【獗烙】業火よりも熱く
広大野人
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シナリオID:1001
オープニング
冒険者達が集めた情報は極めて有益だった。
『神実の香り』の具体的な使用方法と例外的な使用方法、入手先となる酒場。売人と思われる複数の人物らの似顔絵。
効能についても十分、把握ができた為、王国騎士エナハルト・ティルムの動きはそこから電光石火となった。
すぐに禁制品として指定を受け、いわゆる御触書のようなものが広く示された。
「そんな訳で、僕としては『神実の香り』の撲滅を目指しているのだけれども……」
事実、彼は『裏路地の硬貨亭』を押さえ、幾つかの証拠と売人を捕らえた。
けれども、事件はこれで終わらない。『神実の香り』と呼ばれる実が、何もない所に突然降ってくるわけでも沸いて出てくるわけでもないのだ。
「売人から興味深い話を聞かされてね。バーゼンガイヅ伯爵の領地で産出されていると。もちろん、僕としては売人がわざと嘘を言っているものとは思ってはいるのですが、一応、確認しなければならないので」
「ふん。それで、わざわざ私の所に足を運んだと。王国騎士とあろうものが、売人ごときの戯言に翻弄されるとはな」
ちょび髭をいらやしくいじりながら、伯爵は応える。
「任務である以上、そこはご理解を頂きたい所です。それで、どうでしょうか?」
「そんなもの、断るに決まっているだろう。第一、罪人の証言一つでなぜ、私が疑われなければならない」
王国騎士エナハルトが持ち掛けた話は、伯爵の領地を確認する事だった。
禁制品となった『神実の香り』が、伯爵領内で作られているのかどうか。
事と場合によっては、領地を管理している伯爵の責任にもなる。また、百歩譲って伯爵にとって知らない事であっても、伯爵の評判に傷がつくのだ。
「……『神実の香り』は危険な代物です。既に犠牲者も出ています」
「知った事か。そんなものは手を出した方が悪いのだからな」
「仰る通りです。ですが、知らずに手を出した者、やむを得ず、手を出さなければいけなかった者もいるでしょう。だからこそ、ここで撲滅しておかなければなりません」
力説するが、伯爵は軽く鼻で笑って返した。
いくら禁制品として流布しても、それを守らせる者がいなければ意味がないのだ。
だからこそ、正しい血統を持つ貴族が民を守り、導かなければいけない――バーゼンガイヅ伯爵はそんな貴族派であった。
「なんにせよ、私の領地に王国騎士である貴様は一歩でも入る事は許さない。もし、そのような事があれば私に対する侮辱とみなすからな」
そう告げて伯爵は不機嫌そうな足音を立てて立ち去って行った。
●
「……そんな事があったのですが、困ったものですね」
冒険者ギルドの受付男子イシアは、エナハルトの話に頷きながらそんな感想を口にする。
王国内は今、熾烈な政争の渦中にある。『神実の香り』は禁制品の一つでしかなく、危険性の認識が低いのだろう。
「なので、大規模農場を見つけて焼き払ってしまいたい……というのが、僕の考えだ。一度、焼かれればかなりの打撃を与えられるはずだろうしね」
「そうは言っても……明確な証拠は、今の所、存在していないのですよね」
生産しているかもしれないという理由で乗り込んで、見つけられなかったら、エナハルトが責められるのは当然の事。
売人からの証言だけでは、決定的な証拠が不足している。
証拠を確かなものにする為にするには、足で直接見つけるしかない……。
「それで、イシアの方は?」
売人からの情報を得たエナハルトは真っ先にイシアにお願いをしていた。
依頼にて王国内を移動する冒険者……が乗るビッグオウム。伯爵領の上空を通った際の得られた情報をイシアは調べていたのだ。
「ドンピシャでしたよ。柵と見張りで厳重に警備された区画を見つけました。何を育てているかまではネットがかけられて分かりませんでしたが」
ただの野菜でそこまで厳重に隠匿する必要性はない。
隠して栽培する理由は、それが禁制品――『神実の香り』だからだろう。
「分かり易くて、逆に罠かと疑りたくなるけれど、ね」
「だんだん、分かってきましたよ、エナハルト様。つまり、冒険者達に潜入依頼を出すという事ですか」
「ご名答。残念ながら『僕』は伯爵領に入れないけどね。彼等なら、入ってはいけないという訳ではないから」
伯爵領に潜入し、禁制品栽培の証拠を確認する。
その時点で王国騎士の言い分が立証される。焼き払った所で伯爵は抗議できる立場にない。
「それでは、冒険者への依頼は僕の方から出しておきます。あまり公にできない依頼ですが……そこはいつものように上手くやりますから」
「ありがとう。助かるよ」
手際の良い、受付男子の申し出にエナハルトは微笑を浮かべて応えるのであった。
●
バーゼンガイヅ伯爵領の中心にある大きな街から、やや離れた台地の上に大きな農場がある。
板を並べた柵に覆われているその中で『神実の香り』が所狭しと並んでいる。
不思議な植物だった。小さい幹から葱のような葉が幾重にも伸び、育ちきると、幹の頂点に果実のような実が成るのだ。
「最近は質も量も安定してきたようだな」
壮年の男はフォーゲンと名乗った。『神実の香り』を持ち込んだ王国領の外から来た人物の仲間らしい。
今は時折、農場を訪れては栽培状況を確認し、必要があれば助言をしていく。それは的確であり、そのおかげで生産は上向きだ。
「ですが……禁制品として認められてしまったそうで……」
「想定されていた事だ。需要がある限り、売れないという事はない」
「万が一にもバレてしまったら……」
農場主は弱気だ。事業が失敗し、借金を抱えて絶望していた時に、フォーゲンから声を掛けられたのが事の始まりだった。
立地的にも作物が育ちにくい台地を用意され、そこで言われるがままに『神実の香り』を育てた。
売上は驚く程良かった。肩代わりされた借金も、農業を行う初期費用もあっという間に返済。いまは、所謂、みかじめ料を払っている。
「自生していたものとして白を切れ。どうせ、取り押さえられた所で、技術のない奴には育てる事すらできないのだからな」
「は、はぁ……」
栽培する事が出来ない植物を『生産』していた……とするには矛盾が生じるからだ。
『神実の香り』は特殊な植物だ。まず、実からは育たない。これを増やすには接ぎ木でしか増えないのだ。
また台木となる植物を選ぶのも見立てがいる。それらを考慮すれば、まず間違いなく奴らに『栽培の再現』はできないだろう。
そんな訳で、仮に王国騎士や衛兵共に押収されても、再現性がない以上、恐れる事はないのだ。
「だが、念には念を入れた方が良い。嗅ぎまわっている連中もいるようだからな」
「分かりました。警備の数を増やして対応したいと思います」
農場主の言葉にフォーゲンは頷くと要件は終わったとばかりにマントを翻した。
ここはこれで放置しておいて大丈夫だろうと判断したからだ。
だが、この壮年の男は知らなかった。『神実の香り』を追っている王国騎士が、再現が出来ない可能性を、最初から潰すつもりで、農場を焼き払おうとしている事を。
解説
マスターより
リプレイ
街を出発した冒険者達は先発と後発に分かれ移動していた。
草を揺らしながら吹き抜ける風に包まれながら、ベルク・オスマットは自然な動きで風景を眺めるように周囲を確認する。
警戒していたが、尾行してくる者はいなかったようだ。ルート選択も良かったのか巡回しているであろう見張りにも今のところ遭遇しない。
「あの台地か。例の禁制品とやらを栽培しているのは」
冒険者達の視界の中に台地が見えていた。
まだ遠いが地図と見比べても間違いないだろう。視線を変えれば当初の目的地である林も見える。
「ついに農場が見つかったか……数あるうちの一つなんだろうが、それでも潰せるだけ一歩前進だ」
そう言ったのはバーネット・フォーサイスだった。
禁制品の効果は前回の調査で、よく分かっている。あれは危険な代物だ。
「ヤバさは身を以て知ったから、なんとかしたいところだが……さて、どうしたもんかね」
身を以てヤバさを体験したエリザ・A・ミシャールが仲間の二人に向かって言う。
尾行してくる者がいない以上、二手に分かれる必要はないが、連絡手段がある訳ではないので、このままでもいいのかもしれない。
「どうせ林に入れば合流するのだ。ところで、そのフォーゲンという男なのじゃが……どんな身なりなのだ?」
ベルクの質問にエリザはすぐに答える。
「壮年の男だ。身なりはいい感じだね」
「……なるほど。まぁ、この先にいるかどうか分からんか」
そんな言葉を伝えながら、ベルクは王都での調査の事を思い出していた。
――新天地への案内人。タイミング的に偶然とは思えない。例えば……案内という名の誘拐だったら……どこか二度と表に出られないような場所で『奴隷』のように働かされている可能性も……。
「そういえば、捕らえられた売人の中にフォーゲンはいなかったと言っていたか」
バーネットは改めて遠くの方をみつめながら呟く。
手配書の中に、フォーゲンの存在そのものがなかったと受付男子は教えてくれた。
確かに、直接のやり取りがあった訳ではないが、それでも重要な参考人だろう。
「色々な疑問も、農場で何か新しい情報が掴めるかもしれないか」
気を取り直すように言ったバーネットの台詞に、ベルクとエリザは頷くのであった。
●
後発組の一人であるサフィラ・アズラク・ナハルハルアリーブは辺りを警戒しながら足を進めていた。
罠は当然の事、巡回している見張りもいるはずなので気は抜けない。そろそろ目的地である台地がしっかりと見えてきた所だ。
「『神実の香り』……ちょっと味は気になるかもっ!」
話によると良い香りらしいが……味が匂いそのままとは限らない訳で……。
「お勧めはしないよ」
そう答えたのはルベア・ベルニだった。
彼女は街での調査を行っている。仲間達が集めた情報から『神実の香り』が危険なものと認識していた。
(何でまた大規模生産を……)
禁制品となった今、リスクを抱えて栽培する理由が分からない。
今回の依頼でその辺りの情報も得られる事を期待するしかない。
「だよね! 実はすっごく渋いかもしれないし」
「燃やした時に悪い影響が出なければいいんだがな」
口をすぼめるサフィラの横を淡々と外套を纏ったサイラスが告げながら追い抜く。
五感を研ぎ澄まして周囲に誰もいない事を確認しているようだ。
運が良い事に尾行してくる者はいなかった。しかし、罠はあるはずだ――。
「……そこ、何かあるな」
サイラスが向けた視線の先、注意深く見ると茂みの一角が不自然に見える。
「罠があるよっ」
すぐさま、サフィラが確認する。
茂みの中に下草を編んで作られた罠があるようだ。無駄に中に入る事はせず、茂みの周りから確認するルベアはある『物』に気が付いた。
「……肉食獣の糞が周囲に置いてある。狩猟用の罠じゃないか」
ルートから外れているのでわざわざ壊す必要もないだろう。
三人は互いに顔を見合わすと申し合わせたように歩み始める。
「音が鳴る仕組みのようだったが……風に乗れば遠くまで聞こえるはずだ」
サイラスが風を読むように外套のフードを外した。
どうやら、ここまで順調だったのは偶然の結果、運が良かっただけのようだ。
合流地点である林の中にも、きっと、他の罠があるはず――そう感じずにはいられなかった。
●
「ここにも罠があるよっ」
サフィラが木々の間に張られた鳴り子を見つけた。ダミー罠の裏に隠された仕組みになっているものだ。
ここまで厳重な罠があるのは、向こう側もそれだけ警戒しているという事なのだろう。
「私が解除するわ」
短くそう告げたルベアが罠に慎重な足取りで近づく。
全体の位置関係を把握し、要となる点を探し出す。解除に失敗すれば盛大に鳴り子が音を立ててしまうだろう。
息を止め、暗視が効いている中、丁寧に罠を解除した。音を立てる複数枚の板をサフィラが笑いながら静かに地面に降ろす。
その様子を眺めつつ、サイラスが告げる。
「これで十と五つ目か……だいぶと厳重だな」
林に入ってから発見して解除した罠の数だ。ちなみに発見した数はもう少し多い。
「これだけ罠があるって事は、それだけ『ここからは入って来てほしくない』って事だよな」
ベルクの言葉にバーネットは頷いた。
「林を選んで正解だったという事だ」
こういう場所に張る罠というのは、罠に掛かる事の期待以上に、罠が多くて侵入が難しいと諦めさせるという意味もある。
もっと言うと、林の方は、人の目での警戒に限度があるから罠で対応するしかなかった――とも言えるだろう。
「一応、アタシ達が通った痕跡はできるだけ消したぞ」
最後尾を受け持ったエリザが仲間に告げつつ、視線の先は台地の方へと向ける。
薄暗い月明りの中、見張り櫓がそびえ立っていた。櫓上の篝火が揺らめいていた。
陽が落ちてまだ間もない。先に行かした栗鼠はそろそろ、台地の柵に到着する頃だろう。
「できるだけ早いうちから証拠を掴みたい。そうでないと、戦闘行為ができないからな」
「……そういえば、そうだったかも」
エリザの言葉にサフィラが思い出したように手を叩いた。
証拠を確保するまでは、戦闘行為は禁じられている。なにを持って戦闘行為と判断するのかは微妙な所だが、一方的な奇襲攻撃も戦闘行為と呼べるかもしれない。
「眠らせるのは戦闘行為にはならないよね」
「グレーゾーンかもしれないが、証拠さえ掴めばいいのだろう」
首を傾げたルベアにサイラスが答える。
結論を言えば、証拠さえあれば問題ないのだ。戦闘行為云々の話は『万が一、証拠が見つからなかった場合、冒険者を一方的な犯罪者にさせない』為の条件とも言える。
「……見張りが油断するタイミングが狙えればな。まずは櫓を無効化しないと」
木の幹に寄り掛かりつつ、バーネットが頭を抱える。
櫓を無効化するには、仲間のヒュプノシス頼りになるが、万が一、通じなかった場合、戦闘行為に繋がってしまう。
ギリギリまで台地に迫って、強引に侵入し、証拠を先に確保する手段もなくはないが……。
「まったく、骨が折れる事だ」
注意深く台地の方を観察しながらベルクがそんな言葉を口にした。
鶏が先か卵が先か……ではないが、適当な妥協点を見つけ出すしかないだろう……その行動が正解かどうか分からないにしても。
そんな中、冒険者の一人が杖を手にする。
「これだけ警戒されているんだ。むしろ、派手にやらかして混乱させた方が手っ取り早い」
闇夜の中で不敵な笑みを浮かべるエリザであった。
●
唐突な爆発音が農場に響いた。同時に四方の櫓から警戒の銅鑼が鳴り続ける。
昼間であれば櫓の上から見えたであろうが、この暗闇だ。僅かな月灯りでは柵に辿り着いた者の存在に簡単に気が付かない。
「注意が爆発した方向に向いているうちだ」
エリザが放った術は、確実に見張りの注意を引いた。
その一瞬の隙をついて、バーネットが柵の一部を外し、サイラスが素早い動きで入り込んだ。
「半端な造りだったのが幸いしたぞ」
「今のところ、中に見張りは……いないようだ」
探しているものはすぐに分かった。
『神実の香り』が実っている植物が整然と並んでいるのだ。
水袋の上部を破り、根ごと回収する。他にも集められる証拠があるが、一先ず、目的は達したはずだ。
エーテルリンクで目星を付けていたからこそ、スムーズな証拠回収ができた。また、パーティー全員が夜突入で意思統一し暗視の能力を用意した事も、依頼達成の大きな理由の一つだろう。
「他に欲しい証拠は取引と経営上の記録、後は伯爵が絡んでいたのなら、それを裏付ける記録だ」
二人に続いて農場に入ったエリザが告げつつ、周囲を確認する。
農場の中央に建物が見えた。おそらく、あれが管理棟のはずだ。
「戦闘中になるとヒュプノシスが使えなくなるが、もはや、その必要はないだろう」
大事そうに水袋を肩にかけるサイラス。
ヒュプノシスのスキルは強力ではあるが、発動させる条件も厳しいのだ。
ただ、証拠が得られた以上は、もう遠慮する事はない。実力行使で犯罪者共を排除すればいいのだから。
「どうも動きが素人だな」
そう言ったバーネットの視界の中、建物から出てくる数人のゴロツキ共が慌てた様子で走ってくるが――バーネット達に気が付いた様子なく、柵の方に向かって走っていく。
柵の造りや緊急時の動き方など、どう見ても素人だ。一方、櫓の位置や罠の状況を見ると明らかにその手の経験があると感じられる。
「御粗末過ぎるという事か。誰か入れ智恵でもしているのだろう」
助言や仲介をする者が関わっている可能性があると続けたサイラスの台詞に、エリザはほのかに『神実の香り』の匂いを思い出した。
(……あの男の痕跡も見つかれば良いのだが)
フォーゲンと名乗った壮年の男が、何らかの形で関わっているはずなのだから。
サイラスが証拠を確保した頃とほぼ同時期、ベルク、サフィラ、ルベアの三人は櫓に向かって音も無く駆けていた。
林の中からじっくりと観察し、見張りが交代するタイミング、人数などを把握していただけあって、その動きは無駄がない。
「我が交代の奴等を黙らせる」
スッと前に出たベルクが狩りに出た獣のように身体をしなやかに跳ねながら、眠たそうに櫓に向かう交代要員に向かった。
暗闇の中、小さな背丈もあって交代要員の男二人は彼女の存在に気がつきもしなかった。
「――ッ!」
一撃で片方を沈める。
相方が突然倒れた事に驚いた残り一人は悲鳴を挙げながら恐怖で松明を振り回す。
しかし、そこに襲撃者の姿は見えなかった。忍賊特有の機動力を発揮し、背後へと回ったからだ。
殺気を感じ、振り返った交代要員が見たのは、松明の光で反射したベルクの赤い瞳の色だった。
「櫓の上は大丈夫のようか」
敵の練度は高くない。これなら別の櫓に向かってもいいだろうと判断。
ベルクは夜の中に溶け込むように再び走り出したのであった。
微かな月灯りの中、櫓の壁を駆け上がる二つの影――サフィラとルベア――の動きに躊躇は見られない。
櫓を無力化させる事は、証拠を確保するのも、農場の焼き払いにも、また、脱出の際にも外せない事だ。
「こちらの動きを把握されると厄介よね」
ルベアが冷静な動きで櫓の手すりの上に登る。
見張りは全員で4名。これも把握済みだ。唐突なルベアの登場に驚く見張りの一人が指を差す。
「な、なにも――」
だが、言葉を出し切る前に背後から抑えられて、声ではなく血を吹き出す。
背後から迫ったサフィラの鮮やかな手並みだった。
「この、おんなぁ!」
「そんな動きじゃ、当たりもしないよっ!」
すぐ横に立っていた別の見張りが逆手に持った短刀を突き出してくるが、サフィラは仰け反るように躰を落として回避すると手を突きつつ、スラっとした脚で男の頭を蹴り上げた。
素早く反動をつけて立ち上がりつつ、腕裾を引っ張り……。
「せいっ!」
気合の掛け声と共に櫓の下に向かって投げ落とした。
一瞬の出来事で銅鑼を鳴らす事すら忘れ、残った見張り二人がそれぞれ向かってくるが、一般人と授恵者では実力差は明らかだ。
「急いでいるからあんまり構っていられないわ」
そう言い放ってルベアは無謀にも殴り掛かって来る見張りの拳を、手で受け払う。
最小限の動きで済むように数歩踏み込みつつ、見張りの蹴りを止め、頭突きを避ける。
「これだけの規模。きっと用心棒がいるだろうから」
何事もなかったかのように手刀を見張りの首に叩き込んだ。あっけなく崩れ落ちる見張りの男。最後まで残ったもう一人の見張りもサフィラがあっという間に無力化する。
櫓を制圧した二人は、頷き合うと仲間と合流すべく、一気に駆け降りるのであった。
●
結局、櫓二つが無力化し、騒ぎに気が付いて出て来たゴロツキ共を危なげなく排除。
中央の建物から証拠品も押収した。あとは敵の増援が来る前にやっておくべき事がある。
「さてと、現物も確保できたことだし……豪華な焚火を作ってやろうぜ」
ニヤリと口元を緩めながらバーネットが仲間達に告げる。
その手には火炎瓶。良く燃える油が入っているらしい。
「塩でも撒いて再生不能なぐらいしたかったが……」
物騒な事を口にしたのはベルクだった。
農作物が育たなくなる程の塩害となると、復旧もおいそれとはいかない。
効果的ではあるが、そこまで出来そうな余裕もなかった。
「どの道、これだけの悪事をやっていたのだ。もう二度とここで作られないはずだ」
サイラスが言う通り、この農場で秘密裏に禁制品を造る事はもう不可能だろう。
沢山の証拠品を抱えたサフィラが楽しそうな表情で、ポイポイと火炎瓶を投げる仲間を眺めていた。
「にゃはっ! お宝はもろもろ頂いたよっ!」
「残念なのは、伯爵との関わりの証拠が出てこなかった事だ」
そして、あの男も――と心の中で呟くエリザ。
だが、記録を詳しく調べれば、まだ新しい情報も出てくるかもしれない。
「くくく、さて? 町の近くにこれだけの規模のご禁制の耕作地。伯爵殿はいったいどういう言い訳をなされるのやら?」
「関わっていなくとも、知らなかったでは済まされないわね」
ベルクの台詞に頷きながらルベアが応えた。
知っていても知らなくともどっちに転んでも伯爵が責められるのは確実だ。
素直に王国騎士の言う事を聞いていれば、こんな事態にはならなかっただろうに。もっとも、そんな事情があったから、冒険者達に依頼が出た訳なのだが。
「それにしても、よく燃えるな」
誰かが発した言葉通り、鮮やかな炎が波のように広がっていく。
人を惑わす魅惑の実が罪を償うように燃えているかのようだ。
「――少し、甘い香り?」
「『神実の香り』の効能だったら、良くないな……すぐに離れよう」
轟々と燃え続ける農場を背に冒険者達は歩き出すのであった。
マスターコメント
ショートシナリオ難しい 報酬:多い6 / 4〜6人
2021年06月20日 18時28分17秒 公開
相談掲示板
No.1
サイラスだ、よろしくなー とりあえず回収はマジカルポケットにしまうなり水袋に詰めるとして、何が罠に来るかかね?鳴子とかトラバサミ?アラート系使える技術この世界のこんな所にある程普及してるのかさっぱりだわ。 見張りに関しては隠蔽そのものとか隠蔽値で判定、罠には認識できれば罠解除、発見自体には看破が有効かな? ちょっと冒険するとヒュプノシスで眠らせる、締めて気絶させるとか?櫓が機能していたらってあるから櫓落とすのも考慮のうちと思う。罠感知に透視も埋め込むタイプとかなら有効そうだね。 他には移動ルート。目的地の下の林側から行くのが目立たないと思うけどどうやろな。 後は昼夜も考えるとこかな? 昼なら向こうも普通に見えるし活動時間だから監視の目に引っかかりやすい、 夜なら罠を視認し辛い、探索にはリスクのある光源か暗視が必要って感じだと思うけども他にもありそう。 とりあえず外套染めれたら黒系か迷彩系に染めてくのとシーフ鎧着てくつもり。
シーフのベルクだ、よろしく頼む。 農場周りに鳴子とかはありそうだな。 後、櫓が厄介だな。昼間は厳しそうだ。 移動ルートは下の道なりから台地の死角になるあたりで道を外れて林を経由するのが無難そうかね? 川は腰まで程度しかないようだから利用するのは厳しそうだ。
シーフのルベアよ、宜しく。 >罠 鳴子とか、後はそれに反応する侵入者迎撃用の仕掛け弓矢とかありそうね……。 いずれにせよ看破と罠解除は必須そう。 >林 そこに罠が張られているリスクが若干高そうな気もするけど、 実際のところ、草原よりかは見つかりにくそうだものね。 進行ルートとしてはありだと思うわ。 >櫓 櫓があるってことは、その上に人が恐らくいるのよね。 正常機能をしているっていうことは、 つまりその見張りがまともに監視活動を出来ているということで……。 たとえば超視覚とか天眼あたりを駆使して南2箇所の櫓の出入口を把握出来たとしたら、 潜入して櫓に居る見張りを伸す、じゃなかったらヒュプノシスで眠らせるとかで 「正常機能」はさせられなくなるんじゃないかっていうのが今の所ぼんやり考えたところね。 まだまだ仮案だから、もっといい案も出てくるとは思うけど。
No.4
とりあえず全員のスキル事情とかにもよるかね? 俺はヒュプノシスあった、罠解除も看破もレベル1、マジカルポケットあるので他の人の動き次第で変えようかと?特に看破と罠解除はプロいるならそっちの方が良いし。 罠少なくても草原歩いたら見つかりそうだし、罠とか見張りあってもこっちの方がいい気がする?から提案したしベルクさん支持する。 櫓落とすと場合、林から狙うならC3かC4のどっちか狙うだろうけどどちら落とそうか。川寄りか街道寄りかの違い? 位置的に川は帰りとかなら使えるかもしれんな?と。川流れて帰るとか普通しないだろうし。後ないとは思うけど勢いよく焼きすぎたとかした時水の中に逃げ込むのが選択肢に入るかなと。息は隠れるにしても水泳とか呼吸耐性ない人きついし
キャスターのバーネット・フォーサイスだ。 まぁ、よろしく頼むわ。 >ルート ひとまず、林の方から大地に進入ってのは俺も賛成だな。 あと、これは俺の考えすぎかもしれないが、6人全員が一緒に街から移動して、 一緒に道を外れて林に向かうってのは、目撃された時に怪しまれるかもしれないから、 念のため林に入る前から周辺を警戒した方が良いかもしれないな。 それと事を済ませて逃げる時も、林を経由して追っ手を撒いて脱出する感じでいいか? 川を利用するなら、ウォーターウォークで川を渡れば、それなりに引き離せるとは思う。 >潜入 なるべくバレにくい夜間に潜入を始めたいが、それでも見張り櫓による監視は厄介だな。 騒ぎを起こさずに見張り櫓を潰すとなると、シーフの誰かが直接潜入して見張りを 無力化するのが一番手っ取り早いか? 最低でも南側のどちらか1カ所、できれば2カ所無力化できれば、潜入もしやすいな。 一か所だけにするなら、強いて言うならC3の方が人が来る可能性も少なくて、 警戒も薄くなりそうとは思う。
にゃ!シーフのサフィラだよっ! よろしくねっ! >ルート あたしも林を利用しての侵入に賛成かなぁ 林に侵入するタイミングは全員で一度に行くより、バラけた方がいいんじゃないかなっ? >時間 バーネットも言ってるけど 夜の方が見つかりにくいし、暗視を持っていけば暗さをカバーできるんじゃないかなっ 見張りの櫓は壁歩きでばーっと登って 背後をとれば無効化はできそうだねっ! となると、持ってくスキルは 【罠解除】【暗視】【壁歩き】かなっ
No.7
とりあえず ・ルート(林通ってくのが優勢?) 林側は罠多そうなので注意必要? ・移動 一塊かばらけるか。ばらけるならどこで合流するか? ・櫓 1、2箇所落すとして何処を落すか C3だけ落とす、C3、C4両方落とす案が出てる。 後はヒュプノシスで視線あった奴眠らせる、壁登って背後からやる案 ・時間帯 夜間潜入出てる ・帰り ウォーターウォークで川流れてくか普通に で、いいのかな? とりあえず夜間潜入なら暗視持ってない人いる?光源持たないと危ないだろうからその場合は一回林に隠れて待ってて欲しいけど、合図か何か要るよねこの場合。 で、合流は林の中とかで良さそうだと思う
シューターのエリザだ、よろしく頼む。少し顔出しが遅くなってすまなかった。 >時間帯 これについては夜間で問題ない。暗視もあるから対応可能だ。 >移動 警戒の可能性が高い、ということは陽動が掛けられるんじゃないかね? 全員が全員、中に潜入しなければならないという類でもあるまい。 >帰り 正直、そこまで深く考えなくてもいいのではないかとアタシは思ってる。 全部燃やして、追撃してきそうな奴は全員ノしておけばいいんだろ?
暗視はあるから問題ないな。 後は壁歩きを持って行って櫓の制圧か罠潰しかのどちらかは担えるかと
No.10
他の人信用しないわけではないけども、陽動見て警戒レベル上がったりすると辛いかなって。やるなら証拠確保したことわかるまで攻撃できないから陽動側は攻撃一方的に受けることになるし、伝令手段とかあった場合に見つかった時点で飛ばされて不法侵入で捕まりそう。
>ルート 俺も場所とタイミングを分けて林に向かう事は考えたが、合流がネックになるのが難点だな。 初めて訪れる良く判らない場所で、バラバラに集まって合流するのは、中々に難しいと思う。 まぁ、時間的猶予は有るから、時間を掛けて集まれば問題はないだろうが。 >陽動 多少強引でも注意を逸らせて進入しやすくはなるが、サイラスの言う様な事も有るし、 陽動をするのも善し悪しだな。 単純に戦力を分散させる事にもなるし、個人的には丁寧に警戒網を抜けて 可能な限りこっそり事を為す方が良いんじゃないかとも思う。
警戒レベルは上がるだろうねぇ……というか、部分的に警戒を偏らせて隙が出来るのを狙うのが陽動だからね。合流とかの懸念があるっていうのは尤もだ。 その場合は素直に偵察と隠密になるかね。隠蔽値をなるべく下げないとねぇ。あとは街の時点で警戒されている可能性があるというのも厄介だ。 死角が無いという見張り櫓をどう突破するかねぇ……
No.13
櫓に関しては林から抜けたら一気に落としに行くとか交代のタイミングに入るとか?証拠取るまで攻撃しようがないから眠らせるか奥に行くしかないね。罠以外の隠密判定要素とかで済むなら良いけど。 後は陽動と同じ様に何か騒ぎ起こすとか?交代に合わせてなり済ますなんて服とか交代時間分からんとむりだし。
・林から一気に抜ける場合 利点:敵に対応する時間を与えない 欠点:警備体制の内情を調べる時間がない ・交代のタイミングを狙う場合 利点:偵察の上で確実に侵入できる 欠点:街から警戒・追跡されていた場合に証拠隠滅の時間を与えてしまう こんな感じかい? タイミングを狙えれば確実なんだろうけど、追跡されているかどうかなんてのは感波ぐらいじゃないと分からないか。それ以外は探知できていないから追跡されてるんだろうしね。 基本は偵察重視で、感波に反応があったら強行突入とかにするのが良さそうかね……
>櫓 狙うとしたら交代のタイミングが良いとは思う。 そもそもが可能な限り夜間に事を起こすんだし、それまで待機している間に ある程度は警備体制の観察をしておいた方が良いな。
>櫓 あたしも交代のタイミングで落とすのが無難だと思うよっ 交代のローテ、人数、何かしらの動きをよく観察してから夜に動いた方がいいよねっ >街から追跡 シーフ組はハイディングや疾風足で撒けるけど 他の子はルートや隠れるための工夫で何とか 撒くしかないよねぇ… いっそ、尾行させて後ろから襲うってのも考えたけど文字数足りないよねぇ(うーん) >罠 あ!そうそう、罠解除じゃなくて看破の方を持ってくことにしたよ! で、見つけた罠を罠解除持ちの子に解除してもらおうかなって考えてるよっ!
>櫓 交代タイミングを狙うのに賛成。 >街から追跡 何も全員一団で行く必要もないと思うのよね。 追跡を警戒するなら、私たちも時差出発で二班に分かれるとかして、 最初に向かった班を追跡する向きがあるなら 後から向かった班が後ろから急襲すればいいんじゃないかしら。 ……伸してしまえば農場との連絡手段がなくなって、 農場側も「何も連絡がない=何事もない」と考えてくれれば、って。 文字数の話をすると、まさか追跡してくるのが授恵者ってこともないだろうし 「後から向かう」「仲間を追跡する者がいたら急襲」の2点を押さえればいいから、 そんなに字数は食わない、と思う。 どちらにせよ農場突入とか櫓を狙う前には合流はしておきたいけど。 >罠 じゃ、こっちで罠解除を持っていくわ。
書き忘れ。 あまり時間もないし、班で動くなら私は後ろから行く。言い出しっぺだしね。
No.19
おや2班に分ける?なら俺も後ろから行こか?戦闘許可まだ出ないだろうからヒュプノシス使って。流石に疾風速には劣るけど鎧脱いでチャージングすればそこそこ早いよ? ヒュプノシスと暗視で枠取るから汎用はそこまで。鍛冶屋な事からペンチとか針金みたいな物持ち込めないかプレに書いとく。
明日の朝出発だし、ちょっとまとめるねっ ◉決行時間 ・夜 ・決行時間前に現場到着、警備体制を観察 ・【暗視】で視界確保 ◉侵入ルート ・林に隠れて移動 ・【看破】組が罠探知、【罠解除】組が解除 ◉櫓対策 ・シーフ組が壁歩きで登り監視要員を無効化 ・交代のタイミングで襲撃 ◉街からの尾行 ・二班に別れて移動 ・先行班を囮に追跡者を釣り出し →後発班がそれを襲撃し無効化 ◉その他 ・潜入後は神実の香りを確保 ・焼き払い後は速やかに脱出 ・脱出ルートどうする? こんな感じかなっ? あたしも後発班に行こうかなっ
No.21
間隔短いけど明日朝やしねぇ。まとめありがとう。 敬称略 後発班 ルベア サフィラ サイラス になってるけど6人構成故に他の3人先行でええ? んで帰りそういやまともに相談してないけど、目的果たしたからばらける?まとまって逃げる? ルートも川流れとか草原つっきりとかあるけどどうする?林はルート把握してないと罠かかりそうだし選択肢としては弱いと思うけどどうかね?
我は先行で構わんよ。 帰りか…我はどうするかね。 敬称略 先行班 ベルク 後発班 ルベア サフィラ サイラス
>班分け 俺は先行組で問題ないから大丈夫だ。 敬称略 先行班 ベルク バーネット 後発班 ルベア サフィラ サイラス >帰り 農場を燃やされている状況で追跡して来る奴らも少ないだろうが、 こっちの姿を見失わせるのなら、やっぱり林の中を通る方が良さそうだな。 林の中なら、追跡された時も待ち伏せからの迎撃がしやすいだろうし。 >個人行動 そんじゃま、俺も罠解除を用意しておくかね。 仕掛けとかそんなに無いだろうが、念のためもう一人くらい持っていたほうが良いだろう。 あとは……光縛呪で無力化した奴らを拘束して時間稼ぎとかだな。
>班分け 先行で確認したよ。 敬称略 先行班 ベルク バーネット エリザ 後発班 ルベア サフィラ サイラス