【竜盤】温泉地からの大脱出
陵かなめ
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シナリオID:1341
オープニング
帝国、また辺境都市群へとつながる交易地でもあり、ドワーフ愛飲の火酒の醸造地としても知られる都市マミダを中心としたこの地域は、ドワーフ王国の玄関口として知られていた。
しかし、そこにドワーフ王国の宿敵たる邪竜が襲撃を行った。普段ならある程度奪いつくせば消えていく邪竜だが、邪竜バイアーディスとアイオーンの二体は、彼らを頭とする種族混成軍メルトウォールと共に包囲網を敷き、陥落させた都市を支配下に置くといった行動に出たのだ。
今までにない攻勢に対して大きな対抗策を持ち合わせていないマミダ各地域の都市群は、それでも命の為に、仲間の為に、家族の為に、明日の為に。
絶望の中にあっても防衛と抵抗を試みるのであった。
●邪竜侵攻
ドワーフ王国の北東部で、邪竜による侵攻が開始された。
邪竜バイアーディスとアイオーン、そしてその軍勢メルトウォールは、侵略した街や地域を支配していったという。
冒険者たちが駆り出されたが、時既に遅し――。
すでに多くの場所がその支配下に置かれてしまった。
●温泉地『カルドナス』
「おいおい! ちゃんと湯桶は揃えとけっていっただろうが! 清潔な湯桶を使えないのは悲しいだろうが!」
「おらぁー! 牛乳はまだか!! 俺は風呂上がりの牛乳がなけりゃあ、納得できないんだよ!」
「揉め!! 俺の肩を揉めよぉ! 疲れを癒やすには、マッサージしかねぇんだよぉ!」
「おーい! 酒がもうないぞ! 宴会にならねぇじゃないか!」
ドワーフ王国の温泉地『カルドナス』では、侵略者たちの横暴がまかり通っていた。
メルトウォールに迎合した『ならず者』たちがこの地を支配したのは数日前。
それ以来、温泉地は彼らの自由な遊び場と化していた。
温泉には無料で入り浸る。酒を飲んだり歌ったり、宴会をしている者も多い。その後の牛乳も要求する。さらにマッサージもタダで行わせるというわけだ。
「くっ、俺はもう耐えられない……!」
ようやくならず者のマッサージから開放されたマッサージ係が顔を歪ませた。
「来る日も来る日もならず者のマッサージ! 汚い背中を揉みしだく俺の身にもなってくれ!」
「マッサージ係さん……! ぐすっ。アタシだって、毎日毎日牛乳配達で何往復することか……!」
ドワーフたちが俺も私もと愚痴をこぼす。
温泉地を支配した彼らは、当然のごとく料金を支払わない。温泉に入りたい放題だと、タダで施設を楽しんでいるのだ。このままでは商売あがったりである。
「逃げよう」
誰かが提案した。
「でも、どうやって? 連中はかなりの数だ。しかも好きなように温泉を利用するから、そこらじゅうに散らばっている!」
「だが、ここに居てもこき使われるだけだ! 何とか奴らの目をかいくぐって逃げ出そう!」
「そうしよう!」「それがいい!」「賛成だ!」ドワーフたちは互いに励まし合い、ギルドへ依頼を送った。
●依頼
『ならず者たちに支配された温泉地カルドナスから、民衆を救い出してください』
ギルドにシンプルな依頼が張り出された。
ドワーフ王国の温泉地『カルドナス』がメルトウォールに迎合した『ならず者』に支配されたというのだ。
徒党を組んだ『ならず者』の集団は、数の暴力で温泉地を占拠。
温泉に入り浸り、風呂上がりの牛乳やマッサージを堪能しているという。
民衆はしばらくならず者の言いなりになっていたのだが、もはや我慢の限界のようだ。
「というわけで、彼らを『カルドナス』から逃してやりたいんだよ」
ギルドの受付が切り出した。
「『ならず者』の数は多い。そして、それぞれが好きなように温泉を楽しんでいるようだよ。民衆はタダ働きを強要されていてね。もう我慢の限界だというわけさ。そこで、皆には『カルドナス』まで出向いてもらい、民衆を逃してやってほしい」
とにかく『ならず者』の数が多い。
まともに戦闘していては、民衆を逃がす時間がなくなってしまうだろうとのことだ。
「温泉で宴会をしている者や牛乳を堪能している者、マッサージでリラックスしている者が多いかな。何とか気をそらしたりスキを作ったりして、民衆を逃してやってほしい」
温泉地はクリエスター山脈北東部の平野にある。
とにかくその地域を脱出しさえすれば、民衆は好きな場所に逃げていくだろうとのことだ。
「この依頼だが、注意点がある。温泉地は過ごしやすさや安らぎが大切だろ? 血や死体で汚すのはできれば避けてほしいんだ。一箇所で戦闘になると、他のならず者たちが気づいて乱戦になってしまう。そうなると民衆の安全を確保することは難しいだろう」
もちろん、『ならず者』との戦いになれば応戦するしかない。強行突破するほうが手っ取り早いこともある。
しかし、もし可能なら気をそらしたりスキを作ったりして民衆を逃がしてほしいとのこと。
「うーん。その方法は……温泉に閉じ込めるとか、マッサージを変わって穏便に気絶させるとか? まあ、色々考えてみて!」
まずは民衆を助けなければならない。
「温泉地の民衆たちは辛い労働を強いられている。彼らを助け出すことができるのは、冒険者だけだ! よろしく頼むよ」
ギルドの受付は冒険者たちに向かって頭を下げた。
解説
マスターより
リプレイ
温泉地では、今日も今日とてならず者たちが大手を振って悪さをしていた。
無料で温泉に入り放題。マッサージを強要し、あまつさえ温泉後の牛乳まで堪能している。
従業員に扮装したララベル・サン・ディーベルは、温泉地の惨状を目の当たりにしていた。
「温泉はみんなの憩いの場、そこに住む人達に狼藉を働いて自分たちだけ楽しむなんて、僕、絶対に許せないから!!」
温泉で好き勝手にしている輩を無力化し、住民を逃がすため行動を開始する。
まずは住民に意図を伝える必要があるだろう。
さっそく、ならず者たちにこき使われている温泉の従業員を呼び止めた。
「助けに来たよ、僕が成り代わってならず者の相手をするから、その間に逃げて」
「あなたは? まさか、冒険者ですか?」
はっと、従業員が目を輝かせる。
「そうだよ。……他にも来てる仲間が居るから、上手く状況を利用してね」
ララベルは避難の時間や手順、仲間のことを伝えた。
そして、ならず者の呼び出しを代わると申し出る。
「ありがとうございます。うっうっ。あいつら、本当に人使いが荒くて……。しかもお金も払ってくれないし」
「それは大変だったね。僕たちが協力するよ。避難できるように頑張ろう」
「おーい! マッサージたのむぜ!」
その時、少し離れたところからマッサージ係を呼ぶ声がした。
「さっそくお呼びかな。それじゃあ、行ってくるね!」
「本当にありがとうございます! 冒険者が来てくれて、良かった」
従業員は感謝の気持を込めて何度も頭を下げた。
大きな会場で大勢の気を引いている仲間もいるため、ララベルは取りこぼした少人数の無力化を目指すつもりだ。
「おおー、マッサージ係さん? マッサージ室まで行くのがめんどくさいんだわ。ここの出入り口は狭いけどよぉ、ここでマッサージしてくれや!」
つまり、こういう集団で行動しない者を狙うというわけ。
「いいよ。さっそくマッサージを始めようか」
ララベルはなるべくマッサージ係と同じ様な声色で男に近づき、伏せて寝ている男の首に手をかけた。
「お……?」
「おやすみ」
こきゅっと首を曲げてやると、男は泡を吹いて気絶する。
「気持ちよくて寝ちゃったのかな? 毛布掛けとくね」
不自然にならないように毛布をかぶせて隠蔽も完了だ。
「他にも、個人で動いているならず者が居るよね。皆が逃げることを悟られないようにしないと」
まだまだやることは沢山ある。
ララベルは次のターゲットを探して温泉地を回った。
●旅芸人の妙
「なんたる悪逆非道! 許せねぇ!」
ギャメルは極悪非道な者たちの行いを聞き、眉をひそめた。
……。うん。冷静に考えると「……いや、わりと憎めねぇ悪党どもだな」とも思うけれども。あとで彼らに向けて警告のメモを残すのも良いかもしれないとも思う。
それはそれとして、住民たちは逃してやらなければならないだろう。
正直、今後この地で起こるはずの割とガチな戦闘に、ならず者たちが生き残れるとは思えない。
ギャメルはさっそく宴会で盛り上がっているならず者のもとへ向かった。
「兄ィ、温泉入りたい放題! 宴会し放題! さいこーだなぁ!」
「だろ!! おーい! 次の演目はなんだ?」
会場では、ならず者たちが良い気分で騒いでいる。住民は酒や料理を嫌々運んでいるようだ。
「それじゃあ、旅芸人でも装うか」
ギャメルはぐるぐると腕を回して宴会場に入っていった。途中、酒を運んでいる住民とすれ違ったので「ヤツらの気を引く間にこっそり逃げてくれ」といった内容のメモをこっそりと手渡しておいた。
「オレは、旅芸人だぜ! 楽しい宴会に参加させてくれよ!」
「旅芸人! 温泉っぽいのが来た!」
突然宴会場に現れたギャメルだったけれども、『旅芸人』という言葉にならず者たちは沸いた。芸を見せると伝えたところ、拍手が起こる。
と、いうわけで。
ギャメルは古木の短杖を取り出してくるくると回した。
「さあさあ、これは女神の祝福を受けた杖だ。一振りすればあら不思議! 光の蔓が巻き付くぞ」
「ほう、手品か!」
「温泉の宴会っぽいな!」
瞳を輝かせるならず者たちに向かって、ギャメルは明るく声をかける。
「女神の寵愛を受けるほどタフな男前だと、蔓から花が咲いて健康長寿になるって話だ。挑戦者はいるか?」
「健康長寿だと? 温泉に来たかいがあったなー」
「じゃあ、オレが行くわー」
ノリノリで近づいてきた男を、まずは光の柱で拘束する。
「はい、ちちんぷいぷいっとな!」
「おいい! なんだコレ?!」
柱を内側から叩く男。何かの芸だと思って拍手をする者たち。宴会場は大いに盛り上がった。
「こいつら大丈夫か? いや、まずは住民の避難時間を稼ぐことからだな」
ギャメルは危機感がまるで無いならず者たちに呆れながらも、しばらくの間時間を稼いだ。
●マッサージの列
マッサージスペースに向かったのは夕霧だ。
「くふ、金の匂いがするのじゃ」
メルトウォールという集団について、小うるさいことを言うつもりはない。仕事と金にありつければ、それで十分なのだから。
マッサージスペースで引き継ぎを申し出ると、マッサージ係が瞳を輝かせた。
「本当か! これで……男の汚い背中を揉みしだく辛い日々から開放される」
「この地を捨てて逃げるのじゃろ? となれば必要なものをしっかりと抱えて逃げるがよい」
マッサージ係のドワーフは何度も頭を下げて避難の準備を始める。
ならず者たちの相手をすることに嫌気が差していたのだろう。あっという間にマッサージ係の衣装を脱ぎ荷物をまとめた。
「わらわがメルトウォールの連中は適当に相手をしておくからの」
「うっうっ。本当にありがとう。それじゃあ、よろしく!」
そして、脱兎のごとく駆けていく。
残された夕霧は状況を確認した。マッサージを望む者たちがすでに何人も集まっている。仲間と打ち合わせしたタイミングも良い頃合いだろう。ここでならず者たちを引きつけておけば、住民の退避時間を稼げるはずだ。
「おーい! マッサージまだかー?」
呼び声に答えて、夕霧はならず者たちのもとへ向かった。
「マッサージ係が変わったのか?」
「この温泉地が何やら楽しいことになっていると聞いて来たのじゃ」
「なるほどな! 俺たちは毎日楽しいぜ!」
他愛ない会話をしながら、ならず者のコリを解す。
元々のマッサージ係が語っていた通り、むさ苦しい男の背中を揉みしだくことになりそうだ。
「うおー! そこだー。身体が解れていくぜ!」
「何とも男らしい背中じゃの。ふふっ」
「こんな色っぽいネエチャンにマッサージしてもらうとか、温泉最っ高だな!」
夕霧のマッサージを受けたならず者がふにゃふにゃになっていく。
その様子を見ていた男たちは、我も我もとマッサージを希望した。
「いくらなんでも、わらわ一人でこの人数を同時には無理じゃ。並んで待てい」
「くっ。できるだけ早く頼む」
「しかし、じっくり揉み解すのが良いのじゃろう?」
「そうかも~~~~!!」
ならず者たちは、列を作って夕霧のマッサージを待つ。
供給不足を作り出して、多くのならず者を引きつけようとする夕霧の思惑通りだった。
(列がなくなれば、小奴らの貴重品を失敬して注目を集めればよいじゃろ)
まだまだ男たちを引きつけておく手段は残している。夕霧はゆっくりと手を動かし、マッサージを続けた。
●食後の当身
温泉地では、ならず者たちが食事を強要する場所もある。
飯はまだかと矢のような催促があるようだ。
男たちの所業を見たケン・Z・ブラッドリーはため息をついた。
「こういった連中は狩り尽くすに限るんだが……せっかくの温泉を汚したくないし、しかたないな」
東方伝来の技は何も首刈りだけじゃない。
ケンは手首を回しながら厨房に入った。
「おーい! 飯はまだか!」
「腹減ったぜ!」
カンカンと皿を叩き、ならず者たちが飯を要求する。
ケンは料理スタイルで男たちの前に出て、まずは一品と大皿をテーブルに置いた。
「あんたらの空きっ腹埋めてやるから遠慮せず食ってくれ」
大皿に盛り付けられているのは、温泉地にふさわしい料理だ。
皆で少しずつ小皿に取りわせるの良さそう。
もちろん、一人一人が心いくまで食べることのできるだけの量がある。
「おお! 待ってたぜ!」
「それじゃあ、遠慮なく」
「「「いただきまーす!」」」
男たちが我先にと料理に手を伸ばす。ならず者たちは美味い美味いと夢中になって食べた。調理スキルを活かして作った食べ物だ。さぞ美味しいことだろう。
ケンは次の食べ物を作りに厨房へ戻る。
もちろん、あれはただの料理ではない。
食べた後に胃の中で膨らむ素材を使用していたり、食べた後に体の動きが鈍るような食い合わせを利用していたりする。
「ふぅ、きょうの飯は本当に美味いな」
「おーい! 足りねぇぞ。おかわりだ!」
「さあ、次はこれだ。どんどん持ってくるからな。遠慮せずに、たっぷり食べてくれ」
ケンが次に運んだのはドンブリに盛られたひと品だ。
それぞれの目の前にドンブリを置いてやると、男たちは必死になってかきこんだ。
そろそろかと思っていた矢先、1人のならず者がふうとため息をついた。
「なんだ? あー、腹が膨れて……うう?」
すかさずケンが男の腕の下に体を滑り込ませる。
「ほら空き部屋に案内してやるから肩に捕まれよ」
いかにも心配している風を装った。空き部屋に案内するのが目的だ。
「あー、悪ぃなあ」
「気にするなって、ゆっくり休んでな……っと」
空き部屋についたタイミングで当身をくらわせた。男は抵抗する間もなく気絶する。
あとは手足を縛って猿ぐつわを噛ませたら完了だ。
こうしている間にも、食事を食べた男が次々とダウンしていることだろう。
「食事が効かないやつは、マッサージという手もあるしな」
ケンはそれからも次々と男たちを拘束して住民の避難の時間を稼いだ。
●酒呑み合戦
「はい、牛乳だよ。ところで、知ってる? すっごい大酒呑みがやって来て、呑み勝負を始めたらしいよ」
ルルト・アーキスは温泉後の牛乳を要求するならず者に牛乳を届けた。
「おお、やっぱり風呂上がりには牛乳だよな! で、呑み勝負って何だ?」
牛乳をこきゅこきゅと飲み干して、男が首を傾げる。
「我こそはと思う強者は宴会場へっ! ……だって、聞いたんだよ」
ルルトの説明によれば、宴会場で大々的な呑み勝負が行われるという。
とにかく、たくさん飲んだほうが勝ち。
求む、大酒飲みとのこと。
「ということは……もしかして、酒飲み放題?」
「そうだと思うよ! お客さんも相当強そうだよね?」
「ふっ」
牛乳を飲み干した男はニヒルな笑みを浮かべた。
「それはまさに、オレのためにある催しだな!」
男は自信満々に宴会場へと向かう。
「さあ、どんどんならず者たちを集めちゃおう」
「私達もお手伝いしますね」
「うん! お願い!」
ルルトは事情を話して、牛乳や酒を配達していた住民にも協力を求めていた。
逃げる手筈も相談済だ。
より沢山のならず者を宴会場に誘い込めば、住民の避難もスムーズになるだろう。
シロに索敵させているので、男たちの位置はだいたい把握している。
ルルトは次のならず者に宴会の件を伝えるために走った。
「『来たれ酒合戦!』と、よし、いい感じだな」
アルバス・ロウルは宴会場に張り紙を貼った。
急ごしらえの会場だが、まあ大丈夫だろう。大切なのは、ここで酒が飲めるということ。
大太鼓を置いて宴会感を出せば、雰囲気もバッチリだ。
そうしているうちに、ならず者たちが集まってきた。
「ここが酒を飲み放題できる宴会場所か!」
「話は聞いた! さあ、飲むぞ!」
「そうだぜ! 宴会場はここだ! さあ、酒呑み勝負を始めようぜ!」
アルバスに案内されて、男たちはにこやかに会場入りする。
配達を終えたルルトも加わり、酒呑みの宴会が始まった。
「うぃー! こっち、酒が足りねぇぞ!」
「はいはい! わあ、いい飲みっぷり!」
ルルトは適度に男たちを盛り上げながらどんどん酒を運ぶ。
飲み放題と聞いて、ならず者たちは上機嫌で酒を飲み続けた。
「んーじゃあ、勝負だ!」
「受けて立つよ! でも、大丈夫? ついてこれるか?」
酒呑み合戦を仕掛けられたアルバスが大きなコップに手をのばす。
負けじと男が追加の酒を注文した。
「まずは、一杯!」
「いい飲みっぷりだ!」
アルバスと男は互いに様子をうかがいながら、どんどん酒を煽った。
「……ヒック。おらぁ、もう……一杯、もってこーい!」
「これで8杯目だよー! すごいね!」
男にコップを手渡しながら、ルルトが感心したように手を叩く。
勿論、これも盛り上げるための演出だ。
「はっはー! オレにかかればぁ、酒なんてぇ、こんなもんよ!」
男は待ってましたとばかりに酒を飲む。
「やるな」
それを感心したようにアルバスが眺める。
アルバスも男に合わせて、コップの液体を流し込んだ。
「……そろそろ限界なんじゃないか? 無理するなよ」
そして、頭を小さく振る。
「かっかっか! 限界は、お前のほうだろ?」
「むむ」
男に指摘され、アルバスが口元を尖らせた。
勿論だがアルバスは限界でも何でもない。酔ってすらいない。
先程から、手元に運ばれてくるのはただの水なのだから。
ルルトは、そんなアルバスに合図を送る。
そろそろ民衆の退避ができそうだ。
アルバスは飲み比べ相手に見えるように大きく両手を上げた。
「いやぁ、負けた! さすが名乗りを上げた者達だ! あとは応援に回らせてもらうぞ!」
そう言って、ふらふらと立ち上がる。
「おーいおい、だいじょうぶかぁー? あしもと、ふらふらじゃねぇかー」
そういう男も、目が回る寸前だ。
他にも、宴会の雰囲気に流されて酒を浴びるほど飲んだならず者は多い。
酔ったふりをしながらアルバスは会場を見て回った。
どこもかしこも、酔いつぶれる寸前の男たちでいっぱいだ。
これなら宴会のスタッフを逃しても大丈夫だろう。
「よし、それじゃあ合図の大太鼓だ!」
アルバスはあらかじめ取り決めをしておいた大太鼓を鳴らした。
温泉地の住民が逃げていく。
ならず者たちは、追ってこない。
ある者はマッサージで骨抜きにされ、ある者は料理を食べながら気を失ったという。
そして、またある者は酒に酔いつぶれたとか。
住民の退避のために見張りを行っていたケンが頷いた。
「あらかた避難は終わったようだな」
他の冒険者たちも、それぞれうまい具合に逃げるだろう。
「作戦が嵌ると気持ちいいものだな」
「あんな上手くいくとは思わなかったんだよ」
アルバスとルルトはハイタッチをして作戦の成功を喜ぶ。
温泉地『カルドナス』は、ならず者たちがいる。
だが、住民たちは安全に避難を果たした。
マスターコメント
ショートシナリオ普通 報酬:標準6 / 4〜6人
2021年09月09日 15時14分32秒 公開
相談掲示板
ヒーラーのギャメルだ。みんな、よろしく頼むぜ。 困ったならず者連中だな! ……でもちょっとひょうきんで憎めない感じでもあるよーな……。 基本的に戦いは避けるけど、もし応戦や強行突破って時でもケガさせねぇように注意するぜ。
僕は、シーフのララベル・サン・ディーベル。 みんな、よろしくね!
ルルト・アーキスだよ、よろしくね! ほんと困った人達だね。 温泉地を存分に満喫してるみたいだから、その辺を上手く利用してこっそり脱出させてあげられるといいな。
アルバス・ロウルだ。よろしく! なるべく穏便に済ませられるよう尽力しよう!
夕霧なのじゃ。 ならず者の気を逸らす方向で考えているのである。 ……これ、誰かは民衆を街から出るところまでエスコートする役目が必要であるか?
まとまって行動する場合、エスコート役とか護衛役って分担もあった方が良さげだなーとは思うぜ。 別行動の場合、隙作りから民衆の逃亡支援と護衛まで、一人で全部カバーするイメージだった。 まとまって動く作戦なら、各自の行動の役割分担。 個別に動くなら、どのスタッフ(清掃担当、酒担当などなど)を助けるのかで分担するのがいいのかな?
…と、ぎりぎりになっちゃってごめんね。 別々でもまとまって行動でも、すり合わせできてた方が安心だね。 んっと、ボクとアルバスは、酒合戦でならず者を宴会場に集めて、あわよくば酔い潰しちゃおうかぁ…って話をしていたよ。 脱出については検討中だけど、温泉地の人達には大太鼓(打楽器大)で合図して、各自逃げてもらうかどこかに集合してもらって一緒に脱出…とか、そんな感じを考えてるよ。 集合→一緒に脱出の方が、気を引くのに専念してもらいやすいかな? できるだけ皆とも協力しあえればと思うから、もし、こうして欲しいとか、お互いに協力できそうな部分とか何かあれば気軽に教えてね。 …今のところ共有できそうなのは、このくらいかな。 極力ここも確認するようにするね。
ルルト、行動内容を教えてくれてありがとな! 護衛重視の冒険者が複数いるならどこかに集合。 護衛役がいない場合は、目立たないよう各自でこっそり逃げてもらうのが捕まりにくそうだって思ったぜ! オレはお年寄りとか逃げ足が遅そうな人を助けたい。場所とかは特に指定してねぇな。 手段としちゃ、こんな感じだ。 冒険者じゃなくて巻き込まれたただの旅芸人のフリ 脱出について書いたメモを助ける人たちにこっそり見せる 旅芸人の手品とかなんとかウソついて、無抵抗のならず者に光縛呪 光縛呪だと動きは封じられても、大声出すことはできるから、その点は油断できねぇな。 ヒュプノシスが使えりゃ役に立ちそうだけど、オレ覚えてねー……。 その点、ルルトの酔い潰すって案はナイスだと思う!
大声で叫ばれないように、温泉饅頭でならず者の口をふさぐことにした! 撤退する前に、ならず者宛に手紙も残そうと思ってる。温泉から立ち去れ、悪いことから足を洗えよ、って内容だ。 これだけで改心するとは思ってないが、一応な。
ギリギリでごめんね。 僕は、変装とかも使って温泉の従業員さんと入れ替わって、各種サービスをしつつ、こっそりならず者を無力化していって、その隙に民衆に逃げて貰おうかなって思うよ。
ギャメルも行動内容の共有とアドバイスもありがと! 確かにいっぱい集まったらそれだけ目立っちゃうし、見つかった時に理由をつけるのとかも難しそうだね。 うん、基本は各自でこっそり~にした方がいいかも。 ギャメルが逃げ遅れそうな人達のバックアップしてくれるのすごくありがたいんだよ。 温泉饅頭を口いっぱい!ふふふー、束縛が解け後も美味しく食べられるし、とってもいいと思うな♪ ララベルも表明ありがと! 温泉方面にも回ってくれる人がいるって分かってよかったんだよ。 隙を見て無力化もとっても有効そうな手段だね!
ギリギリですまない。 ルルトは俺のと合わせて共有ありがとう。 伝えてもらっている通り、ならず者を宴会場に集めて酔い潰す予定だ。 大太鼓(打楽器大)での合図は広範囲に聞こえるようサウンドボマーで音を響かせる。 護衛役がいないので、各自逃げてもらう方向で考えてるよ。