フレンジー・アーソン・バーン・アップ
鹿崎シーカー
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シナリオID:1125
オープニング
空は黒く、石畳に無数の雨粒が弾け、遠くには遠雷と荒れる海の音が微かに聞こえてくる。
出歩く者は無く、今日の客足を諦めた店は閉店済み。ところどころ、家屋や大雨の中でも呑みに出かけた者たちが集う酒場の明かりが、ぼんやりと光っていた。
誰一人として外に出ず、屋根の下で選ぶと決めたその日の夕方、リブラネスタを重い足取りで進む人影が、ひとつだけあった。
大量の水を含んで鼠色に変色したローブを頭からかぶったそれは、革の胴当てを身に着けた女性の戦士である。脛まで覆う靴はボロボロで、だらんと下げた両腕からは薄くなった血が伝う。
雨水に溶かされた赤い液体を点々とこぼしながら、女は幽鬼のように歩く。フードの下に見える髪は真っ白で、両頬からこめかみにかけてを火傷痕が覆っていた。
「どう……して……」
雨音に女の声が融ける。
傷だらけの女は、靴の中まで水浸しになった足を止め、面を上げた。
気づけば彼女は、踊る子熊亭の前に佇んでいた。大雨の中でも来る者は居ると見え、窓からは明かりが、扉越しには中の喧騒が漏れ聞こえてくる。
楽しげな話し声、真剣な声音、柔らかな指導。それらを聞いた女の心が、ねじくれた根を四方八方に伸ばす。怒りと、憎悪と、名状しがたい邪悪な感情。
女は歯を食いしばり、脱力した両手に力を込めた。爪が手の平に食い込み、肌を咲き、新たに血を流させる。
彼女は血を吐くように呟いた。
「どう、してッ……!」
両目が燃えるように熱くなり、視界が滲む。
踊る小熊亭がこぼす橙の明かりがぼやけて広がり、砂色の霧に変わって消え去った。
記憶が蘇る。地に這いつくばった自分の前で、村の家屋が砕かれていく。悲鳴、断末魔。女は必死で手を伸ばす。
(やめて……やめてよぉ……っ!)
(フレイムゲイズ……どうして出ないの……!? どうして……)
(どうして、力がっ……!)
視界が大きく揺らぎ、次に晴れた時、村があった場所は更地になっていた。
家の残骸、転がる死体、そこら中で広がる血の池。鼻から入り込んだ、ぬるりとした鉄錆の匂いが絞首めいた苦しみを呼ぶ。
「うっ……!?」
女は雨の中で口を押さえ、その場で屈み込んだ。
手指の隙間から吐瀉物が噴き出し、石畳に張った水の膜を汚す。
たまりかねて両手を離すと、胃の中身がぶちまけられた。
吐いて、むせび泣きながら、女は地に両手をつく。彼女は震えながら、声を上げた。
「なんで……私だけ。なんで……あいつらは……」
次に顔を上げたとき、その黒い瞳は怨嗟で燃え上がっていた。
ふらふらと立ち上がり、呪詛を吐く。
「なんで、そこで笑ってるだけのお前たちは……失ってない……! どうして私だけが失った! どうして……!」
女は不意に身をひるがえし、雨の中を歩き出す。
死神じみた足取りで、彼女は独り言を繰り返しながら宣言した。
「殺してやる……! ふざけるな……。私と同じ苦しみを……味合わせてやる……!」
●
後日。踊る小熊亭で、鹿ハーフビーストの占い師のユズルは、一枚の紙を手に嘆息していた。
紙を下げて集まった授恵者たちを見やると、うんざりした顔で話し始める。
「…………殺し合え、だそうだぜ。はた迷惑な話だよな」
ユズルは溜め息を吐き、羊皮紙を投げ出した。
そこに書かれているのは、犯行声明である。
『リブラネスタに居る人々を授恵者の数だけ捕らえ、発火の紋具を仕掛けた。解除したければ授恵者同士で殺し合え。殺し合いを生き延びた授恵者の数だけ人質を燃やす。最終的に全ての授恵者が息絶えれば人質は解放される』―――内容は概ねこんなところだ。
ユズルの表情が渋くなる。
「ハッタリ、で片づけてもいいっちゃいい。その手の悪戯なんて、ギルドにゃいくらでも来てるだろうしな。実際のとこは知らねえが」
タロットを一枚めくる。逆位置の怒れる大熊。
絵柄を一瞥したユズルは言葉を続ける。
「だが……あながち全部が嘘とも言い切れねえ。なんでって、今朝全身油まみれの縄でぐるぐる巻きにされた一般人が転がり込んできたからな……。本気だっていう意思表示のつもりか、そいつは焼け死んだ。で、このまま放置は不味いだろうってことで、ギルドからふたつの依頼が出た」
ユズルは指を二本立て、集まった面々に見せつけた。
「ひとつは、大勢で殺し合いしてるように見せかけるってやつ。もうひとつは、少数精鋭で犯人の居場所を見つけて叩く」
敵は授恵者同士の殺し合いを踊る小熊亭に叩きつけてきた関係上、少なくともリブラネスタ内に―――特に見晴らしの良い場所に居る可能性が高い。
それらを踏まえると、探し出すのは難しくないだろう。
「戦闘については、あんまり気にしなくていいかもな。魔法でも神具でもなく、わざわざ紋具使ってんだ。授恵者では無いと見ていいだろ。適当に殴ればとっ捕まえるのは難しくねえはずだ。……そういうわけだから頼むぜ。人間松明なんて、見てて気分のいいもんじゃないからな……」
解説
マスターより
リプレイ
それらを聞きながら、コルネリウス・アーラは切羽詰まった顔で疾駆し、店と店の隙間に生じた路地裏に駆け込んだ。
暗くジメジメした道を急いで進み、直角になった角を曲がると共にコルネリウスは足を止めた。
数メートル先に、先客が三名。その一人であるイズレンディル・パラリムはコルネリウスを見て表情をやわらげた。
「コルネさん。無事みたいですね」
「は、はいっ! すみません、遅れました……!」
いそいそと近づいてくるコルネリウス。先客の二人目、エル=バ=ノイアンは開いた地図から目を離さないままに言う。
「問題ない、時間通りだ。シルヴィア」
「うん。ノイアン、地図貸して」
ノイアンが黙って差し出した地図を受け取ったシルヴィア・A・カペルは、それを低い位置で開いた。
地図はリブラネスタ全体のもの。シルヴィアは三人を見回し、地図に人差し指を置いた。
「時間も無いし、手早くやろう。まず、小熊亭の人に聞いた見晴らしの良い場所がこことこことここ、それとここ。あとはここ。他にどこかある?」
横から、ノイアンがすっと手を伸ばす。崩れた五角形を作るように指先で地図をなぞり、静かに言う。
「五か所。見張らしの良い場所を住民たちに聞き込んだところ、この辺りも景色がいいそうだ」
シルヴィアは眉をひそめた。
地図全体、街の内側と外側に散らばるように示された、見晴らしの良い場所。
「十か所か……。手分けしていくとしても、多いしどこも場所が離れすぎてる」
「それなんだけど」
口を挟んだイズレンディルの目が、シルヴィアとノイアンの視線とかち合う。
イズレンディルは地図に視線を落とし、東側を指でぐるりと囲む。
「場所は少ししぼれるかもしれない。みんなが戦う場所はリブラネスタの東側に寄せてもらったから、その近くで……」
「あ、私からもいいですか?」
控えめに挙手したコルネリウスが、東側のポイントふたつを指し示す。
「こことここ、今の時間帯だと海が日の光を照り返して眩しいと思います。なので、見やすい場所なら……この辺りにいるんじゃないでしょうか」
十か所あったポイントが、四つにまで絞り込まれた。
希望の見えた面々の顔に真っ直ぐな剣めいた、真摯な表情が浮かぶ。
ノイアンは視線を鋭く尖らせる。
「では、探索ルートだ。俺とシルヴィアが南から。アーラとパラリムは北側から回り込む形にするか。合図は事前に決めた通りに」
四人はアイコンタクトをすると頷き合い、路地を二手に分かれて走り出した。
避難誘導によって人気の消えた街に飛び出し、駆け抜ける。遠く潮風に乗ってやってくる、戦いのサウンドめがけて。
●
昇り切った日に照らされるリブラネスタを見下ろしながら、ボロ衣めいたローブを被った女は昏い瞳を曇らせていた。
高所に作られた資材用倉庫の屋根に立ち、激しく相争う授恵者たちをじっと見つめる。
高速で疾走しながら真横に矢を乱射する者。衝撃波で薙ぎ払う者。腕に光輝くエーテルをまとわせ、防御する者。
鬨の声や鉄同士のぶつかり合う音。彼女が要求した光景が眼下に広がっていた。
だが女は、背中に走る皮を剥がされるような痛みに顔を歪め、体を丸める。
「ッく……! うぅっ……!」
歯を噛みしめ、頭を抱える。
遠く聞こえてくる断末魔の数々が、脳を内側から押し広げるように圧迫し、息苦しさと共に焦げ臭い匂いが残響めいて蘇った。
震え、ぶつかり合う歯の隙間から苦悶を零した女は、表情を憎悪に歪めた。
「くそっ、くそっ……くそぉぉぉぉぉッ!」
吠えると、何度も屋根を蹴りつける。
その慟哭めいて叫ぶ姿を、高台に立ったイズレンディルが見定めた。
瞳が淡く輝き、女が足蹴にする倉庫の中を透過する。
壁の向こうにいくつも転がる、巨大な芋虫のような影。さらに目を凝らすと、それは縄で胴体と足をぐるぐる巻きにされた人間であった。
(……見つけました!)
イズレンディルは高台の柵から身を乗り出し、下方から見上げてくるコルネリウスに手振りで示す。
指差しで方向を、腕を這い進む蛇のように動かしてルートを指示。コルネリウスはすぐに頷き、風めいて駆け出した。
イズレンディルに教えられたルートを、建物の傍に身を寄せるようにして己を隠しながら突き進む。
遠くには、空に浮かぶシルヴィアの霊体が見えた。イズレンディルとハンドサインを交わしている。
(シルヴィアさんたちも気づいたのですね……!)
(あとは犯人を確認出来れば……)
視線を少しずらして目を凝らす。
イズレンディルが指差した方向を、ただじっと見定めて。離れた倉庫の屋根の上に、宙空を眺めながら空虚に笑うローブの人影を見て取った。
女は笑いながら、泣いていた。
(何を、何をしてるんだ、私は……)
目を落とす。その右手には、金属製の松明じみた物体があった。火点けの紋具だ。
女は自嘲気味に笑った。
(授恵者と同じ数の人質など、はったりもいいところ)
(だが、充分だろう……慈悲など、神の力など、役に立たないと知らしめるには)
踵を返し、倉庫の後ろ側に取りつけられた煙突へ足を向ける。
そこから伸びたロープは、倉庫の中の人質に繋がっている。万が一の措置だ。
女が右手に力を込めると、紋具の先が薄っすらと光り、蝋燭のような火を灯した。
(もういい、全て。燃えろ)
力の無い動きで、先端についた火種をロープへと近づける。
小さな火がロープに触れるその寸前、横合いから飛び来た矢が紋具を打ち砕いた。
時をその直前に巻き戻す。
下り坂を全力で駆け下りながら、シルヴィアはこめかみに両手の指を二本ずつ押し当てる。先行し、ぐんぐん距離を離していくノイアンの背中を眉根を寄せて凝視。テレパスを飛ばす。
(ノイアン! まだ加速できる?)
『あと一回だ。シルヴィア、パラリムから何か続報はあるか』
テレパシーでの問い返しを受けたシルヴィアは僅かに顔を上げ、遠くを見つめる。
十二時と一時の間の方向、かなり遠くの建物の二階バルコニーに、ギリギリでイズレンディルの頭と挙げた手が見えた。
手振りを凝視し、メッセージを読み取る。
(何か様子がおかしいみたいで…………いや、待ってくれ。攻撃態勢に入った。弓を構えて……)
『先に行く』
ノイアンは眉間に皺を刻むと黒い風めいて加速!
全力で急加速した彼の瞳は、遥か遠く前方から放たれた矢のように疾駆する人影を捉えた。それはノイアン同様加速したコルネリウス!
コルネリウスは反対側から走ってくるノイアンを見止めると、力強く頷いた。
ノイアンは目を光らせると、女の立つ倉庫の真横に横たわる裏路地に滑り込む。
次の瞬間、頭上から破砕音と狼狽する女の声! ノイアンは一瞬で屈み、跳躍すると倉庫の屋根に躍り出た! そこにいた女が振り返った時には、ノイアンは屋根を走ってタックルをかけていた!
体当たりで隣の軒へ吹き飛ばす!
「ああッ!」
隣の建築物の屋上に落とされ、転がる女。そこへ建築物の壁を速度に任せて駆け上がったコルネリウスが辿り着き、声を張る。
「そこまでです! 動かないでくださいっ!」
「……っ!?」
跳ね起きたローブの女は目を白黒させるが、直後に憤怒の表情で呻いた。
「なぜ、ここにッ……! いや……」
女がローブを振り払い、腰に下げた鉄の蝋燭めいた紋具を引き抜く。先端に灯る小さな火!
「冒険者ギルドの授恵者かッ! 人質なぞどうでもいいと見える! ならば望み通り、焼き払ってやるッ!」
紋具を煙突から出た縄めがけて投げ放つ!
回転しながら飛翔したそれは、しかし路地裏からそびえ立った光の壁にぶつかって跳ね返った。
女と同じ屋上に降り立ったイズレンディルが、エーテルに輝く片手を壁にかざしながら身を起こす。彼が壁を張って防いだのだ。
「そこまでだ、とコルネさんが言ったでしょう? おしまいです」
「伏兵だと……」
イズレンディルを振り返り、狼狽するローブの女。
さらに、女が立つ建築物を中心に六角形を描く光の壁が立ち上がり、空に蓋をする。ハシゴを伝って屋上に昇って来たシルヴィアの光縛封である!
「ふう、やっと追い付いた。君が騒動の犯人だね? ……降伏をお勧めするよ。私たちも、君をいたずらに傷つけるつもりはないんだ」
三人に囲まれた女は、身構えたまま体を強張らせる。
イズレンディルが呼び出したエーテルの壁が消えた先、煙突の縄を下に落としながら、ノイアンは女の方を見やった。
一対三の図式で、逃げ場は無い。女は喪神により力を失った身。三人の授恵者を同時に相手するのは不可能に近い。
状況判断したノイアンは、ひと声かけた。
「そっちは任せる。俺は人質を」
屋根から飛び降り、入り口を探しに行くノイアン。
ローブの女の傷ついた体に、様々な感情が稲妻のように這い回った。彼女は、肩を震わせ―――自嘲気味に笑って脱力すると、その場にぺたんとへたり込んだ。
三人は目配せをすると、コルネリウスが念のために女を狙い撃てるよう魔矢を準備し、シルヴィアが女の背後に回る。
両腕を後ろに回し、縄で縛る。結び目を作りながら、シルヴィアは目を伏せて問いかけた。
「……どうしてこんな事を?」
「どうして……。さあな」
皮肉げに笑いながら、女はポツポツと口を動かす。
「私は……故郷の小さな村で、ただひとり授恵者として暮らしていた。……豊かな村ではなかった。冒険者に払う報酬すら、捻出が難しいような……。その中で、私だけが、魔獣を追い払えた。私しか、いなかった。なのに……」
直後、縄で縛られた腕に渾身の力が込められ、シルヴィアは反射的に下がった。
女は項垂れ、すすり泣きながら、血を吐くように告げる。
「全て……失ったッ! 夜盗どもが村を襲い、戯れに村の皆を殺し尽くしたッ……! 私の力は……肝心な時に、出なくて……打ちのめされて、見ていることしか、出来なかった……! 何故だ!」
コルネリウスの胸にチクリと痛みが走り、イズレンディルが物憂げな眼差しで女を見る。
女から、怒りが噴き出す。
「何故私は失って、お前たちは失わないんだ! 私とお前たちと、一体何が違うと言うんだ! 慈悲の深さか!? 神々の寵愛か!? ふざけるな! そんなもの、そんな、ものッ……!」
女は深く溜め息を吐き、首を振った。
沈黙がその場を圧した。
シルヴィアはローブの背中をじっと見つめる。それは、黒く乾いた血に汚れていた。
やがて、コルネリウスは腕を下ろす。
「罪なき人々に怨みをぶつけて、気持ちは晴れましたか」
「……晴れるものか」
女は乾いた笑みを浮かべた。
「何故かな、わかるんだ。何をしたって、私の力はもう戻らない。死んだ村の人たちも。怒りに身を任せてみれば、少しは晴れると思ったけれど……。ははは……なんだろうな、この気持ちは。五臓六腑が消えたみたいに、体が軽い。虚しい軽さだ。命が、軽い……」
コルネリウスは、やるせない表情で立ち尽くす。
女は誰の顔も見ず、首を振った。
「殺せ……。もういい。私には何もない。守る力さえも失くして……」
「力に縋らないと、生きていけませんか?」
イズレンディルが進み出た。彼は女の下へ歩み寄り、片膝立ちになる。
ローブに息がかかりそうな距離で、柔らかく囁く。
「……落ち着いたら誰かの為に頑張ってみて下さい。御礼の言葉はあなたに生きる気力を与えてくれますよ」
「馬鹿な……」
涙も枯れた無表情で、女は拒絶した。
「守りたかった村人たちも守れず殺され、一体どの面を下げて生きていけと……」
「村の人たちは君を恨んではいないと思う。ただ……村を襲った災厄と、この街を襲った災厄は同じ。無差別に人々を傷つけるもの。君は、君が憎むものになってしまったんだ」
「ならば……!」
「けれど」
顔を上げた女の言葉を制する、イズレンディルの一言。その続きを、意を決して近寄ったコルネリウスが繋ぐ。
「失くした物は戻せません……。苦しみを全て理解は出来ないかもしれないけど……まだ、為せる事はあるのではないでしょうか」
「なんだってできますよ。これだけの行動力があるのでしたら、必ず誰かの力になれます。これから作っていけるものも、あると思います」
女は目を見開き、じっと二人の顔を見つめた。
二人は真っ直ぐに、擦り切れた女の瞳に視線を返す。
シルヴィアはその様子を前にして、厳かに呟く。
「今日の事は許されないけど、君が少しでも心安らかにいられるよう願うよ」
ノイアンが倉庫の正面扉から出ると、近くに女を連れた三人が降りて来ていた。
女は項垂れ、何も言わない。ノイアンはその姿をしばし凝視し、抵抗の気配が無いと悟るとシルヴィアに水を向けた。
「……終わったのか? シルヴィア」
「終わったよ。人質は?」
「全員解放した。油ぎっているが無傷だ。ギルド職員が来るまで、ひとまず待たせるつもりだ」
「うん、わかった」
シルヴィアは微笑むと、コルネリウスとイズレンディルの方を向く。
「それじゃあ、私とノイアンでギルドまで行ってくるから、その間囚われていた人たちを頼む。ほったらかしは良くないだろうしね」
「わかりました」
コルネリウスが頷くと、ノイアンが女の右を、シルヴィアが左を捕まえて歩き出す。
遠くで、戦いは続いている。潮風に乗って流れてくる物騒な音を聞き流しながら、ノイアンは女にアイデアを述べた。
「あんた、猫の世話はできるか? 路地裏の野良猫が増えていて、引き取り手や世話役を探してる。良ければ考えてみてくれ」
女は答えなかった。
シルヴィアとノイアンに両側を固められて連れて行く彼女の背を、コルネリウスとイズレンディルが静かに見送る。
小さく、頼りなく、傷ついた女の背中を遠目にしながら、イズレンディルは不意に尋ねた。
「コルネさん、もし私たちが力を失ったとしたら……どうしますか?」
「力を……?」
コルネリウスはイズレンディルの顔を見、続いて連れていかれる女の後ろ姿を見つめた。それから少し思案し、告げる。
「……わかりません。上手く想像出来なくて……。イズさんは、どうしますか?」
上目遣いに見つめてくるコルネリウス。イズレンディルは、屈託のない微笑を返した。
「私は、今と何も変わりません。私からコルネさんへの気持ちは何も変わりませんからね」
コルネリウスは目を見開き、少し顔を赤くする。
彼女の手を取り、イズレンディルは優しく、力強く近いを立てた。
「何があってもコルネさんと共に支え合って生きていきます。だから、力を失っても平気です」
「そう、ですね……。イズさんが居てくれたら、きっと大丈夫です。私も、貴方をずっとお側で支えます」
照れ臭そうに目を伏せながら、コルネリウスは密かに祈る。
かの者が、心の支えに出会えるように、と。
マスターコメント
ショートシナリオR普通 報酬:標準4 / 4〜4人
2021年07月19日 10時58分42秒 公開
相談掲示板
シルヴィアだ。 シリアスでダークな内容だったから、リクエストした身として成立してほっとしているよ。参加してくれた友人達と、魅力的な依頼にして下さった鹿崎シーカーさんに心からの感謝を。コルネリウス、イズレンディル、ノイアン。今回はよろしくね。 とにかく急いで犯人を捕まえないと。相手は見晴らしの良いところにいるみたいだから、テレパスで連絡を取りつつ分担して探すのが一番効率が良さそうかな。探す前にユズルや小熊亭にいる人々に見晴らしの良い場所をピックアップしてもらえたらとも思っている。捜索は単独行動か、あるいは相手を警戒して二人一組か、か。犯人が人質を盾にするかもしれないから、-捕縛と救助を考えると二人の方が安心かな。 捕縛後は、力を失った元・授恵者にも寄り添いたい……やったことは許されないけど、ね。 私に出来ることがあれば手伝うから、遠慮なく言ってね。
エルフのイズレンディル・パラリムです。と自己紹介は不要ですね。 コルネさん、シルヴィアさん、ノイアンさん。今回は宜しくお願い致します。 殺し合いの演技は他の冒険者の方々がされて、私達4人は犯人を捕縛すれば良いのですね。 ひとまず思いつくところでは、幽体離脱で上空から確認してしまうのが早そうです。 あるいは都市一番の高所からの超視覚、ですね。 見晴らしの良い場所をピックアップして貰って捜索する方針で賛成です。 事前に都市内の捜索ルートを決めましょうか。無駄なく探索する意図と、ルート途中に情報共有の為の合流地点を設ける意図があります。 テレパスは、距離100m以内ですので合流は必要でしょうからね。 発見を急ぐなら単独、発見後の対応を重視するなら二人一組、ですか。 まずは発見を重視したい所ですが、一長一短ですからね。どちらでも良いかとは思います。 特別な何かになりたいという感情は大なり小なり誰にでもあるものですが。 その想いが強すぎたのでしょうか。 隣人の幸せを第一として生きる、それだけで良いのだと私は思いますね…。
コルネリウスです。イズさん、シルヴィアさん、ノイアンさん、よろしくおねがいします! 改めて確認しましたが、犯人を捜索する、が私達の成すべき事ですね。 探索ルートと合流地点を決める、という現状出ている流れで異論はありません。 途中で合流と情報の共有を行うのでしたら、それまでは単独で動いても良いと思いますが、情報共有後から捕縛と救助を行う際には2人組という形でも良いかも知れませんね。 私も出来るだけ心に寄り添いたいと思っています。 罪を償う事も含めて、この後に前へ向ける様になれたらと。
おはよう。ウォーリアのノイアンだ。皆、よろしく頼む。 流れは把握した。異論はない。 幽体離脱…どんな時に使うのかと思っていたが、なるほど。 リブラネスタは港湾都市…ということであれば、見晴らしの良い場所については灯台や監視哨などが思いついたが…あまり具体的に限定してしまうより、聞き込みをして結果を得るほうがいいか。 ワールドガイドなどを読んできたが、リブラネスタ市中については詳しい記述がなかったので…東西南北でざっくりわける感じだろうか。 …犯人へのケアについてだが、俺はどうにもそういうのが不得手な性分だ。その点あんたたちは信頼できるし、任せたい。
三人と一緒で本当に心強いよ。改めてよろしくね。 テレパスって意外と距離が短いんだね……! 申し訳ない、気づいてなかった()イズレンディルは指摘ありがとう。 捜索方針も了解だ。今回の依頼は四人だからね、捜索するならそれぞれが単独行動で動いた方が良さそうだ。合流と情報共有の後、二人一組になって捕縛・救助に動くというコルネリウスの案も大賛成。発火型紋具がどんな風に発動するのか分からなくて……犯人と対峙する時には、一緒にいる人と連携を取れたらと思ってるよ。勿論居場所を一つに絞り込めたら、皆で犯人を捕まえたい。 幽体離脱と聴視覚、見晴らしの良い場所のピックアップは分担した方が良さそうかな? 実は私はまだどちらのスキルも取れていないんだけど、取ろうと思えば取れる状態だ。今持ってる人がいないかと、やりたい分担がある人がいないかどうかを確認させてもらえたら嬉しい。
そうですね。では流れとしては単独での情報収集と捜索→合流後に2:2で分かれて捕縛・救助へ向かう流れで。 一か所に絞り込めた場合は皆で纏まって行きましょうか。 組む場合の分け方は前衛・後衛同士で動きやすい事や連携のし易さも踏まえて、私とイズさん、ノイアンさんとシルヴィアさんというペアが良いかなと思いますが、如何でしょう。 見晴らしの良い場所や高い所からの探索などは分担出来たら良いですね。 私は役割としてこれという希望はありませんのが、出来れば地上から連携が出来たらと思いますので、高所からの確認などは希望者にお任せしても宜しいでしょうか?
私もリブラネスタの情報は調べてみたのですが、地形や建造物の情報は無いのですよね。 私も事前の聞き込みや地図等から「見晴らしの良い場所」のピックアップする、等で良いと思います。 後は、冒険者同士が戦う場所も教えて頂く、あるいは、可能ならこちらから指定しましょうか。 怪しまれない程度に場所を散らす必要はありますが、捜索場所を絞ることは出来る筈です。 スキルについては、私は超視覚を持っておりますね。 幽体離脱も必要でしたら取得致しますね。 組合せもコルネさんのご提案に賛成ですので、その場合は私が高所から周辺を確認する役割を担いますね。 目標を発見した場合に、それを伝える方法だけが悩ましいですね。 こちらは高所から手振り・手旗等で合図をするようにしましょうか? 定期的に、事前に取り決めた高所ポイントを確認する、とすれば問題ないかと思います。
2人1組だな。 組み合わせと、「情報収集・捜索→合流後に捕縛・救助」の流れも了解だ。 情報収集も「見晴らしの良い場所のピックアップ」で。 こちら、超視覚も幽体離脱も取得は、やろうと思えば。 ステ値まで厳密に考える必要はないかもしれないが、俺は機動力を生かせる地上からいこう。 目標を発見した場合の合図だが、狼煙のように魔法を打ち上げるというのはどうだろう。魔矢であれば俺も使えるし、射程は60m…手振り手旗よりは遠方からも確認しやすくなると思う。
間が空いてしまってごめんね。 ペアについても了解だ。ノイアン、改めてよろしくね。 冒険者同士が戦う場所を教えてもらう(可能なら指定)もとても良い案だ。イズレンディル、お願いしても良いかな? 字数が難しい場合は言ってもらえれば書かせてもらうよ。 分担は、コルネリウスとノイアンが地上、イズレンディルが高所・聴視覚だね。それなら私は高所・幽体離脱にしよう。自身の体から移動できるのは100m程度までらしいから、まずは高所に登らないとね。イズレンディルとは別方向の高所にするよ。 目標を発見した時の合図か……悩ましいね。 ええと、オープニングを見る限り時間帯は昼、天気は晴れなのかな。殺し合いを見るつもりならさすがに雨・夜ということは無いだろう。事前に取り決めた高所からなら、手旗でも見えると思う。もし遠方の仲間が手旗に気づかない場合は魔矢を真上に一発、で良さそうだ。犯人に警戒されないように、出来るだけ手旗にしたい。
了解しました。冒険者同士の場所の指定は私の方でプレイングに記載致しますね。 字数の都合は余裕がありそうですので大丈夫だと思います。 スキルは、では私は超視覚の担当ですね。幽体離脱は最大HPが減少するので使用回数にだけはご注意くださいね。 目標を発見した場合の合図については、そうですね。 手振り・手旗等でご提案させて頂いたのはシルヴィアさんの仰る通りの理由で。 犯人に見つかると警戒される恐れがありますので、なるべく目立たない手段でと考えてですね。
分担、了解だ。 ああ、冒険者同士が戦っているなら魔法も飛ぶだろうし、余波という扱いでどうにかなるかと思ってのことだったんだが…わかった、確実な安全性を取ろう。…あまり有益な提案ができずにすまない。 あと、詰めることは…
場所の指定はイズさんが書いてくださるのならお任せしますね、お願いします。 目標発見の合図についても、警戒されないようにという流れで異論ありません。 当日についての天候や時間帯は、シルヴィアさんの仰るように昼・晴れと考えるのが自然かもしれませんね。 私も超視覚は持ちますし、注意して確認をするようにします。
幽体離脱、中々面白いスキルだね。最大生命値が減少するのは驚いたけど、偵察には使いやすそうだ。イズレンディル、心配してくれてありがとう。 コルネリウスの聴視覚も心強いよ。当日はよろしくね。 作戦部分はこれで大丈夫だと思う。あとは犯人とどう関わるか、それぞれが考える形になるかな。冒険者同士の場所の指定も字数が足りそうで良かった。其方もよろしく頼むよ。
承知した。 背後事情で申し訳ないが少しバタバタしていて…今夜提出したもので出発することになると思う。もしこれ以降の相談内容が反映できず矛盾が出る場合は、皆の行動を優先してもらう予定だ。