【アルメール隊】トリプルアタック、猛襲するは蠍
ウケッキ
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シナリオID:1396
オープニング
「さて、今日もいっちょがんばりますかーっと」
大きな斧を振り上げ、筋骨隆々とした木こりが木の幹に斧の刃を突き立てる。何度も斧が振られ、かーんかーんと小気味いい音が森に鳴り響いた。
ふと後方でがさがさっという音がして木こりは振り向く。すると土が盛り上がりもこもこと動いている。何かが土の中に潜んでいるようだった。
「……ったく、魔獣か。こっちの仕事を邪魔しないで貰いたいんだがなぁ。よっこらせっと。そんじゃ、さくっと片づけて仕事再開とするかぁ」
彼は長くこの場所で木こりをしており、彼にとって魔獣の相手というのは慣れたものだった。なぜならこの辺りに出現する魔獣はどれもそこまで強くなく、授恵者でなくとも討伐することが容易にできたからだ。土から飛び出して奇襲してくる魔獣をカウンターの要領で打ち倒す、それでよかった。
いつものように飛び出してくる瞬間を狙い、魔獣目掛けて木こりは斧を振り下ろす。勝負は一瞬、まさに木こりの勝利で終わるかに思われた。
だが、ばきんっと折れたのだ。そう、木こりの斧が柄から折れ、弾かれるように空中に飛んだ。折れた斧の先はくるくると回って地面に突き刺さる。
現れたのは見慣れないサソリ型の魔獣で体色が黄色く、大型であった。長らくここで働いている木こりでもこのようなサソリ型魔獣は見たことがない。
「な、な、なあっぁあああああ!?」
驚く木こりを挟み込もうと魔獣の巨大なハサミが彼に迫った。木こりは咄嗟にしゃがんでそれをかわす。
柄だけとなった頼りない斧を魔獣に投げると同時に緊急用の砂の入った袋を投げつけた。
これは野生の獣に対する目くらましが目的の品だが、どうやら一定の効果はあったようで魔獣は木こりを見失ったらしくハサミをぶんぶんと振るっている。
その間に木こりは背中を向けて一目散に逃げ出し、彼は何とか危機を脱したのであった。
村に戻った彼は見たことがない魔獣が出たと知らせ、その危険性からアルメール隊へ依頼を出す。
アルメール隊というのはレインディア貴族領内の警備兵では対応し辛い依頼へ即応することを目指し、王党派の大貴族であり領主のレリトール・レインディアの許可を受けて娘のアルメール・レインディアを隊長とし設立された新鋭の部隊だ。
まだ設立したての為、その人員は少なく運用には難が残るが彼女たちの行動や冒険者と共に依頼解決に奔走する姿を見て領内での知名度は徐々に上がりつつあった。
そんなアルメール隊の先行偵察班、ロンウェルとリリアナの2名はアルメールの到着よりも先に村に入り、森にある魔獣の遭遇地点にて情報収集を行っていた。
「見た感じ……結構でかいな、あとは特徴と言えば……なんか黄色いぐらいか」
「なんであんなに黄色いんでしょうね? 雷に関する能力を持っているとか……あり得ますか?」
「あり得る話ではあるな。それなら雷系統の攻撃手段も持っている可能性を考えて対処した方がいいな」
二人の物音に反応したのか、魔獣はハサミを振り上げて威嚇した。その直後、ロンウェルとリリアナは戦闘態勢に入る。
「ある程度実戦データを集めたら退くぞ、討伐が俺たちの任務じゃないからな」
「わかってますよ、無理な戦闘で被害を拡大させたくはないですからね」
大太刀を振り上げて魔獣に接近するロンウェルを援護するようにリリアナは後方から魔法を放つ。だがその魔法の効き目は薄く、魔獣に大したダメージを与えられてはいなかった。
振り下ろされる尾針を横っ飛びに避けると大太刀を真一文字にロンウェルは薙ぎ払った。刃が甲殻とぶつかって火花を散らす。甲殻には薄い傷がついていた。
「嘘だろっ!? ダマスカス鋼の大太刀だぞ!? そいつでダメージが薄いなんてどんだけ硬いんだよ!」
「ロンウェルさん、どいてください! ここは私がっ!」
ロンウェルが後方に飛ぶと、膝を地面につけ杖を構えたリリアナがエーテルを集中させ、先程よりも強力な魔法を放つ。
放たれた魔法は魔獣に命中したが、望んだほどのダメージはやはり与えられていない。
「魔法の効きが悪い!? 物理に強く、魔法にもある程度の耐性を持っているなんて……」
「……はっ、厄介な野郎だってことだけは確実だな。おい、小娘、一旦退くぞ。データはもう十分だろうからな」
「ちょっと、小娘って……私にはリリアナという名前が――ああ、もうっ待ってくださいよっ!」
●三影の蠍
ロンウェル、リリアナの偵察から数日後、アルメール隊が村に到着する。その中にはアルメール隊から支援要請を受けた冒険者の姿もあった。
「めちゃくちゃ硬いサソリが出たってこと? だったら魔法とかで一気にやっちゃえばいいじゃない」
アルメールがそういうのも当たり前だ。物理攻撃が通じにくい相手に対し、魔法でのアプローチは正攻法と言える。
彼女のお付きのメイドであるシリカは首を横に振ってそのアルメールの言葉を否定した。どうやら件のサソリは一筋縄ではいかない相手のようだ。
「それが……偵察隊の二人によると、ダマスカス鋼の武器の効果は甲殻に対して薄く、その甲殻は魔法にもある程度の耐性を持つ、とのことです」
「物理にも強くて、魔法にも強いとか卑怯じゃないっ!」
「更に付け加えると、行動不全を引き起こしかねないブレスを吐くことも確認されており……合計で3体いるようです」
シリカの報告にアルメールは机に突っ伏した。ただでさえ強力な能力持ちが3体もいるのだ。厄介なことこの上ない。
「嘘でしょぉ……そんなのが3体もいるなんて。うう、これは悪夢か何かよぉ……」
強力な3体の魔獣がいるとわかり、意気消沈しかけるアルメールだったが彼女は何とか自分を奮い立たせる。領民の危機なのだ、立たぬわけにはいかない。それが領主の娘の務めだと彼女は思う。
更に今の彼女はアルメール隊の隊長。長である自分が真っ先に敵に対して心を挫かれるわけにはいかない。隊を率いる立場の者は常に皆の先導者でなくてはならないのだ。迷いや恐れは隊の全滅に繋がり兼ねないのだから。
アルメールはむくっと起き上がり、気合を入れるように自分の両頬を手で軽く叩く。その瞳にはもう不安の色はない。あるのは確かな闘争心だった。
「よし。いいわ、やってやるわよ。たかがサソリの魔獣、このアルメール・レインディアの敵じゃないって所を思い知らせてやるわ! 皆、行くわよっ!」
剣を掲げ、声高らかに出発をアルメールは宣言する。
まだまだ彼女は精神的にも技術的にも未熟だが、親であるレリトールから受け継いだ人を惹きつける何かを持っているようだ。
現に、彼女の出発宣言に一同は何か頼もしさのようなものを感じている。
若きレリトールの姿と被るものがあったのか、冒険者たちと共に出発するアルメールを見てシリカは楽しそうに、そして嬉しそうに笑うのであった。
解説
マスターより
リプレイ
「それでも、貴方たちの持ち帰った情報があるのとないのとでは状況が変わります。この情報はしっかりと活用させてもらいますよ」
件の魔獣、スコーピアの偵察情報が記された羊皮紙を懐に入れるとグレイブ・ヤードは深く礼をし部屋を去った。
偵察隊の一人である【ロンウェル】は彼の去った扉に目を向けながら果実酒の入った木のコップを口に運ぶ。
「変わった御仁だな、あいつは。普通、俺たちのような下っ端には興味ないだろうに」
「そうですね……面と向かってお礼を言われたのはアルメール様を除くと初めてです」
ロンウェルの隣でリリアナは読みかけの本に視線を落としていた。何かの学術書のようだ。
「なるべく、ああいう奴には生き残って貰いたいもんだな」
ロンウェルはそういうと再び果実酒を喉に流し込むのであった。
リーンエス王国、レインディア貴族領にある森の奥。
雷を纏った魔獣【スコーピア】と冒険者たちは対峙していた。
誰よりも素早く動いたのはキオルティスだ。
三体いるスコーピアの内、一体に狙いをつけると彼は水と砂の入った袋を投げつける。
眼前で炸裂した袋の砂と水が混じり、スコーピアは目くらましを受けたらしくキオルティスの位置を把握できていないようだった。
スコーピアの視界外で振り被ったキオルティスはエーテル塊を顕現させ、それを思い切り振り下ろした。
視界を失ったスコーピアにキオルティスの放った闘気槌が炸裂し、ぐらついたスコーピアへ擦れ違うようにシリカが両手に持ったダマスカス鋼の短剣でトリプルファングを放つ。
しかしスコーピアは衝撃でたじろいだだけであり、目立ったダメージを受けているようには見えない。
「やはり、衝撃を与えるようなダメージでも効果は薄いようですね」
「そのようだね……これはちょっと手ごわい相手になりそうだ」
「だったら、まず下ごしらえをしてやればいい。硬い相手でも防御を下げちまえばってなっ!」
キオルティスとシリカにバーネット・フォーサイスが声を掛ける。
彼はエーテルを集中させるとマジックディソナンス改を放った。不可視のエーテルがスコーピアに命中しその体に纏わりつく。
「まだまだぁっ、こいつも持っていけっ!」
黄の魔導書を片手にバーネットは手をスコーピアに向けると緑色の光弾を撃つ。
光弾はスコーピアに命中すると炸裂しその体表を緑色に染め上げた。
スコーピアたちは連携行動を取ろうと冒険者たちに対し扇状に広がって動き始める。
その動きを察知したストレガ・L・リベルガストラはスコーピアたちの進路を妨害するようにアーケインテンペスト改を放つ。スコーピアたちの眼前で荒れ狂う稲光が幾重にも重なって暴れだす。
彼女は抜かりがない。勿論、アーケインだけでは動きを封じることが不十分であることを熟知している。
ストレガはその手に青い光の槍を顕現させるとそれをスコーピアに向かって投擲した。
放物線を描いて飛んだ青白い光槍は三体の内の一体に命中し、炸裂する。纏わりつくような青い光によってスコーピアは上手く動けないようだ。
「これであれは上手く動けない、あとは手筈通りにひっくり返せばいいのだ!」
「ではやってみましょうか……!」
動きが阻害され、緩慢な動作になっているスコーピアの一体にグレイブは接近すると手に持った棍でその足元を払った。
急な下からの力によってくるっとひっくり返ったスコーピアはお腹を空に向けてもがいている。どうやら上手く起き上がれないようで、じたばたと暴れるのみだ。
「どのような装甲があろうとも、その内側は柔らかい。でしたらひっくり返してしまえば、行動阻害もできて一石二鳥というものですよ」
「まずは一体……せやぁぁああーーッ!」
グレイブと交代するように飛び出してきたのは城崎・織枝。彼女は長大な刀身を持つ野太刀【芍薬牡丹】を振り被ってひっくり返ったスコーピアへと猛進する。
振り被られた刃は燃え上がるように眩い輝きを見せ、ひっくり返ったままのスコーピアを縦に両断した。身体を真っ二つに裂かれたスコーピアは絶命する。
刃についた血を振るって飛ばしながら少々申し訳なさそうな顔を織枝は見せた。
「あら、少しやり過ぎてしまいました。甲殻は装備の材料になりそうでしたのに……」
「大丈夫なのだ、まだ使える所はいっぱいある上にあと二体もいるのだ。問題なしなのだ」
戦闘中ということもあり、手早く検分したストレガは申し訳なさそうにしている織枝にそう答える。織枝はほっと胸を撫で下ろした。
「このままもう一体も仕留めるわよっ……神速抜刀、紫電一閃ッッ!」
進路を塞ぐ稲妻と体に纏わりつく青い光によってまともに動けていないスコーピアにアルメール・レインディアが柄に手を掛けたまま突進する。
即座に距離を詰めたアルメールは鞘からすらりと長い太刀を抜刀、スコーピアの甲殻の継ぎ目を狙って刃を真一文字に振るう。白刃が煌めき、柔らかい継ぎ目を裂いた。
その瞬間、血液と共に微弱な放電現象が起き、アルメールは歯を食いしばって後方へと飛んだ。
スコーピアは流血しながらも、その顎をカチカチと鳴らしバーネット目掛けて灰色のブレスを放つ。
「うわっ、なんだこれ!? げほっげほっ!?」
咄嗟に手で口を覆ったバーネットだったが僅かに吸っただけでそのブレスは彼の体の自由を奪い去ろうと蝕んでいく。嫌な気怠さが彼の体に染み渡る。
そのタイミングを狙ったかのようにもう一体のスコーピアが稲妻の隙間を縫って走り出し、バーネット目掛けて飛び掛かる。
「させるものですかっ、せぃっ!」
織枝は素早くバーネットの前に滑り込むと振り下ろされた巨大なハサミを芍薬牡丹でいなすように弾いた。ハサミと刃がこすれ赤い火花を散らす。
弾かれたスコーピアは後方に跳んで距離を取るとカチカチと顎を鳴らしている。
そんなスコーピア目掛けて思いっきり盾を振り被るとガリーナ・ウォロフはスコーピア目掛けて盾を投擲する。
「電流を纏っているのだろう、ならばこいつがくっついて……なにッ!?」
彼女の目論見は外れ、盾はスコーピアの尻尾によってばしんと弾かれて森の奥の方へと飛んで行ってしまった。あれではこの戦闘中に回収することは不可能だろう。
「くっ……やってくれるじゃないか。だが、まだ私にはこの剣がある……騎士たるもの、剣が折れるまでは一歩も退いてはならんのだッ!」
剣を掲げ、雄々しく宣言する彼女はまさしく騎士だ。セクシーで目のやり場に困る装備をしていようとも彼女は騎士である。
スコーピアは呼応するようにカチカチと顎を鳴らすと、その視線をガリーナに向ける。どうやら彼女を狙うことにしたらしい。
振るわれるハサミの一撃や尻尾の薙ぎ払いをガリーナは武器を盾代わりに耐え、後衛に攻撃がいかないように敵の攻撃を引き受け続けた。
自分が視線から外れたのを確認したキオルティスは疾風足を使ってスコーピアに肉薄する。完全に視線は向いておらず、スコーピアは彼を気にもしていないようだ。
キオルティスが腰から地面に垂らした鎖を握り、祈るように呟く。
「さて、少しは役に立ってくれ……それじゃいくよっ」
ダマスカス鋼の細剣を突きの姿勢で構えると彼は死齎刃を放った。不可視のエーテルを纏わせたその刃は傷を与えた後もなお、その相手を蝕む死を運ぶ刃。
刃が柔らかい継ぎ目を突いた瞬間、黄色い血液と共に放電現象が発生した。微弱な電流がキオルティスの身体を貫く。彼はその痛みに耐える。
腰から鎖を垂らしていたことが幸いし、その電流はアルメール程は彼にダメージを与えなかった。だが僅かな痺れが手足に残っている。
「はは、完全じゃないけど無いよりはマシって所かな」
距離を取ったキオルティスの肩をバーネットが軽く叩く。
「任せとけ、俺がサポートするさ。こっちが状態異常で下がったならあいつも下げればいい」
エーテルを集中させるとバーネットはふわりと舞う糸を作り出す。蜘蛛糸のようなそれをぶわっと広げるとスコーピアに向けて彼は放った。
スコーピアの身体に蜘蛛糸のようなエーテルが幾重にも絡みつき、その動きを阻害する。あれでは攻撃を避けることは難しいだろう。
「この機に畳みかけるのだーっ! 荒れ狂う風、顕現するは暴風なのだッ!」
ストレガが手を向けるとスコーピアの足元に眩い輝きを放つエーテルが収束し、急激に集まったそれは弾けるように炸裂する。光り輝くエーテルの爆発がスコーピアを真下から上空へと跳ね飛ばす。
哀れ、スコーピアはじたばたともがきながら宙を舞い、そのまま地面へとぐしゃりと叩きつけられた。爆発の影響か、脚の一部が折れており上手く起き上がることが出来ないようだ。
「こういった手合いを相手にする場合、状態異常の回復は大切です。最大限の支援を飛ばしましょう。全力を出せる状態を維持することが必要ですから」
エーテルを集中させるとグレイブはキオルティスに向かって淡い光を放った。サルベーション。抵抗力を上げ状態異常を脱する技である。あくまで自然回復を促すものだがその効果は高い。
光がキオルティスに触れるとぱっとその体に広がり、彼の手足に残った僅かな痺れは嘘のように消え去った。
「ありがとう、これでいつものように戦えるよ。ふふ、後で何かお礼をした方がいいかな?」
「いえいえ、礼には及びません。これもヒーラーの務めですからね」
古風な金色の装飾が背に入った白いマントなびかせ、グレイブは戦う仲間たちの体力維持に務めるのであった。
「さあ、大人しく転んでいてもらいましょう。それではアルメールさん、合わせてもらえますか?」
「ええ、いつでもいいわよっ!」
それぞれ太刀を構え、アルメールと織枝はスコーピアに狙いをつける。
二人はタイミングを合わせ、ほぼ同時に太刀を振るう。
アルメールは素早い抜刀で横に広がる不可視の衝撃をスコーピアに向けて飛ばす。
対する織枝は芍薬牡丹を逆袈裟に振るい、地を這うような不可視の衝撃を放つ。衝撃は地を削って土埃を上げながらスコーピアに向かって直進する。
スコーピアの脚部に二つの衝撃は命中し炸裂したが僅かに狙いがずれたようで転倒させるには至らない。
「ああもうっ! しぶといわね、あのサソリッ!」
「相手もこちらが転倒を狙ってきていることに気づいているはず。そう簡単には転んでくれないようですね」
ぎちぎちと顎を鳴らしたスコーピアはガリーナに向かって太い尻尾を振るう。
放たれた尻尾を武器で受け止めたガリーナだったが攻撃を受け続けた疲労もあり、勢いを殺せずに吹き飛んだ。
「ぐぅうわぁああああーーーーッ!」
ばきんっと金属の割れる音がし、彼女の片乳を守っていた鎧が弾け飛ぶ。急に解放された柔らかく大きなましゅまろはぶるんぶるんと縦横無尽に揺れた。
空中で体勢を整えたガリーナは辛くも着地し武器を構えなおす。
片手で零れ出てしまったましゅまろを抑えながら、彼女は苦々しい表情をスコーピアに向けた。
「くっ……やるではないか。あのような強力な一撃をまだ持っていたとはな……だが騎士たる者、このままでは――」
「――いいからこれで隠してくれ! 気が散って困る!」
そう言ってガリーナに布切れをバックパックから取り出し、バーネットは手渡す。顔はそっぽ向いているがその耳は真っ赤であった。無理もない、この状況では男子は誰もがそうなるだろう。
かたじけない、と言ってガリーナは布切れで零れ出たましゅまろを覆い、後ろで縛る。
剣を持ち直すとガリーナはスコーピアにその切っ先を向けた。まだバーネットはちょっと目のやり場に困っているようだ。
「今さっきは後れを取ったが、もうこれ以上は無いと思え!」
「これで終わりにしてあげるよ、じゃあね……!」
疾風足で加速したキオルティスは地を蹴って上空へと飛び上がる。そのまま空中で二刀の刃を構えるとその切っ先を転倒しもがいたままのスコーピアに向ける。
体重を速度を乗せた一の太刀がスコーピアの柔らかい腹部を斬り裂いた。電流が血液と共に漏れ出すのを気にせずにキオルティスはもう一方の手で二の太刀を振るう。更に腹部を裂かれたスコーピアは悲鳴のような叫び声をあげる。黄色い返り血を浴びながらキオルティスはとどめとなる三の太刀を振るった。くるっと手の中で周り逆手で持たれた刃がまっすぐに振り下ろされる。スコーピアは断末魔の叫びを上げた。
動かなくなった死体の上からよろよろと降りると痺れる体を引きずってキオルティスは近場の木の幹に背を預けた。
「ふぅ、後は一体だね……そっちは任せたよ、みんな」
キオルティスの視線の先では最後の一体となったスコーピアにバーネットがマジックディソナンス改を放った所であった。
不可視のエーテルによる魔法防御低下効果を受けた所に続けざまの魔弾が撃ち込まれた。光球がその装甲を焼く。
「いくぞっリベルガストラっ! 今の奴なら魔法だって一定の効果がある! このまま押し切るぞッ!」
「了解なのだーッ! 我が魔を受け、その身よ朽ち果てよっ!」
バーネットの攻撃に合わせるようにストレガは再び、スコーピアに暴風を放つ。
スコーピアの足元で眩いエーテルが炸裂し、スコーピアは天に打ち上げられそのままひっくり返った。
「これは駄目押しです、遠慮なく貰ってください」
エーテルを纏わせた棍を振るい、グレイブはスコーピアの無防備な腹にエーテルブローを打ち込んだ。びくんっとスコーピアが脈動しその身にひびが入る。
「ではとどめです。せめて安らかに眠ってくださいっ!」
織枝が満身創痍のスコーピアに芍薬牡丹を突き立てると最後のスコーピアは血と電流を吹きあげながら断末魔の叫びをあげて絶命した。
こうして見事、三体の魔獣は討ち取られ冒険者たちは勝利したのであった。
余談ではあるが、スコーピアの甲殻や内臓はアルメール隊にて回収され、活用されることとなった。検分はストレガが担当するようだ。
「ちょっとぴりっとするけど、悪くないわねコレ」
数日後、アルメールは拠点であるアルメール隊の屋敷にてストレガが調理したスコーピアの串焼きを頬張っていた。
ふと、扉が開かれ資料を持ったグレイブが現れた。
「失礼します、これが先日の魔獣の資料です。ここに置いておきますね」
「ありがと。ん、何かもう一つあるわね……ってこれ入隊の書類じゃないの!」
「ええ、用意が整いましたので記入しておきました。私もお手伝いさせていただきましょうか」
それを聞いたアルメールは満面の笑みでグレイブに手を差し伸べ、固い握手をかわす。先生と慕う彼の参戦は心強いのだろう。
「これからもよろしく頼むわね、グレイブ先生」
「ええ、こちらこそ」
マスターコメント
ショートシナリオ普通 報酬:多い6 / 4〜10人
2021年09月23日 16時25分14秒 公開
相談掲示板
ヒーラー、グレイブ・ヤードです。 よろしくお願いしますね
シーフのキオルティス。キオでもルティスでもお気軽に。 今回は宜しくね!
キャスター、ストレガなのだ。よろしくなのだ。 敵が強い時の対処法は2つ。 バフをかけて殴るorデバフをかけて殴る。 ので、魔錆を仕掛けていこうと思うのだ。
さて、まず出来るだけ考えられることは話していきましょうか。 敵情報に分かってることを追加するなら 名称:スコーピア(蠍型の魔獣) ・雷を纏って黄色い体色。甲殻も非常に硬い。(物理防御高め) ・甲殻の隙間などを傷つけると微弱な放電現象(行動阻害)が起きる。 ・甲殻部分への魔法が効きにくい。(魔法防御も高め) ・口からは灰色のブレス(行動不全の累積攻撃) ・仲間と連携行動を取り【体力の低い相手を狙う】性質がある。(知能はある、狩りをする模様?) しかしあれですね、これ初見じゃなくて本当に良かった相手ですよ。 >思考 ここから考えられる有効そうな手段は・・・ 1、「バッドステータス付与による攻撃を主とする(スリップダメージ等)」(抵抗は未検証のため可能性あり) 2、「雷エネルギーを何らかの要因で除去する(水をぶつけて放電させるとか)」(装甲の隙間を狙いやすくなる) 3、「逆に雷をぶつける」(同じ性質ならもしかしたら装甲が働かないかも) 4、「金属製武器以外を使用する」(導電しなきゃ行動阻害しないのでは?) 5、「効かないわけじゃないんだから回復と状態異常解除を沢山持ち込んでゴリ推す」(そんな行動で大丈夫か?) 5は流石にあれですが、「完全無敵」な生物はいないと思いますし 何らかの手はあると思うのですよね、魔獣ですし
前倒したガルガンデアってやつを防御に割り振った感じがするのだ。 ダメージを与えるには関節を狙うのが一番いいがもれなく行動阻害と。 PL情報だと思うが目潰しは効くようだし反撃を受けにくい状態に持ち込むのが良さそう?
キャスターのバーネット・フォーサイスだ。 まぁ、よろしく頼むわ。 >方針 無防備に近づくにゃ危険すぎる相手だな。 現状の面子で戦うことを考えるなら、まずは連携を防ぐために敵の一部を足止めしながら 交戦場所を誘導して分断。 その後、回避低下とか物・魔防御低下とかのBSをかけた上で、 一体ずつ集中攻撃で仕留めるていくのが無難か? 行動不全とか行動阻害は厄介だが、一体ずつ戦うなら対応はできると思う。
より人員が欲しい所ですね >分断 そうですね、纏まられていると対応できないこともあるでしょうし・・・。 足止めだけでもあるといいかもしれません 強いていうなれば、「攻撃性能」についてはそこまで高くなさそう、ですかね? 移動力についても普通(逃げられているので)
ブレスと連携行動は此方から切ることが可能そうだね。 今の人員なら、間違いなくアルメールさんにシーザーロアして貰ったりとか? あとは敵が何を以て此方を認識しているか…かな。視覚なら確かに目潰しも有効かもね。 それから、どうせ行動阻害を受けるなら、頭胸部と腹部を切り離してしまうのも良いかも。 静電気の応用で行くと、自身から金属製のものを地面に触れさせておいて放電しておくのも もしかすると有効かもしれないけれど…どうだろうね。 あとは素直に被ダメ率が高いことは分かっていても、関節部分は叩かない、か。 とりあえず、各自BS付与と持てるなら回復系は必須…かな。
>アルメール シーザーロアは使ってくれると助かるな。 普通にやってたら、多分俺の方に殺到するだろうし。 まぁ、逆に狙いを絞れてコントロールもしやすくも有るし、一度誘導することを考えると、 分断して誘き出した敵を抑えきれない時や、足止めしてた敵が接近してきたときに、 注意を引きつけるって使い方が良いか? >狙い 時間をかけると敵が合流して乱戦になりそうだし、多少の行動阻害や被弾は覚悟の上で、 関節狙いで一気に仕留めるのが良いんじゃないか? あと、放電に対策でアースを用意して放電を地面に流すのは、試してみても良いと思う。 武器に針金とか細い鎖でも巻き付けて地面に垂らしておけば、 手元に来るまでに地面へ流れる可能性は有る。 ただ、その場合は武器の取り回しが悪くなりそうなのが難点だが。
ウォーリアの城崎織枝と申します。宜しくお願い致しますね。 スコーピアの情報を見るに、どちらの属性でも防御がお高いようですね。 なので私からは戦士の一断で防御を半減させた上での攻撃を仕掛けてみるつもりです。 ただこれは一度だけしか使えないですので、使った後の残る2体ですとシーザーロアに切り替える形になります。 関節などを狙おうにも、部位破壊や明確な弱点への攻撃の場合ですと命中にマイナスの補正を掛けた上で行われる事がありますね。
ああ、人が増えてくださるのは助かります。 >一体を倒せたら 死体を利用してみるのはいかがでしょう? 固い甲殻を利用してぶつけ合わせる形です。 下手な武器よりも有効打になるような気もします。 魔獣は生き物ですし、死体は残りますよね? この甲殻利用して武具作れそうな気もします >すごくシンプルな思い付き そういえばなのですが、この「固い」という点。 前情報(OP的)には普通に「背中側の甲殻」ですよね?攻撃したの スキルを使う前に、ひっくり返して「お腹側であれば比較的柔らかい可能性」とか試してみません? 長柄の武器であればいけなくはないかと思うのです。
ひっくり返そうともなればドラゴンチャリオッツの出番になりそうな気がしますが、生憎私はレベル的な意味で覚えてないです…… あと、体力の低い相手を狙う傾向とありますが、それは単純に体力が低い相手なのか戦いを通じて生命力が弱った相手を狙うという意味なのかで解釈が分かれそうですね。
>ひっくり返す 試してみる価値は有るな。 たとえ腹側も堅かったとしても、ひっくり返されちまえば一時的に動きを妨害できるし。 やれそうな事は試すだけ試してみるか。 >体力の低い 俺は単純に現在の生命が一番低い奴を狙って来ると考えてる。 全員が生命満タンなら、最大値が一番低い俺を狙って来るだろうし、 誰かがダメージを受けて現在値が俺の最大生命を下回ったなら、そっちを狙い始めると思う。
うん、グレイブさんの言う通り、ひっくり返すのは俺も賛成! ちょっとした工夫でひっくり返ってくれそうだよね。 ちょっとした梃の原理を使ってみたり、バーネットさんやストレガさんに 地についてる場所を敵じゃなく土を抉るように魔法使って貰ったりだとか。 甲殻は、武器としては使えるかは分かんないけど、防具には最適かもね。 要は甲殻部は雷帯びてないのに、中身は雷帯びてるワケで。 それを常日頃から押さえつけてるワケだもんね。しかも外的要因にも強い。 これもやってみるべきかな…と俺は思う。 >体力 俺もバーネットさんと同じ認識で居た…かな。 その辺も巧く逆手に取れると敵自体が右往左往しなきゃいけなくなって こっちの有利にも働いてくれる気もするけど…これはホントに偶然を 狙って、掻き回されてくれたら御の字、ってカンジだね。
>体力の低い~ これは恐らく負傷などの度合いという意味でしょうから 「弱っているものを優先する」という認識でいいと思います。 >ひっくり返す スキルを使わなくてもできる、とは思いますよ。 何より、「ひっくり返した後一撃を加える役目」も必要ですから そちらに注力するのもありますし。
ウォーリアのガリーナ・ウォロフだ。よろしくお願いする。 私は肉壁しかできないので、シザーロアで引きつけている間に敵をひっくり返してもらうとかそういう感じで考えてみたのだがどうだろう? 夜にプレを書かなければいけないようだから今夜は相談に注目していようと思う。
1体ずつ撃破する為の妨害術を施すのだ。 具体的にはスネアと、効くかわからぬがアーケインなのだ。 土を抉る、なら腹のあたりめがけて豪風仕掛けてみるのだ。 ストーンブラストだと範囲が広すぎるのだ。
>ひきつけている間に 良いと思います。 やれること、効果がわかっているなら利用していけますしね。 ひっくり返せたら「中心を突く」形で攻撃するのもいいかもしれませんね。 衝撃が逃げないように
>個人行動 リベルガストラが足止めをしてくれるなら、俺は他のBS付与を主にやるつもりでいる。 アシッドブリットで物防、マジックディゾナンス改で魔防を下げて、 あとは放電を喰らってこっちの命中を下げられた時の為に、魔糸で回避を下げるつもりだ。
今回は昆を使い、ひっくり返すために利用するつもりです。 私はひっくり返す以外はほぼ「回復・状態異常解除」の行動が中心です。 サープルプロテクションを事前に使いますので、分散させようとする行動中の被害自体は減らせると思いますよ。 死骸の甲を利用する関係は入れませんでしたが・・・ 後ほど防具等に利用できそうなので、そこは削ってもいいかなと思いました。 (上手く養殖できれば産業化もできそうですね・・・ダマスカス以上の硬度ですし)
今気づいたのだが、敵は雷。つまり電気を内包しているということだから鉄製のものを投げたらくっつかないかな。 ……と思ったので反対意見がなければ鉄の盾をくっつけてみようと思う。 仮にくっついたら盾の端を引っ掛ければひっくり返るようになってかなり楽になると思うし、敵は相当行動しにくくなるだろう。駄目でも私が少し困るだけだ。メリットの方が大きそうなのでやってみたいと思うのだがどうだろう?
シーザーロアは私とがリーナさんが居られる事ですから、これならヘイトタンクに事欠かない筈ですね。 グレイブさんが立て直しを図って下さるなら心強く。 私からは衝撃波での横転を狙ってみるつもりです。
やってみる、と言うのであれば私としては否はない、ですかね。 いろんな方法を試して、より良い手段を探せますしね
アクションスキルの購入にあたり、破鎧砕を見つけましたのでそちらも使ってみようと思います。 10%でも物防が低下する事は有用かもしれません。 最終的には転ばせて柔らかいお腹を見せられれば良いのですが、一応表明を。
はい、いろいろ手は考えますけど最終的にとどめがさせなければいけませんからね。 有効打と思えることも準備は大切です。 残り12時間程度、装備やスキルの確認を