【豆充】チョコレートぶっかけ祭り
夜月天音
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シナリオID:676
オープニング
快晴の朝、辺境都市群、ヴェルクリエの入口。
「やあ、この都市にもカカオが大量に入って来て、ご覧の騒ぎさ」
住民が訪問客に声を掛け
「皆、バケツに入った溶かしたチョコレートを誰彼構わずぶっかけるんだ。行き詰った芸術家や職人達の気晴らしになるし、童心に戻れるって事で老若男女、皆楽しんでる。もちろんチョコレートの普及も目的にあるんだけどな」
眼前で繰り広げられている騒ぎについて解説し
「ぶっかけるチョコレートとバケツはあそこにある本部で貰ってくれ。チョコレートは火傷しない程度の熱さだし、お菓子作りの精鋭達の巧みな技術で冷えても固まらないし、味は最高だ。ちなみに、自分で自分にぶっかけたり食べてもいいぞ。おかりは自由だ」
最後は入口付近に設営されているテントを指さした。
この説明の間も
「くらぇぇええ、必殺、チョコ・ザブーン」
「私の思いよ、とどけーー」
「ひゃっはぁぁぁ、気晴らしだぜー」
「うはぁあ、美味い、もっと飲むぞー」
遊び心、愛の告白、気晴らしと様々な思いをチョコレートに込めて、参加者達は相手に掛けたり自分に掛けたり飲んだりと、大賑わいであった。
「やあ、この都市にもカカオが大量に入って来て、ご覧の騒ぎさ」
住民が訪問客に声を掛け
「皆、バケツに入った溶かしたチョコレートを誰彼構わずぶっかけるんだ。行き詰った芸術家や職人達の気晴らしになるし、童心に戻れるって事で老若男女、皆楽しんでる。もちろんチョコレートの普及も目的にあるんだけどな」
眼前で繰り広げられている騒ぎについて解説し
「ぶっかけるチョコレートとバケツはあそこにある本部で貰ってくれ。チョコレートは火傷しない程度の熱さだし、お菓子作りの精鋭達の巧みな技術で冷えても固まらないし、味は最高だ。ちなみに、自分で自分にぶっかけたり食べてもいいぞ。おかりは自由だ」
最後は入口付近に設営されているテントを指さした。
この説明の間も
「くらぇぇええ、必殺、チョコ・ザブーン」
「私の思いよ、とどけーー」
「ひゃっはぁぁぁ、気晴らしだぜー」
「うはぁあ、美味い、もっと飲むぞー」
遊び心、愛の告白、気晴らしと様々な思いをチョコレートに込めて、参加者達は相手に掛けたり自分に掛けたり飲んだりと、大賑わいであった。
解説
バケツ沢山に入ったホットチョコレートを誰かに掛けたり自ら被ったり飲んだりと、チョコレートの美味しさに舌鼓を打って下さい。
またはチョコレート掛けには参加せず、のんびりと様子を眺める事も可能です。
【都市の様子について】
本部からホットチョコレートが入ったバケツを貰った老若男女が誰かに掛けたり自ら被ったり飲んだりと、気晴らし、告白、おやつと様々な目的を果たそうと大賑わいです。
活動時間は朝から夕方までとなります。
※活動時間や交流したい地元民など、希望などがありましたら、プレイングに記載をお願いします。
※公式NPCとは交流出来ません。
マスターより
オープニングを読んで頂き、ありがとうございます。
チョコレートを巡る騒ぎを少しでも楽しんで頂ければと思います。
リプレイ
快晴の朝、辺境都市群のヴェルクリエでは、チョコレートぶっかけ祭りと称して、バケツいっぱいのホットチョコレートを誰かに掛けたり飲んだりなど賑わっていた。
そんな中。
「なんだこれ。うちの街にこんな催しがあったのか?」
ロドリック・アルカインは、騒がしさに眉を寄せていた。
すると、親切な住民がやって来て祭りの説明をして行ってくれた。
「チョコの味はわからんが……」
説明を聞いたロドリックの眉はますます寄り
(食べ物をこういう扱いにするのは好かないな。主催者は子供の頃に食べ物で遊んじゃいけません、と習わなかったのか?)
根が良い人だからか、祭りの有様にぷんぷんだ。普段ののんきさはどこへやら。
(自分の考えを人に押し付けるつもりは毛頭ないから、こういう事は口に出すつもりはないが……)
だが、胸中で思うだけで口には一切出さない。周囲を気遣い、場をしらけさせるつもりはないからだ。
「祭りには色々思う事はあるが……ひとまずチョコを貰いに行こうか」
とにもかくにも、チョコレートを貰うために本部へ向かった。
そして
「……いい匂いだ。これが美味い上に冷えても固まらないチョコか。創意工夫の出来る良い職人がいるのだろう。自らの作った物に向けた誇りのありようが違うのだろう」
バケツいっぱいのホットチョコレートから香る甘い匂いに鼻をひくつかせながら、手がけただろう職人達に思いを馳せた。
「まあ、肝心の菓子職人が納得しているなら外であれこれ考えても仕方がない。もしも紋具を投げつけ合う遊びなぞあったら、うちの職人なら殴り込みかねんが……」
これ以上憤っていても仕方がないと、ロドリックは気分を切り替え
「折角作られたチョコだ。せめて自分の手の届く範囲で、食べ物本来の用途で消費してやろう」
普通のチョコレートとしてまずは一口。
「……シャルガネの言葉で、供養とかいうのだったかな? ふむ、甘すぎず、少し苦みがあるのは悪くないな」
舌を通じ身に伝わるチョコレートの甘さにロドリックは、素直な感想をこぼした。
「ただ、これだけ騒がしいとチョコをぶっかけられそうだな。その時はその辺の空バケツでもぶつけてやろうか」
あまりの騒がしさに、ロドリックは巻き込まれる事を危惧しつつも
「……本当に味は悪くない」
チョコレートを存分に味わい
「……もう空だ。食べやすかったな」
あっという間にバケツを空にした。後味も悪くない模様。
「さて、どうするかな。おかわりは自由だそうだが……」
ロドリックは、空になったバケツと本部を見比べながら次の動作を考え始めた。
その時
「……次々と人が来てあれは何をしているんだ? 像に祈ったり悩み相談をしているように見えるが……行ってみるか」
代わる代わる人々が像の前で何やらしている光景を発見し、気になったのか様子を見に行った。
「チョコ祭りっすか!」
マタリキー・T・ヒーローは眼前の賑やかさにいてもたってもいられず、輪に入っていった。
多くの人達のように誰かに掛けたり飲んだりするかと思いきや
「ここは祭りの英雄を目指して人肌脱ぐっすよ!」
何やら閃いたのか、ホットチョコレート入りのバケツを持った数名の参加者を呼び止め
「そのチョコを掛けてくれっす」
頼み込み、きりっと神々しいポーズを決める。
「掛けるのはいいけど」
「そのポーズは一体……」
呼び止められた者達は、突然のマタリキーの行動に訝しんだ。
「霊験あらたかな感じの神様っぽさを出してるっす」
マタリキーは、独特さを醸し出しながら即答した。
「お、おう、ここは芸術家が多いからな」
「いくぞ」
数名の参加者は、少々驚きながらも気を悪くする事無くマタリキーにドバドバとホットチョコレートを掛けた。普通の人が聞けば困惑するだろう発言もここは職人や芸術家が集う都市なので、特に気に留める事も無いのだろう。
無事にホットチョコレートを掛けて貰い、協力者達が去った所で
(口元が塞がりそう……少し動かして穴が開くようにするっす)
マタリキーは僅かに息苦しさを感じ、口元を動かし空気の通り道を作ってから
(……出来る限り動かないっすよ。チョコレートの像があるかのような感じに見せるっすよ)
息を止めチョコレートの像を演じ始めた。
足元には
『お悩みごとを聞き受けます ※触らないでください』
マタリキーが像になる前に予め置いておいた札があった。
(名付けて……ぷちイベント、町に突如現れたチョコレートの像……その正体は、冒険者マタリキー、す)
表情を崩すわけにはいかないので胸中でドヤっとする。
程なくして、様々な者達が足を止めていった。
「チョコの像なんて洒落てるわね」
「これは面白いな」
「誰かの作品か」
多くの者達は、どこぞの芸術家の作品として見ていた。
中には
「悩みを聞いてくれるなら、閃きを俺にくれーーー」
本当に悩める者が訪れる始末。
(必死な所申し訳ないっすね。悩み事を聞いても答えられないから、あんまり役には立たないすからね)
優しいマタリキーは、胸中で申し訳なさそうにした。何せ、神様なのはポーズだけなので。
と思いきや
「あっ、閃いた!」
何やら閃いたのか、晴れ晴れとした顔でどこかに行った。
「私も閃きを頂戴」
「俺も」
その様子を見た芸術家や職人が、マタリキーの元に次々とやって来た。
そこに
「……この像から甘い匂いがする……チョコレートの像か……いや、これは生き……」
興味を持ったロドリックが空のバケツ片手に現れた。真贋をも見抜く鋭い洞察は、マタリキーの思惑を見抜いた。
だが
(微動だにしてはいないが、像のふりをした人だな。だが、黙っておこう。信じている者の気分を害する必要は無いからな)
祭りには憤るが、職人の誇りを気遣っていたロドリックは真実を飲み込み、マタリキーの像ぶりに感心した。
「ここまで像になり切るとは凄いものだな」
ロドリックは、感想を口にしてから
「……いくばくか持ち帰りを注文して、店へ土産にしようか」
本部へ行き、空のバケツを返却してからおかわりを貰い、土産とした。
そして
「妙な催しがあったぞという土産話になりそうだな」
ロドリックは、自分を待つだろう者達の元へ足を向けた。
ロドリックが去った後。
(あの様子だと像じゃないと見破られたっすね)
マタリキーは、ロドリックが口にしようとして引っ込めた言葉の先を察していた。
(まあ、いいすけどね)
だからと言って、気にする素振りは無かった。それがマタリキーの長所であり短所だ。
変わらずチョコレートの像を演じ続け
「チョコの像か、祭りに似合いだな」
「悩み聞いて」
「よっしゃ、閃いた」
祭りの参加者達の目に幾度もとまった。
いよいよ、祭りも終わり茜色の空が紺に染まろうとする中。
「はぁあああ、めちゃくちゃ疲れたっす」
マタリキーはポーズを崩し、チョコレートコーティングされたままその場にへたり込んだ。長時間の像へのなりすましから疲弊が凄まじいようだ。
「……はぁあ、色んな人が来たっすね」
空を見上げながら、自分の前に足を止めた人達の事を思い返した。
心が満たされたのか、自然と口元をゆるませ
「こんな俺でも、誰かの役に立てたのなら……それ以上はないすね」
呟きをこぼした。
「たくさんホットチョコ飲めるなんてめっちゃ嬉しいわぁ」
住民から祭りの解説を聞いたエリック・ハルトマンの第一声は感嘆だった。
「ですね。ただ、食べ物を粗末には……祭りでは無粋な発言ですが」
隣のルーカ・ルンガルディエールは、食べ物への礼儀の面に置いて複雑な様子であった。
「ルーカ、はよ、取りに行こ♪」
大いに張り切っているエリックはルーカの腕を掴み、本部へと駆け出した。
「……そうですね。いっぱい楽しみましょう」
掴まれたルーカは、気分を一転させ楽しむ事だけを考える事にした。
そうして、2人は仲良く本部へ向かった。
本部にて、ホットチョコレートを貰った後。
「……量がありますね」
ルーカは、エリックのが持つバケツに入ったホットチョコレートの量に驚いた。
「せやね。でも2人ならあっという間や」
エリックは、カラカラと笑いながら返すと
「にしても、いい香りやね」
甘い匂いを思いっきり吸い込み
「はぁ、これを人にかけるんか? それはなんか嫌やなぁ」
改めて手にある茶色の水面を見つめ、少し困惑の顔で
「……とくにルーカにかけるのはな」
ルーカをちらりと見た。
「……エリック」
ルーカは、エリックの優れぬ様子に何とかしたく頭を巡らした末
「では、私達は私達なりに楽しみましょう♪ 掛け合わずとも楽しみ方は人それぞれですし」
名案が浮かび、微笑を口元に湛えながら言った。
聞いた途端
「じゃぁ、せっかくやから一緒にこのホットチョコを飲もう」
エリックの曇りは、晴れていい笑顔になり
「あっちのベンチで」
2人分のカップとルーカに内緒でカップル向けのある物も貰って、付近のベンチへ誘った。
「えぇ、そうしましょう」
ルーカは賛成し、揃ってベンチへ。
ベンチに揃って座った後。
「ん~、甘過ぎず、程よい苦味が癖になるなぁ」
エリックは、景気よくカップに注いだホットチョコレートを飲み干していく。
「一気に飲むのはもったいないですね……」
ルーカは、カップに移したホットチョコレートをちびちびと飲む。
和やかに過ごす中。
「……あれは……」
碧眼に何やら気になる物が映ったのか、ルーカはホットチョコレートを飲むのを休め、小首を傾げた。
「どした?」
気付いたエリックもチョコレートを飲むのをやめ、知りたげに訊ねた。
「あれを見て下さい。チョコレートの像がありますよ。このお祭りらしいですね」
ルーカは、遠方さえも鮮明に見せる超視覚で見つけた随分離れた所に立つ神々しいポーズをする像を指し示した。
「……チョコレートの、像……?」
指し示された先を見たエリックも超視覚ではっきりと対象を捉えた。
それだけでなく
「ルーカ、あれは像やなくて人や。人が像の真似をしてるんや……凄いな」
像から聞こえる僅かな呼吸音を捉え、正体を見抜き大いに感心した。
「……人ですか。凄いですね。全く気付きませんでしたよ」
ルーカは驚き、像としてではなく人として見直し、感心した。
「楽しみ方はそれぞれやね~」
エリックはクスクスと笑い、ルーカの先の言葉を持ち出した。
「という事で、じゃーん♪」
エリックが喜々と取り出したのは、カップル向けのストローだ。
「ストロー、ですか?」
ルーカが、ストローとエリックの顔を見比べながら不思議そうに問うと
「せや、うちらはカップルやから、これで一緒に飲んでラブラブになろうや♪」
エリックは自分達の楽しみ方を提案した。
「ふふふ、いいですよ♪」
ルーカは喜んで誘いを受けた。
そして
(ルーカと一緒に美味しいチョコを食べれて最高や)
(…………幸せですね)
ルーカとエリックは互いに見つめ合い、あまりの幸せなひとときに笑みをこぼしながら、ストローを通してホットチョコレートを味わった。
ひとしきり楽しんだ所で、チョコレートはホットからクールに変わっていた。
「冷めても固まらないは本当やな……味も変わらず美味い」
エリックは、聞いた話が本当である事と変わらずの美味しさを舌で確認し、感動した。
「確かに冷えても美味しいですが……」
同じくルーカも菓子職人の腕前も味も認めるが、表情が曇っていた。
その原因はというと
「こうもチョコばかりでは……」
バケツいっぱいという大量のチョコレートにあった。
「偏りがあるのでチョコに合うピーナッツやプレーンクッキーなど、買って来ますね」
ルーカは少しでも味を変えようと、すっとベンチから立ち上がった。
「それなら、うちも一緒に」
エリックも続こうとした瞬間
「ルーカ、危ない!!」
愛する人目掛けて飛んで来るホットチョコレートに気付き、凄い勢いでベンチから立ち上がり、ルーカの前に立ち塞がった。
そして
「うはぁ、甘い匂い!」
気合いの入ったカバリングの結果、エリックは見事にチョコレートまみれとなった。
「大丈夫やった?」
エリックは、自身の事よりもルーカの身を案じた。
「えぇ、無事です。守ってくれてありがとうございます」
ルーカは、心底嬉しそうに身の無事を伝えた。
「それはよかった」
ルーカを守る事が出来たためか、エリックの顔は誇らしさと安堵があった。
「掛けられるのも悪くないかもしれませんね。エリックになら」
ルーカは頼りになるエリックの横顔に、悪戯な笑みを口元に浮かべた。
その胸中は
(でも、守ってくれるのはエリックらしくて大好きですけど)
愛しい人への思いで満たされていた。
朝から始まったチョコレートぶっかけ祭りは、人々に甘いひとときを残して無事に終わった。
そんな中。
「なんだこれ。うちの街にこんな催しがあったのか?」
ロドリック・アルカインは、騒がしさに眉を寄せていた。
すると、親切な住民がやって来て祭りの説明をして行ってくれた。
「チョコの味はわからんが……」
説明を聞いたロドリックの眉はますます寄り
(食べ物をこういう扱いにするのは好かないな。主催者は子供の頃に食べ物で遊んじゃいけません、と習わなかったのか?)
根が良い人だからか、祭りの有様にぷんぷんだ。普段ののんきさはどこへやら。
(自分の考えを人に押し付けるつもりは毛頭ないから、こういう事は口に出すつもりはないが……)
だが、胸中で思うだけで口には一切出さない。周囲を気遣い、場をしらけさせるつもりはないからだ。
「祭りには色々思う事はあるが……ひとまずチョコを貰いに行こうか」
とにもかくにも、チョコレートを貰うために本部へ向かった。
そして
「……いい匂いだ。これが美味い上に冷えても固まらないチョコか。創意工夫の出来る良い職人がいるのだろう。自らの作った物に向けた誇りのありようが違うのだろう」
バケツいっぱいのホットチョコレートから香る甘い匂いに鼻をひくつかせながら、手がけただろう職人達に思いを馳せた。
「まあ、肝心の菓子職人が納得しているなら外であれこれ考えても仕方がない。もしも紋具を投げつけ合う遊びなぞあったら、うちの職人なら殴り込みかねんが……」
これ以上憤っていても仕方がないと、ロドリックは気分を切り替え
「折角作られたチョコだ。せめて自分の手の届く範囲で、食べ物本来の用途で消費してやろう」
普通のチョコレートとしてまずは一口。
「……シャルガネの言葉で、供養とかいうのだったかな? ふむ、甘すぎず、少し苦みがあるのは悪くないな」
舌を通じ身に伝わるチョコレートの甘さにロドリックは、素直な感想をこぼした。
「ただ、これだけ騒がしいとチョコをぶっかけられそうだな。その時はその辺の空バケツでもぶつけてやろうか」
あまりの騒がしさに、ロドリックは巻き込まれる事を危惧しつつも
「……本当に味は悪くない」
チョコレートを存分に味わい
「……もう空だ。食べやすかったな」
あっという間にバケツを空にした。後味も悪くない模様。
「さて、どうするかな。おかわりは自由だそうだが……」
ロドリックは、空になったバケツと本部を見比べながら次の動作を考え始めた。
その時
「……次々と人が来てあれは何をしているんだ? 像に祈ったり悩み相談をしているように見えるが……行ってみるか」
代わる代わる人々が像の前で何やらしている光景を発見し、気になったのか様子を見に行った。
「チョコ祭りっすか!」
マタリキー・T・ヒーローは眼前の賑やかさにいてもたってもいられず、輪に入っていった。
多くの人達のように誰かに掛けたり飲んだりするかと思いきや
「ここは祭りの英雄を目指して人肌脱ぐっすよ!」
何やら閃いたのか、ホットチョコレート入りのバケツを持った数名の参加者を呼び止め
「そのチョコを掛けてくれっす」
頼み込み、きりっと神々しいポーズを決める。
「掛けるのはいいけど」
「そのポーズは一体……」
呼び止められた者達は、突然のマタリキーの行動に訝しんだ。
「霊験あらたかな感じの神様っぽさを出してるっす」
マタリキーは、独特さを醸し出しながら即答した。
「お、おう、ここは芸術家が多いからな」
「いくぞ」
数名の参加者は、少々驚きながらも気を悪くする事無くマタリキーにドバドバとホットチョコレートを掛けた。普通の人が聞けば困惑するだろう発言もここは職人や芸術家が集う都市なので、特に気に留める事も無いのだろう。
無事にホットチョコレートを掛けて貰い、協力者達が去った所で
(口元が塞がりそう……少し動かして穴が開くようにするっす)
マタリキーは僅かに息苦しさを感じ、口元を動かし空気の通り道を作ってから
(……出来る限り動かないっすよ。チョコレートの像があるかのような感じに見せるっすよ)
息を止めチョコレートの像を演じ始めた。
足元には
『お悩みごとを聞き受けます ※触らないでください』
マタリキーが像になる前に予め置いておいた札があった。
(名付けて……ぷちイベント、町に突如現れたチョコレートの像……その正体は、冒険者マタリキー、す)
表情を崩すわけにはいかないので胸中でドヤっとする。
程なくして、様々な者達が足を止めていった。
「チョコの像なんて洒落てるわね」
「これは面白いな」
「誰かの作品か」
多くの者達は、どこぞの芸術家の作品として見ていた。
中には
「悩みを聞いてくれるなら、閃きを俺にくれーーー」
本当に悩める者が訪れる始末。
(必死な所申し訳ないっすね。悩み事を聞いても答えられないから、あんまり役には立たないすからね)
優しいマタリキーは、胸中で申し訳なさそうにした。何せ、神様なのはポーズだけなので。
と思いきや
「あっ、閃いた!」
何やら閃いたのか、晴れ晴れとした顔でどこかに行った。
「私も閃きを頂戴」
「俺も」
その様子を見た芸術家や職人が、マタリキーの元に次々とやって来た。
そこに
「……この像から甘い匂いがする……チョコレートの像か……いや、これは生き……」
興味を持ったロドリックが空のバケツ片手に現れた。真贋をも見抜く鋭い洞察は、マタリキーの思惑を見抜いた。
だが
(微動だにしてはいないが、像のふりをした人だな。だが、黙っておこう。信じている者の気分を害する必要は無いからな)
祭りには憤るが、職人の誇りを気遣っていたロドリックは真実を飲み込み、マタリキーの像ぶりに感心した。
「ここまで像になり切るとは凄いものだな」
ロドリックは、感想を口にしてから
「……いくばくか持ち帰りを注文して、店へ土産にしようか」
本部へ行き、空のバケツを返却してからおかわりを貰い、土産とした。
そして
「妙な催しがあったぞという土産話になりそうだな」
ロドリックは、自分を待つだろう者達の元へ足を向けた。
ロドリックが去った後。
(あの様子だと像じゃないと見破られたっすね)
マタリキーは、ロドリックが口にしようとして引っ込めた言葉の先を察していた。
(まあ、いいすけどね)
だからと言って、気にする素振りは無かった。それがマタリキーの長所であり短所だ。
変わらずチョコレートの像を演じ続け
「チョコの像か、祭りに似合いだな」
「悩み聞いて」
「よっしゃ、閃いた」
祭りの参加者達の目に幾度もとまった。
いよいよ、祭りも終わり茜色の空が紺に染まろうとする中。
「はぁあああ、めちゃくちゃ疲れたっす」
マタリキーはポーズを崩し、チョコレートコーティングされたままその場にへたり込んだ。長時間の像へのなりすましから疲弊が凄まじいようだ。
「……はぁあ、色んな人が来たっすね」
空を見上げながら、自分の前に足を止めた人達の事を思い返した。
心が満たされたのか、自然と口元をゆるませ
「こんな俺でも、誰かの役に立てたのなら……それ以上はないすね」
呟きをこぼした。
「たくさんホットチョコ飲めるなんてめっちゃ嬉しいわぁ」
住民から祭りの解説を聞いたエリック・ハルトマンの第一声は感嘆だった。
「ですね。ただ、食べ物を粗末には……祭りでは無粋な発言ですが」
隣のルーカ・ルンガルディエールは、食べ物への礼儀の面に置いて複雑な様子であった。
「ルーカ、はよ、取りに行こ♪」
大いに張り切っているエリックはルーカの腕を掴み、本部へと駆け出した。
「……そうですね。いっぱい楽しみましょう」
掴まれたルーカは、気分を一転させ楽しむ事だけを考える事にした。
そうして、2人は仲良く本部へ向かった。
本部にて、ホットチョコレートを貰った後。
「……量がありますね」
ルーカは、エリックのが持つバケツに入ったホットチョコレートの量に驚いた。
「せやね。でも2人ならあっという間や」
エリックは、カラカラと笑いながら返すと
「にしても、いい香りやね」
甘い匂いを思いっきり吸い込み
「はぁ、これを人にかけるんか? それはなんか嫌やなぁ」
改めて手にある茶色の水面を見つめ、少し困惑の顔で
「……とくにルーカにかけるのはな」
ルーカをちらりと見た。
「……エリック」
ルーカは、エリックの優れぬ様子に何とかしたく頭を巡らした末
「では、私達は私達なりに楽しみましょう♪ 掛け合わずとも楽しみ方は人それぞれですし」
名案が浮かび、微笑を口元に湛えながら言った。
聞いた途端
「じゃぁ、せっかくやから一緒にこのホットチョコを飲もう」
エリックの曇りは、晴れていい笑顔になり
「あっちのベンチで」
2人分のカップとルーカに内緒でカップル向けのある物も貰って、付近のベンチへ誘った。
「えぇ、そうしましょう」
ルーカは賛成し、揃ってベンチへ。
ベンチに揃って座った後。
「ん~、甘過ぎず、程よい苦味が癖になるなぁ」
エリックは、景気よくカップに注いだホットチョコレートを飲み干していく。
「一気に飲むのはもったいないですね……」
ルーカは、カップに移したホットチョコレートをちびちびと飲む。
和やかに過ごす中。
「……あれは……」
碧眼に何やら気になる物が映ったのか、ルーカはホットチョコレートを飲むのを休め、小首を傾げた。
「どした?」
気付いたエリックもチョコレートを飲むのをやめ、知りたげに訊ねた。
「あれを見て下さい。チョコレートの像がありますよ。このお祭りらしいですね」
ルーカは、遠方さえも鮮明に見せる超視覚で見つけた随分離れた所に立つ神々しいポーズをする像を指し示した。
「……チョコレートの、像……?」
指し示された先を見たエリックも超視覚ではっきりと対象を捉えた。
それだけでなく
「ルーカ、あれは像やなくて人や。人が像の真似をしてるんや……凄いな」
像から聞こえる僅かな呼吸音を捉え、正体を見抜き大いに感心した。
「……人ですか。凄いですね。全く気付きませんでしたよ」
ルーカは驚き、像としてではなく人として見直し、感心した。
「楽しみ方はそれぞれやね~」
エリックはクスクスと笑い、ルーカの先の言葉を持ち出した。
「という事で、じゃーん♪」
エリックが喜々と取り出したのは、カップル向けのストローだ。
「ストロー、ですか?」
ルーカが、ストローとエリックの顔を見比べながら不思議そうに問うと
「せや、うちらはカップルやから、これで一緒に飲んでラブラブになろうや♪」
エリックは自分達の楽しみ方を提案した。
「ふふふ、いいですよ♪」
ルーカは喜んで誘いを受けた。
そして
(ルーカと一緒に美味しいチョコを食べれて最高や)
(…………幸せですね)
ルーカとエリックは互いに見つめ合い、あまりの幸せなひとときに笑みをこぼしながら、ストローを通してホットチョコレートを味わった。
ひとしきり楽しんだ所で、チョコレートはホットからクールに変わっていた。
「冷めても固まらないは本当やな……味も変わらず美味い」
エリックは、聞いた話が本当である事と変わらずの美味しさを舌で確認し、感動した。
「確かに冷えても美味しいですが……」
同じくルーカも菓子職人の腕前も味も認めるが、表情が曇っていた。
その原因はというと
「こうもチョコばかりでは……」
バケツいっぱいという大量のチョコレートにあった。
「偏りがあるのでチョコに合うピーナッツやプレーンクッキーなど、買って来ますね」
ルーカは少しでも味を変えようと、すっとベンチから立ち上がった。
「それなら、うちも一緒に」
エリックも続こうとした瞬間
「ルーカ、危ない!!」
愛する人目掛けて飛んで来るホットチョコレートに気付き、凄い勢いでベンチから立ち上がり、ルーカの前に立ち塞がった。
そして
「うはぁ、甘い匂い!」
気合いの入ったカバリングの結果、エリックは見事にチョコレートまみれとなった。
「大丈夫やった?」
エリックは、自身の事よりもルーカの身を案じた。
「えぇ、無事です。守ってくれてありがとうございます」
ルーカは、心底嬉しそうに身の無事を伝えた。
「それはよかった」
ルーカを守る事が出来たためか、エリックの顔は誇らしさと安堵があった。
「掛けられるのも悪くないかもしれませんね。エリックになら」
ルーカは頼りになるエリックの横顔に、悪戯な笑みを口元に浮かべた。
その胸中は
(でも、守ってくれるのはエリックらしくて大好きですけど)
愛しい人への思いで満たされていた。
朝から始まったチョコレートぶっかけ祭りは、人々に甘いひとときを残して無事に終わった。
マスターコメント
参加者の皆様、参加して頂き大変ありがとうございました。そして、お疲れさまでした。
それぞれの方法で美味しいチョコレートを味わって頂き、大変ありがとうございました。
ほんの僅かでも楽しんで頂ければ、幸いです。
ショートシナリオ易しい 報酬:標準4 / 4〜10人
2021年03月29日 00時30分23秒 公開
大成功
相談掲示板
ふらりと参加させてもらったよ。 住んでいるヴェルクリエの祭りなので通りがかったのだが。 食べ物を粗末にするのはどうも気が進まないので、隅の方でのんびり食べている事にするかな。
僕はエリック・ハルトマンだ。 よろしく頼むよ。 何をするかはまだきめていないんだ。
チョコを……ぶっかけ……? なんすかそれは……面白そうなんで、チョコで固められた像になってみたいすね……ほら、折角の機会なんで…… 足元に「何かを懺悔するとスッキリするチョコレート像」みたいな看板を置いて見ようと思うす。こんな俺でも、誰かの気持ちを楽にできるかもしれないすから……