【学乱】魔女の届ける懸想文

空色みなも

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シナリオID:897

オープニング

「ジュエリア君が最近、部に顔を出してくれなくなりました。その理由を聞き出し、できれば彼女がまた部に顔を出してくれるようにして欲しいのです」
 パンクリアース学園、卓上遊戯部の部長リーブス・リテラスは、冒険者たちを前にこのようなことを切り出した。

 冒険者たちはリーブスからの依頼を受け、学舎にある卓上遊戯部の部室を訪れていたのだ。
 部室をぐるりと見回すと、壁に備え付けられた棚に、大きな箱が整然と並んでいる。
 それら一つ一つの箱には、ゲームを遊ぶための小道具が詰め込まれているのだろう。

 そして、ここで名前の出たジュエリア・シャイニーは、卓上遊戯部の副部長を務める女子学生のことだ。
 ジュエリアは最近、部活動に顔を出さなくなった代わりに、今まで縁の薄かったはずの学生とつるんでいるのを目撃されているのだとか。
 そうした学生が睨みをきかせているため、リーブスたち卓上遊戯部部員では、どうにも声をかけづらい状況が出来上がっているらしい。

「シャイニー先輩は普段、部活動でとても楽しそうにされてました……きっと、何か事情があるに違いありません。どうか、お願いします」
 卓上遊戯部もう一人の部員であるハンデルス・トレイダーも、冒険者たちに深々と頭を下げた。

●
「そうですか、部長……いえ、リテラスさんが貴方たちに依頼を」
 学内で冒険者たちが見つけたジュエリアは、話を聞いて複雑そうな表情を見せていた。

「私も故あってこうしている以上、はいそうですか、と簡単に話すわけにもいかないのです」
 ジュエリアは表情から内心を悟られまいとしてか、顔を伏す。

「では、こうしましょう。ここは一つ、賭けをしませんか?」
 そこでジュエリアは、いいことを思いついたとでも言いだしそうな様子で、冒険者たちに提案した。

「私とゲームで勝負しましょう。負けた方は、勝った方のお願いを一つ、聞くということでいかがです?」
 ジュエリアの行なった提案とは、卓上遊戯による勝負であった――。

●
「勝負の難しさはともかく、ゲームのルール自体はシンプルです」
 そう言って、ジュエリアはマットと何枚かのカードを教室の机に広げた。
 マットには星空を模した模様が広がっており、カードを並べる場所が何列か備わっていた。

「このゲームにおいて、四人のプレイヤーは白の魔女から一通の手紙を預かった、四色の魔女になります」
 なるほど、集まった冒険者たちにジュエリアから配られたカードには、青、緑、黄、赤の魔女が描かれていた。

「白の魔女は、想い人に手紙を届けてもらおうと、空飛ぶ魔法を操る四色の魔女に依頼したのです」
 ジュエリアは説明しながらも手を動かして盤面をセッティングしていき、各色の魔女を表すカードがマットの上にも一枚ずつ並ぶ。

「しかし、それを快く思わない存在が私……黒の魔女です」
 宣言とともにジュエリアがマットに置いたカードには、黒装束をまとった魔女の姿が描かれていた。

「貴方たちは四色の魔女になって、黒の魔女の妨害に負けずに手紙を届けるか、あるいは安心して手紙を届けられるように黒の魔女を倒してください」
 これがジュエリアの語ったゲームのストーリーとなる。

 この後に続いた、ルールの説明を要約しよう。
 まず、四色の魔女側は、どの魔女が手紙を隠し持つか決定し、それを示すカードを場に伏せておく。
 黒の魔女は、ゲーム終了まで誰が手紙を隠し持っているか、知ることはできない。

 四色の魔女の勝利条件は、二通りある。
 その一、手紙を隠し持った魔女をスタートから6以上進めて届け先までゴールさせること。
 その二、黒の魔女に10以上のダメージを与えて倒すこと。
 このうち、どちらかを制限時間である6ラウンド内に達成すれば、四色の魔女側の勝利。
 逆に、達成させなければ黒の魔女の勝利となる。

「四色の魔女が各ラウンドで出来ることは、手札からカードを一枚、伏せて出すことです」
 そうしてジュエリアが見せた7枚のカード。
 その内訳は『移動1』が3枚、『移動2』が2枚、『攻撃1』と『攻撃2』が各1枚ずつ。
 四色の魔女はそれぞれが、最初にこの内訳通りのカードを7枚の手札として持つらしい。

 『移動1』『移動2』のカードを出せば、カードを出した色の魔女は数字分だけゴールへ向かい進む。
 『攻撃1』『攻撃2』のカードを出せば、数字分だけ黒の魔女にダメージを与える。

 一度出したカードは、手札には戻ってこず、使い切りとなる。
 四人分のカードが伏せられたところでカードを公開し、解決した効果で勝利条件を達成することを目指すのだが――。

「もちろん、黒の魔女もそれを簡単には許しません」
 ジュエリアによると、黒の魔女は各ラウンドごとに四色の魔女を一人、妨害できるらしい。
 伏せられたカードを公開する前に、黒の魔女は四色の魔女を一人指定し、指定された魔女がそのラウンド出していたカードの効果は無効となるのだ。

 加えて、手札は7枚で、制限時間は6ラウンドと説明されたが、手札のうち1枚は最初に使用され、効果を解決した状態でゲームを開始するのだとか。
 その手札は色ごとに異なり、青の魔女は『移動1』、緑の魔女は『移動2』、黄の魔女は『攻撃1』、赤の魔女は『攻撃2』を最初に出している。
 その効果は解決されているので、青の魔女と緑の魔女はそれぞれゴールに1と2だけ近づき、黒の魔女は最初に3ダメージを与えられた状態で開始することになる。

 なお、四色の魔女どうしの方針相談はゲーム開始前のみで、ゲームが開始してからの相談は禁止らしい。

「ゲームのルールとしてはこれだけです。あ、あと勿論、お互い野暮な真似はよしましょうね。私も授恵者なので、そうしたことは分かります」
 ジュエリアの使える能力には、思念による会話を妨害できるものもあるらしく、それを考えるとこっそり相談しながら手を進める、ということも難しそうだ。

「さて、どうでしょう? この勝負……受けて頂けますか?」
 物腰こそ丁寧ではあったが、ジュエリアの瞳には挑発的な色が宿っているように見えた。

解説

●目的  ジュエリアを卓上遊戯部に連れ戻すため、ジュエリアの仕掛けたゲームに皆さんで挑戦してください。  また、そのうえでジュエリアが卓上遊戯部に禍根なく戻れるように話し合ってください。 ●人物  ▽リーブス・リテラス  学園の六年生男子で、卓上遊戯部の現部長。  実家は王族派の貴族。  最近、部活動に顔を出さなくなったジュエリアを連れ戻したい。  ▽ジュエリア・シャイニー  学園の五年生女子で、卓上遊戯部の副部長。  実家は貴族派の貴族。  他の貴族派生徒に何かを吹き込まれ、最近、行動を共にしているようだ。  ▽ハンデルス・トレイダー  学園の三年生男子で、卓上遊戯部の部員。  実家は平民だが、貴族の推薦を得て学園に入学した。 ●プレイングに関して  プレイヤーキャラクターはそれぞれ担当する魔女を【青の魔女】【緑の魔女】【黄の魔女】【赤の魔女】のタグで記載してください。  それぞれの魔女は、四人のプレイヤーキャラクターに一対一で対応するように分配されます。  また、魔女に手紙を持たせるプレイヤーキャラクターは【手紙】のタグをプレイングに記載してください。これは全体で一人までです。  もしこれらのタグの記載に全体で齟齬がある場合、齟齬が生まれた部分はランダムで担当を決定します。  プレイングには、プレイヤーキャラクターの行動の他、ゲームに挑戦する際の行動指針を書いてください。  最大で六ラウンドある中、カードを出す順番を固定で書いても構いませんし、状況に応じた判断基準を書いてくださっても構いません。  ただし、その判断基準から一意に行動を決定できない場合や、とれない行動をとろうとしていた場合、プレイヤーキャラクターがとる行動はランダムとなりますのでご了承ください。  使った手札は戻ってこないことと、7枚の手札のうち、魔女の色に応じたカードが最初に1枚使われていることにご注意ください。  白紙プレイングは、ジュエリアのゲームに参加しなかったことになります。  その場合、必要に応じてNPCが欠員を補充します。  NPCが入った場合、行動はランダムとなります。 ●補足  ジュエリアは盤面と各魔女に残された手札を見ながら、あらかじめマスターが組んだ法則に従って、妨害する魔女を決定します。

マスターより

 お世話になっております、空色みなもです。  このたび、連動【学乱】に参加させて頂きました。  みなさんの思いは、悩める女子学生に届くのか?  神の一手となりうる皆さんのプレイングをお待ちしております。

リプレイ

●
「この勝負……受けて頂けますか?」
 教室の長机を挟んで、ジュエリア・シャイニーは四人の冒険者たちと対峙していた。

「ええ、もちろんです」
 挑戦を受けて真っ先に力強く頷いたのは、ルアンナ・ミュラー。
(ジュエリアさん、一体どうしちゃったんでしょう。表立って派閥争いが激しくなっているのと関係が……?)
 ルアンナ自身、卓上遊戯部の関係者であり、ジュエリアのことを強く案じていた。
 ジュエリアが部活動を離れた理由をすぐにでも問いただしたいのはやまやまであるが、ジュエリアはその点については固く口を閉ざしている。
 まるでジュエリアとの間に横たわる長机が、そのままジュエリアが張り巡らせている心の壁であるかのように感じられた。
 まずはこの挑戦を受けることを通して、ジュエリアとの間の壁を取り除く必要があるだろう。

(どこもかしこも今回の件でいざこざが絶えませんね。大人の都合に振り回されるのはどこも変わりませんか)
 ヴィルヘルミナも学園に籍を置いている身であり、学園が王党派と貴族派の政争の舞台とされつつあるのを、肌で感じていた。
(勝ったら一つだけ、ということでしたが、どうしましょうか。卓上遊戯部に戻ってくれと言って戻れるなら、こんなことになっていないわけで)
 ならば、こうなった経緯を聞き出して、それを解決する必要があるだろう――ヴィルヘルミナは思案する。
(とはいえ、まずは勝たないことには始まりませんね)
 捕らぬ狸の皮算用、となってもいけないと、ヴィルヘルミナは目の前の勝負に意識を向けた。

(負けたら何をさせられるんでしょうか……学生とはいえ、相手は貴族ですし……)
 勝負に賭ける内容を聞いたリディリディ・トゥラ・イェレミースは、胡乱な目つきでジュエリアを見ていた。
 内向的なエルフであるリディリディにとっては、相手が貴族というだけで何となく怪しく感じられてしまうものらしい。
(くらぶかつどう、でしたか……大森林で暮らしていた私には縁のないものでしたが、それは本来、誰がどういう理由で辞めてしまってもいいものだとは思います)
 リディリディは対面に座るジュエリアにチラチラと目を向けながら、様子を観察する。
(……とはいえ、楽しそうに打ち込んでいたものを急にやめたり、取り巻く人間が変わるというのは確かに何か事情がありそうですね)
 それでは周囲の人々が心配するのも当然というのは、心の機微に疎いほうであるリディリディも理解していたようだった。

「卓上遊戯か、おもしれえじゃねェか。どっちが勝っても負けても恨みっこなしだ」
 根っからのギャンブル好きであるヴァンゲルス・ロッドは、ジュエリアが賭けを持ちかけたことを面白がるように笑ってみせた。
「俺のことはヴァンとでも呼んでくれ。さて、嬢ちゃん――ジュエリア、つったか」
 しかしそこでヴァンゲルスはジュエリアを見て、スッと目を尖らせる。
「どんな事情があるか知らねぇが、お前さんが負けたときには、素直に戻ってくるんだな」
「ええ、私が言い出したことですから……約束は守ります。では、ゲームを始めますよ」
 勝負師の目つきで眺めてくるヴァンゲルスに対し、ジュエリアは物怖じすることなく遊戯の開始を宣言したのだった。

●
「では1ラウンド目です。皆さん、このラウンドに出したいカードを伏せてください」
 ジュエリアの促しを受け、四人の冒険者たちは手札として持った6枚のカードからそれぞれ1枚を選び、裏向きで差し出した。

「さぁて、やるとするかね」
 ヴァンゲルスが伏せたカードの裏面は、黄色で彩られていた。
 つまり、ヴァンゲルスが担当するのは黄の魔女。
 その目前には、すでに『攻撃1』の札が表向きで公開されている。

「私はこれで」
 ルアンナが出したカードは赤の色彩を放っており、ルアンナが赤の魔女を動かすことを示している。
 そのため『攻撃2』の札はすでに使用済みの状態だ。

「えっと……これを」
 おずおずとリディリディがテーブルに置いたカードの色は、青。
 このゲームにおいて、リディリディは青の魔女である。
 その特徴として『移動1』のうち1枚が、すでに効果を発揮した状態となっている。

「こちらでお願いします」
 泰然自若とした様子で、ヴィルヘルミナは緑のカードを配置する。
 残った緑の魔女はヴィルヘルミナが担当していた、というわけだ。
 緑の魔女は『移動2』のうち1枚があらかじめ場に出ているため、頭一つ分、抜け出した状態からのスタートとなる。

「揃いましたね。では、私が妨害するのは……」
 そして黒の魔女となったジュエリアは、伏せられた色とりどりのカードを眺めまわす。
「こちらです」
 ジュエリアが指差したカードは、青色をしていた。
「……私、ですか」
 指名されたリディリディは、裏向きに置いていた青のカードをひっくり返す。
 そこには『移動1』を表す絵柄が描かれていた。

「では、私たちもオープンしますね」
 ルアンナの掛け声とともに、一斉に開かれた残りのカード。
 それらは全て『移動1』を表していた。
「なるほど……まずは様子見といったところですか。ですがこのゲーム、手札の傾向が分かったここからが本番ですよ」
 青の魔女を除いた赤黄緑の魔女がゴールに向けて1マスずつ夜空を進むのを眺めながら、ジュエリアが目を光らせた。

●
「2ラウンド目、揃いましたね? では――私は青の魔女を妨害します」
「またですか……」
 ジュエリアの宣言に合わせてリディリディが公開したカードは、またも『移動1』であった。
 これで、リディリディの操る青の魔女は、移動を2マス分、妨害されたことになる。

 さて、このゲームにおいて四色の魔女側の勝利条件の一つは、手紙を持った魔女を6マス以上進めることにある。
 そして、各魔女が手札で移動することのできる最大値は7である。
 つまり、仮に青の魔女が手紙を持っていたとしたら、制限時間内に手紙を届けることはすでに不可能となっている――。

「……ですが、戦意は失われていないようですね。たとえ青の魔女が手紙を持っていたとしても、まだ攻撃により黒の魔女を撃破もできるので、当然でしょうけど」
 ジュエリアは油断なく、冒険者たちの様子に目を配っているようだった。
「ほう、妨害する相手を固めてきたか。なかなかいい手だな、嬢ちゃん。だがな、そう簡単にゃ勝たせねぇぜ」
 ヴァンゲルスはニヤりと笑いながら『移動2』のカードをオープンする。

 ヴィルヘルミナが公開した緑のカードも同じく『移動2』を表しており、ルアンナが出していた赤のカードは『移動1』であった。
 これで、スタートから移動した距離は、青が1、緑が5、黄が3、赤が2と、緑の魔女がゴールにリーチをかけることになった――。

●
「3ラウンド目の妨害は、そうですね――」
「流石に、ゴールを見逃しては貰えないようですね」
 ここにきて迷うような様子を見せたジュエリアであったが、リーチのかかった魔女を無視することはできなかったのか、緑の魔女を指名していた。
 指名を受けたヴィルヘルミナが緑のカードの表を見せると、そこに描かれていた図案は『移動1』のものであった。

「だが、ここで俺もリーチだ。どうするよ、嬢ちゃん?」
 ヴァンゲルスは先程に続いて再び『移動2』を出していたのだ。
 これにより黄の魔女もスタートから5マス進んだ状態になり、二人の魔女が同時にリーチをかけることになった。

「それに、そろそろ攻撃も無視させませんよ」
「ゴールできなくても……やれることは残っています、から」
 そしてルアンナとリディリディが『攻撃1』を出したことにより、黒の魔女が傷を負う。
 星空のマットに置かれた、黒の魔女が受けたダメージを表すカードが5を示す位置まで進められ、これにより次のラウンドで黒の魔女が倒される可能性も生まれる。
 黒の魔女は、四色の魔女により難しい選択を迫られていた――。

●
「もうすぐゴールか。だが、こんな時こそ気を抜かずに行かねぇと。調子のいいときこそ慎重に、ってな」
 ゴールを目前にしたヴァンゲルスが、黄色のカードを場に伏せながら、ジュエリアに挑戦的な視線を向ける。

「4ラウンド目、私が妨害するのは――」
「私のほうにきましたか」
 ジュエリアが指し示したのは、緑のカードであった。
 ヴィルヘルミナのカードには『攻撃1』が描かれており、黒の魔女へのダメージが防がれたことになる。

「そしてヴァンさん、でしたか。黄の魔女は――」
「ああ、これでゴールだ」
 ヴァンゲルスは『移動1』を出し、黄の魔女をゴールまで運んでいた。
「手紙は――」
「ここにきて隠す理由もねぇな。俺は手紙を持ってねぇよ、よく見抜いたな。しかし、勝負はまだ終わっちゃいねぇぞ」
 息を飲んだジュエリアに対し、ヴァンゲルスは肩をすくめてみせる。

「私もここから追い上げていきますよ」
「まだ私は攻撃の可能性を残してます……さあ、どうしますか……」
 その横で、ルアンナとリディリディが『移動2』を公開し、マット上に置かれていたカードを2マス分ずつ進めていた。
 これで『移動2』を残してスタートから4マス進んだ赤の魔女にも、ゴールの可能性が生まれる。
 ゲームはまさに佳境を迎えていた――。

●
「5ラウンド目――妨害は緑の魔女です」
「赤の魔女が追い上げている中、私のことを狙い続けるのは――これのせいですね?」
 ジュエリアの指名を受け、ヴィルヘルミナが公開したカードには『攻撃2』のイラストが描かれていた。
 攻撃により黒の魔女が倒される可能性がある状況において、ジュエリアは『攻撃2』を残している緑の魔女を無視できなかったのだ。
 そして累計3ダメージ分の攻撃が妨害されたため、黒の魔女が倒れる可能性もこれで無くなったことになる。
 黒の魔女を倒すためには10ダメージが必要な中、攻撃のリソースは12しかないからだ。
 するとあとは――。

「私もゴール目前ですよ。さあ、最後の勝負です――!」
「ええ、答え合わせと参りましょう」
 赤の魔女を『移動1』により5マス目まで進めたルアンナに、ジュエリアは鋭い視線を向けた。

●
 6ラウンド目、もはや各プレイヤーに手札は1枚ずつしか残されていないため、出すカードは分かっている。
 先程の5ラウンド目に『攻撃2』を出していた青の魔女は『移動2』だが、もはや青の魔女はゴールに届かない。
 そして『移動1』を出していた黄の魔女が残すのは『攻撃2』であるが、黒の魔女が攻撃により倒れる可能性は、もはやない。
 すると『移動1』を残す緑の魔女か『移動2』を残す赤の魔女、どちらのゴールを妨害するかの二択となる。

「私が妨害するのは――!」
 意を決したように、ジュエリアが一枚のカードを指差した。
 指の先には――緑色のカード。

「では、手紙を持っていた魔女を公開します」
 それを受け、ゲームの最初に場に伏せた、裏面に手紙を描いたカードを表にするルアンナ。
 そのカードには、赤の魔女が描かれていた――。

●
「悪ぃな、俺たちも負けるわけにゃいかないモンでね」
「ええ、私の完敗でした。約束は約束です、何なりとお申し付けください」
 ヴァンゲルスの言葉に、ジュエリアは勝負に敗れたことに落ち込んだ気配もなく、凛とした様子で答えた。

「少なくとも、事情は話してください……私たちに、というより……リテラスさんへ」
「そうだな、もし今はまだ戻れねえっつうならなおのこと、ワケだけでも説明してやる必要があるンじゃねえかねぇ」
 リディリディによる提言に、ヴァンゲルスもうんうんと頷いてみせる。

「……私を無理に連れ戻そうとされないのですね。勝負の約束なのですから、そうおっしゃっても許されるでしょうに」
「あなたにも事情があるのでしょう? であれば、それを解決して差し上げないことには、戻るに戻れないのではありませんか?」
 目を丸くするジュエリアを、ヴィルヘルミナが諭した。

「私の思った通り、あなた方になら託すことができそうですね――」
「こう言ってはなんですが、ジュエリアさんはゲームを通して、私たちを見極めようとしていたのではないですか?」
 ジュエリアが漏らした言葉に、ルアンナが尋ねかける。
「ええ、失礼を承知で――試すような真似をして、申し訳ありませんでした」
 そう言って、ジュエリアは頭を下げた。

「タイミング的に、発端は新学園長の一言、なのでしょうけど」
「あなた方に隠し事は通用しませんね――その通りです」
 ヴィルヘルミナが述べた推測を、ジュエリアが頷いて肯定する。

「それで、他の貴族派からどのようなアプローチを受けたのですか?」
「それが――」
 ヴィルヘルミナの問いにジュエリアが答えたところによると、どうやら一部の貴族派の生徒の間で、王党派の生徒と関わりを持つことを自粛する動きが起こっているらしい。
 その背景には、王党派と親しくすることを快く思わない『家』からの圧力が背景にある生徒もいるらしく。
 このままであれば、王党派であるリーブスと親しくするジュエリアも、その影響を免れないであろうと警告が及んだというのだ。

「私の家はもともと王党派が部長を務める部活動に私が所属することを歓迎していなかったので……私が無理を通せば、学業への支援を打ち切られる可能性も考えられます」
 そこで、ジュエリアは初めてうなだれて、悩んでいる様子を明かす。

「卓上遊戯部は地位も種族も立場も関係なく、誰でも気軽に遊戯を楽しめる場所ですよねと、リーブスさんに再確認しました」
 ルアンナが自らの胸に拳をあて、しっかりとジュエリアを見据えながら語る。
「そこに派閥争いなんて持ち込ませませんよ、私たちが。そんなものがあったら、せっかくのゲームが楽しめなくなるでしょう?」
「ありがとうございます。私たちパンクリアースの学生が、気兼ねなく学び、共に卓上遊戯を遊べる場を手に入れられるように、あなた方の力をお借りできますか?」
 ルアンナがジュエリアと目を合わせて言い切ったのを受け、ジュエリアが頭を下げたので、冒険者たちは力強く首肯した。

「あ、そういえばヴィルヘルミナさんも学園の聴講生ですよね? ゲームの楽しさを知ったところで、卓上遊戯部はいかがですか?」
 事件がひとまずの進展をみせたところで、ルアンナがちゃっかり部活動の勧誘を始めたものだから、場は和やかな笑いに包まれた。

 その後、ジュエリアはリーブスたち卓上遊戯部の部員たちと会い、同様に自らが置かれた事情を話し、今後もジュエリアが部活動を続けていく道を一緒に模索することになった。
 冒険者たちは四色の魔女として、無事にリーブスたちの気持ちをジュエリアへと送り、そしてまた、ジュエリアの事情をリーブスたちへと届けることで、卓上遊戯部とジュエリアの間を結ぶ懸け橋となったのだった――。

マスターコメント

 お疲れ様でした。空色みなもです。  このたびは当シナリオにご参加頂き、誠にありがとうございました!  手心を加えるでもなく、勝ちにいくつもりでジュエリアの戦術を組んでいましたが、見事に冒険者の方々の勝利となりました。  ゲームの勝敗だけでなく、ジュエリアに温かい言葉をかけて頂いたので、ジュエリアは前に進むことができました。  また皆さんにシナリオ参加して頂けるのを心よりお待ちしておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
ショートシナリオ

ショートシナリオ普通 報酬:標準4 / 4〜4人

2021年05月19日 19時13分09秒 公開

大成功

参加者

相談掲示板

  1. ヴィルヘルミナ

    ヴィルヘルミナです。とりあえず流れる可能性が高そうですが参加させて頂きました。 徒労に終わりそうですが、もしかしたら誰か来るかもしれませんしね。 私は【緑の魔女】にしておきます。もし成立しても遊戯の作戦も、話し合いの内容も詰める暇がないので好きにやる形になるでしょうが。

  2. ルアンナ・ミュラー

    ヴィルヘルミナさん、ありがとうございます! 私は【赤の魔女】を使いますね。 どうか集まりますように…!

  3. ヴァンゲルス・ロッド

    よっ、邪魔するぜ。シーフのヴァンゲルスだ。ヴァンって呼んでくれ。 後1人くれば成立だな。出発直前だが、誰か入ってくれりゃいいな。 俺は【黄色の魔女】にしとくか。好き勝手やるってことで、承知した。ま、運試しと行こうかね。

  4. ヴァンゲルス・ロッド

    一応仮で行動は送っといた。 もしかしたら依頼自体が流れるかもしれねぇが、成立した場合に備えて【手紙】を誰が持つかだけは先に決めておいた方が良いと思う。 俺は陽動役をやるつもりだ。残るお二人さんのどっちかに【手紙】を託したいんだが、頼めるか?

  5. ルアンナ・ミュラー

    では【手紙】は私が持ちましょう。 移動役ではないと思わせるために最初は攻撃カードを出して、後半に移動カードで巻き返すように動きますね。

  6. No.6

    滑り込みとなってすみません・・・。 リディリディと言います、よろしくお願いします。 えっと、私は残る「青の魔女」を担当させてもらいます。

  7. ヴァンゲルス・ロッド

    お、成立したか。良かったな、ルアンナの嬢ちゃん。手紙も助かる、お前さんに任せた。 リディリディもよろしくな。 ほぼぶっつけ本番にはなっちまうが、お互いベストを尽くそう。

  8. ルアンナ・ミュラー

    成立しましたね! 参加して下さり、本当にありがとうございます!!

  9. ヴィルヘルミナ

    締め切り間近ですが、成立ですね。お互い頑張りましょう。

  10. No.10

    参入が遅くなってしまったので、細かな打ち合わせをする時間はありませんね。 私は序盤に移動を行っておきます。 シャイニーさんの目を引き付けられるかどうかは不明ですが。

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0