【学乱】卓上の魔女は白黒つけたい
空色みなも
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シナリオID:1112
オープニング
冒険者たちが呼び集められたのは、パンクリアース学園の一室。
見渡せば、一面が棚となった壁に大小さまざまな箱が並ぶ。
この部屋は、学園の中でも卓上遊戯部が使用する部室である。
棚に置かれた箱には、遊戯に使用する小道具が詰め込まれているのだろう。
「今回、皆さんにお願いしたいのは……私たち卓上遊戯部員が遊戯を練習する相手を務めて頂きたいのです」
ごく日常的な依頼の内容から受ける印象に反し、卓上遊戯部の部長リーブス・リテラスは深刻そうな顔で冒険者たちに告げる。
何かあったのか、と冒険者が尋ねれば、リーブスに代わって一人の少女が口を開いた。
「というのも、ついに私の実家から干渉が始まったのです」
説明を継いだのはジュエリア・シャイニー、卓上遊戯部の副部長。
ジュエリアは貴族派貴族の出身であり、王党派貴族出身のリーブスが部長を務める卓上遊戯部に通うのを、実家から快く思われていなかったのだ。
そして、パンクリアース学園で生徒会総選挙に向けた動きが本格的となった今、いよいよジュエリアの自由を縛ろうと実家が動いたという。
しかし、それがどうして卓上遊戯の練習という話に繋がるのか。
冒険者たちが疑問符を頭に浮かべているのに気づいたのか、さらにジュエリアが続ける。
「実は……父は私を諦めさせるためか、父が差し向けた者と卓上遊戯で勝負して、負ければ言いつけを守るようにと言ってきました」
負けた際のペナルティを設ける代わりに、勝てば一定の自由を認めるとすることで、ジュエリアが勝負を受けざる得ないよう、誘導されたのだとか。
「しかし、父はきっと強豪のプレイヤーを雇って刺客として送り込んでくることでしょう……それで、私たちには特訓が必要なのです」
ジュエリアにより事情は明らかとなったが、冒険者たちにはまだ分からないことがあった。
それでまた、卓上遊戯部員全員が練習する必要があるというのは、どうしたことか。
「シャイニー先輩が挑まれたのは、卓上遊戯部に対する団体戦なんです。それも……全ての競技をこなすには四人が必要な」
そこで補足を加えたのがハンデルス・トレイダー、平民出身の卓上遊戯部員だ。
なるほど、と冒険者たちが納得して部員たちを見回すと……そこに集まっていたのは三人。
「その、シャイニー先輩も勝負を受けた後に競技を聞かされたそうなのですが……このままじゃ、足りないんです」
ハンデルスによると、競技のメニューには一対一で行う遊戯もあれば、最大で四対四で行うチーム戦も含まれていたのだとか。
あと一人を用意するくらいのこと、できないことでもないはずだ、などとジュエリアの父も譲らず、売り言葉に買い言葉と言うべきか、ジュエリアも最終的には条件を飲んでしまったのだという。
「そちらの勧誘のほうも、学内で行わなければならないのですが……」
ハンデルスが肩を落としているのを見るに、四人目の誘致については順調ではないのだろう。
このままでは依頼を受けたとして、ジュエリアたちの最終目標は達成できないのではないか、と冒険者たちが顔を見合わせていると――。
「話は聞かせて頂きましたわ!」
バンッ、とけたたましい音を響かせながら部室の扉を開け放って現れたのは、巻き毛の金髪――カーリィ・ブロンドだった。
●
「本当にいいの? あたしの部活動に、あなたも最初反対してたわよね?」
「ここでアナタに恩を着せておくのも悪くないと思っただけですわ」
気遣わしげに尋ねるジュエリアに対し、カーリィはあくまで素っ気ない態度を装っていた。
だが、協力しようと自発的に声をかけてきたのだから、カーリィもジュエリアを思っての行動なのだろう。
「一応、教えておくけど、これで勝てたら選挙でどうするかもあたしの自由になるわよ?」
「わ、分かっておりますわ。それを含めて、恩として売りつけておくのですわ」
ジュエリアの言うように、貴族派を推しているカーリィにとって、卓上遊戯部の勝利は選挙のうえでは不利に働くはずだ。
もとはジュエリアが卓上遊戯部に通うのを引き留めようとしていたカーリィも、前に冒険者たちと共に卓を囲んだことによって心変わりしたらしい。
「面子も揃ったことですし、練習する遊戯を説明していきますね。まずは一対一で行う遊戯のうちの一つをやりましょう」
手始めにといってリーブスがテーブルに広げたのは、宝石が一個ずつ描かれた15枚のカード。
冒険者たちがカードを手に取って確かめると、描かれた宝石には赤緑青と色の異なる三種類が存在していた。
「参加者がそれぞれ宝石ポーションを作る魔女になって、できるだけ少ない宝石で、より多くのポーションを作ろうと張り合う遊戯です」
リーブスによると、ランダムな方法で決めた先手が黒の魔女、後手が白の魔女となるそうだ。
「宝石のカードは色によって枚数が異なり、赤が6枚、緑が5枚、青が4枚あります。裏向きにしてよく混ぜ、ゲームの開始時に中身を見ないまま1枚取り除き、残った14枚を裏向きの山にします」
この14枚の山札がポーションを作るための窯を表していると、リーブスは世界観の説明も入念に行う。
「また、作るべきポーションのレシピタイルを7枚あるうちから1枚ランダムに中央に置き、残りは表向きにして脇に並べておきます」
そこでリーブスが新たに取り出したタイルを見ると、そこには色とりどりのポーションが描かれていた。
また、タイルには数個ずつの宝石のアイコンが記されており、そのポーションを作るために最低限必要な宝石の種類と個数を表しているらしい。
「ここまでが開始前の準備です。実際の遊戯に入って、手番にとれる行動は三種類あります」
その三種類の行動とは『宝石の節約』『ポーションの増産』『有言実行の要求』であると、リーブスは言う。
「『宝石の節約』は、宝石の山札から1枚を引き、自分だけ中身を見たうえで、脇に除けます。これを行うと、相手に手番が渡ります」
私はこれより少ない材料でポーションを作っておみせしますわ、と魔女が言ってのける様子を、リーブスは演じてみせた。
「『ポーションの増産』は、まだ使われてないレシピタイルから一枚を選んで、中央に積まれたレシピの山に追加します。これを行なっても、相手に手番が渡ります」
あら、これだけの材料があれば私はもっと沢山のポーションを作っておみせしますわ、とやはり律義に演技するリーブス。
「最後に『有言実行の要求』ですが、これをどちらかが行うと遊戯の勝敗決定に移ります」
そこまで言うならやってごらんなさい、とリーブスが熱演を交えて行った説明を要約すると。
勝敗は残された材料で実際にポーションを作り切れるかで決まるらしい。
窯である山札に残った宝石の種類と個数を確認し、中央に積まれたレシピタイルに記された材料の合計に足りていたら、ポーションの作成は成功。
材料として必要な宝石が足りていなかったら、ポーションの作成は失敗し、ついでに何故か大爆発が起こるのだとか。
ポーションの作成が失敗した場合は『有限実行の要求』を行った側の勝ち。
逆にポーションの作成が成功した場合は『有限実行の要求』を相手からされた側が勝つということだ。
「ルールは以上です。練習ですし、まずはとにかくやってみましょう」
説明を終えたリーブスに促され、こうして卓上遊戯部の強化練習会が開始されたのだった。
解説
マスターより
リプレイ
「カーリィさん……ありがとうございます! 卓上遊戯の楽しさを知って頂けたんですね! いっそのこと、もう入部してしまっては?」
「に、入部ですって? と、とにかく! 今はわたくしのことより、ジュエリアさんのことですわ」
ルアンナ・ミュラーから飛び出た言葉が思いがけなかったのか、カーリィ・ブロンドは狼狽えるも、ジュエリア・シャイニーに水を向けることで誤魔化した。
「本日は私のお相手をしてくださるそうで……よろしくお願いします、ミュラーさん」
「ええ、よろしくお願いしますね。そして始める前に、一つ言っておくことがあります――」
前に進み出たジュエリアを真っすぐに見つめながら、ルアンナが改まった顔をする。
「勝つことも重要だと考えているのは分かっています。ですが、遊戯を楽しむ気持ちを忘れてはいけませんよ」
ルアンナの忠告に、思いつめたような顔をしていたジュエリアは、何かにハッと気づいたようだった。
「よ、カーリィの嬢ちゃん。こないだぶりだな」
ヴァンゲルス・ロッドが片手を軽く挙げて挨拶すると、カーリィも簡単な礼により応える。
「ククッ、恩を売りつけておく、ねぇ……」
さも可笑しそうにヴァンゲルスが笑ったものだから、何を言われるものかとカーリィが身構えた。
「いや、お前さんもなかなか可愛いトコあんじゃねぇか、と思ってな」
「うっ……」
ヴァンゲルスにそう言われては、カーリィも言葉がないといったご様子。
「相手として俺の能力がお前さんの腕前に釣り合うかどうかは分かんねェが、やれるだけのことはやってみよう。手合わせ、宜しく頼むな」
「ええ、望むところですわ!」
ニカッと笑ったヴァンゲルスに、カーリィはあくまで威勢よく応じたのだった。
「ご実家からの干渉、ですか……ヒューマンの社会というのはとても複雑ですね……」
リディリディ・トゥラ・イェレミースはジュエリアへの力添えを望みつつも、フィルエス大森林を出て一年に満たないエルフにとって、王国のヒューマン社会は理解し難いものであるとも感じていた。
「せめて、今回の趣旨である卓上遊戯の練習には付き合わせてもらいます……」
ならば自分にも出来ることをするのみと、リディリディはこれから行われる遊戯に対し前向きだ。
「相手は……トレイダーさんにお願いできると嬉しいです」
「僕、ですね。よろしくお願いします」
リディリディに指名され、ペコリと礼をするハンデルス・トレイダー。
すでに卓上遊戯部において貴族と接しているので今更ともいえるが、リディリディとしては平民であるハンデルスが相手のほうが気楽であった。
もっとも、卓上遊戯部に出入りする貴族の生徒は、あまり貴族らしさを前面に出していないからこそ、リディリディも問題なく接することができていたのだが。
「リーブス様は卓上遊戯部の現部長でいらっしゃるので、初心者のわたしがお手伝いできることに限りがあるかもしれませんが……」
卓上遊戯について、ゲルダ・クラインは前に卓上遊戯部で経験したばかりの初心者だ。
部長であるリーブス・リテラスと対戦することとなり、若干、緊張気味であったが――。
「ええと、少しでもお役に立てるように……精一杯、がんばりますねっ!」
「はい、そのお気持ちがとても嬉しいです」
ゲルダが胸の前でギュッと手を握ったのを見て、リーブスは顔に柔らかい笑みを浮かべた。
●
「赤3枚、緑3枚、青3枚が窯に入っていました。レシピは赤3枚、緑1枚、青2枚ですから、ポーション作りは成功ですね」
「なるほど……流石は卓上遊戯部の部員さん、ですね」
前哨戦をハンデルスが制したのを受け、リディリディが素直に感心した様子を見せる。
「あの。そういえばイェレミースさんは何故、僕をご指名に?」
「その……貴族の方よりは、お話しするのに気が楽かなと。決して、ここの貴族の方が悪いわけでは、ありませんが」
ハンデルスが恐る恐る行った問いかけに、包み隠すでもなく正直に答えるリディリディ。
「なるほど、分かるような気がします。僕も入学したての頃は、平民の自分が貴族にどう接していいか、戸惑って……」
「そうだったのですね……」
ハンデルスが過去を懐かしむように語るのを、リディリディも静かに聞いている。
「でも、卓上遊戯部で先輩方と出会って、苦手意識はどこかへ行ってしまいましたね。だから、僕もシャイニー先輩の力にならないと」
「私も、お力添えします……今ので感覚は掴めましたし、もう一勝負いたしましょう」
確かな使命感でことに臨もうとしているハンデルスと目を合わせ、こくりとリディリディが頷く。
「最初のレシピタイルはグラスグリーン……緑が2枚、必要です」
先手をとったリディリディは、タイルの内容を確認すると、山札に手を伸ばす。
引いたカードの色は緑、これをしっかりと頭に刻み込むリディリディ。
ここからハンデルスもカードを引き、リディリディが再びカードを引くと今度は青。
(対戦相手の性格や、表情を読むのも重要なんでしょうね……)
リディリディはさらにカードを引いたハンデルスの表情に余裕を見て取り、ここから動きを変える。
「ブラッドレッドを追加します……赤の必要な枚数が2枚になりました」
リディリディによるポーション増産を受け、しかしなおハンデルスはカードを引く。
「追加、ムーンイエロー……現在のレシピは赤3枚、緑3枚です」
「む……では僕はマジックパープルを追加します。赤4枚、緑3枚、青1枚があると踏みます」
ここでリディリディとハンデルスのポーション増産の応酬が起こり――。
「……有言実行を、要求します」
機は熟したと見たリディリディによるチャレンジ。
結果、窯に残っていたのは赤5枚、緑2枚、青2枚。
緑が足りず、リディリディの勝利となる。
「いやあ、もうコツを掴まれるなんて流石ですね」
「負けたときこそ、手を見直すチャンスですよ……カードを引いた順番は覚えていますか? ここまでの手を再現してみましょう」
ハンデルスが悔しがるでもなく、リディリディの適応力に感嘆していた。
リディリディはそんなハンデルスに対し、遊戯の上達という会の趣旨に沿って、感想戦を持ちかけたのだった。
●
「必要なのは赤2枚、緑3枚、青2枚……窯にあるのは赤2枚、緑2枚、青3枚で緑が足りませんね」
「ありがとうございます。まだ最初ですし、ゲルダさんならすぐに慣れるでしょう」
ゲルダも初戦の勝利はリーブスに譲る形となっていた。
「なんていうか、心理戦の側面が強い遊戯ですよね」
二戦目を開始すべくレシピタイルをめくりながら、ゲルダは一戦して掴んだ遊戯の特徴を分析していく。
今度の初期のレシピタイルはブラッドレッド、必要な宝石は赤2枚だ。
先手をとったリーブスは、宝石の節約としてカードを引く。
(対戦相手の表情に、不利が現れる瞬間があるかも)
ゲルダはリーブスの表情をじっと観察する。
遊戯が開始したばかりのこの段階では、その表情には余裕を感じられる。
この表情に変化が生まれたときこそが――ゲルダが仕掛けるべきときだ。
ゲルダは油断なくリーブスの様子に注意を払いながら、カードを引く。
そのカードは、赤。
リーブスは特に躊躇うこともなく、次のカードを引く。
まだ余裕があると踏んだゲルダが次に引いたカードは青。
ここに来て、リーブスはひたすらカードを引き続けている。
「では、クリアスカイを生産計画に加えましょう。赤2枚、緑1枚、青1枚が必要です」
そこでゲルダはポーションの増産を行うことで揺さぶっていく。
ここで初めて、リーブスは少し考えるような間をとる。
しかし、ややあってリーブスの手は山札へと伸び、カードを引いていく。
「パーフェクトホワイトを加えます。赤3枚、緑2枚、青2枚……これでいかがですか?」
ゲルダがちらりとリーブスの顔を見上げると。
その表情からは余裕が失われており、結果としてカードを引くことをわずかに躊躇ったように感じた。
「ここで有言実行の要求をしましょう」
そこでゲルダが自信を持って仕掛けると、はたして窯に残されていたカードは赤3枚、緑3枚、青1枚と青が不足していた。
「いや、お見事です」
「部長様なだけあって、リーブス様も手は流石に堅実でした……ですが」
リーブスが感心してみせる中、ゲルダは上達に生かして貰うべく、気付いた点を共有しようとする。
「表情が分かりやすいので、相手が有言実行の要求を行うタイミングを誤らせることは難しいかもしれませんね」
「なるほど……表情ですか。それは盲点でした」
ゲルダの指摘に、目から鱗が落ちた、といった様子のリーブス。
「材料に余裕があっても、自然な感じに不安な表情を出せたら、相手の有言実行の要求を誘うことができる……逆もまた然り、かと」
こうしたゲルダのアイデアを実践できるようにするため、その後もリーブスとゲルダの練習試合は続いた。
●
「ふーむ、ポーションづくり、か。またおもしれぇゲーム持って来たじゃねぇか」
ヴァンゲルスは遊戯に使う小道具一式を手に取り、興味深そうにしげしげと眺める。
「俺もまだルールをきっちり理解したとは言い難いが……ま、これは練習だからな。肩の力を抜いてやるとするか」
ヴァンゲルスは手始めにと、カーリィと一戦してみることにする。
「青が足りてねぇ可能性があるかと思ったが足りてたか……やるじゃねぇか、嬢ちゃん」
「今のは運がわたくしに味方しましてよ」
ヴァンゲルスの初戦の結果は、カーリィの勝利であった。
「だが、次はそう簡単にはいかねぇぜ」
負けっぱなしで終わるつもりはないと、ヴァンゲルスは二戦目の初期タイルを配置する。
現れたタイルはムーンイエロー、これにより必要な宝石は赤1枚、緑1枚となる。
「ふむ……マジックパープルを増産しますわ。赤2枚、緑1枚、青1枚がレシピでしてよ」
「じゃあ俺はクリアスカイも追加で作るぜ。全色2枚ずつ必要にしてやろう」
奇しくも、カーリィとヴァンゲルスはともに初手でポーションの増産を行っていくスタイルだった。
盤面が出来上がったところで、窯から宝石を削っていくチキンレースが始まる。
カーリィが1枚カードをめくったのを見て、ヴァンゲルスもカードを引く。
赤の宝石が出たのを確認したヴァンゲルスは、それをしっかりと記憶に留め置く。
(作成に失敗する可能性がゼロでなくなった瞬間に仕掛けてもいいんだが……一先ずは様子見、だな)
ヴァンゲルスの鋭い視線の先で、カーリィが2枚目のカードを引いていた。
可能性としては青の宝石が足りない場合も存在するが、確率は低いので仕掛けるのは見送る。
続けてヴァンゲルスの引いたカードは――緑。
カーリィは慎重派なのか、3枚目のカードに手を付けた。
さらにヴァンゲルスが引いたカードには青の宝石が描かれており、これで赤緑青は少なくとも一枚ずつ欠けていることになる。
「よし、ここで有言実行の要求だ。嬢ちゃんと俺、果たしてどちらに勝利の女神が微笑むか、見届けようじゃねぇか」
ヴァンゲルスはカーリィが4枚目のカードを引いたところで、勝負に出た。
窯に残されていたのは、赤3枚、緑3枚、青1枚。
勝利の女神はヴァンゲルスに微笑んだ。
「勝ち負けは別にしても、楽しい勝負であったことには違いない。最後に互いの健闘を讃え合おうじゃねぇか」
ヴァンゲルスは戦いの終わりに、カーリィに向けスッと手を差し出す。
「っと、お貴族様は、平民と触れ合うなんてのはお嫌かね? なら無理強いはしないが」
ヴァンゲルスはカーリィが逡巡しているのを見抜いて、相手の立場を気遣う。
「い、嫌だなんてまさか! お父様がお怒りになったらヴァンさんにご迷惑をおかけするかもと思っただけですわ。でも、この場にお父様はいらっしゃいませんわよね。これは内緒、ですわよ?」
カーリィの迷いも、カーリィなりにヴァンゲルスを気遣ってのものだったようだ。
最後に二人は、しっかりと握手を交わした。
●
「窯は赤5枚、緑3枚、青2枚……緑が3枚、青が3枚は必要ですから、青が足りませんね。なるほど、やられました」
ルアンナが山札の残りを数え終え、ジュエリアの勝利を告げる。
しかしルアンナの表情は笑顔だ。
それは、遊戯を純粋に楽しんでいるからに他ならない。
「もう一勝負、お願いできますか」
「ええ、もちろんです」
何としても遊戯をものにしようと考えているかのように、ジュエリアは再戦を申し込む。
ルアンナも快くそれを引き受けた。
「最初のレシピタイルはパーフェクトホワイトですね。赤1枚、緑1枚、青1枚が必要です」
白く輝く液体を湛えた瓶が描かれたタイルをめくり、ルアンナはその内容を読み上げる。
その後、山札から1枚のカードを取り除き、二人の勝負が始まった。
(赤、ですか。一番多い宝石ですし、まだ余裕はありそうですね)
今回、先手はルアンナだった。
カードを1枚引き、その中身を確認するルアンナ。
ちらりとジュエリアを見ると、ジュエリアもカードを引いている。
さらにルアンナがカードを引くと、これも赤。
まだジュエリアに動く気配はなく、やはりカードを引いた。
「では、ポーションを増産しましょう……オーシャンブルー。これで青は3枚必要になりました」
「……有言実行を要求します」
存在する枚数が少ない青の必要数をルアンナが強気に増やしたため、ジュエリアがここで動く。
「赤3枚、緑4枚……そして青が3枚で足りたので、今度は私の勝ちですね」
山札を数えたルアンナが正面を見やると、ジュエリアはどうにも固い顔をしている。
「……ジュエリアさん、ちょっとお時間を頂けますか」
それを見てふっと息を吐いたルアンナは、ジュエリアを部室から連れ出した――。
●
「部長が対立派閥の家の子だからって出入りを禁止しようだなんて……ふざけるなー!」
ルアンナの魔法が、的である土くれの人形を粉微塵に吹き飛ばす。
「卓上遊戯部で選挙の結果が左右されることなんてないのに!」
追い打ちをかけるように、ルアンナの魔法がもう一発。
ルアンナはジュエリアを訓練場に連れ出し、憂さ晴らしに誘っていたのだ。
「ほら、ジュエリアさんも」
ルアンナは訓練用の武器をジュエリアに持たせる。
「あたしはっ! 親の所有物じゃないっ!」
スゥと大きく息を吸い、胸を膨らませたジュエリアは、思いっきり叫びながら土人形をボコボコにした。
●
「どう、スッキリしたでしょ?」
「はい……これで迷いはなくなりました」
部室へと戻る間も、ルアンナはジュエリアにアドバイスを送っていた。
「相手はなんとしてでも勝ちにくるかも。イカサマにも注意してね」
ルアンナは、今回の勝負が公正に行われるかも心配していたようだ。
「ええ、不正はなんとしても、私が許しませんから」
力強く頷いたジュエリアの顔には、頼もしさが満ちていたのだった。
マスターコメント
ショートシナリオ普通 報酬:標準4 / 4〜4人
2021年07月16日 12時42分04秒 公開
参加者
ゲルダ・クライン
ルアンナ・ミュラー
- イェレミース トゥラ リディリディ
ヴァンゲルス・ロッド
相談掲示板
お、全員揃ったか。前回と同じ面子だな。 今回も宜しく頼む。 とは言っても、今回は各自で動くスタイルだな。ま、練習っつーことだし、肩の力を抜いてやろうかね。
前回と同じメンバーですね、よろしくお願いします! 今回は勝負の為の練習ですか、またまた卓上遊戯部は厄介な事になってますね…。
No.3
今回もメンバーは同じなんですね。 そ、その・・・、よろしくお願いします。 宝石でポーションを作るというゲームですか・・・。 1対1を4回といったように進めていくんですね。 誰が誰を相手にするかは決めておきます?
ゲルダです。よろしくお願いします。 前回と同じ方々がお揃いになっていて、……その、自信はなかったのですが、思い切って参加してしましました。 対戦相手……個人的にはどなたとでも大丈夫ですので、マスターさんにおまかせする形になるかな、と。 希望する対戦相手の方がいらっしゃる場合、重複を避けるためにあらかじめここで提示していただくのがよさそうですねっ
>対戦相手 私はジュエリアさんと一緒にやりたいと思います。 終わった後にちょっと付き合って欲しい事があるので…。
>対戦相手 俺も誰でも構わねぇと思っていたが……そうだな、折角だからカーリィの嬢ちゃんと一緒にやることにするか。 とはいえ、どうしてもという訳じゃねぇ、他に希望者がいるなら俺は譲るつもりだから遠慮なく言ってくれ。
No.7
では私は・・・。 トレイダーさんにお相手してもらうことにします。 平民のようなので、まだ気が楽かなと思いました。 前回、前々回がありましたから、今更ですが・・・。
ええと、……では、わたしはリーブス様のお相手、ですね。 お役に立てるよう、たくさんたくさんがんばりますねっ