氷雪の煌果

崎田航輝

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シナリオID:919

オープニング

「坊ちゃま、ナイフとフォークの使い方が少々下品です」
「……分かっている」
 かちゃかちゃと、テーブルで音を鳴らしながら……青年レオは憮然と応える。
 家の中の普段着ですら、いい身分のものだと判るのは――彼が紛れもない伯爵家の長男であるが故。
 だから食事の際にすら、傍に侍従が控えているのだが――
「会食の際にきちんとすればいいんだろう?」
「いけません。普段から作法を身に染み込ませておいてこそ、大切な時にも無礼を働かずに済むというものなのです」
 レオ様ももう二十歳なのですから、と。
 老齢の侍従は全く譲らない。
 それもその筈。彼はレオの父、即ち伯爵から「息子をしっかり教育するように」と口酸っぱく言われているのだ。
 故に食事時でもそれ以外でも、レオには常に厳しく接している。
 レオはため息をつく。
「食事くらい自由にさせてほしいけどな……」
 見ると、内容も会食で出すような格式高いものだ。今は彩りの美しい野菜を使った、前菜のマリネが置かれている。
「そういう事を人前でおっしゃってはいけませんよ」
「分かってるよ……」
 口に運びながら、レオは心の中で不味そうな表情をする。
 野菜は、好きじゃなかった。

●不満
「はあ――」
 私室に戻ったレオは、ようやく僅かな自分の時間を手に入れてベッドに倒れ込む。
 伯爵家子息として、レオは幼き頃より英才教育の日々を送っていた。
 というのも、レオの父は社交界から身を立てたやり手で、言葉遣いや立ち居振る舞い、教養を非常に重要視していた。
 だから「息子も立派な貴族に」という思いで教育に熱が入っているのだろう。
 それは、レオも理解している。
「別に分かってるよ。恵まれてる事くらいは――」
 レオはこのまま行けば家を継ぐ。金銭に困った事はなく、下位の貴族や領民には尊敬され、羨望の目を向けられていた。
 領地はしっかりと治められていて、平和な日々を送っている。それを投げ捨てたいと思うほど、レオも馬鹿ではなかった。
(俺には、貴族は合ってないけど)
 それでも求められる役割を果たそうと決めている程度には、大人だという自覚もある。

 が、それと本能は別の話。
 がさごそと、レオは収納の奥から何かを取り出した。
 それは幾つもの絵本や、挿絵入りの物語。
 まったくもって子供向けの冒険ものであり、レオが普段読まされる学術書とは似ても似つかなかった。
 というのも、幼い時分に情操教育目的に与えられた書物で……こっそりと捨てずにとってあるのだ。
「……ふふ」
 それを読んでいる時だけ、レオは心からわくわく出来る。
 誰も踏み入った事のない場所、強大なモンスター! 荒唐無稽気味な内容が多いが、そうであればあるほどレオには魅力的に映った。
 冒険、戦い、新発見。
 レオはそういう話が大好きだった。
 自分の人生と真逆だからだろうかと思った事もあるが、きっと違う。
 冒険の実情もよく知らないけれど憧れる。かっこいいと思うものに心が熱くなる。自分はどこまでも子供っぽくて、成長した今でもそれに惹かれないでいられないだけなのだ。

 だからこれは数少ない楽しみ。
 だけでなく、レオは時々私費でギルドに依頼し、冒険者を僻地へ冒険に行かせて……その土産話や手に入れた物を見聞きしては楽しんでいた。
 知識を深める為、と説明すると父や侍従もそれだけは認めてくれたから……今やそれがレオの生きがいとなっている。
 父達に不自然に思われるから、依頼もたまにしか出来ないが――
「そろそろ、いいか」
 呟くとレオは、自分の中に元気が復活してくる思いだった。
 そうして次はどんな冒険話を聞きたいかと、吟味して。
「あっ」
 本の山から落ちた一冊を拾い上げて……レオははっとする。
 そこには遥かな極北に関する、おとぎ話が載っていた。

●依頼
 雪の舞う銀世界。
 そこをずっと進んだ先に、美しく煌めく氷の樹林があるという物語だ。
 その中には氷の花が無数に咲く、幻想的な花園があり――その近辺だけ、樹木には“氷の果実”が生るという。
 短い話だから、氷の果実について詳細は書かれていない。
 少年少女の旅をベースに書かれた一節であり、絵の美しさを見せたいが為の創作に見えるが――その本は“現実に聞いた話を元に執筆された”と書かれていた。
「……」
 極北はそもそも、住む人がいたと判明した事自体が最近なくらいで……本によれば極北といっても南端らしいが、それでも描写されたような旅が行われたかは、眉唾だ。
 それでもレオはわくわくした。
 なにせ、極北の冒険譚をレオは生の声で聞いた事がなかったから。
 それに――
「氷の果実、食べたい!」
 本によるととても甘いらしい。そして美味らしい。
 最近、大人の食べるような物ばかり口にしてきたレオは……それが何より魅力的に思えるのだった。
 そうしてレオは、「極北についての知識を云々」と言って侍従に許可を取り、私費を限界まで駆使。帝国ルートが難しいと知ると船も手配をして――
「ぜひ宜しくお願いします! 最高の冒険と、未知の果実を!」
 出立する冒険者達へ、ぺこりと頭を下げたのだった。

解説

●目的  極北南端部を探検し、本に書かれた「氷の果実」を手に入れて持ち帰る。 ●行程  東の海路を使い、荒野側から氷雪帯南部に入る。  氷雪地帯からは、本に書かれた情報を元に探索して「氷の樹林」を目指す。  おおよそ数日間の旅になると予想される。 ・氷雪帯侵入時  広大な荒野から、雪の降る雪原へと環境が移り変わってゆく。  旅慣れた者でも厳しいほどの寒さだと書かれており、視界も悪いと思われる。 ・銀雪湖  凹凸の烈しい地帯を越えた先にあるとされる。  凍りついた湖で、その上が歩いて渡れるようになっていると書かれている。 ・氷の樹林  湖の先にあると書かれている。  氷の花園が広がる近辺で、樹木に氷の果実が生ると書かれている。 ●敵 ・『白銀鷲』  白銀の羽毛に覆われた鷲型魔獣。  人の背丈に近いほどの体長を持つ。温度の高い場所やものに反応して近づき、生き物がいれば捕食する習性を持つ。  くちばしによる近接単体攻撃と、冷風を放つ単体魔法射撃(射程6hex)を使う。  湖の手前までの道中で、一度に最大3体出現する。 ・『氷喰鮫』×1  銀雪湖に出現する鮫型魔獣。全長4m。  普段は湖の深くにいるが、湖面に獲物を見つけると氷を食い破って襲撃する。  牙による近接単体攻撃と、足場を崩す範囲攻撃(射程1hex、直径3hex)を行う。

マスターより

極北の南部を冒険しようというシナリオとなります。 氷雪帯には海路から荒野を通って侵入しますが、それまでの行程については判定に影響しないのでプレイング等で触れる必要はありません。リプレイもおおよそ氷雪帯侵入時から始まる事となるかと思います。 氷雪帯では同行者のいない、冒険者パーティのみの旅となります。 授恵者はエーテル的に強靭なので、一般の人々よりは寒さに強いですが、不用意過ぎても厳しい環境なので、それなりに寒さには注意しておくと良さそうです。 基本的に未開の地なので、果実以外にも色々調べてみてもいいかも知れません。 皆様のプレイングを、心より楽しみにお待ちしております。

リプレイ

●氷雪
 さくりとした感触に足元を見下ろすと、地面に雪が交じり始めていた。
「……息が白い。ここからが本番ね」
 大陸北部、平野部の終わり。
 ロゼットが前方を望むと――雪原と山岳が見えていた。
「凄いなぁ……」
 ララベル・サン・ディーベルは感嘆を零す。
 ただの冬景色とはまた違う、一面雪と氷の世界。未踏の極地――故にこそララベルはにこりと笑みを浮かべ。
「何が待っているか楽しみだね」
「ええ」
 ロゼットは依頼人――レオとの遣り取りを思い出す。
『最高の冒険と、未知の果実ね。確かに引き受けたわ』
 必ず持ち帰って貴方に届けましょう、と。伝えた時の、彼の顔は期待に満ちていたから。
「成功させたいわね」
「そうだな!」
 頷くギャメルも口にこそ出さないが、冒険や発見が好きなレオには親しみを抱いていた。
 自身の弟妹達もまた、そういう話を聞きたがるものだから。ゴールディ育ちには堪える寒さだけれど、未知の動物や景色があると思えば――
「楽しみだぜ」
「極北の氷の果実! ぜひ見てみたいですね!」
 トーラも何より、目指すべきそれが楽しみだ。
 勿論味わえたら最高だから、と。
 ララベルも頷き、雪へ踏み出した。
「大冒険に出発だよ!!」

 そうして前進した一行を――最初に迎えたのは氷雪帯の洗礼だ。
「にゃぅ……めっちゃ寒い……」
 ふるるる、と肩を震わせたサフィラ・アズラク・ナハルハルアリーブは厚手の防寒具をしっかりと締め直す。
 足元を埋める雪と吹き付ける風。南部とはいえ既に環境は厳しいものだった。
「人が容易に立ち入れないのも当然だな」
 見回すバーネット・フォーサイスも凍りつくような吐息を零す。
「色々と準備してきて正解だ」
「うん。先は長いし……がんばらないとねっ!」
 サフィラが言えば、「ああ」と西方に進路を取るのがセリオス・オーガスト。
 マントを羽織っても完全に寒さは断てないが……雪深い地の出身だからでもあろう、表情を崩す事なく――冷静に道を見定めている。
「本の内容が正しければ、こちらに向かえばいい筈だ」
「それじゃあ、行きましょう!」
 言って隊列の先頭から斥候に出るのがエルナ・クルプファルツ。
 厚い雪の間をひょいひょいと跳んで、足取りも軽やかなのはエルナも寒さは得意なため。花をほわほわ揺らしつつ、元気に前方の警戒をしていった。
「しばらくは平坦な道が続きそうですね!」
「でもやっぱり、視界は良くないな」
 ギャメルはロープで皆を括って、はぐれないように対策。その上で足元にも注意を払いながら皆は行軍を進めた。
 時折吹雪が凪ぐと、雪原や遠方の稜線や、凍った滝が美しい。
 人里にはない美観――けれど無論、そこには敵もいる。
「あっ!」
 エルナが気づいて皆に合図を出す。
 高空に羽ばたくそれは白銀鷲。既にこちらを捕捉していた。
「にゃ、やるしかないねっ!」
 ならばサフィラは迷わずに。吹雪を縫って疾駆すると、高々と跳んで斬撃を加えた。
 敵は二体。バーネットがそこへ光球を撃てば、エルナもまた重ねて光弾を降らせて負傷した一体を落としてゆく。
「後はお任せします!」
 それに応えてロゼットが魔法の矢を撃つと――反撃に出てきたその一体へララベルが肉迫。
「疾風三連突!!」
 鋭い剣撃で貫き撃破していった。
 更に新たな一体が現れるが、トーラが囮となって引きつけると、そこをセリオスが矢撃。
「行けるか」
「ああ、しっかし、鳥デケェなっ!」
 ギャメルは少々気圧されつつも手は動かして――魔力をぶつけて倒しきった。
 皆は無事を確認し合うと前進を再開。セリオスはチョコレートを齧ってカロリーを補充しつつ、見回す。
「そろそろ雪原も後半だな」
「この辺りは入り組んでるね……!」
 トーラもゴーグル越しに景色を観察する。
 いつしか凹凸が激しくなり、木々も茂る地帯となっていた。
 行軍はするには一層厳しい。けれど高台もあるため、トーラはそこに登って湖を探してみる。
「窪地とか、谷間の終わりにありそうだけど――あっ、もしかしてあれ?」
 すると遠方、地形の間に煌めく景色が覗いた。
 おそらく湖面だろう。伝えると皆は頷き、そこへのルートを取り始める。
 尤も、警戒は欠かさずに。
「この先足元に気を付けて」
 ララベルが示す先、雪で隠れた断崖の狭間があった。皆は注意して越え、その先も地形を調べつつ進行した。
 こんな中で敵襲があれば更に危険だが――
「皆、見て」
 樹氷に紛れる白銀鷲を、ロゼットが素早く発見。避けて通ると……更にサフィラも鋭敏に遠くの気配を感じ取って。
「むむっ! 前方に何か発見っ!」
 隠れて覗くとそこにも白銀鷲。
「こっちに飛んできそうだよっ」
「やり過ごそうか」
 言ったララベルは、横向きに凹んだ地形を見つけている。
 皆でそこに隠れ、入り口側に雪を被せると――鷲はそこを通り過ぎて消えていった。
「上手くいったな」
 そこから出たバーネットは、空が暗んできたのに気づく。
「よし。ここらで野営するか」

 バーネットが食料や薪を取り出すと、皆も持参したものを準備し始めてゆく。
 それだけでなく――
「そうだ、かまくら作ろうよ! 囲うと結構暖かいんだよ?」
 ララベルが雪をぺたぺた固め始めると、皆も協力。全員で入れる大きさに造り上げた。
 近くで火を焚くと何とも快適で……手を翳したロゼットもほっと息をつく。
「暖かいわね」
「これで料理も出来るな!」
 ギャメルが鍋を出すと、バーネットも頷き生活魔法を行使。雪や氷も煮沸して利用し、たっぷりの湯を沸かして――
「お肉、持ってきましたよ!」
 料理担当のエルナがそれを入れてコトコトとポトフを煮始める。
 道中で採った雪色の野草や、倒した白銀鷲を使ってスープも作っていると……「これも使えるかな」とギャメルが見せたのは凍りついた山菜だ。
 温めてみると霜が溶けて瑞々しさを取り戻す。
「なんだか生き返ったみたいだ」
「凍る事で長生きしてた植物なのかも知れませんね!」
 幾つかはサンプルに持ち帰り、後はエルナが付け合せに料理した。
 ララベルは逆に、雪中でも色鮮やかに生きる花を採取している。
「氷に生えてたみたいだから、外でも育てられそうだよ」
 それも新発見だろうという事で、しっかり保存する。
 そうして料理が出来れば実食。スープも肉も美味で、雪色の草はなめらかな食感。山菜はしゃきしゃきしていて、皆で美味しくお腹を満たした。
 ギャメルがココアを作って食後の憩いも過ごし――夜は交代で寝ずの番だ。
 焚き火の前で、ギャメルは冒険譚を頭の中で纏め始めていた。
「まだ先は長そうだけどなー……」
「ま、良い経験だ」
 バーネットは応える。 
「極地を探検して、実在するかも定かでない物を探し求める……こういう依頼を熟(こな)していく事こそ、冒険者冥利にも尽きるってやつだからな」
「そうだね」
 と、交代に出てきたララベルも頷く。
 そこに冒険があるなら放ってなんて置けない、それは自分も同じだから。
「まだ見た事のない物、知らない景色を――明日からもこの目に焼き付けたいね」
「その為にも」
 と、バーネットは蒸留酒を一口呷った後、焚き火の傍に置いて。
「『気付け薬』だ……使いすぎるなよ」
「ああ」
 応えるセリオスが、暫しララベルと共に静かに見張りを続ける。
「――夜は一層冷えるな」
 セリオスは空を仰ぐ。
 体の芯までを凍えさせるような寒さ。それに少しだけ、自身の故郷を想起しながらも。
「今は目的地に、辿り着かないとな」

●銀景
 翌日。
 進軍を再開した皆は、凹凸の地形を抜け出ていた。
「わぁ……!」
 ララベルはその先に広がる眺めに、眩しそうに瞳を細める。
 ――銀雪湖。
 そこは水面が見える限りに凍りついた湖だ。
 強い寒気の漂う場だが……氷の透明度が高く、空と稜線を鏡のように映す様が美しい。粉雪と共に輝く、正に銀色の景色だった。
 セリオスはそっと氷に触れる。不安定さはなく頑丈だ。
「本の通りなら、この上を進む事になるか」
「気をつけましょう。歩けるほど氷が分厚いという事は、落ちたらそれだけ這い上がるのも大変だという事だから」
 ロゼットが言えば、皆も頷いて。バーネットのエーテルで水上も歩ける状態にしてから――前進を始める。
 湖面を歩むのは、透明な地面を踏んでいるようで不思議な感覚だ。
 美観も相まって無二の体験――だがサフィラは油断なく、エーテルの波を奔らせて警戒を続けている。
 それはここに敵が出るとも判っていたからだ。
「今のところは大丈夫だけど……ん?」
 と、そこで違和感を覚える。
 気配と共に、下方からくぐもった音が響いてきたのだ。
 ギャメルが氷の下を覗くと――巨大なシルエットが見えてくる。湖の底から高速で泳いでくる魔獣、氷喰鮫だ。
「鮫だ! 鳥よりもっとデケェ!」
「皆さん、間合いを!」
 トーラは言いながら、氷を叩いて自身の存在をアピール。自身を囮にして――氷喰鮫に氷を食い破らせた。
「今です!」
「ああ」
 そこへセリオスが弓を構えて射撃。鏃(やじり)に込めたエーテルを弾けさせ、まずは氷喰鮫の体を蝕んでいた。
 氷喰鮫は敵意を露わに牙を咬み合わせるが――
「先手は貰うよっ!」
 そこに滑り込むのがララベル。距離を詰めながら細剣を突き出し、表皮を貫いてゆく。
 サフィラもまた、くるり。華麗に廻って刃を翳し、降下しながら剣撃を叩き込んでいた。
 そのまま飛び退くが――氷喰鮫はそこの氷を食い荒らしてくる。
「わわわっ!? ちょ! 足場崩すのズルくない!?」
「これ以上、暴れさせない方が良さそうだ」
 バーネットが杖を振り抜き、鋭い魔弾を撃ち込めば――エルナも杖先に美しく明滅する魔力の光を凝集。発射して喰鮫を穿ってゆく。
「少しずつ弱ってきたみたいです!」
「逃げる様子は……ないか」
 ならば討つと決め、ギャメルも輝く魔力を射出。氷喰鮫の鼻っ柱を叩いた。
 氷喰鮫は尚凶暴に攻めてくる、が、ロゼットは避けつつも的確に刺突を打つ。そのままよろめいていたサフィラへも棍を差し出して引き寄せながら。
「後はお願いね」
「さあ、こっちこっち!」
 頷くトーラが挑発し、気を引くと――そちらに向かった氷喰鮫の背後から、エルナが狙いを定めている。
「これで終わりです!」
 花のように幾重にも魔力を渦巻かせて、放った光の一撃で氷喰鮫を撃破した。
「――ひとまず、ここを離れましょうか!」
 エルナの言葉に皆は頷き、まず足場の安定した場所へ。そこで態勢を整えてから改めて行軍を再開し、湖を乗り越えてゆく。

●果ての実り
 野営を挟んで進む一行を待っていたのは、再びの雪景色だった。
 視界は降雪に白み、いつまでも同じ眺めが続く錯覚に陥る。けれどしかと方向を見定め、歩み続ければ――
「あれは……」
「氷でしょうか! 森みたいになってます!」
 セリオスが目を留めた方向に、エルナも気づいた。
 見えるのは氷の樹林。点在する本物の木を、透明な氷が完全に包み込み――その周囲に同じ形の氷が生える形で広大な森を形成していた。
 中に入ると氷が乱反射し、凄絶なまでの美しさを見せる。サフィラは見惚れて思わず立ち止まっていた。
「はわぁ……とっても綺麗で幻想的……」
「別の世界に来ちゃったみたいだね――!」
 ララベルも瞳を輝かせる。
 地下に水源があるらしく、そこから溢れた水が凍り、降雪も相まって木々を閉じ込めながら成長しているのだろう。
 探索を続けるトーラは、そこに鮮やかな色彩も発見した。
「あ、ホントだ! 花園まである!」
 駆け寄るそこは、まるで無数の花が咲いたように見える場所。
 そこは温泉が地下に流れているようで――揺らめく水蒸気が少しずつ凍り、折り重なって花の形を作ったのだ。
 とはいえ氷の花は種から生えている。色づいているのが、種から溶け出た成分や栄養が理由だとすれば――これも花の一つの形。
「環境に適応して氷の花を咲かせるようになった種、とも言えるのね」
 ロゼットはそっと見つめて、氷の花や種を幾つか採取。雪や氷で保冷して持ち帰る事にした。
 トーラは近くに氷の薄い木々を見つけ、共感能力を使う。
「低温でも生きられる木みたい」
「じゃあ、木がいっぱいある所なら果実もあるかな」
 ギャメルは木々を辿りつつ嗅覚を駆使し――仄かに甘い匂いを捉えた。
「向こうだ!」
 すると向かった先。木を覆う氷の、枝の形になっている部分に――大きな宝石のような果実が実っている。
 バーネットは仰いで感心の息を零す。
「あれも花と同じ原理か」
 本物の木から流れた成分が凍りついたもの。トーラが登って採取すると――掌(てのひら)大で、澄んだルビーのような輝きだ。
 セリオスは周囲に無数の果実が生っているのを見つけていた。
「結局、本には実際の事柄が書かれていたという事だな」
「にゃ、折角だし味見しようよ!」
 サフィラが言うと皆も頷いて試食。
 すると見た目よりは歯触りが良く、しゃくっと削れる。それでいて口の中でさっと溶けて――芳醇な甘味だ。
 ギャメルは喜色を浮かべている。
「うまい!」
「ん、甘くって美味しい……!」
 トーラも華やかな笑みを見せる。
 まるで天然のデザート。碧色や橙色のものもあって……エルナはしゃくしゃくと食べ比べて笑顔だ。
「赤は甘酸っぱくて、碧色は爽やかで、橙色は甘味が強くって……どれも美味しいです!」
 中には数粒、種もある。
 ロゼットは畏敬と共に木を見上げた。
「こんな場所でも、こうして生きているのね」
「じゃ、幾つか持ち帰らせてもらうか」
 バーネットは雪を沢山荷物に入れ、果実が溶けないように収納する。
「これも採っておこう」
 と、セリオスがエーテルで冷たくなる、氷に似た鉱石を見つけると――ララベルも雪色や氷色等、冬景色に擬態する植物を発見。
 エルナも雪と見紛う綿を生らす花を見つけ……採取したのだった。
「色んなものが見つかりましたね!」
「ええ」
 ロゼットは改めて景色を見つめる。
 厳しい極地での冒険も、これで終わり。
 だから煌めく氷の樹林を目に焼き付けるようにして――皆と共に帰還してゆく。

 一行は氷雪帯を抜け、海路と陸路から王国に戻った。
 そして調査報告という形でレオと邸宅にて同席し――早速、その成果を見せてあげる。
「これが氷の果実ですか……!」
 煌めくそれに、レオは感嘆。
 冒険者が勧めると、わくわくと一口食べて――
「甘い、美味しい――!」
 こみ上げるものがあるように瞳を閉じていた。
「これが遥かな極北の味なんですね。ありがとうございます……これを知る事が出来て、とても嬉しいです」
「他にも色んな事があったんだぜ!」
 ギャメルが言うと、レオは期待の顔を浮かべる。
 そう、果実だけでなく、皆の冒険そのものが楽しみでもあったのだから。
「大変な冒険でしたか?」
「そうね」
 応えたロゼットが、そんな彼へとまず口を開く。
「それじゃあ氷雪帯に入るところから、お話しましょうか――」

マスターコメント

お疲れさまでした。 探検を上手く進め、目的の果実を手に入れる事が出来ました。道中の戦いも勝利で終え、多くの発見もあった事で、レオにとっても期待以上の成果となった事でしょう。
ショートシナリオ

ショートシナリオ普通 報酬:標準8 / 4〜8人

2021年05月24日 20時16分43秒 公開

大成功

相談掲示板

  1. サフィラ・アズラク・ヴォルファング

    にゃ!シーフのサフィラだよっ! 氷の果実をめぐる氷雪地帯の大冒険…! なんだかどってもワクワクするねっ! 未開の土地みたいだし、あたしとしては 氷の果実以外にも何かないか探してみようかなっ♪

  2. ロゼット

    ヒーラーの神官戦士ロゼットよ。よろしくね。 険しい道のりになりそう。

  3. トーラ

    シーフのトーラです。 極北の氷の花と果実、楽しみですね! 探すのも大変そうですし、防寒のほかにいろいろと準備も必要そうです。 ところで氷の果実は普通に持ち帰って大丈夫なんでしょうか? 寒いところになるものですし、暖かいところに持ってくると溶けたり悪くなったりしないか気になるんですよね。

  4. ギャメル

    ヒーラーのギャメルだぜ。みんな、よろしくなー! 寒いとこには慣れてないが、防寒対策していくぜ。 鮫がなかなか厄介そうだ。どうすっかなぁ。 >氷の果実 ふむふむ、冷たいものを運ぶ手段か。 素材の持ち帰りにゃマジカルポケットをよく使う。でも、温度変化に対応できるかは試したことねぇ。 極北の雪と氷もひとまとめにして、氷の果実の保冷剤みたいにしとけば、ちょいと安心できるかな?

  5. サフィラ・アズラク・ヴォルファング

    >氷の果実 んー、そしたら雪ごと水袋(大)の中に詰め込んでマジックポケットに入れちゃうのが確実かなっ? >防寒 防寒…マントかブランケット持ってくのがいいかなぁ?あとは暖をとるための焚き火用に火打箱も持っていこっかな?

  6. セリオス・オーガスト

    ・・・ん、シューターのセリオスだ、よろしく頼む とりあえず防寒対策もそうだが、一面雪景色だと目印も見つけにくいだろうから位置感覚とか必要そうだな

  7. ララベル・サン・ディーベル

    僕は、シーフのララベル・サン・ディーベル。 みんなよろしくね!

  8. ロゼット

    >氷の果実 おとぎ話での比喩だから、実際には普通の果実だと思うけど、 寒い場所になる果物だから冷やせるなら、その方が良さそう。 >氷喰鮫 銀雪湖で氷の下から襲ってくるのを上手く気付けるかしら。 探知スキルは常時じゃないし聴覚スキルがあるなら聞き取れる? 凍った湖の水中に引きずり込まれるのは危険だから、なんとか 真下から来られるのは回避したいわね。

  9. バーネット・フォーサイス

    キャスターのバーネット・フォーサイスだ。 まぁ、よろしく頼むわ。 >事前準備 道具として持ち込むにせよそうでないにせよ、プレで防寒用の装備を準備すると 記載しておけばある程度は大丈夫だろう。 その他必要な装備や食料類も、マジカルポケットに格納して持ち込めば、 大荷物でも行動の支障にはならないな。 >氷の果実 本当に氷かどうかはともかく、持ち帰るまでにそれなりの日数が経過するだろうから、 傷ませない為にも周辺の雪だとか氷だとかで包んで持ち帰るのは良いな。 >氷喰鮫 水中の奴は探知がしにくいのがなぁ…… 看破だとかで氷越しに異常を察知するぐらいが関の山か? 湖に落ちる事への対策は、ウォーターウォークを使っておけば、 噛みつかれて引きずり込まれるとかされなければ大丈夫だろう。 氷の上の歩いて渡れる様になっているとはいえ、用心のために予め使っても不自然じゃないし。

  10. ギャメル

    >氷の果実 水袋をそういう風に使うサフィラのアイディア、ナイスだな! 行きの飲み水も確保できて、一石二鳥ってやつだ。 >一面雪景色 たしかにこういう場所だと位置感覚が活躍しそうだぜ。 視界も悪いって話だし、吹雪になってんのかもな。 はぐれないようにみんなロープで体を縛っておくか? >防寒 ナベとか煮炊きの道具もあるとよさそうだ。オレはナベ持っていこうかな。 紅茶やココアは体を温めるらしいが、これは道具枠に余裕があったら、って感じだな。 >氷喰鮫 バーネットのウォーターウォーク、助かる! ありがとっ! 状況的にその魔法使うのも、自然な流れだと思うぜ。

  11. サフィラ・アズラク・ヴォルファング

    >一面まっしろ 特に吹雪いた時は上下も分かんなくなるっていうよねっ、位置感覚はあったら便利かもっ! あ、ギャメるんのロープでみんなを繋ぐってアイディアもいいかもっ! >氷の果実 えへへ、褒められた(*´ω`*) っとと、そういえば氷の果実って一個だけなのかなっ?複数あったらまとめて持って帰りたいよねっ >氷喰鮫 あ!それならあたし【捜波・改】もってくよ! 【看破】と併せればサメさん見つけられるかもっ!

  12. エルナ・クルプファルツ

    遅くなりました……! エルヴンシューターのエルナです!皆様よろしくお願いしますね! >氷の果実 水袋にマジカルポケット!いいと思います! これまでの(崎田MS様の)冒険依頼を考えても、本当に氷の果物の可能性もありそうですし! 水袋(大)ならいくつか持って帰れそうですね! >銀世界 位置感覚いいですね!目印少ないと思うので大事になりそうです! >防寒 防寒着に煮炊きの道具!大事ですね! 燃料の確保が難しかったりしそうなので、薪などをあらかじめ持ち込んでおくのもいいのかもですね! >氷喰鮫 真下から襲撃はありそうですね!普通の鮫さんの中にも海底から獲物の真下を狙って弾丸のように襲いかかる鮫さんが実際にいた気がしますし! 確かそうした鮫さんの対策として野生のアザラシさんとかはジグザグに水泳したりするのだとか! 捜波に超聴覚にウォーターウォーク!どれも有効だと思います! 私も捜波準備しますね!

  13. セリオス・オーガスト

    ふむ、では位置感覚は俺が持っていくので、迷わないようロープなどで結ぶなら俺が先頭がいいだろうか あと俺は温度耐性を持っていく予定だ。これと防寒着こめばまあ低温によるマイナスは受けんだろうしな あとは数日かかるとのことだからあれば生活魔法などあれば便利そうだな。火を着けられるし水も出せるしな。 鮫もあれだが鷲も厄介そうだな。一度に最大ということは複数回襲われる可能性があるということだしな。警戒は最大限したほうがよさそうだ

  14. ロゼット

    なら私は汎用スキルを『看破』と『バランス感覚』にしようかな。 氷喰鮫も気づきにくいけど、白銀鷲も羽毛が雪の保護色になってて、 見分けにくそうだから看破で。バランス感覚は雪と氷上の移動用ね。 あと夜を過ごすならランタンと『エンライト』を用意しておくわ。 暖を取るなら焚き火だけど、ランタンなら風雨にも強いかなと。 >魔獣への対応 念のため。基本的には戦闘時は「逃走」で良いのかしら。 牽制に飛び道具とか、何か逃げられない状況とかはともかく。 鷲は複数回(数無限)として、鮫の「×1」も1度に1匹であって 野生の獣なら複数匹での生息は自然なのでしょうし。

  15. トーラ

    なるほど。 食糧とかの荷物を纏めて持ち込んで帰りには氷の菓実を持ち帰る用にマジカルポケットと、生育に適した温度が分かれば持ち運ぶ時に気を付けれると思うので植物共感を持っていきますね。 魔獣は基本逃走でいいと思います。何度も戦って体力を消耗するのも避けたいですし。

  16. バーネット・フォーサイス

    >魔獣 メタ的にみると、白銀鷲に道中何匹と何回遭遇するかは運次第で、 氷喰鮫は湖に到達したら1体が襲い掛かって来るって事だとは思う。 実際にはもっと多数が生息しているんだろうが、さすがに際限なく出てくる事はないと思う。 そのうえで、個人的には撃退を選びたいと思う。 雪原で足元も視界も悪く、そのうえお互いをロープで括り付けている状態だと、 逃げたとしても思う様に動けずに追い付かれそうだし、 それなら迎撃して安全を確保する方が良いんじゃないか? >個人行動 とりあえずマジカルポケットと生活魔法を準備して、 必要物資の持ち込みや野営全般の支援をやろうと思ってる。

  17. ギャメル

    >敵 状況に応じて逃走と撃退を切り替えてみるか? 視界悪かったりロープで身動きとりづらい時は迎撃。 視界良好でロープもつけてない時は逃走。 ってな感じで動くのはどうだ? アザラシってそういう風に泳ぐのかー、勉強になる! エルナは動物好きで物知りなんだな。 そして鮫怖い!! 索敵してくれるみんな、どうもありがとう! 頼りにしてるぜ! >個人の準備 汎用スキルは、採集、超嗅覚を用意しとくぜ。 氷の花や果実はそんなに香りがしねぇってこともありそうだけど、一応な! 道具は、ロープ、ナベ、ココア。 アクションスキルでは回復と魔法攻撃の用意をしてるぜ。

  18. ロゼット

    >魔獣への対応 先に発見できたら迂回、襲撃を受けたら撃退、ぐらいかな。 「撃破」にはこだわらずに、追い払えれば良いぐらいの。

  19. バーネット・フォーサイス

    >敵 ああ、言われてみればギャメルの言う通りだな。 逃げられそうなら逃げる、無理なら倒すで消耗を最小限にする方が良さそうだ。 >野営 そういえば野営中とかは交代で見張りをする感じでいいか? 2人組4交代で見張りをするなら、全員それなりに休めるだろうし。

  20. エルナ・クルプファルツ

    ギャメルさんありがとうございます!索敵も頑張りますね! >敵 逃げられそうなら逃げる、無理そうなら戦う、な感じでより消耗を抑えられる方を選択するという感じで良さそうかなと思います! 倒す倒さないは決め打ちせずにあえて明言しない方が結果的に被害は少なく抑えられそうかなと! >道中&野営 今回も【共通】タグを準備しようと思うのですが、野営中の火って絶やさないようにした方がよいのかな?というところで悩んでいます……! 体温的な意味では火は燃やし続けた方がよい気はするのですが、白銀鷲さんは温度に惹かれてくるみたいなのでどうしようかなと……! 一応、現時点でプレイングに記載しようと思っている分を下に書いておきますね! アドバイス等々頂ければなと……! ↓ 【共通】 ※本タグは以下の2つの内容を示す ・道中は隊列を組んで前後それぞれに前衛を置き、中間に打たれ弱いメンバーを配する。前後左右上下の全方位の視点を分担し警戒。斥候役の捜波を基に戦闘は可能な限り避けて進む ・野営時は冒険者8人から2人一組で1~2時間交代で周囲警戒等の寝ずの番をする。その際必ず火を絶やさないようにする

  21. トーラ

    逃げれそうなら逃げる、無理なら戦う。…ですね。 エレナさんは今回もタグありがとうございます! 野営中の火ですけど、体温を下げないためにも絶やしたくないですね。 白銀鷲はかなり大きい鳥なので、木の枝が繁っていたり、洞窟のような場所を選んで野営すれば入ってこれないと思います。 あと、夜なら目が見えなくて活動してないかもです。

  22. バーネット・フォーサイス

    >野営 可能なら火は絶やしたくないな。 白銀鷲も夜行性とか書かれてないから、夜間は流石に大丈夫だと思うし、 そもそも俺らの体温自体が周辺よりも高いだろうから、焚火をしていなくても察知されそうだ。 どっかに身を隠せるなら一番いいんだろうが、雪原だと障害物も少なくて難しいだろうし、 やるなら雪洞でも作って中に入り込むくらいか?

  23. ロゼット

    >野営 火は付けて良いと思うわ。暖を取るメリットの方が大きいと思う。

  24. ロゼット

    プレイングは提出したわ。【共通】のタグは使わせてもらうわね。 野営中の行動は、ちょっと字数で入らなかったからタグで補完するわ。 それじゃ現地で、よろしくね。

  25. サフィラ・アズラク・ヴォルファング

    にゃ…しばらく顔だししてなかった… 魔獣への対応は了解っ!あくまでも氷の果実が目的だもんねっ! >エレナ 共通タグありがとー!早速使わせてもらうねっ! 火に関しては極寒だし、絶やさない方がいいと思うよっ!

  26. エルナ・クルプファルツ

    皆様ありがとうございます! ではでは【共通】タグについては先に挙げた通りの文面でプレイングに記載しますね! 野営時に風雪を凌ぐ為にも洞窟のような場所があればいいなと思っていましたが、確かに白銀鷲さんの侵入を防ぐのにも良さそうですね! 雪洞もいいと思います!表が雪ですから中で煮炊き等をしても外に温度は漏れないでしょうし!かまくらあったかいですしね!洞窟等の丁度いい野営地が見つからないときには良さそうです!

  27. ギャメル

    プレイング提出完了っと! エルナはタグありがとな。 雪洞作り、いいな! 環境を活かした名案だと思うぜ。 極北への冒険っつー環境的にはハードな依頼ではあるけど、みんなとワイワイ相談できて楽しかったぜ。

  28. トーラ

    行動提出しました。 氷の果実、見付けれるよう頑張りましょう!

  29. サフィラ・アズラク・ヴォルファング

    にゃ!あたしも提出したよっ! あとは現地でがんばろーっ!!

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0