【竜盤】氷中の抗い

革酎

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シナリオID:1466

オープニング

●超戦士誕生
 クリエスター山脈北東部が裾野を広げる平野部マミダの、ドワーフ王国第二都市群。
 その中でも最も北に位置する寒冷都市ベルナンは過日、メルトウォール陸戦隊の猛攻を受けて敢え無く陥落。ベルナンを脱出した大勢の市民や、敗走した守兵隊がベルナン近郊の雪山へと逃げ落ちた。
 メルトウォールの暗殺師チェイ・ツァンウは当初、ベルナン掌握のみで作戦を終了させる腹積もりだったが、潰走したベルナン守兵隊のドワーフ達が都市奪還を目指して動き出すことを憂慮し、これら抵抗勢力を早い段階で排除する方針に切り替えた。
 しかしベルナン維持にも多くの兵力を割く必要があり、雪山に潜むドワーフ達に差し向けられる戦力には限りがある。そこでチェイは選りすぐりのメルトウォール兵を呼び集め、点穴打術による肉体強化を施し、少数精鋭の討伐部隊を編成することにした。

 ベルナン太守府の中庭。
 雪がちらちらと舞い散る中で、五名のリザードマン戦士が横一列に並んで静かに佇んでいる。
 ひとりは二刀流の小太刀使い。やや小柄ながら、その俊敏さは疾風の如し。
 ひとりは巨大な戦斧使い。その巨躯から分かる通り、恐るべき怪力の持ち主。
 ひとりは長槍使い。間合いの取り方に長けた老獪なる戦士で、一撃必殺の技量が冴える。
 ひとりは大剣使い。攻防一体に優れたバランス感覚と、戦場を俯瞰する頭脳が特に優秀だ。
 ひとりは大弓使い。遠隔戦のみならず、至近距離での零射撃も驚異的な威力と速度を誇る。
 彼らはいずれもチェイの点穴打術を受けて、身体能力が大幅に向上した超戦士達であった。授恵者ではないものの、単独の接近戦であれば相手が授恵者であっても簡単に斃されることはないだろう。
 ましてや、これから討伐しようとしているドワーフ達は全員が一般人である。彼ら超戦士達が負ける要素は、ひとつも無かった。
「抵抗軍は早馬を走らせて冒険者ギルドに救援を要請したとも聞いております。貴方達が不覚を取ると思ってはおりませんが、不測の事態もありますからねぇ。なるべく早く、始末してしまいましょう」
 チェイの粘っこい声に、五名のリザードマン超戦士達は静かに頭を垂れて承知の意を表した。
「この五人だけに任せるのかい?」
 横合いから白銀虎の半獣人――メドゥの指先幹部『青の中指』ジルベルが、酒蔵から勝手に持ち出した度の強い酒をラッパ飲みしながら、軽い調子でチェイに問いかけた。
 チェイは、そんな訳はありませんよと小さくかぶりを振った。
「冒険者の皆様方には、ワタクシも借りがございますからねぇ。改めて手合わせを、と思っております」
「ふぅん……まぁ、俺はベルナンで大人しく、守りを固めておくよ。ドワーフの奪還部隊が迫ってきてるって情報もあったからなぁ」
 どうぞご自由に、とチェイは小さく肩を竦めた。

●反撃の第一歩へ
 ベルナン近郊の雪山。
 うずたかく積もった氷雪はその重みで硬質化し、山全体が氷の塊で覆い尽くされた様な光景を見せている。雪は次から次へと容赦無く降り注ぎ、ドワーフ達は寒さを凌ぐ為、洞窟内で焚火を起こし、身を寄せ合ってじっと息を潜めていた。
 ベルナン守兵隊の副長ブラトロー・ペデスは洞窟内の壁際で守兵隊の主だった面々と額を寄せ合い、奪還作戦に向けた協議を早朝から続けていた。
 チェイが五名のリザードマン超戦士を刺客として送り込んでくるという情報も既に掴んでいる。まずはこの難敵を撃破しなければ、ベルナン奪還など夢の夢であろう。
 そこへ、クリエスター山脈まで馬を走らせていたベルナン守兵隊長ジュオル・クルドクスが、洞窟の入り口付近で大音声を響かせた。
「助っ人を連れてぞッ!」
 彼の背後には、純白の氷雪を背にして佇む冒険者達の姿があった。
 若いブラトローの面に、久々の笑顔が弾けた。これでチェイに対抗出来る。ベルナン奪還に道筋をつけることが出来る。
 一時は徹底的に打ちのめされたベルナン守兵隊や大勢の避難市民達も、力強い味方の登場に喝采をあげた。

 ドワーフ王国の首都はクリエスター山脈の中にある。とはいえ地下都市では経済や農業においては都合が悪いことも多い。そんな理由から拓けたのが山脈北東部の平野部マミダである。
 帝国、また辺境都市群へとつながる交易地でもあり、ドワーフ愛飲の火酒の醸造地としても知られる都市マミダを中心としたこの地域は、ドワーフ王国の玄関口として知られていた。
 しかし、そこにドワーフ王国の宿敵たる邪竜が襲撃を行った。普段ならある程度奪い尽くせば消えていく邪竜だが、邪竜バイアーディスとアイオーンの二体は、彼らを頭とする種族混成軍メルトウォールと共に包囲網を敷き、陥落させた都市を支配下に置くといった行動に出たのだ。
 今までにない攻勢に対して大きな対抗策を持ち合わせていないマミダ各地域の都市群は、それでも命の為に、仲間の為に、家族の為に、明日の為に。
 絶望の中にあっても防衛と抵抗を試みるのであった。

解説

状況:  PCの皆様はベルナン守兵隊長ジュオルの要請を受け、ベルナン近郊の雪山へと馳せ参じたところからスタートして頂きます。  今回はチェイと共に迫り来るリザードマン超戦士五名と、チェイ本人を撃退して下さい。  シナリオ内容そのものは特に謎や仕掛け等は無く、単純な戦闘ものです。  但し洞窟内に侵入されると色々面倒な事態に陥りますので、敵は洞窟外で殲滅するのがベストです。洞窟内の状況や守兵隊、避難市民の詳細については既にジュオルから説明を受けているものと思って頂いて結構です。 敵:  チェイから点穴打術で肉体を強化されたリザードマン超戦士五名と、チェイ・ツァンウです。  武装や特徴はOP本文に記載していますので、そちらをご参照下さい。  いずれのリザードマン超戦士も、実力的には熟練の冒険者とほぼ互角程度です。 NPC:  ベルナン守兵隊長ジュオル・クルドクス、同副長ブラトロー・ペデスが主だった顔ぶれですが、守兵隊員や避難市民等のモブNPCもそれなりに登場するでしょう。  尚、ジルベルはもしかしたら様子を見に来るかも、という程度の登場確率です。

マスターより

 皆様、こんにちは。  連動【竜盤】でのシナリオをご提供致します。  今回は都市奪還ではなく、その前段階のドワーフ抵抗軍支援の為の局地戦です。雪山(というかほぼ氷に近いかちんこちんの氷雪地帯)が舞台となりますので、雪崩や足場崩落等には十分お気をつけ下さい。

リプレイ

●迫る敵影
 そこは洞窟というよりも、地下空間といった方が正しいかも知れない。
 各所に設けられた篝火が洞窟内に十分な光源を確保している為、視界に不自由することはない。だが逆に、しんしんと凍み入る寒さの中で大勢のベルナン市民が、体を震わせながら身を寄せ合う姿がより克明に見えてしまうことで、彼らの窮状が心に突き刺さる。
 洞窟の入り口付近に佇むロイ・アウレアは己の心の平静を維持すべく、震える市民達の姿を敢えて意識の外へと追いやり、傍らで硬い表情を見せているベルナン守兵隊の隊長ジュオル・クルドクスと、同副長ブラトロー・ペデスに洞窟入り口を守る為の簡易な防御障壁の構築について、手早く指示を出した。
「この洞窟入口をバリケードで塞いだ上で、兵も中へ入り、市民を守って下さい」
 外は授恵者である自分達に任せろ、という寸法だ。
 ジュオルとブラトローは緊張した面持ちで頷き返すと、すぐさま部下達を指揮して防御障壁の構築へと取り掛かった。
 と、そこへ防寒具に身を固めたセリオス・オーガストが雪煙を僅かに舞い上がらせつつ、白い斜面を駆け下りてきた。彼は今の今まで斥候へと出ていたのだが、その厳しい表情から察するに、敵を発見したと見て良い。
「リザードマンが五名。そして妙な風体のヒューマンがひとりの、計六名だ」
 次いでセリオスはリザードマン達の武装について手早く説明した。いずれも異なる得物を携えていたということで、それぞれ対処法も違ってくる。
「リザードマンか……にしても、何で五人なんだ? もっと人数を集めれば良い気もするけど……」
 セリオスの報告に耳を傾けていたゴルバルティアが、腕を組んで小首を傾げた。
 恐らくこの雪の中では、大人数での戦闘は雪崩を誘発する恐れがあるからだろうとセリオスが推測を加えたものの、実際のところは誰にも分からない。
「そのリザードマン達の動きって、どんな感じだった?」
 市民達の間を廻って声掛けをすることで、彼らの中に湧き起こる不安を取り除こうとしていたアルマ・ヴァレンタインが、セリオスの帰還を受けて入り口の外にまでもそもそと這い出してきた。
 アルマの問いに対しては、ロイも多少気になるところがあった。
「雪中行動に慣れているのかは分からないが、非常に身軽な上に驚異的な移動速度だった」
 セリオスの応えで、アルマは何かを確信した様子だったが、逆にロイは不審の念が鎌首をもたげた様子。
 この寒さの中で何故、敢えてリザードマンなのかという疑念を口にするロイ。一方、アルマはある人物の名を口にした。
「チェイさんの点穴だろうね。リザードマンの身体能力をこの寒さの中で十分以上に発揮させるなんてことが出来るのは、あのちょび髭おじさんぐらいだよ」
 成程、そういうことか――何故たった五人のリザードマンなのかという点に於いて、ゴルバルティアとセリオスは漸く合点がいったとばかりに頷いた。

 洞窟入り口から十数メートル程の位置に陣取っていたケン・Z・ブラッドリーが接近する敵影を認めて、愛用の首刈刀をゆっくりと鞘から引き抜いた。
「中々の強敵の様だが……」
 徐々に姿がはっきりして来る敵の陣形に、ケンは軽く眉をひそめた。最前衛は戦斧使いと長槍使い、そして二刀流の小太刀使いの三名。その僅か後ろに大剣使いが続き、後衛には大弓使いが控えている。
 奇妙な風体のヒューマン――チェイ・ツァンウは大剣使いとほぼ同じ位置だ。
「見たところ、授恵者ではなさそうですが……嫌な予感がします」
 ケンの隣りで刃渡りの長い愛用の白刃を抜き放ったフリーダ=ブロムヴィストが、気に入らないとばかりに仏頂面でふんと鼻を鳴らした。今回も彼女はいつもの独特な啓示を得ていたが、実際に刃を交えてみなければ、的中しているかどうかも分からない。
「普通なら前衛に出る筈の大剣使いがあんな位置に……ということは、戦術眼に近い能力を持っているということでしょうか?」
「まぁ、そうだろうな。出来れば最初に頭脳を叩くのが望ましいが……」
 敵の陣形というものは、いつもいつもこちらにとって都合の良い配置になっているとは限らない。否、寧ろその逆だ。最も守らなければならない要の部分は、防御の厚い位置に置くというのがセオリーだろう。
「仕方がねぇ。俺は先ず、斧使いからだな」
「では私は二刀流を」
 フリーダは予め用意してきたスパイクブーツで、やや固まりつつある雪面を強く踏みしめた。この雪山全体が降りしきる雪の重みで氷の斜面を形成しており、雪に深く足を取られることは少ないが、逆に氷特有の滑り易さが戦術行動に大きな制限をかけてくる。
 足場の悪さを事前準備でしっかり対応する辺り、フリーダも冒険者としての基本が十分に身についてきたということであろう。
「さぁ来い……てめぇらの好きにさせて堪るかよ」
 戦斧使いが間合いに飛び込んできたところで、ケンは猛然と走り出した。
 同時にフリーダも、二刀流の小太刀使いに向けて気合満点の咆哮を叩きつけた。

●氷中の激闘
 フリーダの雄叫びが雪山の斜面に響き渡ったところで、セリオスは離れた位置の樹上で弓を構えるロイに手信号を放った。
 ロイは軽く頷き返しながら、最初に狙うべき敵の位置をしっかりと把握してから、こちらも準備完了の手信号をセリオスに返す。
 直後、セリオスが放った光弾が大弓使いの直近位置目掛けて高速で飛来し、その場で炸裂した。その周辺一帯にもうもうと煙が舞い起こり、視界が遮られる。
 大弓使いが、訳の分からない怒りの咆哮を響かせた。だが、敵が濃煙地獄の中から飛び出すよりも先に、ロイとセリオスの放った鏃の連弾が、次々と煙の中へ吸い込まれてゆく。
 直後に響いたのは、断末魔の叫び。ロイとセリオスのまさに電光石火の如き速攻で、敵の後方支援を瞬く間に葬ってみせた。
 この鮮やかな程の先制攻撃に、大剣使いは僅かに狼狽え、チェイはあからさまに不機嫌そうな顔つきを見せる様になっていた。
 続いてロイはフリーダと対峙する二刀流の小太刀使いに照準を定めたが、セリオスは弓の弦を引き絞ったままの態勢で渋い表情を見せた。次に狙うべき大剣使いが大樹の幹の陰に姿を隠してしまったのだ。恐らくは大弓使いを仕留めた最初の射撃で鏃の弾道を推測し、こちらの射線をいち早く見抜いたのだろう。
 一方のロイは手早く二体目も斃し切ってしまいたかったが、二刀流と接近戦を演じているフリーダを誤射する恐れがあり、最大の破壊力を無造作に叩き込むということが出来ない。何かの拍子で敵がフリーダとの間合いを離した瞬間を狙うしか無さそうだ。
 その時、後衛に控えていたアルマが複数の光弾を放ち、残る四人のリザードマンに次々と叩きつけていった。点穴打術による敵の身体能力向上を解除出来ないかと考えての試行だった。が、リザードマン達の動きには全く変化が見られない。
「うーん、失敗かぁ……まぁ、サルベーションオールの効果は害悪な状態の解除だからねぇ。恩恵の解除は無理か」
 しかしアルマの後衛としての役割が全く機能していないかといえば、そうでもない。彼女は戦闘開始前の段階で不安定な足場や崩落しそうな箇所を特定して、こちらの不利になり得る戦域を予め前衛達に伝えていたし、ケンとフリーダ、ゴルバルティアに対してはエーテル強化の術を施していた。事実、前衛の三人は現在、その肉体に鬼火の如き淡い光を纏い、いつも以上の力量を発揮して目の前の敵を徐々に圧倒し始めている。
「そんなに悲観するこたぁねぇって! すんげぇ助かってるからさ!」
 長槍使いを相手に接近戦を演じているゴルバルティアが、若干落胆気味のアルマにちらりと笑みの籠もった視線を送った。
 ゴルバルティアは彼我の得物の間合いから、遠くに離れられると手も足も出ない状況に陥るところであったのだが、アルマのお陰で懐へ潜り込むことが出来た。長槍は超至近距離での接近戦では圧倒的な不利だが、ゴルバルティアの短剣は肌と肌が擦れ合う程の間合いに於いてこそ、その真価を発揮する。
 当初は威圧と咆哮で注意を引きつけ、防御や回避を中心にして敵を釘付けにすることをメインに考えていたゴルバルティア。しかし現在は寧ろ、長槍使いを圧倒している。
 このまま一気に押し切ることも可能な勢いである。
 そんな中で、次に斃れたのが戦斧使いだった。巧みな防御と下半身に狙いを集中したケンの戦術が功を奏し、バランスを崩したところでひと息に首を切り落とされた。
 敵は戦線が崩壊したことを受け、大剣使いが大樹の陰から飛び出してきた。やっと出て来たかとばかりに、ケンは不敵な笑みを漏らしてその前に対峙する。そこへセリオスの放った鏃が飛来し、大剣使いの肩や腰を守っている鎧を次々と破壊していった。
 大剣使いがほとんど一瞬で窮状に陥ったことを受け、チェイが慌ててケンの横合いから鉤爪状の暗器を繰り出してきた。
「全く、どこにでも出てきやがって……面倒臭い奴らだな、お前らは」
 点穴対策は十分に講じているケンとしては、残る厄介は暗器のみ。その暗器に対しても、ケンは事前に対策を立てている。そう簡単に不意を衝かれる筈も無かった。

●完全勝利
 大剣使いに向かって、二刀流から間合いを離したフリーダが迫る。
 フリーダは敢えて二刀流から距離を取ることで、ロイの狙撃を誘ったのだ。
(貰った……!)
 ロイは文字通り矢継ぎ早に鏃を連射し、まず二刀流の機動力を封じた。そして次の瞬間には極大の破壊力を乗せた一撃を叩き込み、二刀流を完璧に仕留めてみせた。
「さぁ大剣使いさん! 今度は私がお相手です!」
 大声で挑発するフリーダ。
 セリオスに防御を崩された大剣使いは必死の形相で巨大な刃を振るい、何とかフリーダを迎え討とうとするものの、足元に鏃の連弾が襲い掛かってきた。
 フリーダの機転のお陰で二刀流を仕留め終えたばかりのロイが、今度はそのフリーダを支援する役に廻った格好である。
 大剣使いは慌てて後方へ跳び退いた。ところがそこは、アルマが事前に調べておいた崩落ポイントだった。
 恐らく五名のリザードマンの中で最も優秀な頭脳を持っていたのが、この大剣使いだろう。だが戦闘力という面では今ひとつだった。足場を失い、態勢を崩された大剣使いはフリーダの必殺の一撃で、敢え無く斬り伏せられた。
 この時点で既に四名のリザードマンが討ち斃された。大勢が決しつつある中、最後まで残っていた長槍使いも間合いの不利を覆すことが出来ないまま、ゴルバルティアの振るった刃を受けてその場に昏倒した。
 チェイは、敗北を悟ったらしい。だがここで簡単に引き下がる暗殺師ではない。
 この場に居る授恵者の中で最も斃し易い相手と目を付けたのは、どうやらゴルバルティアの様だ。チェイは硬く踏み固められた雪に鉄拳を叩きつけ、その場で大量の雪煙を生じせしめた。
 と思った次の瞬間にはゴルバルティアの目と鼻の先にまで距離を詰めている。
「せめて手土産のひとつでも貰って帰らないと、こちらも腹の虫がおさまりませんしねぇ」
 侮られている。
 だが怒りが湧くよりも先に、拙いという危機感がゴルバルティアの胸中に走った。彼女は力こそ強いものの、本来の性格は決して交戦的ではない。自ら間合いを詰めての戦闘であれば優位に立てるが、逆に思わぬタイミングで距離を詰められると、ゴルバルティアは脆さを露呈してしまうところがあった。
 チェイの恐るべき超速拳撃がゴルバルティアの首筋と脇腹を襲った。その直後、全身が痺れた様な感覚に襲われる。上体が崩れ、前のめりに倒れかかったところでチェイの靴先に仕込まれた刃がゴルバルティアの鳩尾に食い込んだ。
 鮮血が真っ白な雪面を真紅に染めた。
 勝利を確信したチェイだったが、その直後、嫌味な笑みが消えていた。セリオスが放った必殺の一撃がチェイの肩口を凄まじいばかりの勢いで破壊していたのである。
 セリオスの全身から、鬼気が噴き上がっている。ゴルバルティアを傷つけられたその瞬間、セリオスの身に纏っていた雰囲気が冷徹から憤怒へと色を変じていた。
 しかし、如何にセリオスが激怒と殺意の中にあったとしても、狙った筈の胸部を外す訳が無い。セリオスは間違い無く、チェイの心臓に狙いを定めていたのである。
 実はセリオスの鏃が到達するよりも一瞬早く、何者かがチェイの膝裏に打撃を加えていた。態勢を崩されたチェイは辛うじて、セリオスの狙撃で心臓が破壊されるのを免れたのである。
 そしてその直後、きゅるきゅると空を切る奇妙な音が辺りに響いた。その謎の音の正体を、ロイとアルマは知っていた。
「拙いッ! 皆、伏せろッ!」
「ブーメランが来るよッ!」
 ふたりが放った警鐘の叫びの直後、樹々の枝を切り飛ばし、樹上に積もった雪を撒き散らしながら、巨大なブーメランが戦闘区域内を弧を描きながら飛び去ってゆく。
 だがその攻撃は授恵者達を襲う為というよりは、雪の煙幕を張り巡らせることが目的だったらしい。
 事実、ブーメランが去った直後に全員が頭を上げると、そこにはもうチェイの姿が無かった。

 右の膝裏に片刃の剣を突き刺したまま、チェイは『青の中指』ジルベルの肩を借りて、雪山を下山しつつあった。セリオスの鏃で心臓を射貫かれる直前、ジルベルの投じた刃がチェイの右膝裏に突き刺さったことで態勢が崩れた。
 そのお陰で、チェイは一撃死を免れたのである。
「チェイさん、もうちょい敵を研究した方が良いぜぇ。両想いの連中は得てして、片方がヤバ目に遭ったら、もう片方がやたらと強くなるからなぁ」
「心得ておきましょう」
 流石にチェイは、言葉数が少なかった。あともう一瞬ジルベルの救援が遅ければ、確実にあの場で仕留められていたという屈辱感が、今のチェイの心理を大きく圧迫していた。

 チェイは取り逃がした。
 だが、五名のリザードマン超戦士は全員、返り討ちにすることが出来た。授恵者達の完全勝利といって良いだろう。
「セリオス……あんた、大丈夫か? 怪我は無いか?」
「俺よりも、自分のことを心配しろ」
 洞窟内の開けた空間でアルマから治癒術を受けているゴルバルティアに、セリオスは渋い表情でかぶりを振った。幸い、チェイの靴先に仕込まれていた刃には毒は塗られていなかったらしい。
 その傍らではケン、フリーダ、ロイが守兵隊長ジュオルや副長ブラトロー、そして多くのベルナン市民から勝利の祝福と、自分達を守り抜いてくれたことへの感謝の言葉を受けていた。
 敵への対処は授恵者達だけに任せろと徹底させたことが、今回の勝利に繋がったともいえる。
「次はいよいよ、ベルナン奪還ですね」
「だがこれで、敵も警戒レベルを上げてくるだろうな」
 晴れやかに笑うフリーダに対し、ケンは小さく肩を竦めた。

マスターコメント

 皆様お疲れ様でございました。  リザードマン超戦士は全て撃破し、チェイにも痛撃を加えることが出来ましたので、大成功といって良いでしょう。  チェイもそろそろジリ貧気味ですが、まだ引き下がらないでしょうね。
ショートシナリオ

ショートシナリオ普通 報酬:標準6 / 4〜6人

2021年10月09日 18時03分20秒 公開

大成功

相談掲示板

  1. フリーダ=ブロムヴィスト

    ウォーリアのフリーダです。よろしくお願いします。 見た所前衛4+1に後衛1と言った所でしょうか。 相手はすべて物理攻撃に特化している様子ですし、 基本的には物防硬めの前衛が抑えている間に、 後衛が集中砲火で各個撃破という流れで良さそうです。 特に大剣使いはこのメンバーの中では戦術的思考ができそうですし、 最優先で始末しておきたい気はします。

  2. アルマ・ヴァレンタイン

    ヒーラーのアルマだよ、どーぞよろしくねー 物理メインっぽいので物防高めとブルーフレアは使うようにするね 雪崩対策は光縛封で直接防ぐとか進路上に建てて逸らさせるとかー もしくはタイダルでの相殺を考えてるよ それと状態異常の点欠は解呪で解除したことあるけど強化扱い?のはちょっと不明… 一応サルベーションか解呪は準備していくようにするね

  3. ロイ・アウレア

    シューターのロイ・アウレアです。よろしくお願いします。 チェイは後から加わるのか初めからなのか …気持ちの上では初めから居る腹心算で良いか。 基本形はフリーダさんの案に1票。 各個撃破は、大剣(頭脳)→二刀→弓→槍→斧→チェイ、かな? 大剣使いが頑丈で手間取る場合は、二刀・弓がこちら(後衛・ヒーラー)に焦点を絞ってくるだろうから 近づく前に落してしまいたいのと、何か覆す手は…と考えてる最中です。 雪崩対策はオレも範囲技を使うか、或いは前もって弱い部分を崩壊させ 別方向に流してしまう手もあるが、タイミングと所持スキルの兼ね合いがあるのでアルマさんにお願いするのが早いね。 強化の解除は……可能だったらハラショーだ!

  4. ゴルバルティア

    ゴルバルティアだよろしくな とりあえず私は前衛でリザードマン相手する感じで動くぜ とりあえず今のとこそんな感じだ

  5. セリオス・オーガスト

    ・・・・ん、シューターのセリオスだ、よろしく頼む とりあえず倒す順としては俺もフリーダやロイの案でいいと思う。 弓を後回しにするなら最初のターンで濃煙で相手の前に打ち込んで視界を塞いだりするのもありか。。視界がふさがれれば向こうも射撃もできんだろうしな

  6. ロイ・アウレア

    濃煙で塞いでくれるなら、オレが双波(捜波)+バスターアローで弓を最初のターンに落してしまおうか? 1撃で仕留められなくても、手負いにできるしマークも付けられる。 オレかセリオスが2射目に鋭射をすれば、1名は落せそうだ。 尚、シーフが先でも、オレが濃煙を担当しても構わない、ともかく数を減らしてしまいたいな。

  7. ロイ・アウレア

    個人的都合で、今日・明日はあまり時間が取れないので 今の時点を元にプレを提出しておきます。 濃煙の有無に関らず、足場崩落への備えとして双波は持つのと。 個人で狙うのは、弓→二刀→大剣orチェイとして流れに合わせる形にします。 後は、現地でヨロシク。

  8. アルマ・ヴァレンタイン

    出発まで1日切ったねー ボクは予定通り開幕ブルーフレアと点穴対応にサルベーションオール 雪崩の警戒にサバイバル知識と発生時の相殺用にタイダルストリーム あとは回復だけだから戦いかたは皆のやりやすい感じでおまかせするよー

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0