大熊猫! マーブルブラザーズ!

おおくまねこ

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シナリオID:1090

オープニング

●住職の依頼人
「こちらが『熊猫のかくれんぼ亭』でしょうか。依頼を出したいのですが」
 その日、冒険者の店を訪れたのは、法衣を来たジャイアントパンダのハーフビーストだった。

「はい、そうですよ。一体どうされました? 同族のお客さんとは珍しい。GP(ジャイアントパンダ)教の僧侶とお見受けしましたが」
 これまたパンダのハーフビーストの店のマスター、クママンがミルクがたっぷりと入った紅茶をカップに注ぎながら、にこやかに。
「はい。私は名をパンダマと申します。『最強寺』という寺で住職をしております」
「ほう、あのGP大仏で有名な! これはこれは。お会いできて光栄です」

 クママンは恭しく頭を下げた。最強寺と言えば、建立(こんりゅう)されてから百年以上の歴史を誇るGP教徒の間では有名な寺だ。そこにはジャイアントパンダの大仏があり、数百年の時を経てなお生き続けるダンジョン(エーテル溜まり)でもある。
 ちなみにGP教とは、中庸(バランス)を重んじる崇めるロスガリア大陸の一宗教である。その神の姿は、ジャイアントパンダの姿で伝えられている為、信者にはジャイアントパンダの獣人が多い。

「さあさ、紅茶とビスケットです。ぜひ、詳しいお話を聞かせて下さい」
「ありがとうございます。実は、先程私は最強寺の住職と名乗りましたが、それは正確ではありません。正確には『だった』です。
 今最強寺は存続の危機に瀕しております。ある日突然寺に押し入って来た、性質(たち)の悪い連中に不法占拠されてしまっているのです……」

●
 それは、日光がぽかぽかと暖かい晴れた日のことだった。
 その日、住職は野良パンダに餌をやりながら境内(けいだい)の掃除をしたり、参拝客相手に説法を聞かせたりと、平和な日常を過ごしておりました。
 参拝客もまばらになり、そろそろと思っていた矢先、突然、平均身長が2mを超える屈強な獣人(ハーフビースト)達がやってきたのです。。
「おや、大勢でどうされました。獣人の同胞達よ。」

「最強寺の住職、パンダマ氏とお見受けする。拙僧らは『白黒い兄弟(マーブル・ブラザーズ)』。古の伝統に則り、我らと住職の座を賭け、『八星大獣祭(はちせいだいじゅうさい)』の手合わせを願いたい」
 頭目と思しき、白虎獣人の男は言いました。

「八星大獣祭だって……!?」
「知っておられましたか、クママンさん」

 八星大獣祭。それは、かつて、最強寺の住職を選別する為に行われていたと伝えられる、八対八のバトルロイヤル形式の武道大会だ。
 そもそも最強寺とは、神が人類を試す為に作った一種のダンジョンであると伝えられている。その為、この寺の境内の一部では土地のエーテルの作用により、ある特殊効果が発生する。近接攻撃に、敵を吹き飛ばす効果が付与されるのだ。
 故に、この寺の住職となることは最強のプリーストの証とされていた。その結果、五年に一度開かれる八星第獣祭の際には、様々な神を信仰する僧侶たちがこぞってこの寺を訪れた。古の僧侶達はこの寺の住職を継ぐ為、高所に設置された武舞台の上で互いを突き落とすという、血塗られた継承者争いを繰り広げたという。
だが、五代前の最強寺の住職となったのは、中正の神GP神の和尚だった。
 和尚は獣人同士の血なまぐさい争いが繰り返されることを良しとせず、この寺にGP神の大仏を建立し、二度と八星大獣祭が開かれないように封印したのだ。もう百年以上前のことである。

「そんな! その風習はGP神の教えに背くとして、もう百年以上前に途絶えています。お断りいたします!」
「喝ッ! 敗れて散るならばいざ知らず、まさか試合自体を断るとは。それでも最強の名を冠する寺の住職か! 失望いたしましたぞ。やはり、堕落した今の貴方がたにこの寺は任せておけぬ。今日より、この最強寺は拙僧達が管理させていただく」
「ふざけるな! この寺をどこの馬の骨とも知れぬパンダに渡せるものか!」
「それでこそ、最強寺の住職よ! 最強寺に住職は二人もいらぬ! 勝負だ!」
 ……。
 私は、修行僧らと共に、必死に抵抗しました。しかし、マーブル・ブラザーズの武僧達は恐ろしく強く、我らは敗れました。

「命までは取らぬ。牙を失った哀れなパンダ共よ。どこかの竹林でひっそりと暮らすが良い! フハハハハ!」

 私達は凶賊達の嘲笑を浴びながら、這う這うの体で人里まで逃げてきたのです……。三日前のことです。

●
「なるほど、そんなことが……。では、冒険者に依頼したいこととは……」
 住職の話を聞き、クママンは真剣な眼差しで住職を見つめた。
「ええ。冒険者の方々に、『八星大獣祭』の土俵であの者達を叩きのめし、我らの寺を取り返して頂きたいのです」

解説

●最強寺  王国の辺境にあるGP教の古寺。元は神代に建造された遺跡で、境内はエーテル溜まりとなっている。境内の奥にはパンダ大仏(坐像)があり、その正面に武舞台が置いてある。ちなみに寺の周りは竹林。  境内では地形効果により、隣接へクスから放たれた全ての攻撃に「LV÷6」の強度の『吹飛』が追加付与される。 ●武舞台の形と広さ  タテヨコ共に最大13へクスで上下左右対称な形。試合開始前は相手の陣営と反対側の端っこのへクスに並ぶ。  高さは60メートル(高度3)。突き落とされた場合、階段で復帰するのに移動力を12消費する(『壁歩き』の場合は6、『エアーライド』で戻る場合はケースバイケース)。 ■墜落(ワールドガイドより転載) 空中には高度が存在し、以下のように処理されます。 高度1:地上から0mを超え、20mまでの高さ 高度2:地上から20mを超え、40mまでの高さ 以上のように高さが20mを超える毎に高度が1増えていきます。 空中で意識の喪失や麻痺等で行動不能に陥った場合、墜落が発生します。 該当する状態に陥った際、次の手番までに状態が回復しなければ、高度が1減少します。 墜落し続け、高度0(地上)に到達するか、他の構造物に衝突した場合、落下によるダメージを受けます。 落下によるダメージは (落ち始めた高度-衝突した高度)×20点です。 このダメージは防具による減衰は適用されません。 ●白黒い兄弟  最強寺を不法占拠した、GP教の過激派武僧達。リーダーはレベル35のヒーラー、他の六人のレベルはまちまち。また、シューターが二人おり、両方がゴリラとエーテルリンクしている。  ちなみに全員が別々の種類の獣人で、メンバーは白虎、黒豹、水牛、シロクマ、クロサイ、アルマジロ、ユニコーン、ネザーランドドワーフの八名。 ●八星大獣祭  最強寺でかつて行われていた、八対八のバトルロイヤル団体戦武道大会。どちらかのメンバーが全員戦闘不能または戦意喪失状態になるまで戦う。また、場外になっても戦闘不能になっていなければ復帰が可能。    舞台の外からの他者または舞台への干渉及び、外への干渉はルール違反となる。    例:場外の敵への追い討ちは不可。場外同士の乱闘(味方の回復)も不可。場外からの狙撃も不可。場外の選手が「自分」にヒールやバフをする行為は例外的に可。 ●成功・大成功について  成功:敵を全滅させる。  大成功:試合で圧勝し、完膚無きまでに敵を負かす。

マスターより

 こんにちは。大熊猫です。思いっきりアレンジしましたが、一応ショートシナリオRです! パンダの大仏が見える素敵なお寺で色んな動物たちとキャッキャウフフする依頼となります。常人ならすぐ死ぬと思いますが、授恵者は60Mの高所から落下したぐらいではなかなか死にませんので多分大丈夫です。  ご興味がありましたらよろしくお願いいたします!

リプレイ

●
「我らに八星大獣祭で挑もうとは笑止! と言いたいところだが、誰も挑戦して来ぬから退屈していたところよ! 歓迎するぞ! 冒険者たちよ!」
 白黒い兄弟達のリーダー格、白虎は呵々と笑い、ファイティングポーズを取った。住職を通じ、冒険者達が彼らに八星大獣祭の試合を申し込んだところ、彼らは快諾したのだ。
「奴らの心を折り砕いて二度と変なことを考えられないように叩き潰す」
 ベルク・オスマットは自分達の目的を再確認する。依頼人のパンダマ住職はやはり僧侶というべきか、できれば相手の命を絶つのではなく、鼻っ柱をへし折って説得する方向に持っていきたいようだった。ならば、極力その期待には応えるようにしたい。
「こいつらがこの寺を不法占拠した武僧達か」
 セリオス・オーガストは武舞台の対角線上に整列した獣達を値踏みするように睨み付けた。武僧というだけあり、どいつもいい筋肉をしている。雑魚ではなさそうだ。
(GP教の武僧ね……いい体してるじゃない。その信仰心を試してあげる)
「うっふん」
 イーヤ・レプリスは配置に着く前に白黒い兄弟に接近すると、なまめかしいポーズと色目を使い、獣人達を誘惑してみた。
「フッ。笑止。我らはGP教の敬虔なる修行僧。色仕掛けなど効かぬわ!」
 白黒い兄弟達はイーヤの誘惑を鼻で笑った。彼らは思った以上に真面目な僧侶のようだ。
「ウホウホォ!」
「ウッホウッホ!」
 だが、なぜか彼らのペットのゴリラ達は異様に興奮していた。彼らは特殊性癖に開眼したゴリラなのかもしれない。
「今回はよろしくお願いするね」
 ララベル・サン・ディーベルはぺこりと一礼した。相手は悪党とはいえ、一応はルールのある試合だ。挨拶はしっかりしておきたかった。
(僕達の手でお寺を取り戻して、住職さんを安心させてあげたいな)
 とはいえ、もちろん手を抜くつもりはない。試合が始まったら、相手の弱点を突いて容赦なく叩き潰すつもりである。
「……」
 ハッタ・ムラムラは白と黒の体色を持つ獣人達(二体を除く)を値踏みするように見つめている。
(あの佇まい……成程、マーブル・ブラザーズとやらが、腕っぷしに自信があるのは理解した。だが、ただ戦闘能力に秀でるだけでは、GPの教義、その最奥に達することはできん。見た目だけ白黒であっても意味は無いということを教えてやろうではないか)

●
「試合開始!」
 審判役を務める住職が開始の号令を告げた瞬間、双方の戦士達は一斉に中央に向かって動き出した。脚力によるバラつきはあるが、後方支援役のハッタと、遠距離攻撃担当イーヤ以外は全員トップスピードだ。
 最初に交戦(エンゲージ)したのは、疾風速で突っ込んだベルクと、彼女に対応する形で前進したユニコーンの武僧だった。
「フハハハハ! 一撃で死んでくれるなよ!」
 突進しながら繰り出された猛烈な槍の刺突を、ベルクはひらりと身を捻って回避した。

「喰らえ、疾風三連突!」
 ベルクとほぼ同じスピードで移動していたララベルがユニコーンに突進し、細剣で三連突きを繰り出した。吹き飛ばしを意識し、斜めに弾き飛ばせるような角度で放つ三連撃。ユニコーンは初撃をエーテルによる反応強化で回避したが、二撃目が肩に命中した。
「ぐああああ――!」
 30メートルほど後方に吹き飛ばされたが、ギリギリステージの端で踏みとどまった。
「惜しい!」
「やるな小僧! 拙僧の技を受けてみよ!」
 息をつく暇もなく白虎が接近し、ララベルの脇腹へと錫杖を振るう。針のように収斂された鋭い一撃は、ララベルの胴を捉え、吹き飛ばされたララベルは物凄い勢いでステージの中央方向へと押し戻された。
「フ、軽いな」
 白虎は手応えを感じ、ニヤリと笑った。
「次は貴様の番だ!」
「突き落としてくれる!」
 次の標的となったのはベルクだ。黒豹とクロサイが白虎の両脇を固めるように前進し、鉤爪と槍でベルクへと攻撃を仕掛けた。だが、回避に集中しているベルクは左右からほぼ同時に放たれた攻撃をひらひらと躱し、二体の攻撃を凌いだ。

「私は遠距離攻撃に徹するわ」
 イーヤは一歩前に出ると、獣人の密集地帯に向かってストーンブラストを放った。吹き飛ばし効果は付かないが、別に構わない。元より単純に敵にダメージを与えるのが狙いだ。
 ステージの端ギリギリの所に着弾したストーンブラストは、ネザーランドドワーフと、誰かのペットのゴリラ二頭を巻き込んで炸裂した。
「がふっ!」
「ごあああっ!」
 アルマジロとネザーランドドワーフは血を噴き出してダウンした。どうやらこの二体がゴリラの飼い主だったらしい。ゴリラ二頭が床へと崩れ落ち、主人達もそのモーションをなぞるように地に伏した。これで一気に四体が脱落である。
「待たせたな。レゾナンスだ」
 ハッタ・ムラムラは武舞台の中央へとにじり寄りながら、支援魔法をみんなにかけた。
「待ってたにゃ! ……じゃなかった、今日のあたしは『パカチュウ』だパカ!」
 ハッタのレゾナンスがかかった瞬間、サフィラ・アズラク・ナハルハルアリーブはアルパカのフードが付いたお洒落なパーカーをたなびかせ、真っすぐに敵陣へと突撃していった。ちなみに彼女はエルフであり、決してアルパカの獣人(ハーフビースト)でも、ネズミの国の回し者でもない。自称パカチュウは突進の勢いのままエアーライドで武舞台を蹴り、クロサイに華麗な飛び膝蹴りを叩き込んだ。彼女の脚は特注の金属製のレギンスに覆われている。威力は十分だ。
「ぐおおおおっ!」
 クロサイは勢いよく後方に吹き飛んだのだ。だが、角度に恵まれず、吹き飛ばし効果は今一つだった。クロサイは真後ろにいたシロクマによって受け止められたのだ。

「クソッ! やりやがったな!」
 シロクマはさっきまでクロサイがいた位置まで前進すると、パカチュウへと剣を振るった。しかし、電光石火の身のこなしを誇るパカチュウは、軽く身を捻って難なく斬撃を躱す。
「うおおおおっ!」
 さらに、チャージングで突撃してきた水牛がドラゴンチャリオッツでパカチュウに突撃した。さすがのパカチュウも今度は躱し切れず、体当たりの餌食に――。
「残像だパカ!」
 ならなかった。ネズミ……じゃなかった、野生児はすばしっこいのだ。

●
 戦いが始まって数秒経過。武舞台の中央に選手たちが密集し始めた。いよいよ本格的な大乱闘の幕開けだ。
「むむ、仕様上首を狩るのは難しいか。まぁ首狩り教の教義よりここの教義を優先すべきか」
 ベルクはぼやきながら、水牛の背後へと回り込んだ。体の中心線を狙って必殺の暗殺撃(タナトスバイト)を叩き込む。ちなみにベルクの信仰では、何らかの信念を持つ敵は敬意を以て首を刎ねるべきだと教えられている。彼らはそれに値する敵なのだが、今回は首を刎ねるのは難しそうだ。
「ごっ……!」
 牛の獣人だけあって頑丈なのか、意識を失いはしなかったが、水牛はステージの端に向かって20メートルほど吹き飛び、そのまま落下していった。
「いたた……。やったなあ!」
 ララベルは疾風足で敵の密集地帯へと駆け戻ると、そのまま、黒豹を側面から三連突き(トリプルファング)で強襲した。
「チィ!」
 黒豹はララベルの初撃をギリギリで回避した。
「まだまだぁ!」
 続く二撃目もアクセラレイターで躱したが、三撃目までは流石に捌ききれず、肩を切り裂かれて場外へと吹き飛んでいった。
「お返しだぜ!」
 疾風足でステージ端から駆け戻ったユニコーンは、突進の勢いのままにパカチュウに槍の一撃をお見舞いした。だがパカチュウはすばしっこく、槍は空しく空を切った。
「ここだ!」
 静かに距離を詰めていたセリオスは手負いのシロクマの間合いに一気に踏み込んだ。30cmと開かぬ密着状態から細剣を一閃。シューターらしからぬ零距離での一撃はシロクマをKOし、そのまま場外へと弾き出した。
「パカパカ―!」
 パカチュウはシロクマに向かって籠手(ガントレット)に覆われた拳を鋭く叩きつけた。
「はぐっ!」
 ボディにいいのをもらい、真後ろに吹き飛ばされたシロクマは場外へ叩き出され、落下していく。
「うおおおっ!」
 ステージの端から助走をつけたクロサイが、雄叫びと共に槌を薙ぎ払う。攻撃に巻き込まれたのはセリオスとララベル、そしてベルクだ。ベルクとララベルは咄嗟に身をかがめ、薙ぎ払いを回避したが、セリオスは反応が間に合わず、場外へと弾き出された。
(白黒い兄弟(マーブル・ブラザーズ)……戦いを通じ魂を高める考えは我々(リザードマン)の思想に近いものがありますね)
 ハリス・アル・ターミルはシロクマへと真っすぐに突進した。戦術眼を有する彼の眼には、誰を攻撃するべきかがはっきりと感じ取れていたのだ。
「今狙うべきは吹き飛ばしによる一時退場! オオオ!! スマッシュ!! スマーーッシュ!!」
 ハリスは突然人が変わったように叫びながら愛用の開墾の竜爪を全身ごと叩きつけるように一突きした。2メートルを超える恵まれた巨躯から繰り出されたリーチの長い一撃は、シロクマの腹に深々と突き刺さり、場外へと叩き出した。
「ハリスさん、なんか変なものに憑かれてない? 大丈夫? とりあえず俺は手負いを狙おう」
 サイラスは人が変わったように雄叫びを上げている農狂(ゆうじん)の姿に訝しみつつ、衝撃刃をクロサイへとお見舞いした。
「がはっ!」
 吹き飛ばし効果こそ乗らなかったが、サイラスの斬撃はクロサイの固い肌を易々と切り裂いた。致命的なダメージを受けたクロサイはばたりと倒れる。
「あとはユニコーンだけだ! 奴を落とせば一気に有利になる! 正念場だぞ!」
 ハッタは仲間達を激励しながら、ララベルへとヒールを飛ばした。癒しの光がララベルの体を包み、白虎に付けられた傷を癒していく。だが、敵のリーダー格だけあり、一発完治とはいかなかった。
「さあ、私のセクシービーム……じゃなくて攻撃魔法で墜としてあげる」
 イーヤは今二本の足で武舞台に立っている唯一の敵であるユニコーン獣人に向けてストーンブラストを叩き込んだ。直撃させると味方まで巻き込んでしまうので、爆心地は敵の後方にずらした。
 炎に包まれた巨岩がイーヤの指定した座標で爆発したが、ユニコーンは白黒い兄弟最速の脚力で石礫の洗礼を綺麗に躱し切った。

●
「一気に畳みかけるパカ! 気合! パンチ!」
 ぎゅるん!
 パカチュウはユニコーンの眼前にまで踏み込むと、体重(???キロ)を乗せたフックを叩き込んだ。
「うわああ――!」
 衝撃音と共に、ユニコーンはステージの中央の方向へと吹っ飛ぶ。
「とりあえず徹底的に吹き飛ばせばいいのであろう?」
 ベルクは吹き飛んだユニコーンに圧倒的な脚力で追いつくと、双剣を一閃し、毒撃を叩き込んだ。さらに吹っ飛ばされたユニコーンは、今度こそ場外へと叩き出された。

「全員落ちたな。だが、まだ終わっていない。……でいいんだよな?」
 エアーライドで迅速に武舞台に復帰したセリオスは隅っこで審判をしていた住職へと問いかけた。
「住職殿。相手方は全員場外へと吹き飛んだわけですが……判定勝ちなどはないのですか?」
 ハリスも復帰用の階段へと距離を詰めつつ、住職に質問した。
「ええ、全員が降参するか、戦闘不能になるまで終わりではありません」
 住職は首を横に振る。「だから油断するな」と続かなかったのは、中立である審判の役割に殉じているからだろう。変な所で生真面目な和尚である。GP教徒らしいといえばらしいが。
「あいわかった。みんな、階段の側で待機しよう。ヒーリングオーラもかけるぞ」
 ハッタは階段の側に集まった仲間達に治癒魔法をかけた。冒険者達は二か所ある階段の側で待機し、墜落した白黒い獣人たちが這い上がってくるのを待っていた。ついでに気絶している二体の獣人達とゴリラも階段(場外扱い)に追放しておく。
「恐らく、彼らは固まった状態で戻ってくるでしょう。皆様、油断なされぬよう」
 ハリスは重心を低くし、槍を構えながら、いつでも下段攻撃が繰り出せるよう力をホールドしている。
「今の内に吹っ飛び対策しとくか」
 サイラスは持参したロープを自身の腰と武舞台の端に括りつけた。

「うおおおお! まだ終わっておらんぞぉおお!」
 怒号と共に帰還したのは、白虎、黒豹、シロクマの三体だけであった。八体三となり、地の利も抑えられた獣人達にもはや勝ち目はなく、白黒い兄弟は冒険者達に完敗したのであった……。

●
 全滅した白黒い兄弟は全員一命は取り留めていた。彼らは拘束された上で住職から治療を受け、寺の地下牢へとぶちこまれた。
「くっ……我らは敗北した。好きにしろ」
 白虎は悔し気に呻いた。
「え? いいの? よりどりみどりね♪」
 イーヤの眼が妖しく光る。やはり一番気になっていた白虎から行くべきか……。
「あ、ここ寺なんで第二ラウンドはNGでお願いします」
 住職は鎧を脱ごうとしたイーヤをやんわりと制止した。GP神が照覧すればたぶん怒るであろう、八性大獣欲祭は住職の活躍により未然に阻止されたのである。

「住職殿。彼らの処遇はいかになさるおつもりか?」
 ハッタは住職へと問いかけた。
「異端とはいえ同じGP教徒です。悔い改めてくれれば良いのですが……」
 住職は彼らを憲兵に突き出すのはあまり気が進まない様子だ。
「左様か。……白黒い兄弟たちよ。最強の称号とは誰かから奪うものではなく、自らの内に見出すものではないか。そもそも、偉大なるGP神は中立と調停を解き……」
 ハッタは獣人達の前に屈みこみ、説法を始めた。白黒い兄弟たちは勝者であり、GP教徒でもあるハッタの説法を黙って聞いていた。

「この大祭も元は心技を高める為の物だった筈。ただ争う事と覚えたならば、神もお嘆きでしょう。ですがその強さは疑いなきもの。住職に拘泥せずとも冒険者として多くを救う道も拓けているのでは?」
 ハリスはハッタの説法が終わった後、白黒い兄弟達に一枚の紙を渡した。近所の冒険者ギルドの求人広告である。彼らは全員授恵者の武僧集団だ。牢に繋いでおくには惜しい逸材だと思ったのである。
「冒険者……それも一興か……我らのベストプレイス探しも新たなフェイズに入る時かもしれぬ」
 こうして、白黒い兄弟は改心し、この寺で正しい教義を学び直しつつ、冒険者の門を叩くことになったのであった。

「ところで、白黒い兄弟っていうけど、アルマジロとウサギ(注:ネザーランドドワーフはウサギの一種です)は色違わくない?」
 あっけらかんとララベルが言った。
「貴様、言ってはならぬことを! 気にするな、二人共! たとえ白黒でなくてもお前達は拙僧達の兄弟だ!」
 白虎はララベルに怒鳴ったが、時すでに遅し。存外に繊細だったアルマジロとウサギはさめざめと泣き始めたのだった……。
「あの……なんか、ごめん……」

 数日後、冒険者ギルドには獣人の八人組が登録された。不思議なことに、彼らの中には全身を黒と白の染料で染めたアルマジロとウサギがいたそうである。

マスターコメント

冒険者側の完勝だったので結果は大成功です。オープニング作った時はなんとなく攻撃が当たるたびに外に誰か飛んでいくイメージでしたが、へクスマップに駒を並べてみると、意外と場外に叩き出すのは難しいことが判明しました。ステージの内側に向かって飛ばさざるを得なかったり、後ろに味方がいたので受け止められたり。MVPは撃墜数最多のイーヤさんと、冒険者ギルドの未来に貢献したハリスさんを選出しております。みなさんお疲れ様でした!
ショートシナリオR

ショートシナリオR難しい 報酬:標準8 / 6〜8人

2021年07月11日 21時47分50秒 公開

大成功

相談掲示板

  1. ハッタ・ムラムラ

    ハッタだ。 世話になる。

  2. イーヤ・レプリス

    イーヤよ、よろしく。 なんかトントン相撲というか体力勝負というか……。 まぁ、なる様にがんばるわ。

  3. サフィラ・アズラク・ヴォルファング

    にゃ!シーフのサフィラだよっ! よろしくねっ! 今回はエアーライド持って行って吹っ飛ばされても復帰できるようにしとくよっ!

  4. ベルク・オスマット

    シーフのベルクだ。よろしく頼む。 とりあえず一人残らず張り倒せばいいのだよな?

  5. No.5

    サイラスだ、よろしくなー とりあえず真面目にやるとルール的に射程1以上ないと飛ばせなく無い?射程0の概念忘れられてるだけならいいけど、そうで無いならエーテルブレードとか決め技必須? 飛ばされたらどうしようもないし殴るだけ殴るわ

  6. セリオス・オーガスト

    ・・・ん、シューターのセリオスだ、よろしく頼む とりあえず俺も孤高の零距離殺撃者で0距離で近接勝負をするつもりだ まあ回避メインにしてどうにか吹き飛ばされないようにしたいところだが

  7. クママン

    みんな、よろしくね。 >ルール的に射程1以上ないと飛ばせなく無い? これについては僕から補足しておこう。 隣接へクスからの攻撃だけでなく、同一へクスからの攻撃(射程0)に対しても【吹飛】は乗ります。 (原則シナリオ詳細についてのご質問には回答しないスタンスですが、ここは分かりにくかったので補足説明が必要と判断いたしました)

  8. ハッタ・ムラムラ

    八星大獣祭────その名は無論聞いたことはあったが、 まさか実際に参加することになろうとは、な。 原則として落とし、落とされることを狙いあう形の戦闘内容になるだろう。 集まった面々のクラスは、ある程度バランスよく分かれた感じか。 手強い相手ゆえに、単独で仕掛けるよりは、八対八の集団戦であることを活かした方が上手くいきそうな気はしている。 おれは回復支援を主とし、早期離脱者が出ないための立ち回りを考えている。 こういうことをしたいので協力して欲しい、等の提案があれば遠慮なく言ってくれ。

  9. イーヤ・レプリス

    私は後方から魔法で遠距離攻撃する予定よ。 近づいて落とすより、単純に敵の体力を削っていくわ。 回復はヒーリングオーラとサイドヒールは持っていくわよ。

  10. サフィラ・アズラク・ヴォルファング

    にゃ!それならハッちゃんにレゾナンスをお願いしようかなっ! 当たらなければ吹っ飛ぶことも無さそうだし! 個人ではゼロ射程でポコポコ殴りながら タナトスバイトでスマッシュする感じで動くよっ!(꜆꜄꜆˙꒳˙)꜆꜄꜆

  11. No.11

    まあまあだよねって。 カバリングいらないならひたすら嫌がらせするが

  12. ハリス・アル・ターミル

    ハリスと申します、どうぞ宜しく。 ウォーリアは隣接せずともドラゴンチャリオッツで吹き飛ばしが狙えると考えて良いのでしょうか。それならば取れる戦術が広がりそうですが…。

  13. ハッタ・ムラムラ

    初手レゾナンス・オブ・ヴァロー、バトル中は回復優先な感じになるか。 乱戦になるのは間違いなく、思惑通りに事が運ぶことはまずないだろうが…… 自身の基本となる動きと、警戒すべき敵の動き、場外に出された場合の復帰方法あたりを抑えておけばまずは良さそうだな。

  14. No.14

    取り敢えず破脚砕、毒撃持ち込もうかな。復帰遅らせる、そも対策無ければ落下中に体力削るとかで ぶっちゃけ落ちるだろうから相手の体力削りガンガン仕掛けようかと。カバリングは要らんよね?連携も特にないやろしある程度フォロー意識しつつ自由に動くわ

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0