【CP】帰ってきた親父
馬車猪
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シナリオID:1062
オープニング
飛び散る火花が、目を見開いた少年と乾いた肉がこびりついた骸骨を照らす。
「なんでっ」
腕力だけなら上位の冒険者に匹敵するリットが押されている。
激しい動揺でもともと下手な剣が素人未満となり、骨に染みついた古強者の技に全く抵抗出来ない。
「なんでだよ親父ぃ!!」
リットの剣が跳ね上げられる。
錆びた切っ先が、リットの頭頂目がけて勢いよく振り下ろされた。
●数十分前
「ウォーリアが剣を持っていないのは格好がつかないだろ。持っていけ」
傷だらけの男が渡してくれたのは古ぼけた剣。
冒険者が使っている武器と比べたら安物で切れ味も酷い。
けれど少年にとっては初めての財産で、初めて人に信頼された証であった。
「じゃあな坊主」
ひらひら手を振って、授恵者が今来た道を戻っていく。
そちらには、既に死が確定した者達と、クリーパーの群れしか残ってはいない。
「後で合流するから俺のメシは残しておいてくれよ」
残しておいたパンが腐るまで待っても、彼は戻って来なかった。
「たいちょー!」
寝覚めは最悪だった。
ゴリラ以上の太さと強靱な鱗に包まれた腕で、とんでもない勢いで揺すられていたのだ。
「おい、しっかりしろたいちょー!!」
記憶の中の声とは違い、今聞こえる音は騒々しく生命力に富んでいる。
夢の光景が記憶の中から消え、リットの意識が完全に覚醒した。
「うるせーっ!」
ぱしりと太い腕をはたく。
あの日から戦い続けてきたリットは馬鹿力の持ち主に成長した。
いてっ、と緊張感のない悲鳴をあげてリザードマンが手を離してリットが地面の上に落ちる。
「疲れてるんだから寝かせろよ馬鹿野郎っ!」
リットは頑丈でもある。
何事も無かったかのように立ち上がり大きな欠伸をする。
目が充血していることに、リットだけが気付いていない。
「ひどい。うなされてから起こしたのに……」
「ひでーのはどっちだよ。俺、これからキャンプまで走って戻るんだぜ?」
ヴィントとヴァイセントラフ砦が見えるここまで物資を運んで来たビヒモーは既にいない。
荷車を牽いて単独で砦に戻ったのだろう。
「あのビヒモー野郎相変わらずだな」
お互い冒険者に懐いてはいるがとことん仲が悪いのだ。
リットは寝癖だらけの髪をそのままに帽子を装着。
極小砦に備蓄された固いパンを1つ持ち出し思い切りかぶりついた。
「んへははほは」
「えー、なんだっけ」
「いじょーありません臨時隊長サマ、でよかったっけ?」
帝国軍の末端として組み込まれた馬鹿8人は、悪意は全くないものの絶望的に頭が悪く察しも悪い。
「おめーらよー、俺ももうキャンプに戻るんだし冒険者もいつもいる訳じゃないんだからしっかりしろ……あん?」
ただのガラの悪い少年が、地獄を生き抜いてきた戦士の顔をする。
筋骨隆々でも内気な8人がびくりと体を震わせる。
リットはそんな反応に気付く余裕もなく、丘の上に立つ極小砦の柵によじ登る。
(最悪だ。みんなヴィントとかに向かった後だぜ)
辛うじて人の形に見える何かが十数、真っ直ぐにこちらへ向かってきている。
知恵のない魔獣1、2体なら脳筋だけでもなんとかなるだろうが、吸血鬼に率いられた死体だとしたらリットがいても焼け石に水だ。
「たいちょー?」
「いいか騒ぐな。全員中に入ってかんぬきかけろ」
リザードマンは全く状況を理解せず、しかし素直に指示に従い移動し極小砦の守りを固める。
「確か合図は……」
リットも頭は良くない。
うろ覚えの狼煙のやり方を思い出しながら、敵発見を意味する煙をなんとか発生させる。
「後は冒険者が来てくれるまで粘るだけ……ってなんだありゃ。吸血鬼、じゃ、ないのか?」
ヤコブの系譜は派手を好むのに、近づいて来る集団は難民未満のぼろぼろな格好だ。
まるで数ヶ月風雨に晒されたかのように、衣服も肉も朽ちたほぼスケルトンだ。
先頭の個体の服装に見覚えがあることを、リットは無意識に気付かないようしていた。
●冒険者到着
「うわぁっ!?」
極太の槍が勢いよく突き出される。
生前なら鼻歌交じりに穂先を斬り飛ばせただろうが、既に魂はどこかへ行き残っているのは消えかけの技術だけだ。
革服を貫通して肋骨を2本まとめて粉砕。
胴が揺れて剣の軌道も乱れ、リットの頭蓋を砕くはずだった刃が髪の毛を一房切断して空振りした。
「ぼうけんしゃさーん! ここでーすっ!!」
「たすけてー!! いや僕らじゃなくてたいちょーが……いえ僕らがたいちょーと呼んでるだけでええっと……」
冒険者が目にしたのは、丸太の壁にリットを追い詰めた骸骨と、今にも泣き出しそうなリット。
そして、帝国崩壊前の装備を着た骸骨兵に包囲されつつある極小砦だ。
元兵士達は、リットが多々かかっている骨と比べれば数段劣る力しかない。
「いたぁいっ!」
だが集団で戦っている。
盾を並べて極小砦からの槍を防ぎ、槍の迎撃がないなら盾の壁を前進させて丸太と丸太の隙間を剣で突き刺しリザードマンを負傷させる。
「ぼうけんしゃさーんっ!!」
極小砦までまだ距離がある。
何を優先して助けるか、あるいは全てを助けるか。
全ては冒険者の決断と行動で決まる。
解説
マスターより
リプレイ
「全員助けますよ!」
ハーフリングのトーラが最高速度に到達する。
真正面から吹きつける合成風は強烈で、風除けがなければ目を痛めてしまいそうだ。
常人の域を脱した脚力が、前傾姿勢での高速巡航移動という超人技を実現している。
まさに朱の疾風だ。
「エーテル展開、照準OK」
魔力を術に変える流れは非常になめらか。
「行って。メテオライト3!」
魔力を必要な数だけ弾丸に変える。
弾丸に必要なだけの加速を与える。
重武装のスケルトン群と風化しかかったスケルトンに真横から直撃。
一撃必殺とはいかないが、奇襲には成功して敵の判断と行動を大いに乱した。
「リット殿防御集中! 強力な癒し手が来ます」
ドローミとリットの付き合いも既に長い。
だからリットが可能なぎりぎりの要求を行った上で諦めさせないための情報を渡す。
(見かけは骸骨でも危険です。知恵のないヤコブの系譜より危険な敵かもしれません)
何が強敵か直観的に読み取り、対象を強く侵すエーテルを矢に重ねてリットの至近にいる骸骨へと当てる。
剣で防がれ、しかも状態異常に抵抗された。
「アルベルト殿、敵の武装に見覚えは」
「著名部隊じゃない。だが戦前と同じ戦力ならヴァイセントラフ砦より質が上でもおかしくないっ」
兵士を襲った理不尽への憤怒で、内臓が熱く感じる。
「リット、苦しいだろうがここは凌ぎ切ってくれ!」
防衛戦に圧倒的に向いているアルベルト=V=シュタールシュヴェーアトは、剣を振る速度は素晴らしいが駆ける速度は授恵者としては平凡だ。
義弟を直接守ることの出来る距離まで、まだ時間がかかる。
「ボクに断りなくこんな所で死ぬんじゃなーい!」
アルマ・ヴァレンタインはトーラほどではないが十分速く、しかし治癒術は射程が短いためまだリットに届かない。
けれどアルマの声は、現実感を失いつつあったリットを現実に繋ぎ止める効果があった。
「アルマ? んがっ」
左手の盾が吹っ飛んだので、両手で剣を構え直すと同時に骸骨の腰へ突き出す。
去年なら優しく受けてから助言をしてくれた彼は、骨に残った戦技にのみ従い息子の首を正確に狙う。
(あの子供……前エルフかなんかにつかまってたやつか。……で、それとリザードマンを助けろって、まあいいけど)
悠人・ラドルファスは考えていることは平和でもやっていることは凄まじい。
かつての帝国軍を思わせる骸骨兵の迎撃を速度で突破する。
(軽い)
大量のエーテルを使った体当たり。
大剣、盾、鎧に自前の筋肉まで揃った悠人とは違い、アンデッドに残っているのは剣とわずかな肉だけだ。
剣と姿勢で見事に受け流したしたが圧倒的運動エネルギーには耐えきれず、骨の足でその場に留まろうとするが30メートル近く吹き飛ばされた。
「にーちゃん、親父は、そいつはっ」
自分自身で決着をつけたいのか、せめて倒す前に親父のことを知って欲しいのか、リット自身にも分からない。
悠人は何も言わない。
リットが錯乱しないだけでも上出来と冷静に判断。
敵の強さをかなりの精度で見抜き、抵抗を抜く可能性の低いシーザーロアではなく体当たりで遠ざけ時間を稼ぐ。
「お前の親父ってあんな骨なの? そうじゃないなら違う、あれは”もう”お前の親父じゃない」
目も口も筋肉も残っていないのに、恐ろしいほど巧みな連携で骸骨兵が悠人を囲む。
「死んだ奴は蘇ったりしない。だからあれはもう、お前の親父じゃない」
傷を負いつつあるのに冷静な悠人にみつめられ、リットはほんの少し冷静さを取り戻した。
が、圧倒的な実力差はその程度ではどうにもならない。
再度接近したアンデッドが、剣で切ると見せかけ柄で殴りつけてリットを気絶させた。
●
目覚めは過去最悪を更新した最悪だった。
良い匂いだと思って大きく吸ったら強烈な臭気が4分の1は混じっていて鼻の奥にこびりついた。
「己の作り出した幻影に惑わされるな若人、わらわの芳香にて夢から覚めよ」
「2度ととれない臭いをまき散らすじゃねーっ、んがっ」
いっそう濃くなったにおいにリットが主に精神的ダメージを負う。
(骨になってしまえば、生前が何であれ気にもならぬししても仕方がないが、若人というものは度し難い)
シリアス顔なク・サーヤ・クッセーワが、身長よりは短いとはいえ実用品としては非常に大きな刃を振り回している。
強いスケルトンを退けるには全く足りず、しかし仲間と連携するなら辛うじて戦闘が成り立つ。
「これを乗り越えねば明日はないぞ。生きているなら立て!」
リットごとサーヤを包囲しようとする骸骨兵へ突進する。
幼くしか見えない背中がリットにはとても大きく見えた。
なお、残り香を嗅いでしまい大きなくしゃみを連発もしていた。
「やるのう!」
内臓という致命的弱点は消え、骨という重要部位を守る鎧はそのまま。
故に大剣を選んだサーヤは、重さと衝撃を重視した攻撃で確実にダメージを与える。
しかし数の差と連携は脅威だ。
シーフとしての身の軽さを活かしても、予想以上の速度で疲労と被弾が積み重なった。
何故なら、既にスケルトンに鼻はないからだ!!
「クソッ、滅茶苦茶強ぇっ」
サーヤも強いのに骸骨兵士は強くあれはその上を行く。
リットはサーヤ以上にぼろぼろで、血が足を伝い地面を汚す。
「これだけ巻き込まれて、災難ね」
小さな光弾が真昼なのに目立っている。
魔力、位置取り、狙いをつける時間、攻撃のタイミングまで全てバランス良く成立させたミツキ・アインホルンのメテオライトが、無傷であったもう1つの骸骨兵部隊を効率よく削る。
「ひぃっ」
極小砦のリザードマンが悲鳴をあげた。
大きく重く非常に頑丈なはずの槍が、元は高性能とはいえ今は錆びた剣にすぱりと切断されたのだ。
「ぴぃっ」
悲鳴の質が恐怖に傾く。
ミツキにより傷を負わされても高い攻撃力を維持していた骸骨兵士隊が、光の塊で文字通りに半壊されたのだ。
その光の塊が、全く速度を落とさず極小砦を襲った。
「たいちょー!」
助けを求める非授恵者リザードマンを、ギーゼラはにこにこしながら見守っている。
「以前鍛えた生意気なリザードマン達が、リットさんを隊長と慕って頑張っているなんて!! 可愛らしいじゃないですかぁ!」
喜びのあまり、気の弱い者なら気配を感じた瞬間逃げ出すほど怖くなってはいるがギーゼラ本人は気にしない。
「しっかりしろ! 闘気槌は敵にしか効かないっ」
圧倒的攻撃力で骸骨隊を蹂躙しているアルベルトが声をかけて励ますが、おそらく半分も通じていない。
戦場での混乱は、指揮官としてのカリスマを持つ彼にとっても難敵だ。
「これはちゃぁんとご褒美にヒールをあげなくちゃいけませんねぇ」
ギーゼラの見た目はちょっと髪がぼさぼさな他は可憐な性別不詳美形なのに、音声と気配が加わると魔性の存在にも見える。
治癒術が機能して凄まじい勢いで傷が塞がれても、非授恵者達は怯えが強まるばかりだった。
「おっとこれは」
ひたすら早く鋭い刃がギーゼラを襲う。
見た目とは裏腹の豪腕を活かして闘気槌を繰り出すギーゼラも、防御面まで完璧ということはあり得ず防具の下に届く傷を負う。
「邪魔です。少し大人しくしてもらいましょうか」
祈りというには禍々しく、呪いというには純粋すぎるものが呼び水となり光檻を完成させる。
内側から獰猛な気配が放たれても、ギーゼラは眉ひとつ動かさなかった。
●
「こらー!」
お手入れ不足で表面は荒れていても14歳の肌を、アルマが思いっきりつねり上げた。
「たいちょー思いの部下さん達が心配してるよー? 気をしっかりもつこと!」
リヴァーオブヴァイタルで治療した後なので思いっきり捻ることが出来た。
「いてぇよアルマ」
リットは元気がない。
元気がないで済む程度まで、精神が回復していた。
「あれはすごく強力だけど時間稼ぎだからね。今のうちに立て直す!」
馬鹿にするつもりはない。
飛び抜けた強敵を10秒戦場から切り離すというのは大戦果だ。
ただ、切り離しても残った敵や残った問題が多すぎるだけだ。
「すぐ助けが来るのでそのまま堪えてて下さい! 絶対に! 気を抜かないで!!」
普段は元気で素直で礼儀正しくもあるトーラが強い言葉を使っている。
難敵が見えなくなった瞬間安堵し堕落した馬鹿8人を見ればこうもなる。
(丸太の柵があれば耐えるだけならっ)
骸骨兵が前進。
並の兵士になら脅威でもトーラなら鼻歌交じりに躱せる一撃が、隊として連携することで酷く躱し辛い一撃に変わる。
「このっ」
一撃離脱直後の体勢からさらに加速。
種族の異なるリザードマンでも生唾を飲み込む足が、力強くしかも繊細に地面を駆け、放置すれば首に当たっていたはずの刃を空振りさせた。
だが攻撃は終わらない
「まだまだぁっ!」
追撃のシールドバッシュと突撃を、研ぎ澄ませた感覚で捉えて回避。
元帝国兵の恐るべき猛攻とそれをしのいだトーラに、柵の中の8人が震え上がった。
「早いわね。魔法攻撃も使えるタイプか」
六角柱が前触れなく消える。
「サポートは任せなさい」
ミツキは術に集中する。
覚悟を決めたつもりでも未だ動きに鈍さが残るリットが、必死に剣を防ぐが再び傷を刻まれる。
(この動揺、まさか)
足を引っ張るエーテル波動をぶつける。
魔糸と魔蝕と魔錆を途切れなく行使する。
格の高いアンデッドには到底効かないはずの攻撃が、ミツキの圧倒的付与技術に次々成功して敵の戦闘能力を激減させた。
(私もかつての仲間がアンデッドで現れたら……、魔法で打ち抜けるのかしらね)
多分倒せはする。
表面を取り繕うことなら出来る。
けれどきっと、今のリットと同じくらいに動揺してしまうだろう。リット以上に濃い絆があったのだから。
「リットさん、トドメは任せたわよ」
言葉で背を押し、ミツキは剥がれそうになるデバフの付け直しに専念した。
「リット、辛いだろうが気をしっかり持て!」
アルベルトはこの骨の生前の行いをリットから聞いたことがある。
「あのスケルトンが恩人ならばリット君自身が彼の魂を開放してやるんだ」
攻防共に優れたアルベルトが押されてしまうほど敵は強く、しかし勝てない相手ではない。
「お前達は退けっ」
最後の闘気槌で骸骨兵を薙ぎ払う。
攻撃直後を骨に狙われ深く斬られるがまだ動ける。
「片面は排除しました。回復しますので寄ってください同胞」
「おお! ……へぇぁっ?」
「落ち着け。ただの美人……いやスゲェ美人!?」
どすっ、と馬鹿の頭の至近の丸太に矢が突き刺さる。
動揺してちょっとだけ激しい注意をしてしまったドローミは、傷を負った馬鹿共とリットを治療する。
「因縁ある相手ならば尚の事ケリを付けなさい! 意図しない不死者は哀しき犠牲者です。僕たちも助力します。貴方が此処で討たれても誰の為にもならないですよ!」
リットも頭では分かっているはずだ。
だが、人間の感情は理屈で蓋を出来るほど温くない。
「残り1体だからな」
敢えて観察に時間をかけた結果、生前なら隠せていただろう動きの癖を悠人がみつけて不意打ちに成功する。
悠人の突撃が元古強者を真後ろから突き飛ばす。
これまで盾にも支えにもなった骸骨兵は既に壊され地面に散らばり、アンデッドは元帝国兵を巻きこみながら丘の下へ転がり落ちる。
「リットくん!」
アルマの輝刃がお下がりの刃に力を与え、アルマの言葉がリットの背中を支えて押す。
「ちくしょうっ、いまさら出てくるなよ馬鹿野郎っ!!」
顔は引きつり涙は止まらず、しかし目だけは真っ直ぐに見覚えのある骸骨を見据える。
骸骨の剣と足は何故か一拍分遅れ、リットの刃が同じ形の刃ごと背骨と腰骨を破壊する。
「っ」
熱い涙が、ぼたぼたと地面に落ちていた。
●
「バッカもんがー、わらわの名は偽名ではないわ」
怒るサーヤに深々頭を下げるギルド職員。
なお、職員が涙目なのはにおいに体が耐えられないからである。
「弔う場だからこのくらいにしてやるが、もう2度と間違うでないぞ!」
怒っていても小声で話す彼女は、気遣いの人でもあった。
「がんばったわね」
リットから事情を聞いたミツキは、自身の境遇を改めて思い返す。
「ご飯はしっかり食べるのよ」
多くを語ることなく、過酷な現実に立ち向かえるよう出来る範囲のことする。
「やっぱり貴方達の実力向上がリットさんの負担軽減につながるはずね。授恵者でない貴方達は一人で沢山倒すのは無理。でも少しでもいい方向に傾ける事位はできるはずだわ」
リットを遠巻きに見守る馬鹿8人に、訓練する習慣が出来るほどみっちり教えることにした。
「やはり」
悠人とドローミが残留思念感応を使ったのは念のための確認だ。
何も残っていない剣と骨を、掃き清めた地面の上へ並べる。
「彼らの魂はもう此処にありません。資材の許す範囲ですが弔い、付近に埋葬するのはどうでしょうか」
ドローミの言葉は普段より重々しい。
「埋葬の許可は俺がとっておく。思うようにやるといい」
アルベルトはそれだけ言って、一足早く砦へ戻る。
帝国南部都市奪還作戦全体に口出す権利はなくても、彼のうまれならささやかな要求を通す程度なら可能なはずだった。
(リット君の処に来たのは若干の想いがあったのでしょうね)
ドローミは非授恵者の8人に指示を出す。
戦闘面ではほとんど役に立たなくても、穴掘りなら多少は役立つ。
工事の計画を立てているのはアルマだ。
もともと余裕などないので、工事用の道具を借りるのが精一杯。石材も木材も使わせてもらえない。
「貧乏って辛いよー……」
極小砦を見上げる場所に出来たのは、整地され砂利を撒かれているだけの、小さな墓所だった。
アルマは持ち込んだアルコールを備えて立ち上がる。
「奪還に赴くボクや皆を見守ってくれれば……」
リットの視線に気づく。
「あ、ちょっと感動した? ボクの平たい胸だったら貸してあげるよー? ドーンとこーい!」
実際に来たのでちょっと驚いた。
奥歯を噛んで唸るように耐える少年が、ちょっとだけ可愛かった。
「長い間お疲れ様でした。ゆっくり眠って下さい……」
遺族の心の整理には時間がかかることもある。
トーラはリットに声はかけず、遺品である剣と、引き取り手が不明な装備にも黙祷する。
元兵士に遺族がいるかどうかも分からない。
酷い話で、国が一度滅んだ帝国ではありふれた話だ。
「なんで、かなぁ」
絞り出すようにつぶやいたリットにギーゼラが言う。
「なんでなんて問いかけて、答えが出るものの方が少ないでしょう。答えなんてないのだから、目の前のものを全部飲み込んで、前に進むしかないでしょう?」
リットは顔を上げ、北をじっと睨み付けていた。
マスターコメント
ショートシナリオ難しい 報酬:標準8 / 6〜8人
2021年06月27日 22時50分19秒 公開
相談掲示板
ウォーリアのアルベルト=V=シュタールシュヴェーアトだ。 よろしくな。 俺は、まずはリット君の所に行って動揺を鎮めて一緒に闘おうと思っているぜ!古強者スケルトンは、リット君自身に魂を開放させようと思っているぜ。
シーフのトーラです。 出来るだけ早く砦についてリットくん達を助けないとですね。 300メートルということは60ヘクス。 サブとメインを両方移動に使えば移動力×3ヘクス移動できますけど、スケルトンとの戦いがあるので軽装過ぎるのも心許ないですね…。 疾風足やチャージングを使えばもっと早く到着できるので、それや射程の長い武器やスキルで援護しながら近付く感じになるでしょうか。 わたしは杖を持って疾風足で走って魔法でスケルトンを攻撃しようと思います。
キャスターのミツキよ。よろしくね 私も、できればリットさん自身に決着をつけさせてあげたいわ。 だから、魔糸、魔蝕、魔錆とデバフをかけてサポートする予定よ。
ドローミです、今回も宜しくお願いしますね。 100mまではとにかく走り、リット君が対峙しているスケルトンに攪乱射撃3を撃つところからスタートです。 その後はリット君に、防御集中宣言で此方に後退を要請。 8人のリザードマンに、警戒しつつこちらに移動するように指示ですね。(ヒーリングオーラ出来るよと) 今まで【回復】の計算を誤解していました。 今回僕のヒーリングオーラは、104点の治癒です。 攻撃集中宣言すると、たぶん10点UP。 古強者スケルトンが誰だったのか、今の僕たちでは見えないし判りません。 (アルベルト殿だとリット君の剣と同型で帝国兵の制式装備かもと、近づけば気付き察することが出来るかもですが。)
サーヤである。よろしくなのじゃよ。 リット殿にとどめは譲ってやるが加勢は必要じゃろうな。 手厚い予定がすでにあるのであればわらわは周辺雑魚どもを狩るとしよう。 さて、アンデッドども臭がる我が芳香をとくと味わわせてやろうかの。
ヒーラーのアルマだよ、どーぞよろしくねー。 まずは届くところまで近づかないとね…並装備の移動4だから時間かかるけど リットくんの支援に輝刃3とかを持ってこうかなと
リットだ。よろしくな! なんかシリアスっぽい展開になってるけど、質問の受付と回答はいつも通りだぜ! ……俺の知性と知識に期待しねーでくれってことだから。
はい、おはようございます。 【質問】 Q1 砦に戻ったらしい(リット君は推測しかできない)ビヒモーは、空荷なら若しくは荷車を曳いていなければ、PC二名程度を乗せて移動できますか? 荷物満載でなければ移動5だった記憶。 >ミツキ殿 今回も宜しくお願いします。 可能であれば、『騎乗』用意できませんか? 加えてビヒモー初登場時に装備されていた、『動物感応』を。 ミツキ殿とアルマ殿が先行できると、かなり状況が有利になると考えます。 【CP】弱者を狙う石かな? 成人女性と子どもサイズだと二名背中に乗れる筈なんです。 検討願います。
A1 可能だけど実質無理だと思う。 野郎、じゃないやビヒモーを呼び戻すのは、多分軍人のおっちゃん達が嫌がるし。 危険な場所にも突っ込めて生き残れそうなビヒモーって、極小砦にいる9人よりずっと貴重品だぜ。
ヒーラーのギーゼラです。よろしくお願いします。 フフフフフ、以前鍛えた生意気なリザードマン達が、リットさんを隊長と慕って頑張っているなんて!! 可愛らしいじゃないですかぁ! 動揺しているリットさんを落ち着かせる時間を稼ぐために、元古強者スケルトンは一度光縛封に閉じ込めておきましょうか? 時間を稼げればリットさんに訳を聞いたり、落ち着かせる言葉をかけたり出来るかと。 動揺している状態だと防御集中をして下がる、という行動が出来るかも怪しいですからねぇ。
悠人・ラドルファス、よろしく とりあえず先行できるなら先行しちゃって 古強者スケルトンとスケルトンの時間稼げばいいんでしょ? で、合流した後は押し返すっていう感じ とりあえず先行してシーザーロアで古強者スケルトンひっぱってつもり
とりあえず疾風足とメイン移動で10ヘクスずつ動けるので、3ラウンド目にはスケルトンを射程に入れてメテオライトで攻撃しますね。 それでこちらに誘導出来れば引き付けて時間を稼いでみます。 それで、リット君が決着を付ける件ですけど、可能ならという認識で合っているでしょうか? リット君がそれを乗り越えて成長すれば、今後のためにもなると思うんですけど、それにこだわってリット君やリザードマンの人達を危険に曝すわけにはいきませんし。 それにドローミさんが言うように、わたし達には事情が分からないので最初からその前提で行くのは不自然でしょうから。
フフフフフ、先行してくれる方がいるのはありがたいですね。 僕は移動スキルがないので、遅れての参戦になるかと思いますが ヒールはたくさん持っていきますので、安心して怪我をしてくれていいですよ? >リットさんが決着をつける件 可能ならで良いかと思います。 優先すべきはリットさんやリザードマン達の命ですからねぇ。
>リットさんが決着をつける件 ええ、可能であればと考えているわ。もちろん皆の安全の方が優先されるべきと思うのよ
提案ありがとー、けど今回はビヒモーさんには乗れないんだね…ちょっと残念 当初の予定どおり全力で走ってくとしてー >リットくんが決着 うん、できればでいいかなーと 目標の5人以上といわず全てを助ける方向でいきたいしー
ほぼ当日ですが、ようやく発言。 リット殿は回答ありがとうございました。 今回は提案取り下げますが、不可能ではないって辺りが惜しいですね。 僕も犠牲は出さず、スケルトンを排除したいです。 終了後文字数があるなら、残留思念感応行うプレを掛けます。 優先は古強者スケルトンの弱体化、殲滅からの予定。 繰り返しますが、僕たちはリット君の事情が判りません。 今まで何回か、此処は任せて先に行け した兵士が居た話は聞いた気がしますけど(OPで)。
わかりました。 それなら遠慮なく古強者スケルトンもメテオライトに巻き込みますね。 スキル枠がギリギリなのと、スケルトンの相手で手一杯だと思うのでヒールは使えそうにないので、回復はギーゼラさん達を頼らせてもらいますね。 犠牲者を出さずに全員助け出しましょう!
プレイングは提出済みです。 皆さん、雑兵スケルトンは東西に分かれていますので範囲攻撃の指定注意です。 恐らく7:6(リット君側が6+古強者スケルトン)