【呪輪】胞子の舞う森
七海真砂
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シナリオID:1308
オープニング
エルフの最古老の一人、『灰火の守部』グレイオンスによれば、そこはエルフの里ムーセルのすぐ傍であるという。
「ムーセルで何かが起こっているのかもしれないが……更なる調査を行う為にも、まずはこの魔獣達を何とかしなければならないだろう」
ムーセルに近付く者達が安全に調査するためにも、里の傍にいる魔獣の掃討は急務である。それを頼みたい、とグレイオンスは冒険者達に告げた。
「まずはムーセルへの道を切り開くこと。そこを通り、ムーセルを調査する別の部隊がムーセルへ向かうことになっている。その上で周辺の魔獣を倒して欲しい」
魔獣の総数は不明だが、先日の調査で目撃されただけでも、かなりの数がいることが判っている。できるだけ多くの魔獣を倒すことが好ましいであろうが、だからといって無茶はしないように、とグレイオンスは釘を刺した。
●胞子の舞う森
エルフの里ムーセルへ向かう道の途中には、巨大なキノコに似た魔獣の姿があった。
まるで自由気ままに散歩でもするかのように、のんびりと辺りを動き回るキノコ達から胞子が撒き散らされる。その近くで、毒々しい色をした花のような魔獣が根を張るようにして、ゆらゆらと揺れている。
辺りには独特の、何かが腐るような臭いが、漂っていた――。
解説
マスターより
リプレイ
「そうですね、吸い込まないように気を付けましょう」
バンダナを巻きつけるレイヤ・ダライ=カホールの言葉に頷き、サシャ・テーリングも口元をマスクで覆った。
「こうしておくと、胞子だけでなく臭気を抑える効果もあるのだ」
「ああ、なるほど」
きっちりと鼻周りにも布を巻くストレガ・L・リベルガストラをウォーゼルも見習う。緑の枯れた森には今日も胞子が舞い、どこからともなく独特の腐臭のような臭気が漂っていた。
「よし、では行くか」
とナタリア・フィッツジェラルドが担ぎ直したのは持参した天幕――ゲルの一式である。調査をするのであれば、休憩用の簡易拠点として役立つのではないかと準備した物だった。
「……フィルエス大森林には初めて来たけど、きっと、ここもすごく綺麗な場所だったんだろうな……」
ウォーゼルは辺りを見回しながら、枯れた木々が悲しそうだと呟く。草は萎れ、葉は落ち、木の幹や枝はすっかり枯れ細ってしまっている。その光景は、見ているウォーゼルの胸を締め付けてくる。
「この原因は何なのでしょうね」
レイヤも小さく溜息をつく。木が栄養不足になっている一方で、まるで意思を持つかのように動き回る植物の魔獣達がいる……。
「でも動き回るのなら、その栄養はどうやって得ているんでしょう?」
魔獣も何らかの方法で栄養を取らなければ動けないはずだ。こんな枯れている森で……栄養……?
首を傾げるが答えられる者は誰もいない。そのうち「そろそろだな」とセリオス・オーガストの低い囁きがこぼれた。
エルフの里ムーセル周辺で目撃された魔獣の居場所まで、あと少し。敵に気付かれないよう、あるいは敵の気配を見落とさないよう、十分に気を配りながら冒険者達は進む。
(撤退用のルートは、ここまでの道を引き返せば大丈夫そうかな)
万が一に備え、ナタリアは退路の確保についても気を配り――そして。
いた、とジェスチャーで示しながら足を止める。キノコ型の魔獣が二体、花を咲かせた植物型の魔獣が五体……それぞれピンジとメリデという名前らしいと、他の部隊から聞いた一行は、まずはピンジ二体の方を仕留めるべく構える。
「左手側のピンジの方が包囲しやすそうですね」
五感を総動員して敵を俯瞰したサシャの言葉にじりじりと移動する。それにしても、とストレガはいささか怪訝そうにしながら敵を見やる。
(植物の魔獣の厄介な所は、自然に溶け込む擬態能力なのだ。でも……)
毒々しい色をしたピンジも、鮮やかな緑と花を持つメリデも、どちらも擬態とは程遠い姿だ。緑の枯れていない森の中にあっても、彼らの姿は目立つだろう。擬態などまるで必要無いということだろうか?
ともあれ、敵はまだこちらに気付いていない。
「――仕掛けましょう!」
サシャが声と共にエーテルを解き放ち、皆が淡い光に包まれて身体能力が向上する。それを合図に、冒険者達は飛び出した。
「いくのだ!」
ストレガのフリーズボルトがピンジに突き刺さるのと、ピンジが振り返って動き出すのはほぼ同時だった。ウォーゼルはピンジの胞子の範囲を見極め、衝撃刃で攻撃しながらフェザーステップで間合いを取る。
「攻撃を仕掛けたり、受けるたびに胞子が飛び散るのだとしたら、できるだけ少ない手数で潰してしまいたい所だな」
ピンジの影響を最小限に抑えるべく、ナタリアはレイヤの杖を淡い光で包む。それを受けながらレイヤが放った炎球は、まるでそれ自体が意志を持つかのように蠢きながら、ピンジとその周辺のメリデを焼く。
「よし、ここなら……」
セリオスはピンジとの間合いを測りながら、もう一体のピンジに向かってエーテルを纏わせた矢を放つ。ピンジに纏わりついたエーテルはすぐさまその身を蝕み始め、更にそこへストレガが再度放った氷の矢が移動を阻害していく。
「!!!」
「――! ――!」
声を持たない魔獣達は攻撃を受けても泣きも叫びもしない。だが、言葉を持っていれば、きっとこう言っただろう。
何をするんだ! と。
許さない! と。
ピンジへの攻撃をまるで自分への攻撃だと思ったかのように、メリデ達も一斉に反撃に出た。張っていた根を引き上げて飛び跳ねながら距離を詰め、冒険者達に向かって種を放って攻撃して来る。
「木を盾にするのは、少し難しそうだね」
ウォーゼルはそれを避けつつ、更に間合いを測る。上手く枯れた木を盾にできればとウォーゼルやナタリアなどは考えていたが、メリデ達はぴょこぴょこと跳ねて動き回る上、今度はピンジへの攻撃や仲間への支援が届かなくなりかねないからだ。
レイヤのように、逆巻くエーテルの風を身に纏って攻撃を弾き飛ばせば話は別だが、それ以外の攻撃は、いかに受けながら戦うかを考えた方が良さそうだと、ナタリアはヒーリングオーラで今の傷を癒していく。
「とにかく順番に倒していきましょう!」
「ああ、攻撃を集中させる」
サシャの輝刃を受けたセリオスは矢に光を集中させると、それを一気に解き放った。更にレイヤの爆炎が敵を一気にまとめて薙ぎ払っていく。
「それなら、こうするのだ」
とストレガが放ったのはアーケインテンペスト。稲光はメリデ達に纏わりつくと、彼らの移動を阻害していく。
「! !」
思うように動けないせいか、メリデ達は窮屈そうだ。その間にも攻撃を重ね、輝刃を受けたウォーゼルの衝撃刃で一体目が倒れると、セリオスはすぐさま、もう一体のピンジに向けて鋭い一撃を放った。
(水っぽいエーテルは吸収しちゃうとか、そういうことは無さそうですね!)
レイヤは上手く位置取ると、タイダルストリームで敵を一気に飲み込む。ナタリアから輝刃を受けたストレガのストーンブラストがさらに炸裂すれば、ピンジだけでなくメリデもじわじわと弱っていく。セリオスが無数の光の破片を撒き散らしながら二体目のピンジを仕留めた時には、巻き込まれたメリデ達は既にフラフラとしている状態だった。
「よし、一気に仕留めちゃおう」
ウォーゼルは瞬間的に加速すると、両手の短剣で次々とメリデを切り刻んだ。ストレガの豪風が二体のメリデを纏めて飲み込み、レイヤのメテオライトが降り注ぐ中、攻撃に転じたナタリアとサシャの魔法がメリデを横転させる。
更に、セリオスがもう一度つがいだ矢が最後に残ったメリデを貫き、魔獣達は一掃された。
「すぐに除去する」
ナタリアは解呪を、サシャはサルベーションをかけると皆の傷の回復にあたる。一息つくと、レイヤはすぐに空の水袋を開けて、その中に胞子を集め始めた。
「詳しく調べられたらいいんですけど……」
「そうだね。種や土も持って帰ってみよう」
できるだけ詳しく調べてみて貰えたら、とウォーゼルもそれらを集めていく。
(……この種、植えたら何になるんだろう)
魔獣の種は魔獣が生まれるのだろうか……もし、何らかの原因で植物が魔獣化したのだとしたら、生えてくるのは普通の植物なのだろうか……。そうしたことも、調べて貰ったら何か分かるかもしれない。
「ちょうど一体持って帰れそうなのだ」
と言うストレガは、よいしょっとピンジの亡骸を持ち上げ、マジカルポケットの中にしまっている。これを解体したり、少し食べてみるなどして、詳しく調べることが対策にも繋がるのではないかと考えたのだ。
「まだもう少し調査していけそうか。とりあえず、休憩にしよう」
ナタリアが建てたゲルの入り口から皆を呼ぶ。冒険者達は中で一息つくと、さらに周辺の調査に出た。
「いるな。あれはメリデの方か」
ムーセル自体に近付くのは避けつつも、周辺の調査を続けた冒険者達は、うろうろと辺りを移動するメリデの姿を発見していた。花のような姿をしているのは同じだが、色や形といった細かい点は先程のメリデと少し違う。
「掃討するなら、レゾナンス・オブ・ヴァローで一気呵成だ」
ナタリアが皆にエーテルを付与し、サシャの輝刃を受けたセリオスの炸光矢を起点に攻撃を繰り出していく。今度のメリデの攻撃は蔓を伸ばすような攻撃、そして先程のメリデと比べると、かなり撃たれ弱いように感じる。
「個体差が大きいのだ?」
「かもしれないな……」
いたメリデをすべて倒したところで、ふーむと興味深そうに考え込むストレガ。もしかしたら、幼体といった概念があったりするのだろうか?
「今のメリデはどこから来たのでしょう? ムーセルの方から来たというよりは、この辺りを単純に歩いているだけのように見えましたよね?」
「そうだな、例えるなら散歩中といった様子に見えたが……目的地などがある訳じゃなく、ただうろうろしていたのかもしれん」
どこかへ行くというよりは、ただ気ままに歩いている感じに似ているように見えた、と、サシャとナタリアは頷き合う。魔獣達がムーセルと、どのくらい関連があるのかもイマイチはっきりとはしないが……。
「あまり遠くまで行くのも良くない気がするのだ。そろそろゲルの方に戻るのだ」
攻撃や回復、支援といった手数の問題もある。あまり遠くまで離れすぎて何かあれば危険だというストレガの話は確かにその通りで、一行はメリデと遭遇した地点を記録しながら引き返していく。
だが、異変はそのゲルの付近にあった。
「あれは……」
「樹木型の魔獣だ。さっきはいなかったのに――」
花の蕾のようなものをつけた樹木が、ゲルに向かって歩いて来る――根を蠢かせて移動することを歩くと呼ぶなら、だが――。その後ろに見えるのはピンジ、それに何体かのメリデだ。
「あの数は……」
「何とかやり過ごしたいですね」
「とにかく伏せるのだ」
今、あの数の魔獣とやり合うのは避けたいところだ。幸いにも距離がある事を生かし、なんとか、気付かれないようにと身を伏せながら様子を伺う。
(何か、相談しているんでしょうか……?)
植物は言葉を持たない。だが、彼らはふと足を止めて、顔を見合わせて何かを相談するような仕草を見せている――ように見えなくもない。
「なんだろう?」「わかんない」とでも言い合うかのように動きを止めていた魔獣達は、やがて「これ、じゃまだなー」とでも言うかのように、ゲルを蹴散らして移動していく。樹木型が崩したゲルの上をピンジが更に踏みつけて、メリデがてとてと、更にその後ろをついていくように。
「……行ったのだ」
「魔獣達が向かったのはムーセルでしょうか?」
「どうでしょう。方角はあまりはっきりしませんでしたが……」
どちらかというと、さっき見たメリデ達のように散歩でもしているといった感じの方がピンと来るような気はするが……。
「また戻って来ないとも限らない。崩されてしまったし、撤収した方が良いかもしれんな」
「そうだな」
「じゃあ、片付けるの手伝うよ」
ゲルの後片付けに向かうナタリアをウォーゼルは追う。ゲルの方は崩れた程度なので建て直せばまた使えそうだが、あまり長居するのも危険だと一行は判断する。
「グレイオンス様に安心して頂きたいですもの。今の目撃情報も申し送りできるようにして引き上げましょう」
サシャは忘れないうちにと今の様子を書き留めると、自らも撤収準備に加わる。そこからの帰路は魔獣に遭遇することは無く、無事、一行はグレイオンスのいる里へと撤収するのだった。
マスターコメント
ショートシナリオ普通 報酬:標準6 / 4〜8人
2021年08月28日 23時24分28秒 公開
相談掲示板
レイヤ・ダライ=カホールです。よろしくお願いしますね! 人数が集まるかわかりませんが、お話を進めておきましょう。 今回は道を切り開いて魔獣の退治、ですね。 敵さんは植物っぽいので、火とかよく効くかもです。 あとは、毒への対処もあれば安心ですね。 とりあえずわたしは タイダルストリームでの進路の確保と、フレイムゲイズや爆炎での攻撃を考えてます。
シーフのウォーゼルです、よろしくお願いしますね。 敵はキノコと花の魔獣ですね。 情報は過去の依頼の報告書などを確認してー…とあったので、ざっと確認してみて、『【呪輪】エルフと故郷の森の危機』の報告書とか参考になりそうかな?と思いました。 キノコの胞子は、冒険者が攻撃しても飛び散るようなので接近戦をする際は特に注意が必要そうですね。 毒への対処…胞子を吸い込むとまずいようなので、気休め程度だとは思いますが布等で口元を覆っておこうかと思います。 あとは、キノコを攻撃する時は衝撃刃など極力近づかずに攻撃できる手段を取れればと。 確かに植物だから火には弱そうな感じがしますね。 俺は魔法が不得手なのでその辺はお任せするとして…攻撃しながらレイヤさんの範囲攻撃などに多く巻込めるように敵を誘導できたらいいかなぁと考えています。
キャスター、ストレガなのだ。よろしくなのだ。 植物だから火に弱いのはきっとそうだし爆炎を。 他にも弱点ないか調べる為豪風とストーンブラストにするのだ。後はヒールなのだ。 それと動きを止めるフリーズボルトとアーケインでいくのだ。 毒の成分とか調べる為に倒したやつは持ち帰ろうと思うのだ。
ヒーラーのサシャと申します。よろしくお願いします。 レゾナンスとサルベーションがお役に立ちそうと参加しました。 後は…このメンバーですと…輝刃・輝足とか如何でしょうか? ヒールも持ちますので、後1枠、ご希望が有りましたらお知らせくださいね。 攻撃は弓を支度して、手空きの時は後方より追撃しようと思います。
ん、ぎりぎり参加だがシューターのセリオスだ、よろしく頼む とりあえず別の依頼のだとおそらく同種の敵だと思うがメリデとピンジという名前で戦ってるな 能力が同じなら花の魔獣のほうは弓と同じ射程の物理攻撃、キノコのほうはスリップつきで直線状の回避不能範囲攻撃だったから倒すなら先にキノコのほうがいいだろうな
こちらも、もっとギリギリだがヒーラーのナタリア・フィッツジェラルドだ。 戦闘終了後の調査の必要性を考慮して参加してみた。 この依頼での敵は名称不明なようだが、別現場での敵の特徴と符合する所が多いから、こいつらもメリデとピンジと思われるな。 私の方からも胞子による減衰の立て直しにヒーリングオーラや解呪、それと一気呵成の為にレゾナンス・オブ・ヴァローで行くつもりだ。