【帝国】北への道を拓くため
馬車猪
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シナリオID:983
オープニング
小さな丘に作られた、丸太を雑に地面に突き刺しただけの極小砦。
ヴィント攻めが行われる際には輸送の中継点の1つになるはずだった場所に、魔獣の群れが近付いている。
「来やがったな」
「へっ、震えてきやがった」
防御戦力はリットとリザードマン8人のみ。
対する魔獣側は、四肢が異常に発達した異形の野犬だ。
「速いなこんちくしょうっ」
リザードマン達は寒さではない理由で震えている。
大湿原では体力作り以外は怠惰に過ごしてきたこの8人は、以前に冒険者に鍛えられてかなりマシになったのだが今はこれで精一杯だ。
「ねーちゃんやにーちゃんと比べれば止まって見えるぜっ」
リットは元気だ。
帝国から逃げてから今まで苦戦続きで苦戦慣れしてしまったという理由もあるが、冒険者に対する信頼が今落ちつている最大の理由だ。
「お前等は壁の内側から槍突き出すことだけを考えろ! 時間を稼ぐだけでいいっ!!」
筋骨隆々な8人と比べると幼児にすら見えるリットが、今は非常に頼もしい。
「おおっ」
「なんだかいける気がしてきたぞぉ」
基本的に単純な馬鹿は、リットを素直に信頼して極太長大槍を両手で構える。
(やべぇ。授恵者じゃなくてもこの体格なら強いと思ってたのにこいつら筋力だけじゃねーかっ)
リットは顔には出さないが途方に暮れている。
出稼ぎのためヴァイセントラフ砦に顔を出したときも嫌な予感がしたのだ。
見た目は強そうなリザードマン8人を連れて、ヴィントが遠くに見える丘を確保し守りを固めろという依頼だった。
強敵がいたらすぐに逃げて良い、必要な物資は全て砦で手配する、人手も出すという好条件だった。
好条件過ぎると指摘する仲間は、残念ながら近くにはいなかったのだ。
「うわぁっ!?」
南側から悲鳴が上がる。
魔獣が思い切り助走してから跳躍し、丸太の柵を跳び越えたのだ。
齧られているリザードマンはまだ無事だが、鱗がみしみしと異様な音をたてている。
「この野郎っ!」
一太刀。
狙いに自信がないリットは狙いに集中した分威力は諦めた。
なのに、背中に当たった剣はあっさり毛と皮を裂いて背骨まで打ち砕く。
(こいつ脆い? まさかっ)
リットが気付いたときにはもう遅い。
(回避特化かよっ)
東西南北でそれぞれ守りを固めるリザードマン達が、威力だけなら駆け出し授恵者並な槍を延々空振りさせている。
「速っ、見えないよぉっ」
「指先に牙が当たっ、うわぁっ!?」
既に士気崩壊寸前だ。
リットは奥歯を噛みしめる。
既に合図は出した。
後は、冒険者が救援に来てくれるまで耐えるしかなかった。
●1日前
「さむぅい!!」
分厚い筋肉が鱗を押し上げている。
体格だけなら授恵者に匹敵するので、8人の筋肉達磨の存在感は圧倒的だ。
「もう夏も近いのになんだよここぉっ」
そんな連中が涙目で震えているのは非常にみっともない。
存在するだけでリザードマンという種の評価を下げてしまいかねない8人だった。
「湿気がないのがこんなにキツイなんて思わねぇよっ」
別に毒ではない。
生命に溢れた大湿原と寒い北国では気候が違うだけである。
「あんた等いつまで遊んでるんだ。仕事しろ仕事を」
大型の荷車の影から子供が顔を出す。
何枚も重ね着したリザードマン達とは違って、防具として補強はされているが薄い服1枚しか着ていない。
「もう暖かいじゃねーか。でかい図体して何情けないこと言ってんだよ」
荷車から丸太をとって運んでいく。
授恵者なので体力は十分だが、小柄であるため効率は良くない。
不器用でもあるので丸太の先端を何度も地面にぶつけている。
8人のリザードマンは無意識に視線をかわしあい、誰からともなく手伝いを始めた。
「ちげーよ密集させんな! 回り込まれたら意味ねー柵なんて意味ねーだろっ!」
少年の口は悪く人遣いが荒い。
「逃げることも出来ねーときは立て籠もるんだぜ? 命がかかってんだ、しっかり丁寧にてきぱきするんだよっ!!」
何度も死線をくぐり抜けたリットは、体は小さくても迫力が違う。
体だけは立派な馬鹿8人は、圧倒されて1時間程度は真面目に仕事をしていた。
「だからさぼんなーっ!!」
仲間以外を指揮するのが初めてなリットは、最初の1時間でくじけかけていた。
●救援依頼
「前置きは省略します」
ヴァイセントラフ砦に出張中のギルド職員が淡々とした口調で説明を開始する。
「前哨拠点の1つで狼煙が上がっています」
敵の襲撃を知らせるための極小砦だ。
半ば捨て駒扱いでもあり、帝国軍が助ける理由はあまりない。
しかし在野授恵者1人と体力だけはあるリザードマン8人がまだ現地にいるため、冒険者ギルドに救援依頼を出す程度には気にかけている。
「救出後は陣地を放棄しても構いません」
職員の顔に感情は浮かんでいない。
ただ、広げた地図に書き込まれた直後の陣地の位置が、非常に雄弁に主張している。
「この丘はヴィント奪還後に北進する際にも使えます」
最初は敵勢接近を本隊に知らせるための半捨て駒。
多少優勢になれば、近くでの戦いを支援するための陣地。
北へ攻め込む状況になれば、兵力や物資を中継するための拠点にもなるかもしれない。
「8人のリザードマンは大湿原からの増援でもあります。出来れば見捨てないであげてください」
私からは以上ですと言い終え、職員は冒険者に深く頭を下げるのだった。
解説
マスターより
リプレイ
「よくもやったな」
アルベルト=V=シュタールシュヴェーアトは怒りを隠せない。
義弟が金に釣られてうけた依頼がどれほど危険か、帝国で選良であった彼にはよく分かっていた。
「邪魔だ退け!」
全身鎧の音に惹かれて集まって来た異形の四つ脚魔獣を、巨大な光塊で蹂躙する。
アルベルトの視線は、リットを含めて9人も知り合いが籠もった極小砦に向けられたままだ。
魔獣の数は異常だ。
圧倒的な数が一瞬ではあるがアルベルトの戦術眼を上回り、技や力ではなく重さによってアルベルトを背後から押し倒そうとする。
「焦りはミスを呼びますよ」
巨大なエーテル光が魔獣を誘う。
フリーダ=ブロムヴィストが展開した殺界に抵抗できずに魔獣の群れがフリーダへ殺到。
重装甲と、それを支えて操る強靱な体幹が数と力に対抗する。
「すまないブロムヴィストさん」
「いえいえ。ここで彼らを助ける事で短縮が見込めますから」
アルベルトは、フリーダは彼とは別の戦術眼を持っているのだろうと納得する。
フリーダは色々な展開への起点ですねと啓示を解釈している。
「平地で戦うのは大変ですよこれは」
爪、牙、勢いのついた体当たり。
フリーダにとっては十数を相手に互角以上に戦える相手ではあるのだが、足に特化した犬もどきと有利に戦えるのは直接戦闘だからだ。
仮に一撃離脱や、つかず離れずに獣の狩りをされたら、勝てはしてもフリーダという有力な戦力が長時間拘束されかねない。
ぷすり、と音は軽いのに装甲を貫き肌まで届いた感触。
とっさに盾と胸装甲を傾けてそれ以上刺さるのを防いだが今のは冷やっとした。魔法攻撃だ。
「ブロムヴィストさん、別種だ!」
アルベルトは躊躇わずに切り札を使う。
圧倒的な速度と力で以て振るわれたダマスカス鋼の大剣が、ただの剣ではあり得ない気配を宿して体格の良い魔獣を捉えて引き裂く。
赤から赤黒に変わっていく鮮血が、特大の刃を禍々しく彩った。
「さすがですね」
敵味方と自身の戦力が脳内で高速で更新されていく。
魔獣は最も弱い個体でも回避能力が高い。
先程アルベルトが大技を使わなかったら、敵のボスになかなか攻撃が当たらなかった可能性があった。
「ここから目的地の東にかけては私が引き受けます」
噛みついてきた犬に盾の端を噛ませて地面に叩き付けながら、フリーダは器用にロープを取り出しアルベルトへ投げ渡す。
「先に行ってください。9人はまだ生きています」
「助かる!!」
アルベルトは仲間を信じて真っ直ぐに丘へ駆ける。
「ゆっくり……は無理ですが相手をしてあげます」
冒険者になる前はただの村娘でしかなかったはずの少女が、歴戦の戦士あるいは天才的な剣士とも評せる剣捌きで魔獣を切り殺していくのだった。
●
「馬鹿野郎気を抜くなぁ!」
「隊長っ、うしろうしろっ」
「いてぇっ!?」
大声を出せる余裕があるのだからまだ大丈夫。
「よし、まだ全員生きてるな。直ぐに後続の味方が来る。集中力を切らすなよ?」
海神・江流の登場に魔獣達が動揺する。
ほんの少し前は遠くにいたのに今は触れるほどの距離にいる。
海神の移動速度は武装した人間としては異様なほどで、速度に特化した魔獣に匹敵した。
「にーちゃん危ねぇ!!」
リットが警告するが的外れだ。
野生の連携では、鍛えに鍛えた海神の回避術には通用しない。
常人なら瞬間移動にしか見えない犬もどきの加速も、海神にとっては敵が動き出してから躱そうとしても十分間に合う程度の速度だ。
海神はエーテルを噴出することで極小砦前にたむろす犬魔獣を飛び越え、横向きに危なげなく着地する。
地面深くまで突き刺された丸太で出来た壁は、勢いのついた海神の体をなんとか受け止めた。
おぉ、と歓声があがる。
出入り口が壊れて閉じ込められた9人の前に、救いの糸が垂らされたのだ。
「登るのは必要があるときだけだ」
先端部まで移動し下から攻めてくる魔獣を迎撃する。
細剣2本による猛攻は犬もどきを1体ずつ屠るには十分過ぎ、しかし20近い敵を食い止めるには少し足りない。
「敵は引き受けるから、こっちの死角を目視で確認してくれ。ヤバくなる前に俺達を呼ぶか、中でフォローし合ってな」
「死角って?」
「にーちゃんっ、難しい言葉は通じっ、いてぇっつってんだろ!!」
反対側から入り込んだ魔獣にリット達は苦戦中だ。
「リットさん、もう大丈夫よ」
小さな光の弾がリットの覆い被さる魔獣を貫通した。
力だけはあるリザードマンが、本当にうっかりリットごと突き飛ばしてしまいリットに小ダメージを、魔獣に止めの一撃を与える。
「ありがとう! おかげで私もリットさんも助かったわ」
ミツキ・アインホルンは恩に着せることもせず新兵を褒める。
萎縮して動きが悪くなるのを懸念しているのだ。
(酷いつくりだけど場所が良いわ)
ヴィントも北もよく見えるのというのが実に良い。
(帝国を取り戻すため、頑張るわよ!)
丸太の壁を背にして敵が攻め寄せる方向を限定しつつ、意識して明るく穏やかな声をつくる。
「8人とも、ちょっと聞きなさい」
相変わらず激しい戦闘は続いている。
しかし直径10メートルもない砦の中だけは奇跡的に平穏だ。
その分冒険者が魔獣相手に激しくやりあっているが、依頼の目的に沿っているので問題はない。
「2人ずつ4方向を見なさい」
もともと頭が悪い上、戦闘時の緊張でさらに頭が悪くなっている相手でも分かる速度を維持する。
「私達がいるから槍に拘らなくてもよいわ。石とか投げられるもので向かってくる狼を狙いつつ、相手の位置を知らせて」
リットが混乱しかけているのを横目で確認。さらに分かり易い言葉遣いに変更する。
「連絡が最優先よ」
「わかった!」
「連絡っすね!!」
リザードマン達も誰が一番上か理解したようだ。
「投石は当てられなくていいわ。回避しようとして動きが遅くなれば十分よ」
9人が、特に何も考えずに手近の固いものを投げ始めた。
「ねーちゃん!?」
ミツキは海神に援護してもらいロープを使って砦の中へ入る。
リザードマン達の体格が良すぎて非常に狭いが、ミツキが使うのは魔法なので致命的な問題にはならない。
「リットさんは砦の中に入ってしまった個体の相手をお願いするわ。私自身の守りは捨てて動くから」
砦の外へアーケインテンペストを展開。
見た目はほぼ同じでも明確に力の次元が違う個体が、魔力で覆われた牙を打ち鳴らして苛立ちを露わにする。
アーケインとは別の不可視のエーテル波動が、見た目より凶悪な魔力の刃を鈍らせていた。
「この命預けるわ」
穏やかな宣言に、9人が緊張と闘志で体を震わせるのだった。
●
大鼬が前転する。
寸前まで下半身があった場所に犬魔獣の前脚が踏み下ろされ、固い地面に凹みが出来る。
(ベニテング、下がれ。もう十分だ)
テテリカは小型の打楽器も使い指示を出す。
情報伝達ならエーテルリンクだけでも十分ではあるが、敵を引きつけ味方を鼓舞する意味では有効であるし、複数方法で情報が届くとペットにとっても安心出来る状況になる。
「うわっ」
するりと極小砦に入り込んだベニテングが、リットを背後から囓ろうとした犬魔獣へ痛烈な魔法をぶつける。
多数相手に危険になることはあっても、対単体相手であれば十分有利に戦えた。
「俺のペットだ。面倒は頼むぞ」
たったそれだけの台詞でも、勇気づけるために明るく大きな声を出すと慣れないせいか精神的疲れを感じる。
テテリカは砦の中のことは大鼬に任せ、リザードマンの槍に1度も当たらなかった魔獣相手に猛攻を開始する。
「えぇ?」
リザードマンが驚愕で目を見開いている。
特に狙っていないように見えるのに、テテリカが放った矢が吸い込まれるようにして魔獣に当たり半ばまでめり込む。
テテリカの弓術は、回避特化の魔獣を圧倒していた。
「丘か。あれば有利だけどな」
魔獣はもちろんクリーパーや吸血鬼まで徘徊する土地で維持するのは大変だと、テテリカは戦いながら考えていた。
●
リットは年上女性が好きである。
冒険者の女性に健全な意味で可愛がられた結果だが、そのリットがうまれて初めての種類の混乱に襲われていた。
「若人たちが奮戦しているというのなら助けんわけにはいかんのう」
見た目は幼女なのに傲岸不遜で、見た目以外はかわいげがない。
彼女は冒険者ギルドにク・サーヤ・クッセーワと登録されているシーフである。
「なんで」
目が離せない。
幼くても体はしっかり鍛えられていて、高速で駆けて四つ脚発達し過ぎ魔獣に一撃入れる様は実に美しい。
が、リットが混乱している原因は他にある。
「これぞ臭覇衝券最臭奥義っ!」
においに存在感がありすぎた。
サーヤは腕をあげて犬型魔獣の鼻先をかすめるように離脱。
魔獣は、これまで一度もしていなかった表情でサーヤを追うのを止めて極小砦に方向を変える。
「えっ、なにいまの?」
「たいちょー前、前ぇっ!!」
部下に言われ、振りかぶったまま止まっていた石を撫でる。
当たりはしなかったが石に鼻と目を打たれかかった魔獣が壁伝いに移動した。
「あはは、いろんな戦い方があるね」
年齢は若くても百戦錬磨のアルマ・ヴァレンタインが、術の準備と平行してリット達に挨拶する。
「あっ」
「お久しぶりっす!」
リザードマンが全力で頭を下げて自身の頭蓋と丸太に衝撃を与える。
大湿地で散々世話になったのを覚えているようだ。
「そういうのは全部あと! 投げるなら組になって投げてみたら? 回避した着地直後をを狩るイメージでもう一人が投げつければさすがに当たるんじゃないかなー……?」
速度だけはある石投げの精度はそのままに命中率が上昇する。
アルマが予想した通り、これまで集団として動くという意識が全くなかったようだ。
へくちっ、と何度でも聞いていたいくしゃみの音が響く。
風向きが変わり、空間に溜まったにおいがサーヤの鼻を直撃したのだ。
「じゃが!」
サーヤの体臭はちときつめだ。それによって隠密行動については割を食うことが多かったが長い研鑽の末に見つけた極意がある。
「においが敵の鼻孔に届く前に、つまり臭気より早く走れば気づかれないのだ」
速度が0から最大値に。
方向もきっちり90度変更。
驚いた魔獣がきゃん鳴いて牙も体当たりも出来ずもつれるようにぶつかった。
(いかんいかん。敵が渋滞していたのじゃ)
考えるより速く腕が動く。
エーテルに凶悪な毒の性質を与え、針を使って極小の傷から魔獣へと流し込む。
(もうちっとだけ付与術を鍛えるべきかの)
抵抗する前に奥まで注いだが効いたのは運が良かったからだ。
サーヤは反撃を避けるため後退して壁を1メートル半ほど駆け上がり、思い切り蹴って離れた場所へ着地した。
「隙だらけだっ。槍持って来い槍!」
「体が挟まったっす!!」
9人共全力で必死なのが喜劇じみている。
「やるじゃねーか! なんかすげー狙いが正確になったぞ!!」
アルマがこっそりではなく堂々とエーテルで援護しているのにも気づけていない。
つまりそのタイミングで敵の攻撃があれば奇襲を受けていたということだ。
「リットさん怪我人報告!」
「中軽傷7っ!!」
「うんっ」
アルマは治癒の属性を持たせたエーテルを広範囲に飛ばす。
治癒術の専門家であるアルマのヒーリングオーラは、1人1人に高位の治癒術をかけたかのような回復をリザードマンとリットへもたらす。
「さっすがアルマ」
彼女のことを年下と勘違いしているリットが、にやりと笑って口笛を吹こうとして間抜けな音を立てた。
「気を抜くな」
シルワ・カルブクルスは砦の中に着地すると同時に戦斧を横薙ぎに振るう。
ぴぃっ、と情け無い声が9人の口から漏れるがそれも当然だ。
当たれば鱗も骨もまとめて断たれそうな大型斧が狭い空間で振るわれたのだ。
犬の悲鳴が複数あがる。
投石を無視して丸太の壁を飛び越えようとした魔獣達が、横にも縦にも大きな8人に当てないよう慎重に繰り出された斬撃を躱そうとして丸太の先端に自ら飛び込んだのだ。
3体が外側に転がり落ち、1体が丸太に突き刺さり即死も出来ずに苦しみ悶える。
ひゅ、と9人が息を飲むほど凄惨な光景だった。
「リット、苦しいだろうがここは凌ぎ切ってくれ!」
アルベルトは砦の外で攻勢をかけることで義弟を助けようとする。
彼に背を向ければ優れた回避能力を活かせず闘気槌で致命打を受けることになるので、結果的に砦に向かう犬魔獣はかなり減っている。
(俺達を見て連携や用兵の重要さを分かってくれよ)
馬鹿9人は、どう見ても全く分かっていなかった。
シルワの戦斧が高速旋回。
大きな刃から伸びる極太の光塊は魔獣達に死を直感させる。
生き残りは必死に逃げようとして被弾。2体だけは光塊を回避して跳んだ。
ばさりと音がした。
壁を越えようとしてマントに頭から突っ込んだ個体が、受け身もとれず砦の中へ落下する。
「止めは頼んだ」
壁歩き中の海神はマントを手放した腕に短剣を構える。
そして、細剣と短剣による連撃を途切れなくもう1体へと集中させる。
シルワの攻撃を避けるのにも思考を裂く必要がある魔獣は、海神の猛攻を防ぎきれない。
跳躍して後退しようとして、海神に追い付かれ深々と刃を埋め込まれた。
「よし」
海神は剣を通じて切っ先の感触を捉え、魔獣の心臓を的確に破壊する。
崩れ落ちた魔獣の体を蹴って剣を引き抜くと、折角有利な状況なのに苦戦中の9人が見えた。
シルワの最後の闘気槌。
回避に疲れた通常個体も、9人がかりで押さえ込まれつつある強力な個体も、戦歴から考えると強力過ぎるほど強力な威力にさらされ致命的な一撃を被弾する。
傷だらけの魔獣が逃げ出す。
が、死角から大鼬の奇襲を受けて体勢を崩し、速度が落ちた瞬間テテリカが放った矢に貫かれる。
「うおー!」
「投げろーっ!」
9人が死にかけの魔獣を全力で踏みつつ投擲続行。
興奮しすぎて、既に敵がほぼ全滅しているのにも気付いていない。
アルベルトは鎧の上から腹を押さえた。
教育しようとすればするほどストレスが酷くなる。
「みんな止まって。そこっ、パンを拾って食べようとしない! 後で薬草を煎じて飲むより汚れたものを食べないのが一番苦しくないんだよっ」
医療と薬学に通じたアルマは、通じているからこそ基本的なことを重視していた。
「ここを建てたのですか」
テテリカは極小砦を建てた経緯を聞き出した。
冒険者が目を離すと近くにリットがいても怠けるリザードマン達を、大鼬の目を通じて把握する。
「砦があったから持ちこたえることができた。貴方達の労働が命を救ったんだ」
褒めるテテリカに喜ぶ馬鹿8人。
テテリカが少しジト目であることに、他の冒険者だけが気付いていた。
マスターコメント
ショートシナリオ普通 報酬:標準8 / 6〜8人
2021年06月10日 16時15分00秒 公開
相談掲示板
顔見知りの若者が命張って戦ってるのを見過ごす訳にもいかないよな。 シーフの海神江流だよ。今回は宜しくね。 極小砦は結構頑丈みたいだから、ここが壊される心配はしなくていいとして。 敵を放置してると高さ3m超の柵を飛び越えて砦の中を攻撃されちまうのか。 逆に考えると、【壁歩き】とかで柵を自力で超えられれば砦の中に俺達も入れるって事になるのかな? 中に入ったほうが都合がいい人がいるなら、柵の上からロープを下ろすとか、シーフが協力すればそういう分担も可能っぽく見えるけど、どうだろ。 取り敢えず敵の数が多いから、範囲攻撃スキル使うとか、消耗を抑えるとかは効率良くなるように準備したいね。
テテリカ。シューターだ。よろしく頼む。 初期位置が200mと離れている。敵側の増援は北からか。最初にどう動くかが大事だな。 流星射や移動力を調整したペットなら最初のラウンドで砦の敵を攻撃できるが、どちらもリスクが大きい……。 最初から無茶な攻撃を仕掛けるより、近づきながら砦の敵の注意を引くのが無難だろうか。 江流は提案をありがとう。 砦に入るかどうかは、相談で仲間全体の動きを確認してから決めようと思う。
ん……。すまない。 増援について誤解をしていた。北だけとは限らない。
キャスターのミツキよ。よろしくお願いするわ
ウォーリアのアルベルト=V=シュタールシュヴェーアトだ。 よろしく。 俺は、3メートルの柵を超える手段は無いし装備が重すぎてロープを垂らしてもらっても登れそうも無い。 砦の外で野犬型魔獣(強を含めて)を止めるしかないか・・・ 義弟のリット君が粘り強く闘ってくれることを信じて俺も戦うしかないか。 念のためリット君に質問したいのだが、砦の内部に入るには3メートルの柵を超えるしかないんだよな? あと、もし分かれば魔獣の回避能力をもう少し詳しく教えてくれないか?(例:『高レベル授恵者でも命中させる確率は半々』とか『新人授恵者でも命中に集中すれば攻撃は当てられる』とか)
ねーちゃん達とにーちゃん達、よろしくな! >砦の内部に入るには3メートルの柵を超えるしかないんだよな? 俺ならそうするしかねーけど、他にも手段はあるかも。 >魔獣の回避能力 それが分かる技術が俺にあれば良かったんだけど……。
ウォーリア、シルワ・カルブクルスです。よろしくお願いします。
ヒーラーのアルマだよ、どーぞよろしくー。 コボルトさんのごちそう?がとうとう投げものに… とりあえず命中上げにレゾナンス・オブ・ヴァローかけたら砦に近づいてって回復ー…かな? 隙間はあるみたいだし中に入らなくても回復が届く…といいなあ
ウォーリアのフリーダです。よろしくお願いします。 3メートルの柵を超える手段が飛び越える以外無いとするなら、 やはり砦の入口を開けてもらうしか無い気がします。 開閉する部分を時間をかけて修理するとか、あるいは扉を破壊してしまうとかでしょうか? どの道廃棄予定であるなら壊してもそこまで怒られないとは思います。 ただ、その場合ですと敵の襲撃に対して弱くなってしまう懸念はありますが…… 後は梯子等を用意して登るとかでしょうか。
>砦にはいるかどうか 私個人としては入らせてもらえると助かるわ。 単純に皆より脆いから、護衛対象と一緒に行動させてもらったほうが、皆に迷惑かけずに済むと思うの。 (そのためにロープをかけてもらうという手間をかけることにはなってしまうけど……) あと、東西南北から来るってことだから、中からスキル使った方が良さそうだと思うの >隙間はあるみたいだし中に入らなくても回復が届く…といいなあ この懸念はあるわね…… >陣地の放棄 これ、「救出後は陣地を放棄しても構いません」って言われてるけど、陣地の位置的に価値あるからできれば放棄しないとよりプラスって状況だと思うの。 でも、「放棄する」(時間稼いで撤退)と守りきる(敵の殲滅)では動きが違うと思うから、ここの認識をすり合わせたいわ。 私は(※PCの背景も込みで)できれば放棄したくないと思っているわ。
>さく越えー… 攻撃を投石(投げパン?)に切り替えと長大槍(長さ不明)を2本外に出してもらって 間にロープを巻いてから穂先を地面に突きさして壁に立てかける感じの梯子にするとかー…? 一人ずつじゃなくまとめてなら2mの鉄壁だっけ?を出して中間の足場にするとかー…? うーん、あんまりいいの思いつかないや… 矢を放つ穴もあるし中から外は大丈夫そうだけど、外からのはやっぱり心配なのでー… 【リットくんに質問】 砦の外から内に回復魔法をかけたりするのに支障はありますか?(射線とか)
>回復 砦の中に入るメンバーでヒールを用意しておくと多少は安心だろうか。 アルマほど強力な回復ができるわけではないが、普通のヒールで良ければ俺が用意できる。 >陣地の放棄 守りきる方に一票。 丘の上の極小砦を利用し、敵を殲滅または撤退に持ち込む方が安全なように思う。 大量の野犬型魔獣を相手に、9人と自分達の身を守りながら避難するのは難しそうだ……。
>柵を超えるとか砦に入るとか まぁ、中に入るのは俺達冒険者だし、ロープ伝えば柵超えるくらいは重装備のウォーリアさんとかでもなければ問題ないんじゃないかと思う。 んで、梯子までしなくてもどうにかなりそうには思う。 扉の修繕は、それをしたことで敵から見て砦内部への侵入に使われちまうと拙いんで、戦闘してる間はそこは触れない方がいいようには思うかな。 ミツキさんは中に入りたいって事なら、俺の初動で【壁歩き】で柵の上でロープ固定して自力でよじ登れるようルート確保するようにしてみるよ。 中に入るメンバーが登りきったらロープは砦の内側におろしてもらえれば、最悪、扉が使えない状態のまま砦から出るときにも使えるだろうから、そこは上手くやってくれれば。 あと、中に人がいれば野犬魔獣が中に入っちまった場合に一方的な蹂躙にならないようにはなる訳だし、メリットは有ると思うからね。 >目標設定 俺は、砦を放棄するって考えはなかったかな。 今回、壊されないって明言してくれてるし、それなら砦自体を上手く使って、このポイントを守りきれれば今後ここを有用に活用できるって話に繋げたい。 その分、俺達がちと背伸びしなきゃいかんのかもだけど、事ある毎にあちこちで使われてるリット君を見れば、それくらいはどうにかしてやりたいなとも思うな。
>砦に入るかどうか ・・・俺は、重装備だからロープ伝いで柵を超えるのは難しいな。 俺は砦の外で、野犬型魔獣と闘わせてもらうぜ。 >目標設定 俺も、砦を護りきる方に一票入れさせてもらおうかな。
>回復 範囲回復も持っていく予定だけど手が回らない可能性もあるし枠があいてるならぜひー! >柵越えとか砦に入る そういえば授恵者って身体能力けっこうすごかったんだっけー 質問のお返事しだいでボクもロープ使わせてもらうかもしれないー… >目標設定 ボクも砦を放棄しないほうに一票でー
>砦 弓なら内部からも攻撃できそうだ。俺は内部に入らせてもらおう。江流はロープをありがとう。 ではヒールを用意していく。アルマの回復術もとても心強い。 アルベルトの武器は外で戦った方が本領発揮できそうだな。その高い攻撃力と命中で敵を倒してくれると助かる。 >初期位置 敵の動向の情報収集を兼ねるなら東西南北に分散。 砦に近づくまでの負傷を減らすなら同じ方角から集団で。 という動きが適しているだろうか……。 各自の移動力に応じて立ち回りを変える方法もあるだろう。 俺としては長期戦に備えて集団で移動するのが良いと思うが、魔獣(強)が東西南北から時間差でくるのが少し引っかかってはいる……。
>陣地の放棄 意見をくれた皆、ありがとう。 一旦守りきる前提で準備進めさせてもらうわね >砦の中に入る方法 ええ、ロープさえ固定してもらえれば行けると思うわ。 砦の内側に下すの、了解よ >攻撃 一応範囲攻撃のスキルは持ち込むから、効率的に倒していきたいわね >リット・リザードマンの動き リットさんはともかく、リザードマンの皆さんは下手に近接武器で戦ってもらうより石(パン)投げてもらった方が安全かしら。
>初期位置 集団で移動が安全だと思うわ。 砦から一応各方向見えるし、魔獣の機動力考えると、開始直後はあまり情報も集められない位遠くじゃないかしら。
>範囲攻撃 私の方でも範囲攻撃スキルを持っていく予定です >砦の中に入る方法 私も砦の策を飛び越えるようなスキルを持ってないのでありがたくロープを使わせてもらいますね あと私として気になるのは強化個体との対処法ですね 通常より多少は強化されていますが、なにより厄介なのが 攻撃が物理から魔法になっている点ですね 幸い強化されているといっても威力は同程度のものですから要求値はさほど多くはないと思いたいですが…。
それじゃ、【壁歩き】とロープは用意していくね。 最後に砦の中に入る人がロープを内側に回してもらえるといいのかな。 俺は動き回ってなんぼだから砦の外で戦うとして、一度に来る訳じゃないにしても敵の数が多いから、包囲・分断されないように外で戦う面子は、何かあればフォローに走れる程度の範囲で戦いたいね。
>陣地の放棄 放棄はしない方針、了解しました。 >砦の中に入る方法 私も重装備になってしまうので、 基本的にはアルベルト様同様砦の外で戦う形になるかと思います。 >回避能力 範囲攻撃での面制圧であれば回避されにくいかと思いますが、 使用回数の兼ね合いもありますし他の手段もあると良いかと思います。 例えば初撃を地面スレスレで狙う事で相手のジャンプを誘い、 ジャンプしている所を他の味方が叩き落とすといった形とかで。
シーフのサーヤである。よろしくなのじゃよ。 初期の集団行動は了解じゃよ。砦死守についても承知した。集団で襲われている現状なら 多少なりとも遮蔽がとれているほうが生存率も上がろうというものじゃからな。 わらわも内部に入ってリット殿や、リザードマンたちの戦闘を助けたいと思うのじゃよ。 彼らの散発的な行動をただし、チームワークで事に当たらせることができれば将来的にも役に立つというものじゃしな。
>砦の外で闘う皆さん よろしくお願いします。 基本的に連携の取れるポジションで闘います。 ・・・が、野犬型魔獣(強)出現後はそちらを優先的に叩きに行きます。 魔法防御は薄いですが、何とか頑張ります。
>初期位置 では、北の方角から砦を目指そうか。 移動力や移動スキルの有無もあるので、打合せがなければ全員が完全に足並みをそろえるのは難しそうだが、とりあえず俺は移動4の全力移動で向かう。 >音 すぐに砦の敵を攻撃できない代わりに、音などで注意を引けないか試すつもりだ。 こっそり近づくことはできなくなってしまうが、見晴らしの良い地形と集団で走ることから隠密行動自体が厳しそうだからな。 静かに近づきたい者がいれば教えてくれ。相談の上、行動を調整する。
>野犬型魔獣(強) アルベルトさん、私も見つけ次第支援に回るわ。 「マジックディソナンス」と「魔糸もしくは魔錆」で能力下げるから、メインの相手をお願いするわ >初期位置 そうね。皆移動力は違うだろうし、早く移動できる人は早く行くでいいと思うわ。 同じルートを使えればそれだけ安全だろうし、先行組が先んじて露払いもできると思うし。 >音 異議ないわ。私はむしろこちらに目を向けて欲しいと思うから、隠密とは真逆に目を引くのでいいと思うわ >ロープを内側に 一応私の方で記載しておくわ
先に謝っておくがわらわは少々匂うらしいので本格的に隠密行動をとるものがいる場合は、 別行動しようと思うのじゃよ。相手は獣じゃからごまかせるとはとても思えん。 むしろ敵の攻撃を分散させられるのではと思うがどうか?
>隠密行動 どちらかというと、隠密行動担当者が別行動の方が安全だと思うわ。 私含め、メンバーの大半は隠密捨てて重装備だったり派手な攻撃だったりするからね。 >リットさんとリザードマン クさんも内部に入ってくれるみたいだけど、彼らの行動はどうしましょうか。 一旦私の方では「リザードマン達は各方向で投石しつつ、見張りに注力」「リットさんは砦の中に入った個体の対応に注力」という感じでお願いしているわ
取り敢えず現時点での分担ね。 ・砦外で対応 アルベルト フリーダ 海神 ・砦の中で対応 ミツキ テテリカ シルワ ク ・未確定 アルマ 俺は特に隠密行動の予定はないよ。 むしろ、外組は敵から狙ってもらった方が仕事を果たしやすいように思う。 外の対応がやや薄いところはあるから、砦の中からの火力支援はそれなりに期待させてもらいたいところかな。 外の面子は近接戦闘が主体だから、交戦する中で敵の足が止まるシーンもあるだろうし、そういうシーンに狙いを絞ればリザードマン達でも当てていけるかも?
>アインホルンさん 支援ありがとうございます。よろしくお願いします。 >海神さん まとめていただきましてありがとうございます。
まとめどうもありがとー ボクは全力移動で砦に着いたらレゾナンス・オブ・ヴァローでみんなの命中を底上げ 砦の外で同じく砦外対応するメンバーを中心に防御支援とか、 負傷した人の回復めいん-…のよてい あとは以前に難民キャンプで夜警さんした時みたく超聴覚で 追加の敵がくる方角とか数とか感知できたらみんなにお知らせもやってみようかなと
江流はまとめをありがとう。 アルマの全体支援もとても助かる。 今更だが、直径10メートル未満という極小砦のサイズが気になった。 ……あまり大勢は入れないのかもしれないな。 入れそうなら入る。希望者全員が入れない状況なら俺は外で戦う。 大鼬は怪我をしないよう砦内にいさせてもらえると嬉しい。魔法攻撃ができる。 (スーパーめちゃくさいなクの「少々匂う」発言に) ……少々、なのか? んん、すまない。失礼なことを言ってしまった。仲間としてよろしくな。
直系が10mなら外周は30メートル弱だろう。13人の人間が中で1メールと感覚でソーシャルディスタンスするとなると割と狭いやもしれんな。 まあ、そこは状況をみてたたかおうと思うのじゃよ。 リザードマンたちにはできる限り2人一組でお互いをカバーする様に戦ってもらいたいと考えて居る。つまり敵一匹に2人で当たってもらうようにじゃな。 少々じゃよ(強調)、テテリカ殿。がんばっていいにおいを出すように努力するつもりじゃて。(どうする気なんで
・・・出発まで9時間を切ったか。 行動も最終版を提出したし、後は現地でよろしくな。