【豆充】魔の手から贈り物を死守せよ!

菊華 伴

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シナリオID:636

オープニング


●とある商人から、難民キャンプの子供たちへ

 ――難民キャンプの子供たちに、なにか贈り物がしたい

 そう考えたのは、難民キャンプに物資を運ぶ事が多いとある商人だった。名はナバルジャという。彼は難民キャンプで多くの子供たちを見てきたが、彼らが欲しいものを知らなかった。しかも、話しかけても答えてくれる子供は少なかった。まぁ、このナバルジャが熊のように大きい男性であったのも関係したかもしれないが……。
(現地の子供たちに、なにか笑顔になるように贈り物をしたい。元気になってもらいたいのだが……)
 そんな彼のもとに、『エドゥノーグのダンジョンで大量のカカオが収穫された』という話が届く。そして商人仲間がチョコレートを広めようとしていることも。
「チョコレート……これだっ! 栄養価もあると聞いているが、これなら子供たちも受け取ってくれるかもしれない! 心を開いてくれたら本当に欲しいものを聞くことができるかもしれないぞ!!」
 ナバルジャはさっそく準備を始める。それと同時に、冒険者ギルドへこのような依頼を出した。

『難民キャンプの子供たちへチョコレートを届けます。つきましては、護衛をお願いします』

 その数日後、ナバルジャの元に数名の冒険者たちが姿を現すのであった。

●荷馬車狙うコボルト

 難民キャンプへ続く道の近くに、コボルトたちが集っていた。その数、およそ10。彼らは最近難民キャンプへの物資を狙っているらしい。
 コボルトたちは、それぞれ身振り手振りで合図をし、身を隠す。彼らの目的は今回も物資である。
 だが、そんな彼らに声をかける者が一人。フードを目深に被った、細身の少年である。

 「あの馬車には、チョコレートが一杯らしいよ。なんでもとても美味しいんだって。奪っちゃえば子どもらはがっかりするだろうし、それを使っておびき寄せることもできるんじゃないかなぁ?」

 コボルトたちは、そんな声を無視して準備を進める。
 彼らのメンバーは、物陰から矢を射る者、馬を襲うべく投げ縄を持つ者、ナイフや斧を手に持つ者がそろっていた。
 コボルトのリーダー格が、声をかけてきた少年を胡乱な目で見つめ、威嚇する。だが彼はにぃ、と笑った。
「そーだなぁ、君たちにイイモノあげるよ! これでちょっと強くなれるんじゃない?」
 そう言って懐から取り出したお菓子をコボルトの口に無理矢理押し込む。と……それを食べた者たちは、みな目が血走り、興奮状態になっているようにみえた。
「僕も、遊ぼうかなぁ。チョコレートのおこぼれは欲しい、かな」
 その言葉が聞こえるか否か、コボルトのリーダー格は毛並みを逆立て、ピンと立った耳を欹てた。

●チョコレートと商人を守れ!

「うぅむ、こまったことになったぞ……」
 ナバルジャは、深いため息を吐いた。彼の傍らには、元盗賊で現在はナバルジャの秘書、アズルノがいる。彼は斥候として街道を見てきてくれたらしい。
「旦那様、やっかいなことになりました。どうやら、このあたり最近盗賊が出ると言っておりましたが何やら嫌な予感が致します」
 アズルノが左目にかけた片眼鏡をかけなおしため息交じりに伝える。というのも、難民キャンプまでのこり30キロという所で嫌な空気を感じたのだろう。空気の流れに敏感な物がいれば、何者かの悪意が馬車に向けられていることに気付くかもしれない。
「おそらく茂みに、何者かがいる模様……。私も投げナイフの心得はありますが皆様にはかないません。どうか、お力添えを……」
「私が、でる! 昔はこれでも戦斧で戦っていたんだ!!」
 ナバルジャが、戦斧を手に馬車を降りる。だが、ナバルジャとアズルノは授恵者ではない。この戦いでは足手まといになってしまう可能性もある。
 彼は、切実な声を絞る出すようにして語る。
「これは、とても大事な物なんだ。子供たちを笑顔にしたいから届けたいんだ。どうか、どうか力を貸してほしい。金なら出す!だから、後生だから頼むぞ!!」
 耳をすませば、遠吠えが聞こえてくる。しばらくして、一本の矢が馬車の前に止まった。

 ――おとなしくチョコレートを渡せ! さもなくば命の保証はない。

 風に乗って聞こえる子供の声。それに困惑しながらも、貴方がたは身構える。果たして、貴方がたはチョコレートを難民キャンプへ届けることができるだろうか?


解説

今回は、難民キャンプの子供たちへチョコレートを届けに行く馬車の護衛です。オープニングからかっ飛ばしていますが、リプレイは戦闘開始からになります。 >オープニング時点での現状  皆さんが乗っていた馬車は街道上にあり、その両側から矢が向けられています。弓手の数は不明です。 また、いつでも突進できるよう、草むらに何匹かコボルトが隠れています。そのうちの一人がリーダー格で、ショートソードを持っています。また、ロープを持った者もいます。  強さは基本平均的ですが……リーダー格を含め数名が、異様に興奮状態にあり、戦闘能力が上がっているようです。油断すると、一撃で骨折する可能性があります。  コボルトの数は10人。そして、彼らの助っ人かどうかは不明ですが細身の少年が一人加わっています。彼は手にナイフを持っています。近づくと仄かに薬草の匂いがします。 成功条件:コボルトたちを全員倒す(or追い払う) (最低でも異様に興奮状態になったコボルトを倒してください) 失敗条件:チョコレートを奪われる/ナバルジャの死亡      (両方がそろった場合大失敗になります) NPCについて ナバルジャ(人間/50代/男性) 熊のように大柄な男性。難民キャンプに物資を届けることが多く、そこでみた子供たちのためにチョコレートを届けようと考えた。ついでに、彼らが欲しいものを聞きだそうとしている。元は戦士だったようで、戦斧で戦う。 アズルノ(ハーフリング/30代/男性) ナバルジャの秘書で元盗賊。投げナイフを得意とするほか、斥候としても動ける。斥候としての腕はいいが……。左目に片眼鏡をしている。 PL情報 ナバルジャは、ある程度戦えますが腰痛持ちです。無理をさせるとぎっくり腰になります。また、アズルノはややスタミナに欠けます。 >防衛成功後 難民キャンプの子供たちは、チョコレートを待っています。ぜひ届けましょう。可能であれば彼らが本当に欲しいものを聞き出してもらえるとナバルジャが喜びます。

マスターより

菊華です。 今回も【豆充】ですが、志向を変えて戦闘シナリオと相成りました。 なにげにこちらでは初の戦闘シナリオなのでこちらも少々緊張しておりますが、よろしくお願いします。すべては難民キャンプの子供たちへチョコレートを届けるためです。

リプレイ


●馬車を守れ!

 コボルトの襲撃。そして、聞こえてきた子供の声。それに反応したフリーダ=ブロムヴィストは表情を険しくした。
「盗賊……いや、コボルトの襲撃ですね。それにしては少々雑な気も……」
 人語を話すコボルトなどいただろうか? と内心で首をひねりながら「まずはこの窮地を脱する所からですね」と行動を開始する。
 その背後、セロンガード・シュタインドルフが《マジカルポケット》に盾を入れながら周囲を探る。確かに子供の声が聞こえた彼は、「見つけたら報告しなくては」と準備を整える。

「ナバルジャさんとアズルノさんは馬車の護衛を」
「しかし……」
 槍を手にアンネエルカがいう。アズルノは「はい」ときびきび一礼しすぐに動くが、ナバルジャは心配そうにアンネエルカを見る。確かに彼女を含め護衛についているのは授恵者ではあるが、可憐な少女を矢面に立たせることに申し訳なさもあるのだろう。
「大丈夫だって。アンネエルカ君もアイリも腕は確かだから」
 胸をぽん、と叩いて言うアイリーン=N=フェルクス(以下アイリと表記)もまた溌溂とした乙女だ。ナバルジャはその言葉に少々考え込んでしまう。
「ナハルジャ殿は馬車、特に馬を守るのだ。動き回るのは若者に任せるのだ。自分の命が最優先。最悪物資が盗られても再起できる」
 そんな彼にストレガ・L・リベルガストラが穏やかに言う。そう言いながらも「勿論そんな事にはならないのが我々なのだ」と準備を始めた。
 少々考え込んでいたナバルジャだったが、最後には「かたじけない」と頭を下げた。そんな主を見、アズルノは申し訳なさそうに頭を下げた。
「当商店には同じぐらいの年の店員が居る故、姿を重ねてしまうのでしょう」
 2人とも思わず笑ってしまったが、心配してくれるのは少し嬉しいものである。
「がんばろうねっ」
「はいっ」
 アイリとアンネエルカは頷きあう。

 一方、アリア・ティーダはちらり見えたコボルトたちの様子を見、目を細める。
(相手はアタッカーが多めの力押し。遠近よく揃えてるけれど持続力に難あり)
 彼女は馬車の直接護衛と弓持ちの排除に分かれては、と提案する。もとより、アンネエルカは攻め手として動くようで、既に右側の敵へと向かい始めていた。
「来るなら来い、コボルトども」
 馬車を守らんと意気込むナバルジャの声に、授恵者たちも気合を入れるのだった。

 ――楽し気に様子をうかがう瞳に気付かないまま。

●エンゲージ

(早く終わらせた方がいいよね)
 最初に動いたのはアリア。彼女は攻め手として動くアンネエルカの武器に《輝刃》を施し、攻撃力を上げる。そして、自分は盾と鉄の戦槌を持って身構えた。矢は盾で防ぎ、近づくコボルトは迎撃するようだ。
「では私も」
 ストレガはすぅ、と息を吸った。アリア、ストレガ、セロンガードはナバルジャとアズルノと共に馬車の守りを務める。
(コボルトと子供のセットとは奇妙な。こういう事をする子って相当裏がある事が多いのだけど)
 アリアは内心で呟きながら戦場を見渡すが、子供の姿は見えない。
「襲う理由がチョコレートってのはちょっぴり可愛げがあるような?」
 ともあれ人から奪うのは『めっ!』ってしないと、とアリアが少し表情を引き締める。

 弓を持っているコボルトは、槍を手に近づくアンネエルカを見るなり逃げ出そうとする。だが、そうは問屋が卸さない。
「こっちよっ!」
 アンネエルカは槍を振り下ろし《闘気槌》を打ち込む。光の塊により2匹のコボルトが押し倒され、逃れたコボルトたちも彼女を先に排除しようと刃を向ける。
 馬車の方へ射かけられないよう、なるだけ多くの敵を巻き込みたかったが案外素早い。だが、彼女の《闘気槌》により注目を浴び、ひきつけることに成功している。
(あら?)
 そこに飛び出してきたのは、ひどく目の充血したコボルト。口から泡を吹きながら勢いよくナイフを振り下ろす。冷静にアンネエルカは受け止め、槍で払う。それで安心してしまったのか、注目が彼女から再び馬車に移ろうとしていた。
(させないっ!)
 アンネエルカは叫ぶ。
「あなたたちの相手は私!」
 発動する《シーザーロア》は普通のコボルトたちの心を冷たい手で握り締める。恐怖にかられたコボルトがフレンドリーファイアをも物ともせずアンネエルカを狙う。可憐な羊のハーフビーストは不敵に微笑み、襲い掛かるコボルト相手に舞う。
 その反対側でも、動きがあった。矢を切り払う鋼の剣に肉体を蝕むエーテルを纏わせると、アイリは表情を引き締め気合と共に切り伏せる。
「駄目駄目! これは子供達とアイリのチョコなんだから!」
 他の射手がアイリへと矢を放つが、《ペインキル》で痛みを誤魔化した彼女が表情を歪めることはない。絶妙なタイミングでアリアから《輝刃》が添付され、攻撃力が向上しやる気も十分だ。
 アイリの《毒撃》つきの一撃はコボルトたちには辛く、戦意を喪失した1匹がひぃひぃ言いながら戦線を離脱しようとする。だが、彼女は見てしまった。やや大柄な、ボス的なコボルトが逃げようとした仲間の首を跳ね飛ばしたのを。
「何アレっ」
 それでも己に向けられた矢を切り払い、攻撃の手を止めないのはさすがだろう。
 ボス的なコボルトはべろんと舌を出したまま剣を振りかぶり、アイリへと襲い掛かる。どうにか躱したアイリは、ふわりと自分の髪の毛が少し切れた事に戦慄した。
(興奮状態な敵は他にどれだけいるんだろう? 少なくともあと1人はいそう)
 彼女は注意を促し、襲い掛かってきたコボルトと対峙する。
「はあっ!」
 少し離れた場所ではフリーダが《チャージング》で駆け付け、弓使いコボルトを2匹纏めて《闘気槌》を放つ。気合の入った一撃は、それだけで恐怖を呼び込むものである。だが、興奮した様子のコボルトは舌を靡かせながらアイリへと切りかかる!
「僕がこいつの相手をするから、フリーダ君は後ろの弓使いを!」
「わかりましたっ」
 アイリは背中に冷たいものが流れるのを覚えつつフリーダに指示を出す。彼女は素早く接敵し仲間を援護しようとするコボルトたちに再び《闘気槌》で攻める。
「グアアアッ!」
「いいよ、相手しちゃうっ」
 鼻息荒く、唸り叫ぶコボルトの一撃を華麗にかわしながらアイリが隙を狙う。興奮状態コボルトは攻撃力だけではなく素早さも上がっているように感じた彼女は、馬車から引き離すべく注意を己に向け続けることにした。
 アイリは注意深くコボルトを観察しつつ《毒撃》を与え、相手の鋭い突きを躱す。その繰り返しなのだが、徐々に相手が速くなっている気がする。
(油断できないね)
 彼女は相手の攻撃を躱しながらコボルトに飛び込み、切り付ける。同時に燃える炎のような輝き。《バーストストライク》によるものだ。アイリは離れ体勢を整えると、コボルトの唸りに負けじと笑顔を浮かべた。

「囲め」
 ストレガは呪文を完成させ馬車の周辺を稲光の檻で囲む。《アーケインテンペスト》(以下テンペストと表記)によって守られた馬車に、コボルトたちが慄く。だが、それでも馬車の荷が欲しいのだろう。徐々に近づいていくのが見えた。射られる矢はアリアの盾や《テンペスト》、ナバルジャの斧に阻まれた為馬車や馬に被害はない。
 セロンガートは《孤高者の捜波》で見つけたコボルトへ早速矢を打っていた。だが、そのうちの1匹は口からダラダラと涎を垂らしひどく興奮した様子で馬車へと駆け寄る。
(ひどい有様ですね)
 冷静に矢を放つセロンガード。彼の一撃が興奮したコボルトの顔に刺さり、痛みに身悶える。だが、それでも向かってくる姿に息を飲んだ。
「結構しぶとそう?」
 駆け付けたアリアが背後から戦槌で殴りかかるが、まだ目にギラギラとした輝きが踊り、果敢に切りかかろうとする。
(これならば)
 4つ目の矢が首に刺さった所でそのコボルトは地に伏す。その後方では、光の弾がコボルトへと襲い掛かる。どうやらストレガが《メテオライト》を放ったようだ。
 ちらり、とナバルジャを見れば、彼もまた斧でもって矢を切り払い、アズルノも投げナイフでコボルトを牽制している。
(この調子なら)
 と彼女が考えていたその時。コボルトにしては足取りが軽い気配がした。
(なっ?!)
 ローブを纏った子供が、馬車に駆け込んでいく。そしてナバルジャへとナイフで切りかかろうとしていた。
「くっ!」
 咄嗟に動いたセロンガードだが、《マジカルポケット》から盾を取り出す暇はなかった。彼は意を決してナバルジャの前に身を投げ出す。セロンガードの防具に阻まれたナイフは傷一つ付けず、少年は音も少なげに後ろへ下がる。
「おや。出てくる気がないとみていたのだが」
 ストレガが不思議そうに言えば、少年は楽し気に笑いナイフを握り締める。
「だってせっかくお菓子あげた子が倒されちゃったんだもん」
 少年のどこか残念そうな声に、ストレガは「そうか」とだけ話し、まだ馬車を狙いそうなコボルトに「ゆっくりしていくといいのだ」と、《フリーズボルト》を放った。

 アンネエルカは、興奮状態にあるコボルト相手に奮戦していた。彼は視点や動きがぶれていながらも的確な攻撃をしてくる為少々攻めづらかったのだ。茂みの中での戦いであったが《天眼》と《超聴覚》のお陰で難なく戦えている事は幸いだろう。もしどちらもなければ苦戦していたに違いない。
 その他馬車防衛組の攻撃もあり、射手コボルトは倒されていたようだ。
(馬車から狙いを逸らせている。まずはこっちを)
 アンネエルカの緑色の眼が、敵を射抜く。口から泡を吹きつつも襲い掛かるコボルトは、彼女めがけ剣を振り下ろす。
 彼女はそれよりも早く《強打》で迎え撃ち、その一撃によりコボルトは漸く動きを止めた。
 アンネエルカが周辺を見渡すと、フリーダが射手コボルトを《チャージング》で接敵して仕留める。また、アイリの《毒撃》付の一撃を喰らったコボルトたちも素早い戦場の動きに翻弄され戦闘不能になっている。
 そして……アイリは興奮コボルトの動きを止め、比較的近いフリーダに叫ぶ!
「とどめを!」
「任されました!」
 フリーダは見事な足さばきで接敵し、鮮やかな一撃を決める。
「射手はもういないようです」
 彼女の言葉に、アイリとアンネエルカは僅かに表情を緩める。どうやらコボルト達は全て倒されたようだ。……が、嫌な予感がする。3人が馬車に戻ると……フードをかぶった少年がナイフを手に身構えていたのだ。
 だが、少年はコボルトが倒されたのを感知したのだろう。ばつが悪そうに肩を竦めるとそのまま駆けだそうとする。
「無視なんて意地悪なことしないで頂戴」
 アンネエルカが《シーザーロア》で動きを止めようとするも、少年はどこからともなく取り出した袋を叩きつける。立ち上る灰に咳込む一同。我に帰った時、そこに彼は居なかった。わずかに蹄の音がする。どうやら近くに馬を隠していたようだ。
(結局、何者だったのかしら)
 アンネエルカは深いため息を付いた。

《テンペスト》が解除され、各々が戦後処理を行っている間にストレガは1匹のコボルトに近寄る。それはセロンガードが矢で射殺したコボルトだ。
(あの少年は『お菓子』と言っていたが)
 そのコボルトの口に近づいた途端、喉の奥から甘い香りがした。それだけではない。薬草の匂いだ。
(興奮剤? いや、もっと危ないもの?)
 彼女は、冒険者ギルドにも報告しておいた方がいいと心に決めた。
 アンネエルカたち3人が対峙した興奮状態コボルトもまた、喉の奥から同じ匂いを感じ取った。
「彼が『お菓子』と称したものは……」
 一同は、不穏な何かを感じ取りながら難民キャンプへの道を急ぐことにした。

●たどり着いたその先で

 まだ日が高いうちに難民キャンプへと到着することができた一行。彼らは少しの休憩の後、早速子供たちにチョコレートを配ることに。
 難民キャンプの子供達は突然の贈り物にみんな驚き、喜んだ。子供だけでなく、その家族も、である。
「何か必要な物を教えてほしい。困った事でもいいのだ」
 チョコレートを渡しながらストレガが穏やかに問う。と、その子供は直ぐに「ごはんがもっと欲しい!」と大きな声で叫んだ。
 もう少し年上の子供から聞いたが、先日のあれこれで食料が不足しているらしい。それだけではなく、衣料品もである(帝国から逃れる際着ていた物か、物資で得た物しかない、と年長の子が言っていた)それを細かにアズルノがメモし、「街の皆さんの協力を仰ぎましょうか」と呟く。
 熊のように大柄なナバルジャを見、怖がる子供たちであったがアンネエルカがそっとオロオロする彼にアドバイス。
「しゃがみ込んで目線を合わせながら、にこにこ笑顔がポイントよ」
「こ、こうか?」
 ナバルジャがしゃがみ、がんばって笑顔を作ると、一気に子供たちが笑った。目じりが柔らかくなり近寄りやすくなったようだ。
「このお兄さんがね、皆ともっと仲良くなりたいんですって」
 とアンネエルカが助け船を出すことで子供たちから色々聞きだすことができたのだが、「お父さんに会いたい」や「帝国に帰って祖母の安否を知りたい」という声が聞こえた。
「衣類や食料は、私達の商会で用意できるのだが……」
 ナバルジャはこめかみを揉みながら、深いため息を付く。
 中には「暖かいお家が欲しい」という声や「怖い事を減らして欲しい」という声も聴く。
「皆さんのおかげで、次にやる事が決まった」
 ナバルジャは、冒険者たちに深く頭を下げた。

 因みに、子供たちに交じってチョコを得ようとしたアイリだが、流石にバレたようだ。

 一通りチョコを配り終えた後、幾人かが見回りに出向く。後で交代するアリアは、用意したチョコを手に考え込んでいた。
(あの子は一体何の為に……)
 ふと、人の気配がした。顔を上げるとロバの耳を持つ、片目を隠したハーフビーストらしき少年が佇んでいた。難民キャンプの子供だろうと思ったアリアは優しく問いかけた。
「それ頂戴?」
「これ?」
 少年はアリアが持っていたチョコを見、小さく微笑む。折角だし、とアリアは少し身を屈め、少年にチョコを手渡した。
「ふふ、ありがと。お礼に名前教えてあげる」
 チョコを大事そうに抱きしめ、少年は心からにっこり笑ってこう言った。だが、それは聞き覚えのある声で……。
「僕はレビジュ・バトー。『メドゥの指先』の一員だよ。また遊んでね、お姉さん」
 それだけ言うと、レビジュは駆けだす。何かに気付いたフリーダが僅かに息を飲んだ。
「もしかして、あの時の?!」
「声を変えていたみたい」
 フリーダと共にアリアは急いでレビジュを追いかける。だが、既に彼の姿はなかった。

 こうして難民キャンプの子供たちへ、無事にチョコを渡す事ができた一行。だが、新たな『メドゥの指先』構成員の登場に何やら嫌な予感を消せないでいた。

(終)

マスターコメント

皆様お疲れさまでした。菊華です。 的確な戦い方により、大成功と相成りました。おめでとうございます。 報告されたことをうけ、警備もちょっと厳しくなるかもしれませんね。 また、コボルトの死骸を調べるというのは大手柄です。その上、少年に自分の正体を話させた為、大成功判定と相成りました。 ……もしかしたら、またどこかで出会うかもしれません。 ナバルジャは難民キャンプの子供たちの為に色々できることをしよう、と考えているようです。何かありましたらお手伝いすると喜んでくれることでしょう。 それではこのあたりで。 皆さま今回はお疲れさまでした。また縁がありましたらよろしくお願いします。
ショートシナリオ

ショートシナリオ普通 報酬:多い6 / 4〜6人

2021年03月31日 05時32分24秒 公開

大成功

相談掲示板

  1. アリア・ティーダ

    ととっと、ご挨拶書き込んで大丈夫かな…? ヒーラーのアリア。ふつつかものですが、宜しくお願いいたします、だねっ。 馬車を守って堪えるか、それとも積極的に反撃を仕掛けるか。 それとも攻勢と守勢で分かれるか。それ位は決めといた方がいいのかなかなっ?

  2. アンネエルカ

    ウォーリアのアンネエルカよ。アンネって呼んでくれても大丈夫。 どうぞよろしくね。 そうね、すでに馬車の両側から矢で狙われているのがつらいわよね…… ナハルジャさんたちも戦えるとは言え授恵者ではないし、届けるチョコを守るためにも この状況は打開したいけど。 誰かが前に突出してそれを狙わせて……みたいなのはさすがにちょっとリスキーよね。 左右の弓手を潰しに行く班と、馬車を守る班に分かれる感じとかどうかしら?

  3. アリア・ティーダ

    万が一の時に備えて、2日前くらいにはプレを書くようにしてるから...もし前日晩辺りに相談が進んだら、見れないかもで...ごめんなさいっ。 >方針 アンネ氏の通りに行くならば、 馬車班と弓攻撃班に別れるのかな? だったら、ボクは馬車護衛班に立候補するよ。 馬車から離れずに、各種ヒールや、バフスキルを戦場全員に巻きつつ、 自身も盾と槌で防戦。 いざとなったら馬車を光縛封で物理的に囲って、敵殲滅まで守ろうかと。 そういえば、謎の少年とか、変な薬とか。 ボク、世界情勢に疎くて...。 これまでのお話で気をつけたらいい事とかあります?

  4. フリーダ=ブロムヴィスト

    ウォーリアのフリーダです。よろしくお願いします。 基本方針としてはアンネエルカ様の言う形で良いと思います。 そうなると左右への攻め手2班・馬車の守り手1班で行く形になるでしょうか。 その場合でしたら、攻め手側に回ることにします。 後はOP文に出ている謎の人物についてですが、 こちらはとりあえず手を出さない形のほうが良さそうですかね?

  5. ストレガ・L・リベルガストラ

    ストレガなのだ。よろしくなのだ。 馬車にはアーケインも仕掛けるのだ。ナハルジャ殿は馬車に残ってもらうのがよいと思うのだ。 私も馬車に残るのだー。

  6. アリア・ティーダ

    じゃあ、ストレガ氏は同じ馬車組としてよろしくだねっ! ボクはアーケインでカバーできない方をカバーする様にも動こうかなぁ。 怪しい少年も、ちょっと掘り下げるには時間が心配だし。とりあえずスルーかなぁ。ボクは。

  7. アンネエルカ

    よかった。ナハルジャさんたちは馬車の護衛側というのも賛成よ。 私は攻め手側に回ろうと思うから、とりあえず右側の弓手を片付けに向かうわね! 戦い方としては、シーザーロアで馬車の方を撃たれないよう敵を引きつけながら、 闘気槌でまとめて攻撃したりしたいと思うわ。 あとはそうね、逃げられたりしたくないから射程長めの衝撃刃を念のために。 謎の少年やコボルトたちの興奮状態については私も知ってることはなくって…… ただ、コボルトの群れの中に一人だけ人間が混じってるのは怪しいし、 司令官的な立場かもって推測は出来そうだから、余裕があれば気を付けたくはあるわね。

  8. アイリーン=N=フェルクス

    ちょいと遅れてシーフのアイリですよー 戦闘特化なので攻め手側に入れて貰えると嬉しいのですよ〜♪ 馬車の方はお願いしますので、片方の弓手の方はお任せを〜!左側かな? 毒とかで兎に角沈めるから、一緒に突撃してくれる人に追撃して欲しいよ〜

  9. セロンガード・シュタインドルフ

    申し訳ありません遅れました。 シューター、セロンガードです。 言うのが前日で非常に恐縮なのですが、 もし皆様がよろしければ馬車(あるいはその付近)に対して煙幕を張って敵の射撃を遮蔽しようと思うのですが、如何でしょうか? 私は馬車の護衛側に行こうと思います。

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0