【FF】ダンジョンボス部屋に出ちゃった妖精さん
紀藤トキ
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シナリオID:1531
オープニング
「この上層ボスは、めんどくさい。アイテム落ちない。手ごたえもない、っていう三重苦なのよねー」
エフィミア・リリックが説明するそのボスは、不人気な側だった。ボスはローブを被った人影で、戦闘時には4体のしもべを召喚するキャスタータイプの亡霊だ。執着とか狂気を秘めた生者の残滓的なゴーストではないようなので、あるいは『そう言う戦い方』をした過去の英雄をベースにした作り物なのかもしれなかった。呼び出すしもべは水地火風の雰囲気を漂わせた球体だ。それぞれ青茶赤緑の鮮やかな色合いをしている。なお、召喚者のローブは灰色で地味だった。
「で、地属性の奴が術者の防御、火が攻撃、水が回復で風が器用貧乏って感じで動くの。球体は魔法を撃つだけじゃなく体当たりしてくることもあって、そっちが何と物理なのが意外よね。召喚者は回避したりはするけど攻撃はしてこない代わりに、球体が壊れたら再召喚してくるわ。つまりどういう事かと言えば……」
上層ボスにチャレンジするレベルの探索者たちにとっては、持久戦を強いられてめんどくさい。適性より強いパーティならばごり押しでも勝てるのだが、アイテムをほとんど落とさないという辺りが問題だ。あと、狭い部屋で魔法と物理を取り混ぜて戦ってくるので、格上にとってもノーダメージで倒すのが難しい。などなど。
「ローブの亡霊が本当にたまーに宝石とか落すことはあるわ。魔法使うときのエーテルの光が凝縮したみたいな、なんだか結構綺麗な石なんだけど……、確率からしてぜんぜん見合わないのよね。お金が欲しければ、先へ進んでしまった方が良い感じ。なのがこれまでの状況でした」
そう。話が変わってしまったのは数日前の事だった。
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それはダンジョンが作り出した防衛機構。やってくる探索者たちを迎え撃ち、多くはその糧となって消えゆく定めだ。それ故か、人のような顔をしてはいるものの普段は表情は無い。それが、探索者たちの会話を耳にして、誰も見ていないところで僅かに眉をしかめた。それはこんな会話である。
「こいつのドロップ欲しいなんて、変わった依頼だよな。ついででいいって言うから寄っては見たけどさ」
「ああ。何でもここで拾った宝石でプロポーズしてうまくいったご夫婦が、そろそろお年頃の息子にも験担ぎで同じ物を用意したいそうだ」
「えー、冒険者なら自分で取って来いってのよ」
「いや。依頼人はだいぶ前に引退済みで、息子さんは冒険者じゃなく街の料理屋だ。確か鶏料理の美味い店だったな……」
「冒険者夫婦の息子な割に堅実な人生ね。む、狙うのもアリか?」
引き受けた探索者たちは余裕の顔である。普通に考えて、ここのボスに負ける事などないレベルの面々だった。それでもベテラン故の慎重さで様子を伺い、ボス部屋の入り口をくぐる。25m四方ほどの部屋の中央に灰色のローブがいた。その周囲の床がぼわっと輝く。通称『召喚サークル』と言われているこのボス特有の効果で、初手で敵が部屋のどこに出てくるか次第で難易度が変わる。その数……。
「え、召喚サークル5つない?」
「いや、4体だろ? ……あれ?」
輝く光は確かに5つ。四色の直径1m程のカラーボールは良いとして、灰色ローブのすぐ隣に現れたのは、小さな人型の何かだった。
『よばれてとびでたココどこおばけ? ン、みたことあル?』
「「「しゃべったぁ!」」」
『わぁ! びっくりー!』
灰色ローブにひしっとしがみつくのは、今街で噂の妖精さんである。願いを叶えてあげるとお礼に砂糖をくれる善なる存在だ。思念を全員に飛ばしてくるあたり、この妖精は並の妖精より優れている個体かもしれない。しかし、ここにいる探索者たちは街での情報収集を怠っていた。
「知能の有る敵だと……? 新種か」
「まずいわね。引き上げる?」
「そうだな。報告の必要がある」
未知に出会った際の探索者としては、とても正しい。彼らはひとまず撤退を選んだ。
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『テリーズ・トラ・トリュース! あいさつー?』
『……』
『へんじないー。つまんないー。オサトウあげなーい』
召喚者と被召喚者の関係性ゆえか、灰色ローブは妖精を排除していない。時間感覚とか危機感とか色々薄そうな妖精は、状況に適応して灰色ローブに話しかけてはスルーされていた。四つのしもべも召喚されっぱなしだ。困ったことに、こちらは育っている。
『たいくつー。ぴかりんオサトウあげるー。おおきくなあれー』
育てた犯人は捕らわれの妖精だった。しもべたちは普段目撃されている奴より一回り大きい。白い粉を貰った奴は怪しく光ってまた少し成長した。灰色ローブにだけは変化が無い、と思いきやローブの表面に色々落書きをされてかっこよくなっている。その表情は少し悲しそうに見えた。
『……』
『オサトウはみんなのゆめなのでー。なんどでもよみがえルルルー』
言葉は比較的流暢なのだが、思考にとりとめがないのは所詮は浮世離れした妖精であった。
『たすけこないかー。うーん。ここさむーい』
召喚術の決まり事としては、被召喚者は召喚者が倒されるか召喚を解かない限り縛られてしまう。戦闘解決後も召喚が解かれていないので、妖精はここで捕らわれの身なのだ。妖精思考の故か悲壮感はそれほどないのだが。ダンジョンの上層ボスに、何の理由があって妖精をとどめているのかは謎である。
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そして、地上ではエフィミアがその件について説明を続けていた。
「時を同じくして、『妖精』が探索者ギルドに来たみたいでね」
受付にやってきて『たすけてー』『おやぶんさらわれたー。さわられた? えっちー』『こまったのー』『だんじょん? にいる?』などと単独では意味の分からない発言をするのを繋ぎ合わせて、ようやく何を依頼されているのかつきとめたらしい。受付とはしんどい職業である。
「おそらくこの件だと思うのよね……。いろいろと、普段通りじゃないケースだけど」
ボス部屋は挑戦者がいなくなればリセットされる事が多い。だというのに、妖精はまだ送還されていないのだという。何かの理由でボスが変異した可能性がある。最初に妖精と遭遇したパーティが解決できればよかったのだが、彼らは別の予定が入っていた。調査と救出のために別途依頼が出され、イレギュラーケースの場合の予防策としてエフィミアが同行する事となったという次第である。
「ま、何事も無ければついでで鉄級の審査にしても良いと思うの。上層ボスを退治して、職員である私が見届けてるのだから問題ないわ。ただ、危険だと判断した場合は介入するわよ」
依頼が上手くいったと言えるのは、妖精の無事の救出が成功した場合だ。もちろん戦闘に巻き込んでしまって妖精が死んでしまいでもすれば、失敗である。妖精の耐久力は良く分からないのだが、サイズ的にそれほど高くないと思うべきだろう。
「……ここ、完封するなら地の防御ごと範囲で爆殺するのが早いんだけどね。それ以外の方法で頑張ってね」
当然、エフィミアの得意な方法は禁止であった。
解説
マスターより
リプレイ
ダンジョンに変異個体が現れる事はままあれど、上層ボスが変異するというのは只事ではない。とはいえ、この8名であれば上層ボスを相手するのに十分以上の能力を持っているとバクル・バスリーは見て取った。
「上層ボスは色々いるけれど、不人気っていうのもあるんだね。そうか、お仕事だもんなあ」
「でも、ダンジョンボスです! ちょっとワクワクしてしまいますね」
バクルがうんうん頷く横で、ハルハン・ツァガーンナルが楽しそうに言う。彼女やアンネエルカはダンジョンに挑む者が最初に目指す、青銅記章を申請していた。
「ええと、あなたは私の方で推薦しておけばよいのね?」
「可能であれば、そうしてくれると俺は嬉しい」
ヨル・スレイマンが頷く一方、ケン・Z・ブラッドリーは知人のバクルに頼む事にしたようだ。
「記章を手にする機会も滅多にないしな。よろしく頼むぜ」
「わかったよ。なんかドキドキするし、嬉しいなあ」
ダンジョン仲間が増える事について、バクルはもろ手を挙げて歓迎している。話がついているのを見て、エフィミアはバクルに声を掛けた。
「じゃあ無事に倒せたら、バクル君はギルドで少し時間をちょうだいね」
「……上手く攻略して記章を貰ったら、私も人を連れて探索が出来るでしょうか?」
「そういう事になるわ。……にしても、可愛いわね」
「せっかくですから。お菓子も持ってきましたよ!」
にこにこ見上げてくる猫耳イヤーマフつきのトーラへ、エフィミアは思わず笑顔を返す。パーティには元より獣人のツァガーンナルもおり、兜を被っていない今は耳をピコピコしているのだが、小柄なトーラの仮装は愛らしさと言う点では抜群だった。
「はい。せっかく収穫祭の季節ですから。……まあ、大した仮装はできなかったのですが」
「あらあら。そんな可愛い格好もするのねえ」
同じくけも耳カチューシャをつけたAlexandra・Hexe・Claudiaを見て、エフィミアが目を丸くした。四六時中警戒態勢でいられるよりも嬉しいのは確かだが、じっとり睨み上げてくる姿を見慣れていた彼女からするとギャップが微笑ましい。
「今日は楽しい探索になると良いね!」
皆の様子を見ていたバクルも微笑んでいる。記章を得てダンジョンへ挑む仲間が増えるのは、ダンジョンフリークにとってとても嬉しい。ともあれ、トーラが最初に言っていた通り全ては攻略を成功してからの事だ。
「とりあえず妖精さん救うためにがんばろー!」
「ああ。せっかくだし、先の冒険者達が受けたっていう宝石も確保してやりたいよな」
腕を振り上げ掛け声をあげたバクルに、ケンが言葉を繋げる。先発していた冒険者たちの報告書には彼らがなぜそのボス部屋を通過しようとしたのかの理由も書かれており、それぞれ思う所があったらしい。
「その宝石を見てみたい、と言うのもあるのだけれど。素敵なお話よね?」
「妖精さんをずっとこのままにしておく訳にはいかないし、宝石も手に入れてあげたいから!」
オシャレ好きなアンネエルカが夢見るような瞳で笑い、ララベル・サン・ディーベルは決意を新たにする。依頼にやってきた妖精たちの言うように、『捕らわれの身の妖精』を助けなければと意識を統一する一行の中、ツァガーンナルはそれほど不安を感じてはいなかった。あくまで何となくなのだが、大丈夫そうに思えている。
(根拠がある訳ではないですし、口に出すほどでもないのですが……)
考えつつ、全身鎧の兜を纏った。ツァガーンナルの耳はしばしの封印である。
●
上層の主幹路には障害になるような敵も滅多に出てこない。早々に到着した一同は現地の様子をちらりと見てから作戦を相談していた。妖精がしもべに何かを与えている光景や、記録より大きくなったしもべの様子から得た情報も含め、具体的な動きを考えていく。幾人かが持ち込んだお菓子も、相談の円滑化に役立っているようだ。
「宝石の入手が確率じゃないとしたら、召喚したしもべの扱いがキーじゃないかなぁ」
「魔法を使うときのエーテルの光に似ている、らしいしな」
首を傾げつつバクルが言うも、さすがにダンジョン巧者でも自信は無いようだ。ケンがちらりとエフィミアの方を見ると、「その宝石は見た事あるけど、綺麗な感じだったわよ」と言葉が返る。聞いた感じ、あくまでも彼女の考える魔法の光らしく、例えばケンの殺界のように目に見えないエーテルもあるので個人の感想ではあった。
「なるべく多く、魔法を使わせると良いってことかね? 召喚と障壁しかないって話だが」
「ベテランの安定して倒せる人ならわざわざ耐久戦を挑む事も少ないだろうし、レベルがギリギリの人も速攻を選ぶ事が多いから、ドロップが渋く見えてるんじゃないかなぁ。つまり、しもべをフルで召喚させる位倒してしまうのがいいと思うんだ」
ケンの言葉に、バクルが推測をたてる。これまでに挑戦したダンジョン探索の先達が試した手立てを予測して、彼らが思いつかなかったであろうケースを選べば上手くいくのではという思考だ。
「持久戦になると、妖精さんを巻き込んだりしないかしら?」
「妖精さんが巻き込まれそうなら、ボクが守ってみせます!」
「流れ弾が当たらないようにも気を付けたいね」
そこにアンネエルカが懸念を口にするも、ツァガーンナルが自信ありげに胸に手を当てた。ヨルの指摘にも一同頷く。
「効率を上げるために、まとめてしもべだけ攻撃するのが良いかもな」
「分かりました。わたしも大勢巻き込めそうならメテオライトを撃ちますね」
「仕留めるのは一体ずつの方が期待値があがる可能性もあるでしょうか? 私は単体を狩ることに重点を置いてみましょう」
闘気槌か、相手が格下とあればいっそ殺界でも良いとケンが言い、ヨルが支援や回復よりで動くと聞いたトーラも攻撃を念頭においている。話を聞いていたAlexandraは自身の攻撃手段についてあえて一体づつ撃つと宣言した。ついで、しもべの撃破順についても相談が進む。
「できれば回復役の水と風から潰したいわ」
「そうだね。うまく引きつけられるといいんだけど……」
「注意を引くならぼくに任せてよ。回復に気が向かなくなるからね」
持久戦になるのは承知としても、なるべくなら短く済ませたい。アンネエルカがそう言い、遊撃のポジションになるだろうララベルが頭の中で動きをシミュレートする。バクルが宣言したシーザーロアは、なるほど引き付けには最適な選択ではあった。いつぞやのひよこといい、何かと縁があるスキルのようだ。
「そうだわ。妖精さんは召喚されているのだもの。相手の強化をされると厄介だわ。戦いに巻き込んでしまうのも心配だし……」
「僕も、妖精さんに敵を強化されないよう、離れて貰えるのは良いと思う」
「危ない場所からも遠ざかるから守りやすくもなる。なるほど、一石二鳥だね」
アンネエルカとララベル、ヨルが妖精があちら側にいる事の懸念に触れると、Alexandraとトーラが手をあげる。
「どうやら妖精さんはひどく退屈している様子です。以前に別の方がお会いした妖精さんは、好んでお菓子を食べていたそうですから……」
「チョコレートを渡して、危ないので部屋の隅とかに下がって貰えるようお願いしてみようと思うんです」
「そうね、せっかくだから遊びに誘ってみたらどうかしら。きっと喜んでくれると思うの」
「うん。僕も近くに言って挨拶をしてみるから!」
仮装ペアに続き、アンネエルカも行動を提案した。声だけ掛けても良いのだろうが、近くで勧誘するなら身の軽いララベルかトーラが適任だろう。
「よし。相談も終わった事だし、それじゃあ改めてボス狩りと行くか!」
ニヤッと笑うケンを先頭に、一同はボスの待ち受ける部屋へと足を向けた。
●
「テリーズ・トラ・トリュース!」
勢いよく挨拶を口にしたアンネエルカに、灰色ローブの肩の上にいた妖精が目をぱちくりさせる。「デラーズじゃなかったっけ……」などと間違えて言い遅れたララベルや、他の面々も挨拶を口にしたり、あるいは無言のままで室内へ散らばった。
「こんにちわ……改めて、テリーズ・トラ・トリュース!」
『わーい。テリーズ・トラ・トリュース!』
灰色ローブの前で阻止の構えを見せていたしもべを、天井を駆けてパス。そのまま近くへ踏み込んだララベルへ、妖精はキャッキャと喜んで見せる。宙を駆ける事こそできないものの、身軽な動きでトーラも追随。動揺するほどの頭があったのか、進路上のしもべ2体はあっさり通過を許してしまう。チョコレートを手にしたトーラへの感触は悪くない。
『お菓子? 美味しい?』
「折角だしもっとあっちに行こうよ。あそこに僕達の仲間がいるんだ」
『友達、たくさんー』
ララベルに誘われた妖精がふわっと飛び立った。さすがに切り込んで会話した後にエスコート迄はできないが、守ることにかけては頼もしい仲間達がいる。
「助けに来ましたよ! もう少し待っていてください!」
『鎧の人、お助けー?』
ツァガーンナルが声を掛け、その後ろではヨルが「パウンドケーキあるよ。食べるかい?」などと餌付けに入っている。小さく可愛い妖精に自分も構いたいアンネエルカだが、立ち回り的にそこは我慢。
「私達の間ではね、お菓子をくれない悪い子にはイタズラをしてしまうのよ!」
一声掛けてから、綺槍「希望紡ぐ星」を風の球へ鋭く突き入れた。球を構成するエーテルの守りにヒビが入る。続いて中央へ踏み込んだケンが、首狩刀『SHIMADZU』 を勢いよく地に叩き付けた。エーテルの光塊が周囲を圧し、灰色ローブと仲間を避けてしもべを叩いていく。
「きみが水の球だね! ぼくが相手だよ!」
自分の身の丈と同じくらいの直径の球にバクルが挑発を飛ばした。弱っていた風球へAlexandraが放った魔弾が迫るも、地の球が割り込んだ。庇われた風球は風の刃で、火球は炎で灰色ローブ近くのララベルとトーラを狙う。トーラは回避したが、ララベルには着火し、慌てて袖を叩いた。水球がバクルに突進するも軽くあしらわれ、ボスの灰色ローブは特に行動は起こさず、視線で妖精を追っている。最後まで見に回っていたヨルが、攻撃範囲から逸れていた火球へ攻撃を入れた。
「それじゃ、宝石のためにも一気に攻めさせてもらうぜ」
ケンが構えをとると、無色のエーテルが狭い室内を満たす。妖精は『重いー』と文句を言っているが、しもべたちには足止めの圧が掛かった。後退しながらトーラが放った光弾が瀕死の風と地の球をまとめて叩き落す。バクルの前にいた水球は、ララベルに三度切り付けられて霧散した。残る火球へとAlexandraが蒼玉鋼の霊刀を向けて、魔矢を放つ。
「さて……全部いなくなったようだけど」
手を残した冒険者達が見に回る中、灰色ローブが杖を振るうと場に四体のしもべが再出現した。ツァガーンナルは妖精の守りに徹している。アンネエルカが今度は水球の守りを砕き、バクルがまたも注意を引いた。残る3つは空間を埋める殺気の主へと矛先を向ける。火球がケンを中心に炸裂したが、ケンもアンネエルカも魔法への守りを確り固めていた。残るバクルは、少し顔を歪める。
「ちょっと、あついね!」
「呼ばれてすぐ動くのは少しずるくない?」
火傷を負ったバクルを、ヨルの回復が癒した。と、部屋の空間をずるりと剣気が薙ぐ。ケンの殺界による追撃だ。手数が違い、能力が違う。妖精の砂糖によって多少は底上げされていたのだろうが、冒険者たちの対策を崩せるほどでもない。数手が過ぎる間に再召喚を幾度か交え、しもべは打ち止めとなった。
「何か理由もありそうですが、妖精さんは、返していただきます!」
守りも必要となくなり、ツァガーンナルがシルーン・サルヒの石突で脚を突く。杖を振るうも再召喚はかなわず、「ジュエル・オア・ジュエル!!」と有無を言わさずララベルが切りかかって障壁の上から傷を通した。
「手間取らせやがって溜まった鬱憤はらさせてもらうぜ……。きれいに狩ってやるからその首おいて逝けやぁぁぁ!!」
足を止めて殺気を放ち続けていたケンが、ここぞとばかりに横に薙ぐ。実態の薄い亡霊故か切断こそできなかったが、首の辺りを断たれた灰色ローブはがくりと膝をついた。
『おしまいー?』
声を掛ける妖精へ、ツァガーンナルがちらりと目を向ける。
「妖精さんは、灰色ローブさんに見覚えは、ありますか?」
『知ってたー』
万歳をする妖精の姿が薄くなる。召喚者が死ねば、解放されるタイプの召喚術だったようだ。慌てて、冒険者たちが菓子類を渡すとニコニコと笑って『テリーズ・トラ・トリュース!』と返事をしてから消えていった。後には、こんもり白い粉が残っている。
「妖精さんのお砂糖で球体は強くなったみたいですけど、本当にお砂糖なんでしょうか……?」
「そもそもどこから出てきているか分からない砂糖なのよね……、あれ」
トーラの疑問に、エフィミアが苦笑する。まあ、迷宮に突然出てくる物だって食べれるのだから、妖精がどこからともなく取り出した砂糖だって食べれるのだろう。
「……宝石は出なかったようだね」
「きっちり魔法は使い切らせたんだがな」
「宝石が無いのは残念ですけど、退治するのは成功ですよね?」
「ええ。ちゃんと成功よ」
灰色ローブが消えた辺りを探していたヨルが首を振り、ケンが肩を落とす。心配げに言うトーラへは、エフィミアが頷き返した。
●
書類を片付けたエフィミアが顔を出した頃には帰宅していた者も多かったが、のんびり打ち上げを楽しむ者はまだギルドの酒場に腰を落ち着けている。
「あら、あなたも打ち上げに?」
「折角のお祭りです。楽しみたいですからね」
付き合いが良いと思っていなかったエフィミアが驚くも、Alexandraは平然としている。子供らしい遊びを友人と楽しむことはできないまま逝った少女を思い、彼女は1人ケモミミを揺らしていた。何杯目かを注文していたヨルが骨兜の下で笑いを浮かべる。
「女の子に奢って貰ってばかりも何だしね、今日は俺の方が出してもいい」
「それは良い心がけね! じゃあ奢られちゃおうかしら?」
幾つになっても女の子扱いは悪くないと思うエルフ(153)もにこやかに応じる。テーブル席では、ダンジョンの先達たるバクルにツァガーンナルが声を掛けていた。
「ボク、ダンジョンの事はあまり深くしっているわけじゃないのですけれども、妖精が呼ばれた理由が気になっています」
「しもべを強化する以外の理由かあ。うーん。何かさせたいことでもあったのかな?」
灰色ローブに思惑などあるのかどうかは分からないが。それはそうとして、同じ防御型のウォーリアだけに連携や立ち回りについて語れる事も多い。バクルは言葉を交わしながらニコニコしていた。
「やっぱりダンジョンはいいなぁ……」
随分前より強くなった自分を思い、他の冒険者たちの事も思えば、いつかもっと先を望めるかもしれない。その日が早く来ればいいと少年は思うのだった。
マスターコメント
ショートシナリオ難しい 報酬:標準8 / 4〜8人
2021年10月28日 19時57分13秒 公開
相談掲示板
シーフのトーラです。 鉄級紀章のため頑張りましょう! 5×5ヘクスの部屋にに敵が五体と妖精さんがいるんですね。 球体がヒールやカバリングをしてくるのも厄介ですけど、分断が出来ず球体も再召喚されるのでなかなか大変そうですね。 亡霊の耐久力次第ですけど、光縛封で亡霊と攻撃役を閉じ込めて、亡霊に攻撃を集中するのはどうでしょうか? もしくは、亡霊が再召喚する以上に球体を減らして押し切るとか。
ヒーラーのヨル・スレイマン。宜しく。 範囲攻撃でいっぺんにやるのが効率的だと思うんだけどダメなんだね。狭いもんね。 戦闘中は1hexに4人くらいが目安らしいから、光縛封をやるなら攻撃役は3人入るような感じになるかな。とはいえ上部が空いてる結界だから、回復スキルまで遮断できるかちょっとわからないかも。 もしかしたら、素直にカバリングの地の球体を閉じ込めておく方がいいかもしれない。 開始時に地を閉じ込めて、水と風を倒して回復を追いつかせないようにしながら亡霊を叩ければ追いつける……かな? のべ8体までの召喚らしいから、召喚できなくなるまで先に球体を減らすのもありはありなのかもしれない。とても持久戦ではある……。
今依頼でもよろしくお願いします。 キャスター、クラウディアです。 今回の戦闘ですが…戦術に関してはおよそ皆さんに丸投げとなりそうです。 無論戦力としては参加するのですが…アプローチは別方向に集中しようかな と。 前もっての宣言として、景気付けに〈HW・迷宮都市産カカオバスケット〉を持ち込もうかなと。 チョコ菓子の詰まったカゴということで、この時期には誂え向きかなと。 …ぁ、タダでは配りませんからね?この季節ですから、"合言葉"といっしょに。
あ。1ヘクスに入れる人数のこと忘れてました。 すみません。光縛封を使うなら土の方が良さそうですね。 それなら、亡霊に集中攻撃するのはどうでしょうか? 土のカバリングと亡霊のバリアで3回防がれるとして、水と風のヒール以上のダメージを与えれれば押しきれないかなと。 加えて、土を光縛封で閉じ込めたり、水と風をシーザーロアで執着させることが出来ればダメージを重ねれると思います。
ウォーリアのバクルだよ。よろしくね。 ぼくも亡霊集中でいいと思うな。 もしトーラさんの方針で行くなら、水と風の引き付けは担当するよ。 あ、鉄級欲しい人いれば、鉄級持ってるから、推薦人やるよ。プレイングに盛り込むから、言ってね。
先ほど話した別方向のアプローチについてですが… 主観として、[退屈気味の妖精]に対するポジティブアプローチが欲しいな と思う次第でして。 それでしばらく収穫祭の情報を探っていたのですが…彼らもまたこれに対して乗り気のようです。 余裕があれば なのですけれども、今回は収穫祭に因んだ行動を組み入れていけたらな と。 …最初にアイテムの持ち込みアプローチを話したのは、その取っ掛かりのようなところです。
ウォーリアのアンネエルカよ、アンネって呼んでくれても大丈夫。 鉄級、憧れはあるけど私はまず青銅からかしらね。頑張るわ! 妖精さんに対するアプローチ、素敵ね! 私も、救出の対象だから気にかけていたいって理由の他に 敵を支援しないよう、話しかけたり…それこそお菓子だったりで気を引けたらって思ったわ。 守らなきゃいけない妖精さんがいるから、あんまり長引いてしまうと大変かしら…… 回復されないように立ち回りながら、亡霊を集中攻撃するのに賛成よ。 もしよかったらではあるのだけれど、シーザーロアで引き付けられるのは単体だし 私も水と風、そのどちらかの引き付け役をお手伝い出来たらって思うわ。
ウォーリアのケンだ よろしくな そろそろ鉄級ほしいかな 球体も含めて範囲攻撃で同時に攻略って流れはいいだろう 範囲攻撃の中にもウォーリアの闘気槌のように対象識別可能なものを使えば行けるだろう 狭いからこそ有効な手だ 敵のしもべの優先順位はやはり、水>風>土>火かな まぁ対応としては今でてる光爆封でカバリング持ちの土の動きを封じて次に水・風をって流れがいいだろう 妖精への対処は、攻撃ではなく懐柔・・気を引くことで亡者らへの援護をしないようにするというのが一番うまいやり方かな? そういえば、OPで登場しているギルドにやってきた妖精たちとダンジョンに現れた妖精は関係性があるようだし連れて行ってこちらに引き込めないか試してみるというのはありなのかな? 妖精の白い粉に関して使用対象は妖精が決めれるなら注意をひくだけではなくこちらに引き込めればこっちの強化・回復に使えて戦いやすくなるんだが・・・・・・ あと、OPにあった鳥料理屋やってる息子への験担ぎで依頼されてる宝石に関してなんだが・・・・・どうする? 多分これに関しては大成功の要素だとおもうんだが俺としては狙えるなら狙っていきたいな ただ、一つ気になるのが宝石が出る要因が「亡霊が魔法を使った際のエーテル光の凝縮」ってあるんだが・・・・亡霊って攻撃してこないから魔法っていうと球体の再生のことになるのかな? そうなると、ドロップ率低いってあるからできるだけ多く再生させないといけなくなるから亡霊に集中攻撃してさっさと倒すって方針だとドロップしない可能性あるから困るんだよな
僕はシーフのララベル・サン・ディーベル。 みんな、宜しくね! 僕も妖精さんの気を引いて、向こうに味方しない様にしたり、仲間に引き込むの大事だなって思うよ。 宝石の回収も、出来るならしてあげたいよね…ギルドに依頼の張り紙とかは、まだ残ってるのかな? >鉄級推薦 僕も鉄級持ってるから、推薦して欲しい人が居れば言って貰えたら。
遅れましたが、ウォーリアのツァガーンナルです! よろしくおねがいします! 範囲攻撃は、闘気槌など、対象識別できるスキルなら、問題なく使えそうですね 自己識別だと、狭い部屋では使いづらそうです >妖精 収穫祭ですし、お菓子をあげるなども、効果はありそうですね あとは、妖精さんの動向次第で、灰色ローブから敵対対象と見做されるでしょうか? 万一の時はカバリングなどで、守れると安心そうです >宝石 亡霊の再召喚が、8体分、とあるので、再召喚を使い切らせるまで戦うくらいが、ドロップ条件でしょうか? 狙うなら、球体の再生を使い切らせて、殲滅するのが確実そうですが、持久戦になりそうですね
そしたら俺は土へ光縛封を使用するね。 以降は亡霊への攻撃がメインになるかな。事前にバフをする時間もありそうなので、コモンブラッドで輝刃3あたりを亡霊攻撃組に使ってもいい。 回復も持っていくつもりではある。 妖精へのアプローチも良さそうだね。何たって収穫祭だし! >宝石の回収 エフィミア君、「魔法使うときのエーテルの光が凝縮したみたいな」って言っているんだよね。これ、逆に魔法を使わなかった場合(召喚を使ってエーテルを消費しなかった場合)に落とすという可能性は無いだろうか? 宝石が8体分の召喚用のエーテルになってるって考え方になるんだけど……。 まあやってみないとわからない! 俺はどっちでもいいと思う。
>魔法を使うときのエーテルのが凝縮 これは石の外観で、亡霊が召喚をする/しないは関係ないような気がしますけど、ヨルさんが言うように召喚をさせない方がエーテル的な魔力を使わない分確率は上がるような気もしますね。 ただ単純にドロップ率が設定してあるだけの可能性もありそうですけど…。 持久戦でいくか亡霊を狙って早期決着を着けるか統一してきちんと連携を取った方が紀章の査定にプラスになると思うんですけど、どちらにしましょう?
>宝石 いや、そもそもの懸念点としては発生条件が「亡霊が魔法を使う際のエーテル光の凝縮」とある以上宝石を狙うなら亡霊に魔法を使わせなきゃならんがこの亡霊は攻撃してこないタイプの敵ということなのだろう? そうなるとこの魔法が何を指すかの情報がはっきりしていない。 可能性としては「球体の召喚」か「障壁を張る」の2つだ 確率が低いのなら可能性はすべて試すほうがいいだろう そうなると球体の再召喚を8回させた上で亡霊を倒す形がいいと思うぞ
持久戦で行くのか、ボス狙いかは大方針だから、ここは認識なるべく早く一致させたいね。 宝石ドロップが大成功の要素だというのは同意見だね で、ボクは「宝石をドロップさせるなら持久戦」、つまり召喚をなるべくさせるのが当たりじゃないかなと思うよ。 >上層ボスにチャレンジするレベルの探索者たちにとっては、持久戦を強いられてめんどくさい。 >適性より強いパーティならばごり押しでも勝てるのだが、アイテムをほとんど落とさないという辺りが問題だ。 この記載を見ると、「ごり押し(つまりボス狙い)の場合ドロップ率が低い」んじゃないかな。 適正より強いなら、わざわざしもべを潰して回らないと思うんだよね。 まぁ、でもあくまでボクの一意見だから、ボス狙いで行くなら合わせるよ。
では、球体を8体討伐する持久戦ということで? その場合、今回は前衛の方が多いですし、杖を持って魔法攻撃メインでいきますね。 メテオライトで出来るだけ多くの球体を狙って行こうと思います。
8体討伐でオーケイだよ。持久戦の方が時間はかかるが楽でもあると思う。 そうしたら瞬間火力より持久戦用の防御を重視。 地のカバリングの対策も要らないから光縛封はやめて、素直にヒールと防御バフを持っていくことにする。
ボクは、できるなら宝石まで狙ってみたい。ですね。 妖精さんを召喚した理由も、その辺りにありそうですし >戦闘 亡霊優先の場合はそのままとして。 球体を倒す場合の優先は、ケンがあげている、水>風>土>火。でいいでしょうか? 水と風の回復対策に、シーザーロアの利用は、手をあげている人が二人いるので、ボクは闘気槌でまとめて行くようにしてみます あとは、カバリングで妖精や皆さんが危ない時に、壁になれるようにしてみますね
よし、じゃぁ俺も持久戦に合わせた装備で動こうと思う スキルは球体用で闘気槌と亡霊用で無拍子をセットしていくつもりだ あ、鉄級への推薦よろしくね
あ、水優先なら土への光縛封はいる……? でも全体攻撃する人が多いから、順によっては邪魔になるね。 火が最後まで残る以上回復多めの方が安定するとは思うので、光縛封はやらないつもりで行くけど、必要そうだったら言ってくれたら変更するよ。 当日は宜しく。上手く勝っていけたらいいね。
持久戦ですね。 わたしもメテオライトで全体を攻撃するので、光縛封より回復を優先して貰えたらと思います。 土がカバリングで2回分ダメージを受けたり、水が攻撃より回復を優先するならその分こちらのダメージは減りますから、戦いやすくなると思います。
すべて倒し切る持久戦、がんばりるわ。 回復役を自由にさせない方が倒しやすいでしょうし、 水と風を引き付けつつ優先して叩いていくのは変わらずでいいのよね? 私は引き付け用のシーザーロアと、 手早く落とし切るために物防を下げられる破鎧砕で戦おうかと思っているわ。
よし、じゃあ耐久戦行こう! >ケンさん 推薦しておくね
>アンネエルカさん 方針はそれであってるはずだよ!
バクルさんありがとう! 作戦通り、精一杯頑張るわね!