【竜盤】超高速救出作戦
広大野人
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シナリオID:1398
オープニング
都市ヌバッフは、メルトウォールの進撃に対し徹底抗戦を表明していた。
ところがである……進軍が迫るよりも遥か前に、ヌバッフでは、都市の市民達が、大きな損害が予想される抗戦に反対。
武力での反乱に繋がり、太守が殺害されるという事態になり、ヌバッフはメルトウォールの侵攻より前に降伏した。
……それがおおよそ3週間程前の出来事である。
現在、メルトウォールの勢力圏域内にある都市ヌバッフは表面上、平和であった。
略奪や虐殺の類はなかった。まるで申し合わせたような開城は大きな混乱にならなかったのだ。
「コノ街ノ役目ハ物資ヲ輸送スル事。ソレ以外ニ関シテ、拙者ハ興味ハナイ」
抜き身の大太刀を手にしたまま言ったのは大柄なリザードマンだった。
どう見ても最前線に居そうなタイプだが、瞳の中に宿る十字模様には高い知性を感じる。
舐めてかかると、確実に痛い目に合うだろう――とフランセスは思った。
肩のラインで切り揃えた髪を揺らしてフランセスは書状をリザードマンに手渡す。
「話ハ聞イテイル。我ラヲ援助スルト……シカシ、信ジテイルワケ訳デハナイ」
「それはお互い様というもの。けれど、こちらは既に誠意を見せているはずよ」
フランセスの言葉にリザードマンは唸った。
武力反乱にて太守と強力な近衛兵を民兵らが排除したのだ。
だからこそ、予定通り、スムーズな開城となった。それが可能だったのは、フランセス達のおかげだ。
「……分カッタ。拙者ノ任務ヲ邪魔シナイ限リ、コノ街デ自由ニスルガイイ」
「これからも仲良くしましょう。いえ、違うわね。私達は共通の敵が存在する以上、元から手を組むべきだったのだから」
差し出されたフランセスの手をリザードマンは尻尾で握るのであった。
●
反乱により殺害された太守には3人の子供が居た。
内、2人は太守と最後まで戦い、討ち死に。末っ子の男子は幼かった故、母親と共に脱出したが、途中、メルトウォールの追手に追撃され、母親が落命。
悲しむ間もなく、男の子は、僅かな供回りと共に森や山岳地帯に逃げ込み、道に迷いながらも本国へと向かっていた。
執拗な追手に、仲間達はバラバラとなり、辿り着いたのは、森の中に放置された狩猟小屋だった。
「酷い熱だ……これでは暫く動けないな」
ドワーフ兵士が太守の息子を看病していた。
数日前の大雨で濡れたからだろう。息苦しそうな呼吸が見ていて辛い。
食料も乏しく、満足な食事もできていないのだ。体力も相当、落ちている。
「……俺が助けを呼んでくる」
そう告げたのはヒューマンの兵士。
周囲が危険なのは百も承知だった。至る所に狗人が徘徊しているからだ。
授恵者ではない一般人が、たった一人で遭遇したら、命の保障は無い。
「このまま座していても、そのうち、見つかる……それに、若の体力も持つかどうか……」
「……分かった。頼んだぞ」
「あぁ、任せろ。お前より脚は長いからな」
そう告げて、ヒューマンの兵士は外に飛び出すと、全速力で走り出した。
小難しい事は考えなくていい。ただ、走るだけだ。戦いに勝てなくとも、足の速さで狗人に負けるつもりは無いのだから。
●
全身傷だらけの兵士が一人、ドワーフ王国勢力圏の街に辿りついた。
そして、都市ヌバッフで反乱が発生し、メルトウォールの手に落ちた事が伝えられた。同時に、太守の遺児となった男子の救助作戦が決まる。
「可及的速やかに救出作戦を決行すべき」
そう進言したのは、リーンエス王国から派遣された軍事顧問であるイェルド・ルリンであった。
将来的にメルトウォールから都市ヌバッフを奪還する際に、遺児の存在は欠かせないからだ。
今すぐにでも作戦を開始する為、イェルドは冒険者ギルドに依頼を出す。
「必要最低限の物資はこちらで用意した。作戦の詳細と実行は冒険者達に任せる」
顧問である彼は作戦には同行できない。
というか、それ以上に、彼には別の『仕事』もあるのだ。
依頼書の内容を確認した剣士エクエスは、首飾りに手を触れながら言う。
「私も一緒に行っていいんですよね?」
「勿論だ。ついでに、敵地の視察も兼ねて行って欲しい。あと、馬は乗れるか?」
「基本的な事は練習しましたので……」
少し自信なさそうな表情をエクエスは浮かべた。
用意されたのは訓練された軍馬らしいので、足りない技量は、馬がカバーしてくれるだろう。
「まぁ、なんとかなるだろう」
イェルドは軽く応えると、話しを続ける。
「遺児は体調を崩しているから、馬に二人乗りは難しいだろう……背負って歩くか、馬車に乗せるしかない」
「時間との勝負ですね」
剣士の台詞にイェルドは深く頷いた。
●
兵士の話によると、放置された狩猟小屋までは、かなりの距離があるらしい。ビッグオウムを飛ばせれば一番早いが、流石に敵の勢力圏域内には行かせられない。
となると、残された手段は、大地の上を走るしかない。
エクエスはパラパラと依頼書を確認していた。
「軍馬が数頭に、一頭引きの馬車が数台……」
小屋までの道のりは、兵士が簡単な地図を描いたから迷わないだろうが、途中、岩場や急斜面、浅い川があるので、ただただ軍馬や馬車を走らせれば良いという訳にはいかないようだ。
それなりに技術も使うし、地形をよく見る必要もあるだろう。
あるいは、思いもしない機転も役に立つかもしれない。
「敵は……狗人。追手は特異個体と思われる豚人の武装集団ですか。話を聞く限り、少し厄介なようですね」
依頼書の頁をめくると、追手の詳細が書かれていた。
実際に追われた兵士が正確に記憶していたから貴重な情報となっている。
「一頭、もしくは二頭立ての戦車を有している。戦車には御者を含め、2~3体の豚人が乗っている……つまり、救出自体が上手く行ったとしても、追撃を受ける可能性は十分になるって事ですね」
そこまで考えてから、エクエスは依頼書を机の上に戻した。
情報は揃っている。その整理なら、自分にもできる。だが、情報と手持ちのカードをどう使うか、考えるのは苦手だった。
……いや、違う。考えるのが苦手なのではない。
不意に甦る断片的で、霞みのような記憶……私は遠慮しているのだ。冒険者にではない、もっと違う、存在に……。でも、なぜ、遠慮しているのか、その理由が出て来ない……。
「……皆さんと一緒に考える事にしましょう」
自分に言い聞かせるように、エクエスは独り言を呟くのであった。
解説
マスターより
リプレイ
慌ただしく馬が引かれてくる。いずれもドワーフ王国の軍馬だ。
エミリア・シバは、その内の一頭を選んで、馬車の状態を念入りに確認しているエクエスの所へとやって来た。
「エクエスちゃん、やっぱりすぐ出会えたわね」
呼び掛けられて剣士は一纏めの髪を揺らして振り返る。
「初の依頼、よろしくお願いします」
「えぇ、今回も一緒に頑張りましょう」
馬車と軍馬を繋いだ。
今回、エクエスが馬車を担当し、他の冒険者は皆、軍馬で先行する形となっている。
その策がどのような結果になるかは、やってみなければ分からない事だ。
「兵士には書いて貰えたのですか?」
「一応、ね」
懐から取り出したのは、一枚の書状。
依頼を受けて救援に来た冒険者だと証明するものだ。救援を要請してきた兵士からのサインも入っている。
そんなやり取りをしている所に、ハヤト=ガラン=ヴォルファングが訪れた。
「おーっす! エクエス!」
「ハヤトさんも、よろしくお願いします」
剣士の返しにニカっと笑って頷くと、器用に馬上へと上がった。
訓練されているだけあって軍馬は扱いやすい。これなら、長時間の早駆けも出来るだろう。
「時間との戦いだな! 急ぐぜ!!」
「私もなるべく早く到着できるようにしますので……」
「いつかのように、無茶はすんなよ」
救出対象の太守の息子は体調不良で、馬に乗られる状況ではないかもしれない。
到着しても馬車が壊れてしまっては話にならないし、かといって大幅に遅れては意味がないからだ。
太守の遺児がいる狩猟小屋までの地図を見つめるバーネット・フォーサイス。
顔を上げて、長く伸びる街道や山々の稜線と地図の向きを合わせ――確認する。
「時間の猶予は殆どないとみていいか……」
陽は昇り始めたばかりだが、日中という意味ではない事は、隣に並んで地図を見ているアスティン・ヴェルラインも分かっていた。
「十中八九、メルトウォールから、追手は来ているはずだからね」
アスティンの台詞にバーネットは頷いた。
救援を要請した兵士の話によると、太守の一族は全員、反乱した民兵により殺害されている。
残った子を放置しておくほど、甘くはないだろう。アスティンは手綱をしっかりと握った。
「とにかく誰か一人でも、早く狩猟小屋にたどり着かないと、だな」
「なに、大体の居場所が判ってるんだ。あとは、唯々急いで移動すりゃ問題無い」
バーネットはそう答えると踏み台もなしに、ぴょんと跳躍して軍馬に乗った。
そこへ、既に騎乗しているベルク・オスマットが並び立つ。彼女の視線は遠くの山に向けられていた。
「裏切りで自分たちの都市を失陥させ太守を殺すとは、ずいぶんとふざけた連中なことだ」
顧問である王国騎士の話によると、都市奪還の『大義名分』としても遺児は必要らしい。
しかし、一族を皆殺しにされた遺児には酷な話だ……それに、幼い子供では統治は難しいだろう。
「お飾りにするにしても火種しか残らんだろうな。どうするつもりなのやら」
なんにせよ、ベルクに出来る事は依頼を完遂する事だ。
一抹の不安に対し、バーネットが呟くように応える。
「あの顧問の事だから、何か考えがあっての事なんだろう」
王国騎士イェルド・ルリンとは幾度も依頼で知っている。
ああ見えて、意外と気が利く人間だ。無策ではないだろう。
馬車の方も準備が整ったようで、出発を知らせる管楽器の甲高い音が響くのであった。
●
突風のように冒険者達、5騎が荒野を駆ける。
岩や段差など走る為の障害があるが、今のところは特に大きなタイムロスには繋がっていない。
先頭はハヤトとバーネット。その後ろ、縦列になるようにアスティン、エミリア、ベルクと続いた。
「ここまでは順調だな!」
ハヤトがやや斜め後ろの位置を走るバーネットに声を掛ける。
懸念があるとすれば、後方から追い駆けて来るエクエスだろうが、託した以上は信じるしかない。
「地図だと、暫く荒野が続くようだ」
バーネットの返事に、遠くに見える風景を見渡すハヤト。
「見通しが良い分、俺達も周囲が良く見えるが……敵も同じか」
今の所、人影などは見られないし、竜の眷属の姿も空には無い。
「狗人に時間を取られたくはないぞ」
バーネットはそう言って両肩を竦めた。
ここまで来る際に、二回ほど遭遇している。もっとも、手練れの冒険者5人にとっては敵ではないのは明らかだったが。
先頭に追い付いたエミリアが会話に入って来た。
「エクエスちゃんも通る以上、流石に、放置する訳にはいかないわよね」
軍馬よりも小回りが利かない馬車で複数体の狗人を相手するのは、エクエス一人には荷が重いだろう。
それに、彼は剣士だ。飛び道具が扱えるかどうか分からない。
「そういう事だな」
「確かに……」
ハヤトとバーネットの二人は頷いて応えた。
一瞬、後ろを振り返るエミリア――もう、エクエスの馬車の姿は見えない。
「帰りも同じ道を通るし、狗人は遭遇したら、倒しておいた方が良いわ」
遺児を保護したとしても追手が来る可能性が高い。
追手との戦闘中に狗人につまらぬ横やりは入れられたくない以上、やはり討伐しておくべきだろうか。
冒険者達の軍馬は疾走を続ける。
徐々に隊列が伸び始めたが、5騎それぞれに大きな開きはない。
「馬にはちょっと無理をさせるかな。でも大急ぎだから、頼むよ」
駆けながら、アスティンは軍馬の首を撫でる。
出発してからずっと、長時間走りっぱなしだ。馬も疲れるだろう。
「いよいよ、見えて来たか。その森の中なんだろう?」
器用にも馬上で地図を確認しつつ、ベルクが言った。
ここからでは森の向こう側がどうなっているかは見えない。
「間に合っている気がするんだよね。けれど、向こう側が見えないのは、厄介だね」
アスティンは目を凝らし、耳を澄ますが、走り続ける軍馬の上では限界がある。
既に敵の勢力圏域なのは間違いない。
「逆に言うと、敵側も我らの姿は見えていないって事だ」
「遭遇した狗人は全て倒しているからね」
討ち漏らしがいたり、放置していたら、通報されていた可能性はある。
「さて、具合が悪いというのは、どの程度だろうか?」
ベルクは持っている手綱をしっかりと握った。まずは遺児の発見と保護……これが最優先なのは間違いない事なのだから。
●
先にハヤト、バーネット、継いでエミリアの順に小屋に辿り着く。アスティンとベルクも間もなく到着するだろう。
狩猟小屋に到着した冒険者達が目にしたのは想定以上に体調が悪化した遺児だった。
看病を続けていたドワーフ兵は冒険者が提示した証明書に緊張の糸が切れたのか、疲労で倒れ込んだ。この状態では、軍馬に乗せても早駆けは無理だろう。
「遺児を背負った状態で馬に乗せるのは危険か」
ハヤトが遺児の額に手を当てて熱を確認しながら言った。
やはり、安全なのは寝かしながらの移動だろうが……エクエスの馬車はまだ姿を見せない。
「担架に乗せるわよ」
そう告げてエミリアが担架を広げる。
馬車と合流するまで徒歩になるだろう。疲労の激しいドワーフ兵は馬に乗ってもらう事になるだろうか。
バーネットが合図を出してハヤトと共に遺児を担架に乗せる。
水とチョコレートを渡すが、食べようとする気力は見られない。辛うじて、水を口にした程度だ。
「……よし、固定ができた」
「急ぎましょう」
担架を持つバーネットとエミリア。
ハヤトがドワーフ兵に肩を貸しつつ小屋の外に出ると、到着したばかりのアスティンとベルクが武器を構えていた。
丁度、二人は馬から降りた所だったようだ。
「追手か!? ……なんだ狗人か」
一瞬、驚いたが狗人の姿を見て、ハヤトはホッと安心した。
ドワーフ兵を乗せた軍馬は意図を理解して、来た道をゆっくりと進みだし、担架を担いだバーネットとエミリアの二人は足元に気を付けながら慎重に歩く。
「森を抜けるまでは無茶できないか」
「エクエスちゃんと合流するまでの辛抱ね」
引き上げる仲間を庇うように、ハヤトは狗人共の前に立ち塞がった。
「うるぁ! テメェらの相手は、ブレイブファング傭兵団のハヤト様だ!!」
思わぬ遭遇だったのか、ハヤトの勢いに、狗人共は互いに尻込みしている。
そんな隙を見逃す事なく、ベルクが駆けた。
地面の枝葉が折れる音を踏み込むごとに奏で、太い幹の後ろに回り込むと、狗人の視界外から獣が飛び掛かるように襲い掛かる。
「相手をしている暇はない」
首の付け根に短剣を突き刺し、一撃で仕留めると狼狽える狗人を睨む。
気圧された狗人は、直後、アスティンが放った矢が脳天に突き刺さった。
「一匹も逃さないようにだよ。知られると面倒だから」
「分かったぜ!」
アスティンの言葉に応じながらハヤトが拳を繰り出した。
スキルを出し惜しみする事なく全力で狗人を倒しにかかる。今は僅かな時間も惜しいのだ。
狗人共の群れの中に突貫するハヤト。粗末な槍や棍棒の攻撃を籠手で捌いていく。
粗方敵の注意が集まった所で、脚を大きく振り薙ぎ払うと仲間の名を呼んだ。
「ベルク!!」
大振りとなって無防備になったハヤトの背中に頭上の枝から飛び降りたベルクが着地するとクルっと身体を回転して跳躍。
奇襲を受ける形となった狗人は次々にベルクの持つ短剣に急所を貫かれていった。
「東だ! 一匹!」
視界の隅に映った狗人を見つけベルクはその方向に短剣を投げつける。
連撃の後で無理な態勢だったから当たりはしなかったが、それで十分だった。
直後、アスティンがエーテルを込めて撃った矢が、ヒュンっと音を立て、木々の間を抜けるように飛翔。背を見せて逃げる狗人を貫いた。
「これで全部だね」
三人は戦勝の余韻に浸る事なく、互いに顔を見合わすと頷く。
軍馬の手綱を寄せて、バーネットとエミリアの後を追うのであった。
●
エクエスと合流できたのは、それからすぐでは無かった。
徒歩で出来るだけ急ぎつつ、来た道を戻る。合流した時、太陽は一番高い位置から傾き始めていた。
「皆さん、お待たせしました」
慌てた様子はないが、それなりに苦労はしたのだろう。エクエスは馬車の向きを変えて告げる。
すぐさま、担架を横につけ、軍馬に乗っていたドワーフ兵の乗り降りに移る。
「きついかもだけど、もう少し、ちょっと頑張って」
「手を伸ばせるか?」
アスティンとベルクがドワーフ兵を励ます。
息を切らし、崩れそうになる所を支えられて、兵士はなんとか荷台に上がった。
馬車の荷台に遺児とドワーフ兵を乗せる事を仲間に託している間、エミリアは周囲の地形を確認していた。
何事かとバーネットが見に来る。
「……これは、罠か」
岩と岩の間の木を組んで張られた縄。
あるいは、体重が掛かると沈むように敷いた草藁。
それらをエミリアは手早く設置していたのだ。
「僅かでも罠があったことで、警戒すれば、少しは足止めになると思ったのよ」
「なるほど。敵にある程度の知能があれば有効だ」
感心しながら頷くバーネット。
当然の事ながら、罠があると認識すれば敵は警戒せざるを得ない。その結果、敵の足が遅れれば御の字だ。
「気休めにしかならないかもしれないけれど……追いつかれたら、バーネットちゃんの魔法が頼りね」
「使用回数に限りはあるけど……追手が来るなら、その足を潰せれば」
術師には敵の移動を阻害する魔法が幾つかある。
追手の規模は分からないが、要は、遺児を安全な場所に連れていければいいので、敵を全滅させる必要はない。
バーネットは狩猟小屋があった方角を見つめた。
まだ、追手の気配はない。
「軍馬の足跡で、こちらの逃げる方向はバレているはず」
「おねえさん達の規模も、ね」
馬車が一台しかないので、囮戦法は使えない。追手は確実に馬車を狙ってくるだろう。
二人がそんな会話を続けている間に、馬車の準備は整ったようだ。
御者の席につこうとしたエクエスの背をハヤトが軽く叩いた。
「エクエス! 後は頼むぞ!!」
「ハヤトさんも護衛をよろしくお願いします」
剣士の返しに、ニっと笑って応えるハヤトであった。
●
馬車のスピードに合わせ駆ける冒険者達の軍馬。
徒歩とは全然違う早さだ。それに一度、来た道を戻るので、地形が分かっているのも大きい。
時折、現れる狗人共を速攻で排除しつつ、出来るだけ急ぐ。残りの行程も後少しという所で、ベルクが振り返ると、土煙のようなものを見つけた。
「来たようだ」
通って道の先に微かに土煙があがっている。
煙を確認したアスティンが矢筒に残った矢の本数を確認した。
「弓の距離に入ればとにかく撃ち込むか……」
馬を走らせながら、ハヤトも振り返る。
確かに土煙は上がっている。距離は、そう遠くない――もう少し待てば姿も確認できるはずだ。
「後少しでこっちの勢力圏域だっつーのに。追いつかれるようなら、戦うしかねぇ!」
「こっから先、狗人は無視して一気に抜けて距離を稼ごうか」
バーネットはそう言って、杖を手にした。
撤退戦の難しい所は足並みを揃える所だ。敵が突出して戦線を抜かれては意味がない。
「なるべく、急ぎますね!」
追手が迫っている事を知ったエクエスが手綱を操る。
その真横にエミリアは軍馬を寄せた。
「そうね。けれど、無理はダメよ。いざとなったらおねえさん達が守るから」
「分かりました。なら、無理しない程度に急ぎますね」
微笑で応えるエクエス。
荷台には体調の悪い遺児も乗っているのだ。なるべく、安静に出来た方が良いだろう。
少しだけ速度を増した馬車を見送りながら、エミリアは後ろに下がり、振り返ると、追手の姿が見えた。
「……戦車ね」
数は二頭牽きの戦車が5台。横一列、壁のようになって迫って来る。
ベルクが目を凝らす。戦車に乗っている人影の正体を見極めようとしているのだ。
「豚人だ。1台に3匹は乗っているだろうか?」
「全部で15匹か。しかも、戦車に乗ってるって事はただの豚人じゃねぇ……特異個体が混じっているはずだ!」
警戒を促すようにハヤトがそう告げる。
敵性亜人の中には、時折、知能や体格に恵まれた特異個体が出現する場合がある。
「向こうの方が若干、早いようだね」
冷静に分析するアスティンは矢を番えた。
その様子に、魔法を使う覚悟を決めて、刻々と縮まる彼我の距離を測るバーネット。
「いよいよ追いつかれるか……」
狙いは戦車の車軸。あるいは戦車を牽いている馬のどちらか……バランスを崩して機動力を奪う考えだ。
けれど、バーネットが魔法を唱える事は無かった。
「味方……ドワーフ王国の軍勢です!」
正面の丘に味方の軍勢が姿を現し、エクエスの声が響いた。
そして、怒号と共に、追手に向かって、騎馬隊が突撃していく。
こうして、冒険者達の見事な作戦実行により、追いつかれるよりも先にドワーフ王国の勢力圏域に帰って来られたのであった。
マスターコメント
ショートシナリオ難しい 報酬:多い5 / 4〜5人
2021年09月28日 14時27分02秒 公開
相談掲示板
キャスターのバーネット・フォーサイスだ。 まぁ、よろしく頼むわ。 >方針 出発地点から狩猟小屋まで18マスだから、順調に進んだとして軍馬で6フェーズ、 馬車で12フェーズ必要な計算になるな。 ひとまず、4人くらいは軍馬で先行して狩猟小屋に向かい、 遺児を保護したら4人のうち1人が徒歩に切り替えて遺児を背負って撤退。 馬車と合流でき次第、遺児を馬車に乗せての移動に変更。 馬車移動以外の面子も退却時は馬車に歩調を合わせて移動しつつ、 敵の追撃を察知したら追撃ができない様に足止め・妨害する って流れでやるのがベターか?
シーフのエミリアよ、よろしくね。 >方針 バーネットちゃんのと同じ感じことを考えてたわ。 そういえば遺児の運搬方法だけれど、ショップに担架があるのよね 背負うのと担架だと、どっちのほうが良いかしら? 一応おねえさんは昔の依頼で使ったので所持してるわ。
シーフのベルクだ。よろしく頼む。 バーネット殿の方針で問題ないと考える。 >担架 担架だと運び手が二人必要になる。 我らと同数、最低でも5台の戦車が追ってくることを考えると、運びに人手を取られると護衛に支障が出るのではないだろうか?
シューターのアスティン。よろしく。 基本的な方針は問題ないと思う。 あとは、看病しているドワーフ兵の方だよね。疲労困憊ってあるから 馬車と合流できれば馬車に入ってもらう感じかな? 馬と馬車の組み合わせを後はどうするかだよね。 エクエス含めて6人で、馬車も御者は俺たちがやるわけだから…。 馬を4名先行させるとして。 馬4+馬車2 か 馬4+馬車1(馬のどれかは二人で1頭) もしくは 馬5+馬車1 になるかな、と思うけど。 馬車2台にするメリットはあまりなさそうだけど… しいて言えば、遠距離攻撃手が馬車に乗っていれば追手が見えたら遠距離攻撃で 妨害、撃破がしやすいぐらい?
おーっす! ゴブリンのシーフ、ブレイブファング傭兵団のハヤト=ヴォルファングだ、よろしくな!! そうだな、馬車1台に残りは馬って感じでいいんじゃねーか? それと馬車の方はエクエスに御者を頼むか? それとも誰か馬車で行きてぇって面子がいれば立候補してくれればってとこだな。
>担架 オスマットも言ってくれているが、担架は安定する代わりに二人で持つ必要があるし、 足止めにも人手を割くことを考えると、今回は使い勝手が悪いかもしれないな。 或いは、追手が接近して来るまでは担架で担いで、追撃を察知でき次第、 接敵する前に一人が背負ってもう一人は足止めに徹する、とかは有りかもしれない。 >馬車 そういや、エクエスに馬車を駆ってもらう手もあったな。 馬車二台のメリットは、長距離移動の判定へのリスク管理が大きい気がする。 どっちか片方が判定に失敗して遅れても、もう片方が先にたどり着けるって感じで。 それと、遺児と一緒にドワーフ兵も馬車に乗せる事を考えると、 残りは御者一人しか同じ馬車には乗れないし、同じ馬車に二人乗りで現場に向かうと、 一人帰りが徒歩になっちまうな。 ……多少移動範囲は減りそうだが、軍馬二人乗りとかできるか?
あ、ごめんなさい、 私もオープニングからエクエスちゃんはなんか軍馬のイメージになって、 馬5+馬車1で冒険者(PC)が御者ってとらえてたわ、ごめんなさい。 >長距離移動 そういえばエクエスちゃんで7割なのよね。 全員が10割成功になるとは限らないし。 馬車以外も到着速度がバラバラになる可能性があるけれど 遺児の救助に関しては最初についた人が遺児を連れてすぐ出るようにする? それとも他の軍馬組を待った方がいいかしらね? ドワーフ兵は一人で軍馬に乗れるなら、背負った人の軍馬に乗ってもらえればいいんだけれども、疲労困憊っていうのがねぇ。 一般判定の成功を高めるために有用そうな汎用スキルは、 騎乗はもちろんバランス感覚とかも多少は有効かしら? >担架 『倒れた人をあまり揺らさず二人で運ぶための道具。力持ちならば一人で背負える。』 授惠者は力持ちに相当するのなら実は一人でも持てるのよね。 普通に背負うよりは揺れないって感じになるのかしらね。 まあ一応持っていくだけ持っていくわ、バーネットちゃんの方法か、もしくは重量のせいで遅くなりそうなら捨ててくわ。
>救助 追手も迫ってる事だし、誰か一人でも先に到着出来たら後続を待たず、 遺児を担いで移動を始め、少しでも追手との距離を稼ぐ方が良いと思う。 >長距離移動 悪路を馬や馬車で通る事になるから、騎乗とかバランス感覚とか、 使えそうなスキルなりアイテムなりは各自で用意したいな。 >担架 あんまり説明を読み込んでなかったが、一人でも担げるのか…… それなら、担いでからの長距離移動も判定がしやすくなりそうだな。 >個人行動 とりあえず、俺は軍馬での移動を希望しておく。 追手が追い付くまでに辿り着ければ、アーケインとかで足止めも出来るだろうし。 ただ、やる奴が居なければ馬車の方でも大丈夫だ。
<編成 ああ、そうか。馬車2台にすれば安定性は上がるのかー…。 多少ペナルティあっても馬の方が早いだろうけど。 一旦、馬車1台+馬5頭で考えておいた方がいいかな? エクエスは馬車…でいいのかな。7割って微妙に判断に迷うよね <長距離移動 騎乗・バランス感覚・あとは動物交感とかかな… 俺は騎乗とバランス感覚を持ち込むつもりだけど。 <帰り道 先行した人間が遺児を担いで、ドワーフ兵に手を貸しつつ馬車まで逃げるとして。 馬車と合流後の動きって、馬車の速度に合わせての撤退になるよね これ、遠距離攻撃を使えそうな人間数名で、逆に追手側に少し移動して 足止めや攪乱を行う人間がいたほうがいいのかな? 一当てして離脱してくるだけでも時間は稼げそうだけど それが有効そうなら、俺は範囲攻撃や煙幕を持ち込んで、 足止めしんがりを仕掛けに行こうと思う。弓の長射程で 馬を狙えば速度を落とせるかもだし。
>帰り道 個人的には、敵を見つけるまでは馬車に並走して護衛する形で良いと思ってる。 今回のギミック的に起きうるか分からんが、敵に気が付かずにすれ違う事だけは避けたい。 それに、道中で馬車にトラブルが起きた時に、周りに何人かいた方が解決しやすいだろう。 あと追手に関しては、馬を狙うとか戦車を破壊する等で馬車よりも移動力を下げられたら、 豚人の方は倒さず捨て置いて、馬車との移動を優先で良いかもしれんな。
ああ、もう明日の朝出発なのね。 では、早く着いた人がすぐに維持を回収と出発ということで。 おねえさんも軍馬のほうを希望するわ。 一応騎乗を習得してこようと思うわ、ないよりはましでしょうし。 おねえさん基本近距離攻撃しかできないので、 帰路に関しては馬車に並行もしくはわずかに先行してしての護衛希望ね。 狗人も行きで殲滅できてるかわからないし。
<帰り道 すれ違う、のかな。追手も最短距離を馬や馬車の通った後を追いかけてくるだろうし。 さすがにすれ違うのは難しい気がするけど…。 まぁ、でも確かに撃退が目的じゃなくて離脱が目的だし、こっちから向かうのはリスクかな。 じゃあ、せいぜい馬車の後方につくようにスピードを調整して、 追手が目視できれば射撃で嫌がらせをするぐらいにしておこうかな。
今更ですまんが、着いてすぐ撤退開始だと移動の人員が背負う我らと遺児。疲弊しつくしたドワーフ兵での撤退となり護衛がいないので危なくないか? 後続1人は待ってから撤退すべきだと考えるが。
>撤退 合流してその場で待つのも、背負って撤退するのも、追手に遭遇した時の危険度は 大きく変わらないだろうし、それなら少しでも移動して、味方との合流を早めた方が良いと思う。
<撤退 馬で最短6フェーズだから、10フェーズで追手が狩猟小屋につく、 って考えると、その場にとどまるのは俺もリスクだと思う。 馬車は最短12フェーズだけど、徒歩で馬車に近づけば 10フェーズよりも前に馬車に乗せれる可能性があるし。 巡回の狗人は同行者がいなければ死亡、ってあるけど、 逆に一人でも同行者がいれば対応できるってことだし。 <編成最終 とりあえず、馬車はエクエスに頼んで 他は全員馬。 馬が人数分そろわなければ二人乗り 馬はとにかく先行して狩猟小屋到着を目指す。 が基本方針ということで。
すまん、言葉が足りなかったな、我が言っているのは狗人のほうだ。 狗人は雑魚だろうが一人で意識混濁の要救助者を背負ったまま足手まとい(ドワーフ兵)を抱えて戦えるのかということだ。すぐに合流できればいいが合流までに遭遇したら危険ではないかとの発言であった。移動中ということは撤退時にも遭遇の可能性はあるとのことだと思うのでな。
まぁ最悪ドワーフ兵に一旦預けておけばよかった話だったな。 すまん、少し頭が回ってなかった。