【蠱毒】古戦場の木道にて

韮瀬隈則

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シナリオID:601

オープニング

●
 夕刻の湿原を渡りリザードマンの集落を繋ぐ。
 こんな場所にまで! と、時たま出会う大陸東部の旅行者には驚かれるが、商人たるもの遍く全てに等しく平等に付き合うリザードマン達との交易は、むしろ盛んな部類だと言ったら驚かれるだろうか?
 ――とはいえ。
 この木道の先は、今まで通り過ぎた安全な領域とは違う。
 ギシュム族の管理する『泥血啜る月吸蟲』との古戦場をかすめるのだ。

 湿原をうねる木道は、商人が小さな馬車を曳いてなお、余裕のある道幅と耐久性を誇っている。交易のため、もあるだろう。しかし。
「まぁ、軍事用というやつだ」
 通り過ぎてきたリザードマンの集落で聞いた言葉だ。
 あまりギシュム族とは親密ではないのだろうその男は、「月吸蟲対策、だと」と気乗りしない風に商人の問いに答え、そんなことより……と武器の新調と最新農業書の写本を求めた。
(近隣の冒険者ギルドに併設の売店が、最近、武器の売り上げを伸ばしているとも聞いたが……)
 仕入れ追加の手紙でも飛ばすか、と考えて、その需要の理由を考えて身震いする。
「大丈夫。確か古戦場を徘徊してたスケルトン群は、つい先日、何度もの討伐の末に殲滅されたそうだし」
 こつり……と足が踏んだのは小さな骨片で、向こうに転がるのは朽ちた矢。もう蠢くこともなくもろく崩れるのを待つばかりの屍だ。
 一念奮起して周囲を見回す。
 人影は無し、クリーパーらしき影もない。
 ただ――。

 ゆらりゆらり。
 湿地に点在する小さな沼の水面に、ゆらりと青白い鬼火。
 ひとつ、そしてまたひとつ。
「燐が燃えているんだ。そう、鬼火(ウィルオウィスプ)といっても燃えるだけの存在だ。近づこうとしなければ捕られることはない。木道に沿えば惑うはずはない……」
 木道をもう1kmと少し行けばギシュム族の詰め所兼物見台があるはずだ。
 商人は足早に木道を急ぎ、思うように動かない足元に舌打ちをする。
 骨、骨、骨。
 打ち砕かれた骨片が木道と周囲に散乱して、木道に当たりキシキシと軋んだ悲鳴をあげる。
 忌々し気に蹴とばしてふと顔を上げれば、先ほど見た鬼火が近い!
 これは燐火ではない!
 轟々と音を立て、時折に稲光を発しながら、湿地をぬって木道に近づきひときわ大きく弾けて輝る。

 バチリ、というよりガンッ! という衝撃音。バッバッと破裂音が重なるのは放電だろう。
 悲鳴を飲み込み慌てて伏せた商人が、音がやんだのを機に恐る恐る顔をあげ、やれやれと立ち上がる。
 こういうタイプの鬼火もあるのだと聞いてはいたが危険には違いない。荷馬車の無事を確かめねばと、振り返り、今度こそ絶叫する。

 散乱していた骨と骨と骨が、無作為に繋がって形成するは巨大な髑髏の戦士が2体。
 接合部が小さくパチパチと光っているのは、この髑髏が鬼火による放電によって作られたものの証明だろう。
 髑髏のうつろな目は、後ずさる商人を映していないはずだった。――けれども。
 頭蓋骨のなかに燃える鬼火から漏れる青白い光が揺らめけば、ずさり、と髑髏戦士は商人に向かって歩き出して腕を振り上げる。

 今度こそ!
 商人は駆けつまろびつ、木道をひた走る。
 思い出して首から下げた呼子を吹いて、吐ききった息で喘いで走る。

(何度もスケルトン討伐に挑まざるをえないはずだ。あれはスケルトンではない。髑髏のかたまり、大髑髏だ!)

●
「物資搬入路は古戦場を通るこの木道が最短となります。古くからある道ですが、軍事用を見越した造りゆえに耐久は充分。水路からの荷揚げについても利便性でこの木道に勝る経路はありません」
 翌朝――。
 ギシュム族と冒険者ギルド係員のミーティングが、とある一室で行われている。
 地図を見ればなるほど、この木道を外せば軍事に耐える道は遠く、封印補強に必要な石材のみでなく軍事物資全般の兵站の効率が大幅に下がる。
 確か何度か徘徊するスケルトンの討伐が差し向けられていた筈だと、増員されたギルド員が記録帳簿をめくり、解決済みだと頷いた。
「では……」
 対月吸蟲戦の兵站は、とつづくミーティングリーダーの声は闖入者が発した「木道を使うのは待て!」との叫びで遮られた。

「昨晩、虫の息で詰め所に運び込まれた商人を、なんとか治療して事情を聴いたンだがな?」
 闖入者こと、木道詰め所の医療兵が溜息をつく。
 呼子で緊急出動した詰め所の兵が現場に到着した時には既に、巨大髑髏戦士の形跡はなく。木道上に散らばっていたという骨も、湿地の泥炭や泥水に紛れ。鬼火の気配すら感じられなかった。残っていたのはただ、喰われた馬と壊れた馬車の残骸のみ、と。
「商人が負った怪我のうちで髑髏由来のものと見られるのは、強打がかすったらしい打撲と、古戦場に埋まっていた矢やナイフを高所から投擲された刺し傷だ。足は遅いようだが、投擲は雨あられと襲ってくるらしい」
 詳しくはカルテと事情聴取の書類を見てくれ。と、医療兵が去る。

「対策チームはこちらで用意します。万一の後詰は詰め所に頼めますか?」
 冒険者ギルドの係員が書類をまとめ退出する。
 内心、ギシュム族を頼る亡国の皇子様(レイウェスト)の前途は多難そうだと考えながら……。

解説

●目的  月吸蟲の封印に必須となる補給路、古戦場の木道に巣くう巨大骸骨戦士を排除せよ ●現地情報  過去に古戦場であった湿原に設けられた頑健な木道  『泥血啜る月吸蟲』に関連する軍事用補給路でもある  道幅は約3m  被害者の会敵現場の1km先に、ギシュム族の詰め所兼物見台が設けられている  木道外は足場の悪い湿地となる  ぬかるんだ泥炭に湿地特有の背の低い植生、小さな水たまりなど  会敵場所の木道から数十m横に直径50mほどの沼があり、時折、夕刻以降に燐光が現れる  2か月ほど前からスケルトン出没の報告があったが、消極的な対処で依頼失敗が続いた ●敵情報  ・巨大骸骨戦士 × 2体   身長3m強   木道とその周囲に散らばったスケルトンの残骸が集積して形成されている   攻撃手段は、殴打、身に取り込んだ武器による投擲   足は遅いが打撃力は高い、投擲は高所から複数個が発射される  ・(スケルトン残骸 × 無数)   巨大骸骨戦士を構成する骨片   単体の攻撃力は無し   巨大骸骨戦士出没前に木道とその周囲に大量に出現する  ・(鬼火 × 2体)   沼に発生し、轟音とともに飛来する雷球   放電により巨大骸骨戦士を構築、頭蓋骨内から巨大骸骨戦士を操作するとみられる   単体での攻撃力は不明だが、高威力の放電は警戒すべきかもしれない ※( )内の敵は、巨大骸骨戦士構築の前後に出現する ●その他  ・詰め所兼物見台   万一の後詰地点、積極介入は戦力上できない   被害者の商人が治療を受けている(面会は非推奨だが調書とカルテは提供される)

マスターより

 OP無駄に長くないか? 自覚はあります、韮瀬です。  乱暴に要約してしまえば、『泥血啜る月吸蟲』戦の兵站路に『がしゃどくろ』が出ました。  わりと対策がはっきりしてる相手だと思うのですが、夜間で足元の悪い中での敵2体なのがちょっと面倒かもしれません。

リプレイ

●
 太陽が地平線に近くなってからは低地の暮れはつるべ落としだ。
「討伐後に沼と……詰め所に寄ってみようかと考えてるんですよ」
 怪我人の容体と鬼火の正体が気になるのだろう。アルマ・ヴァレンタインが思案顔で隣を歩くリディリディ・トゥラ・イェレミースに呼びかけた。詰め所は1km先で灯台にも似たの灯火を点している。
「ええ。おそらく本体は鬼火なのでしょうね。とはいえ、巨大骸骨戦士の外骨格となるのは骨片です。キリがなくとも削らねばなりませんが、骨の数だけリザードマンの方々の犠牲で封印がなされているかと思うと……」
 リディリディは遠く故郷(エルフの森)の方角を見て付け加える。
「恩、があるのです」
「この湿地が巨大なカタコンベかよ。這い出たあげく生きてるヤツら襲ってないで、安らかに寝てろよ大人しくよォ」
 なぁ? と、ドーマ・アザーリは、出発前に聖職者の手配をしていたサイラスに同意を求める。
「死者にキリがないとはいえ放置も出来まいよ。浄化もだが、弔ってやらねばと、な」

 そろそろ昨夜の会敵場所だ。タールのように水面を鈍く反射させているのは、件の沼だろう。
 ――こつり。
 誰かのつま先に乾いて固い何かが当たる。
「ここ、本当に場所悪い。軍事の要所で、交易路で、生命線……。この骨とあの沼が原因。生きる邪魔する、死んだヤツ!」
 来たのだ。骨が来たのだ!
 内心(憤るTalaraも可愛いわね)と頷きながらエミリア・シバは暗視を効かせた眼で沼の水面を睨む。
「今後の作戦にダイレクトに響く補給路だものね。死守しなければねぇ」
 ぽう……と、沼の水面が反射を増した。
「対処、始めるわよ」

●
「集まってきている。皆、位置取りはいいか?」
 かしゃかしゃと。時折にがちゃりと。
 サイラスの暗視も木道にひしめく骨片を捉える。間違いなく、先程まで木道の上にここまでなにかが散らばっていることなど無かった。
(通行の気配……木道を踏むのがキーか?)
 多すぎる骨片はすでにぎちぎちと軋んだ音を立て、金属質の武器が混ざって互いに当たる気配も混ざる。
「光源(エンライト)確保したよ! ……って、うっわ! 骨が超大量っ! 足の踏み場なくない?」
「本気(マジ)でシャレになンねェじゃねーかおいィ! クッソ、湿地(足場最低)なのに堪忍しろっての」
 エンライトを発動したアルマに続こうとしたドーマは、「気休めだが足場が先だ、先ッ」と、既に自身にかけていたウォーターウォークを、全員分を使用する。
(((助かる!)))
 と、優先付与されたサイラス、Talara、エミリアの3名の、ドーマに向けたアイコンタクト。既に木道にひしめく骨片を叩こうと位置取りすれば、畢竟、立つのは木道を外れた湿地のなかだ。古戦場の泥の中、だ。ましてやこの次から次へと湧きだす骨片。足場確保としては気休めとドーマは言ったが、得体のしれない水たまりに沈むより余程いい。

 鋼の大太刀が巨大な闘気に輝く。骨片に振り下ろされるのは、サイラスの渾身の闘気槌!
「互いの攻撃範囲に支障はでていないな? 鬼火と会敵するまでの時間勝負なのだ。おれが邪魔な位置に居たら遠慮なく声掛けしてくれ」
 鬼火が骨片を集積し、巨大骸骨戦士を構築するまでの猶予時間。
 その間に、巨大骸骨戦士の材料である骨片を、出来る限り脆く。出来る限り利用不能に。
「私も。私も、骨をすりつぶします。気休めでも、恩あるリザードマンさん達の遺骨が、木道の……リザードマン集落の安全を脅かすなんてことは許されませんから」
 ウォーターウォーク付与を続けるドーマに送り出されて、リディリディが骨片包囲網に加わった。魔法攻撃の威力も命中も、都度、最大に上げてある。
(あそこに這う不完全なスケルトンはリザードマンの物でしょうか? あの上半身だけのスケルトンの持つ武器はこのあたりの防衛部隊のもののハズ……)
 無念でしょう恨めしいでしょう。まさか戦士の誇りの武器が、護るべき民を襲うことに使われるなどと!
 リディリディの放つ紅蓮の巨弾(ストーンブラスト2)が木道を這うスケルトンとその武器を石礫の大爆発で粉砕する。
(泥血啜る月吸蟲。それ、との古戦場を彷徨うスケルトン。ギシュム族のモノ……だろうな)
 サイラスは、錆びた剣を砕く。欠けた斧を砕く。矢羽根を失うも鋭い矢じりはそのままの矢を砕く。死してなお、その武器を持つ掌の骨を砕く。全て防衛戦に散った戦士の亡骸だ。

「TAAAAAaaaaa!!!」
 Talaraの絶叫。ダマスカス鋼の槍が光輝く刃となって薙ぎ払われ(薙ぎ払い2)れば、木道にぎちぎち邪悪な音をたてて寄せてくる骨の数々が、砕け、折れて、冠水した湿地に落ちる。
 ばちゃばちゃと水音を立てて、小石以下の大きさに砕かれ派手に散らばる骨片で、再度、木道に上がってこられるものは多くはない。
「朗報。砕けた骨、役立たず。鬼火が来れば知らないが、材料の頭数減らす、役に立つ」
 Yahaaaaaと歓声。だから殺れ、エミリアも。とTalaraは笑う。
「あら。ホントに朗報じゃあないの。厭だものね、気の毒な商人さんの打撲傷みたいにスケルトンの大腿骨で殴られるなんて。……いえ、凶器は背骨か骨盤だったかしら?」
 鈍器はできるかぎり破壊しておかなければ、と、繰り出すエミリアの三段連撃(トリプルファング)こそ朽ちかけて這うスケルトンには必殺の凶器なのだが。
(今はまだ、相手は殴り返してこないんですもの。エミリアおねえさん、かよわい細腕の二刀流なんだから、ヒット&アウェイ無用の機会逃さず頑張らなきゃじゃない?)

●
「いやいや。アルマ先輩。オレこうみえて蒲柳の質(かよわい)ってヤツなンで。調子に乗れる余裕ねェンで速度と精密性を究めた魔術アプローチをっスね……」
 ドーマは敬語を頑張っている。
「いやいやいや。なに大先輩扱いされてるのボク。年下だし敬語いらないよ? っと、光源確保(エンライト)の補強は今度はボクの番だから、例の作戦の管制はドーマさんよろしく」
 アルマも応酬かねて、ドーマと二人で沼を睨む。

 ――ゆらゆら、と沼の水面に。
 最初は淡く揺らめく燐光にみえて、しかし、鬼火の周囲にパッパッと散る光は電光だろう。
(知らねェと、初手は確かに燐が燃えてる感じだよな? やっぱ)
 だが、とドーマは鬼火を睨む。
「ヤベェ! 速い!」
 あのクソッタレ鬼火の、稲妻を帯同させてからの急襲スピードといったら!
 ひときわ強く鬼火が輝いてから、急激に意識が宿ったかのように。
 アルマの警報。
「みんな、鬼火が来るよ! ボクが絶対デカブツ1匹捕まえるからね! もう1体のスタンバイ宜しく!」
 ドーマが放ったアーケインテンペストの光のお陰だろう。
 鬼火の雷光と暗闇の木道に蠢く無数の骸骨。そのコントラストによる目眩ましも、冒険者たちにはさほど響きはしない。
 身構えるアルマの耳にドーマの情報管制がとぶ。
「鬼火は2体。連れションかましてるつもりか、キャッキャウフフとご機嫌でスキップしてやがるぜ。到達推定3秒後ォ」
 骨どもの具合はどうだ、とドーマが聞く。
「半数以上は粉微塵ね」
 誰かの返答。
「迎撃体制、完了している」
「武器調達に苦労するはずです」
「遊撃、まかせろ!」
 次々と迎撃に応じる声。
 まもなく木道にバチバチ弾ける雷光、2つ。

「それぞれの鬼火が集める骨に偏り傾向が見えるぜ。材料の取り合いついでに仲違いしてくれりゃ大助かりだが、気がきかねェなクソがッ!」
 もってて良かった、位置感覚スキルに天眼スキル。
 戦場を俯瞰すれば敵が見える。敵が見えれば戦況が見える。戦況が見えれば勝機が見える。繊細な戦術オペレーション。それがドーマのモットーである。
「了解。ドン臭いのはあとで骸骨戦士になったほうだね! 光の呪縛よ、悲しき戦士の亡骸を捉えよ……」
 アルマの祈り(光縛封)が、遅れて形成された方の巨大骸骨戦士1体を捉える。
 木道に片足をかけ、しかし捕縛されてなにも出来ず。そしてその躰は脆弱であった。
(ッシャァァ! バッチリと光縛封かかったじゃねぇスかアルマ先輩。一応保険は用意してっけどさ)
 保険は使わないで済むのが重畳だ。ドーマの美学的にも。

●
「Talaraは遊撃。毒撃! 破脚砕! 破鎧砕! まだまだ、まだまだ有る。Talara、嫌がらせ得意」
 こっちは回避をバリバリ効かせるから、Talaraに無茶ブリでも囮でも、どんどん嫌がらせを任せるがいい。
 なんて、皆に作戦前に言っといたかな? 言ったカモ? まあいい。Talara見れば意図は通じる。
「GYAHAHAHAHA! 小さな鬼火、大きな図体! 弱い奴ほど頭が高い!」
 巨大骸骨戦士の足元をすり抜け、湿地に抜けると思えば、次には背後から一撃。少しずつ敵の骨を削ぐ。けれど低身長なTalaraには、巨大骸骨戦士の急所に手は届かない。
 だが……本当に?
「小さいTalaraに届かない、デカブツの腕も届かない。ゴブリナ一人、倒せない! 薄ノロどうする? HAHAHA……」
 ご自慢の骨々しい強打はどうしたのか? 嘲るTalaraめがけ巨大骸骨戦士から古びた槍が投げられる。
「防御上げ(堅甲)てるけど怪我、大丈夫!?」
 一旦こちらへ、とアルマに手招かれ、掠った槍傷が癒される。
「Talara我慢強い。それより、立ちんぼ1体増えた」
 ニカリ、と笑う。骸骨戦士の足取りが鈍いのは嫌がらせの成果だ。

「皆さんも治療はお気軽に要請してね? まぁ、機会みて一斉回復とかやっちゃうつもりだけど」
 アルマの呼びかけ。
(アルマちゃんも可愛いわぁ☆)
 とニヤけながら、エミリアはもう何度目かの三段連撃を巨大骸骨戦士の脛に叩き込む。
 Talaraが翻弄してくれたお陰だろう。初撃の死齎刃(転倒への蝕み)は想像以上にうまくかかってくれた。覚束ない足取りでは、もう一体の骸骨と挟撃を狙える位置にはそう簡単にはたどりつけまい。
「アルマちゃんありがとう。紙装甲のおねえさんには嬉しいわぁ」
 ぶんぶん。両腕の細剣を振り回し、アルマへの防御付与のお礼ついでに巨大骸骨戦士の膝部分を薙ぐ。ずっこけてくれないかしら? と期待して。
「打撃の間合いと、投擲しはじめる間合い。なんとか掴めてきたわね」
 右に左にまた右に。Talaraとダンスを踊るかのように、エミリアは巨大骸骨戦士を翻弄し続ける。
「シバ! エミリア・シバ! 上から来るぞ!」
「ゃん。流石はサイラスだわね」
 このデカブツの膝を折らせるのはサイラス、アナタだって信じてたわ。と、ウィンク。警告に加速度付きの足取りで身を翻せば、矢が刺さった場所にエミリアの影もなく。

「翻弄されて足元がお留守とは。立派に集めた頭蓋骨でも、やはり中身は空(カラ)なのだな」
 ――エミリアを狙う投擲から暫く前。
 なけなしの長大な骨で形成された、巨大髑髏戦士の足はそれなりに固く。
「シバ、Talara、手っ取り早く転倒を狙うなら、骨を折るより関節部分を吹き飛ばせ」
 関節部分にバチバチと、骨を束ねるより大きく激しい稲妻上の放電。
(放電が多いということは、その部分には通常より大きな負荷を要するということだろう……)
 それになにより。と、初撃のドラゴンチャリオッツ(体当たり突撃)の手ごたえから、サイラスは思考する。膝カックンは鍛錬好きな我が身でも有効打を喰らう急所狙いの一つなのだ。
「片側を集中でよいのよ、ね?」
 エミリアが、死齎刃ブチかましたのはこっちの脚よ? と三段連撃での膝へ追撃。Talaraが急所の目印が鬼火に加えて稲妻もか、とはしゃぐ。
「イェレミース、ここから速攻になるが?」
 巨大骸骨戦士の頭部に向けてエーテルの矢(魔矢2)を放つリディリディと、タイミングを合わせる。
 ――サイラスは考える。考えて渾身の筋力を振るう。一気に潰さねば再合体もあり得る敵だ。鬼火に逃げられレば元の木阿弥だ。なにせここは古戦場。材料の骨には事欠かない。
「シバ、一時退避だ! イェレミース、目の前に転がすから存分に火葬してやってくれ」
 再度のドラゴンチャリオッツ。
 ガラリガラリと、硬質の乾いた音が木道に響く。

「火葬、ですか……」
 リディリディがドーマに誘導された位置取りをしてみれば、サイラスによってまさに目の前に倒れてくる巨大髑髏戦士の頭蓋。
(お二人とも手際が良すぎでしょう?)
 合図と同時に放った巨大な炎弾(爆炎2)が、鬼火の放電光を打ち消すように髑髏を構成する骨ごと焼いてゆく。
 髑髏を包み込む爆炎、そしてまた爆炎。
「ええ、許しません。私の大切な恩人たちの遺骨をこんな事に使うなんて。焼かれてください。鬼火は地獄に戦士は天に、これは葬送の炎です」
 悪あがきなのか。
 巨大骸骨戦士の腕が持ち上げられ、しかしエミリアに弾き飛ばされる。未練がましく放電を纏わりつかせる焼け焦げた髑髏も、サイラスの闘気槌で砕かれた。

●
「さて。ここで硬直解除のお知らせがぁぁアアアアっぶねェッ!」
 もう一体。骨クズの寄せ集めの巨大髑髏戦士の投擲が、光縛封効果切れを告げるドーマに襲い掛かる。
「硬直が解けて即、オレを狙うか? 普通?」
「管制役狙いだから、痛いところ突いてきてるんだと思うよ?」
 飛び退いて、エーテルが防がなければ即死だったと嘯くドーマに、軽傷じゃないですかと近寄るアルマがヒーリングオーラを発動する。事前に骨ごと打ち砕かれた武器の破片が生んだ、ドーマの無数のかすり傷。
「材料が貧弱だと、攻撃も貧弱な坊やができあがるのねぇ」
 見上げるエミリアが背後に待機するサイラスに、念の為だと合図すれば――。
 ――心得ていると、斃した骸骨戦士の骨がサイラスによって砕かれ弾き飛ばされてゆく。
「焼けぼっくいに火が点かれても困るからな」
 鬼火残党が目の前にいる以上、追加の材料は渡すわけにはいかない。そして勿論――。
「Talaraとエミリア、躰を吹き飛ばす。ドーマは、頭を吹き飛ばす。たった二体が運の尽き。鬼火良い目印、だから頑張れ。GYAHAhahaha!」
 Talaraが言い終わる前にはもう、エミリアとの関節攻撃は貧弱な体躯部分を破砕していて、ドーマは半ばやけくそで絶叫する。
「喰らえ渾身のォ……メテオライトォ!!」
 アルマ大先輩の防御付与まで貰っては、敵を打ち砕かねば漢がすたるってモンじゃねェか。

 その後――。
 夜更け前の詰め所を冒険者たちが訪れた。
「取り急ぎ、おれとドーマとで遺骨を泥で固めてきた。土葬塚になっているから、明日の聖職者の祭祀を頼む」
 明朝の撤収前に花を摘んでくる。と、サイラスは続けた。
「皆で沼も見て回ったんですよ。もう鬼火は居なかったけど、祭祀は沼のほうもお願いしたいかな」
 木道修理以外にも祭壇作りもやれますと、アルマが大工道具を取り出して見せる。
「アルマちゃん、商人さんの治療で疲れているんじゃないの?」
 修理手伝うならおねえさんも、Talaraも、私もと、声が上がる。

 翌日。ギルドには、商人全快と木道安全確保の報告があげられた。

マスターコメント

 巨大髑髏戦士討伐、お疲れさまでした。  まだまだ補給路には危険が山積みですが、この木道の安全が担保されたことで輸送効率は大幅に高まりました。  2体のうち片方の弱体化が、それはもう効果的すぎてどうしようと思ったのは、ここだけのヒミツだよ。
ショートシナリオ

ショートシナリオ普通 報酬:標準6 / 4〜6人

2021年03月05日 13時08分54秒 公開

大成功

参加者

相談掲示板

  1. No.1

    キャ、キャスターの・・・、リディリディです。 その・・・、よろしくお願いします。 メンバーは ウォーリア2 シーフ1 ヒーラー1 キャスター2 ですね。 目的は2体の巨大骸骨戦士を討伐すること、です・・・。 内部の鬼火が操っているようですが、遠隔から鬼火を狙うのは難しいかもしれませんね。 特に今回はシューターの方がいらっしゃいませんし。 逆にがしゃどくろ側からは投擲により遠距離攻撃を可能としています。

  2. No.2

    サイラスだ、よろしくなー さて、射手がいないとなると骨を破壊して散らし、修復終わるまでに鬼火を攻撃して仕留めるとかになるかねー? 近くに被害出さないこと優先ならキャスター次第では術や飛び道具で直接狙撃してもありだろうけど。 とりま明日次第では弓買って狙撃狙いも選択肢かなとか思ったけどスキルまで資金足りんから、カバリングで防衛とかの方が良いのだろうかね?投擲がノーコンとか散らばって変に落ちるとかあるならカバリングの方が安定するかもだし

  3. アルマ・ヴァレンタイン

    ヒーラーのアルマだよ、どーぞよろしくー。 サイズ的には収まるし、短時間だけど片方を光縛封で閉じ込めようかなと思ってるよ 鬼火の放電が魔法属性かは不明だけど他は物理に偏ってそうだからたぶんもつ…はず?

  4. Talara

    ウォーリア、Talara。 んー、髑髏、木道外に抑える。木道、被害度外視、出来る。皆、全力で叩ける? 足場が不安定、懸念する。 アルマ、光縛封、一匹封じ。全員、片方叩く。一匹ずつ、楽になる。鬼火の放電、気掛かり。 のんびり、煮詰める。よろしく。

  5. エミリア・シバ

    ごめんなさい、取り急ぎまずは挨拶だけでも。 おねえさんは、シーフのエミリアっていうわ、よろしくね

  6. ドーマ・アザーリ

    よォ、俺ァドーマってもんで!見てのとおりのキャスターよ! こんなかじゃあ弱小な身だ、あんまり図に乗らねェよう立ち回ってくつもりなんでヨロシクゥ!!

  7. No.7

    とりあえずウォーリアはタンクと攻撃に回るのとで分かれるのかな? で、鬼火の方は例え注視付与しても放電なので範囲攻撃とかの可能性あるし、さっさと火力集中させて沈めたいね。 最初は骸骨戦士の状態からだから壊れる前の攻撃は物理ばかりかな?後BSの効果は鬼火以外効果薄そう とりま攻撃なら強撃とか中の鬼火まとめて狙いに衝撃刃とか中心 防御なら魔法防御もバランス良く程々に伸ばす装備して動かない方にシーザーロア、重点硬化で身を守りつつ攻撃してくかな?

  8. Talara

    巨大骸骨、残骸纏う。残骸、攻撃対象。範囲攻撃、使えない? 初手、鬼火が残骸、纏う前。皆一斉、範囲攻撃。纏う残骸、何割か削れそう。 範囲で、残骸削り。騒がしく、駆ける、遊撃予定。 BS、どうだろ。個として見る、群として見る。試してみる、つもり。

  9. No.9

    そうですね、巨大骸骨が現れる前にスケルトンの残骸が多数現れるということなので、まずはそこにストーンブラストを入れてみます。 直径3ヘクスの範囲攻撃なのでだいぶ巻き込めるのではないかと思いますが、識別のない魔法ですので、皆さんは巻き込まれないように注意してください。

  10. No.10

    とりま最初から普通に殴って、残骸吹っ飛ばしてみる 片割れには光縛封かけて行動留めれたらもう一つに攻撃集中していくとかでいいのかね? 明後日の朝には出発だし雛形くらいは欲しいかなと とりま俺は普通に殴ってくよ?重量的に遅いから巻き込まれない様には行けそう

  11. アルマ・ヴァレンタイン

    とりあえず夜間ということで光源にエンライトを使うのとー… 予定通り光縛封で片方閉じ込めるので残ったほうを集中攻撃してもらうのとー… 事前攻撃の結果とかで同時出現じゃなかった時は後から出たほうにかけるね そのあとは支援と回復を回すくらいかな あと木道外は足場の悪い湿地みたいなので前衛さんは足元に注意ー…くらい?

  12. Talara

    とりあえず、まとめ。 ■方針 初手、範囲攻撃。スケルトン残骸、ある程度、削る。 巨大骸骨戦士、二体形成。アルマ、片方、光縛封、封じる。 封じられていない、片方。全員囲む、各個撃破。 ■役割 サイラス(前衛・アタッカー) Talara(前衛・遊撃) リディリディ(後衛・範囲攻撃) アルマ(後衛・光縛封・支援)

  13. ドーマ・アザーリ

    俺の手札も面的火力と拘束で。 敵の優先度によっちゃリディリディか、アルマのサポートに入ったほうが良さそうだな?

  14. エミリア・シバ

    全然顔出しできなくてごめんなさい。 おねえさんは、基本的に前に出て切ることしかできないから、封じられてない方を集中攻撃する感じになるかしらね。 立ち回り的には、ヒット&アウェイなかんじになるとおもうわ。 足場はバランス感覚とか壁歩きで対処できないかをやってみるつもりね。

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0