【砂海】勇者の船(リメイク)

DoLLer

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シナリオID:1100

オープニング

 リーンエス王国西部に広がるシラー砂漠。未開の地として、またバルバロイの巣窟として知られているが、そこにも確かに人の営みはあった。多くは点在するオアシスに住居し、砂漠を旅する旅人、また交易商などを相手しながら僅かながらの栽培と狩猟で生計を立てていた。
 だがそれもすべてオアシスあってのもの。恵みの水が干上がれば営みもまた消えてしまう。砂漠奥地にあるオアシスもまたその営みを間もなく砂に埋もれようとしていた。

「新しいオアシスは結局見当たらずだ。我々の採れる方法は、近隣の部族に合流すること、王国で生活することのどちらかだ」
 族長は静かにそう言った。だが円陣となって集うオアシスの民は皆知っていた。そのどれもが事実上、危険が高いということが。
 近隣の部族とて生活が楽なわけではない。自分達が拒否される可能性は高くそうなれば飢え死は確定だ。また迎え入れてもらうことはできても奴隷のように扱われることもある。
 また王国までは非常に遠い。授恵者ならともかく一般人にはこの砂漠を越えて王国にたどり着く前に多くが命を失うだろう。砂漠の民と言えどオアシスを離れれば死と隣り合わせなのである。
「身重もいるんだ。子供もいる。老人もいる。何人生き残るやら……」
「せめて砂海のオアシスに行くことができればなぁ」
 人々は落胆し、そして枯れたオアシスの遥か向こうに浮かぶ新しいオアシスを見つめては呟いた。
「なぁ、なんとかならんか」
 誰ともなしに呟かれたその言葉に、集落の人々の視線は紋具使いの青年に移された。この集落唯一の紋具使いであった。
 砂海は砂漠にあってまったく別物の世界だ。
 砂の粒子が極めて細かく一歩踏み込むだけで体が全て水没ならぬ砂没し、窒息死する。生態系もそれに見合い魚類に似た構造の生き物が住まうくらいだ。
 そこに本物のオアシスが現れた。水脈から直接水を食らって大きくなったサバクジラという生き物がそこで死亡し、新たなオアシスとなったのだ。
 だが砂海を渡る手段がなければ指をくわえて見つめるしかない。
「水を運んでくるぐらいしか。でもそれも焼け石に水だよな」
「船はもう一隻作れんのか?」
「核がダメなんだ。ルーフィアっていう少女が夢に出てきて紋具の作り方を教えてもらった時を除いて、一度も成功したことないんだ」
 何度も願った。時には王国の紋具使いにも相談したが、実りはなかった。
「じゃあ、この船でみんなしてあの砂海のオアシスに渡ろうよ。生き物もいるし」
「でもこの船が壊れたらそれこそ……」
 結局その後も話し合いでは結論は出なかった。

 夜。紋具使いの青年は核を取り外していた。
「この核だけ砂海に浮くのはなんでだ……?」
 わからない。わからない。紋具使いとは言ってもわからないことばかりだ。
 それが楽しさでもあるが、今、それはひっ迫した問題でもあった。なんとしてもきっかけをつかまないと。
 分解し、組み立て直し、砂をかけ。水に浸し。
「!?」
 泥水をかけた瞬間だった。砂から分離した水がわずかに躍った。一人でに跳ねるその姿は透明な妖精でもいるのではないかと思わせるほどだった。
「砂海の水分と砂の成分の混合率の問題なのか」
 こんな紋具の細かな設定どうやってできたのか。今はもうわからない。複製はやはりできないだろう。
 だけど、集落の人間の命を守る何かはできそうだった。

「核は一つだけで複製もやはりできません。だけど、水と反発するというなら……あの砂海のオアシスをこっちに持ってくることはできるんじゃないかと思います」
 水に反発するなら推進力にできるのは何も船だけではない。
 水路に設置すれば、水を送り出す装置にだってなれるはずだ。
 もしくは線路のようなものを作って定期路線を作ればあちらで居住することも可能かもしれない。
「でもそうしたら……」
「まだ植物は死んでいない。水があればすぐにでも生き返るでしょう。植物が蘇れば生き物の命だって」
「それはわかる。でもあんたの最高傑作だっていったその船は……」
 砂海船。それは紋具使いの男の最高傑作だった。
 これで未知の世界を旅し、冒険者達と共に怪物と戦った記憶は今でも決して色あせることはない。
 青年はにこりと笑った。
「勇者の船という紋具使いの有名な逸話があります。偉大な船は長い冒険に使われ、人は変わり、船の部品も次々交換されていった。その全てが入れ替わった時それは元のテセウスの船だったのだろうかという命題があるんですが、人が認める限り同じ船だと思うんです」
 青年は砂海船を見上げて呟いた。
「姿かたちが変わったとしても、砂上の浪漫号であることは変わりないと」

解説

 とある砂漠でオアシスが枯れようとしています。  その対策として、砂海を渡る船の核である紋具を使っての対処を求めています。皆様は共にアイデアを出し合い、今、死に瀕しているオアシスとそこを住居にする部族の運命を救う事です。  砂海船の核は砂海においてのみ、「水および水のエーテル」と反発する性質を持っています。該当するスキルを持った人間が集まり、長い研究によれば複製できるかもしれませんが、今はできないとします。  核はスイカくらいの大きさです。  青年からは「砂海にあるオアシスに水路を設けて核を使って押し出す」「砂海に板を渡し、核を使ったトロッコ状のものを作って定期往来をする」の二案を上げています。  参加者で他の案があればそれに従うことも可能です。  その他資材は常識的範囲であれば、集落の備蓄があるとしたり、交易商に持ってきてもらう、PCが買い付けて運ぶ、などが可能です。

マスターより

 間が途中随分と空いてしまいましたが、【砂海】シリーズ最終回です。シリーズといっても制限はありませんので、今回のお話が気になった方であればどなたでも参加OKです。  先に建造した船は砂漠の魚を採るには適していますが、水そのものを継続的に運ぶのには(核の性質もあり)不適当ですので、魔改造する。というのが主目的です。  勇者の船とはテセウスの船のことですね。これがシナリオアイデアの発端でした。船の人生を作り上げるという一面もこのストーリーは持ち合わせていました。(誕生・大きな山場・その後)  オアシスの、集落の、船の、運命をぜひあなた達の手で最高の物にしてあげてください。  よろしくお願いいたします。

リプレイ

 レイ=レーベンス=レックフォードがそっと核を水に近づけると、水は勢いよく踊り始めた。まだ水面に浸ける前だというのにこの反応なのだから、完全に水に触れれば相当な力になるはずだ。
「これが僕達を助けてくれていた力なのか」
「奇跡、だな」
 同じものができなかったというこの核の存在そのもの、そしてこれを使って冒険できたこと。ゴールディでは見られない光景を体験できたこと。ナハティガル=ラーはそれらを思い出しながら呟いた。
「ルーフィアという存在は聖霊か何かだったのか」
「わからない。夢の中で一緒に作ったんだけど、彼女もこの核が完成することに意味があったんだと思う。だから砂漠の精霊なのかもしれないし……紋具の精霊なのかもしれない」
 紋具作りの青年はそう言うと、二人に申し訳なさそうな顔をした。
「すまない。せっかく作ってくれたものを、壊す決断をすることになって」
「君が納得済みなのだろう? それなら私に異論はないさ」
 レイは船に手を当てて笑った。
「形は変わっても、人の為に助けて動く。勇者の船。いいじゃないか。それだって浪漫さ」
 レイの笑顔に、青年は涙をにじませた。
 ただ生きることが全てのこの砂漠で、許容するという強さは太陽より強く輝き、水よりも慈悲深いものであった。

●
「さて、やるにしてもな。核を置いてくるのなら、帰る為に橋もどきを作らないとだし、水を流すというならその資材も必要だ。資材を砂海に置いておけば沈むだろうし」
 サイラスは砂海から見える青年の集落に指を向けて距離を目算しながら呟いた。
「板を最初足場にして、徐々に集落に近づきながら水路として組み立てていく……とかでしょうか。はぁ……」
 トーラは溜め息をつくと、サイラスも「だよな」と重ねて溜め息をついた。
「最近、建設系の依頼が多いから、鍛冶屋のツテを辿ることにも慣れたけど……なぁ」
 水源地となった場所から集落まで見えているだけ御の字かもしれないが、足場の悪さも考えれば相当な苦難だ。授恵者は一般人からすれば並外れた体をしていることを踏まえても依頼期間に終わるかどうか。
「そうですねー。うん、夢のお告げでできた砂漠を走る船に魚が泳ぐ砂漠の海。どちらも夢いっぱいなのに勿体ない……」
 ん?
 なんか話がかみ合わない。
 こちらは先が思いやられると思って話しているのに、トーラが溜め息をついているポイントはどうも違うような。
 しかも改めてトーラを見てみると、革袋に砂海の水をざぶざぶ流し込んでマジカルポケットにつめこもうとしているではないか。
「でも、父の庭園業に触れる機会があったんですけど、ほら、景観を作り上げるって一朝一夕ではできないじゃないですか。でも毎日少しずつ重ねれば必ず形になるって。時間と自然を味方につけることで、絶対できるはずです!」
「で、その水は?」
「もちろん仕事中の生活用水です。オアシスの人たちも必要ですし」
 未来への心配感0である。むしろやる気しか感じない。
 でもそれがかえっていいのかもしれない。サイラスはふと竜になるというリザードマンの願いについて思い返した。その階段は天を上る階段があったとしてもそれよりもまだ遠く厳しい道のりだ。苦難は尽きない生命の旅路。だがそれを臆するかと言われれば。
「やるしかない、か」
 サイラスは微笑むと同時にまたサシャ・テーリングもその姿に微笑みを浮かべた。
「それを使えば、思ったよりも簡単にできるかもしれません」
 そう水袋を入れるトーラの姿を見て、サシャの中のアイデアは形になろうとしていた。
「ま、まさかマジカルポケットに水を……!」
「いえ、そちらではなくて水袋の方です」
 サシャは小首をかしげながら困ったように笑って水袋を指さした。いくらなんでもマジカルポケットに直接大量の水を放り込むことはできない。
「皮でホースを作り、この船でオアシスから敷設し要所をパイプや半割の板を補強するのはどうでしょうか? 帰りはホースを足場にして帰れば、水漏れの点検もかねてできますし」
「なるほど、それなら敷設作業も簡略化できるし、砂が入る心配もないな。あとは材料だな……」
 これだけの長さのホースに使用する皮。木材に比べれば可搬性は優れていてもやはり数は必要だ。
「皮同士をつなぐジョイント部分は任せてくれ。鍛冶師としての力が役に立ちそうだ」
 とは言ったものの、ジョイントという同じ部品を作るのはサイラスとしては面白みを感じない。
 ……ちょっとぐらいの装飾はゆるしてくれるよな?
「皮そのものの加工は任せてもらっていいわね。ただその材料となると……」
「そうだな。皮と言っても選択肢はまだ色々ある。どれが最適か……アンタの意見を聞きたい」
 ナハティガルの言葉に紋具使いの青年は泉源をみやった。
「この辺にある皮といったら……これしか思いつかないな」
 青年が見つめたもの。それはかつてナハティガルも同行した討伐対象であり、オアシスに行くべき水を貯め込んでいた存在。サバクジラだ。
「……そうだな。これしかない」
 こいつが再利用できることすっかり忘れてた。
 内心、天然ボケをさく裂させていたことに冷や汗をかいていたが、怜悧な顔は全く動かさずにナハティガルは同意した。
「水を貯め込んでいたから、その皮がホースとして使えないことはないだろう。形に合わせて切るのは俺がやろう」
「なるほど、それでは皮を筒状にするための接着材も必要ね。にかわになるものがあればと思うけれど……」
「にかわなら、骨や皮を煮出したりして作れるはずだ。他の物も材料にできないか資料検索してみよう」
「あ、それなら」
 レイが早速戻ろうかとしているところにトーラを手を挙げた。
「砂海に沈むと修理や点検ができなくなりますしフロートのようなものもできないでしょうか。それにこのお水もオアシスの人たちに早く渡してあげたいですし、一度オアシスで相談しませんか?」
「そうね。きっと喜ぶと思います」
 オアシスの人たちだってきっと希望をもって自分達の帰りを待っているだろう。オアシスがそこにあるのに手が届かない歯がゆさ、あるいは生まれ育った地から離れる不安と決断したいのにできないこの時間。
 ここに来るまでに軽く挨拶した時の彼らのすがるような目つきがサシャは忘れられなかった。
「何もかも独りや少数でやるものじゃないのは確かだな」
 力あるごく一部の為の街となったゴールディのことをふと頭によぎらせてナハティガルは言った。そこに生きる人間が等しく手を取り合わないと、今ここでどんな良い結果を生んだとて意味のないことだ。
「ああ、船はみんなを乗せるものだからな。ヒトも、物も、希望も。みんなで新しい船にしていこう」
 レイはにこりと笑った。

●
「それなら角で作った盃がある。あれも煮出せばちょっとはにかわとして取り出せるものがあるかもしれな」
「じゃあ私、服を持ってくるわ」
「骨からとれるってんなら、ほら、あそこに死骸があったろ」
 オレは、あたしは。
 ナハティガルが提案を求めた瞬間に集落の人々はすぐさま立ち上がった。今の生活に困らないものすべてが、皮の縫製用具、またはにかわの抽出、またはジョイントの資材として提供される。
「すごいもんだな」
 サイラスがぼやくと、ナハティガルもふむ、と同意した。
「みなこのオアシスが好きなんだろう。砂漠の民なら放浪生活が基本だろうが、愛着というものは誰にしもある。魅力的であり、思い入れのある場所なら特に、な」
 思い入れというものはどこにでもある。ナハティガルもサバクジラを解体する手を一旦とめてそう呟いた。
 サイラスはそんなナハティガルにふーん、とだけ返して、人の動きをみていた。
「それじゃあやるしかねぇよな。板はあるか」
「橋は作らず、ホースにすると言っていたはずだが?」
「だが食糧問題もあるなら釣り場にする桟橋くらい必要だろ。ホースのジョイントなんてホースが出来上がってからでないとどうせできないしよ。それにサシャの言う通りに水を通したホースの上を踏んづけたら万が一の時がアブねぇよ」
 いい武器ってのはよく斬れるだけじゃあないんだぜ?
 サイラスの言葉にナハティガルはわずかに口元を緩めた。
「その装飾のように、いいものを期待している」

「皮はこれだけですか?」
 用意された各種の皮をみてサシャは眉をひそめた。設計担当のサイラスとレイが計算した距離からして、まだ圧倒的に短い。
「でもこれ以上は……」
「なければとってきましょう!」
 集落の人々が顔を曇らせる中、トーラは手を挙げた。
「とってくる、って」
「砂海の魚をとってすぐさま皮に加工しちゃいましょう。生活魔法で浄水を作れば血抜きも一瞬です!」
 トーラの目の輝きに皆がして「おおっ」とどよめいた。
「……そう言って、乗りたいだけなのでは?」
 片目をつむったサシャに突っ込みに、トーラはてへへ、と苦笑いをこぼした。
 核を取り外せばもう船に乗れることはない。ならば魚採りを理由に船を出せるのなら、こりはまさしく渡りに船。
「でも悪くないと思います。砂海魚にホースが攻撃されることの懸念していたし、先に魚を捕まえておけば、被害はあらかじめ抑えておけます」
 片目をつむったまま笑顔を浮かべたサシャにトーラはもろ手を挙げて飛び上がった。

「それじゃあ行くぞ……」
 一通り猟を終えた後、レイは核を取り外すと、桶の中にある泥水に核を沈めた。
「水への反発は全方向に向けて起こるから、これを一方向に固定してやる必要がある」
 その為のカバーをして泥水がただしくホースの中に送ることができるように。レイの研究成果が試されていたのだった。
「む……ぐ」
 明らかに普通ではない力がレイに伝わってくる。核と水が戦っているような、そんな圧力が感じられる。
 レイは負けじと力を込めた。
 ばしゃあああああああ!!!!!
 次の瞬間、泥水は猛烈な勢いでナハティガルの顔面を襲った。しかし『銀の鬼』と呼ばれ、高速の戦いを得意とするナハティガルは、髪ひと房だけを泥にぬらしたものの、とっさに下がり事なきを得ていた。
「すごい威力……これなら泉源からここまで送水するのも難しくなさそうですね」
 その被害を被ったのはサシャで彼女は怒っていいのか悲しいと思っていいのか、判断がつかないまま、小首をかしげてにっこり笑っていた。それがかえって怖い。
「す、す、すまない」
「いいの。こんなこともあるのね。ふふ、冒険者ギルドに出入りする仕事をしていた時は想像もしなかったことよ」
 さっと避けたナハティガルと自分の違いは経験によるものかもしれない。
 慌ててハンカチを取り出して差し出してくれるレイの姿、自分でも想像しえなかった核による水の反発力も。
 知らないことって身近にもあるものなのね。サシャは慌てる人々を前に、独り、違った想いに胸を震わせていた。

 魚を狩り、皮をはいではホースに仕立てていく。内臓と骨でフロートを作り、オアシスにあった木の皮や葉で結び付けていく。
 砂海には地形などあってないようなものだったが、それでも風の影響、波の動きの強弱を見極めてホースの配置を考えていく。
 物がなければ話し合って材料を集め作り出していく。疲れれば交代して作業を続けていく。誰かの手が埋まっていれば、他のヒトが別の作業を行う。
 オアシスのヒトも、また冒険者も別なくホースを編み続けた。

●
「よし……いくぞ」
 レイは砂海船から核を取り出すとサイラスが作った壷状の入れ物にそれをしまうと、設置した蓋とがちりと合わせた。蓋はホースにつながり遥か彼方、集落への道としてつながっている。冒険者たちが戻ってこられるよう、またホースの浮きの役割として、ロープと板が並走している。
 やれることはやった。
 レイは目をつむり、気持ちを落ち着け、核の入った壷をゆっくりと水源に沈めていった。
「いけ……」
「いけ」
「いけ!!」
 皆の願いが核に伝わったかのように、言葉が合わさった瞬間、ホースが勢いよく膨らんだ。サイラスが施したジョイントに施された竜の顎を模した細工とホースの膨らみがちょうど相まって水蛇を思わせる。
「芸が細かい……」
「水を連想する意匠をジョイントごとに詰め込んでやった。見た目が合致していれば問題なく流れているってことさ」
 サイラスの鍛冶細工に対する熱意を感じながらも、ホースは集落に向かって膨らみは急激な速度で走っていくのをレイは見つめていた。
「よし、きた」
 砂海が終わり、集落にあと一歩というところで待ち構えていたナハティガルはその終端を小脇に構えて、水がくるのを待っていた。
「勢いが弱いなんてことはないだろうな」
「設計はばっちりです。軽い山になるように中央付近が一番高く背ってしていますから、こちらへは核の力と、落下する速度があわさってやってくる……はずです!」
 設計の一部を担当したトーラの台詞に「そうか」と短く答えた。勢いが弱ければ自分で出口を細くしてやればすむことだ。
「本当は……もう少しだけ皮があればそんな心配もいらなかったんですけど」
 そう。時間を最後まで使ったが、ホースはとうとう集落に少しだけ間に合わなかった。
 最後には全員で砂海の魚を狩ったりしてぎりぎりまで粘ったが、それでも足りないものはどうしようもなかった。
「それでも計算上は……大丈夫なはずです。サイラスさんも、レイさんも、計算しましたので!」
「計算が完璧なら、俺は信じるだけだ」
 ナハティガルはそう呟き、腰を落とした。まもなく来るであろう衝撃に備えて。
 そして勢いよく膨らみ続けたホースが、ナハティガルの腕に伝わってきた瞬間、体を持っていかれそうな衝撃が走る。
「船一隻を支えた力だ……それでも」
 それでも。
 力を籠めると、その切っ先からアーチを描いて水が噴き出た。それは美しい弧を描いて集落へと落ちてく。
「水だ!」
「命だ!!」
 ホースが足りなくても力と角度をあわせてやれば。届けることができる。
 彼方の集落で歓声が響き、その喜びを示すように、炎天の空には虹が浮かび上がった。

●
「これもみんな冒険者さんたちのおかげです。ありがとう」
 これで何度目かわからないお辞儀をされてサシャはまた小首をかしげて困ったように微笑んだ。
「オアシスは形を変えるもの……今は水を手にしても何時か離れる時が来る気はしますので……新たな地へ移る心づもりと準備だけは進めても良いと存じます」
 その言葉に人々はしばし逡巡としていたが、青年がばっと前に立つと飛び切りの笑顔で言った。
「ええ、今日のこの経験があれば、僕達は前に進むことができるでしょう」
 人が変わっても、大地が変わっても、貫く想いを運ぶ船の仲間達として。

マスターコメント

【砂海】シリーズはこれで最終回です。 途中すごく時間が空いてしまったのですが、それでもこうして最後まで参加者に恵まれたことはとても嬉しい限りです。 その上で、ルーフィアという存在だったりがちゃんと解明まで伝えきれてなくて申し訳ない限りですが……(覚えててくださってすごく嬉しい)これもまたその内、解明されていきますので、またお楽しみいただければ幸いです。 ホース、ジョイント、フロート、木工、設計、資料集めetc……と役割分担や提案が見事に分担されていて、なにこの連携感!と驚いた次第です。 あやうく字数オーバーしそうになりました(書きたいシーンが多すぎて実際オーバーした) ご参加、本当にありがとうございました。
ショートシナリオ

ショートシナリオ普通 報酬:標準5 / 4〜8人

2021年07月11日 21時51分49秒 公開

成功

相談掲示板

  1. トーラ

    シーフのトーラです。 ひとつの紋具でどうにかして枯れたオアシスの部族を何とかしないといけない訳ですね。 「砂海にあるオアシスに水路を設けて核を使って押し出す」「砂海に板を渡し、核を使ったトロッコ状のものを作って定期往来をする」の案があるみたいですけど、今の集落をそのまま使える水路の方がいいかなと個人的には思ってます。 もしくは、他にいいアイデアがあるといいんでしょうけど、今のところ思い付かないですねぇ…。

  2. レイ=レーベンス=レックフォード

    ウォリアーのレイだ。 よろしく頼む。

  3. ナハティガル=ラー

    シーフのナハティガル=ラーだ。今回は宜しく頼む。 >水路orトロッコ 移動の難儀さを考えると、俺も水路を作る方が良い様に思える。 核を使って水を送り出す装置や水路の設計等、 人手&難易度的に難しそうなのが最大の問題ではあるが…。

  4. サシャ・テーリング

    ヒーラーのサシャと申します。よろしくお願いします。 具体的な手は思いついておりませんが、オアシスの民を放置できず参加しました。 これと言って思いつかない可能性もありますが、時間のある限りお力に成りたいと思います。

  5. No.5

    サイラスだ、とりあえず空いてたから入った。よろしくなー。 すでに二人指示してるし水路でいいんじゃないかなと。初入りだから細かい所わからんけど線路の維持とかトロッコへの襲撃の可能性考えると道の方がよさそうだよね。 土木建築もあるから多少工事の手伝いも行けるだろうし

  6. No.6

    んでふわっとしてるけどこうするって決まってる人おる? 今とりあえず個人的には半割パイプ的なのの上に砂海の砂使って水路用意しようかと?土台がないのにただ掘っても砂が戻るだけだろうしと。後は橋が必要かなと?桟橋的なのなら柱用意できれば、出来なければ地面安定してるとこに柱立てて吊り橋とか?みたいな いや無茶ではあるんだけど、作業用ルート無いと沈むか泳ぎながら作業とかなりそう&食料調達手段の船を解体するしか無いから釣り場代わりとか用意いるかなと

  7. サシャ・テーリング

    以前の話を読ませて頂いて、ふんわりイメージをしたのが オアシスは砂面より小高い位置にありそうって事ですね。 それならパイプか太めの雨樋みたいなのを通せば、高低差で自然とこちらに流れるのだろうと感じましたのと 桟橋的は海底(砂底)がどうなっているのか分からないので …革の浮き輪を定期的に交換する前提で樋の下に設置していくのは如何でしょうか?

  8. サシャ・テーリング

    読み直したら、紋具が無いと沈んでしまうみたいですね(浮き輪は無理かしら) 紋具の魔改造が具体的に思い浮かんでないのですが… 半割パイプ的なのを使って 「砂海にあるオアシスに水路を設けて核を使って押し出す」案でプレを出そうと思います。

  9. トーラ

    成立しましたね。 改めてよろしくお願いします! とりあえず水路でいいみたいですね。 砂海は液状に近い砂みたいですし、水の上に水路を浮かべて水を運ぶようなイメージになるでしょうか? 風で砂が入らないよう蓋を付けるか、パイプかホースのようなものに出来るならそうした方がいいかもしれませんね。

  10. サシャ・テーリング

    読み直してみて、砂嵐みたいなのもあるようなので 蓋つき(パイプやホース状)ので水を引くプレで出させて頂きますね。 それと不採用となっても 柱立てて吊り橋が作れない場は浮き輪で下を支える案を提示しておきますね。

  11. レイ=レーベンス=レックフォード

    成立していたか。 よかった。 水路でよいと思う。

  12. No.12

    とりあえず大体パイプとかで良い感じそやな。ならそっち方面で。

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0