月夜と白い花

螺子巻ゼンマイ

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シナリオID:762

オープニング

 キッカケは、祖父が持っていたその絵だった。
 満月を映す小さな湖と、その光に照らされた白い花たち。
 幻想的な絵画の風景は、しかし現実にこの世に存在するのだと、聞かされた。

 以来、月と花の絵画に魅せられた私は、自分でも絵を嗜むようになり。
 多くの月と花をモチーフに、描き続けていたのだけれど。

(……違うなぁ)

 どうしても、納得のいく一枚は描けなかった。
 あの絵に、追い付けない。模倣するだけではダメなのだ。技法やモチーフを寄せた所で、私の感覚があの絵を通して見た景色に、囚われたままなのだから。

(一度でも、私の目でその景色を見られたら)

 何か、変わるだろうか。
 自分の想いを乗せた、自分の絵を描けるだろうか。
 けれどそれは叶わない。絵の風景がどこにあるかを知る祖父は、私が絵を描き始めてすぐ、その在り処を教える前にこの世を去ってしまったから。

 半ば諦めつつ、精彩を欠く絵をそれでも描き続けていた、ある日のことだ。

 亡くなった祖父の墓参りに行った私は、そこで父の旧友という男と顔を合わせた。
 彼と祖父の思い出話をした私は、ふと思い立ち、彼に絵の風景の場所を問うてみた。
「ああ、それなら」
 彼は知っていた。東の山の奥にそれはあり、今も変わってはいないだろうと。

 しかし、問題が二つある。

 一つは、東の山で件の花が咲く期間は短く、満月の夜となればチャンスはごく限られているということ。
 もう一つは、近年その周辺で、厄介なクリーパーが姿を見せているということ。

 だから花を見るとしても、向こう数年は難しいかもしれないね、と父の旧友は笑った。
 彼にしてみれば、それは命の危険を冒してまで見るべきものではなかったのだろう。
 当然の反応で、私もその場は笑って同意したけれど。

(……やっぱり、見たい)

 衝動を、抑えることは出来なかった。
 危険なことは理解している。私だって出来得るならば命の危険は避けたい。
 けれどこれだけは。あの風景だけは、どうしても。

●

「どうしても、この目で直接見てみたいんです」

 若い女性は、そう言って拳を握りしめた。
 バカなことだ、と笑われる覚悟をしていたのかもしれない。
 絵の風景を見るために、危険を承知で魔獣の潜む森を進みたい、だなんて。

 だが、なんにせよ。
 彼女の願いを聞いた冒険者たちは、その依頼を引き受けることにした。

解説

●目的 絵の風景を見せるため、画家の女性を護衛する。 ●敵 8体の樹木めいた小型クリーパー。 トレントを思わせる枯木のような外見のクリーパーで、腕のような枝による殴打や、根を伸ばしての中距離攻撃を行う。 根の攻撃を受けると、『束縛』と『スリップ』のバッドステータスを受ける。 根による拘束なので、攻撃を加えることで解除が可能。 ●場所 森の中。木々は邪魔となるが、視界や足場はそれほど悪くない。 順当に進んでいけば、日のある内にクリーパーと出くわすことになるだろう。 ●護衛対象 ルシール・ビヨン。 19歳の女性。絵を描くのが趣味だが、それで生計を立てているわけではない。 戦闘能力は皆無である他、鞄に画材を詰め込んでいるため動きは鈍め。 戦いになった際は、彼女を上手く守る必要がある。

マスターより

こんにちは、螺子巻ゼンマイです! どうしても見たい景色。心を奪われてしまった幻想。 その為に命がけの依頼を出した彼女を、どうか守ってあげてください。 上手くいけば、冒険者たちも絵画の風景を共に楽しめるはず。 彼女と一緒に絵を描いてみるのもいいかもしれませんね。

リプレイ

「画家様というものは物好きな方ですわ」

 依頼の詳細を聞き、バンビは率直な感想を口にした。
 クリーパーの出没するような地域に、絵を描く為に足を延ばす。
 そんな危険なこと、流石に感心は出来ないだろう。
 ぐっと唇を噛むルシールに、「でも」と彼女は続ける。

「嫌いじゃありませんわ」
「……!」

 抑えきれない欲望というものは、ある。
 魔導の秘奥への飽くなき探求心を抱くバンビにとって、その願望は決して他人事ではなかった。
「本当に好きな事の為なら命の危険があっても、ってその気持ち、僕にも分かるよ」
 ララベル・サン・ディーベルにも、彼女の願いは伝わった。
 命を懸けても良いと思える大切なこと。その為に協力が必要なら、彼は決して躊躇しない。
「だから、僕も力になりたいな」
 明るく微笑むララベルに、ルシールは安心して息を吐く。
 冒険者たちは、彼女の願いを否定しなかった。
「絵画の風景を探しに行くなんて、ロマンチック~♪」
「お祖父さんとの思い出のモチーフ……なのかな。ワタシも、お手伝いするよ!」
 むしろ彼女の背中を押すようにザザ=ステルヴィナやトゥーリは言葉を掛ける。
 危険は承知。ならば自分たちで彼女を護ればいい。
「何としても、ルシールちゃんの目的を叶えてあげたい所よね♪」
「よし、なら話は決まりだな」
 ザザの言葉に頷いて、アルベルト=V=シュタールシュヴェーアトは立ち上がる。

「さあ、その美しい風景を見に行こうぜ」
「……はいっ!」

●

「ルシールさんは、重たい画材をお持ちなんですね」

 支度を済ませた彼女を見て、オゴスはそう口にした。
「えぇ。出来るだけ減らそうとは思ったんですけど……」
 ダメでしたかと心配げに言う彼女に「いえ」と彼は首を振る。
「ただ、俺はエーテルを使って荷物を安全な空間に収納出来ますから」
 よろしければ荷物をお預かりしますよ。
 オゴスが提案すると、ルシールは迷いを見せる。
「……出し入れは簡単ですよ。ほら、こんな風に」
「あ、ごめんなさい。そうじゃなくて……申し訳ないかなって」
「なら問題ありませんよ。自分で持つより楽ですし、それに」
 オゴス自身、ルシールの覚悟を気に入っていた。
 彼女が絵を描く助けになるなら、色々と協力したい気持ちがある、と語る。
「そう、なんですか?」
「やっぱり変ですかね、こんな俺が」
「いえ! ……助かります。お願いしますね」
 きっと、意外には思ったのだろう。
 その機微を感じつつ、けれど大切な画材を笑顔で預けてくれたことに、オゴスは内心ほっとする。
 大荷物を負って山道を歩くのは、不慣れな者には厳しい筈だ。

「その風景画の場所って、どの辺りにあるんだっけ?」
「簡単な地図と、目印になる場所は聞いてあります。確か……」
「ふむふむ。ならこっちの方かな。迷わないようにしないとね」
「疲れを感じたら言ってほしい。休憩を入れる」

 方向や目星を確認したララベルやセリオス・オーガストは、己の位置感覚を活用して一行をナビゲートする。
 ザザも暗視や天眼を用いて方向のズレを修正し、木々の狭間から目印を発見していった。
 歩く速度はルシールに合わせ、ゆっくりとだが確実に、一行は目的地へと近づいていく。

「あの音は……猪か何かだな。息遣いも聞こえるし」
「他に気になる音はしないよ! この辺りは大丈夫だと思う!」

 シュロやトゥーリの報告を聞いて、何度目かの休憩を行った。
 岩に腰かけ汗を拭うルシールに、「それにしても」とシュロは問いかける。
「お爺さん、こんな山奥にどうして来たんだろうな?」
 クリーパーが出るのは今だけだとして、山歩きの辛さに変わりはないだろう。
 彼女の問いに、ルシールは「噂があったそうです」と答える。
「噂って、絵の風景のか?」
 アルベルトの言葉に、彼女は頷く。
 昔から、そういう風景があるという小さな噂が伝わっていたらしい。
 元はどこかの冒険者が偶然に発見したのだろう。
「祖父は画家の友人とその場所を探して、山に入ったとか」
「それであの絵に繋がるのか。ビヨンさんのお祖父さんも、凄い人だぜ」
「その場所に着いた時は、きっと感動したんだろうな」
 あるかどうかも判然としない景色を求め、出会った。
 きっと祖父にとって大切な思い出になったのだろうと、シュロは感じる。
「ルシールさんの行動力も、もしかしたらお祖父さん譲りなのかもね!」
「そう、かもですね」
 トゥーリの言葉に、彼女は照れくさそうに微笑んだ。
 それから「もう行きましょう」と立ち上がった彼女に、「そうだな」とセリオスが答える。
(祖父の事を考えて、元気が出たか)
 これならもうしばらくは歩けそうだ。
 彼の見立て通り、それからまた一行は順調に山を進んでいった、のだが。

 まずは仲間たちの聴覚が、異変を捉えた。
 次いでセリオスやシュロが、目視でクリーパーたちの姿を確認する。

「お邪魔虫が出たな! ん、虫じゃないな。お邪魔樹?」

 ララベルとオゴスが捜波で状況を把握すると、ザザとバンビがルシールと共に下がる。
 同時に、敵の方も冒険者たちに気づいたらしい。メキメキという異音が辺りに響いた。

「まあいいや。すぐ倒すから安心するといいぞ!」
「大丈夫、僕達が絶対に守るから」

 臨戦態勢。
 乗り越える為には、倒す他ない。

●

「ビヨンさんの願いを邪魔する無粋なクリーパーめ! 俺の太刀の錆となれ!!」

 ダンッ!
 強く地面を蹴り、加速してクリーパーへ接近したアルベルトは、大太刀で鋭くその樹皮を狙う。
 刃は炎のように光輝くと、敵の体を深く切り裂いた。
(例の場所で戦う羽目になったら、って思ってたが)
 周囲にあるのは、木々ばかり。
 ここなら周囲を気にせず、完璧に攻撃へ集中することが出来る。
「絵の風景を見せるために、殲滅するぜ!」

「――何があっても貴女は護ってみせるから、絶対に私達から離れちゃ駄目よ」

 彼女の前に立つザザの言葉に、ルシールは不安げに頷く。
 そんな彼女の周囲を、魔法で生み出された鉄壁が覆った。
「ルシール様、どうか戦闘中はこの壁から出ないようにお願いいたしますわ」
「防御はオレが担当いたしますから、ザザ様は」
「えぇ、攻めるわね♪」
 言いながら自身も爆炎を放つバンビに、ザザは微笑みながら答えた。
 もしも敵の攻撃がルシールに向かった時は、とザザは考えていたが。
 バンビが守りを固めたお陰で、攻撃に意識を割くことが出来る。

「輝き燃える赤き炎よ 我に従い煉獄となれ――〝フレイムゲイズ〟」

 己の生命力を注ぎ込み、放たれた炎球は三体のクリーパーを一挙に焼く。
 その焔はザザの意志通り、木々を避け敵のみを焦がしていった。
 火炎を身に受けながら、クリーパーはこちらへと根を進めようとしたが……

「近づかれては困りますので」

 バンビは雷光を招来し、その歩みを防いだ。
 これで依頼人への直接的な接近は封じることが出来るだろう。
(あとは状況を見て)
 必要なら、彼女を連れて退避も行おう、とバンビは考える。
 だが現状。魔弾で弱った敵を砕きつつ、その必要は無いかもしれないと彼女は思った。

 バンビの鉄壁で囲われたルシールの直近には、キャスターが二人。
 更に彼女への攻撃を防ぐべく、シュロとトゥーリも鉄壁の周囲を守っている。
 敵の攻撃が地中を通るとはいえ、こと防衛に置いて案ずる心配はなさそうだった。

「喰らえ、疾風三連突!」

 敵陣をかき乱すのは、速度を上げた二人のシーフ。
 ララベルの細剣がクリーパーの樹皮を削り取り、オゴスの祭刀が枝を切り落とす。
 共に攻撃後は即座に敵との距離を取り、近接による反撃は防いだ。
「注意、引けましたかね」
 オゴスの呟き通り、複数体の敵がシーフへと敵意を向ける。
 瞬間、一閃。光の矢がクリーパーの体を貫いた。

「……援護は俺がする」

 セリオスの放つ弓だ。
 木々の間隔は広く、一度看破した敵へ狙いを定めることは容易い。
 二人の狙いに合わせ矢を番えたセリオスは、エーテルを籠めた一撃で着実に敵の力を削っていく。

 当然、クリーパー側もただやられるばかりではない。
 直接の攻撃が届きづらいならば、根を這わせ相手を縛り付けようと狙ってくる。
「読み通りだよ」
 だがララベルは、音や僅かな地面の盛り上がりから、根の位置を予測していた。
 身を翻し拘束を避けた彼は、三連撃にて敵の一体を弱らせる。
 力が抜けてよろけた個体に、更に二撃の矢が突き刺さった。
「一体撃破。残りは……」
 素早く次の矢で狙いを定めながら、セリオスが状況を見る。
 彼の矢雨を嫌ったのか、クリーパーの根の狙いがセリオスへ向いた。
「仲間の邪魔はさせないぞ!」
 けれど根が届く前に、シュロの盾がそれを防いだ。
 ぎちり。侵攻を阻まれた根は、代わりにシュロを盾ごと縛り付けようとするが。
「大丈夫ですか、シュロさん!」
「ぐぐ……解けたぞ!」
 トゥーリの手の平から流れた光が、シュロに力を与えた。
 根による拘束は弾かれるように解除され、彼女はふぅと息を整える。
「回復もしますか?」
「今は平気だぞ。先に残りを片付けよう」
 根の攻撃も、彼女の頑強な体にはさほどの痛手ではなかったようだ。
 ならばとトゥーリは改めて敵へ狙いをつけ、弦を引く。
「こっちだよ!」
 バンビの妨害があって尚、こちらへ攻撃を向ける敵はいる。
 そんな敵を優先し、彼女は光の矢を放っていく。
「っとと……!」
 狙い通り自身へ向けられた根の攻撃は、コンコンと地を跳ね回避する。

「無粋なクリーパー様方はさっさと灰になっておしまいなさいまし」
「ルシールちゃん、もう少し我慢しててね~!」

 敵の残数は、三体ほど。バンビは休まず爆炎を撃ち放つ。
 全身が焦げ付いても尚崩れなかったクリーパーは、次の一瞬にはザザの放った氷の嵐で、遂に動きを止めた。
 魔法の範囲外にいた者には、アルベルトの一撃が待っている。
 渾身の斬撃は、硬い樹皮を突き破ってクリーパーの躯体を両断した。

「撃破したぜ! 残りは何体だ!?」
「あと一体だ。……終わらせる」

 最期の一射は、セリオスが放った。
 もはや攻撃範囲を広げる必要は無い。
 故に矢じりの一点にエーテルを収束させて、射出した。
 風を切り鋭く飛んだ矢は、敵の体深くまで突き刺さり、命を貫く。

「……他に動いている個体はいない。全て倒せたようだな」

 ややあって、弓を下したセリオスは、息を吐きながら呟いた。
 気配も音も、敵の存在を示すものは残っていない。
 彼らを邪魔する脅威は、消え去った。

●

 回復を終えた一行が再び進み始めてから、数刻後。
 日が落ち視界が暗くなってきた頃、彼らは開けた場所に出た。

「わ……」

 目の前には、湖。
 その周囲には、咲き誇る純白の花々。

「ねぇ、ここって!」
「はい。……はいっ!」

 トゥーリの問いかけに、ルシールは涙ぐんで頷いた。
 間違いない……ここだ。この場所だ。
 絵画に描かれた風景は、確かにこの場所に、存在した。

●

 トゥーリたちが野営の準備を終えた頃には、すっかり夜になっていた。
 昇ってゆく満月と花々を見つめるルシールに、シュロは問う。

「ルシールはどんな絵を描くんだ?」
「最初は同じ構図で、って思ってたんですけど……」
「あの満月も、周りの花も綺麗だからな。迷うのも分かるぞ!」
「だったら、月が見えて花がよく咲いている場所、探すよ!」

 シュロが頷くと、トゥーリが提案する。
 良いですねとルシールが答えると、シュロは足元の花に触れて言った。

「そうだ。わたしはお爺さんの為に花冠を作ってあげるぞ」
「祖父の為に、ですか?」
「きっと、お爺さんもこの花が綺麗で好きだったんだろうからな」

 墓に供えてあげたら、きっと喜んでもらえるだろう。
 シュロの言葉に、ルシールは「きっとそうだと思います」と微笑む。
 それから、各々はゆっくりと辺りを散策し始めた。
 月と湖、それぞれから光を浴びる白い花弁は、それ自体が輝いているようにも感じられる。

「こんな景色が見れるから、僕は冒険がやめられないよ」

 幻想的な風景に、ララベルの気持ちは高揚した。
 険しい山を進み、立ち塞がる敵を退け、その果てに辿り着く景色。
 このワクワクの為になら、自分はきっと何処までも冒険出来る。

(今度は、共に訪れたい所だな)

 光景を目に焼き付け楽しみながら、セリオスは心の中で思う。
 道は覚えた。機会があれば、番と二人でここへ。

「まるで絵画の中の様に綺麗~♪ ――良かったわね、ルシールちゃん」
「はいっ! 実際に来て、見て……今、凄いです!」
 どうしてその色を乗せたのか。どうしてその形に描いたのか。
 こうして観ると色々なことが分かると興奮気味に話すルシールに、ザザはフフッと笑みを零す。
 連れてきてあげられて、本当に良かった。

(いつか、想い出の風景画以上の絵が描ける様になるわ)

 ひたむきな貴女なら、きっと――
 ザザに見守られながら、彼女はトゥーリと共に、ようやくここという場所を見つけた。

「ここで書く? ワタシ、もっと探せるよ!」
「ありがとう。でもここが良いかなって」
「なら、画材もお渡ししますね。どうぞ」
「オゴスさんも、ありがとうございます!」

 トゥーリやオゴスに礼を言い、ルシールが準備を始める。
 と、バンビはそんな彼女の傍に光の球を呼び出した。
「手元が暗うございますのでお照らしいたしますわね」
「俺もここで描くぜ。いいか?」
「僕も、友達の為に描こうかな! 隣お邪魔するね」
 アルベルトやララベルも、その光の元で絵筆を取る。
 ややあって、花を摘んだシュロも光球の近くで花冠を編み始めた。

 白い花に囲まれた月夜は、そうして静かに過ぎていく。
 しばらく周囲の警戒を続けていたオゴスも、気づけば辺りの景色に心を奪われていた。
「良かったら、オゴスさんも描きませんか?」
「いえ、俺は……無理ですよ。綺麗に描けませんから」
 それに気づいたルシールに声を掛けられ、オゴスは遠慮がちに首を振る。
 本当に美しい物なんて、自分の手では作り出せる筈がない。
「私も最初はもっと下手でしたよ。あの絵の真似ばかりで」
「……お誘い、ありがとうございます。ですが」
 待っています、とオゴスに言われ、彼女は残念そうに絵に向き直る。
 オゴスは彼女の指の動きをしばらく眺めて、やはり違うのだと考えた。
(今のルシールさんが描いているのは、本物でしょう)
 自分の目で観た、本物の自分の絵を描こうとしている。
 彼女がそう出来た事を喜び、尊敬しながらも……オゴスの内には、羨望の感情も燻っていた。

●

 やがて月下に「出来た」と声が木霊する。
 月が沈みきってしまう前に、彼女たちは銘々に休息を取り、明日の下山に備えた。

 花と満月が揃うのは、また来年になるだろう。
 けれどその時を待つまでもなく、その光景は九人の心と、三枚の絵に焼きつけられた。
 ルシールの祖父たちの思い出は、冒険者たちの思い出となったのだ。

マスターコメント

ルシールはその後、お祖父さんのお墓に花冠と書いた絵を持って行ったそうです。 この日描いた花の絵も、これから先に描く彼女の絵も、冒険者さんたちが遊びに来たら快く見せてくれるんじゃないでしょうか。 というわけで、お疲れさまでした。 今回の『難しい』ポイントはルシールの護衛だったので、がっつりしっかり守ってくださった結果の大成功です! 満月と花が揃うのは年一、四月のどこか……くらいの想定です。 なので、次に行けるのはまた来年。その時に冒険者さん達が今回観た景色を思い出してくれたら、或いは足を向けてくれたら嬉しいですね。 ご参加いただき、誠にありがとうございました!
ショートシナリオ

ショートシナリオ難しい 報酬:標準8 / 4〜8人

2021年04月12日 07時26分57秒 公開

大成功

相談掲示板

  1. ザザ=ステルヴィナ

    キャスターのザザ=ステルヴィナよん。今回は宜しくね。 絵画の風景を探しに行くなんてロマンチック~。 何としても依頼主ちゃんの目的を叶えてあげたい所よね♪ >探索 森の中で長時間行動する事になるから、 暗視や位置感覚を持っている人は活性化して行った方が良いかも。 あとは延焼を避ける為に炎系の魔法を行使するのは極力避けるカンジ?

  2. シュロ

    放浪騎士のシュロだ。クラスはウォーリアだぞ。よろしくな! 絵画に収めたい風景ってどんな景色なんだろうな? きっととっても綺麗なんだろうな! わたしもそれが見てみたいし。頑張って護衛するぞ! >敵 今回は木のおばけか。炎が効きそうだけど、火事は怖いし確かに控えたほうがいいかもなっ。 根っこの攻撃で捕まえてくるみたいだから、すぐ助けられるように連携を大事にしないといけないなっ。 >索敵 木に擬態してるなら、シーフの人は索敵スキルが役に立ちそうか? 汎用のだと看破とか、動いた音を察知する超聴覚とかも使えるかもな。

  3. オゴス

    シーフのオゴスと申します。どうぞよろしくお願い致します。 綺麗なものや美しいもののために命を危険にさらす心意気……。応援したいですね。 >敵 捜波を用意できます。 敵の数が多いですし索敵の手段が豊富な方が安心できますね。 >護衛対象 ルシールさんの了承を得て、マジックポケットで荷物をお預かりできないかとも考えています。

  4. ララベル・サン・ディーベル

    僕はシーフのララベル・サン・ディーベル。 みんな、よろしくね!

  5. アルベルト・V・シュタールシュヴェーアト

    ウォーリアのアルベルト=V=シュタールシュヴェーアトだ よろしくな

  6. トゥーリ

    トゥーリだよ、みんなよろしくね!

  7. バンビ

    ハイスピードキャスターのバンビですわ。 よろしくしてくれてよくってよ。

  8. シュロ

    >メンバー 今回の皆のクラスはこんな感じだな。バランスよくって感じだ。 ウォーリア 2 シーフ 2 キャスター 2 シューター 1 ヒーラー 1 >ルシール護衛 彼女のことは勿論、運んでる荷物も壊されちゃ駄目だな。 オゴスの案はいいと思うぞ。彼女が身軽になれば守りやすくなるしな。 わたしも今回は彼女の傍で護衛役になろうかな。根っこでの攻撃だと、最初から地面の下に潜ませてて、その上に着た瞬間とかに奇襲されると危ないからな。

  9. セリオス・オーガスト

    ・・・ん、遅くなったがシューターのセリオスだ、よろしく頼む <ポケット 悪くないと思う。ただでさえ守る対象があると行動が制限されるしな。ただまあ依頼人が許可してくれればだから依頼人としても大事なものだししっかり話を通したほうがいいだろうな あとはMSからもある通り順調に進めば日中でトレントと出くわせるようだからなるべくそれに間に合わせたいところだな。夜戦闘だと暗視なりをもっていかんといけないだろうからな、守るうえで動きにくくなるのは避けたいところだ

  10. ザザ=ステルヴィナ

    >護衛 私も隊列後方で布陣する予定だから、 依頼人ちゃんがクリーパーに攻撃されないように気を付けつつ行動するわねん。 >戦闘 特性:閃く爆光/フレイムゲイズ アクション:氷嵐/メテオライト/ヒール/エーテルバリア このスキル構成で行く予定よん♪

  11. ザザ=ステルヴィナ

    連投ゴメンなさい。 >フレイムゲイズ コレ炎系なのだけど、対象識別の魔法なら延焼しないわよね?

  12. バンビ

    ザザ様が攻撃系ならば、俺が防御系を担当しますわ。

  13. オゴス

    >延焼 エーテルで出した火はあまり燃え広がらないといった記述をどこかで見た覚えがありますし、対象識別の魔法であれば炎を出しても大丈夫な気がします。 絵を描く場所周辺を荒らさないよう、俺の方でも単体攻撃か対象識別の技を使うなどで攻撃手段には気を付けようと思います。

  14. ララベル・サン・ディーベル

    ギリギリの発言になっちゃってごめんね。 僕は位置感覚持って行ってのナビゲートと、捜波・改と超聴覚で索敵できるようにしていくから。

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0