【獗烙】堕落と昂揚の街で
広大野人
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シナリオID:1210
オープニング
「首尾はどうだ?」
長く伸びた白髪を持つ老人紳士が穏やかな口調で訊く。
すぐに応えたのは壮年の男性――フォーゲン――だった。
「許容できる範囲でスケジュールが進んでおります」
「ふむ……これか」
1枚の印刷物を手にする老人紳士。
そこには、冒険者ギルドが証明した記事が印刷されている。とある王国騎士が、情報戦に対抗してきたのだ。
冒険者ギルドの情報の正確さは誰しもが理解しているものだ。ゆえに正確さという点でいうと明らかに勝負にならない。
「なかなか良い出来だ……これでどちらが正しいかなど、火を見るよりも明らか。しかし、求められているのはそこではないのは……」
「はい、存じております。娯楽性こそが、我らにとって大事であると」
仮に確実に正しい情報というものが存在したとしても、不確実な情報に価値が無い訳ではない。
例えば、都市伝説は不確定さがあるからこそ、人はそこに浪漫や畏怖を感じる。
あるいは、高貴な人物のゴシップネタ。これも情報としては不確実だ。しかし、大衆はそれを求める。自らの人生と何ら関係がなくとも、欲望の捌け口を、日々の苛立ちの矛先を、必要としているのだ。
「相手が正しい情報を出してくるのであれば、こちらは新しい話題を次々に繰り出せばいい。一介の王国騎士にどれだけの事ができるか、見せて貰おうじゃないか」
それだけの力を、この老人紳士は保有している。
財力だけではない人材や設備も抜かりは無い。
「次のフェーズに移行するタイミングは如何しましょうか?」
「もう少し稼げると思ったが、冒険者の中には良い動きをするものもいるようだからな……好きにしろ」
「承知しました」
丁寧に頭を下げるフォーゲン。
既にやるべき事は決まっていた。『彼ら』を出迎えるのも一興だろう。
●
『神実の香り』を治療する収容施設では、冒険者の助言に合わせて建物をリフォームし、人員を増やして対応していた。主に精神面にも働きかけるその治療内容は、手探りながらも行われている。
また、王国の研究所と協同し、適切な利用方法についても調査も進んでいた。
これらは大きな進歩と言えよう。特に苦痛に対する薬という面では、大きな成果を将来期待されており、未来への投資という意味での寄付も見られる。
「一先ず、これで中毒患者への対応も可能になった。後は、供給元を完全に断つだけさ」
王国騎士エナハルト・ティルムの顔はいつもながら爽やかそうではあるが、疲労が隠せないようだった。
この所、この件の事で関係各所に足を運び、調整を続けてきたのだ。休む暇もなかったに違いない。
「ファナータでの調査は冒険者に任せてはどうですか?」
そう提案したのは受付男子のイシアだ。
本来であれば王国騎士が直接、乗り込むべきではあるが、過労で倒れてしまっては意味がない。
「……しかし、いつも『彼ら』に任せてしまい、申し訳ない」
「倒れられた方が困りますよ。手配は私の方で行っておきますので」
慣れた手付きで空の書類をエナハルトの前に差し出す。
少しの間と漏れる息――。王国騎士は無言でサインをした。
「気掛かりなのは、一つだけ。ファナータの街を治める領主、リロ・ルエファナータ子爵は暗君と噂される……果たして、ルエファナータ子爵が関与した事なのか、それとも知らない所なのか、この辺り、明らかにする必要がある」
「分かりました。子爵の名誉を傷つけない程度に、その件も調査するように依頼に入れておきます」
無関係だったとしても領地経営の無能さが露呈されるだけだが……既に暗君と噂されていれば痛くもないのかもしれない。
どんな人物かは、会ってみないと分からない所だが、果たして会えるのかどうか、そんな疑問を抱きつつ、イシアは書類を書き込んでいくのであった。
●
ファナータの街は『堕落と昂揚の街』とも一部の者には呼ばれている。
街の治安はお世辞にも良いとは言えない。窃盗や詐欺は日常的だし、見るからに怪しい店も昼間から営業していた。
救いといえば、暴力的な事件は少ない事だ……いや、目に見えてないだけかもしれないが……街には使えない衛兵の代わりに『私的な自警団』が幅を利かせているようだ。
「あら……フォーゲン。久しぶり?」
街の中央にある塔のような建物。その最上階の部屋で一人の少女が尋ねてきた人物に呼び掛けた。
少女は童顔以上にそのやる気のない態度が、更に見た目以上に、幼い雰囲気を発している。
対して、フォーゲンと呼ばれた壮年の男は冷めた視線を向けていた。性格的に勤勉なフォーゲンとは、相性が合わないのだ。
「挨拶に来ただけだ」
「そう? 忙しいのね?」
「……要件だけ伝える。冒険者がそう遠くない先、現れるはずだ。余計な事はするな」
「しないわ? だって、私、何も知らないのよ?」
興味がなさそうに机の上に半身を預ける。
最近育ってきた胸が邪魔だが、知った事ないといった様子でそのまま机に身を預けた。
どこまでも怠惰な少女だが、この少女こそ、『堕落と昂揚の街』を治めるリロ・ルエファナータ子爵である。
「それならいい」
そう言い放って踵を返すフォーゲン。
少女は机に突っ伏したまま、手を振った。それが別れの挨拶なのか、さっさと帰れという事なのか分からないけれど。
フォーゲンは自身とこの少女の相性が合わない事をよく理解していたが、同時に仲間意識も持っていた。なぜなら、胸の奥に抱える闇は同じだからだ。
……いや、それ以上に、虚しさを感じていた。しかし、少女に欠けたそれを埋める事はできないのも知っている。
だから、去り際に余計なお世話だが一言言い残した。
「たまには太陽の光でも浴びろ」
「分かったわ?」
ヒラヒラとする手はまるで風で揺れる木々のようにも見えた。
●
フォーゲンは眼前に広がる『神実の香り』の栽培場を見つめていた。
『承允』された多くの者達が、農作業に勤しんでいる。
もっとも、彼らは知る由もないが、栽培はもう終わりだろう。冒険者がやって来て焼き払われるからだ。
「それで良い。冒険者とは英雄。娯楽性の為には、なくてはならない存在だからな」
独り言を呟く。この栽培場と組織には直接的な関係がない。
あるとすれば、禁制品となる前に『神実の香り』を紹介しただけの事だ。
それでも、ここで冒険者達を迎えなければいけない理由がフォーゲンにはあった。
「ジード様……これより、次のフェーズに移行します」
遠く、主が住まう地に向かって、この男は告げるのであった。
解説
マスターより
リプレイ
ファナータのスラム街を中心として、ベルク・オスマットは聞き込みに回っていた。
堕落と昂揚の街と呼ばれるだけあって、同じ規模の街と比べ、スラムは大きい気がする。
ベルクは人足の募集や大勢の人間が街を通過したか等、それらを確認していたのだが、有効な収穫が得られない中、スラムの中でも隠れるように過ごしていた者に辿り着いていた。
「……半月位前に、新天地から……逃げて来たんだ……」
『新天地』……その言葉にベルクは覚えがあった。
そこが、探している農場の可能性は高いからだ。
「場所はどこだろう?」
「必死に……逃げたから……けれど、背の高い花が、いっぱい咲いてた。きっと、今も……」
示した方角は街から見て南西。
(……新天地……承允……きっと、そこだ)
一先ずの情報としてはまずまずの収穫だろう。ベルクは新天地から逃げ出して来たという者の肩を軽く叩き、幾ばくかの情報料を渡して立ち去るのであった。
●
エリザ・A・ミシャールはナンパからのセクハラめいた自称自警団員を、軽く締め上げていた。
男は街近辺で隠れて農場をやっている所は知らないという。
「その『承允』ってのは、分からないが……ここ数か月の間、素性の知らない余所者を運ぶ馬車って話は……イタタタタ!」
情けなく悲鳴を上げる男に、エリザは戒めを解いた。
関節を摩りながら自称自警団員は涙目だった。
「この街は臨検もしないのかい?」
「上司からは関わるなって命令なんだよ。俺は見た事ねぇし」
「……行け」
その言葉に脱兎の如く逃げ出す男。これで『自警団』を名乗るのだから笑わせる。
しかし、得られた情報は意味があった。
「承允された者が馬車で連れていかれているのは確実のようだな」
独り言を呟くとエリザは次の情報を求め、歩き出すのであった。
●
街中でも比較的規模の大きい園芸店にミア=リゼルは訪れていた。
『神実の香り』が農場栽培なら、肥料や用土を大量に購入しているのではないかと思ったからだ。
「最近、品薄ではないですか?」
「言うほど、売れてはいないかな……街の郊外には林とか牧場もあるしね。それよりも、農作業に必要な道具とか、一時期、よく売れたねー」
「道具……?」
首を傾げるミアに店員は思い出すように頭を掻く。
「冬ぐらいだったか。普段は売れる時期じゃない時にね……えらく身なりの良い中年の男性だったよ」
栽培の為に備えていたという事だろうか。肥料の類は自前で揃えられても道具はそう簡単にはいかない。
身なりの良い中年男性……報告書にあったフォーゲンという人物の可能性は高い。
(……師匠ではなさそうですね)
そんな事を思いながら、ミアは店から出るのであった。
●
「出荷とか生活の事を考えると、森の奥にひっそりとっていうのは考えにくいのよね」
シャトン・アルジェントが告げた推測に、行商人は頷いて同意していた。
街から離れた森の中で大勢の人が働くとしたら、インフラが課題になるからだ。
「街の郊外に幾つか農場がありますが……以前、通行できたはずなのに、ここ半年位前から通れなくなった道が幾つかあるんですよ」
「急に通れなくなるものなの?」
その質問に行商人は両肩を竦めた。
街から街に移動している行商人にとって道は生命線だ。同時期に何本も通れなくなるのは不自然なのだろう。
「隠れて何かを栽培する農場があるとしたら、きっと、郊外のいずこかと思いますよ。ただ、広いので、何か目星があればとは思いますけど」
「目星……ね」
仲間達が集めた情報を元にして、行ってみるしかないだろう。
おおよその方角。人の背丈ほどの花。そして、封鎖された道――目的の場所に辿り着けるかもしれないのだから。
●
エミリア・シバは持ち前の容姿と技術を活かし、夜の街で情報を集めていた。
釣れたのは以前、街の衛兵をしていたという用心棒だった。
「この街で働くつもりなら、あれだ……昔の事は知っておかなきゃ……な……」
相当、酔っぱらって今にも寝てしまいそうな男の背を摩るエミリア。
情報を引き出す前に寝られてしまっても困る。
「3年ぐらい経つか? ……火事でさ、領主の館が燃えちまって……残ったのは、箱入り娘が居た塔だけさ……」
「塔?」
「街の中央の塔さ。先代領主は、娘を溺愛していたからな……誕生日祝いとか毎月あったんだ……ぜ……あー……あと、この街の……温泉。領地のはずれ……」
何か言い残しながらスゥーと寝息を立てる男。
苦笑を浮かべながら、エミリアは男の羽織物を掛けると、カウンターに代金を残し立ち上がるのであった。
●
「あぁ、そう? 好きにしていいわ?」
リロ・ルエファナータ子爵の想定通りの応え。
領地内での活動についてルベア・ベルニは事前に伝えておこうと思ったのだが、返って来た答えがこれだ。暗君との噂は本物のようだ。
「他になにか?」
「フォーゲンという男を、そして、その男がここで何をしているのか知っているか?」
「フォーゲンは知っているけど、ここで何をしているのかは知らないわ?」
大きな欠伸と共に答える子爵。
ルベアはそんな子爵の様子を注意深く観察していた。
質問の答えは嘘を言っているようには思えない。素直といえば素直だろう。
「あ……そうそう。冒険者に構うなってフォーゲンに言われたから、お茶も用意しないのよ? フフフ」
その笑顔は無邪気過ぎて――まるで、悪気のない赤子のようだ。
人が大きくなっていく過程で、本来、身についているはずの何かが、「欠落」している……そんな雰囲気をルベアは感じたのであった。
●
街から南西に伸びる閉鎖された道を進む冒険者達。背丈ほどの花畑も所々に広がっている。
その行く手を塞ぐように、一団が陣取っていた。いや、むしろ、待っていた……そんな風に感じられる。
「何だか、上手く行き過ぎている気がするのよね……」
ルベアが数歩前に進んで短剣を構えた。
農場を燃やす事まで読まれて、ただ、掌の上で転がされているような、そんな気がしていたのだ。
待ち構えていた一団の数は冒険者達よりも多い。エリザは弓を手にしたまま見知った男に向かって告げる。
「組織は、街での調査の時、横やりを入れて来なかった。その上で、農場の焼き払いの前、この段になって姿を見せた意図はなんだ、フォーゲン」
「我々は彼らの想いを手助けしているだけだと」
フォーゲンは戦うつもりがないのか、一団の後ろでただ立っているだけだ。
冒険者の方にジリジリと獲物を構えて迫る連中の内、最前線に立つのは身なりが悪い一般人のようにも見える。
「彼ら……が、そうなのか?」
ここに来て、エリザは確信した。
フォーゲンと組織が『我々』であり、『彼ら』とは、今まさに自分に向かって迫ってくる者達だと。後ろからミアが、せんせいがどうのこうの言っているが確認している場合ではない。
迎え撃つ形でベルクが前に進み出た。
「なるほど……承允された……新天地に連れていかれた者達が『彼ら』なのか」
「だとしたら、分かるだろう。私が何を望んで此処にいるのか」
冒険者が『彼ら』と戦う事を。
そこに組織の目的があるのだろう。
構えた短剣ごしに敵を警戒しつつ、ルベアはフォーゲンを見つめた。
「貴方が黒幕なんて三流の茶番じゃないでしょ……神実の香りだって、ただの手段でしかないんじゃない?」
「『香り』は我々が及ぶところではない」
「なら、欠けている事を抱えた貴方達は、どこに向かって何をしようとしているの? 貴方を先導しているのは誰なの?」
その質問にフォーゲンは、ほんの僅かな一瞬、瞳を閉じた。
しかし、すぐさまに目を見開く。折れる事のない強い意志を感じさせる瞳の光。
「欠けたものが満たされる事はない故に……欠けたものを宿したまま、我々は進むだけだ」
戦闘の合図のように手を挙げるが、それが振り下ろされるよりも先にエミリアの声が響いた。
「一つだけ聞いてみたいの!」
懇願するような台詞にフォーゲンは視線だけを向けて続きを促す。
「貴方達は欠けてしまったモノの代わりに、怒りや憎しみ、悲しみとか……色んな想いを持って、動いてると思うのだけれど……貴方達と『同じ』人を作ってしまっている事を……」
そこで一区切りして、粗末な農具を手にして迫る身なりの悪い者達を見渡してから続けた。
「……作戦に必要だからという事を除いたら、どう思っているのかしら?」
「それすらも我々が満たそう。満たされる事の無い、この世界に代わり!」
振り落とした腕が合図となって、戦闘が開始された。
直後、戦場を突き抜けるような一矢がフォーゲンに向かって飛翔する。
不意打ち、それも、狙い澄ました強烈な一撃は、間違いなく、フォーゲンを貫いた。
どさりと無言で地面に倒れ――その事態に残った敵共が怒り狂った様子でがむしゃらに突撃してくる。
「真正面からやり合うの、あたしの趣味じゃないのよね」
矢を放ったのはシャトンだった。
次の矢が装填されたのを確認しつつ、射撃位置を変える為、地面を転がるように移動する。
一行から離れ、隠れて移動していたので、敵からはまだ見つかっていない。
「授恵者がいるのなら、まずは回復役から」
明らかに武器だと分かる物を持つ敵が5人。授恵者のスキルは武器に依存する所が大きい。
武器の形状から相手がどんなクラスなのか、おおよそ推測できた。
「……流石に警戒されるよね」
それなりの手練れだろうか。狙われないように位置を目まぐるしく変える敵の授恵者。
それでも当てなければいけないのが、擲人というものだ。
一方、農具を手にした一般人のような者達が押し寄せた最前線は乱戦気味となっていた。
「俺達の新天地を奪うなぁ!」
『承允』された者達は命を捨てる覚悟で突撃してくる。
エリザは盾で攻撃を受け止めると距離を取るように下がり、ベルクが割って入る。
真っ先に敵の授恵者を相手にしたい所だが、農場承允が邪魔をしているのだ。
「下がれ!」
「お前達さえいなければ! 俺達はここでずっと!」
突き出された二股のフォークを、腰を落とし、短剣で受け流すと潜るような姿勢で農場承允を足元から撫で斬る。
深手を負わせた所で蹴り飛ばすと左右から迫る農場承允の突進を高く跳躍して避けた。
「ここで戦わせる事も、狙いなんだな」
呟きつつ、素早く短剣を繰り出して、次々に農場承允共を倒していく。
その隙を狙われ、農場幹部が承允を巻き込んで大剣を振り回した。
避け切れない――が、直撃を受ける瞬間、身体を淡い透明な光が覆う。ミアが防御力を上げる術を行使したのだ。
回復役が居ると認識した農場承允が戦線を突破してミアに迫る。
「申し訳ないけれど、あなたがたや神実を放っておくわけにはいかないんです」
「だったら、お前が死ねぇ!」
「それより、一緒にレモ……わぁ!?」
続けようとした台詞は敵の授恵者が放ってきた強力な矢の一撃で途切れる。
当たらなかったのは、運が良かったからだ。半歩ズレていたら、直撃していた。
「待って! レモンをね、唐揚げに……っ!」
あくまでも香り爽やかなレモンの話を続けるミアとそれを狙う擲人。しかし、次の矢が放たれる事はなかった。
敵の包囲を突破したエミリアが一気に迫って打ち倒したからだ。
「ミアちゃんとエリザちゃんは後ろに!」
後衛から狙われるのは授恵者同士の戦いではやむを得ない所だろう。
数の差では冒険者達が圧倒的に不利であったが、逆に、その不利で救われる形となった。
近接職は接敵しなければ攻撃手段が少なくなるからだ。冒険者達の周囲を先に農場承允共が包囲したせいで、敵側は本来の力を発揮できないのだ。
その隙に、シャトンの狙撃が次々に農場幹部に突き刺さる。乱戦の中、どこからか飛んでくる必殺の矢。その存在だけでも牽制になるし、味方にとっては頼もしい限りだ。
農場承允の雑な攻撃を、ヒラリと回転して避けつつ、敵の術師に向かって矢を放つエリザ。
「今だっ!」
惜しくも避けられてしまったが、エリザが放ったのは囮。
合わせるように乱戦から抜け出したルベアが瞬時に迫ると刃を突き立てた。
「このまま一気に制圧するわ!」
意気込むルベア。
もはや、戦闘の趨勢は決しただろう。授恵者を半分以上討たれ、敵は浮足立っている。
「フォーゲン! 貴様っ!」
ベルクの声が響いた。戦闘開始直後に狙撃の直撃を受けたフォーゲンがいつの間に、道外れの丘の上へと移動していたのだ。
恐らく、農場承允が突撃してきた乱戦の中、気が付かれない内に離脱していたのだろう。
「これで良い。冒険者達は英雄。その英雄が、手を汚さなければならない承允に正義の鉄槌を下す――この事実こそが、な」
「最初から、それが目的だったのか!」
エリザが放った矢をフォーゲンは見切った様子でスッと避ける。
直撃を受けて倒れたのは演技だったようだ。胸に刺さった矢に、痛みなど感じないような身振りを魅せて冒険者達に告げる。
「英雄達よ、またいずこかで逢おう」
そう言い残して、素早く踵を返すと花畑の中へと消えていった。
追跡しようも残敵共に邪魔され、全てが片付いた時には、既にフォーゲンの姿はどこにもなかったのである。
●
敵の生き残りを捕縛した所で、騒ぎを聞きつけたのか衛兵達がやって来た。
冒険者達は王国騎士からの正式な依頼である事を告げ、禁制品を扱った罪で捕縛した連中を衛兵達が連れ去っていく。
「……ここまで、筋書き通りだったという事か」
エリザの言葉にベルクは頷いた。
冒険者達が農場の焼き払いに訪れる事。そこで承允と戦う事も。
「承允と言っても、蓋を開ければ奴隷のような存在だよな」
新天地と言って連れてこられたのだろう。
外との接触を断たれ、栽培農場で隔離されているようだ。そうでなければ、街で多くの承允と出逢ったはずだ。
農場承允を斬った感触が残る手を見つめるルベアが呟く。
「私達は、欠けて故に行き先を失った彼らの……結束を強めさせてしまったのか」
「フォーゲンが『事実だけ』を、世間の情報から隔離された彼らに伝えるのなら、ね」
立ち去った方角を眺めながらエミリアが応える。
だからこそ、冒険者達が戦う所を直に見に来たのであろう。シャトンが放った一撃も、最初から予測していたものかもしれない。
シャトンは自分の武器を仕舞いながら言った。
「農場を焼き払っても、これで終わらないわよね」
何より、フォーゲンが言ったのだ。また逢おう……と。
仲間を回復しつつ彼女の台詞に同意するミア。
「嫌な予感がします……本当に、これで終わりでは無いような。そんな気が……」
その時、吹き抜けた風が、禁制品か、あるいは花畑の甘い香りを運んできて一行を包んだ。
いつか、再び対峙する事になる――冒険者達はそう思いながら、焼き払うべき『神実の香り』を栽培する農場に向かうのであった。
マスターコメント
ショートシナリオ難しい 報酬:多い6 / 4〜6人
2021年08月05日 21時27分08秒 公開
相談掲示板
こん…にち、は。 ヒーラーの、ミア=リゼルと申します。よろしくお願いします。 ひとまず…今までの報告書を読んできます、ね。 取り急ぎご挨拶のみ…失礼、いたします。
シーフのエミリアよ、今回もよろしくね。 んー、おねえさんはいつもの通り、匂いを中心にそっち系の店とかでの情報集めをしようかしらねぇ。 フォーゲンちゃんとは、どうしようかしらねぇ、少しお話してみたくはあるけれど……。
シーフのルベアよ、宜しく。 領地のことは領主に尋ねるのが一番、とは思うけど。 子爵は実のことは知らないっていうし、そもそも暗君って評されるくらいだからまともに治める気も多分ないのよね……。 子爵に謁見するなら、フォーゲンという男を知っているか、知っているなら領地内で彼に自由にさせている土地がないか、っていう切り口かな、って今の時点では思ってる。
状況を把握しました…なるほど、です。 フォーゲンさんは師匠……ではなさそうですね。おじいちゃんではないので… いえ、会ってみて確認したいところではありますが… フォーゲンさんの聞き込みと、あとは…街で一番高い場所を聞き込んで、農場を探してみるつもりです。
…あっ、普通隠されていますよね…高いところから見るのは、考え直して…肥料や土を扱っている業者さんに聞き込んでみることにします。
エルフのエリザだ。 毎度毎度の――と言いたいところだが、一部初めましての人もいるみたいだからよろしく頼むよ。 今回はあっさり書かれているようだが、なかなかやる事が多いね。 ・ファナータの街における農場の位置その他に関する聞き込み(必須) ・農場の焼き払いを妨害しにくるフォーゲン一味への対応 ・農場の焼き払い&幹部その他との戦闘 ・ルエファナータ子爵およびフォーゲンとの会話(希望者) この辺りかね。 農場を見つけきれなければその時点で終了だから、まずはここを6人で確実に抑えていく必要がありそうだ。 戦闘が2回発生するとのことだし、情報収集後は全員で合流して農場へ向かった方がよいだろうね。 連戦の後半に授恵者5人相手ということもある。 純戦依頼の心持ちでプレイングを抑えておいた方が良さそうだ。
←はじめましての人 よろしくお願いします…(いそいそ 気づいて読み直したのですが…撤退するのはフォーゲンさんだけ、でしたね。一味の方とはやりあうことになる、と… 焼き払いは自動で処理されるらしいので、エリザさんのおっしゃる通り戦闘はおそらく2回…? せめて1回は戦闘を回避するか、罠や奇襲などで即座に無力化したいところですが… いずれもこちらから向かっていく必要がある以上待ち伏せは使えませんし、でもシーフやシューターさんが揃い踏みなので、道中は囮を立てて隠蔽状態で後背から突く…くらいなら…?
少し顔出しが遅れたわね。 シャトン・アルジェントよ、よろしく。 そうね、暗君とはいっても一応「どこかの畑が焼けるかもしれない」という事は伝えた方がいいかもしれないわね。 あたしは町に出入りする商人に街道沿いに新しく出来た畑が無いか聞いてみようと思うわ。 商品の出荷を考えるに森の奥にこっそり畑を作ってるって事はないと思うのよね。
顔出しが遅れて申し訳ない シーフのベルクだ。よろしく頼む。 とりあえず農場の捜索と領主への事前の面通し。 農場の場所を特定したら強襲して戦闘。 ということでいいのだろうか?
>ベルク・シャトン 間に合ったようで何よりだ。 >ルエファナータ子爵への事前の面通し これは希望者がいれば、というところだと理解しているんだけどね? 自分の領地を燃やされると聞いて、黙っている領主もあまりいないんじゃないか。 とはいえフォーゲンと繋がりがあるのは(PL情報としては)確からしいから、事前に様子を窺っておくのは今後の事を考えればマイナスにはならない気がするね。
>子爵への面通し 希望者、いる? 調査する方向も考えてないことはないけど、誰も希望がないなら私いこうかな。 >戦闘 そういえば戦闘、あるのよね。 ……フォーゲン一味って言ってる方はよく分からないけど、 農場幹部は授恵者だし、一応対策は練っておいた方がいいかな。 といってもこちらはシーフ3人、シューター2人、ヒーラーだから、 ちょっと分担を考える必要はありそうだけど……。 個人的にはキャスターとヒーラーは先に落としておきたいな、っていうふうには思ってる。 ウォーリアがカバリングに入りそうな気もするけど、そこは手数勝負かしら。
>戦闘 あたしは物陰に隠れて長距離から【見えない死神】で撃とうと思うわ。 屋外に藪とか茂みがあればそういう場所に潜んで伏せ撃ちって感じになるわね。 相手に認識されない状態での攻撃ならウォーリアもカバーしにくいし避けにくいからね。 その場合、優先順位はヒーラー>キャスター>ウォーリア>シーフって感じを予定してるわ。
>戦闘 レベルが足りず…光縛封で分断や、サークルプロテクションで底上げ…ができないので、2回の戦闘どちらにおいても、サイドヒール/ヒール/堅甲でのサポートになるかと思います。 装備を整え、自分に堅甲をかけて肉壁囮も考えています。が、もっともLV1なので稼げる時間は1ラウンド、授恵者相手では即落ちが懸念されるので囮をやるとしたら1回目の戦闘で、ですね…
>子爵への面通し フォーゲンちゃんに協力してるってことは、領主にも何かが欠けたことがあるのかしら、って思っているので。 おねえさんは、それについては調べる予定だけど、直接領主に会おうという気は現状はないわねぇ。 >戦闘 今回はフォーゲンちゃんと少し話してみたいので、残念ながらこちらでは奇襲とかはできないかも。 農場のほうは、うーん敵の強さってどのくらいなのかしらねぇ、過去のほかの農場だとどのくらいだったのかしら? おねえさん的には、天敵のシューターから落としたいのよねぇ なので シューター>ヒーラー>キャスター>ウォーリア>シーフ で狙えたらなって思うのだけれど。
>戦闘 わかりました。では…そうですね、現状の手持ちで可能な限り装備を整えていくこととします。 そうですね…落としやすさでいえば…一般的には防御が一番低いのはキャスター、ついでシーフですので、遠隔DPSを集中攻撃して最初に落とし被ダメージを抑える、というのも手かと。 逆にヒーラーは、回避型でなければウォーリアに次ぐ防御性能を持つため意外としぶとい相手です。 倒してしまえばそれ以上の回復は気絶からの復帰以外にないので、私はキャスター、それから…シューターを狙うのを提案させていただきますね。
プレイング提出。 特にいないみたいだから謁見はさせておいてもらったわ。 戦闘はキャスターを優先狙いにして、その次にヒーラー、シューターのうち余力がない方を狙う感じにしておいた。