密猟者を捕まえろ

影絵 企鵝

コメント 18

シナリオID:1190

オープニング

●現れる密猟者
 オーデンヴァルトの森の中、フリードリヒ・ホーエンバッハは僅かな手勢と共に馬を走らせていた。

 元々は特筆すべき点もないただの森だったが、彼がこの地の政務を任されてからというもの、大陸各地から様々な動物を輸入し育て、貴族や冒険者の愛玩動物として売り出すある種の動物園と化していた。これといって強みのない土地であるオーデンヴァルト領だったが、この施策のおかげで近頃は随分と潤っていた。

 しかし、金の匂いがするようになると、それにつられてこっそりと忍び寄ってくる者が現れるのもまた常である。

 石で舗装された通路を走るうち、フリッツの鼻に段々と血の臭いが引っかかる。隣を走っていた男は顔を顰め、臭いの在処を指さした。
「若様、あっちだ!」
「うむ……」
 フリッツは手綱を引き、獣道へと分け入っていく。間もなく、その正体が露わになった。

 あちこちに散らばる死体。立派な角を持つ雄鹿、色鮮やかな羽根を持つ鸚鵡、銀色の艶やかな毛並みの狐。オーデンヴァルトの森で生まれ育てられてきた動物達が、見るも無惨な姿である。
「またか……」
 フリッツは拳を固めて唸る。密猟者の魔の手が、確実に森を脅かしていた。

●鴉の助け
「……かくかくしかじかというわけだ」

 屋敷の執務室で、フリッツは婚約者(仮)のミネルヴァ・フィーギルにそんな経緯をつらつら話した。

「こちらが兵を挙げれば出て来なくなるが、引くとまた出てくるようになる。いたちごっこだ」

 フリッツは頬杖をついて溜め息を吐く。ミーナは脱いだ羽根帽子をくるくると弄びながら、窓の方へと目を向ける。

「なるほどねえ……でもどうして死体を放っておくのかしら。金儲けがしたいんなら、生きたまま連れ去るか、あるいは死体を持ち帰って剥製にするなり毛皮にするなりでしょうに」
「そうだ。妙なんだ。奴らめ、殺すだけ殺してほったらかしにする。まるで僕に損失を与えるのだけが目的のようだ」
「最近儲かってるもんねえ、フリッツ」

 ミーナは一人合点がいったように頷くと、フリッツの方へくるりと向き直る。

「よし、私も今や冒険者の一員。ギルドにちょっと渡りをつけてあげる。おおっぴらに兵を動かすより、私たちみたいなのがこっそり見張ってた方が捕まえやすいんじゃない?」
「……確かにそれはそうだ。君は見返りが欲しくて仕方がないようなのが気になるけども」

 フリッツが疑るような視線をミーナへ向けると、彼女はいきなりにやっとする。

「当然。手を貸すからにはそれなりのお礼が無いと。具体的にはシャルガネ辺りまで足を伸ばすための路銀が欲しいな」
「シャルガネ! また随分遠くまで足を伸ばすもんだな」
「鴉の弓の噂があるなら征竜の住処にだって行くから」
「そんなバカな……」

 フリッツが頭を抱えると、ミーナはフリッツのデスクに回り込み、いきなり背もたれ越しに抱き着く。

「で! 私の助けはいるの? いらないの? どうなのよフリッツ」
「やめてくれ、鬱陶しい」

 彼は僅かに赤面しながらミーナの事を振り払った。見上げると、彼女は悪戯っぽく目をきらきらさせている。フリッツはやれやれと肩を落とすと、羊皮紙の束を一枚千切り、さらさらと依頼状を書いていく。

「まったく、僕はどうして君の事を好きになってしまったんだろうね」
「……さあ?」

 ぽつりと呟くフリッツに、ミーナは僅かに頬を緩ませるのだった。

●密猟者を捕獲せよ
 そんなこんなで君達はフリードリヒの依頼を受け、彼が暮らす屋敷へと集められた。法服に身を包んだ彼は、君達をぐるりと見渡して静かに口を開く。

「さて、今回貴方達には私の森に入り込む悪辣な密猟者の捕縛をお願いしたいのです。現場に残された死体の傷からして、おそらく多くの敵は弓で武装していることでしょう。遠くから一方的に撃たれることの無いように気を付けてください。今更私から言うことでもないでしょうが」

「そして、密猟者は決して殺すことなくこちらへ全て連れてくるように。彼奴らには聞かねばならないことがたくさんあります。何故私の森を荒らすのか、また、どのような裁きが相応しいか定めるためにも」

 そこまですらすらと言い切った後、彼は口ごもりながら付け足す。

「あと、君達に依頼を斡旋したミネルヴァは、近い将来私の妻になる予定です。聡明な女性ではありますが……リスクよりリターンが大きいと見ればどんなにリスクが大きくても突っ張ってしまうきらいがあります。無茶をし過ぎないように気を掛けておいていただきたい」

「よろしく頼みます」



 そんなわけで、君達は『準備する』と言って一足先に森へと踏み込んでいったミーナの後を追って現場へと向かった。魔法によって馴らされた生き物達は、見慣れぬ君達が森に踏み込んできても、さして警戒心を抱かずただ様子を窺っている。

 君達がそんな動物達を眺めながら歩いていると、ふと一匹のリスが立ち上がって一点をじっと見つめ始めた。そんなリスに釣られるように、他の動物達も一点に目を向け始める。君達はその視線の先を目指して走り出した。



 そのころ、森に踏み込んだ密猟者達の前に一人の冒険者が立ちはだかっていた。

「やいやい! 可愛い可愛い動物達に手を掛けるなんて、酷い事してくれるじゃないの!」

 大樹の枝に立って啖呵を切るミーナに、密猟者達は慌てて弓を構える。

「何者だ!」
「わからないなら教えてあげる!」

 ミーナは懐から何枚も木札を取り出すと、密猟者目掛けて投げつける。そこにはフィーギル家の紋章が焼き付けられていた。

「森の守る鴉、ミネルヴァ・フィーギル!」

 両手の指で鳥の爪を象り、翼を広げるようなポーズをとると、そのまま彼女は枝から飛び出した。密猟者が矢を射かけようとした時、彼女は足元にエーテルを纏わせ、眼にも止まらぬ速さで密猟者達の頭上を飛び抜けた。外れた矢は明後日の方角へ飛んでいく。彼女は壁歩きですいすいと木の上に昇り、また枝の上から密猟者達を挑発する。

「こっちこっち! あんた達の弓は可愛いペットしか狙えないの?」
「……そのふざけた口を利いた事、後悔するぞ!」

 ミーナは木々を飛び移りながら、放たれる矢を躱す。ちらりと動いた視線は、戦場へと駆け付けている君達の姿を捉えていた。

「……後悔するのはどっちかしらね?」

 密猟者達がミーナに気を取られている間に、君達は勝利のために動き出した。

解説

メイン 密猟者を全て捕縛する EMEMY 密猟者の群れ×15  オーデンヴァルト領の森に入り込み、そこで飼育されている生き物を狩る悪辣な密猟者。確実に捕まえよう。 ・クラス  一般密猟者×8、シューター×5、ヒーラー×2 ・使用武器  密猟者…弓、短剣  シューター…弓  ヒーラー…弓、杖 ・使用スキル(授恵者限定)  回復スキル、バフデバフ系スキル NPC ミネルヴァ・フィーギル(ミーナ)  婚約者にもいろいろ容赦がないお嬢様。天真爛漫に振舞っているようで、実際にはかなり計算高く、したたかなところがある。 ・クラス  シーフ LV10 ・スキル  壁歩き ハイディング  エアーライド 疾風足  バランス感覚 未来に生きている ・行動方針  空戦重視  空を飛び回って敵の戦線を掻き乱す事を重視する。 (最終ダメージ半減、移動したヘクス内の敵PCの命中を下げる。) フリードリヒ・ホーエンバッハ(フリッツ)  依頼者。婚約者に振り回されるところはどこか情けないが、領主としては奇妙な才覚を持っている。 ・汎用スキル  政治知識 未来に生きている ・志向  法の支配:国の支配者に相応しいのは王党派でも貴族派でもなく、ただ一つの法である。 FIELD 森林  オーデンヴァルト領の二割ほどを占める巨大な森。ここでは魔法によって馴化された動物達が飼育され、来客を楽しませたり、また愛玩動物として売りに出されたりしている。 ・広さ  とにかく広い。 ・障害物  太い木々が並んでおり、飛び道具を躱す盾に出来る。  きっちり間伐が行われているため、見通しはよい。 ・特徴  土地は平坦。近頃は天候も良好であったため、地面に脚が取られる事は無い。 ・開始状況  フィールドの中央にミーナが位置し、それを取り囲むように密猟者たちが立っている。  動物が戦場に紛れ込んでくる可能性がある。 TIPS ・ミーナのエアーライドが残っている間はZOCを無視して強力なサポートを行ってくれるが、長期戦になると息切れしてしまうため注意。 ・密猟者は機会があれば逃げ出そうとする。 ・(PL情報)密猟者の中には、ただの賊とは思えない丈夫な装備を身に付けている者がいる。見た目には傷だらけのためそうとは気づきにくいが…… ・(PL情報)勝利後にねだれば一匹くらいペットをくれるかもしれない。ただしゴリラは飼ってない。

マスターより

こんにちは。影絵企鵝です。 ミーナの第二戦です。前回は捕虜の防衛でしたが今回は逃げようとする敵を如何に戦場に繋ぐかが大事です。 ミーナの未来に生きているはほぼエントリー芸するだけのものですが、フリッツの方は割と本気だったり。それがアニエピカ世界にマッチしているかは神のみぞ知るところですが。 ペットについてはフレーバーみたいなものだと思ってください。実際にアイテムをプレゼントするわけではないです。 ではよろしくお願いします。

リプレイ

●囲いを閉じろ
 密猟者達はミネルヴァに気を取られている。リリリリスはその隙に森を全速力で走り抜け、戦場へと舞い込んだ。
「不届き者達、こちらですわよ!」
 彼女は朗々と密猟者達目掛けて叫んだ。彼女の派手な装いと振る舞いに、密猟者は嫌でも目を引かれる。
「さあ、私を倒せないようでは逃げおおせる事も出来なくてよ!」
「おのれ女め、そこをどけ!」
 リリリリスの気迫とエーテルに意識を奪われた密猟者は、脚を止めて弓を引く。しかし、弦から指が離れぬうちに、大樹に茂る葉の中からベアトリーチェ・カロッサがいきなり飛び出してきた。
「こっちよ、ばーか!」
 彼女もまた足元にエーテルを纏わせて飛び、頭上から密猟者達を挑発する。
「やーい! アタシに当てられるもんなら当ててみなさいよーだ!」
「こいつ……!」
 密猟者達が次々に矢を射かけるが、ベアトは風に吹かれる木の葉のようにひらひらと躱し、そのまま軽やかに地面へ降り立つ。
「アタシも加勢するよ、ミーナ!」
「了解! よろしく!」
 ベアトとミーナは息を合わせ、密猟者達の周りを駆け回って牽制する。的が二つになって、敵の動きにも迷いが増える。バンビはそんな敵と味方の様子をじっと観察していた。
「ミーナ様ったらあんなに走り回って……息切れしないのかしら」
 四方八方に飛び回るミーナへ一抹の心配を抱きつつ、バンビは魔導書片手にこっそりと間合いを詰めていく。最初はベアトやリリリリスの挑発に乗っていた密猟者達だったが、そのうち付き合うだけ無駄だと思ったか、足並み揃えて逃げ出そうとする。
「おやおや。もう逃げてしまうつもりなのですわね」
 バンビは魔導書の文字を撫でると、稲光の渦を密猟者達の目の前に作り出す。咄嗟に彼らが足を止めたところに、バンビはぱたぱた走って彼らの前に姿を晒す。
「ですがご生憎。逃がしたりはしないのですわ」
 密猟者はフードを目深に被っていたが、口元ははっきりと歪んでいた。
「構うな。相手は少数に過ぎない。敵のいないところから逃げればよい」
 杖を構えた男が叫ぶと、密猟者達は牽制の矢を放ちながらまた別の方角へ逃げようとする。バーネット・フォーサイスは木陰から飛び出し、駆け込んでくる密猟者達に向かって大量の光の粒をばら撒いた。質量を持つ光は密猟者達の足下に纏わりつき、彼らを纏めて足止めする。
「へえ、お前が指図役ってわけだ。じゃあお前をぶっ飛ばせば話が早そうだな?」
 バーネットが不敵に笑う。杖の男はじりじりと杖を握りしめ、周囲に向かって叫んだ。
「陣を組め。抜け出す隙を窺え」
 密猟者達が必死に周囲を窺う間に、イズレンディル・パラリムはエーテルを拡散して天の視界を作り出した。ヒーラーと思しき男二人が前に乗り出し、方陣を組んだ密猟者があちらこちらに矢を放っている。
「慣れた戦い方ですね。やはりただの盗賊の類ではなさそうです」
 イズは木陰から身を乗り出すと、素早く光の弾幕を放つ。密猟者達はぱっと散らばった。その一部を捉え、リリリリスが短剣を胸の前に構えて押し寄せる。
「逃がしませんわよ! お縄につきなさい!」
「ちっ」
 敵は一斉に矢を放つ。彼女はその矢をまともに受け、くらりとその場に崩れ落ちる。もちろん、敵を引き付けるための演技である。
「くっ、このままでは……」
「……ふん」
 男は鼻を鳴らすと、踵を返して逃げ出す。リリリリスは慌てて立ち上がり、その後を追いかけた。
「あ、待ちなさい! 演技とは難しい……」

 冒険者と密猟者が争い合う様子を、キリアン・フィッツジェラルドとアウレーリア・フォン・ネーベルベルクはじっと窺っていた。
「愛玩動物として売りに出されるほどの価値があるなら、当然剥製にしても好事家に売れるはずです。そうしないのは……」
「これは警告よ。もしくは見せしめ。お金が欲しいのなら言う通りにすればいい。損失を与えたければ、こっそり森に火でも放てばいい。わざわざ動物を殺して回るのは、そこに含みがあるからよ」
「いずれにせよ、事が終われば供養の一つもしたいところですね」
 二人は一斉に動き出す。木々の影に紛れながら走り、キリアンは弓を引く。彼の持つ鷹の眼は敵の動きを具に捉え、脚を止める瞬間を見逃さない。一息で弓を引き絞った彼は、一人の密猟者の足下を狙って矢を射かけた。くるぶしを的確に射貫かれた男は、その場にがっくりと崩れ落ちた。立ち上がることもままならず、ひいひい言って転げ回る。杖を持った密猟者はそんな彼に杖を掲げ、その傷をあっという間に癒した。
 アウレーリアはそんな癒し手をじっと見つめる。よく訓練され、彼だけ纏う空気が違う。まるで貴族に仕える騎士のようだ。
(狙うべきは、あのヒーラーね)
 彼女は杖を振るうと、次々に木々の狭間を埋めるように鉄の壁を作り出し、彼らの逃げ道を塞いでいく。杖を握る密猟者は、アウレーリアが埋めきれなかった一つの穴を見つけ、仲間達をそこへ導き走り出す。
 しかし、密猟者達が見つけた穴は冒険者達の作り出したまやかしの穴だった。木陰から飛び出したコルネリウス・アーラは、大剣にエーテルを纏わせ大きく振るう。
「逃がしませんよ!」
 コルネが刃を地面へ突き立てた瞬間、エーテルが彼らの足を縛り付ける。
「おのれ!」
 密猟者の一人が、長い杖を突き出してくる。コルネは盾で受け流すと、余勢を駆って大剣を振り抜いた。密猟者達はその場でひっくり返る。
「さっすがー!」
 枝の上に立ったミーナが囃し立てる。コルネは彼女を一瞥すると、素早く大剣を構え直す。
「ミーナさん、無茶はなさらないでくださいね?」
「了解!」
 ミーナは頷くと、再び樹上から飛び出した。密猟者達は頭上を襲われ、咄嗟に頭を庇う。密猟者達の動きが止まっている間に、イズが素早く魔弓を引き、自身の周りに光の球を幾つも作り出す。
「大人しく捕まっていただきますよ。貴方達には聞かなければいけないことがあります」
 引き絞った弦を放ち、周囲の光球を次々に飛ばす。杖を手にした密猟者は光を喰らいながらも立ち上がり、周囲に癒しの光を放って密猟者達の傷を癒す。
「貴様らに語る口は持ち合わせていない」

●密猟者は逃がさない
 冒険者達に周囲を取り囲まれ、密猟者の群れは必死に矢を放ち続けていた。バンビは大量の光球を頭上に浮かべると、彼らの足元目掛け、低い射角で撃ち放った。光の球は敵の脚や下腹部に突き刺さり、二人が悶絶して倒れ込んだ。
「人事は尽くしました。後は勝つだけですわ」
「怯むな。攻撃を集中させろ!」
 敵は弓を構え、バンビ目掛けて次々に矢を放つ。彼女はさっさと木陰に隠れ、入れ替わるように姿を見せたバーネットがさらに光の球をばら撒き、さらに密猟者を一人打ち倒した。倒した敵が目を覚まさないうちに、彼はさらに光の縄を放ってその身体を縛り上げる。
「観念しな。今日はお前達が狩られる番だぜ」
「散らばれ! 固まったら纏めて狩られる!」
 一人が叫び、矢を放ちながら囲いの外を目指して走り出す。リリリリスは盾を頭上に構えて矢を弾くと、木の幹を蹴りつけて高く跳び、その背後へ回り込んだ。
「さあ刮目あれ、私の華麗な剣裁きを魅せて差し上げますわ!」
 短剣を逆手に持ち替えると、振り返った男の鳩尾を柄頭で鋭く突く。怯んだ隙に、彼女は盾の正面で男の顎に突き上げを喰らわせた。顎を揺すられ、男は力なく弓を取り落とす。
「他愛もありませんわね」
 彼女は弓を折ると、その弦で男の足を縛り付けた。

 四人の密猟者が散開しながら矢を放つ。キリアンが木陰に身体を引っ込め矢を躱すと、敵はそこを突破しようと突っ込んでくる。
「僕の得物が弓だから、突破しやすいとでも?」
 キリアンは木陰から身を乗り出すと、敵の振るう短剣を左手の小盾で受け流し、弓の鳥打で首筋を殴りつける。鋼で補強された一撃は中々強烈だ。息を詰まらせ、一人がどさりと倒れ込んだ。取り巻きは慌てて彼から間合いを取り、そのまま囲いを逃れようとする。
 ベアトは、大樹の枝からそんな敵の様子を窺っていた。エルフを隠すなら森の中、密猟者の誰もが彼女のことなど忘れかけていた。
「逃げようったって、そうはいかないんだから!」
 ベアトは高らかに叫ぶと、枝にぶら下がって勢いをつけ、先頭を走る男に思い切り飛び蹴りを見舞った。流れるように連撃を見舞い、男の意識をそのまま吹き飛ばす。
「さあ、そろそろ神妙にお縄へつきなさい!」

「くそっ! こんな目に遭うなんて聞いてねえ!」
 男が一人、仲間には構わず逃げ出そうとする。気付いたコルネはエーテルを纏って突撃し、その襟を鷲掴みにする。
「捕まえましたよ!」
「おい、離せ!」
「離しません。いたずらに生物の命を奪うことなど許されませんよ」
 厳然と言い放つと、額に一撃浴びせて気絶させる。ロープで腕と足を素早く纏めながら、コルネは敵の弓をじっと窺う。安物だ。
「イズさん! そちらはどうです?」
「ええ、今確かめる所です」
 イズは短杖をベルトから引き抜くと、地面にエーテルを放って鉄の壁を作り出す。彼の先を走っていた密猟者が思わず足を止めると、イズは弓を一杯に引き絞る。密猟者は舌打ちすると、彼もまた弓を構えた。
 ひゅっと二本の矢が放たれる。イズの矢は風を受けて加速し、密猟者の矢を跳ね除け、その肩に鋭く突き刺さった。
「ぐあっ」
 崩れ落ちる密猟者。イズは素早く駆け寄り、光の縄で敵を縛り上げる。そばに転がる弓は、一等品とは言わないまでも、丁寧に手入れが施されていた。

 仲間が次々に地面へ転がされ、もはや残るは杖を構えるヒーラーが一人。アウレーリアは杖の先に光の球を浮かべながら、ヒーラーへじりじりと迫った。
「観念なさい。もう貴方しか残っていないわ」
 ヒーラーは杖を構えたまま動かない。アウレーリアは杖を振るって光の球を飛ばし、その鳩尾に直撃させる。回復を重ねて彼女の攻勢を耐え忍んできたヒーラーも、ついに限界を迎えた。がっくりと膝をつき、そのまま地面に倒れ込む。
「見上げた忠誠心ね」
 ぽつりと吐き捨てると、アウレーリアはもう一つ杖を振るって男を光の縄で縛り上げる。男は僅かに身を捩り、力なく呟いた。
「ヘーゼル伯の小倅め……」

 かくして、冒険者達は密猟者を全て取り押さえる事に成功したのである。

●机の下の蹴り合い
 冒険者達の活躍によって捕縛された密猟者の一団は、一人一人牢屋の中へと突っ込まれた。コルネは一人が身に付けていた革の胸当てを手に、牢屋の前まで詰め寄る。
「この革鎧、表面こそ傷だらけですが、革を何重にも重ねて作ったかなり立派なものです。誰かから貰ったんですか?」
 彼女は洞窟を観察するように、男の眼をじっと覗き込む。黙りっぱなしだが、ほんの僅かに目が動いた。バーネットはそんな男の手を掴み、心を読みながらさらに尋問を展開する。
「お前は何者だ? 盗賊か? 傭兵か?」
 上目遣いで小馬鹿にするように言ってやると、男の心が怒りへ振れた。“本職”ならこんな怒り方はしない。バーネットはにやりと笑う。
「って言われるのは、プライドが許さないってわけだ」
 バーネットは手を離すと、フリッツへと向き直る。
「子爵様、こいつらはどこかに仕える兵士で間違いないですな」
「やはり」
 フリッツが納得ずくで頷くと、バンビは目を丸くした。
「あら子爵様、気付いていたのですわね」
「予想はつくことです」
 彼の話を聞いていたベアトは、いきなり牢屋の鉄格子を思い切り靴の裏で蹴りつけた。鈍い音が響き渡り、その音で脅しつけながらベアトは兵士に尋ねた。
「やいやい、アンタ達の主って、グから始まる人なんじゃないの?」
「グランツ伯ではないですね」
「え?」
 思わぬところから反論が飛んできて、ベアトは思わずずっこける。
「彼もまた盗賊と同じ。彼なら動物の死体を置き去りにはさせませんよ」
「じゃあ、他に心当たりはあるんですか?」
 ベアトが尋ねると、子爵は眉を顰めて頷き、窓から森をじっと見遣る。
「……あの森は元々、モデナ男爵の家門が断絶した時、先々代のヘーゼル伯とザイン伯が土地の帰属を巡って争い、国王の調停の下で切り分けられた土地なのです。勝者となったザイン伯は豊かな田園地帯を、敗れた我々は貧しい森を与えられました」
「でも、向こうにすれば森も己の領域になるはずの土地であったから、そこから利益を得る子爵の方策は容認できない、と」
 キリアンがフリッツから言葉を引き取ると、フリッツは窓の向こうを見つめたまま頷く。
「ええ。困ったものです。気に入らぬことがあるならこの沙汰を定めた王に言えばよいものを」
 肩を縮めると、彼はふと振り返る。
「そういえば、ミネルヴァの姿を見ていませんか?」

 その頃、当のミーナは兵舎の尋問室に詰め込まれていた。彼女が向かう机の上には、アウレーリアが拾い集めてきた紋章札が丁寧に並べられている。
「ばか。本名名乗って紋章ばら撒く人がどこにいるんですか」
「ここにいますよ」
 ミーナが減らず口を叩くと、アウレーリアは彼女の額をぴしゃりとやる。
「一人の領主の婚約者として不用心過ぎます。貴方を人質にして脅迫したら、彼も冷静ではいられないでしょう。他所では攫われたついでに辱めを受けたような者もおります。注意なさい」
 フリッツの話を持ち出され、ミーナは少ししゅんとした。イズも机に手を置き、じっとミーナの顔を覗き込む。
「貴方にとっては勝手知ったる森だったのかもしれませんが、それでも突出するのはよろしくありません。ネーベルベルクさんの言う通り、敵の手に落ちていた可能性もありますし……事前に方針を合わせて動くようにしてもらえませんか」
「はい」
「そもそも、ギルドにいる間は正体を伏せるようになさい。活動向きの偽名と印も一緒に考えますから」
 悄然としていたミーナだったが、アウレーリアの言葉には首を振る。
「……それは出来ません。私が私として派手にやっているのは、家の名前を知らしめるためですから。これくらいしないと、誰も零細家門なんて気にも留めません」
「貴女ねえ。別にそれを兄や婚約者に頼まれたわけでもないのでしょうに」
 アウレーリアがしかめっ面をすると、横で聞いていたリリリリスが軽く割って入る。
「まあまあ、私も名誉を得たいという気持ちはわかりましてよ。名誉を失った貴族は借金さえ出来なくなりますもの」
 ミーナはこくりと頷き立ち上がる。
「そういうことです。……しかし、世話になっている方の気を揉ませるのも本意ではありませんから、普段については身分を隠すことにします。寝込みを襲われるのは私も嫌なので」
 顔立ちこそ少女らしいミーナだったが、その眼には頑固な光が宿っていた。アウレーリアは深々と溜め息をつく。
「……君子危うきに近寄らずよ。とにかく気を付けなさい」
「はい。わかっています」



 密猟者をつかまえろ おわり

マスターコメント

皆さんご参加ありがとうございました。 丁寧な包囲網により敵も逃げられることなく、ついでにミーナの負担もほとんどなかったので成功となりました。後半出て来てませんがちまちま下っ端を狩っていたと思います。 二回連続でダイナミックエントリーしたミーナでしたが、次からは少しずつ工夫を凝らしていくことになると思います。 ではまたよろしくお願いします。
ショートシナリオ

ショートシナリオ普通 報酬:標準8 / 4〜8人

2021年08月06日 22時45分24秒 公開

成功

相談掲示板

  1. リリリリス

    私(ワタクシ)、リリリリスですわ! か弱い動物で私利私欲を満たそうとする や下賎輩は私が成敗して差し上げますわ!! …ですが 授恵者では無い密猟者は…手加減が必要かしら…

  2. イズレンディル・パラリム

    エルフのキャスター、イズレンディル・パラリムと申します。 皆さん宜しくお願いしますね。 「全て捕縛」が目的ですので、殺さないように気を付ける必要はありそうですね。 まともに戦えば負けることは無さそうな戦力比ですから…ひとまずは逃がさないようにする立ち回りですね。 ぱっと思いつくものだとこのあたりでしょうか? ・包囲して逃走路を潰す ・スキルを使用して敵を足止め(移動低下等) ・敵が包囲を突破し逃亡した際の追撃(高い移動力、弓での狙撃等) 包囲に関しては正面から行く人と回り込む人で分担したいですね。 他は各自で可能な範囲で、でしょうか。アーケインでしたら私も持参できそうです。 >丈夫な装備を身に付けた賊 強い敵が紛れているみたいですね。一人なのか複数なのかはわかりませんが…。 戦闘中の行動で区別がつきそうですし、汎用スキルの活用で事前の看破も可能そうです。 確認次第、誰かが専任で対応した方が安全そうですね。 >ミーナさんのフォロー こちらから密猟者に早急に仕掛ければミーナさんの負担も減りそうだとは思いますが、 ここは何がしか追加のフォローも必要になりそうでしょうか?

  3. キリアン・フィッツジェラルド

    どうも、シューターのキリアン・フィッツジェラルドと申します。 逃げようとする戦力を、如何にその場に縛り付けるかが肝みたいですね…… 機会があれば逃げ出そうとするのですから、その機会を悉く潰す事が重要とも。 逃げようとするルートに先回りして、煙炸弾でも撒いておきましょうか? それと他に出来る事は、森の中が戦場となるとホークアイで看破達成値に+10する事くらいでしょう。 あと、ただの賊とは思えない丈夫な装備に関しては、あくまで傷だらけでも装備の質が良いくらいで、捜波等のような搦め手を使うかどうかは言及されてないみたいですね。 それにもしかすると、シューターでもヒーラーでもない、ただの密猟者がその装備を有する可能性も…… 「ただの賊とは思えない」という一文からして、何がしかのバックがある可能性も有り得そうです。

  4. コルネリウス・アーラ

    ウォーリアのコルネリウスです、よろしくお願いします。 そうですね、敵には授恵者も一般人も混ざっているようですから、一般人への攻撃は注意する必要がありますね。 イズさんの仰るように包囲して足止め、という流れかなと思います。 私は殺界やシーザーロアの使用を考えています。 >丈夫な装備を身に付けた賊 スキルや行動などで見極めは可能そうですね。 入手経路などは後々確認するとして、担当者を決めておくことに異論ありません。 >ミーナさん そうですね、基本的に自由に動いて頂いて良いかなと感じますが。 長期戦には不向きなので、その辺りは無茶をしないようにフォローは入れたいと思います。

  5. ベアトリーチェ・カロッサ

    シーフのベアトリーチェだよ、よろしくね! アタシはミーナちゃんと一緒に密猟者の撹乱と、逃げようとする奴の足止めをやろうかな。 木の上から飛び蹴りでもしちゃおうかなー♪ >丈夫な装備を身に付けた賊 そもそも毛皮とかも採らずに放置してるんだし、ただの密猟者じゃなさそうだね。誰かに雇われたのかな? …グから始まる人とか、いるじゃん?

  6. バーネット・フォーサイス

    キャスターのバーネット・フォーサイスだ。 まぁ、よろしく頼むわ。 >方針 基本的にはパラリムの挙げてる様に、回り込んで包囲する事と、 スキル等での足止めを併用するのがベターだと思う。 あとは、回復されない様にヒーラーから優先的に排除するって所か? >ミーナ 自分でもある程度リスク管理出来てるみたいだから、完全に孤立しない程度に注意を向けて、 息切れし始めた時に援護できる様にするの良いんじゃないか? >煙幕 こっちの視界も遮られるから一長一短だな。 煙幕に紛れて逃げられるって事も有りそうだし、個人的には無くても大丈夫だと思う。

  7. バンビ

    ハイスピードキャスターのバンビですわ。 敵を逃がしてはいけないのであれば、丁寧に一匹ずつ捕縛してあげるのが一番ですわ。 包囲に関しては1か所だけ穴をあけておけば逃走ルートを制限できますので、そこに網を張るのがよいと考えますわ。

  8. リリリリス

    私もシーザーロア、カバリングを使用し 意識の阻害や、射手の妨害に勤めようかと 思って居ましたわ。 えぇ、えぇ…逃がさない、為にも 『包囲したい』のは、私もそうしたいと思いますわ けれども、少々戦場が広い事と、木々があるのが 気になりますわね… 相手を上手く誘い込みたい所ですが 包囲網を縮小する過程で逃がすのは避けたいですわね… 倒せる敵から倒してしまい 木に縛り付けてしまうのもよろしい気がしますわね…

  9. アウレーリア・フォン・ネーベルベルク

    キャスター、アウレーリアよ。宜しく。 最近政治的にきな臭過ぎる依頼が多いのだけど、これもその一端かしら。 敵の大部分は雇われでしょうけど、一部どこぞの正規兵か荒事の専門家が混じっていそうね。 多分、そうと分かるように包囲を敷くと気付いて突破に集中すると思う。 それこそ、逆に煙幕でも焚かれると厳しいわ。 ミーナが良い感じに目立ってくれているから、上手く使わせてもらいましょう。 こちらの人数を少なめに見せて、一見頑張れば制圧できる戦力のように演出する。 拙いことにフィーギル家の紋章なんか見せちゃって、どういう反応になるか微妙だけど。 口封じできそうだと思ってくれれば、逃げの一手でもなくなるでしょう。 囮相手で足が止まってるその間に、包囲の布陣を敷いておく。 今回はキャスターが多いから、アーケインとかアイアンウォールとか置けそうね。 準備が整ったら、ミーナが息切れする前に一気に輪を搾り上げる。 そんな感じで考えているけれど、どうかしら?

  10. バンビ

    アウレーリア様のお考えで包囲は行けそうですわね。 包囲は何も間を密に詰めるものではなく、ここは抜けられそうにないぞと錯覚させられるのなら すかすかでも問題はありませんのよ。だからこそのわざと開けた逃げ道であって、 楽なルートだと思ってもらえるようにしたいですわね。 あと、森の中なので木をうまく使って包囲を密にもしたいですわ。

  11. リリリリス

    …わかりましたわ! 何とかなりそうですわね!

  12. キリアン・フィッツジェラルド

    成程。良質な装備を貰える程の後ろ盾の可能性のみならず、荒事のプロも居る可能性があると。 了解です。なら煙幕は取り消して、アクションスキルは捜波とスティンガー辺りにします。 わざと空けた逃げ道というなら、そこを通ろうとする連中を狙撃という形でしょうか。

  13. バーネット・フォーサイス

    >包囲 包囲を完了するまでの間も、なるべく敵を足止めして分散を防ぎたいな。 今回はキャスターも多い事だし、初っ端はアーケインを複数設置して敵の身動きを封じつつ 可能な限り敵を削り、アーケインの効果時間が切れたら、予め残しておいた包囲の穴に 誘導するって感じが良いか?

  14. リリリリス

    私の存在感(カリスマ)と シーザーロアで 視線を釘付けにして差し上げますわ! ミーナ様を目印に動けばよろしいかしらっ

  15. コルネリウス・アーラ

    >包囲 アーケインを複数設置して頂けるのでしたら、敵の誘導はしやすくなりそうですね。 道を絞れば包囲もしやすくなると思いますので、アーケインが発動している間に包囲網を作ってしまう流れで私も認識しています。

  16. イズレンディル・パラリム

    それでは、分担は「囮」と「包囲」の3分担といったところでしょうか。 囮はカリスマで引き付けるのは面白そうですね!リリリリスさん、宜しくお願い致しまs。 一旦私は包囲の方に手を挙げておきますが、数が偏りそうでしたら囮に回りますね。 >包囲について 現地は見通しはよいそうですから、囮が引き付けているとはいえ、こちらの包囲の動きはすぐに見つかりそうですね。初動から速度勝負になる点は気を付けた方が良いかもしれないです。 また、包囲や穴への誘導はあくまで一手段ですから、敵を倒せるなら手早く倒してしまいたいですね。残った敵が逃げる時に包囲や穴が有効になれば丁度良い塩梅かとは思います。 >敵の拘束 光縛呪があれば手早く拘束出来そうですから持参致しますね。

  17. バーネット・フォーサイス

    >個人行動 それじゃあ、俺は足止め担当だな。 アーケインテンペスト改とスタティックフィールドで足止めしつつ、 メテオライト3で範囲攻撃って所だな。 あとは、俺も捕縛用に光縛呪は用意しておくのと、 背後を洗うためにエンパシーも併用して、質問の反応から探ってみるか。

  18. イズレンディル・パラリム

    バーネットさん、足止めありがとうございます。 私は包囲担当ですが念のためアーケインテンペスト改は持参しておきますね。 質問用のエンパシーも助かります。 もう明朝出発となりますね。 現地では宜しくお願い致します。

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0