【呪輪】立ち入る者
革酎
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シナリオID:1160
オープニング
フィルエス大森林南東部で発生している樹々の枯死問題。
決して少なくない数の集落や里がこの問題に直面し、エルフ達は何とか原因究明や対応策を進めようとしている。しかしながら原因に関しては今のところ、明確なことは何ひとつとして分かっていない。
あの『灰火の守部』グレイオンス自ら動いて、この問題の解決に乗り出しているという噂もある。
だが樹々が枯死する速度は想定以上で、ただのんびりと調査だけに時間を費やすことが出来なくなりつつあった。実際、南東部に所在を置く一部の集落や里のエルフ達は現住の地を捨て、大森林内の別の箇所に居住地を移そうとする動きもあるらしい。
本問題からの撤退を企図する氏族は確実に、そして次第に数を増やし始めていた。
ロモズ歩兵団と呼ばれる戦闘集団がシルトラース帝国とリーンエス王国の国境付近に拠点を置いている。
1000人にも及ぶ帝国難民が自らの国を取り戻すべく立ち上がり、リーヴァー・シュランドル帝国子爵を団長に据えて組織された義勇兵的私設歩兵団だが、その勢力は少しずつではあるが、確実に広がりを見せている。
夏のある日、リーヴァーはフィルエス大森林とリーンエス王国の国境に位置する小さな町ズロフォールを訪問した。
フィルエス大森林南東部に所在を置く小さな集落トーテルースの集落長アレンバーが、面会を求めてきたのである。
樹々の枯死問題で居住地の移動を余儀無くされたトーテルースだが、新たな移住先は居住可能な区域が狭く、全集落民が揃って移住することが出来ない。そこで外界での生活を望む一部の若いエルフ達が大森林を出て、新たな生活圏を得ようということになった。
その新生活の場として選ばれたのが、ロモズ歩兵団が先般復興を開始したカルケルーア・ロモズ――旧カルケル集落群だった。
しかし自分達の都合だけで、一方的に移住を表明する訳にはいかない。当然ながらカルケルーア・ロモズの事実上のトップであるリーヴァーから承諾を得なければ、話は進まないのだ。
リーヴァーとて救いを求める声を邪険に撥ね退けるつもりは無いが、トーテルース側の出方次第によっては拒否も選択肢に入れておかなければならない。
何よりカルケルーア・ロモズは帝国民の為に復興させた一大集落群だ。余所者を受け入れることで、不要ないさかいを生じさせるリスクは取りたくないというのが本音だった。
●エルフ達に与えられた試練
面会はズロフォール冒険者ギルド二階の応接室で行われた。
ロモズ歩兵団側はリーヴァーの他に遊兵1番隊長ディーグ・ディオロン、リーヴァーの専属秘書カレンディアが同席。
一方トーテルース側は集落長アレンバーに加えて、移住希望者代表として年若いエルフのセルドリックが同席していた。
両者は挨拶もそこそこに、早速本題に入った。
「最初に断っておきますが、カルケルーア・ロモズは決してユートピアなどではありません。我々もまだ難民という立場から脱却出来ていない。あなた方にとっては必ずしも最善の選択肢ではないということを、まず念頭に置いて頂きたい」
いきなり宣戦布告に等しい台詞で釘を刺したリーヴァー。
しかしアレンバーもセルドリックも、それは勿論当然の話だと納得の表情で頷き返した。
「こちらからの移住希望者数は、ざっと50名程になります」
「その点については問題ありませんが、今一度確認します。本当に50名で済むのですか?」
リーヴァーからの思わぬ反問に、アレンバーとセルドリックは困惑気味に顔を見合わせた。実際のところ、このふたりにも明確に断言出来る判断材料が無かったのである。
つまり、トーテルースは移住先に於いても再び別の箇所への移動を強いられる可能性があったのだ。
「ならばやるべき手順が誤っていますね。まずは枯死の原因を探り、それでも移住がどうしても必要かどうかを見極めるところから始めなければ」
リーヴァーはディーグに面を向けた。
「卿にはしばらく、大森林での調査任務に就いて貰いたい。必要なら冒険者ギルドで増援を募れ」
「まぁ俺は良いけどよぉ。あちらさんが、どう思うかだね」
ディーグは髭面の奥で苦笑を浮かべた。彼は、ドワーフなのだ。
当然ながらアレンバーとセルドリックはこの日最大といっても良い程に強い困惑の色を浮かべていた。
だがリーヴァーは、構わぬと押し切った。
「カルケルーア・ロモズにはもっと大勢のドワーフが居る。そんなところに移住を望む以上、こちらからドワーフを送り込むことについていちいち懸念を示す様では、そもそも彼らの受け入れなど端から無理だ」
聞こえよがしに断言するリーヴァー。
アレンバーとセルドリックも、こればかりは仕方が無いと観念せざるを得なかった。
「こちらの調査活動に対し少しでも協力を惜しむ様な態度が見られれば、移住の件は白紙に戻します。宜しいですね?」
ドワーフの客人を大切に扱い、その行動に全面協力しろというのである。
閉鎖的でドワーフを忌み嫌う大森林のエルフ達にとっては、何にも耐え難い試練であった。
●前途多難
翌日、トーテルース集落の中央広場。
そこにドワーフの軽戦士の姿があった。周囲には集落全てのエルフ達が、ディーグを半ば取り囲む様な形で集合していた。
「分かってると思うが、俺ァ遠慮も何も無いドワーフだ。あんた方に合わせる気はさらさら無ぇからな」
こっちは移住の為に頼まれて来てやっているんだという態度を、あからさまに見せつけるディーグ。
大半のエルフ達が苦々しげに彼を睨みつけているが、かといって移住問題を人質に取られている以上、表立って攻撃する訳にもいかない。
そんなディーグの演説を、セルドリックは内心はらはらして見つめていた。
やがてひと通りの挨拶と状況説明が終わり、エルフ達は解散してゆく。セルドリックはある程度人数がばらけたところで、慌ててディーグに駆け寄った。
「なぁ、大丈夫なのか。あんなに挑発的じゃあ、協力は得られないかもだぜ」
「気にしなさんな。あんた達の協力なんて最初からアテにはしてねぇよ」
それよりもディーグは、冒険者ギルドで雇った増援の冒険者達を上手く使えとアドバイスした。
「あんたひとりじゃ、ここのエルフ達を抑えるのは難しいだろう。だから冒険者達に頼ると良い。彼らはトラブルシューティングのエキスパートだ。人種問題なんて慣れっこだよ」
今回の依頼料も、トーテルースから出ることになっている。上手く活用しなきゃ損だと、ディーグは豪放に笑った。
一方セルドリックは、そんなものなのかと戸惑いの表情。しかし内心では、このディーグはドワーフだが信頼出来るという思いが湧き起こりつつある。結局は人種ではなく、個人をしっかり見極めなければならないのだということを、セルドリックは学び始めていた。
解説
マスターより
リプレイ
フィルエス大森林南東部の、とある一角。
早朝にトーテルース集落を出て、既に半日以上を調査活動に費やしている冒険者達の面には、次第に疲れの色が見え始めている。
調査といっても、今のところは枯死した樹々の状況を見て廻っているだけであり、これといった手がかりが得られている訳ではない。
ロモズ歩兵団重兵11番隊長アーシェル・G・クラインは、汗が滲む額を軽く手の甲で拭いながら、ふと頭上を仰ぎ見た。
通常であれば鬱蒼と生い茂る枝葉が緑の天井を形成し、降り注ぐ陽光を遮ってくれる筈なのだが、樹々が枯死している一帯では細く干からびた樹木の亡骸が林立するばかりで、天上からのストレートな熱量を阻んでくれるものは何ひとつ存在しない。
「日陰も無いところをずっと歩き続けるのは、結構体にくるもんだな……」
アーシェルの傍らを歩いていたアルフィー・リッパーも思わず足を止め、トーテルース集落で支給された水筒の中身をひと口、喉の奥へと流し込む。
「ふひー、こりゃ中々辛いですね……ディーグ氏、大丈夫ですかぁ?」
思わずその場にへたり込み、アルフィーと同じく水筒の中身で喉を潤すのはアリア・ティーダ。彼女は、ロモズ歩兵団重兵6番隊長である。
だが呼びかけられたドワーフの軽戦士、ロモズ歩兵団遊兵1番隊長ディーグ・ディオロンは汗を滴らせながらも、その表情には然程に苦しそうな色は浮かんでいなかった。
「鍛冶場の暑さに比べりゃあ、どうってこともねぇけどな……しかしまぁ、俺ひとりだけが頑張っても仕方ねぇし、少し休憩とするか」
ディーグもその場で立ち止まり、同じ様に水筒を取り出す。その時、前方から斥候に出ていたハヤト=ガラン=ヴォルファングが幾分重い足取りで引き返してきた。
その様子に、アーシェルは彼も状況は変わらないかと小さく肩を竦める。
「絶対的な温度はそう高くはなくても、本来なら樹々の陰で上手く温度調整が出来ている筈が、そのバランスが崩れている……だから余計に暑く感じるのかも知れないな。トーテルース周辺の樹々はまだ枯死していないが、ここと同じ状況になればとても住めたものじゃない」
ハヤトを出迎えつつ、アーシェルはトーテルース集落のある方角に視線を流した。ハヤトは流石にそれどころではないらしく、夢中になって水筒内のやや温くなった水をがぶ飲みしていた。
それからやっとひと息ついたところで、ハヤトは妙な発見があったと言葉を繋いだ。
「何っつぅか……嗅覚がいきなり麻痺する様な感覚があったんだ。分かるかなぁ……舞い上がった小麦粉を吸い込んだ時の様な感じ、ってやつかな」
決して、疲労の所為で五感が麻痺したという訳ではない。位置を変えれば、即ちトーテルース方向へ引き返せばその奇妙な嗅覚麻痺感は消えてなくなったというから、その一帯の空気に何かが起きているのは間違いない、というのがハヤトの分析だった。
「それって、枯死問題と関係ありそうですか?」
アリアの問いに、ハヤトは分からんとかぶりを振った。だが今から追加で調査を続行するのは、時間的にも少々厳しいだろう。
ディーグは他の面々の消耗度合いも勘案し、この日の調査はここで打ち切ることにした。
●森の民の想い
夜になって調査班が引き返してきた。
トーテルース集落で彼らを待ち受けていたロモズ歩兵団重兵3番隊長コルネリウス・アーラ、同副長イズレンディル・パラリム、遊兵3番隊長サフィラ・アズラク・ナハルハルアリーブ、そしてハルハン・ツァガーンナルの分析組四名は調査班が持ち帰った報告内容を、手分けして精査し始めた。
分析組は集落の広場に据えられた木製テーブルにランタンの光を設置し、深夜まで作業に取り掛かろうという姿勢を見せている。いわばこれからが本格稼働の時間だという訳だが、調査班が枯死問題を調査している間、分析組もただいたずらに時間を浪費していた訳ではない。四人には四人の使命があった。
即ち、集落民たるエルフ達の、他人種に対する偏見の矯正だ。特にドワーフに対する嫌悪感を如何にして取り除くかが、最大の命題として課せられていた。
日中、四人は集落民を広場に集め、調査班からの報告待ちの間に枯死問題と移住に関するヒアリング会という形を借りた、意見交換会を設けていたのである。
勿論、セルドリックも同席の上だ。
「にゃ! トーテルースの皆さん、はじめましてっ! ロモズ歩兵団3番隊長のサフィラだよっ! 見ての通りこっちにいる重兵3番隊のコルネ隊長とイズ副長と同じエルフだよっ! っていっても、大森林に住んでた期間は38年だけどっ。あとの70年はあちこち旅をして色んな種族のひと達と生活してきたんだよっ」
元気良く挨拶役に廻ったのはサフィラだ。その陽気で物怖じしない性格は、集落民に多少の戸惑いを与えたものの、冒険者の側がペースを握るにはうってつけだった。
「そしてこちらは、ツァガーンナルちゃん! 親しみを込めて、ツァガっちって呼んであげてねっ!」
「あ、えぇと、ボクはハルハン・ツァガーンナルです。ど、どうぞ宜しく」
いきなり紹介に与ったツァガーンナルは慌てて頭を下げた。長身なだけに、その素早いお辞儀作法は妙にインパクトがあった。まさか愛称まで付けられるとは思っても見なかったが、同じ傭兵団の団長ハヤトからはサフィラがそういう人物だと聞かされていた為、別段不思議に思う程のことでもなかった。
そしていよいよ、意見交換会の開始である。
まず最初にコルネリウスが、ドワーフに対してどの様な嫌悪感を集落民達が抱いているのかを聞き出そうとした。
ところが、集落民の間からは中々声が出そうにない。そこでイズレンディルが穏やかな笑みを湛えて集落民をぐるりと見廻した。
「移住に影響は与えませんので、今この場では素直な感想を聞かせて頂けますか?」
同じフィルエスのエルフとして理解している旨を告げると、ようやく集落民の間からぽつぽつと率直な声が聞かれ始めた。
得られたのは矢張り通り一遍の感情論だった。ドワーフは鉱石採取目的で樹々を無闇に伐採する悪辣な種――それが、彼らが抱いている典型的なイメージのようだ。これはトーテルースだけではなく、フィルエスに住まうほぼ全てのエルフが心の内に潜ませている対ドワーフの印象そのものだろう。そして歴史的に見ても、ドワーフが鉱石採取の為に森を破壊してきたことは総じて事実に違いない。
この点についてはイズレンディルも訂正の余地は無かった。サフィラとツァガーンナルも互いに顔を見合わせたが、このふたりにしてもエルフが抱いている感情は想定の範囲内だった。
「いきなりこんなことをいっても難しいかも知れませんけど、出来ればボクとしては種族ではなく、ドワーフのディーグ、エルフのセルドリックという風に、個人としての相手を見てほしいですね」
ツァガーンナルの訴えかけに応じて、セルドリックも立ち上がって頭を下げた。
セルドリックがディーグに対して敬意を払う姿勢は、既に集落民も何度か目にしている。同じことをしろとまではいわないが、せめてその姿を見て何かを感じて欲しいというのはツァガーンナルのみならず、コルネリウスやイズレンディル、サフィラも同様の想いだった。
●理解し、理解されること
次いでコルネリウスが自身の出自と、血縁ではないがドワーフの兄弟が居ることを伝えると、集落民の間に大きな動揺が走った。
種族の問題ではなく、お互いに相手を理解していないことが諍いの原因だ、と彼女ははっきりといい切ってみせた。
理解しようと努め、一歩踏み出すだけで良い。それだけで全てが大きく変わる――コルネリウスの熱っぽい口調に、集落民はただ呆然と驚きの視線を返すのみであった。
「ぶつかっても構いません。衝突は起きるものです。でも、ただ無為に否定し、傷つけるのではなく、お互いが穏やかに過ごせる為に、想いを伝えてみるのです」
ここで、誰かから質問が上がった。その為にはどうすれば良いのか、と。
内心、コルネリウスは思わず拳を握り締めた。質問が出るということは、彼らの中に前向きな気持ちが生じ始めている証左だ。
私の経験上ですが、と断りを入れてからコルネリウスは答えた。
「同じ時間を過ごすことです。一緒に作業したり、お茶を飲んだり」
「そいやあ、あたしもちょくちょく喧嘩したりしてたねぇ」
今度はサフィラが、ドワーフ王国で生活した八年間について語った。こちらも矢張り同様の衝撃を集落民に与えた。サフィラも坑道の発掘調査や古い倉庫の片付けを手伝う等して徐々に信頼を勝ち得たこと、最後の三年間は共に盃を酌み交わし、工房に立ち入らせて貰える程の仲を築いたことを説明すると、今度は驚きではなく感動に近しい声が随所で上がるようになった。
「双方に不理解がある……この事実は変わりません。当然、揉めごとは起きるでしょう。私も昔は随分と言い争いをしてしまいました」
イズレンディルのそのひと言に、驚いたのは寧ろコルネリウスとサフィラだった。このふたりにとって、イズレンディルの過去のやんちゃ話は結構なサプライズだったらしい。
「でもそれはエルフとドワーフだから起きる訳ではありません。他の種族でも同様に生じる問題です」
イズレンディルは種族間の価値観の違いを説いた。価値観をそのまま受け入れることは不可能だが、理解すれば無用な衝突は避けられると続けた。
「ロモズの方達も、故郷を追われたひとびとです」
つまりトーテルースの集落民と立場上は何ら変わらない、とイズレンディルは繋げる。だからこそ共に進んで行ける、とも。
「ディーグはエルフの為の仕事だからといって決して手は抜きません。彼は無為に森を傷つけたりもしません。そして貴方達も外に出るなら、相手を知ることも大事なことです。ボクもそうでした。外は、知らないことだらけですよ」
ツァガーンナルの声には厳しい現実を見て来た経験者特有の重みがあった。
●移住への決断
翌日の調査は、昼過ぎに切り上げられた。
ハヤトが嗅覚麻痺感を覚えたというポイントで、敵性生物の大規模な群れが確認されたからだ。
それは、動く植物であった。幾つもの種類が居るようだったが、いずれも本来の生態系にはあり得ない存在だった。少なくとも自然発生的に大森林の中で息づいた存在ではなかった。
「アリア、お前さん俺がスケッチした内容を図表に纏めてくれ。こいつぁ近い将来、集中的な局地戦になるかも知れん」
「了解でっす!」
ディーグに敬礼してから、てきぱきと事務作業へと突入するアリア。ドワーフがエルフに指示を出す姿を集落民の間近で見せるというアリアの作戦は、どうやら効果的に作用しているらしい。事実、集落民のディーグとアリアを見る視線の色が、初日とは随分変わってきている。それも好意的な方向に。
一方、アーシェルとアルフィーは集落の子供達に不安を与えないようにと遊び相手を買って出ていた。
否、正確にはアーシェルが勝手に子供達を呼び寄せ、そこにアルフィーを無理矢理巻き込んだというのが実情であろう。
「勝手に決めるな!」
最初は毛並みを逆立たせていたアルフィーだったが、子供達の無垢な笑顔には逆らえず、寧ろ自分も楽しげに遊び始める始末だった。勿論こうなることも、アーシェルは織り込み済みだったのだろうが。
アーシェル自身は集落入りする前からエルフ達には色々な面で相当に気を遣っていたのだが、彼らがディーグを見る視線が随分と柔らかな色に変じてきていることに、内心で胸を撫で下ろす気分だった。
アリアもアーシェルも、そしてアルフィーもディーグと共に、トーテルースの集落民の為だけに全力を尽くしてきた。その努力、姿勢が彼等にも十分に伝わってきていると見て良い。
子供達相手にひとしきり遊び倒したアーシェルとアルフィーは、広場で夕食会の準備を進めているツァガーンナルやエルフ女性達のもとへと歩を寄せた。
何か手伝うことは無いかと尋ねると、山菜の灰汁抜きと木の実の選り分けを頼まれた。
「こうして手伝わせて貰えるようになったってことは、俺達も受け入れられたってことかな」
「そりゃあもう、間違いないですよ」
しみじみと語るアーシェルに、ツァガーンナルは笑顔で太鼓判を押した。もっと過激な反応が返ってくる、厳しい日々が続くと覚悟していただけに、この状況はアーシェルにとっては奇跡に近いものがあった。
「住み慣れた土地を離れるのは辛いことだろうな」
アーシェル、ツァガーンナルと並んで仕込みを手伝いながら、アルフィーはぽつりと呟いた。
結局調査の結果は移住止む無しという方向に結論付ける材料となった。アーシェルやディーグと共に頑張った甲斐あって、集落民からは友情と感謝の念を受けられるようになったものの、アルフィー自身は複雑な心境だった。
「ディグっち、ハヤト、何だかヤバそうなんだって?」
アリアを手伝う為に駆け寄ってきたサフィラ。ディーグもハヤトも揃って渋面を浮かべた。
「カルヴェント一派を討伐した時、敵が示指姐さんっていってたの、覚えてるか?」
ハヤトの真剣な表情に、サフィラはあっと声をあげた。指を冠する称号を持つ組織は、ひとつしか考えられない。即ち、メドゥの指先だ。
「その植物型魔獣の群れが、メドゥの指先と関連がある、と?」
同じく情報整理の為に駆けつけてきたコルネリウスが怪訝な顔色を向ける。しかしハヤトとしてはそれ以上の判断材料が無く、何ともいえない表情でかぶりを振るしかなかった。
「しかし、これでもう移住は避けられませんね。枯死だけでなく、謎の魔獣にメドゥ……ここに住み続けるのはリスクが大き過ぎるでしょう」
イズレンディルの厳しい声音に、一同は揃って頷き返した。
方針が決まった以上、まずは冒険者ギルド経由でカルケルーア・ロモズに移住必要の一報を入れなければならない。最寄りの町ズロフォールへの早馬に、サフィラが名乗りを上げた。
「一緒に汗流して、ご飯食べて、お酒飲んで騒いで……生活を共にする気持ちがあればカルケルーア・ロモズの新生活をエンジョイ出来ると思うよっ! んじゃ、ちょいといってくるねっ!」
サフィラは集落唯一の馬を借り、鞍上のひととなった。
遠ざかる馬蹄を背中に受けつつ集落内へ戻ると、アリアが嬉しい悲鳴を上げていた。集落の若い連中が進んでアリアの手伝いを申し出ていたのである。
「ディーグ氏! 彼らに何か指示をお願いします! すっごいやる気があるみたいでして!」
「そりゃあお前さんが決めてくれ。俺ァ事務仕事はてんで分からん」
ディーグに全てを任された格好のアリアだったが、まさか己の色気がこんなに威力満点だとは自分でも想定外だった。
マスターコメント
ショートシナリオ普通 報酬:標準8 / 4〜8人
2021年08月01日 18時19分56秒 公開
相談掲示板
ハルハン・ツァガーンナルです! ナルと、呼んでもらえたら。よろしくおねがいします。 エルフの皆さんと、上手く通じあえたらいいですね。
エルフのコルネリウスです。宜しくお願いします。 今回は基本的に戦闘などは無く、心理的なフォローが中心になりそうですね。 各々思うところがあるとおもいますが、ディーグさんへ同行するかセルドリックさんと共に行動するか、メイン行動は分担とするのが良いでしょうか? 長く培ってきた思想を変えるのは難しいとは思いますが、個人的には多種族交流の促進活動をしている事や、家族との経験などを交えて、お話をしていけたらと思っています。
エルフのキャスター、イズレンディル・パラリムです。 宜しくお願いしますね。 ディーグさんと同行の場合は調査活動、セルドリックさんとの場合は里のエルフと対面、と行動内容も与える影響も異なりますから、コルネさんの仰る通りそれぞれどちらに同行するかを決めて分担した方が良さそうですね。 私自身は同じくフィルエス大森林のエルフという立場ですので、調査活動で心象を良くするというのが少し微妙なところですね。同じ森のエルフが調査を頑張るのは当然ですしね。 セルドリックさんに同行して里のエルフと話しをして見る方に同行したいと思っております。
にゃ!シーフのサフィラだよっ! よろしくねっ! 今回は戦闘は無さそうだけど、長年凝りに凝り固まった頭をときほぐすミッションだから別な意味で難しい依頼だねっ んー、あたしは外で活動してきたエルフとして里のみんなの説得に回ろうかなっ?
提案しながら自分がどちらに回りたいか表明を忘れていました…私もセルドリックさんに同行してエルフの方々とお話をしたいと考えています。
アーシェルだ。よろしく頼む。 エルフ達への対応とディーグの調査への同行のどちらに別れて動くのに賛成だ。 俺はディーグに同行しようと思ってる。 ディーグには征竜の虹宝剣の護送依頼で世話になったしな。 具体的にどんな風に調査に挑むかは考え中だが、一緒に行く奴がいたらよろしく頼む。
アリアです!宜しくお願いしますっ!(しゅっ 二手に分かれるんだねっ。 ボクも調査側に回ろうかな…? 進捗とかをちょくちょく発表したりすればエルフさん達の感情を好転させつつ、調査作業に関心を引けるかなっ…?お互いが自発的に交流できる様になれば一番だと思うから。
アルフィー・リッパーだ。よろしく 種族間の根深い偏見は難しい問題だな。俺は調査の方に回らせてもらっていいか? 細かい行動についてはまだちょっと考え中だ。 ○調査 アリア アーシェル アルフィー ○セルドリック同行、エルフ説得 イズレンディル コルネリウス サフィラ
おーっす! ブレイブファング傭兵団のハヤト=ヴォルファングだ、よろしくな!! 人種差別問題なんざ日常茶飯事で経験してきてっからな! 何百年にもわたる種族間の確執ってーとなかなかハードルが高ぇが、ディークも悪い奴じゃねーし何とかなんだろ。 俺はディークと一緒に調査の方に回るつもりだぜ。 ドワーフ程じゃないにせよゴブリンにだって良い感情はねーだろーしな! ○調査 アリア アーシェル アルフィー ハヤト ○セルドリック同行、エルフ説得 イズレンディル コルネリウス サフィラ
ボクは、セルドリックさんに同行して、説得の方へ回りたいと思います 何かしら、できることはあると思うので。