マザキヤのキンキンに冷えたヤツ
大和気 いぐる
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シナリオID:842
オープニング
頻繁にパンまつりを開催している、妙な街としても知られている。
名産は小麦をはじめとする麦類、それから作られるパン、そして食器。
豊かで、のん気なこの街に、ひとつの事件が起こった。
●
「おい、なんか、寒くねえか?」
リザードマンの商人が、身震いしながら言った。
マザキヤによく出入りしている隊商だ。
「おかしいな。この辺りは冬でもそんなに冷えないんだが」
マザキヤの気候は比較的温暖だ。
冬でも暖房紋具を身につけたリザードマンの商人が訪れる。
もちろん初夏も近いこの時期なら、問題などないはずだ。
「うー、寒い。どうなってんだ、これ?」
「……なんか、眠くなってきた」
「馬鹿、こんなところで冬眠とか、やめてくれよ」
『チョウダイ』
「ん、今、何かいったか?」
「言ってないぞ。寝ぼけてんのか? 平気か?」
『チョウダイ……』
そして、一気に視界が、白く染まった。
●
「雪の妖精?」
「ええ、そうです」
パン職人組合、陶工組合、通商連合……などなど。
各団体の代表を前に、冒険者ギルド支部長は渋い顔をした。
しぶちょうだけに。
とか、そういうダジャレをかませる雰囲気ではない。
「いいですねえ、こう、響きがキレイじゃないですか」
「詩的ですな」
「のん気なこと言ってる場合ですか。
妖精は、冒険者ギルドの資料では、一応『魔獣』カテゴリなんですよ」
支部長はこめかみをひきつらせた。
「えっ……まじゅ……」
「……マジ? 妖精さんが魔獣? ないわー……」
「なんで、そっちに引いてんですか、アンタら」
いまいち危機感が足りない。
「この間、リザードマンの隊商が遭難しかける事件があったでしょう」
「ああ、あったねえ」
「この時期に冬眠しかけるなんて、よっぽど冷え性だったのかね」
「あれが『雪の妖精』の仕業です」
しばしの沈黙の後、各団体の代表は顔を見合わせた。
「マジで?」
「マジです」
「ヤバいんじゃないですか?」
「ヤバいです」
うおっほん。
大げさな咳払いをして、支部長は続けた。
「旧街道から山のほうに少し入った所なんですが。
冒険者ギルドで監視してたエーテルだまりがあります。
立ち入り禁止にしてた、あそこですね。
事件を聞いて、嫌な予感がしたんで、調査をしたんですよ。
そしたら、湧いてたんです」
「その……雪の妖精さんが?」
「さんはいらないと思いますが、そうです」
続けて支部長は、妖精の勢力が拡大した場合の事を話した。
最悪、この辺りの気候が一変する可能性がある。
その場合――マザキヤから麦とパンは消える。
「えええ、えらいこっちゃあ~!」
「早く、追い払わないと!」
代表者たちは、一気にパニックになった。
「なんて奴らだ!
あ、ちなみに雪の妖精って、どんな見た目なんです?」
言われて、支部長は資料をさぐった。
「ええと、こういう感じの奴らですね」
調査に出した冒険者が描いたスケッチだった。
なかなか絵心のある人物だったらしく、よく描けている。
ふわふわの、白い雪玉みたいな身体。
黒い、つぶらな瞳。先端だけが黒い、白い翼。
それから、ちっちゃなくちばし。
完全に、かわいい小鳥さん、といった見た目だった。
「か、か、か……かわいい!」
「え、なに? このカワイイ生き物!」
「ちょっとスズメに似てますねえ」
さっきまでの緊張感は微塵に砕けた。
代表者たちが、目尻を下げてスケッチに殺到する。
「ええい! あっさり幻惑されてどーすんですかっ!!」
ばんっ! と机をひっぱたいて、支部長が一喝した。
「だって……」
「かわいいんだもん」
「気持ち悪いわっ! いいトシこいたオッサンたちがっ!!
そんなんだと、依頼だしてもコメディだと思われますよ!?
いいですか、コメディ依頼は需要が低めなんですよ!?」
「え、そんな分類、依頼にあるんですか」
「あります。札つけて貼り出します」
「需要低いんですか」
「たぶん」
●
アホなやりとりを挟みつつ、会合は大いに紛糾した。
リスクが高いから、かわいそうだけど討伐しよう。
いやいや、かわいいし、そこまでしなくても。
被害が広がる前に手を打たなくてどうする。
報復が怖いから、追い払うぐらいでいいと思う。
様子をみて、被害が広がるようなら考えては?
わあわあわあ。全然、まとまらない。
代表たちを呼んだのは自分なのだが、支部長はうんざりしてきた。
(もう、話がまとまるまで、ダジャレでも考えてよっかなー……)
そんな中、一人の男が大声をあげた。
「そうだ!!」
「うわ、びっくりした」
「えーと……醸造組合長さんでしたっけ」
パンが有名なマザキヤだが、麦類を大量生産する以上、醸造所もある。
特に小麦を使って醸造する白麦酒は『飲むパン』ともよばれていた。
「何か妙案でも?」
問われると醸造組合長は、大きくうなずいた。
「交渉しましょう」
「交渉?」
「ええ。ミルク一杯で掃除してくれる妖精の話とかあるじゃないですか」
「なるほど。穏便でいいですな。でも、我々にどんな利益が?」
「そこなんですが――」
醸造組合長は、鼻の穴を膨らませ、自信ありげに指を振った。
「保冷紋具って、知ってますか?」
「ああ、一応ウチの組合にも一基ありますよ」
常に冷気を放つエーテル器具だ。
少々値が張るので、個人で持っている所は少ない。
「醸造組合も、使ってみたんですよ。
そしたら、これが美味いんです!」
「なにが?」
「麦酒に決まってるじゃないですか!」
おおお、と感嘆の声があがった。
「いや、もちろん、冷やしすぎは禁物ですが。
で、こういうのを大量に保存できるとなれば……」
「あ、いや、みなまで申されるな」
「ほうほう! なんなら夏のパンまつりも近いですし……」
「新たなマザキヤの名物が生まれるというわけですか!」
マザキヤの各団体は、名物とまつりが呼びこむ経済効果を知っていた。
直接恩恵のない団体代表も大いに乗り気だ。
完全に皮算用である。
だが、急速に話はまとまりつつあった。
「いいですね、やりましょう」
「やりましょう」
そういうことになった。
●
「そういうことになった、じゃねーんだよなあ……」
団体代表たちが去ったあと、支部長は頭を抱えていた。
彼らは、そろって楽観的で、のん気者だ。
だが、どう考えても難しい。
妖精相手に人間の理屈が通じるものか?
それに決裂すれば、戦闘になる可能性が高い。
だから、冒険者ギルドで交渉人を募ることにしたのだ。
しかし、こんな依頼に乗ってくれる冒険者がいるかどうか――。
支部長は悩みに悩んで――。
「ま、いっか」
依頼書に『コメディ』の札をつけた。
つけときゃ、そんなに過激な奴は来ない。
たぶん来ないと思う。来ないんじゃないかな。
ま、ちょっとは覚悟しておけ。
なんだかんだ言っても、支部長もマザキヤ出身。
楽観的で、のん気者なのであった。
●
『妖精との交渉人、求む!!』
マザキヤの外れに、雪の妖精さんが住み着きました。
でもあんまり寒いのは困るので、穏便にその旨伝えたいです。
荷物を預かってもらえるなら、居住は大歓迎!
決裂するようであれば、速やかにご退去いただくということで。
成功時は、金銭報酬以外にも特別報酬あり!
キンキンに冷えたヤツを飲み放題!
ぜひ、冷たい喉ごしを堪能してみないか!
解説
マスターより
リプレイ
事前準備のため資料を読み返していたエミリア・シバは、目を丸くした。
「知性があって交渉可能ならば、その扱いはどうかと思うのだ……」
ストレガ・L・リベルガストラは、どことなく不服そうだ。
長く亜人扱いされてきたゴブリン族だけに、複雑なものがあるらしい。
「この絵を見ると、大分愛くるしい様子ですしね」
城崎・織枝が同じく資料のスケッチを見ながら言った。
「街のお偉いさんがデレデレだったって支部長さんが言ってたよ」
アルマ・ヴァレンタインは遠い目になった。
いい年こいたオッサンが身悶える姿でも、想像したのかもしれない。
「たしかに……可愛いな」
ロイ・アウレアもスケッチを覗き込み、目尻をゆるめた。
しかし、すぐに思い返したように付け足す。
「あ、いや。実は可愛い外見ほど恐ろしい、ってこともあるな。
油断は禁物だ。準備と下調べはしっかりしていこう」
「妖精との交渉なんて、前代未聞ですからね。果たしてどうなるやら。
……やれるだけの事をやるしかないでしょうが」
ヴィルヘルミナが言い、集まった面々はそろって同意した。
●
まずは通商連合に、被害にあった隊商の話を聞きに行かねばなるまい。
「ああ、あの遭難した連中かい?
回復したら荷物を運ぶために街を出てっちまったけど……。
冒ギルに言われてたから、話はひととおり聞いといたぜ」
連合の受付が、愛想よく言った。
「荷物が残っていたのだ?」
「おう。別に賊にあったんじゃないからな。
冷え切って、昏睡してるところを救助されたのさ。
普通のリザードマンは寒さに弱いからな」
どうやら妖精たちに何かを盗られたということはないらしい。
被害が少なかったのは良いことだが……。
「むむむ。食べ物に釣られたのではない、のだ?」
ストレガが唸った。
念の為、積み荷の内訳は教えてもらった。
麦類、酒、食器、乾パンが主だったものだった。
マザキヤで買付後に南下し、王国経由で湿地帯まで運ぶという。
「もう少し詳しく教えてくれないかしら?
たとえば、妖精の声はどんなのだった、とか」
エミリアがたずねる。
「オウムがヒトマネする時の声に似てたってよ。
たしか、雪の妖精ってのは鳥っぽいんだろ? 納得だよな」
「『チョウダイ』と言っていたそうですけど、具体的な要求などは?」
織枝の質問。
「連中がいうには、寒くなったなと思ったら、辺りは真っ白。
意識が朦朧とするなか、小鳥みたいなのは見たけど……。
まあ、そこで倒れたって感じだったらしいぜ。
人間の隊商なら、もうちょっと応対も出来たんだろうがな」
「以前にも、こんな事はありましたか?」
さらに織枝が聞くと、受付は首を振った。
「まさか! 妖精なんて、これまでおとぎ話だったさ。
冒ギルには『エーテルだまりから何が出てもおかしくない』
……なんて言われてはいたが、まさか妖精とはね」
被害者本人に話を聞けなかったのは残念だった。
だが、まともに意識のない状態での遭遇だ。
本人がいたとしても、詳しい証言が得られるかは疑問だった。
ロイは、さらに環境変化などの心あたりがないか聞いてみた。
「そういや狩猟ギルドは、『クマをあまり見ない』とか言ってたな」
●
「……食べ物で釣る作戦はダメっぽいのだ」
「要求が見えないのは困りますね」
ストレガは腕を組み、ヴィルヘルミナは首を捻った。
事前調査で相手の要求を探るのは、どうやら難しそうだった。
「となると、単刀直入にたずねるしかないわね」
「……素直に聞いていただければ、いいですけれど。
場を和ませるために楽器でも演奏してみますか」
「あら、いいわね、それ。
おねえさんも、紙芝居仕立てで交渉してみようかしら」
織枝とエミリアは、早くも現地での交渉手段を検討している。
「うーん、まだ時間あるよな?
一応、狩猟ギルドにも話を聞いてみたいな。
それから『チョウダイ』って言い回しに他の意味がないかとか。
……色々気になる」
心配性のロイは、念には念を入れたいようだ。
「それ、一人で回るのは大変でしょ? ボクも手伝うよ。
マザキヤは初めてってわけでもないし、街で聞き込みしてみるよ」
アルマの申し出に、ロイは「ありがとう!」と頭を下げた。
●
「うーんと。結論から言うと、特別な言い回しや意味はなかったかな。
わりと色んな年齢の人に聞いてみたけど」
「……そうかあ」
アルマの報告に、ロイは肩を落とした。
「そっちはどうだった? 狩猟ギルドで何かきけた?」
「いや、こっちも大した収穫はなかったよ。
クマの件も多分、妖精起因のものだろうし。
ただ、エーテルだまりに一番近づくのは狩人たちらしい。
もちろん禁止区域に入るわけじゃないけど」
「ふうん。そういえば、お父さんが狩人だって子がいたよ」
「もしかして山で、仲間と子供の話でもしたかな?
それを聞いて、言葉を覚えたとか……」
「うーん、どうかな? ただ発音をマネただけかも。
犬や猫だと、名前やゴハンとかサンポは理解してるけど」
「そうだよなあ……」
気になることはあるが、あまり調査にばかり時間もかけられない。
ロイは後ろ髪をひかれつつ、交渉の場に向かうことにした。
●
エーテルだまりに近づくにつれ、気温は下がった。
「さーむーいー、のだ」
ストレガは不満をもらした。
別に、動くのに支障はないが、寒いものは寒い。
さすがに、いつもの格好ともいかない。
彼女は、街で調達した綿の外套を着込んでいた。
あんまり防寒効果はない。
季節柄、分厚い毛皮の外套は品切れだったのだ。
「妖精との交渉の為に至急調達をよーせー」
……などと、ダジャレ混じりに冒険者ギルドにも交渉してみた。
「ぶきや ぼうぐは そうびしないと いみがないぞ!」
……と、謎の塩対応を食らったが。
「よかったら、一緒にくるまる?」
「たすかるのだ!」
ブランケットを広げたアルマの誘いに、ストレガは迷わず乗った。
「そろそろ、妖精が現れてもいい頃ですが……」
ヴィルヘルミナが地図を確認し、辺りを見回した。
ペットは、しっかりとマントの下で温めている。
「あ……」
見上げた木の枝の先のほうに、小さな影がみっつほど。
スケッチで見たとおりの『雪の妖精』だった。
●
どうやって近づこう? そう悩む必要はなかった。
つぶらな瞳を輝かせ、彼らのほうから寄ってきたのだ。
雪玉みたいな身体は、冷気を発している。
羽の黒い部分や長い尾は、時折ぼんやりと青く発光した。
はばたくたびに冷たい風が、こちらへと吹き付ける。
妖精が一羽、アルマの頭の上に止まった。
脳天から冷気が染み渡る。
「ううっ」
たまらず、ストレガとアルマはブランケットの中で身を寄せ合った。
チチッ、ジュリリリリ……
小鳥そのものの声だ。
「……喜んでるっぽい?」
動物に寄った外見を持つせいだろうか?
ぼんやりとだが、アルマはそれを感じ取った。
精度によっては、イメージを皆で共有することも考えていた。
残念ながら、そこまでの具象化ができるほどではない。
「友好的なのは助かりますね」
ヴィルヘルミナは思念をエーテルに乗せて送ってみた。
……が、手応えがない。
何かが足りない、という感じがした。
『チョウダイ』『チョウダイ』
報告書にあった、例の片言を、妖精たちが話しだした。
「一体、何をお求めでしょうか?」
織枝が礼儀正しくたずねたが、返答はない。
妖精たちは、愛らしく小首をかしげるばかりだ。
「それなら、準備してきたアレの出番ね!」
エミリアが荷物の中から紙束を取り出した。
事前に必要になりそうな絵を何枚か描いておいたのだ。
まずは、小麦粉の袋と麦の穂の絵。
「どうかしら」
「……うーん? あんまり興味がないみたいだよ?」
アルマが読み取った反応を伝えた。
続いて酒。……反応なし。
食器、乾パン……こちらも同様。
肉や野菜の絵も提示したが、反応は薄かった。
「あらら……こうなったら、手持ちのは全部見せてみましょうか」
畑の絵、農民の絵、獣の絵……。
チイッ! ジュリリリ!
途中で、ひときわ高い鳴き声が上がった。
「これ?」
「うん、そうみたい!」
それは、リザードマンを描いた絵だった。
●
「……まさか、リザードマンが欲しい、ってことはないわよね?」
エミリアは首をひねった。
「それなら、連れ去られているのでは?」
「そうよね……」
「うーん、なんだろ、このニュアンス」
アルマは目を閉じ、考え込んだ。
喜び、楽しみに近いが、ちょっと悪意に似た気配もある。
「……というか、何か数が増えてるのだ!」
とうとう歯をカチカチ言わせながら、ストレガが訴えた。
見ればアルマとストレガの頭や肩には、妖精が数羽とまっている。
おかげで、二人の頭は霜だか雪だかで真っ白だ。
「……何か、オレだけ避けられてないか?」
「あ、ほんとですね」
他の三人の側にも、一羽づつ妖精が付いてまわっていた。
だが、ロイの側にはいない。
どちらかといえば、狼のルプスのほうに寄っている。
「何か嫌われることしたかな……」
油断するつもりはなかったが、微妙に傷つく。
せっかくエーテルの加護で、低温に耐性もあるのに。
他の面子との違いはなんだろう?
性別? いや、絵のリザードマンは男性だ。
それに嫌いというより、退屈そうにしているような……。
「うーん……なんかこう充実っていうか。
違うなあ……してやったり?」
アルマはまだ考え込んでいる。
「――わかった!!」
ロイの叫びに、一同は一斉にそちらを見た。
「遊び――イタズラだ!
『遊んでチョウダイ』か『寒がってチョウダイ』が正解だ!」
●
「なるほど……たしかに辻褄はあうのだ」
「そうねえ。イタズラ好きの妖精の話は多いもの」
「……それなら、機嫌をとってから交渉といきましょう」
「骨身に染み入る寒さですね……」
「う~……さむさむっ……」
「ボク、もうだめ……」
「寝るな、寝ると死ぬのだー!」
ヴィルヘルミナの提案で、冒険者達は精一杯寒がってみせた。
あいにく演技の心得がある者はいなかったが、実際に寒い。
織枝の演奏も、それなりに興味を惹くことは出来たようだ。
彼らの鳴き声をマネてみた旋律は、好評だった。
そして、エミリアが即興で描いた、とても寒がっている人の絵。
こちらは紙の前に、人だかりならぬ、妖精だかりが出来ていた。
「代表者的な存在が、彼らにいればいいのですが……」
「……代表者、ねえ。ちょっと絵にするには難しそうだけれど」
「王様、はいかがでしょう?」
「いいわね、それ。いただき!」
織枝のアイデアを借り、エミリアは王様の絵を描きあげた。
絵の前に群がった妖精は、小首をかしげ――。
やがて数匹が、いずこかに向かって飛びたっていった。
●
ジュリリリ……。
そして、現れたのは一回り大きい個体だった。
頭の羽毛が、まるで王冠みたいに逆だっている。
《何用か?》
脳内に直接響く声に、ヴィルヘルミナは顔をあげた。
なるほど『王』はテレパスを扱えるらしい。
それならば――話は早い。
●
以降の交渉は、とんとん拍子に進んだ。
妖精はエーテルだまりの影響で生まれるか、変容したものらしい。
(彼らにも、詳しい経緯は分かっていないようだ)
そして、この場での居住を望んでいる……というか固く決めている。
彼らは、エーテルだまりの側から離れる気はないようだ。
むしろ街に近づくのは、暑いから嫌なのだそうだ。
エーテルだまりが急拡大しないかぎりは、問題はなさそうだ。
隊商の件は不幸な事故で、相手の体質を知らぬための、やりすぎ。
ロイが推測したとおり、娯楽欲しさのための接触だという。
とはいえ、あまり反省はしていなさそうである。
荷物を預かってほしいという要望は、意外に嫌がられなかった。
ただし、一点条件をつきつけられた。
――たまに、この辺りに来て、遊んでほしい。
「うーん……どうする?」
「おねえさんは、いいと思うわ。
かわいい妖精さんと遊ぶだけでしょ?」
「同感ですね」
「万一、凍死する人が出たら大変じゃないか?」
「心配性なのだ。ゴブリンの子供でも降参の合図くらい守るのだ」
「事故防止に合図。いいですね」
「善は急げ。街に持ち帰って、細かい条件をつめるのだ!」
●
冒険者たちの取次で、つつがなく妖精たちとの取り決めは成された。
街が雪に閉ざされることはなく、妖精が討伐されることもなかった。
エーテルだまりの動向は懸案事項だ。
だが悩んだところで、人が制御できるものでもない。
マザキヤに新たな名物が生まれるかは、住人の頑張り次第だろう。
「いやあ、今回はお世話になりました」
ふわふわの泡のたつ液体をジョッキに注ぎつつ、笑顔で男性が言う。
醸造組合長だ。
「さあさ、お約束どおりのものをどうぞ!」
妖精の居住地近くに作った氷室で、冷やしたものだ。
「待ってましたあ!」
「労働の後の一杯、格別ですね」
エミリアと織枝。
うわばみ二人が満面の笑みを浮かべて、ジョッキを受け取る。
「……私は、そんなにがぶ飲みする方ではないので」
「ドワーフの謙遜は信用ならねえ……」
ヴィルヘルミナの言葉は、話半分に受け取られたらしい。
見事な大ジョッキが手渡された。
「これで、一件落着……なのかな?」
どこか心配げに、ロイがつぶやいた。
「大丈夫だよ、ほら、オッサンたちを見てみなよ」
アルマが指した先では、街のお偉いさんたちが戯れている。
大袈裟なジェスチャーで「さむ~い」だの「ひゃっこ~い」だの。
妖精は大喜びだが、なかなかにサムい光景である。
「まあ、仲良くやってけそうではあるかな?
……じゃあ持ってきた干し肉は、おつまみにでもしようか」
「おう、お前さんたち。まだ始めてなかったのか?
妖精の前で、遠慮はよーせー、なんつって」
「……審議拒否なのだ」
冒険者ギルド支部長へ、ストレガがダメ出しをしている。
「それなら、支部長さんが音頭とってよ」
「そうか? ……では、おっほん……」
アルマが促すと、支部長は咳払いをした。
「マザキヤの『キンキンに冷えたヤツ』に……乾杯!!」
『乾杯!!』
初夏に似合わぬ冷えた空気に、ジョッキのぶつかる音が響きわたった。
マスターコメント
ショートシナリオ難しい 報酬:多い6 / 4〜6人
2021年05月06日 12時40分18秒 公開
相談掲示板
ストレガなのだ。よろしくなのだ。 戦闘が回避できて協力もできるならそれにこしたことないのだ。 調べるべくは隊商が何を輸送してたかなのだ。
とうッ! マザキヤ仮面、見・参ッ!! はじめまして、諸君ッ!! この度はマザキヤの危機に立ち上がってくれて、ありがとう! マザキヤ出身者として、こんなに嬉しいことはない。 私のことは気にせず、しっかりと準備を整え、事にあたってくれ! では、さらばッ!! (※MSより マザキヤ仮面は、何か質問があれば戻ってきます。 間に合わなかったり、見逃したりしたらお許しください。)
アルマだよ、どーぞよろしく。 とりあえず授恵者は寒さでの行動制限がなさそうだし、 雪の妖精さんと動物交感とおやつとお世話セットとかで触れ合おうかなーと…
城崎織枝と申します。キンキンに冷えたヤツの飲み放題と聞いてやって来ましたよ。 雪の精霊さんとの交渉ですが、何を欲しがっているのかをまず確かめておかない事には。 隊商が襲撃……されたというべきでしょうか、ストレガさんの言うように積み荷は何なのか、過去にもこういう事例があったのかは知っておきたいですね。 雪の精霊さんの利用法ですが、マザキヤの住民としては「アレ」をキンキンに冷やす為の保冷手段とする事で宜しいのでしょうか?
ヴィルヘルミナです。今回はよろしくお願いします。 とりあえず交渉で済めば一番良いですね。無駄な戦いは避けたいですし。 言葉が通じればいいですけど、通じない可能性もありますし身振り手振りなども交えてみますか。 妖精が見返りとして何かを欲しているなら、その辺りも知りたい所ではありますね。
おねえさんはシーフのエミリアって言うわ。 キンキンに冷えたヤツの飲み放題と聞いてやって来た第二号よろしくね。 >知性はあるようですが、どの程度言語が通じるかは不明です。 とあるしヴィルヘミナちゃんも言っている身振り手振りなどの、言語以外で交渉できるような用意をたくさん用意しておいた方が良いかしらね? おねえさんは絵画のスキルで簡単な紙芝居みたいなのとか用意してみようかしら……
えっと、隊商さんの荷物でなにが『チョウダイ』されたのか確認して、 それをもとに交渉ー…って流れでいいのかな? (絞り込めなかったら同じ品目をまとめた荷台を準備してもらって持ってくとか) 身振り手振りや紙芝居もよさそうー…ボクは念写でももってこうかな ※画像はイメージです
シューターのロイ・アウレアです。 コメディに釣られて最後の1枠を頂きました。よろしく。 >『チョウダイ』 荷物は確認してくれる方が居るので、リザードマンの装備や途中で何か拾ってないかとかを確認しようと思う。 これがブラックな依頼なら命をチョウダイとか成りそうだが…流石に無いよな。 持ち物や汎用は相談の流れで考えるね。
ながれはそうね、織枝ちゃんやアルマちゃんの言っている流れでいいと思うわ。 『チョウダイ』を言われた人たちを調査して類推して交渉、かしらね? ただ、目についた人に『チョウダイ』とか言った可能性とかもあるかもしれないので、交渉の時に確認しながらっていう感じがいいのかしらね?
妖精の『チョウダイ』を知るため、今出てる案はこれで良いかな? ・何を運んでいたか確認し、同じ荷を準備 ・妖精と触れ合う(動物交感とおやつとお世話セット、身振り手振りも交える) ・過去に同じ事例が無かったかの確認 ・装備や途中での入手品の確認 その後気になったのが 例えば『チョウダイ』は「人の名」とかの別の意味を持ってないか、と 『助けてチョウダイ』とかの別の言葉と繋がるのでは?と感じたので そう言う響きの名の人や地名とかが無いか確認したいのと 環境破壊(開発)されたとか、温泉が湧いた、火山活動が活発化したとか 雪の妖精が住みにくくなるような事が無かったは確認したいが こう言う事は、マザキヤ仮面に質問したら答えて貰えるかな? 何処までが質問して良い事なのかがよく判らない…ですが あの…マザキヤ仮面さん、お聞きして宜しいですか? なお、妖精とどう交渉するかはまだ考え中です。
雪の妖精は分類的には魔獣の枠組みなのですね。 精霊とかの分類に入るなら、テレパスとかで交信できないかな……とか思ったのですけど。 カカポでも連れて行ってみる……のは流石にまずいですか。最悪、戦闘も考慮に入れないといけませんし。
んでは、荷物の確認とその調達をするのだ。 リザードマン達がまだいるならそれでよいし、組合で確認できるもの持っていると思うのだ。 襲われた時になくなっているものがあったかもも確認しておくか。 此方も交渉でいけると思うのだ。 妖精との交渉決裂に際して攻撃スキルの準備もするのだ。 温度耐性・肌温調節があるなら入れとくと便利かもなのだ。
>交渉決裂 ですよね……考えたくないが、戦闘スキルはそのまま持って行きます。 荷物に関しては皆様にお願いして、下で質問した 「人の名」とかの別の意味を持ってないかと別の言葉と繋がるのでは?は 短く纏めてプレイングに入れてみます。 『来てチョウダイ』で、どこかに連れて行きたかったのかな?ってのも浮かんだので 雪の妖精の気持ち(ゼスチャー)を感じ取れるようにと 長時間に成る事を想定して洞察と温度耐性を付けようと思う。 >カカポ ルプスに防寒着を支度して一緒に頑張って貰うつもりですよ(撫でる) 後は…出発まで考えて何かしら浮かぶようなら変更しますね。
とうっ! なんでもは知らないが、知ってることだけ答えよう!(※MSより 質問はお気軽にどうぞ。答えられるとは限りませんが) >>ロイ君 ・地名や人名 そこは現地(プレイング)で確かみてくれ! 空振りに終わるかもしれないし、意外な突破口になるかもしれん! ・雪の妖精が住みにくくなるような事が無かったか すくなくともマザキヤ周辺にはない。 妖精は元々この土地にはいなかった存在だ。 むしろ妖精のせいでマザキヤ住民が住みにくくなる可能性が危惧されている。 他の土地で何かあったか、は私は知らない。 少なくとも世界級の大変動は雪の妖精の住みそうな土地では、今の所起こっていなかったように記憶している。 ……別の大変動は大樹海で起こってるけどな! 他の土地での小さな変動については、聞き込みなどで調査するのもありだろう。 空振りに終わるかもしれないし(以下略)
気持ち(ゼスチャー)……機微、ですね。 雪の妖精が激しく身振りする姿を想像し……違うだろう……と自己突っ込みしてしまった。
おぉぉぉぉ!被った!被った!(リロードした=タッチの差) ありがとう、マザキヤ仮面! 現地(プレイング)で確認します! >マザキヤ周辺にはない。 これをお聞きできた事で100文字くらい減らせそうです。 妖精と初の交流なら、今までは何処に住んでいたのか?とか 気に成る点が多くて…空振りでも良いので、プレに突っ込めるだけ入れます。 っと、似た事を考えてた方は教えて下さいね。それ以外をプレにします。
一日たってみたらフルメンバーになってたー∩(・ω・)∩ >分類が魔獣 動物交感でやりとりできない可能性もあるけど、接触するには最接近しないといけないしねー… 念のための戦闘装備もセットしておくとして、 温度耐性・肌温調節はお持ちでないのでマントやブランケットのぐるぐる巻きで対策しようかな
一応、テレパスを入れてみました。通じれば儲けもの程度ですけどね。 駄目ならジェスチャーでなんとかしようかなと。意思疎通の手段でどれが有効か不明な以上、いろいろ模索できる方が良さそうですし。 妖精との交渉という状況自体、初めての事ですので。
ならば私からの交渉手段としては、小型の弦楽器による演奏を通じて気を引いてみようと思います。 関係ない話になりますがダンジョンアタックにおいても楽器の持ち込みが主流らしいのもありますし。 成功の暁にはキンキンに冷えたヤツをご馳走してくれるという訳ですから、ちゃんちき宴会のような楽しいとか陽気な雰囲気作りは好んでくれるだろうか、とも思いまして。 防寒着に関しては、ブランケットやマントを持ち込みますね。