いつか辿り着く約束の日へ ―第1話―
広大野人
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シナリオID:741
オープニング
その伝説を継承する者がいなくなって、どの位の年月が経過したのだろうか。
不気味な程に低く重く広がったどす黒い雲……絶望を呼び、命を貪るそれはさながら、地獄が空を埋め尽くしたようで。
この世が暗闇に閉ざされかけたその時、陽の光が一条、暗雲を貫いた。息をのむほどの眩い光芒だった――。
●山上の砦
リーンエス王国とシルトラース帝国を隔てる山脈の一つに、その砦はあった。
砦といっても、大層なものではない。かつては何かしらの神殿があったそうだが、いつしか崩れ落ちた場所に、見張り塔として建てられたものだ。
所属は王国。砦の役割は国境警備というよりかは、密輸の監視が主であった。砦を通過する峠道はメインの街道と違い、険しい山道である。人の気配が少なく、街道を通れない理由がある者が使用していたからだ。
もっとも、それは過去の話。シルトラース帝国の崩壊により状況は一変する。
「隊長殿! 至急の報告でっす!」
兵士の一人であるコルサが慌てて隊長室に入った。
いささか無礼かもしれないが、そもそも、この隊長室には扉というものがない。
いちいちノックしているとキリがないので外してしまったのだ。
「手短に言えやぁ」
一瞬だけ視線をコルサに向けて言い放つと、本国への書類作成に戻る隊長。
いつもの事なので、兵士は気にせずに報告する。
「帝国側から幾体かのクリーパーが接近中でありまっす!」
「ったく、またか。ここは奴等の保養所だな」
「であれば、出迎える者が必要かと」
いつものやり取りに隊長は大きく頬を膨らませ、大きく息を吐き出した。
帝国の崩壊後、暫くの間は難民の受け入れ手続きに追われていたが、ここ最近はクリーパーのご来店が多くなっているのだ。
質・量ともに厄介な程に。幾度か本国に応援要請をしたが、奴等は尽きる事なく攻め寄せてくる。
「補給と休暇を兼ねてヴォーンに降ろした連中はまだ帰って来てないな」
「来てないっす。これは些か間が悪い感じっすね……どうします?」
砦から山道を王国側に下っていけば、ヴォーンの街にたどり着く。そこそこの大きさの街だ。
何かと必要な物資の調達や兵士達を休ませるのに使っているのだが、今回はタイミングがよろしくない。
「追い払ったばっかりっつーのに、おい。冒険者に依頼を出すぞ」
「了解っす。じゃ、いってくるっすね」
「ちげーよ。俺が本国への報告を兼ねて、街まで行ってくるんだよ。コルサは留守番だ」
折角、街に出て楽しもうと思っていたコルサの心中を粉砕する隊長の一言であった。
●ヴォーンの街にて
砦の隊長であるイェルド・ルリンは、正式の王国騎士である。
一見すると半分閉じた目にかったるそうな顔つきをしているいい歳の男性ではあるが、その瞳に宿っている輝きは力強い。
不遜な態度も周囲に放っている警戒を誤魔化すもの。彼をよく知る者は二枚刃と二つ名で呼んでいる。
そんな強者、イェルド・ルリンでも手に負えないものがあった……。
「えーと。い、依頼の、持ち込みですね……ちょっと待ってて下さい。確か~。この辺に~」
ギルドの受付嬢アーネリーが、もたもたと依頼申請の書類を用意していた。
戦える者は総じて性別は関係ないが心情のイェルドであるが、苛立つように思わずカタカタと足で床を踏む。
可愛らしい容姿ではあるが、それを台無しにする手際の悪さ。もし、直属の部下だったら怒鳴っている所だ。
「……本当に、ごめんなさい。私、昔っから、要領悪くて……」
「良いから、早く手続きを進めてくれ」
「はい……」
受付嬢だけを見ていて目の保養にしておくかとイェルドは心の中で呟いた。
自信なさげにゆっくりではあるが必要書類を揃えていくアーネリーに向かって、イェルドはアドバイスするように言う。
「……戦場じゃ、どんくさいのは死ぬが、真っ先に死ぬのは半端に出来る奴からだ。半端だから倒せねぇ敵に挑んじまう。どんくせぇ奴は一足遅れる分、そうはならなねぇもんだ」
「は、はぁ……」
それが慰めの言葉だったとアーネリーが理解したのは当分先の事ではあるが。
なんとか依頼申請に必要な書類を整理した受付嬢は、姿勢を正してわざとらしく咳払いする。
「お待たせ致しました。それでは依頼の確認となります。依頼主は王国騎士イェルド・ルリン様でよろしいですね」
「あぁ」
王国騎士とあろうものが冒険者に依頼を出すとは……とやっかむ輩もいそうだが、彼にとってはどうでもいい事だった。
戦場で戦えるか戦えないか使えるか使えないのか、それだけだ。イェルドから見れば、クソ役に立たない貴族よりも依頼で動いてくれる冒険者の方が親しみ易い。
「依頼の目的は『クリーパーの殲滅及び増援の足止め』。戦場となるのは帝国領側の斜面。民間人の存在は確認できず、戦場区域に存在するのはクリーパーのみ……お間違いないですね?」
「そうだ」
確認を取った事をチェックしていく受付嬢。
「先行しているクリーパーは数体。詳細な数は不明。増援が予想される為、所定位置にて防衛に専念し敵を足止め……土砂罠を発動となっていますが?」
「あぁ。あの辺りは剥き出しの斜面でな。人為的な土砂崩れを起こして、敵を一掃するんだ。所定位置ってのは周囲より一段高くなってるから巻き込まれたりはしないがな」
「な、なんだか、豪快ですね。というか命懸け……」
「あん? 戦場なんだから、当たり前だろう。俺も最前線で戦いたいが、罠の調整に回る。万が一でも冒険者を巻き込む訳にはいかないからな」
この王国騎士は、きっとあの手この手でこれまで幾度もクリーパーを撃退してきたのだろう。
態度は酷いが歴戦の強者である事に間違いはないようだ。これなら、受付嬢として安心して依頼を出す事が出来る。
「では、次に現状で把握しているクリーパーの詳細について教えて下さい」
そう言ってアーネリーはスケッチブックを取り出したのであった。
解説
マスターより
リプレイ
戦場となる山斜面へと到着した一行の眼下には、黒紫這者が数体ほど不気味に蠢いていた。
その動きはまるで、山裾を染めるように存在する群れを呼ぶようにも見えた……クリーパーにはそんな知性がないにしても。
「まずは先行しているクリーパーを殲滅するぞ」
短弓を構えながらセリオス・オーガストが仲間達に告げる。先行している数体の黒紫這者を倒し、土砂罠時の『所定位置』を確保しなければならない。
アリア・ティーダが足元をしっかりと確認しつつ、セリオスの言葉に応える。
「人型相手……確かに、この斜面なら数の優位は活かしきれなさそうだねっ」
「数的な有利を作らせる前に終わらせる必要があるという事だ」
正面を見据えたままセリオスは告げると素早く矢を番える。
足場は不安定だが、狙えない状態ではないからだ。
同じように弓矢で狙いを付けるアスティン・ヴェルライン。
「罠があると理解できる知性があるかわからないけど、怪しまれないように倒しつくすつもりで立ち回るべきかな」
クリーパーの生態は完全には解明されていないが、一般的には知性は無いとされる。
人の知性や感性が通じる相手ではないので、予想外な動きもあるかもしれない。警戒して損はないはずだ。
「ボクはヒーラーらしく。こつこつと戦域を有利に作らせて貰いましょうかっ!」
そう言ってアリアは仲間に輝刃のエーテルを付与していく。
「滑り落ちないように注意が必要だよ」
輝刃が宿った弓を見つめながらアスティンは苦笑を浮かべた。
この高さから山裾まで滑落したら、間違いなく命はないだろう。
「それ込みでの依頼みたいよね」
微笑を浮かべ、エミリア・シバが色っぽい仕草を交えて剣を抜く。
前衛組はまず、この斜面を降りなければ接敵できない。最初が肝心だ。
「クリーパー共の殲滅、及び足止めねェ。増援がどんだけ来るのかがわからねぇってのが辛い所か」
アウル・アンサラーがエミリアの横に並んで、援護するように矢を引き絞った。
「依頼主の期待通りにいくかしら。まぁ、仕事後の一杯のためにも頑張りましょう」
「“騎士サマ”としては随分なヤロウじゃねぇか。今まで会ったり見かけた騎士のイメージとは大分違うが……」
今回の依頼主――王国騎士イェルド・ルリンの横柄な態度はどちらかというと、荒くれの冒険者に似ているだろうか。
それだけで、随分と親近感があるようなものだ。少なくともふんぞり返っている貴族共よりかは。
「ハッ! いいねェ、俺ァこういうヤツの方が好ましいぜ。そんじゃ、命懸けで稼ぐとするかァ」
アウル、アスティン、セリオスの3名が同時に矢を放つ。
それらは申し合わせていないのもかからず、一番近い黒紫這者を直撃すると、その衝撃で転倒。別の1体を巻き込んで山裾へと滑落していく。
開戦の合図としては申し分ない。ハヤト=ガラン=ヴォルファングは剣を高々と掲げた。
「さぁ~て、そんじゃまあいっちょ、ブレイブファング傭兵団の名を売っときますか!」
半端に気を使うよりも最初から滑る事を考慮しつつ、一気に斜面を駆け降りる。
冒険者達の存在を知って一斉に奇怪な声を発する黒紫這者共。そこに向かって剣先を向けつつ突撃。
「こいつらは殲滅しちまっても構わねぇんだろ!?」
仲間からの返事が聞こえるよりも早く、剣を振るうハヤトであった。
●
「うるぁ! 俺がブレイブファング傭兵団のハヤト様だゴルァ!!」
雄叫びと共に剣を振るう。たちまち、黒紫這者の1体が袈裟懸けに斬られた。
そいつは立ち直る事もなく、斜面をふんばれずに転がり落ちる。
「なんだぁ!? 思った以上にバランス感覚がねぇのか?」
自身はエーテルを巧みに操り、足場の悪い所でも態勢を維持しているが、敵はそんな能力は持っていないようだ。
冒険者達へ反応を示す敵と危なげに姿勢を確保している敵と半々程。
「ほんとうよね。これなら一気に片をつけられそうよ」
剣と短剣の二刀を素早く繰り出すエミリア。
黒紫這者を斬りつけた後、フェザーステップで後衛の射線を確保するように華麗に移動した。
「さぁ、いいわよ」
「足があって歩いてるなら、奴らだって転がり落ちるはず」
アスティンが放った矢はエミリアが斬りつけた黒紫這者の脚の付け根を直撃。
辛うじて立っていた所だったようで、あっけなく転倒。後ろに控えていた別の1体諸共、斜面を落ちていった。
「ディディ、合わせるよ」
エーテルリンクで繋がっている大鼬に呼びかけると、再度、矢を番える。
この調子であれば、先行している黒紫這者は間もなく殲滅できるはずだ。スキルは温存しておいても良いかもしれない。
一方、アウルは周囲の地形を確認しつつ、矢を放ち続けていた。
戦場が山斜面だという事は事前の情報で分かっていた事だ。この攻勢はそれを活かした冒険者達の機転によるもの。
だから、大事なのはこれからだろう。その為には地形の把握はどうしても必要だった。
「ハッ! 所定位置が罠の安全地帯っつっても、戦う場として、足場がしっかりしている訳ねぇか」
少しでも良い足場があればと思ったが、これは酷い戦場だ。
それを分かった上で依頼してきた王国騎士も、相当だろう。
ほぼ決着が付き始めた戦いの行方に、アウルは次に番える矢を掴もうとした手を戻した。
「……人手が必要なら俺も手伝ってやるよ」
「助かるよ」
アリアの手には戦う為の武器ではなく、ロープや杭といった道具を持っていた。
戦闘はハヤトやエミリアの前衛二人とアスティンとセリオスらの射撃で圧倒している状態だ。攻撃を受けなければ祷者としての出番はまだない。
「早めに安全帯を作っておこうと思ってね」
万が一の為に杭を打ち込んだロープを垂らしておくのだ。
先行部隊を殲滅した後、増援が到着するまでの間、どの程度の時間的猶予があるか分からない……いや、時間はあまりないのかもしれない。
それは誰の目にも明らかだった。セリオスは攻撃の手を緩める事なく続けながらも、黒紫這者をしっかりと観察し続けている。
「耐久力自体は高くない様子だが……」
斜面を転がり落ちた黒紫這者は落ちた先で消滅していた。
動きも特段、早い訳ではない。攻撃方法も原始的だし、身体の一部を射出してくる攻撃も命中率が低く、話にならない。
「……くっ!」
正体が分からない違和感。
普通に戦っていたならば気が付かないだろうそれは、よく観察していたからこそ感じるものだ。
あるいは、もう少し戦えば、分かるものなのかもしれない。
先行していた黒紫這者を殲滅し、一行は所定位置を確保。その眼下には――おびただしい程の数の黒紫這者が、地獄から天を仰ぎ見るかのように、蠢動していたのであった。
●
「これはなかなかの量だよ」
呆れ気味に言いながらアスティンは、意識してエーテルを高めていく。
土砂罠発動までどの位、足止めが必要かはハッキリしないが、激戦になると容易に想像できたからだ。
「罠の範囲を聞いた時は冗談かと思ったが……納得だ。この数は罠があった方が良いようだ」
ニヤリと笑ったアウルは、群れとなって登って来る黒紫這者共を見つめる。
これらを撃退するには大規模な罠が必要なのだろう。アウルは一瞬だけ視線を砦へと向けた。
「ヘマはしねぇでくれよ? 騎士サマよォ」
「これだけ敵が密集して登ってこれば良い的だよね」
仕掛ける罠にとっても、そして、彼らの射撃的にも、だ。
アスティンが打ち込んだ射撃はある一点で光の爆発を起こした。たまらず、斜面を落ちる数体の黒紫這者。それに巻き込まれてさらにまるでドミノ倒しのように崩れていく。更に、アウルが放ったグラヴィティボルトは確実に黒紫這者の動きを阻害する。ただでさえ足場の悪い戦場だ。バランスを取るだけで移動ができなくなる。一角が移動できなければ、後続も立ち止まるしかない。
「ディディ。じきに敵が登ってくるんだよ」
大鼬にも準備させておく。敵の数が多い以上、少しでも手数が欲しい所だからだ。猫の手も借りたいとはこの事……鼬だが。
次に飛んだ貫通衝撃も直線上の黒紫這者へと次々に直撃。先ほどと同様に一部が斜面を落下する。
それを五感やスキルをフル回転させて見ていたアウルはある事実に気が付き、仲間達に伝えた。
「奴等、あまり横には広がっていかねぇようだな。馬鹿かよ」
数が多いのだから広く横に展開して包囲しながら登ればいいものだが、所詮は知能なしのやる事か。
彼の発言で、敵の動きを観察していたセリオスは違和感が何だったのか、閃く。
「……群れだ。どうしてか分からないが、群れている必要があるのだろう」
そういえば、先程の先行していた黒紫這者も、この広い戦場で集まっていたように見える。
群れていなければいけない理由が何か、そこまでは分からないが、試しにエーテルで形成された光弾を打ち込んでみた。
その光弾は先頭付近で炸裂すると濃煙が発生。煙の範囲外にあった敵は、普通に考えれば煙を避けるか踏みとどまりそうなものだが……特に気にした様子なく煙の中へと消えていく。
一方、煙の範囲内にあった敵は黙々と斜面を登ってくる。
「どうやら敵は盲目的に登って来るだけのようだ」
そうと分かれば、効率的に足止めさせる事が出来る敵を狙って攻撃していくのみ。セリオスもアスティンに合わせる形で炸光矢を放っていく。
敵は射撃の衝撃に耐えきれず転倒すると他の黒紫這者と一緒に斜面を落ちていく。
(まるで、雲のようだ。暗雲のような……)
セリオスは矢を放ちながら心の中で呟いた。
3人の冒険者から放たれる矢は、確実に敵の数を減らし、足止めになるだろう。
けれど、例えば、雲に矢を撃ち込んだとして――雲はその歩みを止めたりはしないはずだ。
後衛職のスキルが打ち止めになる頃には、黒紫這者共は所定位置へと最接近していた。
それでもかなりの時間が稼げたはずだ。
「とっととくたばりやがれ!」
ハヤトの怒号と共に繰り出される連撃の剣先。一撃、二撃と回るように斬りつけると、安全帯のロープに足を絡ませながら態勢を入れ替えて三撃目を叩き込む。
崩れて滑りやすい斜面でこれだけの芸当が出来るのは、シーフの能力と優れたバランス感覚の為だ。
目の前の敵を切り伏せると同時に巧みな機動で斜面を疾走。所定位置を登ろうとする黒紫這者共の正面に移動した。
「行かせるかよ!」
力強く踏み込んだ足を軸にして、剣を大振りで薙ぎ払う。
自身も転倒してしまいそうだが安全帯を有効に活用し、踏みとどまった。
後衛からの援護射撃を受けつつ、ハヤトは幾体もの黒紫這者を葬っている。戦闘が開始され10体は軽く超えているだろう。
その活躍を支えていたのはアリアだった。安全帯の作成から術による強化・回復など多岐にわたって一行を支えていた。
「ボクも前に出るよ」
敵の遠距離対策の盾を構え、彼女もまた前線に並び立つ。
所定位置の周囲は徐々に黒紫這者共に囲まれそうになってきている。後衛の射撃が側面を狙うとどうしても前線への攻勢が弱くなってしまうからだ。
「いざとなったら結界を張るから」
戦線を突破されそうになった時は侵入不可の結界が極めて有効なはずだ。使用回数が限られているので、使いどころは見極めないといけない。
そんな機会が来ないようにと戦い続けるエミリアは自身の持ち場の周囲をよく観察していた。
(前が詰れば、後ろの敵は立ち止まるの?)
確信があった訳ではなかったかもしれない。エミリアが防衛で意識していたのは倒しきるより足止めだった。
敵の射撃を僅かに体を反らして避けると剣を振るう。ただし、倒しきる程、追い込んだりしない。衝撃を与えて転倒させれば後続の幾体を巻き込んで滑落していくが、空いたスペースに生き残りが再び登ってくるのだ。倒す事も意味があるが、純粋な足止めも有効かもしれない。
「土砂罠で一網打尽に出来ればいいわ」
依頼の目的もそこにある。これほどの敵の数をハンターのみで討伐しきるのは困難だ。勿論、敵を倒す事による足止めも有効なのだろうが。
つまり、意識的な殲滅と足止め。その両方が求められており、図らずも一行の作戦はそれを達成するものだったのだ。
――ブオォォォ!!
唐突に鳴り響く重低音な笛音。罠の合図だ。
「いよいよか」
「ディディ、俺の近くに」
「全員、所定位置に入っているか?」
擲人達が最後まで矢を放ちつつ、所定位置の中央に集まる。
安全とは言われているが淵ギリギリで立つ必要はないだろう。
合図から僅かな時間差で、地面が揺れ出した……ドドドと腹に響く地鳴りが大きくなってくると同時に山の上が土煙に包まれて何も見えない。
大量の土砂が濁流となって落ちてきているのだ。到達まで僅かな時間もないだろう。
「作戦が成功したら、この活躍を王国騎士にアピールしてやるぜ」
「一応、ここに結界を貼っておこうかな?」
「すごい迫力よね」
前衛を務めていた三人も所定位置の真ん中に寄る。
冒険者達の眼前に迫る土色の煙――隣の人の声さえ聞こえない轟音と共に土砂がすぐ横を流れる。いや、落ちると言った方がいいだろう。
暗雲のように群れていた黒紫這者共は、成す術もなく一瞬で土煙の中に消えていった。その勢いは山裾まで止まる事はないと容易に分かるほどであった。
●
安全確認が終わるまで所定位置で待機していた一行の前に、板のようなものに乗った王国騎士イェルド・ルリンが斜面を颯爽と滑りながら降りてきた。
その滑り方はどう見ても慣れている様子だ。キュッとターンするように冒険者達の前で止まると、土煙を全身に浴びて酷い状態の一行に声を上げて笑う。
「ははは! いやー、良い出迎えができて最高だったろ?」
「こうなると知ってて、やりやがったか」
もっとも戦場で汚れる事は珍しい事ではないのでアウルは責めるつもりもないが。
「最高の出迎えが出来たぜ。ブレイブファング傭兵団のハヤト様がな」
「安全帯に必死に掴っていた姿だったがな」
セリオスの返しに、そんなところしか見られてねぇのかと驚くハヤト。でも、大丈夫。罠の準備をしていたイェルドからは、きっと何も見えてなかったから。
「結構大掛かりな罠だよね。あれなら確かに一網打尽」
「準備に時間が必要そうだね」
アスティンとアリアの言葉にイェルドは大きく頷いた。
罠として流れた土砂はかなりの量だった。毎回、罠を使用していたら頂上から山が削れてしまうだろう。
「強力ではあるが滅多に使えない。まぁ、またコツコツと材料を運ぶさ」
「また、敵が来るという事なの?」
「あれのすげー所は、懲りない事だからな。次があったら、またよろしく頼むわ。なんせ、君らへの報酬は国庫から出るから、俺の財布は痛くも痒くもないしな!」
エミリアの質問に対して酷い内容で返して笑う王国騎士であった。
マスターコメント
ショートシナリオ難しい 報酬:多い6 / 4〜6人
2021年04月10日 04時39分15秒 公開
相談掲示板
おーっす! ゴブリンのシーフ、ブレイブファング傭兵団のハヤト=ヴォルファングだよろしくな!! さて、足場の悪い斜面でクリーパー共の殲滅と増援の足止めか… なんなら増援含めて全滅しちまえばいいんだよな?せっかくの罠だなんだし、次回以降の襲撃に備えて温存しとけりゃより万々歳ってことだろ?
とっと、ヒーラーのアリアです。宜しくお願いしますだよー! 敵個々の能力は並って感じの説明だし、足場の工夫と、持久の手段が大事そうな…? >殲滅して罠温存 出来たら良いけど、増援を食い止めるって事は、かなーりの数…だよねぇ。 下手したら、その先行してる数以降の罠発増援って、罠が発動するまで延々追加とかってあるのかしら…?
・・・・ん、シューターのセリオスだ、よろしく頼む まあハヤトの言う通り全滅させられるならそれに越したことはないんだろうが、罠発動を考えるに昔のゾンビ襲来のころの数並みに多そうではあるから罠を発動させるまで足止めに徹してぐらいが前提でいいと思う。 あとは描いてあるが所定位置から外れると危ないので前に出すぎると危険そうだから位置取りには気を付けたほうがよさそうだな。足場も悪いからスキルでバランス感覚とかでもないと移動にも不備が出そうだしな
アウル、シューターだ。 よろしくなァ。 先行してるクリーパーを殲滅するまでは動き回れるだろうが、その後の足止めに関しちゃ動き回るのは危険だな。 ま、クリーパー共々巻き込んでくれ、っつーなら別だがなァ? どんだけ追加が来るのかはわからねぇな…。 罠の発動も、タイミングは騎士サマが見て発動させるみてぇだしよ。 かなりの持久戦になる覚悟も、必要かも知れねェ。 その規模次第ではあるが、罠を使わねぇように、と構えてるのは危険かも知れないぜ。 それでヤバくなったら身を挺して時間を稼ぐ…って言うなら俺ァ止めねぇがな。ハヤトくんよォ?ハハッ! ま、時数やらに余裕があるなら「罠の発動が必要かどうかは戦力差を見て判断して欲しい」とか書き添えておく位は良いかも知れねぇがな。 敵の強さにも依るが、範囲攻撃に乏しいと処理が間に合わねぇ可能性は高ぇとは思うぜ。
お姉さんは、シーフのエミリアって言うわ、今回はよろしくねぇ。 そもそも敵の数がわからないものねぇ、おねえさんは、依頼主の目論見がうまく成功するようにでいいと思うわ。 んー突破されずに罠で一網打尽にできるようにできるだけひきつけれるかっていうのも重要そうよねぇ、かといって、群がられすぎると一気に押されそうな気もするしそこらへんの塩梅も見極めないとって感じかしらねぇ?
とりあえず一般スキルでなんかバランスとかに使えそうなものを探しつつ… 依頼の書きぶり的に、所定位置さえ守り切れれば、敵は抜けなさそうなイメージ…定点防衛に特化する予定で取り合えず「輝刃2」と「ヒール」は持っていこうかなぁ。 どれだけ耐久出来ればいいかのイメージが未だボクはふわふわしてるかも。
シューターのアスティン。よろしく。 事前の敵の能力が不明点だらけだけど、 体の一部を射出ってあるから、遠距離攻撃もできるっぽいから、 数に任せて滅多打ちにされるのは避けたいね・・・。 斜面での戦いで、こちらが上ってなると、 足とか狙ってバランスを崩してやればクリーパー側も転がり落ちていく、かな?
ま、実際にやり合ってみねーとわからねーから罠温存は出来ればくれーに考えとくけどよ。 今回の編成にはキャスターがいねぇし範囲攻撃で一網打尽も厳しいからな。 後はアスティンの言うように斜面の上方から攻めれるなら障害になる物を転がし落とすのも良い策戦かもしんねーな。
>転がし落とし おぉ、なるほど。 相手も人型なら凄い効きそうっ! それとバランス対策でふっと思いついたのだけど、安全帯みたいなの貼ってみようか…? 紐を結んだ杭を何本か所要地点から垂らしとくみたいな。 常に身体を縛っとくのは無理だけど、毎ターン最初のバランス判定の際に近くにある紐を掴む感じで補助にならないかなって。
<バランス まあ遠距離組は動かないという手もあるだろうがな とりあえず俺はバランス感覚習得してきたからまあ、それなりに大丈夫だと思いたい。過信はしないがな <転がし 丸太でも用意できれば一番なんだろうけどな 手っ取り早いのは数は向こうのほうが多いだろうから斜面の上にいるのから狙って倒れて巻き込んで転げ堕とさせれば一番だろうか
>転がし落とし あァ、足を狙ってみるってのはアリかも知れねぇなァ。 クリーパーが故に通用しねぇって可能性もあるが、やってみる価値はあるな。 >安全帯 なるほどねェ。 出来りゃいいが、そのための道具と時間が確保出来るか、って感じだなァ。 道具としてあるものだと、ロープはあるが杭はねぇか…? まァ、プレイングで何とかなる可能性もあるがな。 上手く行きゃ助けにはなるだろうなァ。 取り合えず俺ァ、遠距離からの攻撃に集中出来るようにしとくか。 足を狙うってのも試してみるつもりだ。
ごめんなさい、あっという間に日数立ってしまっていたわ。 >転がし落とし 敵の前列とか転がせば、落ちてはいかなくても敵の後続の邪魔になるでしょうし、転がした敵を後続が踏んでくれたりとかあるかもしれないし、いい案だと思うわ! おねえさんはヒット&アウェイで敵の前列を出来るだけ攻撃って感じになるかしらねぇ。 バランス感覚に加えて、壁歩きとか持っていけば、足場の対策にも少しはなるかしら?