【鉄鱗】紺碧の底で

小緑 一滴

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シナリオID:970

オープニング

 エドゥノーグの迷宮の危険度は階層の深さに比例する。
 迷宮上層の比較的穏やかなエリアをうろつく授恵者が一人。リザードマンのシューター、シルヴェ・フォーガンだ。無用な戦闘は避けて新規の枝場発見やマッピングに勤しんでいる。
 『神匠』ヴィンダールヴルのエドゥノーグ訪問の件はシルヴェの耳にも入っていた。
 既存の枝場からでも良質な素材が手に入るが、需要にマッチした新枝場を見つけその情報を売りさばきたい。というのがシルヴェの魂胆である。

 そうしてたどり着いたのがここだ。
 青みがかった光を浴びたシルヴェの脳裏によぎるのは、絵本で見た海中世界。
 天井から射し込む光のおかげで照明がなくとも周囲がよく見える。
 足元には白い砂。岩に張り付き揺らめく色鮮やかな多肉植物(イソギンチャク)。
 シルヴェの頭上を魚型の生物が通り過ぎた。
(はたしてあれは泳いでるのか飛んでるのか)
 海底にいると錯覚しそうになる空間だが、実際に水の中にいるわけではない。
(息はできるし)
 シルヴェは試しにあれこれ動いてみた。水の抵抗で動きづらいといった不利はなく、その代わりに空中を泳げもしない。枝場内の空間を泳ぐように移動できるのはここに生息する生き物だけのようだ。
「声も出せるー」
 音の伝わり方も問題ない。
 あくまでも海中に似た空間が広がるダンジョンということだろう。
 ざっと見渡しただけでも、この枝場からは珍しく役に立つ素材が採れそうだ。
 大きな二枚貝。空中をゆらゆら漂うカラフルなクラゲ。海藻を背負った立派なウミガメもいる。
 なかなかの穴場を見つけたと、シルヴェがリザードマンフェイスにニヤリと笑みを浮かべた時だった。
(……っと)
 息をひそめ岩陰に隠れる。
 巨大なエイの影が白い砂の上に落ちる。
 音もなく舞い降り、活きの良い大きな魚を砂へ押さえつけて捕食。その長い尾にはギラリと凶悪なトゲがついていた。
(一体だけならそれほど強くはなさそうだけど、あれが群れだったら戦うのコワー。やり過ごすにしても、あの敵をかいくぐりながら一人で素材採取に集中するのはムリー。ということで)
 エイが去った後、シルヴェは抜き足差し足忍び足で偽物の海底から抜け出した。

 ペットさえ連れぬぼっちシューターの仕事はここまで。
 情報はギルドへと渡す。
 討伐と採取の仕事は、冒険者のパーティに任せよう。

解説

目的  敵対生物「棘尾」の討伐  素材の獲得 素材調達  素材を得るには迷宮生物を仕留める必要がある。解体は任意  例外として「花水母」は生け捕りにする 敵対生物 冒険者達を発見すると襲い掛かってくる 「棘尾」5体  エイ型の迷宮生物。エイ革が得られる  体の下側に目と口に見える部位があり、可愛らしいキャラクター的な表情に見える  のんびりしているようでれっきとした捕食者  体と尾を合わせるとおおよそ3m。泳ぐような動きで枝場内を飛行可能  尾の棘は有毒で、軽度のBSスリップを付与してくる  NPCが遭遇したのは一体だが、集団での同時出現が予想される 低危険度生物 冒険者達を気にしない、または避けようとする 反撃の可能性はあるが致命的な脅威にはならない 「棘尾」の討伐後に、単独や少人数で手分けしての採取作業を推奨 「鋼貝」大量  二枚貝型の迷宮生物。貝殻が得られる。稀に真珠  皿ほどの大きさの貝  ダンジョンの白い砂の上でのんびりしている  危険を感じると砂に潜る  授恵者のパワーなら頑丈な鋼貝も倒せるが、力尽くでは綺麗な貝殻は手に入らない 「花水母」大量  クラゲ型の迷宮生物。染料になる体液嚢が得られる。個体ごとに採れる色が違う  傘のサイズは拳骨ほどで触手は短め。毒はない  空中をふわふわと漂う。体が柔軟で捕獲後も油断するとするりと逃げ出す  傘の模様が花に似ており、模様の中心部に直径2~3㎝ほどの体液嚢がある  攻撃の衝撃で体液嚢が壊れるので、生け捕りかその場での解体となる  体液嚢の解体の難易度はそこそこ高く、失敗するとその分の素材は得られない 「蓑亀」2体  ウミガメ型の迷宮生物。甲羅が得られる  クッションほどの大きさのウミガメ。甲羅に海藻を生やしている  空中をゆったりと泳ぐように飛ぶ  捕まった際には涙を流し命乞いのような仕草をしてくるが、隙を見せると白い煙のようなブレスを吐き出す  煙がかかると数分間だけ目がショボショボしたり、腰や膝が痛くなったり、語尾に「~じゃ」をつけたくなったりする

マスターより

『神匠』ヴィンダールヴルのために、エドゥノーグで素材を集めましょう! 少し凶暴な生物もいますが比較的安全な枝場です。冒険者の皆様なら「棘尾」もすぐに倒せると思います! 目的を達成したら、疑似的な海中世界を散策しても楽しいのではないでしょうか。

リプレイ

●
「へえ、妙な枝場もあるもんだ」
 シスル・ノーティラスは周囲を見回す。シーフとして抜かりなく、それでいてかすかな好奇心が宿った眼差しで。
 海底を思わせる世界で普段通り呼吸のできる不思議さに、レイヤ・ダライ=カホールが目を輝かせる。
「わ、すごい……! ほんとに海の底みたいな……!」
「ふーん、海の中ってのはこんな感じなのか? あたしは海にはあんまし馴染みがねーんだが……」
 記憶を振り返る。昔に拾ったあの絵本のページに、こんな海中世界が描かれていたような気がする。ともあれ、今は。
「いっちょ気合入れて荒稼ぎといくぜ」
「……素材になる生き物を捕まえればいいんでしょ。まぁ、報酬分の働きくらいはする」
 悠人・ラドルファスは気だるげに遠くを眺めていた。摩訶不思議気な空間に一瞬生じた疑問もすぐに消え失せる。
「冒険者ギルドから請ける初依頼としちゃ、丁度イイ塩梅だな」
 そうは言いながらもルークの肩には力みがあった。景色を楽しむ余裕などはなく、神経を張り詰め敵の襲撃を警戒していた。
「エドゥノーグの迷宮には幾度も足を運んできたが……本当に何でもありの世界だな」
 空中を泳ぐ魚を横目に眺め、ナタリア・フィッツジェラルドがつぶやく。
「『バグ=アリだと世界の外側に行ったりしてるし、多少はね?』との事ですが……どういう意味でしょう?」
 啓示の意味はフリーダ=ブロムヴィストにもわからないが、バグという響きには世界の秩序を乱す不穏さを感じた。
「この空間でできることを少し調べてみますね」
 レイヤは真面目な顔で検証を。生活魔法を使い、指先から火や水を出してみる。
「うん! 火も水もいけそうですね!」
 そして何やら楽しげな含み笑い。
 まったく楽しそうでないのはコハクである。虚ろな目をして同じ言葉を繰り返す。
「これは本物の水じゃない。コレハ 本物ノ 水ジャナイ……」
 極度の水嫌いを克服すべく、あえてこの依頼を請けてはみたが身にしみついた苦手意識は一朝一夕で消え去るものではない。耳も尻尾もへにゃりと垂れている。
 セリオス・オーガストはただストイックに冒険者として自分の仕事を遂行するだけだ。すなわち敵対生物の排除。鷹の如く鋭い視線で青い世界を見渡した。
「あそこか。皆すぐに戦いの準備をしろ」
 やや遠くに棘尾が五体。動きからして、すでにこちらに気づいている。

 近づいてくる棘尾の群れにセリオスが矢を放つ。矢は群れの中心で炸裂。無数の輝く破片が偽りの海中世界を彩る。あの輝きの一つ一つが敵を切り裂く鋭利な欠片だ。
 戦いの気配にコハクは冷静さを取り戻す。敵との距離を目測し黒刀【雷帝】を構えた。
「この間合いなら、届く」
 【雷帝】の一閃は不可視の刃となり、宙を泳ぐ棘尾の一体を撃墜。
 残る四体はヒレを大きくしならせて冒険者達に突っ込んできた。
 真っ先に狙われたのは重装備の存在感を放つ悠人だ。だがむしろ好都合。もともと攻撃を引き付けるつもりでいたのだから。さらに見切りを試みる。
 しかし捕食者たる棘尾の攻撃精度もそれなりだ。避けきれず棘でかすめ斬られ軽微な毒に侵される。とはいえ、棘尾がもたらした傷も毒も悠人を倒すにはまったく足りない。
 別の棘尾がフリーダに襲いかかる。しかし当の本人はけろりとした顔で。
「えっと……じゃれつかれているわけではなく、攻撃されてるんですね私。そう言えば少し痛いような気がします」
 フリーダの守りは固かった。棘尾も頑張って攻撃しているのだが、ちょっと痛いかな程度のダメージしか与えられず、毒にも抵抗されてしまった。
 シューターのセリオスも攻撃にさらされる。突進を受け、鋭い棘で強烈に払われた。
「……っ」
 それでも弓を引いて戦う活力は充分残っている。毒の影響もない。
 最後の一体はコハクに向かったが、彼女の素早い足さばきに翻弄される。傷一つ受けていないコハクがそこにいた。
 聡明な輝きをたたえたナタリアの青い瞳が、仲間達の負傷具合を瞬時に判断する。
「オーガストの治療を優先する。ラドルファスの毒はもうしばらく耐えてくれ」
 祭刀から放たれる癒しの光はセリオスの傷を完全に塞いだ。
「ほら。俺を攻撃したいならすれば?」
 冷めた挑発の言葉には悠人のエーテルが込められている。敵が動いたので前に出る手間が省けた。そのため悠人にはシーザーロアを二回放つ余裕があった。二体の棘尾がまんまと引っかかる。
 シスルは敵が高度を下げる時をじっと見計らっていた。
「こりゃずいぶんと活きが良いな。ちょっくらあたしを乗せてくれよっ!」
 近くの岩に駆け登り、さらにエアーライド。岩に根付いた多肉植物がシスルの接近に反応して縮こまった。海に詳しい者であればその正体はイソギンチャクだとわかるだろう。
 棘尾がぐらりと傾く。その背にシスルは見事に降り立っていた。
「スティングレイライダー、ってあんまり格好良くねーけどな!」
 豪胆に笑い、細剣と短剣によるトリプルファングで棘尾の背を切り刻む。痛みに暴れる棘尾から軽やかに飛び降りて離脱。シスルに乗り捨てられた棘尾は、他の三体から少し離れた位置で孤立した。
「少し可愛いと思いましたが、敵かつ素材であることに変わりないので」
 先ほどじゃれついてきた棘尾も巻き込んで、英雄を目指すフリーダは迷いなく闘気の塊を叩きつける。
 きりきり舞いする棘尾達にさらなる追撃。星を思わせる無数の光弾が、レイヤが短杖で示す方向へと降り注ぐ。三体の棘尾はもう泳ぐ力も失い白い砂の上へと落ちた。
 残るは孤立した一体のみ。
「心配ない。ソイツには俺のシーザーロアが効いてるから」
 後衛で岩陰に身を潜めているルークに悠人が声をかけた。
「頼んだぜ、ルーク!」
 すでにシスルはフェザーステップで棘尾から充分距離をとっている。
 しっかりと敵を見据え、ルークは己の魔力を長杖の宝玉へと収束させる。
「吹き散れ嵐ッ!!」
 濃青色の煌めきと共に激しい氷嵐が吹き荒れる。
 嵐が治まった後、最後の棘尾は糸の切れた凧のように静かに横たわっていた。

●
 脅威がなくなってから見る風景は先ほどまでとは印象が違っていて。
「綺麗なところ、だな」
 そうつぶやいた後、ルークは頭を振って意識を切り替えた。まだ依頼は完了していない。
 見つけた花水母に狙いをつける。杖から放たれた魔法は光縛呪。光の縄が花水母の短い口腕をきゅうっと縛り上げる。デリケートな傘は無傷だ。
「よっしゃ。この調子でどんどんいくぜ」
 術にかかった花水母は岩の間に渡したロープにぶら下げておく。これなら逃げられることも、体液嚢が潰れることもない。ルークの名案だ。そして捕らえた獲物を見て一言。
「……なんか干物みてぇだなァ」
「ルーク。一つ提案がある」
 仲間の気配に振り向くと、そこにはセリオスがいた。
「お前が捕獲し俺が解体で分担しないか?」
「ああ、いいぜ。それでいこう」
 セリオスはロープにぶら下げられた花水母を手に取る。ほとんどが水で構成されたその体は、少し手元が狂っただけでも崩れてしまいそうだ。
 狩人として磨いた観察眼で花水母の構造を把握する。乱雑に壊すのは誰にでもできるが、それでは素材も損なってしまう。どこにどう力を加えれば綺麗にバラせるのか。セリオスが理解したいのはそこだ。
 ゼリー状の傘を爪で裂くように親指をさし込んだ。カラフルな体液嚢を破らないよう、指の側面を使い慎重に掻き出す。
「……ふう」
 上手くいった。セリオスは初挑戦で成功させているが、本来なら解剖の技術をつんだ職人の仕事である。
 新たな花水母を捕らえてルークが戻ってきた。
「セリオス。これも頼んだぜ」
 花水母の素材確保は非常に効率的に進んだ。大量にとれた体液嚢を前にルークが首をひねる。
「地上までどうやって運ぶ?」
「麻袋がある」
 不要な傘部分を緩衝材代わりにして、セリオスが所持していた麻袋に体液嚢を詰めた。

●
 甲羅に海藻を生やした亀がのどかに飛ぶ。見上げるフリーダ。闘気や衝撃波も届かない高さだが、獲物を引き寄せる方法なら心得ている。
 シーザーロアの殺気に蓑亀は身をこわばらせた。極度の恐怖は防衛の攻撃反応となって表れ、フリーダに体当たりをしにやってくる。
 ぐっと足を踏ん張り、両腕で抱え込んで捕まえた。
 蓑亀はしばらくは反抗的に暴れていたが、いくらもがいたところでフリーダにかなうはずがない。今度は一転しおらしい態度で涙をはらはらとこぼしてみせたが……。
「騙し打ちは通じませんよ。残念でしたね」
 甲羅を裏返してみたが普通の亀と違い、水中にいるかのような自在な動きですぐに体勢を元に戻してしまう。泳いで逃げ去られる前に海藻の尻尾をつかんだ。
「啓示では『ブレス喰らった所でロ=スは無いので安心』ですか」
 怪しいブレスに注意しながら、怯えた蓑亀が頭や手足を引っ込めたところをロープでぐるぐる巻きにしてやった。
「これでもう手も足も出ませんね」

 シスルは、もう一体の蓑亀の泳ぐ位置と周辺の地形を見極める。
「さっきと同じ手でいくか」
 冒険者のことを砂の上でしか活動できない生き物と見くびって、蓑亀が油断している今がチャンスだ。岩を足場に大跳躍。
「おらっ! 落ちちまいな!」
 シスルのブーツが蓑亀の甲羅を踏みつける。棘尾ほど大きくも力強くもない蓑亀は、飛び乗られた衝撃のまま砂に落ちる。ジタバタもがいているのでまだ元気そうだ。
 ようやく何が起きたのか理解したのか、蓑亀はシスルを見上げて涙ながらに手を合わせ……。
「はんっ、問答無用だっての!」
 シスルは細剣で蓑亀を貫いていた。
「あたしはその手は食わねーからな。泣き落とししてくる奴は大概やべーんだよ!」
 吐き捨てる言葉には深い実感がこもっている。

●
 鋼貝の動きは鈍い。砂の上でくつろいでいるところを悠人が鍋で砂ごとすくって捕まえる。
 短杖に持ち替えたナタリアは遠くから次々に鋼貝に光縛呪をかけていく。鋼貝は身動きできなくなり、砂に潜ることもできなくなった。
 姿を見せていた鋼貝はこれで捕りきった。残るは砂の奥に潜伏した貝達だ。
「……さすがに砂に潜んでると厄介だね」
 悠人はサーマルアイを用意してきたものの、砂に潜った貝の体温は視認できなかった。涼しげな表情で軽くため息をつく。
 そこにコハクがひょっこりやってくる。
「手伝うよ」
 砂の中をエーテルで探る。捜波なら、隠れた鋼貝の居場所も丸わかりだ。
「この辺りにたくさんいるよ」
「ありがとうございます。ふふふ! わたし、こんなものを持ってきたんです!」
 レイヤの手には蒸留酒。鋼貝のいるエリアにこれをまいて酔わせてしまえばこちらのもの、というわけだ。
「酔ったところで地中を爆炎魔法で発破! ……は危険でしょうか?」
「さぁ……効率的な方法だけど、良い素材を集めるには不向きかも」
「頑丈とはいえ、カホールの魔力をぶつければ貝殻が傷つきそうだ」
 鋼貝を綺麗に掘り出す方法を考える三人。コハクはその表情を動かさぬまま、得意げに尻尾を大きく振ってみせた。二本の尻尾を箒の要領で扱い、鋼貝の上の砂を除去していく。見つかった鋼貝は仲間の手で捕獲される。
「あらら。せっかくの可愛い尻尾が砂で汚れちゃいましたね」
 レイヤの声にコハクはぎくりと硬直。二つの尻尾は逆立った後へにゃりと垂れた。
「うー、コハクもいつまでも水嫌いなんて言ってられないけど……」
 喜んでお風呂に入る境地にはまだ至っていない。
「だ、大丈夫ですよ! 砂を払って櫛をかければ充分綺麗になります!」
 なんとなく事情を察したレイヤが慌てて励ます。
 四人の知恵と工夫で大量の鋼貝が確保できた。
「素材の解体も兼ねて、ここで食べてしまいましょう!」
 海のような空間だが火や水が使えるのは確認済みだ。レイヤは祭刀を貝の隙間に入れて貝柱を断ち切っていく。
「じゃ貝の方はよろしく。これだけ大量ならどれかには真珠も入ってそうだね。俺は火の準備してる」
 砂と手頃な大きさの石を組み合わせ、悠人は鍋を安定して置ける土台作りに取り掛かる。

●
 土台が完成し、貝殻と真珠と身と貝柱がすべて分けられた頃には、他の仲間達も合流していた。
「はぁん? なるほど。迷宮産とはいえ、コイツらも魚介ってわけだしな」
 迷宮鶏だって胃袋に収めたのだ。シスルの口元に笑みが浮かぶ。
「その辺に魚型の生き物もいたよな。とっ捕まえて焼こうぜ。亀肉に抵抗なけりゃコイツも食えるんじゃねーか?」
 首を落とした蓑亀を砂に置き、シスルは魚を捕りに向かう。

 偽物とはいえ海の底で火が燃えるのは不思議な眺めだ。出来上がった料理を皆で囲む。
 メニューは三品。蒸留酒の余りで蒸した鋼貝。迷宮魚の串焼き。そして蓑亀のスープ。
「おや。震えているのですか?」
 縄を巻かれて自分の甲羅に閉じ込められた蓑亀は、同族の哀れな末路を感じ取ったようだ。ガタガタ震える。
「安心してください。私が迷宮の外まで生きたまま持っていきますから」
 結局のところ捕まった蓑亀の命は消える運命なのだが、フリーダは優しい笑顔で言って聞かせる。
 鋼貝の酒蒸しをセリオスが口に運ぶ。
「味わい深いな。他の貝とは違う味だが、これも美味い」
「ここで料理を堪能した冒険者は私達くらいのものだろう」
 ナタリアは穏やかな表情で仲間達を見回した。優雅な気分で食事を楽しむ。
「美味しく作れて良かったです! しかし身と貝柱でここまで味に差があるとは」
 料理の味見をしたところ、身の部分の味がひどくて絶望したレイヤだったが、貝柱は絶品だった。皆が食べているのは鋼貝の貝柱部分だ。
「工夫して作ったのに食材自体が不味いなんてオチだったら、まぁ残念だったよね」
 いつも通りの素っ気ない無表情だが、料理を味わう悠人は満ち足りた雰囲気だ。
 迷宮魚の串焼きのシンプルな旨味も仲間達に好評だ。
「獲れたてってのは、美味いもんだな」
 ルークもご相伴に預かった。香ばしく焼かれた皮に包まれた、ふっくらとした身が口の中でほぐれていく。
「うーん……」
「シスル?」
 何やら悩んでいる様子のシスルに、コハクが首をかしげ声をかける。
「野菜やハーブもありゃブイヤベースなんかも捨てがたいんだよな……」
 この枝場の生物を食材として持って帰り、設備の整った地上で凝った調理をすれば、迷宮産の魚介類料理の店がエドゥノーグに出来るかもしれない。なんてことを考えていたのだ。

 浜焼きならぬ海底焼きを食べ終えた。最後の仕事は素材の運搬だ。
 棘尾の体からも貴重な素材のエイ革が得られる。高い耐久性があり刀剣の柄を巻くのにも用いられる。
「尾を体に沿わせて曲げて五体を重ね合わせれば、マジカルポケットに入りそうです」
 エーテルの力でレイヤは大きく重たい棘尾五体を収納する。
 幻の海から陸地に戻る時がきた。
 紺碧の底で得た素材を持って、冒険者達は意気揚々と帰還した。

マスターコメント

冒険者のお疲れさまです。多くの素材を得ることができました。 真珠の入手判定は、確保した鋼貝の個数と【幸運の星】の有無が関わっています。特別幸運な方はいませんでしたが、大量に捕まえられたため数でヒットしました。 鋼貝の味はアコヤ貝を参考にしています。
ショートシナリオ

ショートシナリオ普通 報酬:標準8 / 4〜8人

2021年06月17日 21時24分31秒 公開

大成功

相談掲示板

  1. レイヤ・ダライ=カホール

    レイヤ・ダライ=カホールです。よろしくお願いしますね。 今回はまた不思議な枝場ですね…!変わったものとかたくさん見れそうな予感が! 探索が楽しみですが、その前に。襲ってくる「棘尾」を倒さないといけませんね。 敵さんは自由に空中を泳ぎますが、遠距離の攻撃手段はなさそうなので、 移動を阻害して遠距離攻撃で…っていうのがいいでしょうか?

  2. セリオス・オーガスト

    ・・・ん、シューターのセリオスだ、よろしく頼む 棘尾を討伐してからほかの捕獲に入るほうが邪魔も入らないだろうし、そっちのほうが推奨とあるから倒してからでいいだろうな レイヤの言う通り少なくとも説明文には遠距離攻撃がなさそうだから遠距離で削れるなら削りたいところか。 ただまあ集団で来るようだから全部は無理だろうし、こちらに近づくまでに1,2体は潰しておきたいな 捕獲のほうは単独か手分けとあるから各自希望の種類を上げて捕獲に回ったほうがいいか

  3. ナタリア・フィッツジェラルド

    ヒーラーのナタリア・フィッツジェラルドだ。 棘尾は軽度でもBS付与をしてくる。解呪だの聖別だので解除を試みるつもりだ。 集団での出現が予測されるならメテオライト2をぶち込もう。 花水母の体液嚢を目当てとするなら狩猟スキルが望ましいか?

  4. ルーク

    ルーク。キャスターだ。 ……こういう場は初めてなんで、何か不味いことがあったら教えてくれると助かる。 とりあえず棘尾から距離を取りつつ氷嵐で攻撃、戦闘後は花水母を光縛呪で捕まえられないかと思っているんだが……難しいんだろうか。

  5. シスル・ノーティラス

    シスル・ノーティラス。シーフだ。よろしく。 素材集めか、いいな。金目の匂いがぷんぷんするぜ。 弓を持ってくことも考えてるが、遠距離攻撃できるメンバーは多そうだな。 棘尾は叩き落としてもらってからの対応もアリか。 あとは飛行の高さ次第じゃエアーライドで乗ったりできる……か? 花水母に光縛呪は試す価値ありそうに思うぜ。 光縛呪の仕組みがちょっとわかんねーけど、力で押さえ込んでるんじゃなく魔法的に動けなくしてるんなら、「攻撃の衝撃」には該当しねーかも。

  6. レイヤ・ダライ=カホール

    BSもナタリアさんが解除してくれれば盤石ですね。よろしくお願いします。 毒針そのものや毒も何か素材になるかな…? 光縛呪はいい案だと思います。 クラゲって、流れに身をゆだねるっていうか無抵抗に見えませんか?効果があるかも! わたしは「棘尾」との戦闘が終わったら「鋼貝」の方を採取に行ってみます。 …ところでみなさん、浜焼きはいかがですか?(

  7. ルーク

    シスルとレイヤはどーも(意見に対する礼のつもりらしい) 花水母は光縛呪で触手を狙って拘束、上手くいったらロープで触手の付け根を追加で拘束しておくぜ。逃げやすいらしいからな。光縛呪の拘束後なら、体液嚢に衝撃を与えなければ多分大丈夫だろ。 棘尾の方は、氷嵐が味方を巻き込みそうだから味方が範囲にいなければ氷嵐、居たら豪風を使う予定だ。あー、それと、なるべく遠くに隠れて動くようにするが、ヤバそうなら守ってもらえると助かる。耐久は自信がねーからさ。 >レイヤ イイな、浜焼き。普通の魚もいるみてぇだし、終わったら腹ごしらえってのもイイかもな。まぁオレは料理はできねぇから、作る方は任せるぜ。

  8. ナタリア・フィッツジェラルド

    素材を得ようというなら、どの生物でも光縛呪が必要になってくるな。 解説によると戦闘不能状態、無抵抗の対象のみに限り拘束出来るとあるが……棘尾のようにハナから敵対心や警戒心を向けてない相手なら、不意打ちという形で刺さるんじゃないのか? ただ鋼貝は危険を察知すると砂に潜るという形で逃げようとする訳だから、そうなると抵抗が出来ない程度にはボコる必要がありそうだ。 特に棘尾との戦闘の余波で、身の危険を感じて逃げようとする事も有り得る。 やるとするなら棘尾との戦闘前が望ましいか?そーっと捕まえるとばかりに。 蓑亀の煙幕で苦しんでるという時に棘尾がやって来られては難儀する。 私もキャスター武器はあるから、私からもやってみるか。 >ルーク なんなら光縛封でも置いておくから、その後ろに隠れて撃っておくか? >カホール 夏場(?)の風物詩だな。ついでにあわよくば真珠も得られよう。 それに蓑亀とて、甲羅に生やした海藻も食べられる……筈だ(

  9. ナタリア・フィッツジェラルド

    見直してみれば低危険度生物は棘尾の討伐後に、単独や少人数で手分けしての採取作業を推奨とあるな。 特に蓑亀辺りは。 それと花水母を除けば生死は問わないようだが、鋼貝は力づくでは綺麗な貝殻は取れないとある。 そういう個体が居れば、極力光縛呪での生け捕りを狙うか。

  10. ルーク

    ナタリアはどーも。光縛封、助かる。他に手が無いなら頼みたい。とはいえ射線が通らねぇから攻撃するときは陰から出ることになるし、他に効率のいい手段があるなら変えて貰っても構わねぇ。速攻で倒した方が安全かもしれねぇし。一応エーテルバリアがあるから自力でも1回は耐えられる……ハズだ。 採取は戦闘後だろうな。推奨でもあるし、いつ頭上から棘尾が来るかわからねぇ、って状況で採取はできねぇよ。少なくともオレは無理だ。戦闘が終わって多少待てば鋼貝も出てくるだろう。戦闘の余波って意味じゃ、花水母も近くのヤツはダメだろうから、多少移動するか待ってから採取だろうな。 光縛呪じゃなくても、鋼貝は気づかれねぇように遠隔で回収するとか、素早く回収するとか、潜った砂ごと掘り起こすとか、砂を固めるとか、眠らせるとか、まぁ方法はあるんじゃないか。具体的な手段があるかどうかは知らねぇけど。亀は甲羅が割れねぇ程度になら力づくでもイイだろうし。煙はまぁ……死にはしねぇよ。 >シスル そういえば、蓑亀はゆっくり飛ぶように泳ぐようだ。棘尾に乗りたいなら、足場に出来るかもな。革が素材らしいから、近づいて小さい傷で仕留められるならイイ手段かもしれねぇな。 浜焼きは賛成なんだが、鋼貝は焼かねぇよな?貝殻も素材だから、焼くなら中身だけにしてくれよ?

  11. レイヤ・ダライ=カホール

    (あ、やっぱり丸ごと焼いちゃ駄目?) …いえ、大丈夫、大丈夫です。多分。もし焼いても半分は無事なはず… …うん、がんばって開きます。

  12. レイヤ・ダライ=カホール

    (…あ、蒸留酒で酔わせたら楽かも…?)

  13. シスル・ノーティラス

    まあ、棘尾以外は「低危険度」となってるし、推奨どおりにさっさと棘尾を倒して、ゆっくり採集てのが気楽でいいだろ。 とりあえずあたしは戦闘後に亀でもかっぱぐか。 亀を足場にするのは良さそうだな。ルークの案、使わせてもらうぜ。 接近できりゃこっちのもんだ。 浜焼き……いいじゃねーか。必要な素材以外は食ってもいいよな。 妙な食材の料理なら得意だぜ?

  14. コハク

    顔出しがとても遅くなってしまった…ごめん。 取りあえず流れは確認したから皆の補助に回るよう動くね

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0