震える拳
ゆうきつかさ
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シナリオID:1143
オープニング
辺境の村に現れた中型クリーパーは、本能の赴くまま暴れまわった。
だが、誰一人として、中型クリーパーを止められる者はいなかった。
それでも、村一番の力持ちが棒切れを握り締め、果敢にも中型クリーパーに攻撃を仕掛けていったが、両腕をへし折られ、絶望する間もなく頭を叩き潰された。
逆に、女子供を身代わりにして逃げようとした青年は、中型クリーパーに頭を蹴り潰されて息絶えた。
その場に残った女性は悲鳴を上げている間に叩き潰され、子供は泣く間もなく引き千切られた。
それでも、村人達は祈った。
必ず誰かが助けに来てくれると信じながら……。
だが、誰一人として、助けに来る者はいなかった。
今回、冒険者ギルドに依頼してきたのは、村の生き残り達であった。
あるだけの金を搔き集め、これで仇を討って欲しい。
それが彼らの願いであった。
いまのところ、中型クリーパーは、村に居座っているものの、いつ動き出してもおかしくない。
そんな事になれば、自分達の村だけでなく、他の村や町も襲われてしまうかも知れない。
そんな気持ちから冒険者ギルドに、依頼を持ち込んだようである。
中型クリーパーは岩石のような身体をしており、軽く拳を振り回しただけで、村人達が肉の塊になってしまう程、強かったらしい。
その分、何も考えず、攻撃を仕掛けてくるため、冒険者であれば倒す事が出来るだろうという事だった。
解説
マスターより
リプレイ
「……まさか、こんな事になっていたとはな」
アルベルト=V=シュタールシュヴェーアトは仲間達と共に、リーンエス王国の辺境にある村にやってきた。
その場所には、数日ほど前まで村があった。
だが、中型クリーパーで暴れまわった事で、建物は崩れ落ち、死臭と腐臭が入り混じったニオイが、辺りに漂っていた。
おそらく、中型クリーパーに襲われている間も、誰かに助けを求めていたのだろう。
潰れた肉の塊の傍に転がっていた右腕は、村の外に向かって伸びていた。
他の亡骸も原型を留めず、肉の塊と化していた。
「……悲しい事件ね。必ず解決しておかないと……」
エデル=マグノリアが複雑な気持ちになりつつ、拳をギュッと握り締めた。
もう少し早く村に行く事が出来れば、違った結末を迎えていたかも知れない。
しかし、時間は元に戻せない。
故に、この状況で出来る限りの事をするしかない。
そうする事で、結果的に悲劇の連鎖を食い止める事が出来るのだから、今は悲しむ事よりも、何処かにいるはずの中型クリーパーを見つけ出す事を優先する必要があった。
「……そうですね。沢山の人の生命を奪ったクリーパーさんを許す訳にはいきません! これ以上の被害が出ないようにする為にも、ここで打ち倒しましょう!」
エルナ・クルプファルツが覚悟を決めた様子で、廃墟と化した村に足を踏み入れた。
その途端、異様なニオイが全身に纏わりつき、地の底に引きずり込まれるような錯覚に襲われた。
だが、ここで立ち止まる訳には行かない。
それが村人達の残留思念であったとしても、今は悲しんでいる場合ではない。
そのため、村人達の無念を原動力にして、異質な空間と化した村の中を突き進んでいった。
「……シッ!」
そんな中、コハクがただならぬ気配を感じ取り、仲間達を制止するようにして前に出た。
中型クリーパーは岩の塊のように丸まっており、岩の隙間から、剥き出しになった筋肉が不気味に脈打っていた。
「今のうちに中型クリーパーを倒してしまいましょうか。まずはグラビティボルトで攻撃です!」
エルナが仲間達に声をかけた後、グラビティボルトを仕掛け、中型クリーパーに攻撃した。
「グガァァァァァァァア……!」
その一撃を食らった中型クリーパーが、ケモノのような叫び声と共に、身体を激しく震わせ、大量の石礫を飛ばしてきた。
「……来る!」
コハクが仲間達に声を掛けながら、巧みな身のこなしで石礫を避けた。
まわりにいた仲間達も、コハクの警告を聞き、間一髪で石礫を避け、反撃を仕掛けるタイミングを窺った。
「グギギギギギギ……グォォォォォォォォォォォォォォォン!」
その間に、中型クリーパーがムックリと起き上がり、自らの強さを強調するようにして咆哮を響かせた。
それだけで、普通の村人であれば、腰を抜かして身動きが取れなくなっている事だろう。
だが、コハク達はまったく動揺しておらず、逆に冷静であった。
それどころか、コハクが戦術眼を駆使して、仲間達をフォローしながら、次々と指示を出し、中型クリーパーを包囲するようにして陣取った。
「それじゃ、速攻で倒して犠牲者の魂を弔おうぜ!」
アルベルトが仲間達に声を掛けながら、中型クリーパーに紫電一閃を仕掛けた。
「ググ……ギギ……」
しかし、中型クリーパーの身体は硬く、その一撃では傷をつける事が出来なかった。
それでも、アルベルトに迷いはなく、同じ場所だけを狙い、少しずつ傷つけ、確実に広げて亀裂に変えた。
それに合わせて、エデルがサークルプロテクションを発動させ、守護の力を秘めた光を周辺に放った。
「グ……ギギ……ギィィィィィィィィィ!」
その途端、中型クリーパーが苛立ちを隠せない様子で、拳をブルブルと震わせた。
おそらく、今まで攻撃を受けた事が無かったのだろう。
例え、攻撃を受けていたとしても、蚊に刺された程度。
岩肌にヒビが入るほどの攻撃を食らった事が無かったため、怒りで我を失いかけているようだった。
「まさか自分より弱い相手としか戦えないって訳じゃないよな?」
そんな空気を察したアルベルトが、中型クリーパーを挑発しながら、鋭撃2を繰り出した。
中型クリーパーは怒りの感情に身を任せて、拳をブンブンと振り回していたが、アルベルトに当たる事はなかった。
「どうした? こんなはずじゃなかった……とでも思っているのか? だったら、自分の実力を過信し過ぎていたようだな。そんな殺意剥き出しで振り回している拳が、俺に当たる訳がない。むしろ避けてくれと言っているようなモノだ」
アルベルトが中型クリーパーの攻撃を避けながら、挑発混じりに呟いた。
実際に中型クリーパーの攻撃は、殺気の塊と化しており、見た目よりも拳が大きく見える程だった。
おそらく、アルベルトの心に、少しでも恐怖が芽生えていれば、避ける事よりも身を守る事に専念したかも知れない。
だが、それは命を落とした村人達が選んだ選択肢と同じ。
死に向かって突き進む事しか出来ない、最悪の選択であった。
それを選ばなかったのか、中型クリーパーが見た目の割に、弱く感じられたからに他ならない。
この様子では、自分より弱い相手とばかり戦っていたため、半ば思考停止状態に陥っているのだろう。
……何も考えず、殴ればいい。
そんな考えのまま、村人達の命を奪ってきたため、戦い方を忘れているような印象を受けた。
「……!」
そんな中、コハクは中型クリーパーの死角に回り込み、先手必勝を仕掛けて岩肌を剥いだ。
「グガァァァァァァァァァァァァァァァァァァア……!」
その事が引き金となって、中型クリーパーが感情を爆発させて怒り狂い、我を忘れて襲い掛かってきた。
その気持ちに反して、中型クリーパーの攻撃が、コハク達に命中する事はなかった。
しかし、中型クリーパーが自分より弱い相手としか戦わず、戦闘経験を十分に積んでいなかったため、コハク達だけでも何とか戦う事が出来た。
ある意味、それは幸運であったが、いつまでも続くという保証はない。
「なかなか、しぶとい敵のようね」
エデルが警戒するようにして、ヒールを使う準備を整えた。
実際に、中型クリーパーも、ただやられているばかりでは無かった。
自分より強い相手と戦う事で、本能的なモノが刺激されたのか、次第に学習し、強くなっているようだった。
それは中型クリーパー本来の強さ。
まるで錆びた剣を研ぎなおすような感覚で、中型クリーパーが少しずつ実力を発揮し始めている感じであった。
(このままだと、マズイな)
その事に危機感を覚えたアルベルトが、コハクにアイコンタクトを送り、連携を取るようにして攻撃を繰り出した。
「グギギギギイ……」
中型クリーパーは、先程と比べて動きに無駄がなく、拳を振り回しただけで、衝撃波が飛んできそうなほど攻撃が鋭くなっていた。
「……!」
その攻撃を間一髪のところでコハクが避け、中型クリーパーの注意を引いた。
それに合わせて、アルベルトが傷つく事も恐れず、中型クリーパーに斬りかかった。
「グガァァァァァァァァァァァァァ!」
それと同時に、中型クリーパーが一気に間合いを詰め、アルベルトにカウンターを繰り出すようにして、力任せに殴りつけた。
「……!」
その隙をつくようにして、コハクが死齎刃を仕掛け、不可視のエーテルを黒刀に纏わせ、中型クリーパーを斬りつけた。
「グギギ……!」
それは中型クリーパーにとって、予想外の一撃。
だが、コハク達にとっては、想定内。
アルベルトも中型クリーパーの攻撃を、あえて受ける事を選択したため、致命傷を避ける形で、攻撃を食らっていた。
「グガァァァァァァァァァァァァァァ!」
その途端、中型クリーパーの身体が蝕まれ、苦しそうに悲鳴を響かせた。
しかし、中型クリーパーは、苦しみから逃れる術を知らない。
どんなに苦しくても、それを受け入れる事しか出来なかった。
「このまま一気に片付けるわよ!」
その間に、エデルが輝刃2を発動させ、エルナが持っている宿り木の長杖を、淡い透明な光で包み込んだ。
「エルナ砲……、行きますッ!」
次の瞬間、エルナが魔弾2を発動させ、宿り木の長杖の先端から光球を飛ばした。
「グガァァァァァァァァァァ!」
その光球が中型クリーパーに命中し、岩肌が飛び散り、剥き出しになった筋肉から、大量の鮮血が飛び散った。
「グォォォォォォォォォォォォォォォォン!」
それが引き金となって、中型クリーパーが、エルナを狙って、距離を縮めてこようとした。
「……」
それよりも速くコハクも毒撃3を繰り出し、中型クリーパーの返り血を浴びた。
「ググ……ガガ……ガ……」
その影響で中型クリーパーの動きが鈍くなって、関節のあちこちからギシギシと音が鳴り、口からブクブクと血の泡を吐き、崩れ落ちるようにして動かなくなった。
●
中型クリーパーを倒した後も、気持ちが晴れる事はなかった。
例え、中型クリーパーを倒したところで、命を落とした者達が生き返る事はない。
その現実がズッシリと圧し掛かってくるような錯覚を覚えた。
だが、中型クリーパーを倒した事で、最悪の事態を回避する事が出来た。
結果的に、沢山の人々の未来を守った事になるのだから、決して無駄な事では無かった。
それでも、広場に転がった村人達の亡骸を、そのまま放っておく事など出来なかった。
「せめて犠牲となった村人さん達のお墓を作って弔いましょう。それがいま出来る事だと思うので……」
エルナが地面に転がった村人達の亡骸に視線を落とし、仲間達に語り掛けた。
村人達の亡骸は、だいぶ時間が経っているため、大部分が腐乱していたが、布などを使って包み、村外れにある墓まで運んでいった。
その間に、アルベルトが地面に穴を掘り、村人達の亡骸を埋葬した。
「悪いクリーパーさんは倒しました! これ以上、同じ悲劇は起きないはずです! どうか安らかに……」
それに合わせて、エルナが村人達の墓に語り掛け、仲間達と共に冥福を祈った。
エデルも、ゆっくりと目を閉じ、死者の慰めになるように祈りを捧げた。
その上で、生命力が強くて育てやすく、薬になる花の種を、依頼主に渡す事を心に誓った。
「……」
そして、コハクは墓守としての役割を果たすため、亡くなった者達を供養するのであった。
マスターコメント
ショートシナリオ普通 報酬:標準4 / 4〜8人
2021年07月23日 15時44分40秒 公開
相談掲示板
エルヴンシューターのエルナです!よろしくお願いしますね! 成立まであと一人ですね! 敵は村の中、頑健な肉体を持っているものの攻撃は肉弾攻撃のみという感じでしょうか! 私は距離をとっての魔法攻撃で挑もうかなと思います! 戦闘後には犠牲になった方を弔えるようにお墓を建ててあげたりもしたいですね……!
ヒーラーのエデルよ。よろしくね。 私は回復に専念しておこうかしら?強化が欲しかったらそっちのスキルに取り替えておくから、教えてね。 そうね……お墓は、依頼主である生き残った方々も人数が少ないでしょうし、協力したいわね。お祈りも捧げておきたいわ。
ウォーリアのアルベルト=V=シュタールシュヴェーアトだ。 よろしくな。 俺は、中型クリーパーに接近戦を挑むぜ!
岩石のように固い……。 キャスターのかたがいらっしゃれば、弱体使って貰うことも考えましたが……。 一応、私の方で攻撃アップのを用意しておくわ。 あ、あとね。個人的なことだけれど……。薬草にもなるお花の種と、その適切な育て方を書いた本……は難しいかしら?とにかくそれを生き残った方に渡しても良いかしら?私の方で、用意しておいて良いか聞いてみるから。 その……上手く育てられればちょっとした収入になるし、……お墓の周りに植えて、少しでも、双方の慰めになれば良いなって思ったの。
コハク、クリーパー、皆殺し。 地獄を体験させてあげる為にやってきたシーフコハク、どうぞよろしく。 魔法役、回復役、近接役と人は少ないながら役割としてはバランスが取れているからコハクとしてデバフ系ガン積みスキルで行くことにするよ。 取り合えず毒に攻撃防御低下系での攻撃で一撃離脱がメインかな。 皆の方で毒を優先させたいか攻撃防御低下を優先させたいか希望があればそれに合わせるから。 戦後はエルナも言っていた通りお墓には賛成。 墓守だからそこら辺の知識もある程度有しているからね、任せて欲しい。
成立しましたね!皆様改めてよろしくお願いしますね! コハクさんも言っているように編成のバランスはいい感じですね!コハクさんデバフありがとうございます! エデルさんの回復&バフも助かります! アルベルトさんの接近戦も頼もしいです!前でクリーパーさんを抑えられるは今回アルベルトさんだけになりそうなので、頼りにさせていただきますね! 私は命中回避デバフも持っていきつつ魔法攻撃を頑張りましょう! お墓の賛同もありがとうございます!しっかり弔ってあげたいですね! お花の種と本!いいと思います!素敵なアイデアっですね!本は字が読めない方の為にも挿絵を入れたりするのも良さそうかななんて思ったりしました!
成立して良かったわね。悲しいことは、早く終わらせてあげたいもの。 挿絵付き、良いと思うわ。それも付け加えておくわね。 ただ本は、今更だけれど価値的にちょっと厳しいかなと思ったけど……ダメ元で打診してみるわ。既製品の本が難しければ、ある程度こちらで自作することも考えておくわね。