酒のごとく酔える?

狐野径

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シナリオID:1051

オープニング

 リーンエス王国にあるカペル侯爵領。
 その領内のある酒場の裏口に、店の人たちと顔なじみの紋具の研究者がやってきた。
 おずおずと扉を開けて問う。
「まかないもらってもいいですか?」
「おお、いいぞ」
 店主が手招きして余っていたまかないを器に持って、隅にある小さなテーブルの上に置いた。
 研究者がやせ細って栄養が悪そうなのが気になって、店主が声を掛けたのが始まりだった。それから時々、研究者は食べにやってくる。
 いずれ、店の常連になってくれという約束で。

 研究者は頭を下げて、いつも通り食べる。人の温かさを感じつつ、胃袋が満たされる幸せを覚えた。
 店内に客が多いのか、調理場は忙しそうだ。
 肩身狭い思いをする。ただ、今回はちょっと違った。
 研究の結果がひとつここにあるのだ。
「これが、うまく作れれば、恩返しできるのに」
 ポケットから石のようなものを取り出す。これが紋具であり、水につけていたら酒のような感じにできる代物だとわかっていた。
 その実験は自宅兼研究室で行っていた。
 匂いも、見た目も味も水のままだったが、飲むと酒のような高揚感がわいた。
 なお、すきっ腹に飲んでしまったので、しばらく倒れていたのが、ここに来る前の出来事。
 それを思い出しながら「つまり、水を酒にするということ……なのかな?」と、ご飯をもぐもぐ食べながら、研究者は考える。
 酒ではないのに酒のようになるのだから、需要はある気がした。
「偶然できてしまったというのが大問題……多分、同じように作るのって……どれが原因でこうなったのか……」
 水だけでなくジュースでも試したいというのが心情だ。ジュースで酒ぽくなるということは、ぶどうジュースとワインの関係のような気がしていた。
「もし、これを酒に入れたらどうなるんだろう?」
 研究者は考える。
 酒ならば、調理場に樽がある。
 それに「出来心」で入れてしまえば、実験が可能だ。
 一番いいのは対価を払って酒に入れてみることだ。
 その余裕は、今の研究者にはない。
 この酒場には恩がある。
 酒が酒でないものになってしまったら、この店に迷惑をかけることになる。
「それは、さすがに……でも、酒も液体だし、酒ぽくなるということは、酒がより酒になるだけだし」
 食事をさじですくって口に入れながら、考える。
 食べ終わって、皿とかをいつものところに置くため立ち上がった。
 ちょうど中腰のあたりで、調理場を忙しく動き回っていた料理人と接触した。

「うわぁ」
 研究者の手から紋具が飛んだ。
 飛んで落ちた先は酒樽だった。ひしゃくが入れてあるところに、隙間があった。そこに紋具は器用に入った。
 ぶつかった料理人は「すまん!」と謝罪した後、研究者にケガなどなさそうなので、仕事にすぐ戻る。
 研究者は困惑した。
 入ってしまった石。
 はずみとはいえどうしようかと思う。
 こっそりひしゃくで取り上げる。

 素直に告げるべきか否か、悩ましい。
 状況を見届けるべく、裏口から出て、酒場の表から入る。
 もしものときは謝らないといけない。
 しかし、結果もわかるとわくわくもしている。
 研究者は酒場の隅っこで、青ざめつつ興奮する。落ち着こうと水を頼んだ後、その紋具を入れて飲んだ。

 研究者は気づいていないけれども、酒はまろやかに熟成され、度数も跳ね上がっていた。
 味の違いに気づくかもしれないのは、酒を頼んで飲んだ者だけだ。
「おやじっ! これ、いつもよりうまうぞ! もう一杯っ!」
「え? いつもと同じだぜ? 今日はあんたの機嫌がいいから、移ったのかもな酒に」
「いいこと言うねっ!」
 客が大いに明るく笑う。
 酒を呑んでいた他の客も「うまい」と言っている。

 そのような中、研究者は酒のようになった水を飲んだが、落ち着くどころか、おろおろしている。
「どうしよう、どうしよう……」
 客の喜ぶ声が逆に悪いことをしたような気にさせていた。
 いつものものではないのは、あれのせいではないか、と。
 研究者の不安は酒の力を借りて、大きく膨れ上がる。
「うわああああ、僕は、僕はなんてひどいことしたんだあああ」
 そして、大泣きを始めたのだった。

 そのような酒場にふらりと寄る冒険者たち。
 酒を堪能してもいいし、その研究者に声を掛けてもいい。
 さて――?

解説

●目的・目標  カペル侯爵領のとある酒場にて、ひとときを楽しむ。 ●紋具について  酒が強くなる……というより、液体につけると酒の何かが加わるというものです。  酒も液体ですから、入れるとどうなるかとなると、味がよくなるようなどうなのか……という感じです。  ジュースや水に入れて使う場合は「酒」ではなく「酒のように酔えるもの」であるため、未成年でも飲むことは可能です。  ただし、現状は酒にしか使われていません。  紋具を入手してジュースや水で試すには、研究者に話しかける必要があります。  OPの状況からどうすると入手できるかは……。  語ろう、遊ぼう系においてのいつものお願いとなりますが、公序良俗を乱すプレイングは活かせなくなりますのでご了承下さい。

マスターより

 こんにちは、狐野径です。  酒以外にも利用できる紋具です。酒を楽しむもよし、研究者から入手できれば、ジュースでも使えます。  なお、酒オンリーだと未成年参加者さん、ぽつねんとなってしまうということから、水やジュースでも酒になる対処です。ただ、ワンクッションいりますが……。  よろしくお願いします。

リプレイ

●酒場へ、ようこそ
 シルヴィア・A・カペルはエル=バ=ノイアンの鉄級認定祝いの席を設ける。
 喧噪が少なそうな窓辺の端の席を選ぶ。
「お勧めの酒場だ。料理もさることながら、店主の人柄が良……泣き声?」
 シルヴィアは話す途中で泣き声に気づき、ノイアンも目を向ける。
「何か、あったのだろうか?」
「可愛い友人が声を掛けているから、彼の気持ちがしゃべれるところに浮上するまでしばらく様子を見よう」
 シルヴィアとノイアンは料理等を注文しておいた。

 ギーゼラは食事がおいしいという評判の酒場にふらりと入る。
 入ると、泣いている清貧な男が目に入る。
「いいですねぇ! カモの香りがします!」
 と思い、その席に行く。
「何か悩み事でも? 僕で良ければ話を聞きますよ」
 ギーゼラの表情は、他者を安心させるような穏やかなものだった。

 キーゼとネーヴェ・グラヌローザはぐい飲みを贈った際に、それで酒を飲み交わすという約束をしていた。
 店内の端の方にある、二人用のテーブル席に向かう。
 キーゼはネーヴェのために椅子を引く。
「お約束通り、これを生かせる機会が……思いの外早く訪れましたね」
 ネーヴェは引いてもらった椅子に座る。
「早くしないと、延々と約束は果たされない気がしますわ」
 キーゼはネーヴェの言葉にうなずくと、大切な女性からの贈り物である、月と兎の絵が入ったぐい飲みをテーブルに置いた。

 リリリリスはすっからかんの財布に相談する。
 どうしたらまともなご飯が食べられるか。
 財布は答えてくれないが、目の前には酒場がある。
 酒場といえば、酒盛り、酒盛りと言えば、酒……酒と言えば「私」という連想から、気分は高ぶった。
「そうですわ! 生まれ持った高貴さと可憐さを魅せてあげます!」
 ぐっと拳を握ると、おそるおそる入った。

●紋具
 ギーゼラは辛抱強く相手の話を聞く。
「……僕は、僕は親切な人に……人に……」
 相手は、コップに入った紋具につけた後、それを飲み干した。
 ギーゼラは店員を呼び止め水を一杯もらう。
「さあ、落ちついて下さい」
 研究者は謝罪をしながら水を受け取った。
「紋具の研究をしているんですが、うまくできなくて」
「続けることが大切なんですよ」
 ギーゼラは研究者を褒めつつ、話を促す。
「偶然できた、この紋具……水などは味をそのまま酒のようにし、酒はその度数を上げるんですよ」
 研究者は紋具をコップに入れ、外に出す。水を一気に飲み干した。
「……偶然、酒の瓶に落ちたんですよ……ここの酒は……」
 呂律が怪しくなる研究者から、ギーゼラは水で酔っているのを理解した。
「皆が気持ち良くなれるなら、それでいいでしょう? 今ある笑顔は貴方が作り出したものなんだから、誇ってもいいのですよ?」
 ギーゼラは研究者の欲しているだろう「甘い肯定と楽な逃げ道」を与えていった。

 シルヴィアとノイアンは紋具の話がでたところで介入する。
「ちょっと良いかな?」
 シルヴィアがギーゼラを押し、席に座る。ノイアンはその近くで控える。
 ギーゼラは水を差されて「あっ」と思う。
 研究者はシルヴィアを見てぼーとし、ノイアンを見て緊張する。
 シルヴィアは研究者に真摯なまなざしを向ける。
「聞かせてもらったよ。紋具を偶然でも作れたことは誇って良いことだ。しかし、店主にはきちんと話したほうがいい」
「……ううっ」
「皆が楽しんで飲めるのはいいだろう。でも、店主は知っていた方がいいはずだ」
 シルヴィアが説得する。
「お酒を駄目にしたわけでもないし、店主の人柄もいいから大丈夫だと思うよ」
 研究者はさすがにうなずいた。
 シルヴィアは、果実の飲み物を店員に持ってきてもらう。
「紋具の効果を、この目で確かめたい。ちょっと借りて良いかい?」
 シルヴィアは借り、ジュースに入れ、取り出した。
「匂いは変わらない。ノイアンも嗅いでみるかい?」
 ノイアンはコップを受け取り、嗅いだ。
 コップをシルヴィアに戻そうとして、ノイアンは躊躇した。
「飲んでみていいか?」
 シルヴィアはその申し出に驚く。
「君は飲めないだろう?」
「だから、こそ」
 ノイアンが口に含んだ物は、確かにジュースだ。
 二口、三口……と確かめるように飲む。
 腹の底から温かくなるような感覚がある。
「味はジュースであるけれども、飲んだ後来るものは酒かもしれない?」
 ノイアンの感想に、シルヴィアもギーゼラも興味を引かれた。
「これは、研究を続けるべきだ。可能なら実家に支援するように頼んでみたいよ」
 とシルヴィアは言う。
 研究者はシルヴィアに「いつか酒場に本当の恩返しになるよう願っているよ」と告げられ、安心したような顔でうなずいた。
 ギーゼラは「紋具、借りたいです」と自己主張をした。
 紋具自体は店主への説明でも必要だった。ひとまず、一杯だけジュースに浸してもらった。また、後で借りられるという約束付で。
 ギーゼラはふてくされていたけれども、飲んでみて、少しだけ機嫌を戻した。

 ネーヴェは姿勢を正すとまずキーゼに謝罪した。
「先日は本当に済みませんでした。まさか酔いつぶれてしまうなんて、お恥ずかしい限りです」
 キーゼは悪戯をしたような表情を出した。
「いえいえ、僕としては役得でしたから。寝顔も独り占めできましたのでね……とはいえ、酔いつぶれられると身の安全の保証はしかねますので、お気をつけ下さいね?」
 ネーヴェはキーゼの表情にどきりとした。
「それは、どういう……今日は大丈夫です。きちんとセーブして呑みますから」
 ネーヴェは決意を表した。
 注文した酒が届いたところで、二人は、酒を注ぐ。
「乾杯、ですわね」
「ええ、貴女との出会いに乾杯」
 二人は杯を合わせ、そして呑む。
「まぁ、とってもおいしい! 口当たりがまろやかで、いくらでも呑めてしまいそうですね」
「ええ、これは確かに……先ほどの方が言っていた通り、確かに味が違いますね」
 客と店主のやりとりがあったが、何が酒をよくしたのか不思議だ。
 キーゼは冒険者の動きに気づき、聴覚をそちらに向ける。その結果、紋具の影響が酒にあるということを知る。
 ネーヴェはキーゼが見せたわずかな表情の変化に気づく。
「どうかしましたか?」
「やはり、目の前に貴女がいるからですかね?」
 キーゼは料理の一つを一口大に切り、一つフォークで刺し、ネーヴェに勧める。
 ネーヴェは躊躇したが、そのまま口に含む。
「……おいしいです」
 ネーヴェの頬が赤いのは、羞恥か酒か――。

 リリリリスは店に入ると、知り合いの姿を認める。
「どうしようかしら」
「お嬢さん、誰かと待ち合わせかな?」
 店員が声を掛けてくれた。
「今、取り込み中のようですの」
「ここに座って待てば? 注文はどうする?」
「そうですわね……何か食べてもいいんですの!?」
「え? 酒場でも料理はあるからね」
 リリリリスは喜び勇み、料理を頼む。
 頼んだ料理が出てくると、感極まる。
「七日ぶりのまともな食べ物ですわ!」
 リリリリスが嬉々とし料理を食べる傍らを、研究者が通ったり、カウンターの後ろに店主が出てきたり動きがある。
「どーりでおかしいわけだ!」
 その声に驚きリリリリスは顔を上げたところ、店主の目が合う。
「お嬢さんは、酒は飲んだことあるかい?」
「え? いいんですの?」
 リリリリスの目はきらりと輝く。
「私、お酒をたしなむのも必要だと以前から思っていましたわ! 周りがなぜか止めるのです!」
「酒……これはどうかな? 無理して呑まないでいいからな」
 差しだされたものは葡萄酒にも見える。
 リリリリスは何の疑いもなく受け取る。
「いただきますわっ! かんぱーい……ジュース? でも、なんですの、このふわふわしているのは……」
 リリリリスに店主は紋具について説明をした。
「是非、他の物も、お酒も飲みたいですわ!」
 リリリリスの手に紋具が渡った。
 別のジュースを大きな器に入れてもらう。それに紋具を入れた。
 コップに注いで飲んで見て「ジュースなのに、お酒ですわっ!」と興奮する・
 リリリリスは残ったジュースな酒の入った器を持って、ギーゼラの方に向った。

 研究者は安堵したのか、カウンターで、突っ伏し、寝落ちした。

●さあ、酔おう
 ギーゼラはジュースだけどジュースでは得られない、気分の高揚にうっとりする。
 五臓六腑が温まり、体がふわふわした感覚。
 料理と次飲んでみたいジュースを頼む。
 料理が来るより早く、テーブルにドンと器が置かれ、ジュースが飛ぶ。
 その先にはリリリリスがいた上、あの紋具を手にしていた。
 ギーゼラの高揚感は一気にしぼむ。
 リリリリスはギーゼラの前の席に座る。
「あら、いらしていたの? 私と一緒にお酒を呑むのは……呑みなさいよぉぉぉ」
 ギーゼラの飲みかけが入っているコップに、持ってきたジュースを注いだ。
 飲み物の色が怪し色になる。
「ああ、そうですわ。これを……香水に入れればきっと、おいしいお酒になるはずですわ!」
 など、リリリリスは力説しながら、ポケットから香水を取り出した。
 ギーゼラがようやく反論に出る。
「僕は貴方の相手をするほど暇じゃないんですけど?」
「昔はあんなに素直でしたのに……ミ――」
 ギーゼラがリリリリスの顔をつかんだ。
「リース、表に出なさい」
「ええー、お酒、もっと飲みたいですわ」
 リリリリスは器を巨大なコップのようにして、一気に飲み干した。
「うっ、ちょっと気持ち悪いですわ……」
 ギーゼラはそれを冷たい目で見つめる。
「さあ、行きましょう」
 口元を押さえてふらふらなリリリリスは、ギーゼラに手を引かれて動く。
 ギーゼラは店主に断って、店の裏手に出た。
 ギーゼラはリリリリスにコブラツイストを掛け、
「だから、僕に絡むなって、普段から――」
「痛いですわ!」
 リリリリスの声は無視し、ジャーマンスープレックスを掛け、
「――言ってるでしょ、この変態ドM!!」
「いた……あ……あ……」
 リリリリスの苦鳴は恍惚としたものに変わりつつあった。
 ギーゼラはジャイアントスイングでリリリリスをごみ捨て場に放り込んだ。
「だいじょうぶ、おとめのプライドが……バンジージャンプを……をゑぇええ……」
 リリリリスはそのまま眠りについた。
「またつまらないものを処理してしまいました」
 ギーゼラはいい笑顔で、酒場に戻った。
 しかし、紋具は回収されていた。

 キーゼとネーヴェは酒や料理、話を楽しむ。
 ネーヴェは時々、水を飲むようにしていた。
「キーゼさんとこうして酌み交わすのをずっと楽しみにしていたんですもの。酔うに任せて台無しにしたくないんです」
「酔った貴女もあでやかで素敵ですが……せっかくの機会ですからね、もっと貴女と楽しみたいですよ、僕も」
 キーゼはネーヴェの考えを尊重する。
 紋具のことを知らないため、ネーヴェは酔っている感覚が不思議であった。
「以前より、酔いが早い気がするのは、楽しいからでしょうか?」
「楽しい、と言って下さるのは嬉しいですね」
「キーゼさんはお酒に強いんですのね。酔っぱらったりは致しませんの?」
「昔からよく飲んで、といいますか、お酒が保存水代わりの地域でしたからね」
 キーゼの言葉にネーヴェは目を丸くした。
「水が貴重な地域だったのですね。ご出身はどちらでしたか?」
「生まれ、ですか……王国、ということにしておきますよ」
「ええ、と」
 ネーヴェはリーンエス王国の地図を思い浮かべるが、酒の力でふわっとした地図となっていた。
 二人の歓談はしばらく続いた。

 シルヴィアとノイアンは席に戻る。
 ノイアンの好物のグラタンや果物系の飲み物、酒がちょうど運ばれてきた。
 シルヴィアが祝いの言葉を述べ、乾杯する。
「鉄級認定おめでとう。君ならすぐだと思っていたよ」
「わざわざ祝いの席を、すまないな。だが、これであんたと肩を並べられる」
 シルヴィアは驚く。
「あんたの好きに俺を使え。尽力しよう」
 シルヴィアは「私のことを考えて鉄級を受けてくれた?」と知り、うれしさで笑顔になる。
「ふふ、なんだかノイアンが私の騎士になってくれるみたいだね」
「……騎士、そう、か」
 ノイアンは「それも一つの道かもしれない」考える。
 シルヴィアはノイアンの行動に対して、
「私もできる限り君の力になると約束しよう」
 と告げた。
 飲み物が空になり、料理も減ってくる。
「混んでいるな、直接、注文してこよう」
「俺が」
「主賓は君だよ」
 シルヴィアはギーゼラのところで紋具を拝借し、カウンターで飲み物と料理を頼む。
 紋具は飲み物に入れて取り出した後、眠る研究者の手の下に入れた。
 シルヴィアは戻り、ノイアンは飲み物を受け取る。
「……何かふわふわする? さっきのあれが……」
 ノイアンは自分が酔っていると感じ出した。本人は意識していないが、表情が自然に緩んでいく。
 その結果、ノイアンは、笑顔になっていた。
 その目、その笑みに、シルヴィアは釘付けになる。
 ノイアンは「子熊亭でのこと覚えているか?」と切り出した。
「きれいだと……いったのを。その時は歌声のことだったと、もちろんそれもあるが、あんたの在り方そのものに惹かれた」
 シルヴィアはかろうじて「君といるといつも楽しい。不思議だけど悪くない」と答える。
「お行儀よくまとめるつもりだったんだが。……あんたの声は、ずっと聴いていたくなる……」
「そういわれたのは初めてだ」
 シルヴィアは酒を呑んで喉を潤した。
 ノイアンの笑みがより深くなった。

●さて
 ギーゼラは帰る際、リリリリスの分まで払うことになっていることに気づいた。
 紋具でさらに一杯飲めれば最高だったかもしれないけれども、リリリリスが復活してくる前に立ち去りたい。
 シルヴィアの所によって挨拶をして立ち去ることにした。
「いつもは王子様のシルヴィアさんも、ノイアンさんの前ではかわいいお姫様ですねぇ」
 シルヴィアはカッと頬を赤くして、ギーゼラの背をにらんだ。

 シルヴィアはノイアンに向くと、
「もっと、君とたくさん話したい……私は、君のことが知りたい」
 と言ったのだけれども、ノイアンは幸せそうな顔で寝息を立てていた。
 シルヴィアは大きく息を吐き微笑み、酒を頼んだ。

 帰る際、キーゼはネーヴェに送っていくことを申し出る。
「今日はお誘いどうも……送っていきますよ? さすがに送り狼はしませんので、ご安心を」
「いつも気遣ってくださってありがとうございます」
 一歩進んだところで、ネーヴェは止まった。振り返るキーゼに向かって、
「……手、つなぎませんか?」
 と告げた。

 リリリリスは店じまいの際、店の人に回収された。

 閉店時間に揺り起こされた研究者は手の中にある紋具に気づく。
 その紋具は、もろかったのか、すでに砕けていた。
「一夜の夢かな」
 研究者は改めて頑張ろうと決意をするのだった。

 夜は更け、朝が来る。

マスターコメント

 ご参加ありがとうございます。  あれ? おや? まぁ! 皆さま、個性がある、はらはらドキドキがありました。  また、ご縁があれば、お会いしましょう。
ショートシナリオR

ショートシナリオR易しい 報酬:無し6 / 4〜6人

2021年06月28日 20時31分35秒 公開

大成功

相談掲示板

  1. シルヴィア・A・カペル

    シルヴィアだ。リクエストした身として、成立してほっとしたよ。 参加者の皆と狐野径さんに心からの感謝を。今回はよろしくね。 ノイアンの鉄級認定のお祝いのために食事に来たよ。研究者にも声を掛けたいと思っている。助けたいという気持ちもあるし、紋具をジュースや水にも使ってみたい、という気持ちも。 ノイアン、お誘いに快諾してくれてありがとう。改めてよろしく。

  2. ネーヴェ・グラヌローザ

    ネーヴェ・グラヌローザと申します。皆様どうぞ宜しくお願い致します。 シルヴィア様リクエストのこの依頼、実はリクエスト段階から気になっておりましたもので、無事の成立と満員御礼、私も嬉しゅうございます。 今回はキーゼさんとご一緒に酌み交わす予定です。 研究者様のご様子も気に掛かりますが……シルヴィア様がお声がけ下さるなら、ひとまずは大丈夫でしょうか。介抱の手が必要でしたらお手伝い致しますわね。

  3. エル=バ=ノイアン

    ノイアンだ。いつの間にか埋まっていたんだな…成立もおめでとう。シルヴィアは誘ってくれて感謝する、よろしく。 俺はシルヴィアが言っていた通り彼女と一緒に行動する予定だ。 研究者にも声をかける予定ではあるが…怖がらせないようにしないとな。

  4. シルヴィア・A・カペル

    ネーヴェとノイアンには、私が初めてリクエストした子熊亭の依頼の時からお世話になっているね。今回も参加して貰えて嬉しいよ。ネーヴェ、行動は別々だけど同じ一時を楽しもう。ノイアンは此方こそよろしくね。怖がらせないためにも、表情を柔らかくしていこう(ぐっ 研究者については、先述通り彼を助けたい気持ち半分と……実は酔ったノイアンが見たい気持ち半分← その為にはあの紋具を借りないと。だからどうか気にせず、ネーヴェ達はお酒を酌み交わすことを楽しんで欲しい。君達も良い一日を。

  5. ギーゼラ

    ヒーラーのギーゼラです。よろしくお願いします。 ジュースで酔えるなんて嬉しいですね。 お酒で酔った人たちは楽しそうなので、体験してみたかったんですよぉ。 紋具は使いたいので研究者には声を掛けてあげますね。 皆が気持ち良くなれるならそれでいいじゃないですか? せっかく出来た紋具なんだから思いっきり楽しんじゃえばいいのですよ?って 耳元でやさぁしくやさぁしく、洗脳するようにねぇ!!

  6. エル=バ=ノイアン

    子熊亭の依頼からか。そう思うと感慨深いな… やわ…表情を柔らかく… …シルヴィア、欲望が漏れ出ているぞ。しまわないと。 ギーゼラもよろしく頼む。なんというかあんたらしい対応だな…ブレない…(褒めている

  7. リリリリス

    私、リリリリスですわ!! 初めましての方はよろしくですわ 美味しい物が新しく登場したと小耳にしてやってまいりましたわ! 紋具…これはまた新しい味の境地も見付けられそうですわね

  8. キーゼ

    さて、飲みに来ました。 よろしくお願い致します。

  9. シルヴィア・A・カペル

    ギーゼラもリリリリスもキーゼもよろしくね。当日は楽しもう。 おっと、つい欲望が出てしまったよ。確かに感慨深い……ノイアンは以前より表情が柔らかくなったと思うよ。 ギーゼラも研究者に声を掛けるんだね。それなら是非協力したいな。 ノイアンのお祝いがあるから、必要最低限のプレになると思うけど……研究者には、店主に正直に打ち明けて貰いたいと思っている。お酒を駄目にしたわけでもないし、人柄も良さそうだから大丈夫だと思うんだ。お客さんに話してしまうと場がややこしくなるかもしれないから、店主にだけ話す予定。 紋具を借りる理由は……もし偶然でもそんな紋具が出来たならこの目で確かめたいし、店主にも見せたい。その上で研究を続けて欲しいと力説したい、かな。ギーゼラの誘惑(?)も良いと思うよ。皆で楽しめればそれが一番だ。

  10. リリリリス

    >シルヴィア様 ええ、よろしくお願い致しますわ! ふふ…秘蔵のコレクションもお酒に変わるのでしようね… これは楽しみですわね…(香水の瓶がみえる)

  11. シルヴィア・A・カペル

    >リリリリス 故郷の酒場を気に入ってくれたら嬉し……待って、香水瓶? 秘蔵のコレクションって一体……?( 紋具を使うということは、もしかしてリリリリスも研究者に声をかけるのかな?(既に紋具が使われているお酒を飲むのかと思ってたよ、ごめんね) 当日、もし協力出来たらよろしく頼むよ。お互い楽しんでいこう。

  12. ギーゼラ

    うわぁ、うわぁ…。(ドン引き) リースが変態だとは知ってましたけど、香水が来ましたか。 僕が思わず素の反応をしちゃいましたよ。 やはりリースは許せない。 さて、気を取り直して。 シルヴィアさんが研究者に救いを与えるのなら 僕がやさぁしく洗脳しても落ちてくれなそうだなぁ!ざぁんねん! 僕が彼の気持ちを浮上させる方向で声をかけるので、その後に声を掛けて解決策を出して貰えれば効果的かと。 あぁお二組にはご迷惑をかけないように、そこのピンク頭の変態は僕が物理的に処理しますのでご心配なく。 リース。ちょっと表に出なさい。

  13. シルヴィア・A・カペル

    ギーゼラが我に返った所は初めて見たな……いや、どっちのギーゼラも可愛いけどね(楽しそうに笑いながら) あ、やっぱり誘惑というよりは洗脳だったんだ( 成程。それならギーゼラが研究者を明るい感じに洗脳(?)してくれた所で、店主に紋具について打ち明けるよう持ちかけてみるよ。場が混乱しないよう、打ち明ける一般人は店主だけにするつもりだ。当日は改めてよろしく。 ふふ、ギーゼラとリリリリスは仲良くね?

  14. リリリリス

    >シルヴィア様 …あら…紋具というのは研究者に話さないと使えないのですね… そちらに関しては、お任せして 私は大丈夫そうなら、と言う風に考えましょう >ギーゼラ様 聞き捨てなりませんわ!私は高貴で可憐!そのものでしょう!

  15. ギーゼラ

    可愛いという言葉は、そちらのネーヴェさんのように可愛らしい女性に使うものであって 僕のようなものに使う言葉じゃないと思いますけどねぇ? あぁ!僕は引く側じゃなくて引かれる側じゃないといけないのに! ノイアンさんにブレないと褒めてもらったのに、リースのせいで台無し! やはりリースは許せない。(二度目) フフフフフ、洗脳するために甘ぁい誘惑は必要でしょう? リースと仲良く、仲良く………無理では? >リース コウキ?カレン?あれ、おかしいな。僕の知ってる言語と違うみたいだなぁ。

  16. エル=バ=ノイアン

    ……(ギーゼラとリリリリスを見やる 十分仲が良いように見えるが… ギーゼラもかたなしになることがあるんだな。意外だ。

  17. シルヴィア・A・カペル

    >リリリリス ああ、お酒には既に紋具が使われているんだけど、水やジュースに使う場合には研究者から借りないといけないみたいなんだ。リリリリスの動きについても了解だよ。当日のギーゼラとの掛け合い、楽しみにしてるね。 >ギーゼラ ネーヴェも君も可愛いよ。それぞれ別の魅力がある。君は浸り切れないところが可愛い、なんて。引かれる側と自分が言っちゃうところも。 ノイアンも言ってるけど、君達は十分仲が良いと思うよ。誘惑と洗脳とリリリリスとの仲良し、よろしく←

  18. ネーヴェ・グラヌローザ

    暫く顔を出せずに居る間に、何だか褒めて頂けていたご様子で……あの、遅ればせながら、ギーゼラ様とシルヴィア様はありがとうございました。 私もギーゼラ様は魅力溢れる方だと思いますわ。何より治癒に対する姿勢が生き生きとしてらして本当に素敵ですわよね。 シルヴィア様も全方位に気配りをされていらして、しかも気さくな、とても素晴らしい方だと思っております。 リリリリス様は華やかな振る舞いが映えて、とても素敵で御座いますね。ギーゼラ様との掛け合いは聞いていて楽しゅう御座います。現地でも楽しみにしておりますわね。 いよいよ明日出発で御座いますね。 字数の関係で恐らく他の方とは絡めないかと思いますが、現地でのご活躍を楽しみに拝読したいと思っております。皆様どうぞ宜しくお願い致します。

  19. リリリリス

    >エル様 以前はもっと素直でしたのに… 私の頭を踏むこともなかったのに! >シルヴィア様 あら、そうですのね!借りられたら嬉しいですわ~くらいの気持ちで考えますわ… えぇ、えぇ、そこはお任せくださいませ! >ギーゼラ様 昔はあんなに素直でしたのに!! 良いですわ良いですわよ!淑女になって以前より更に増した 私の成長を目に焼き付けてさせて差し上げますわ!!

  20. シルヴィア・A・カペル

    ネーヴェ、私まで褒めてくれてありがとう。 君は人の良い部分を見つけるのが上手いね。優しく淑やかで、素敵な子だと思ってるよ。 私も字数の関係で恐らく他の人とは絡めないと思うけど、皆の酒場での一時を楽しく読ませてもらおう。現地ではよろしくね。

  21. エル=バ=ノイアン

    >リリリリス ほう、やはり昨日今日の間柄ではないんだな。2人の話も、いつか聞いてみたいものだ。 さて、昼に出発だな。よろしく頼む。

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0