【CP】立ちふさがる脅威を突破せよ!
菊華 伴
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シナリオID:835
オープニング
●捻くれた少年と白黒のコボルト
――? ? ?
「んー、こんなものかなー」
ロバ耳を揺らした少年が、乳鉢ですり潰した薬草の具合を見て満足気に頷く。そしてよく振るった粉と蜂蜜、溶かしたバターに卵を混ぜた物の中に入れ、しっかり混ぜ合わせる。
簡易的に作った窯には平べったい石が入っており、そこに中身を乗せるつもりらしい。
「あ、そうそう! 仕上げを入れないとね」
そういうと、少年は小瓶からなにやら液体を取り出し1,2滴落とすと念入りに混ぜ始めた。
「僕の真心混ぜ込んで~、焼いた後にも美味しい蜂蜜絡めて~」
混ぜた材料を小麦粉を塗した台の上で捏ね、ちぎって丸めた後熱々の石の上に乗せていく。その間に蜂蜜を用意して置き、焼きあがった菓子に絡める。
「最後の一仕上げ♪」
そういうと、少年は呼吸を整えて容器の上に手をかざす。と、朱色に輝くエーテルが手の全体から溢れ、とろりと蜂蜜のように菓子へと流れまとわりつく。
「完成! レビジュ特製焼き菓子2号! 特別なお薬入りだよ! コボルトさん達喜んでくれるかな~?」
『メドュの指先』が一人、レビジュ・バトーはルンルン気分で出て行った。
レビジュの向かった先には、コボルトの群れがあった。少年は作ったお菓子をかたっぱしからコボルトたちに食べさせる。だが、その中で一際大きい2匹のコボルトはそれを口にしなかった。
一匹は冒険者から奪ったであろう黒い鎧を纏ったコボルトで、手には無骨な大剣が握られている。
もう一匹もまた、冒険者から奪ったであろう白いローブとカソックのような物を被り、鋼の祭刀を手にしている。こっちの方はなんかいい匂いのようなものを感じる。それとは関係があるかは全く不明だが、コボルトたちはそのコボルトのいう事を聞いているようにも見えた。
レビジュはにっ、と悪戯小僧の顔になり、黒い鎧のコボルト(以下、黒鎧と表記)に近づく。
「ねぇ、きみの武器かっこいいね」
「オウ イイモノ ダ」
片言の受け答えに『特異個体』である事を理解したレビジュはさらに目を輝かせる。彼はにっこりして、
「なら、もっと強くしてあげる!」
と、己のエーテルをまとわりつかせた。朱色に輝くそれは水のように広がり、大剣はどこか禍々しい雰囲気に包まれる。
白いローブのコボルト(以下、白布と表記)はそれよりもレビジュの菓子に興味を持った。
「こっち? 食べたいの?」
その問いに、白布は首を振る。そして、他の通常個体たちを指さし、もっと食べさせろ、と言っているようだった。
「いいよ~。そしたらもっと強くなるからね」
レビジュはそう言うと、楽しそうに笑った。
――みんな、僕特製のお菓子、美味しい?
レビジュの菓子を食べたコボルトたちが、徐々に目を血走らせ獰猛になっていく。その様子に、少年は楽し気に微笑んだ。
●ゴールディより来る商人は……
「難民キャンプの人たちが待っているぞ!」
商人、ナバルジャはゴールディで得た物資を3台の馬車に乗せ、難民キャンプへと向かっていた。傍らには勿論秘書のアズルノがいる。
2人は先日、難民キャンプへの道の途中コボルトと『メドゥの指先』の構成員に襲われていた。だが、冒険者たちに助けられ、どうにかチョコレートを子供たちに配ることができた。
故に、彼らは警戒していた。またコボルトに襲われるのではないか、と。
「旦那様、またコボルトが襲い掛かってくるかもしれません。気を引き締めねば」
「そうだな。だが、今回は力自慢の馬を連れてきている。いざという時は……つっきるしかあるまい」
できればの話だが、と付け加えたナバルジャの表情は、やはり厳しいものだった。
「もう少しで休憩できる場所につく。少し休もう」
「では、私は……念のために冒険者の方がたと先行しておきます」
アズルノは、深く一礼し冒険者たちに相談するのだった。
アズルノと貴方がたは、休憩もそこそこに先行を開始する。
「ひとまず危険がないか調べ、引き返しましょう」
と静かに話し合いながら進んでいく一同であったが、彼らは見つけてしまった。黒い鎧を付けたコボルトと、白いローブのコボルト、そして血走った目をしたコボルト数匹を。
「トオル ナラ ニモツヲ」
「ウマモ チョコモ」
片言で話す、2匹のコボルト。そして、黒鎧が持つ大剣には朱色に淡く輝くエーテルらしきものが……。
「これは……少し厄介なことになっていますね」
アズルノの言葉に、一同が頷く。
気配を探れば、足音が聞こえてくるような気がした。白布のコボルトは嗤うように言う。
「ナカマ クル ノチ」
「ナカマ クラウ オマエタチ」
黒鎧も剣を手に身構え、臨戦態勢に入る。どうやら逃げられない状態のようだ。しかし、囲まれてはいない。アズルノだけなら逃がせそうである。
一同はアズルノに伝言を頼むと、特異個体たちと向き合う。
「ジニス ソレ ワタシ」
「ナリア ソレ ワラワ」
黒鎧がジニス、白布がナリア、という名前らしい。二匹はにぃ、とそろって笑うと、血走った目の通常個体たちと共に襲い掛かった!
――彼らを突破しなければ、馬車を難民キャンプへ向かわせることができない。
果たして、冒険者たちは……。
解説
マスターより
リプレイ
最初に動いたのは赤い髪が目立つフリューリングスルフト=ティエラ(以下フリューと表記)。彼女は疾風のように加速し、巧みな身のこなしで銀の閃きを三筋、ジニスへと喰らわせる。だが、ジニスは涼しい顔で受け止める。
「キタ ムスメ ツヨソウ?」
「強そうな奴やなぁ~、うちとあーそぼ♪」
フリューの眼差しは、何故かジニスの闘争心を呷る。彼女に誘われるがままに、ジニスはフリューに目を向ける。と、ナリアが咎めるような眼差しをジニスに向けt。
「ジニス!」
「ひょっとしてこいつらがハリアウムの八部衆とやらか?」
そう言ったのはハヤト=ガラン=ヴォルファング。彼もまた疾風のごとき加速で、過激な三連撃を放つ。祭剣で跳ねのけたナリアが身構え、いったん下がったハヤトは瞳をギラギラさせる。
「チガウ! ナレナカッタ ワラワタチハ!!」
祭剣を叩きつけようとするナリアだが、ハヤトには当たらない。そこに強烈な一撃が打ち込まれ、ナリアは目を白黒させる。セリオス・オーガストが放った〈バスターアロー〉である。彼は〈天眼〉で戦場を見、ナリアへと矢を放ったのだ。
(荷物のある馬車とはかなり離れていたのが行幸だな)
セリオスは内心ちょっと安堵していたが、すぐに表情を引き締める。
彼の〈天眼〉に写るは、アステルが放つダブルエッジ。二撃目が赤く燃え上がるような眩さを放ち、ナリアを苛む。
「お前たちのあそびに付き合ってる暇はないからな! 物資を届けるためにそこをどいてもらうぞ!」
狼が唸るが如く言い放つアステルを憎々し気に睨みつけるナリアであったが、間にコボルトが入り込む。噛みつこうとする個体をするりとさけるも、血走った目に嫌悪を覚える。
「コボルト共!! 貴様らを殲滅するぜ!!」
と、ジニスへの道を塞ぐコボルトをアルベルト=V=シュタールシュヴェーアトが〈鋭撃〉の一撃で屠る。崩れ落ちるコボルトの先、ジニスが嗤うもまだコボルトたちはいる。
「キル ムスメ カクゴ!」
ジニスが戦意を込めて叫んだ途端、フリューは目を見開いた。
(こいつ、倒さなくちゃ……!)
焦りが首筋に浮かぶ汗と共に滑り落ちる。その様子を見、嫌な予感を覚えるトゥーリ。だが、今は目の前の事に集中しなくてはならない。
(あぁ、もう…いらいらする……分からないけど、アイツラ見てると無性に……)
いつになく苛立った様子のRe:Leeは祭剣を白の魔導書に持ち替え、素早く呪文を口内で転がす。
「穿て、〈メテオライト〉」
光の弾がコボルトとジニスを撃ち、コボルトのうち1匹が撃沈する。
トゥーリの耳と鼻は、確かに近づく複数の足音と強くなる臭いを捉えている。
「うわわっ、まだ敵が増えそうだよ?」
「くっ、本当か?!」
ナリアへ〈光爆封〉を放つトゥーリの言葉に、ギャメルが険しい表情でフリューに〈サルベーション〉を施しながら表情を険しくする。
(ナリアからなんかいい匂いがする。美人っぽい雰囲気の匂いだ)
熱狂的な取り巻きまでついてるじゃねぇか、と周りのコボルト達をみてため息をつく。
ナリアは光爆封の中で肩を竦める。どうやら打ち破る術を持たず、次に備えるらしい。
『執着』から解かれたフリューは呼吸を整え、ジニスの前にきたコボルトを〈強打2〉の一撃で倒し、ジニスへと挑発的な視線を向ける。
(疾く疾く大地駆けろ緋色の足、風が止まぬ限り、陽が枯れぬ限り。抱いた名に速さに誇り持て!)
先ほどはしてやられたが、赤い稲妻のように走り意識を高め、自分を奮い立たせんと呪い言葉を心中で唱え躱す。入り乱れるコボルトの攻撃を「そうはさせるかっつーの!」と鋭い蹴りでいなすハヤト。その一撃で殆どの体力が消し飛び、鼻血を流し地面で痙攣するコボルトを踏みつぶし、別のコボルトがハヤトを狙うが、彼はするりと躱す。そこへ更にジニスの方向からもう一匹。
「させない」
セリオスが閃光が如く撃たれる二本の矢でコボルト2匹を狙い、素早く倒す。まだナリアに施された〈光爆封〉は消えていない。
「貴様を叩き斬る!!」
ジニス目掛けアルベルトは気合を込め〈紫電一閃〉を叩きこむ。確かに剣で受け止めたジニスであったが、アルベルトの剣が赤く燃え上がるように瞬き、その眩しさに慄く。
それでも目の前の相手を討たんと剣を振り上げ、アルベルトへ一撃見舞う。朱色のエーテルが傷口に触れた刹那、アルベルトは僅かに戸惑った。
(?! 頭がうまく……)
彼の異変に気付き、トゥーリがすかさず〈解呪〉を施す。ナリアはそんな一同を見、興味深そうに見つめる。
「とりあえず追っ払うなりぶっ飛ばすなりさっさと済ませるわよ」
「そう、だな!」
Re:Leeが口元を手で隠しながら魔矢をジニスへ放ち、ギャメルは〈天眼〉で周囲の状況を把握しながら傷ついたアルベルトへ〈ヒール2〉を放つ。
「ナントモナイ」
魔矢に撃たれてもなお笑うジニスの笑みが、とても冷たかった。
●一角、落つ
フリュー、アルベルト、トゥーリが連携してジニスとナリアを引き離そうとするも、ジニスはナリアのそばを離れない。だが、ジニスは確実にカバーリングに回るタイミングを失っている、という手ごたえはあった。
ナリア側にはハヤトとアステルが張り付き、確実にダメージを与えていく。仲間の異変や不具合はギャメルが対応し、Re:Leeとセリオスが的確に援護してじりじりと二体の特異個体を苛んでいく。
だが、二体から放たれる攻撃は重く、一撃でも膝をつきそうになる。ハヤトも〈神眼法〉でなければ回避できなかったぐらいだ。ナリアは的確にジニスへ〈ヒール〉と〈輝腕〉で援護する。
(確かに、強い!)
ジニスの一撃を避けきれなかったアルベルトが表情を歪め、ギャメルが「大丈夫か?!」と〈ヒール2〉で彼を支える。だが……。
「「!?」」
〈超聴覚〉を持つトゥーリと〈超嗅覚〉を持つギャメルは、もう援軍がすぐそこまで来ている事を察知する。
「数は、多分5体!」
トゥーリの言葉に、フリューがジニスの前に出る。
「武器も鎧もかっこいいさぁ。でも、うちに当てられんかったら見た目だけって事かな?」
「イッタナ!」
何度目かの三連撃を往なし、ジニスがフリューへと刃を向ける。だが、それを華麗に躱すフリューは妖精のようだ。
(せやせや。うちを見ろ。執着しろ。そうして……化かしてやるんが狸さぁ)
ふふ、と笑う乙女の口元にジニスが苛立ちの目を向ける。
「クッ」
ナリアが祭剣を掲げ、〈ヒール〉をジニスに与えようとする。だが、ハヤトは好機とばかりに風を切るが如く襲い掛かる。閃く銀の三筋に、ナリアは僅かに表情を顰める。休ませまいとセリオスが二体の中央に光の矢を炸裂させ、無数の光破片を鋭くまき散らし苛んだ。
「もう一度!」
踏み込んだアステルがナリアへ魔力の集中を乱す光印を刻み込めば、酷く表情がゆがんだのが見えた。ジニスの目がナリアへと向く。
「相手は俺だ!」
突風のごとき鋭利な一撃がジニスの胸を斬る。鎧で阻まれるも、確実にダメージを与えた手ごたえを感じたが、アルベルトの表情は厳しい。
「ソレ コトバ ワタシノ!」
ジニスが吠える。抗えないほどの〈執着〉がアルベルトを苛み、その口元が獰猛さを湛える。そのまま振るわれる朱色の刃が、アルベルトを襲う。
(なっ?!)
間一髪で避けることができたが、当たり所が悪かったら……と思うと恐ろしい。
「ここが使いどころかな!」
トゥーリがアルベルトへ〈堅甲〉を与え、Re:Leeが再び2体へと〈メテオライト〉を浴びせる。
(もう、そこまで来ている!)
ギャメルの〈天眼〉がコボルト5体を確認する。このままではいけない、とアルベルトへ〈サルベーション〉を与え回復を促す。
少し遅れてコボルト5体が転げるように登場する。彼らは次々に授恵者たちへと襲い掛かった。だが、素早いハヤトやアステル、フリューには叶わず避けられてしまう。だが、1匹がするりと後衛へ向きギャメルを狙う! それはギャメル同様〈天眼〉を使っていた者たちも目を疑うほどの動きだった。
「グアアア!」
「こっちか!?」
油断したわけではないが、予想外の一撃が腕を掠め、ギャメルの背中に冷たい汗が流れる。
(間に合わなかった、だと?!)
仲間を庇いたかったハヤトが内心歯噛みしつつ、ギャメルを襲ったコボルトを三連撃で切り裂く。続くセリオスは無言で短弓の弦を引き、眩い光の矢が炸裂してコボルト達を襲う。
「はあああっ!」
アステルもまた光る刃を暗針に纏わせ、ナリアを巻き込んでコボルト達を薙ぎ払い、鈍い音をたてて2体のコボルトが倒れこんだ。アステルの攻撃からほんの少し遅れてジニスに攻撃を仕掛けたフリューは、交わされながらも〈誘惑〉の眼差しでジニスを煽る。だが、三度視線がナリアへと……!
(いつでもカバーリングできるようにしているみたい?)
トゥーリは祭刀で攻撃し意識を己に向ける。と、ジニスがにたりと彼女へ刃を向ける!
(これでいいんだ)
トゥーリへの一撃を、彼女は精神を研ぎ澄ましシャープに蹄を鳴らして避ける。その先には3体のコボルト。我に帰るジニスに生まれた隙へ、飛び込むアルベルトは巨大な光の塊を大太刀へと纏わせ地面へと叩きつける!!
――キャイィィィン!!
コボルトは、断末魔をあげて地に伏せた。
「なっ……」
あっという間に増援を撃たれ、ギリギリ範囲に入ったナリアにもダメージが入り、彼女(?)はあからさまに狼狽えていた。咄嗟にジニスへ〈ヒール〉をするが。冷気が空気を斬る。ジニスを苛むは氷の矢。Re:Leeの〈フリーズボルト〉である。
「狼狽えている今が好機じゃない?」
「そうならこれだなっ!」
Re:Leeがウインクすれば、ギャメルの指先から〈魔矢〉が飛び出しナリアの胸を貫く。
「畳みかけるぞ!」
ハヤトの三連撃を諸に喰らい、蹈鞴を踏むナリア。セリオスはエーテルを収束させた矢でナリアの足へ攻撃し逃走を阻む。ジニスはRe:Leeからの贈り物の所為で行動が阻害ざれている。
「いけ、アステル!」
「勿論!」
流れるように懐へ飛び込んだアステルの得物が唸り二連撃! 〈カバーリング〉できず苛立つジニスの前にはフリューとトゥーリが張り付き、その攻撃を躱すので精いっぱいだ。
「これで、落ちろ!!」
アルベルトが〈鋭撃〉で飛び込み、ジニスを斬る。と、鈍い音をたてて剣が地面を転がる。
「ナリア……」
予想外の強烈な攻撃だったのか、目を白黒とさせながらもジニスはナリアに助けを求める。だが、ナリアは悲し気な眼で首を振った。彼女は、生き残る為にジニスを切捨てることを選んだようだ。ジニスは全てを受け入れたかのような顔で瞳を閉ざした。
●違和感
(え?)
違和感がRe:Leeの胸を揺らす。嫌な予感がする。
(でも、今は)
彼女は指を向ける。同じようにギャメルもナリアへと指を向ける。2人がやることは同じ、エーテルの矢。それらをナリアは風のように躱し、祭剣でハヤトへと切り付ける。意外な速さに舌打ちしつつ躱すハヤトだが、鋭い一撃が掠める。
「やられっぱなしじゃ面白くねぇ!」
「ヴォルファングッ」
ハヤトが強力な蹴りをナリアへ放てば、セリオスの矢が唸り、鋭い一撃がナリアの頬を掠める。そして、アスベルがもう一度懐へ潜り込み2筋の赤い傷をナリアへと刻み込む。
「オノレ!」
「逃がさへん」
フリューは倒れたジニスとの間に立つようナリアを牽制する。万が一、ジニスが生きていたら〈ヒール〉されるかもしれない。急にジニスが起きだし〈カバーリング〉するかもしれない。念には念を、である。
「こっちが数は多いよ!」
トゥーリが別方向の退路を断ち、気合と共にアルベルトがナリアへと突っ込んでくる。その一撃をぎりぎりで交わしたナリアだったが、Re:Leeの指先から放たれた〈魔矢〉がナリアの額に突き刺ささる。
「これで終わり」
ナリアは膝から崩れ落ちた。
その場に満ちる、奇妙な静寂。あまりにも、あっけなさすぎるような気がする最後。嫌な予感が、全員の中に広がる。
「終わっ……た?」
ギャメルが戸惑いながらも〈天眼〉を解かず注意をする。
ハヤトは近くだったこともありナリアが事切れたかを確認し、一つ頷く。
「もう少してこずるかと思ったけれど……」
トゥーリが首を傾げながら周囲を見渡し、他の面々も増援が来ないか確かめる。
「足音が遠のいた。多分大丈夫だとおもう」
ギャメルが〈天眼〉を解き、深いため息を付く。
「なあ、誰かジニスの方を点検したか?」
「一応、俺が」
アステルの言葉にアルベルトが動こうとしたが、「アンタには治療が必要」と、ギャメルがてきぱきと治療。その間にフリューが確認しにジニスへと向かった……その時である。
――ボンッ!
鈍い音をたてて何かが炸裂した。煙が辺りに立ち込め、授恵者たちはひどくせき込む。特に〈超嗅覚〉を持つギャメルとトゥーリは何かあったのが鼻を抑えて地面を転がる。
(この薬草の香り……まさか、こないだのロバ耳小僧が一枚噛んでやがるのか?!)
よく考えてみれば、通常個体のコボルトからもそんな匂いがした気がする。だが、それ以上に彼らの口から漂うは、蜂蜜の香り。どうやらこれが邪魔していたらしい。
複数の足音が聞こえたかと思えば、冒険者たちを無視して通り抜ける。気が付いたとき、そこにジニスとナリアの姿はなかった。
●壁は失せ……
その後、念のため周囲を調査したものの、コボルトはおらず。一同は「一応安全になった」と確認したうえで商人・ナバルジャたちが待機する場所へと報告に向かった。
だが、Re:Leeはハヤトと頷き合うと一人残った。
「早く戻れよ……」
ハヤトが心配しそういうが、彼女には気になる事があった。彼女はあのジニスの剣が纏ったエーテルに覚えがある。ゴールディからの物資を前線キャンプへ届ける際に遭遇した『メドゥの指先』が一人、レビジュが持っていたリンゴが纏っていた物と一緒なのだ。
呼吸を整え、戦闘の跡が残る場所に【残留思念感応】を使うが、コボルト達の妙な熱狂しか見えない。しかしハヤトはレビジュの纏った薬草の匂いを感じたと言っていた。
なら、近くにいるかも……、と、Re:Leeは草が生い茂る斜面を歩く。
「見つけたらとっちめて、そして……」
もう一度呼吸を整え【残留思念感応】を使おうとした時である。
「そして、どうするの?」
Re:Leeが顔をあげると、太い木の枝にロバ耳の少年がちょこんと座っていた。レビジュ・バトーはニコニコ顔で飛び降り、そっと彼女の頬に触れて言った。
「単独行動は危ないよ、お姉さん」
「……っ!」
身動きできなかった事に困惑するRe:Leeを他所に、レビジュはニコニコした顔で指をひらひらさせてその場から去った。
――またジニスと遊んでね。
「……もしかして、生きてたというの?」
Re:Leeは喉奥から込み上げる何かを堪え、急いで仲間たちの元へと走った。
(終)
マスターコメント
ショートシナリオ難しい 報酬:多い8 / 4〜8人
2021年05月09日 00時12分55秒 公開
相談掲示板
ちょっと遅れて参戦だけど、ハーフビーストのシーフ、アステルだ!みんなよろしくな! ヒーラーがいるのは厄介だな……それに増援が来るのはきびしそーだし。オレとしてはヒーラーを牽制、妨害を優先する形でいこうかなって思ってるよ!
ウォーリアのアルベルト=V=シュタールシュヴェーアトだ。 よろしくな。 ジニスは俺が叩き斬るぜ! 当然通常個体のコボルトも見逃すつもりはないぜ!
ヒーラーのギャメルだぜ! みんな、よろしくなー! とりあえずオレは抵抗をできるだけモリモリにして、バステ解除をメインに動こうかな? みんなが攻撃に専念できるよう頑張るぞ!
トゥーリだよ、よろしくね! 今回はシーフの人……特に回避重視の人が多そう? ヴァローと、あとは手数が多いし輝刃を持っていこうと思ってるよ~
おーっす! ゴブリンのシーフ、ブレイブファング傭兵団のハヤト=ヴォルファングだ、よろしくな!! んじゃ、俺はナリアの方を先に落とす感じで動くとすんぜ!! ギャメルやトゥーリの援護も頼もしいしな♪
…リリィよ ちょっと思うとこあって参加したわ あ、装備は出発前には付け直すわ。今今後のパッシブどうしようか考えてるだけだから( 基本的に私は後方から範囲爆撃と回復に専念した方がいいかしらね。キャスターらしく
シーフのフリューだよ、よろしくね! ちょいとみんなの基本対応予定まとめてみたんだけど、間違ってたらごめんね! ひとまずうちは、盛れるだけ抵抗盛って、対ジニスで動こうかな。 通常個体も相手にしつつって感じで。 〇行動予定(仮) 対ナリア:アステル、ハヤト 対ジニス:アルベルト 支援&後衛等:ギャメル、リリィ、トゥーリ
フリューはまとめありがとー!オレはそれで問題なしだ! いち早く増援を止めるためにも、疾風足でナリアに接近、薙ぎ払いで範囲攻撃していく予定だぞ!
あ、スキル構成は支援寄りだけど位置取りとしてはリヴァが射程0の関係で、アルベルトさんに近い位置にいた方がいいかなと思ったのでまとめとしては↓の感じにしようかな! フリューさんはまとめありがとう! 〇行動予定(仮) 対ナリア:アステル、ハヤト 対ジニス:アルベルト、トゥーリ 支援&後衛等:ギャメル、リリィ >任務目的 ・特異個体のうちどちらかを撃破する これ、ナリオを撤退に追い込んだ場合にはジニスを確実に倒さないといけないんだね。 ナリオを撤退させるか、撃破を狙うかは決めておいた方がよさそう?
・・・ん、シューターのセリオスだ、よろしく頼む ジニスは最後まで逃げな相だがナリアは撤退することがあるとあるから、大成功を目指すならナリアを倒してからジニスというのがベストか とりあえず俺は後衛で後ろから弓で援護の予定だ。通常のコボルト狙いで特殊組のほうに行かせないようにな 〇行動予定(仮) 対ナリア:アステル、ハヤト 対ジニス:アルベルト、トゥーリ 支援&後衛等:ギャメル、リリィ、セリオス
>ナリア 情報では触れられてねぇけど、コイツ、光縛封とかしてこねぇだろうな……。か、考えすぎ、だよな!? カバリングで厳重にガードされそうだけど、複数攻撃でカバリングを突破したり、ナリアとジニスを引き離すとかで対処できそうかな? >撤退or撃破 敵ヒーラーがいると厄介だし、PL情報の落とし込みができりゃ早めに撤退させるのが戦いが楽になりそうだ。 ナリアを撤退させてジニスを落とせなかった時は、成功条件が満せねぇんだな。 ただそんだけジニスが強敵なら、ナリアや増援の相手をしながら戦うのはキツイかも? そこそこの成果を安全に目指すなら、撤退狙いもありって気はする。 ナリア撃破に反対ってわけじゃねぇから、その場合はきっちり協力するぜ!
た、たぶんヒールと輝腕って書いてあるしだいじょーぶなんじゃないか……!? カバリング対象一人だけなら複数で攻撃するのはアリだな!ギャメルの言う通りジニスを引き離すのでも問題なさそうだ! ナリアを撃破、撤退させるかどうかはみんなの余力に任せるぞー!一応は撃破狙いで攻めるつもりだ!
光縛封は可能性としては考えておいた方が良さそう? わたし、魔法攻撃あるから一応そうなったら壊す準備はしておくね カバリングって結局回数制限あるんだよね…… ナリアの方に範囲攻撃含めて何回も攻撃したら、結構削れる気はするかも その場合は、リヴァーオブバイタル的な強力な回復技があったときに面倒、かなぁ とりあえず両方撃破狙いってことだね 増援の位置的には左右から挟まれる形でどんどん敵が来るんだね ここは早めに増援を阻止しつつ、挟撃の状態は解消したいね……
アステルとトゥーリ、返答ありがとうなー! そうだな。万が一に備えて魔法攻撃も用意しとくくらいがよさげだな。 これは前衛のみんな次第だが。 ナリア撃破を狙うって話なら、ジニスへの対処は張り付いて移動を抑える程度で、ナリアに集中砲火してくのはどうだ?
うちも光縛封の可能性はないよりはあるって考えておいたほうがえぇかなって思う 思いつかんかったから、可能性挙げてくれてありがとうさぁ♪ ジニスの大剣が怖いんよねぇ、嫌な予感がするっていうのが特に。 ……可能性として≪殺界≫に似たスキルも使えるかもと思っておいた方がえぇかな? こう、切り札的な感じで? んー、ナリアとジニスの両方撃破は難しいかなと思った。 もちろん出来るならしたい。 ただ通常個体って言っても5ターン毎に増えるコボルトも相手にしながらというのは、キツイかもと思っておいた方がえぇかな。心配性なだけかもしれんけど(笑いながら) 挟撃はこわい。こわいさぁ(同意するように何度もうなずいて) 撃破の優先順位をつけるのはどうやろ? ナリア>コボルト>ジニスって感じで。 そんで全体方針を 対応は先に挙げてた行動予定(仮)のメンバーのまま。 ジニスにカバリングさせて回数を削る、ナリアとジニスを引き離す、範囲攻撃にナリアを含めて攻撃する。 コボルトを各5ターン以内に倒しきれるよう調整と連携していく。 もしものためのこちらの撤退条件は戦闘不能者が3~4人出たら。 っちゅうのはどうやろか?
すまんち!まとめてしもうたけど!! ギャメルのナリア集中砲火って意見に賛成ってことで!!
>方針 基本的にはギャメルさんのナリア集中砲火に賛成だぜ。 その場合、俺もジニスではなくナリアに向かった方が良いか?
だいぶ時間空いちゃった ナリア集中砲火ね、了解
>方針 ナリア集中攻撃りょーかい! >アルベルト カバリングの妨害、引き付けも兼ねてるしジニスと戦うのも問題ないと思うぞ!
>アステルさん 了解したぜ。ジニスは俺が引き受けるぜ!
ん、プレイング送っておいたぞ!アルベルトのジニスとの戦闘もできるだけフォローしてみるからな!
>アステルさん 助かるぜ!!ありがとな!