【学乱】賢いふりも楽じゃない
馬車猪
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シナリオID:890
オープニング
食堂にシリアスな声が響く。
「私達は追い詰められているわ」
チキンスープを音を立てずに一口。
「1つめの原因は帝国の崩壊。対帝国の戦力がフリーになった」
新鮮野菜と茹でササミのサラダもなかなかだ。
「2つめは冒険者ギルド。増加した授恵者の取り込みは王家が一番成功している」
チキンのクリーム煮は疲れた体に染み渡る。
「3つめは旧帝国領への出兵の不許可。これで貴族派貴族の領地拡大が困難になった」
お酒はまだ早いのでオレンジジュースだ。
「4つめは学園の解放路線ね。時間が経てば経つほど知識と人材の独占が崩れるわ」
話している最中もテーブルマナーに乱れはない。
「座視した場合、貴族派に属する貴族は将来解体されてしまうでしょうね」
リーラント伯爵家令嬢セニアーラ・リーラントは、唇にわずかについたソースをテーブルナプキンで拭き取った。
(ねえちょっといきなりなんでこんな話になったの?)
(知りませんわよっ。私は王党派のあの子が最近増長してると言っただけで)
(王党派ディスるんじゃなくて王家批判じゃないんですかこれ。やだかえりたい)
伯爵家の人間に挨拶に来た子爵家や男爵家の下級生達が青い顔になっている。
「ごめんなさいね。この程度の話は貴女達もそれぞれの実家で教えられているでしょうけど、話の前提を確認しておきたくて」
(セニアーラ様何言ってるの?)
(だから知りませんわよっ)
(がくえんこわい。おうちかえりたい)
こんな状況でも4人の令嬢達が上品に食事しているようにしか見えない。
実家での教育が想像出来る光景だ。
「貴族派同士出来るだけ揉めないようにしましょう、と言っているの」
座学では劣等生のはずのセニャが、学園を支配する黒幕に見える。
「それと」
うっすらと浮かんだ笑みが怖い。
「王家や王党派に今の話を注進しても構わないわ」
私がこんなことを言っていたと信じて貰えたら良いわねと、セニャは上品に微笑んでいた。
●ネタばらし
(あの子達帰ったかしら?)
(後少しお待ち下さい。今貴族用の玄関を出ました……はい、もう大丈夫です)
テレパスの返信を聞き終えた直後、セニャは大きな息を吐いて背もたれに体重を預ける。
長台詞を復唱するのは予想以上に大変だった。
(お疲れ様ですお嬢様。今回はとちらず言えましたね)
貴族娘3人を玄関まで送っていった腹心が戻ってくる。
(私は本番に強いの。……冗談よ。普段以上の仕事を任せてしまったわね)
(いえ、暗記は苦手ではないですし)
腹心はセニャの元へは向かわず、かけっこ部(仮)貴族用部室のお世話係に復帰する。
セニャのシリアス顔とその崩壊にびっくりしていた女生徒達が、用意された爽やかな香りに気付いて我に返る。
「冗談が効き過ぎてしまったようです」
そういうことにした。
肥満寸前の貴族生徒が外から見えない中庭で歩くのを再開し、筋肉をつけたい貴族生徒が黙々と鶏肉料理を食べ始める。
(あの方達驚いてましたね。普段のお嬢様は絶対に言わない内容ですし)
(お兄様の受け売りだからね。言葉遣いは貴方に変えてもらったけど)
セニャは小さいとはいえ自身の城である部室を眺める。
教室の部室を手放した代わりに手に入れた、元は小さな食堂だった建物。
内装はセニャの私物ばかりであり、新たに投じた資金はさほど多くない。
(本当に面倒だわ)
感情が隠せていない。
(王家は上から抑えつけようとするし王党派は邪魔だし貴族派は足の引っ張り合いだし、うちを守るためにここでさっきみたいな謀略を使わざるを得ないし。うんざりよ)
リーラント家は伯爵だ。
貴族としては高位でも、王家や侯爵家などと比べると吹けば飛ぶような小勢力だ。
だからセニャは、貴族派貴族子女の危機感を煽る。
最初は子供同士の争いでも、不利になれば親が介入するのもよくあることだ。
子供が名誉を失いかけていても不介入を貫ける親は、そう多くはない。
(ああ言っておけば、少なくとも王党派に取り込まれることはないはずよ)
(脅かしすぎの気もしますけど。ところでお嬢様)
(何?)
セニャは立ち上がり、身の丈ほどもある三面鏡の前に立つ。
「また育ったかしら」
鞘に入ったままの細剣を構え、回避と斬撃の動作を低速で行うことで乱れがないか確かめる。
戦士としてのセニャは回避に全てを賭けているタイプなので、体の成長に伴う乱れを常に修正し続けないと戦闘力が激減するのだ。
(御当主様の言葉はどの程度正しいのでしょうか)
(それを調べるのも私達の仕事ね。お兄様も偽情報を掴まされたかもと心配していたわ。全て正しいかもしれないのもタチが悪い。……うちには選択に失敗した後挽回する余力なんてないから責任重大よ)
自身の構えを確認するセニャは、傲岸不遜な貴族令嬢に戻っていた。
●匿名依頼
「皆さんお疲れ様です」
冒険者ギルド職員はかけっこ部(仮)の平民用部室で遅い昼食中だ。
使われなくなった小食堂を借り上げたもので、出される料理はリーラント領産鶏肉を使ったもの。
貴族用部室との違いは中庭の有無と料理の内容である。
「今回の依頼は依頼人を詮索しないことが条件になります」
場所を見ればばればれでも形式は大事ということだ。
「依頼内容はかけっこ部(仮)の手伝いです」
学園に広く受け容れられる名称の提案と決定。
かけっこのための訓練メニューの考案。
部員に出す鶏料理のコストを下げるための工夫に、リーラント領産鶏肉の知名度向上工作。
全てを行う必要はないとはいえ、なすべきことは多数だ。
「そして」
学園で個人的な目的のためにも動いて良い。
依頼人は協力はしないが見て見ぬふりはしてくれる。
職員はそう説明した後、表面上は変わらず目だけを真剣にする。
「おそらくすぐには結果は出ないでしょうが、成功すれば大きな変化を起こせるかもしれませんね」
猛烈な勢いで皿を空にする生徒達を、静かに観察していた。
解説
マスターより
リプレイ
議論は白熱していた。
「『健康運動部』を推します」
ドローミの熱意は勢いではなく論理の緻密さに現れる。
「本当は『陸上部』でもいいのですが、幅広く身体を動かす意味と現在名称だと目的が判り難く、一部の方にとっては不都合という問題があります」
貴族用の部室の奥から興味深そうな目が向けられる。
皆ふっくらしているのは偶然ではない。
(健康を前に出して、公や侯の令嬢方を取り込みましょう)
最後の言葉はセニャと冒険者にしか聞こえないよう小声だった。
なお、セニャはまだかけっこ部(仮)にこだわっている。
「ボクもかけっこ好きだしいい名前だと思うよ~。お貴族さま学校の部活名としてはちょっとゆる~い……かも?」
アルマ・ヴァレンタインは間接的に否定する説得術を使う。
「通称とかならいいんじゃないかなー」
逃げ道を示すことで誘導する、定番なやり方であった。
リディリディ・トゥラ・イェレミースは議論の輪に入れない以前に、議論の場に近付けない。
悪い面で強引なセニャに話しかけるには精神力が足りず、もごもごと口籠もって足踏みしている。
そんな彼女は、いつの間にか高位貴族の令嬢達に囲まれ半ば無意識にご馳走になっていた。
「クラブの名前、活動の趣旨から考えると少し違うなと思います。個人的には良いと思いますけど」
令嬢達はエルフ用の肉料理を追加注文中だ。
「セニャ様の中ではどんなによくても世の方々に通じなければ無意味ですわ」
バンビの言うとおり、くそださ名称なのだ。
「『かけっこ部』あらため、『機動戦術研究部』を提案します」
あまりに無骨な名称だが交渉術の一環である。
「気に入らないのであれば電撃戦部はどうです」
「ブリ……何?」
セニャは混乱している。
貴族を熟す知識はあるが、バンビほどの研究者と比べると知識面では圧倒的に劣る。
「雷嵐?」
超巨大クリーパーに対しシグモル神官が使った超高位の術のことである。
セニャの発音が雑なのは記憶が曖昧だからだ。
「過去の偉業を部名にすることで、かっこよさましまし」
バンビはセニャの状況に気付いた上で押す。今ならセニャの趣味を突き崩せると判断しているからだ。
「セニアーラ様」
ふっくら令嬢の1人が代表して挙手する。
「活動内容が分かり難い方が助かります」
他のふっくらも同意し、エルフもつられてうなずいている。
自身と同格かそれ以上の令嬢達と、表現し辛い関係であるエルフに要請されたセニャは、渋々ではあるが趣味を取り下げることに同意した。
●
エルフが拳を握りしめて無言で気合いを入れた。
ふっくら達は姉や母の目線で応援している。
「訓練方法ですが、活動の趣旨からすると……」
痩せるのと走力向上に目的を限定しても足りないものが多すぎると主張する。その際、ふっくらを物理的に盾にしていた。
「物とお金に余裕があるのであれば、防具を装備したまま走った方が良いでしょうね」
その瞬間、ふっくら達は笑みはそのままに気配だけを鋭くする。
「エルフらしい方ね」
暗殺は貴族間抗争の花。
防具を来た上での移動速度は非常に重要だ。
エルフが顧問の必要性について述べたとき、令嬢達は全面的に協力すると自身の名と家を告げ確約した。
「戦術研究に役立つかは分かりませんが、一般人がクラブ活動に参加することでどれほど動けるようになるのかを継続的に計測するのはどうでしょうか」
ノックス・マグナが長期的目標に偏った議論を短期的目標に引き戻す。
「これはダイエットの効果測定にも有効でしょう」
セニャの表情変化がわずかに不自然になる。
テレパスによる助言が行われたのだ。
「貴族用の測定機器は早めに……秘密裏に運び込ませるわ」
またお金がかかるわねという表情変化に気付いたのは冒険者達だけだ。
「第2ダンジョン部の報告書を見てきましたが、部員方の基本的な身体の動かし方が未熟な印象です。此方でも柔軟体操と受け身の取り方に取り組みましょう」
ドローミも具体的な案を出す。
これにはセニャが反応するより速く令嬢達から少数いる貴族子息に向けられる。
実家の力や本人の影響力とは関係なく体の頑丈さが違うので男が優先にならざるを得ない。
「固いですね」
柔らかな芝生の上に座らせ背を押したドローミが驚愕するほど、運動不足が極まっていた。
「最初は前屈や開脚前屈を目指しましょう。次に……いえ、最終的に受け身をとれるようになれば事故やそれ以外の脅威が減ります」
ドローミは学園教師の苦労を実感出来てしまい、思わずため息をついてしまいそうになる。
「運動終了時には温めたミルクをお勧めします。疲労が早く取れますよ」
細かい点はメイドがメモに残しつつ実物を用意していた。
「ふむ……友人の推し売りなのですが、『罰ゲーム付きの鬼ごっこ』を本気でやってみるのはどうでしょうか?」
セロンガード・シュタインドルフの提案が行われた直後、令嬢と貴族子息の間で熾烈な神経戦が行われる。
これは政治でも抗争でもなく学園生活だ。
貴族としてはともかく、学生としては雑魚なセニャに割って入る能力はない。
結局、激しい運動は平民部員に対して大盛り鶏肉料理を報酬に試験的に行われることになる。
「移動速度や持久力の他に判断力と瞬発力も程よく鍛えられます。あ、私はもう2度と参加したくないです」
セロンガードは監督し、記録し、手応えを掴む。
宣言通りに監督に徹する、見事な鬼教官っぷりであった。
●
「この前のオーガ退治でも協力してもらえたから、できることでお手伝いにー、というつもりだったんだけど」
アルマは帳簿に目を通して肩を落とす。
「知名度のない鶏肉を供給だけ太くしてもそりゃダブつくよね、というか……武家だからかそういうの苦手……?」
「領内の商家にとっても初めての試みなのです」
メイドはセニャの腹心としての態度で応えている。
代官の娘でもあるので領内の事情に詳しく、アルマの質問にも即座に回答が行われる。
「一般的に生肉輸送は現実的ではありません。信用を考えると、燻製肉にリーラントの焼印を入れて売る……」
ドローミが珍しく言葉を濁す。
「輸送費で利益が消える気がします」
メイドは無言でうなずき同意する。
「例えば高名な冒険者や授恵者に公的なコメントを貰う、冒険者に口コミを頼む等、味以外での付加価値の付与するのはどうです。特に大陸中を渡る冒険者の口コミは冒険者ギルドや商業ギルドへの宣伝にも効果的かもしれませんよ」
キーゼの提案は現実的だ。
しかしセニャの関係者には受け容れ辛い。
一部にうまくやっている職員等もいるが、冒険者ギルドは基本的に王家の影響が強いのだ。
「鶏さんの餌に香草や香辛料を加えてお肉の臭みを抑えた『リーラント産ハーブ鶏』なんてどうかな?」
アルマの見た目は種族的特徴以上に愛らしいが、言動は専門家のそれだ。
「手間はかかるけど鶏さんも元気に育って肉やタマゴの質も良くなるのと、鶏さんだけじゃなく、豚さんや牛さんにも応用が利くからよければ検討してみてね」
具体的なハーブの名と場所を挙げるアルマを見る目が、急激に真剣さを増していく。
「時季や領内で調達しやすいものに違いもあるだろうから、もしやるなら実地にお邪魔させてほしいかも」
「次の便で関係各所へ知らせます」
各組合はおそらく歓迎し、伯爵も組合からの要望を拒絶しないだろうと、メイドはリーランド伯領の幹部候補としての態度で断言した。
「貴族に関わると話が大きくなるよね。セニャさんだからかな?」
「皆さんが能力と実績を兼ね備えた授恵者だからですよ」
メイドは静かに微笑み、一度集中してセニャへ情報を送り始めた。
「じゃ、今日は新メニューでも」
アルマの現在地は厨房だ。
鶏肉は相変わらずたっぷり。
鮮度から判断すると、王都近くで解体してすぐここに運び込んだのだろう。
(鶏ガラもおダシを取ったり、しっかり乾燥させてから粉砕すればいい肥料になるしで余さず使えそう)
ヒューマン女性としては体格の良いメイドをちらりと見て、アルマは料理と平行してリーラント領について想像をめぐらしていた。
「議論を要約すると、リーラント領産鶏肉の需要が高まればよろしいのですね?」
セロンガードの見た目は精悍で礼儀を心得た好青年である。
「でしたら、鶏肉の相場がこれから上がるという情報を市場に流します。さすれば、利益を求めてリーラント領産鶏肉の需要が上がり、比例して知名度が上がるという事です」
メイドは聞き間違えをしたのかもしれないと己の耳を疑う。
「帝国で昔よくやってました。情報戦はお任せくださいませ」
(この人本気で言ってます……ね。王家に雇われた間諜ならこんな言動するわけが……これがこの人の素っ!?)
メイドは、笑顔は保てていても内心激しく動揺していた。
●
「肉で平民を釣る悪徳貴族ですか」
新入部員から噂を聞いたキーゼは、相変わらず表情筋が死んでいるのかと思うぐらい表情の変化に乏しい。
反応を見るつもりで噂を伝えた平民生徒が怯えてしまう。
「そろそろ次のゲームが始まりますよ」
キーゼが親切のつもりで注意を促すと、新入部員は暗いものから目を逸らすように球技に没頭した。
「劇的に変化するのかもしれませんね」
バンビと組んで効率化しただけのつもりが、影響はかなり大きくなりそうだ。
「幽霊部員はどこにでもいるとはいうものの、物資を食いつぶすだけの穀つぶしどもを抱え込んでいては部の名が廃る」
バンビは食事提供時間を限定することで燃料費や人件費を節約させた。
昼ご飯は講義終了後急がねば人が集まりすぎて次の講義に遅れかねない。
そして一定時間内に到達すれば先着10名でおおぶりの鶏肉を1枚料理に追加。
食前の走り混みを自発的に行わせるという、極めて合理的なやり方だ。
バンビの全ては速度を核に成り立っている。
とにかく駆けて駆けて駆けさせるのがバンビの戦略だった。
「戦術、と言っても対人、対軍、対獣、と多岐に渡ります。まずは動ける体を作るのが最優先ですよ」
キーゼが事実だけを口にし部員達を煽る。
いずれ球技の成績も飯に反映されると確信した平民生徒達が、鬼気迫る表情で運動に励む。
「貴方方も指揮の経験を積まれては」
球技は頭も使えるし様々な訓練にもなる。
「私セニアーラ様じゃないので」
残念ながら、激しい球技に忌避感を抱く貴族子弟も多かった。
●
部室周辺で昼寝を楽しむ猫を起こさないよう、抜き足差し足で近づく人影があった。
「午後の便でーす」
おどおどとしているが頑丈な服を盛り上げる筋肉はなかなかだ。
「ネコさんを室内に入れないでください!」
きっ、と睨んでも可愛らしいレイヤ・ダライ=カホールに叱責され、リーラント家から来た授恵者がぺこぺこ頭を下げる。
その足下でにゃぁと哀れっぽく鳴く子猫に対し、レイヤは大好きだからこそ厳しく接する。
「ヒト用の塩辛料理に近づいたら危ないじゃないですか!」
レイヤが厨房に入ってから、基本はお猫様用で塩等を足してヒト用にするようになった。
「今日も質がいいですね」
マジカルポケットで取り出された大型容器の中身を確認する。
肉がどっしりとして非常に食欲をそそる。この場で解体したわけでもないのに鮮度も素晴らしい。
授恵者は嬉しそうだ。
領内の鶏肉産業に誇りを抱いているのかもしれない。
「肝の料理もいけそうです……あ、でも貴族のヒトへの受けはいまいちかも?」
授恵者とは武力でもあるので、授恵者がお届け可能な場所は限られていた。
「気付かないのですか」
退出する授恵者の背中を眺めながら、セロンガードが驚いた口調で言う。
「若手は体力作りとスキルの習得で精一杯よ」
セニャは侮辱とは感じず軽く肩をすくめる。
「焦りすぎではありませんか」
ノックスは感情を込めずに事実を指摘する。
「貴族派が追い詰められているのは帝国の崩壊に端を発した大きな時代の流れによるもの。それに逆らうのは不可能でしょう」
「嫌なことを言うわね」
「王党派の動きとは関係なしに貴族派がいずれ力を失うのは間違いありません。故に貴族派を増やすのではなく、リーラント家として力を付けるのです」
武力も必要だがそれ以上に必要なのは人材だ。
「平民であるからこそ、派閥とは無関係に囲い込める。リーラント嬢の元になら集う人もいるでしょう。すでに一人の平民と親しげに振る舞っているのですから」
最後の台詞を聞いた瞬間、それまで感情を読ませなかったセニャが困惑を表に出してしまう。
「誰のこと?」
(自覚なしですか)
ノックスは冷静に計算する。
セニャは実力者に甘い。
帝国出身のノックスにとってはやりやすい相手だ。
(民を思う気持ちは本物でした。彼女が苦難の道を歩むことがないように協力するつもりではありますが)
力と行動力があって頭が足りない者は、使い捨ての道具にされやすい。
(意味もあまり分かってない状態であれを意味深に実行する流れ、私は嫌いではありません)
同じく帝国出身のセロンガードは、顔には出さず楽しげだった。
「貴族が領地拡大したい気分は解るつもりです。でも帝国領を占領してもたぶん思うほど儲からないです」
レイヤは率直に言葉をぶつけてみることにした。
「王国の土地はとても肥沃なのです。対して山向こうの土地は比較的痩せていて気候も違う、冬も厳しい。植民しても……」
「数十年先なら貴方が正しいと思うわ。私達が気にしているのは数百年後よ」
セニャはレイヤの尻尾に一瞬目を向けるが何も言わない。
お互い、今いる立場も生きてきた経緯も違い過ぎる。現状では衝突にすらならず、すれ違いだ。
「学園の解放路線は……そもそも現状でも貴族には解放され過ぎてます。知識と人材の独占が目的なら、例外なく試験を行いしっかりふるいにかけるべきでしたよね。もう腐ってます、今更時間を気にするなんて冗談にもなりませんよ」
「貴族の立場で言うなら、貴族だけでは頭数が足りないから仕方がなくよ」
忠誠と独立を手段とみるレイヤと、自家存続が生存と尊厳に必須と考えるセニャは、同じ人間なのに別種族じみてかけ離れていた。
「最近は実力主義の芽生えを感じます。帝国出身の私からすれば過ごしやすく嬉しくも思いますが」
ノックスに視線を向けられたセニャは、体制の根本を変えるのに手を貸す気はない目で断言する。
「リーラント家のご令嬢も、大きくなられましたね」
「突然に何を……ああ、忘れて頂戴」
キーゼは普段は動かさない表情を微かに動かす。
「貴族派も獅子身中の虫がいるかと……困った時は、僕達冒険者を存分に利用して下さい」
セニャは無言でキーゼを見ている。
(平民生徒の胃袋を握ることと冒険者へのパイプ作り、読まれているようね)
エルフの反応を見たいという欲を抑えつけ、次も頼むわねというセニャであった。
マスターコメント
ショートシナリオ易しい 報酬:標準8 / 6〜8人
2021年05月21日 18時54分59秒 公開
参加者
- イェレミース トゥラ リディリディ
ノックス・マグナ
アルマ・ヴァレンタイン
ドローミ
レイヤ・ダライ=カホール
バンビ
- キーゼ
セロンガード・シュタインドルフ
相談掲示板
ドローミです、今回も宜しくお願いしますね。 軽食が好評で、何よりです。
レイヤ・ダライ=カホールです、よろしくお願いしますね。 かけっこ部って何なのかと思ってたんですけど…戦闘における移動速度と持久力を鍛える…ほんとにかけっこ部だったんですね。 いろいろすることもありそうですが…まずは、 お猫様をちゃんとお猫様用の食事でもてなしてるのかを聞いておかないと…! 今回は文字数との戦いにもなりそうです…!
アルマだよ、どーぞよろしくー。 今のところは鶏さんの知名度向上をやろうと思ってるよ。
おはようございます。 部の名前は、『健康運動部』で推したいです。 本当は『陸上部』でもいいのですが、幅広く体を動かす余地と『かっけこ部(仮)』ダサい、わかり難いの評への対策。 健康を前に出して、上級爵位令嬢方を取り込みたいです。 異なる案が出るなら、相談したいです。 複数意見を出すと、セニャ殿が惑いますので。 あとは、機動戦闘の無難なプランを提案。 たとえば、シューターに移動5を強いても、一射目が遅れるだけでいいことないとか。 ヒーラーは6へクス後ろで、十分だとかありますし。 鶏のブランド化はお任せでよいですかね? ハラミや手羽中の利用も。
さて、よろしくお願いしますね。 各々考えややりたいことも変わると思いますし、そこまで厳密に打ち合わせは必要ないですかね。今回。 ある意味、それぞれのプレゼン、のようなものですか。 ドローミ氏の起動戦闘のそれも、各自のスタイルや考えがありますから、一概の正解というものもありませんし。 結局あちら側が何を採用するか、でしょうしね
シーフのセニャよ。特に指示とかをする気はないわ。それぞれ好きにして頂戴。
シューターのノックスです。 リーラント嬢やキーゼさんのおっしゃる通り、今回は各々が自由に動けば良いものかと思います。 部の名前についても然りですね。 私としてはリーラント嬢と少しばかり会話をするつもりです。
No.8
リディリディです。 あ、その・・・、よろしくお願いします。 えっと、かけっこというのは走る速度を比べるという感じをうけますので、活動の趣旨とは違っていますね。 今回は私もちょっと自由に動いてみようと思っています。 もしかしたら・・・、リーラントさんと接触するかもしれません・・・。
それぞれ好きにということなのでー… 鶏さんの知名度向上(ハーブ鶏みたいな特徴付け)のほかに、 お料理のほうも手をつけさせてもらうね 名称とかその辺はおまかせに。。
俺も最速且つ自由に行かせてもらいますわね。