャが叛乱を……」
ティカ達はウィーズルに事情を説明した。エルフ達は自我に目覚め、襲い掛かってきたカボチャ達相手に奮闘したのだが、統率された動きで襲い掛かってくるカボチャ達はけっこう手ごわく、村を放棄してここまで逃げてきたのだという。
「それは、大変だったっスね……。うーん、クリーパー案件かな? とりあえず、冒険者ギルドに依頼出しとくッス。あと、ここしばらく使えるよう、領主様にも連絡しときますね。ついでに難民が使ってたテントとかも借りられないか聞いとくッス」
「すまんの。世話になる」
「あ、もちろん仲介手数料は貰うッス」
「ちゃっかりしとるのう……」
「ちょっとぐらい安くなりません? あのカボチャの苗と種、貴女から買ったんですから。不良品だったんじゃないですか?」
「あっしは暴れ出すような物騒なモノは売ってないッスよ! それに、今年は王国北部も凶作気味なんス。普通のカボチャだったらあっしが買い取りたかったぐらいッス!」
エルフたちと激しい価格交渉を繰り広げた後、ウィーズルは人里へと向かいながら、ぽつりと呟いた。
「さて……カボチャが暴れ出したなんて話、信じて貰えるッスかね?」
解説
マスターより
リプレイ
「………最近の植物は凶暴化でもするようになってんのか……いや、そういえば前にもいたな」
遠い目をしながら、ナキルが呟く。思い返してみれば、ナキルは植物型のモンスターとも戦ったことがある。巨大花とか、キノコとか。ならば、野菜のモンスターがいても別におかしくはないのだろう。
「同じようなクリーパーを倒したことあるのだ。その時はキャベツだったのだ」
ストレガ・L・リベルガストラがしみじみと言った。今回の依頼書では「モンスター」とか「お化け」といった、クリーパーとも魔獣ともアンデッドともつかぬ曖昧な表現が使われていたが、博識なストレガはその正体について察しが付いていた。
「これもカボチャ型のクリーパーではなく、アストラル界からやってきた直後にカボチャに憑依したクリーパーだと思うのだ。クリーパーはエーテルに魅かれる性質あるのだ。初めての農業でクリーパーお墨付きの良品を育てられた長老他村民は本当に農業の才があるのだ」
実際、ストレガの言葉はほぼ正解であり、お化けカボチャの正体については、クリーパーで合っている。ただし、カボチャが豊作だったのはエルフ達に農業の才があったわけではなく、エルフ達の中に大地のエーテルを活性化させることができる超能力者がいたせいなのだが、野菜の栽培方法までは聞いていないストレガには流石にそこまでは分からなかった。
「収穫して美味しいポタージュにしてやるのだ」
「期待しています」
ストレガの言葉に、ティカはにっこりと微笑んだ。
「トロくさいカボチャの群れなど、ワタクシ共の敵ではないでございますよ!」
見た目はほぼ二足歩行のハリネズミの獣人、ハリーヌ・ヨツユビは腕まくりをした。その後ろでは、ペットのゴリラが主のやる気を代弁するかのようにドラミングをしている。
「南瓜が暴れ出してしまった原因には、心当たりがある。おそらくはエルフたちの『BON―ODORI』が、引き金となったのだろう。舞踏には呪術的な意味合いも多々存在する。一歩間違えばこのようなことも起こり得る……」
ハッタ・ムラムラは真剣な眼差しで言った。
「ええっ!? そうなんですか!? あの『BON―ODORI』がいけなかったんですか!」
道案内役に志願したティカは驚きの表情だ。
「かくなる上は、おれの『PANDA―DANCE』で浄化せねばなるまい」
敬虔なGP教徒であるハッタは秋にこのような事が起こることを想定し、夏場に西瓜割りの特訓は欠かしていない。
視界を奪われた中、焼けつくような砂地での訓練、活かすべき時は今!
「ハァアアアアアアア~~ッ!!」
ハッタは気合十分にシャウトし、リズミカルに腰を振り始めた。ティカはその一挙一動を見逃すまいと、踊り狂うパンダ獣人をガン見している。
「そういうのは全部終わってからでお願いするッス」
様子を見ていたウィーズル(依頼人)は呆れた声でツッコミを入れた。
「かぼちゃのお化け? ばけばけ? そいつら退治するんだね。OK、OK、こっちが退治されないように戦うよ」
猫尻尾をぴょこぴょこと動かしながら、甍・ヒネモスが言った。お化けとは言っても、ゾンビや幽霊ではなく、カボチャ。しかも倒せば食べ放題と聞く。甍はやる気に満ち溢れていた。
「退治するとお化け食べ放題!!」
「それだとあんまり美味しくなさそうッス」
ウィーズルが突っ込むと。
「え、死体食べ放題だっけ?」
もっと酷くなった。
「肉と言って欲しいッス。いや、野菜ですけども!」
●エルフの村へ
「じゃあ、カボチャ退治よろしくっス、冒険者さん方。ティカさんは道案内お願いっス」
「はい、任せて下さい! さあ、皆さん! 私の村を悪しき者達から取り戻しに行きましょう!」
ウィーズルに送り出された冒険者達は隊列を組み、ティカの村へと進撃していった。
「見えたぞ。あそこに一体いる」
先頭を歩いていたセリオス・オーガストは片手をさっと横に伸ばし、仲間達を制止した。
「お、ホントだな」
「木の影におりますね」
セリオスと同じく、天眼を使っていたナキルとハリーヌもほぼ同時にカボチャに気付き、姿勢を低くした。
「あれ、あれがお化け? 赤くて黒くて毛の生えたやつじゃない?」
お化けに対して謎の偏見を持っていた甍は首を捻った。
「なんだと思ってたんですか。そんな気持ち悪い野菜育ててませんよ!」
「そうかー、お化けってカボチャだったんだねー」
ティカに突っ込みを入れられた甍はポンと手を打った。
一向は忍び足で少しずつカボチャに占拠された村への距離を詰めていく。やがて、天眼を使うまでもなく、目玉がある巨大なカボチャが村のど真ん中に鎮座している姿が全員の視界に入った。
「哎呀、これはまた大きなカボチャアルね。ワタシよりも大きい時点で、その異常さが良く伝わるアルよ。エルフさんすごいアル」
牛・奶は感嘆の声を上げた。奶の身長は約140cm。それに対してあのカボチャは直径2メートル近くある。クリーパー化する前からあの大きさだったと聞いているから、単純にすごい。
「グルル」
「どうどう。後で好きなだけ食べられるアル」
すでにお化けカボチャの匂いを感じているのか、奶のペットの狼も少し興奮気味だった。
「毎朝、ハイアルヴに祈りを捧げていたんです。カボチャが大きくなりますようにって。まさかこんなことになるとは……」
褒められたティカだが、しょんぼりしていた。今はカボチャが暴れ出してしまった哀しさが勝っているのだろう。「BON―ODORI」の失敗(?)が尾を引いているのかもしれないが。
「……遠目に見えるだけでも、凄まじい大きさと量だな……折角収穫まで漕ぎ着けたのだから、しっかり味わえるよう、解決しようか。みんな、私の近くへ」
サマエラ=フォリウムはみなに近くに来るように呼びかけると、精神を集中した。たちまち彼女の体から蒼白い炎が立ち昇り、その場にいた全員を巻き込んで燃え上がった。
「KYISYAAAAAAAAAAAA!!」
サマエラが放出した凄まじい量のエーテルに反応したのか。カボチャ達は雄叫びを上げ、冒険者達の方へと真っすぐに突っ込んできた。セリオスは弓を構え、仲間達へと呼びかける。
「どうやら、向こうもこちらに気付いたらしいな。駆除開始だ!」
●VSお化けカボチャ&クソデカボチャ
「後ろからの援護、期待してんぜ!」
ナキルはティカにそう声をかけると、凄い早さで飛び出した。狙うはカボチャ達のボスらしき巨大カボチャ。
「邪魔だ!」
エーテルで射程を伸ばした大剣を一閃。ナキルは道を塞いできたカボチャを三体まとめて難なく薙ぎ払う。
「……」
セリオスはびゅんびゅんと宙を飛び回っているカボチャ達をギロリと睨み付けてみた。しかし、カボチャが怯む様子はない。セリオスは嘆息すると、エーテルを注ぎ込んだ矢をカボチャの密集地帯に撃ち込んだ。放たれた矢はカボチャの一体に着弾すると同時に光の破片を撒き散らし、十体近い数のカボチャをまとめて粉砕した。
「ウホホウホウホ!」
ハリーヌのゴリラはあえてパーティから離れ、ドラミングで存在感を誇示した。ハリーヌはカボチャの一部がゴリラの方に誘導されていくのを確認しつつ、こちらに向いていない個体の背中(?)を撃ち抜いた。
「煮物! パイ! スープ!」
ハッタは謎の呪文を口にしながら、全力疾走で巨大カボチャへと駆け寄る。
「イキが良いのは結構、生命力が高いのも結構、しかし村を乗っ取ったところでカボチャに未来はないのだ。それを分からせよう」
厳かに告げたハッタの目がキラリと光る。
「私は小さな巨大カボチャ群から、処理していこう。小さな、巨大カボチャ……」
サマエラはほんのり矛盾を感じつつ、輝刃を自身の霊刀にかけた。淡いエーテルの光が刀を包み、刃が鋭さを増す。
「GYAGYAGYA!」
空飛ぶカボチャお化け達は数にものを言わせ、冒険者達へ次々と突っ込んでくる。だが、前に出ていた冒険者たちはカボチャ達の攻撃を華麗に躱し切った。
「さあ。収穫なのだ。重力場」
ストレガは巨大カボチャを飲み込むように重力の力場を発生させた。これで巨大カボチャは他の者を狙って移動しにくくなったはずだ。
「えいっ! ああ、外れた!」
ティカはカボチャを狙って矢を放ったが、矢はカボチャに躱されてしまった。
「なかなか凄い光景アル」
奶は辺りを飛び交うお化けカボチャ達に感心しながら、手近な一体に向かって矢を放つ。エーテルを注ぎ込んで強化した一撃だったが、残念ながらひらりと回避されてしまった。
「出来るだけやられないように……やられそうだけど」
駆け出し冒険者である甍はぼやきながら、小さい方のカボチャへと近寄っていく。剣の腹を叩きつけるように大剣をスイングし、カボチャを狙うが、カボチャはすばしっこく、初撃は空振りに終わった。
「KISYAAAAAAAAAAA!」
クソデカボチャは地鳴りのような雄叫びを上げると、蔓を鞭のように伸ばし、冒険者達に攻撃を仕掛けてきた。
ビュビュビュビュビュッ!
「むっ!」
「危ねえ!」
「危なかったのだ」
ハッタが二発の内一発もらい、のけぞった。ナキルとストレガはなんとか鞭の一撃を回避した。
●
「さっさと仕留めた方が良さそうだな」
セリオスは再び炸裂する矢を放ち、七体のお化けカボチャをまとめて吹き飛ばした。小さいカボチャたちはさほど恐ろしくないが、あの巨大なやつだけは図体に見合ったパワーを持っているようだ。早めに加勢しないと、ハッタが危ないかもしれない。
「オレも加勢するぞ! こいつ攻撃のリーチが長い! みんな気を付けろ!」
怒涛の勢いでクソデカボチャに駆け寄ったナキルは、飛び込んだ勢いのまま大剣を振り下ろした。瀑布の如く叩きつけられた一撃は、巨大カボチャに深々と食い込んだ。
「今でございますよ!」
ハリーヌは石を投げているゴリラに引き寄せられているカボチャ達に向け、メテオライトを放った。光の雨が実に五体ものカボチャ達を撃ち抜いたが、威力が足りなかったのか、全ての個体がピンピンしていた。
「チッ。野菜の分際で」
ハリーヌは思わず舌打ちした。
「GYAGYAGYA!」
すでに半数ほどを失ったカボチャ達だが、果敢に冒険者達へと襲い掛かってくる。
「いてえ!」
カボチャの頭突きが腹にめり込み、甍は呻く。だが、この程度の威力ならあと4、5発は絶えられそうだ。
「プリン! シチュー! サラダ!」
カボチャの本来あるべき未来を口にしながら、ハッタはクソデカボチャに祭刀を叩きつける。
(重要なのは、食材としての使命を忘れてしまったこのカボチャに、本来の姿を思い出させること。これによって、悪しき道へと足を踏み入れてしまったカボチャを、正常な状態へと戻すことができる)
GP教の教えなのだろうか。ハッタはそう強く信じながら、カボチャを改心させる為にびしばしカボチャをしばき続けた。なお、周りの仲間達は「あのパンダはお腹が空いているのかな?」と内心不思議がっていた。
「当て難い相手には、当たる技を使うまで」
サマエラは極力カボチャ達の視界に入らないように努めながら、天に祈りを捧げた。カボチャたちは相当すばしっこいようだが、範囲内にいる敵を問答無用で攻撃する応雷ならば確実に命中するはずだ。サマエラの祈りに応え、カボチャの周囲にはもくもくと霧が立ち込め始めた。
「雷蛇禍」
ストレガは蛇のようにのたうつ無数の稲妻を呼び寄せ、巨大カボチャの拘束をさらに強化した。クソデカボチャのあの動きの鈍さなら、恐らく拘束が解けるまでは一歩も動けないだろう。異常に長い鞭のリーチが厄介だが、今の内に後ろに回ればもうこちらを視認できなくなるはずだ。
「さあ、行くアル!」
「ガルルルル!」
奶はカボチャの一体へと狼をけしかけた。カボチャは狼の牙をひらりと躱したが、その隙をついて?は矢をカボチャに放つ。今度は命中し、矢が貫通したカボチャは地面に落ちて動かなくなった。
「えい! ああ、また外れた!」
ティカは再び小さなカボチャに向けて矢を放った。しかし、また矢は回避され、民家の壁に突き刺さった。
「とう!」
甍はお化けカボチャに向かって再びラクガキが書かれた大剣を振り回した。今度は命中し、ぶん殴られたカボチャは目を回して地面に墜落した。
「WOOOOOOOOOOOO!」
クソデカボチャは吠え猛ると、ナキルとハッタに目掛け、四本の蔓を放った。
「っ痛ぇ!」
一発もらったナキルは苦悶を零した。歯を食いしばって痛みに耐え、剣を地面に突き立ててその場に踏みとどまる。
「その動きは見切った!」
ハッタは早くも目が慣れてきたのか、自分に向けて放たれた鞭を二発とも華麗に回避した。
バチチチチ! その直後、サマエラが召喚した霧から飛び出した雷が荒れ狂い、七体のお化けカボチャが黒焦げになった。
●
「あと少しだな……」
最初は四十体近くいたお化けカボチャだったが、冒険者達の奮闘により残りは約十体にまで減って知いた。セリオスは三発目の炸光矢を放ち、さらに六体のカボチャを爆砕した。
「さっきはよくもやってくれたな! テメェもオレの武勇伝にしてやるぜっ!」
ナキルは鞭で打ち据えられたお返しとばかりに、全力の一刀をクソデカボチャへと叩きつけた。雷光の如き速度で放たれた一撃はカボチャの額を割り、肉片が激しく飛び散った。
「もう一度でございますよ!」
ハリーヌは再びゴリラに纏わりついたカボチャに向け、メテオライトを放った。傷だらけになったゴリラは親指を立て、主の武勇を褒め讃えた。
「よし、これで最後だ!」
サマエラは最後の一体となったお化けカボチャに駆け寄り、霊刀で眉間を刺し貫いた。
「グラタン! ケーキ! えーと、パイ!」
ハッタは念仏(?)を唱えながら、癒しのエーテルの波動を放ち、自身とナキルの傷を癒した。
「ありがとな、ハッタ!」
ナキルはニカッと歯を見せて笑う。
「小さい方はもう終わってしまったのだ。みんな凄いのだ」
ストレガは感心しながら、まだ暴れているクソデカボチャに向けて最大出力のメテオライトを放った。今使える魔法で一番威力があるのは豪風だが、それだと至近距離にいる仲間達まで巻き込んでしまう為、敵だけに当たる魔法を選んだのだ。降り注いだ光の雨はクソデカボチャの頭頂部を撃ち抜き、無数の穴を開けた。
「小さいのには当たりませんでしたが、大きい方なら!」
ティカは弓を引き絞り、クソデカボチャに向けて矢を放った。真っすぐに飛んだ矢は巨大カボチャに当たり、小さな傷が付いた。
「あとはあいつだけアル。みんなで集中攻撃するアル」
「OK!」
奶の放った光の矢と、甍の斬撃がクソデカボチャに直撃した。
「GYAOOOOOO!」
クソデカボチャはカボチャが発したものとは思えぬ唸り声を上げながら、蔓の鞭を激しく振るう。
「ぐげ!」
「む!」
「いてぇ!」
今度は甍、ハッタ、ナキル、の三名に一発ずつ当たり、三名は歯を食いしばった。
とはいえ、そこまでがクソデカボチャの限界だった。8対1ではもはやクソデカボチャに勝機はない。冒険者達の集中砲火を浴びたクソデカボチャは、数秒後に絶命し、物言わぬ野菜に戻ったのだった……。
●取り戻した平和
「やったー! これでようやくみんなお家に帰れます! 皆さんありがとうございました!」
ティカは万歳し、大喜びの様子だ。
「仕方ないことだが、随分とカボチャが散らかってしまったな」
サマンナは村の惨状を見て嘆息した。お化けカボチャ達との激しい戦いにより、辺りにはカボチャの残骸がごろごろ転がっていたのだ。
「倒した後はやっぱり食べるアルか? 必要な材料や道具は一通り村にあると思うけど、一応鍋と火は持ってきたアルよ」
奶は調理器具が入ったリュックを示した。
「あ、それは助かります。うちの村、人間ほど調理器具は豊富にそろってないので」
食べる気満々だったティカは、にこにこ顔である。
「ついでだ、良ければ調理も少し手伝おう」
「ありがとうございます。私は村のみんなにこのことを知らせに行ってきますので、皆さんはカボチャ収穫しといてください!」
「では、ワタクシも御一緒するでございますよ! 生き残りがいたら大変でございますから!」
ティカはこの村の最高権力者の孫であり、次代の長らしいという情報を聞きつけていたハリーヌ(とペットのゴリラ)は、ティカの護衛を買って出た。
そして、二人はすぐに戻ってきた。冒険者の勝利を確信していたエルフ達は、すでにキャンプから撤収し、けっこう近くまで来ていたのだ。
●カボチャ料理を作ろう
「やりすぎただろうか……」
セリオスは自分が仕留めたお化けカボチャ達の破片を黙々と集めていた。撃墜スコアでいえば一人で半分近く倒した彼がトップなのだが、攻撃力が高すぎてカボチャ達はみなバラバラになってしまった。丁寧に水洗いすれば、なんとか使えそうだが。
「……このカボチャ…ちゃんと食えるんだよな……」
今、ナキルの中では警戒心と好奇心がせめぎ合っていた。
「……まさか、エルフが作った野菜って暴れるのがフツーじゃねぇよな……?」
極端なエルフとの遭遇に伴う謎の偏見の芽の萌芽だ。甍といい勝負である。
「……食って、見るか……」
意を決したナキルはちょっとだけカボチャを分けてもらい、自分で調理して食ってみる事にした。
「傷ついてないカボチャはそのまま冷暗所で保存なのだ。一月は保存できるし甘くなるのだ。傷ついたカボチャは傷むからすぐに調理にかかるのだ。ティカとルクスは洗い物をお願いするのだ。グリマスは野菜を切ってほしいのだ」
料理にはちょっとうるさいストレガはエルフ達に混ざり、てきぱきと調理を取り仕切っていた。以前にもこの村のエルフ達と調理パーティをしたことがあるので、メンバーの得手不得手も心得たものである。
「ワタシはお醤油で煮つけを作るアル。シャルガネ料理アルね」
「ほう、シャルガネ料理! そりゃ初めてのパターンじゃな!」
「シャルガネってどこだったっけ?」
「ここからだと、ずっと東アルよ」
エルフ達は奶の料理に興味津々だ。帝国の難民キャンプとは交流していたと聞いたが、シャルガネ料理は未経験らしい。ちなみに彼女のペットの狼は、おこぼれをもらいたいのか、少し離れた所でじっと奶を見つめている。
「煮付けても、コロッケなどでも……個人的には、ニョッキも好きだ。努力の賜、美味しく頂けたら、良いな」
「ほう、コロッケ……そりゃどんな料理だい?」
「そうか。コロッケはパン粉を使う料理だからな。小麦が無い場所では馴染みがないのか。コロッケというのは……」
サマエラも主婦エルフ達に混ざり、カボチャを熱心に調理している。戦っている時とは違い、その様子は穏やかだ。
(この村のエルフ達はずいぶん異種族にも友好的なのだな。珍しい村だ)
今回の任務の参加した冒険者達は実は全員がエルフ以外の種族である。厳密にはサマエラはエルフの血を引いているが、特段申告してはいないし、この村のエルフ達がエルフか否かに頓着しているようには見えない。ゴブリンも、ハーフリングも、獣人達も、ついでにゴリラと狼も、みんなごく自然に受け入れられていた。
「このけん、なんで字がかいてあるの?」
「『底抜け千本ノック』のラクガキ大剣とどっちが良いのか小一時間悩んでコレ選んだの」
「ふーん」
甍はエルフの子供に大剣の刀身のラクガキについて尋ねられ、大真面目に答えていた。平和な光景である。
「傷つけた箇所から開いて種とワタを取り出して……種は洗ってしっかり乾燥させたら麻袋に入れて保存。来年の種になるのだ。実は加熱して柔らかくなったら潰し、バターで炒めた玉葱と牛乳を加えて滑らかになるまで混ぜて煮込み、塩胡椒で味付けすれば……ポタージュ完成なのだ!」
ストレガの特製ポタージュが完成した。他の者の料理も続々と出来上がっていく。あらかたの調理を終えた冒険者達は、エルフ達と共にカボチャ立食パーティを始めた。
「むう! うまい! さすがは冒険者じゃ!」
「このコロッケも絶品ですね!」
エルフたちは冒険者たちが作った料理に舌鼓を打っている。特に評判がいいのは、何気に料理の達人であったサマエラのコロッケだ。
「お化けの死体甘くて美味しい♪」
「これ、野菜と言わんか! 飯がまずくなるじゃろが!」
性懲りもなく大声で死体と叫んでいた甍は、長老に怒られていた。ちなみにこれ以降彼女はお化けを見ると「コレは何カボチャかな?」と妄言たれるようになるが、それはまた別の話である。
「単純に煮て、調味料は軽くしたから……。素材が悪く無けりゃコレで充分美味い……ハズ」
まだまごついていたナキルだが、周囲の様子を見て、ぱくりと、カボチャの煮つけを一口食べてみた。
「……あ、普通に美味いな……」
(……やっぱ……普通にやれば大丈夫だよな……)
ふと、ナキルは自分が知る普通じゃないのを思い出し、安堵の溜息を洩らした。
「さあエルフたちよ! 刮目するがいい! これが本物のDANCEだッ!」
ドンドコドコドコ、ドンドコドコドコ。
村のど真ん中に立ち、熱くも激しいパンダの舞いを披露するハッタ。滅多に見れない宴会芸を見れたエルフ達は盛大な拍手を送った。
●さらば冒険者達、また会う日まで
「ありがとう、冒険者達よ。また世話になったのう。これで五回……いや、六回目じゃったか?」
「またいつでも遊びに来て下さいねー!」
エルフ達は大きく手を振り、帰っていく冒険者達を見送る。こうして、冒険者達はエルフ達の村をカボチャのお化け達から奪還し、腹いっぱいカボチャ料理を食べ、意気揚々と引き揚げていったのだった。
マスターコメント
ミドルシナリオ普通 報酬:多い8 / 6〜10人
2021年10月31日 12時47分55秒 公開
相談掲示板
ゴブリン、ヒーラー。サマエラだ。よろしく頼む。 今の状態はどうあれ、折角収穫できるまで育ったのだから、味わえるようにしてやりたいな。 お化けカボチャは、数がいる上に攻撃を当て難いとのことで、 単純に、手間が掛かりそうだな……。 命中確保の上で、範囲攻撃で纏めて削るとか、 移動も遅いなら、遠距離から攻めたりなどもできると、楽そうだろうか。 クソデカボチャは……見るからに、タフだな。 こちらは、移動もそれなりなのだろうか……蔓の範囲内では、4回攻撃も結構な脅威になりそうだ。 守り高めで、積極的に攻撃受ける盾役を置くのも、良いやも。 ひとまず命中や守りの向上に、ブルーフレアは持っていこうと思う。 役回りは盾役でも、攻撃役でも、作戦に応じて足りないところを埋めよう。
甍・ヒネモスです。レベル1です。 モブの賑やかしみたいなモンなので放置で良いと思います。 そんな感じでよろしくね。
キャスター、ストレガなのだ。よろしくなのだ。 デカイカボチャにだけ気をつければいいかな程度なのだ。 グラビティとスネアで足止めして、あとは小さいやつをよわよわメテオライトで片付けるのだ。
ハッタだ。世話になる。 回復もできるが、今回はどちらかと言うと攻撃役に回った方が良さそうか。 でかいのをひたすら殴って、状況に応じて全体ヒール、のような立ち回りを想定している。
「ナキルだ、よろしくな!! なんか、やっぱ植物ってデカくなったり凶暴化したりするモンなのか…!? まぁいいや! 一応、食いモン相手ってコトだな!ぶん殴るにしてもちっとは気にしながらぶん殴るとするぜ!! >ハッタ 攻撃ならオレも来たぜー!(ぶんぶん)」
ワタクシはハリーヌ。しがないヨツユビハリネズミでございます。 皆さま、今回はよろしくお願いするでございますよ! ワタクシは距離をとって小さい方をまず狙うでございます。 その後は大物でございますね。 できるだけ食べられる状態で倒せると良いのでございますが…
・・・ん、シューターのセリオスだ、よろしく頼む とりあえず俺も小さいのの相手をする。命中が-100だから当てにくいだろうしな
では……私もお化けカボチャへの攻撃に合わせて、早々にこちらは殲滅してしまうか。 ブルーフレアの後は、祈雷でまとめて攻めておこう。
シューターの牛奶アル。 出発ぎりぎりの参加だけど、皆さんよろしくアル。 ワタシも小さい方のカボチャの相手をしたいと思うアルよ。 頑張って狙い撃ちしてみるアル。