ぴよぴよパニック!
わるいひと。
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シナリオID:599
オープニング
●一見平和ですが、事件です。
春が訪れ暖かくなってきたある日のこと、その事件は起きた。
ぽかぽかと陽射しの差す街道で、ある商人の馬車は立ち往生してしまう。
それというのも。
「すぴ……すぴ……」
「ぴよ……ぴよ……」
街道のあちこち、いや街道を外れても見渡す限りの地面で気持ちよさそうにお昼寝中のひよこ、ひよこ、ひよこ……
流石に地面を埋め尽くすほど大量に密集はしていないが、まばらに広範囲に散っている分タチが悪い。
仕方なくこの商人は大幅に迂回を余儀なくされ、本来の道程よりも大幅に時間を食ってしまった。
●暴力反対です。
「……と、いうことで皆さんにはこのひよこたちをどかしていただきたいのです」
ギルドの受付嬢はそう説明した。
もうちょっと詳細な情報によると。
問題のひよこたちはとにかく街道を中心に広範囲にまばらに散ってお昼寝している。
起こしても割と頑固で意地でも動かない。
そして手で掴み上げてどかすと、たちまち他のひよこが新しくやってきてまた道を塞いでしまう。
単純な話、とにかく数が多すぎて街道を使えるほどまでどかすのがめんどくさい。
なので依頼として冒険者にその役回りを押し付けられたわけである。
話を聞いていた男性冒険者が思った一言を口にした。
「なぁ、それ無視して轢いてしまえばいいんじゃないか?」
途端にギルドにいた女性陣を中心に大ブーイングが沸き起こった。
とりあえず、今回ひよこを苛めたらダメらしい。
春が訪れ暖かくなってきたある日のこと、その事件は起きた。
ぽかぽかと陽射しの差す街道で、ある商人の馬車は立ち往生してしまう。
それというのも。
「すぴ……すぴ……」
「ぴよ……ぴよ……」
街道のあちこち、いや街道を外れても見渡す限りの地面で気持ちよさそうにお昼寝中のひよこ、ひよこ、ひよこ……
流石に地面を埋め尽くすほど大量に密集はしていないが、まばらに広範囲に散っている分タチが悪い。
仕方なくこの商人は大幅に迂回を余儀なくされ、本来の道程よりも大幅に時間を食ってしまった。
●暴力反対です。
「……と、いうことで皆さんにはこのひよこたちをどかしていただきたいのです」
ギルドの受付嬢はそう説明した。
もうちょっと詳細な情報によると。
問題のひよこたちはとにかく街道を中心に広範囲にまばらに散ってお昼寝している。
起こしても割と頑固で意地でも動かない。
そして手で掴み上げてどかすと、たちまち他のひよこが新しくやってきてまた道を塞いでしまう。
単純な話、とにかく数が多すぎて街道を使えるほどまでどかすのがめんどくさい。
なので依頼として冒険者にその役回りを押し付けられたわけである。
話を聞いていた男性冒険者が思った一言を口にした。
「なぁ、それ無視して轢いてしまえばいいんじゃないか?」
途端にギルドにいた女性陣を中心に大ブーイングが沸き起こった。
とりあえず、今回ひよこを苛めたらダメらしい。
解説
・目的
ひよこたちをどかして街道を使用可能にする
・地形情報
辺り一面遮るもののない、広々とした草原の中に伸びる幅の広い街道。
その街道の一地点を中心として、草原も含めた広範囲に見渡す限り大量のひよこがうっかりすると踏んでしまいそうになるほどバラけてお昼寝中です。
・ひよこ
どこからともなく現れた謎のひよこ。一応普通のひよこです。
行動パターンとして、
1:起こしてもどかない(手で普通に捕まえてどかすことは可能です)
2:街道の一地点を中心に円形範囲で均等な密度で常に陣取ってお昼寝しています。
掴み上げたりしてどかされると他のひよこがその隙間を埋めてしまいます。
どかして減らしていくほど、ひよこたちのお昼寝している範囲が小さくなっていきます。
ひよこの全体の75%をどかしたら、ひよこのお昼寝範囲の半径が半分になると思ってください。
(数学的な話です)
困ったひよこたちですが、苛めたり酷いことはしないであげてください。
・ひよこを掴み上げたら
ギルドが複数の馬車や藁を敷いた木箱などを大量に用意してくれるので、それに積んであげてください。
回収したひよこたちはギルドに連れ帰ってくれます。
他に欲しい道具などあればプレイングに記載すれば用意してくれます。
(日用品など調達するのが難しくないものに限ります)
・その他
作業に疲れたら休憩するといいでしょう。
一台、ひよこたちと一緒にお昼寝できる藁のベッドの馬車があります。
マスターより
頭を空っぽにしてシナリオをリリースしてみました。
わるいひと。です。
暖かくなってきましたね。お昼寝にもいい天気です。
ほのぼのとしたい皆様のご参加をお待ちしております。
リプレイ
(代筆:DoLLer)
ぴよぴよ
ぴいぴい
黄色い絨毯はもふもふ動く。てちてちと動くひよこ達は無邪気に歩き回り、仲間とぶつかったり転んだり。見ているだけでかわいらしい。こくりこくりと眠る様は春の日差しの下で心まで温かく安らかな眠りにいざなってくれそう。
そんな風景が視界にいっぱい。埋め尽くす限りのひよこ。ぴよぴよ。ふわふわ。
「ここが天国か!!!????」
レオネベルは湧き上がる喜びの衝動を押さえつけるのに精いっぱいだった。普段は少年を装うライオンのハーフビーストだと言っても、この衝動には抗いがたい。
だってかわいいんだもん。
ダメだ。口元がによによしちゃう。
いやいや、落ち着けオレ。自分一人ならともかく、今日は他の仲間たちだっているのだから。
「じゃあ任務開始しようか」
イズル・M・ヴォルゴールは眉を下げてレオネベルにそう声をかけた。
ほら彼ら、彼女たちだって可愛いと思いながらも仕事で来たのだから、真面目にやらないとっ。レオネベルはきりっと顔を整えるとおもむろにブランケットを取り出した。
「ブランケットをもってきたんだ。この上にヒヨコをのせて一気に運ぼうぜ」
「いいアイデア。じゃあ俺は台車借りてくるよ。ブランケットですくいあげて台車に移していこう。最後に藁を敷いた木箱に。いいね?」
イズルの言葉にエフィルミアとヘレン・ワーグナーも頷いた。
「わかった。それじゃブランケットの反対側はヘレン、頼んだぜ」
「いいよ。任された」
あれ、おっとりマイペースのヘレンがこんなに協力的だなんて。
レオネベルと頷きあい、それぞれブランケットの両端をもって一気にすくい上げる作戦をとるらしいヘレンの様子にイズルは少し気になった。
「それじゃあ行くぜ」
ひよこの海にもふもふダイブする興奮に浮足立ちながら、レオネベルとヘレンは走り、そしてブランケットをすっと地面に……。
「すぅっ」
すぅっと。
ヘレンは五体投地するかのように指先、頭からひよこの海へすぅっとダイビングして、すぅっと幸せの野へと旅立った。平たく言うと、もふもふに埋もれて即ぐっすり。すぅすぅ……すやすや。
「あー、ずるい」
それが目的じゃないですか。
ヘレンのことだから何処かで寝るだろうなーとは思っていたけれど、まさか真正面からやるとは。
「先手必勝をまさかヘレンに取られてしまうとは不覚ですねっ」
今までやったもん勝ちを実行してきたエフィルミアにはちょっとショックではあったけれど、あそこまで大胆にサボりを入れられる自信はない。でもエフィルミアもふわふわもこもこを堪能するためにお仕事に来たわけで。
エーテルをちょっと込めたエフィルミアはそのまま大きくジャンプしてひよこの密集地へと飛び込んだ。
しゅとっ。
「レオネベルさん。代わりに私がお手伝いしますねっ」
「すっげーな。足の踏み場も見えないくらいのひよこの隙間を飛んでくるなんて!」
エフィルミアの華麗で針の穴を通すようなジャンプと着地に目をキラキラさせるレオネベルの素直な言葉に、エフィルミアは慎ましやかにほほ笑んだ。
「シーフの回避力を甘く見ちゃいけませんよ! 密集地帯でもひよこを踏んづけたりはしません! まさに万能……! シーフ最強!」
ちょっと小鼻が膨らんでどやってるのが見え隠れするのは内緒。
「それじゃ、せーの」
ブランケットが持ち上げられる。ブランケットの中にはふかっふかのひよこ達。
ひなたぼっこをして太陽の香りいっぱい。
「ふあああ~、し、幸せすぎる……」
持ち上げて眼前にいっぱいのひよこ達にレオネベルは頬を緩ませた。
顔をうずめたら絶対気持ちよさそう。
「はやく、台車に移そうぜ。それで一緒に休憩だ」
「そうですねっ」
ブランケットの端を持ったままの両腕が作るスペースにひよこ達は隙間を埋めるがごとくよじ登っては腕や胸の隙間にはさまって落ち着くふわっふわのひよこ。感触がまた最高。
よちよち。
ぴい。
「ふわわわ。こ、こんなに可愛い生き物が世界に存在していたなんて……!!」
もふもふしながら、ついでにお金までもらえる依頼なんてと思ってやってきたエフィルミア。今やその強かな思考はすっかり溶けてしまっていた。
「い、イズルママー!! 雀亭で飼っていい? ちゃんと世話するから!!」
お金出しても飼いたい! に変わっていってしまった。
うん、よくわかる。
ヘレンは頭や頬をひよこ埋め尽くされながら、エフィルミアの発狂ボイスにふかーく頷いていた。
●
ひよこを両手に差し出してうるうるしたお目目で懇願するエフィルミアの可愛さは異常だが、女ばっかりの家族で育ってきたイズルにはそんなものは通用しなかった。
「誰がママなんだよ。俺はお前のママじゃない!」
だいたいこの手の『お願い』がどんな結果になるのかイズルはよく知っている。
今はもこもこかわいいヒヨコでも、いずれ精悍な目つきで真っ赤なトサカをもった鶏に化けるのだ。朝も晩もこけっここけっけ、けっこーと騒がされ、餌やりに忙しく動くのはイズルだけ。飼いたいと言った本人はどこにも見えない。
そう。
決まってエラい目に合わされるのは自分なんだもの。
過去の記憶にちりちりと胸を焼かれる。
「ダメ」
「飼って」
「ダメ」
「飼ってかってー!」
「ダメダメダメ」
「かってかってかってーーーーーーーー!!」
「ダメダメダメダメダメダメダメダメ」
かってとダメの押し問答が続くのを止めたのはイズルが持ってきた台車からの声だった。
「飼うにしても、まず仕事終わってから考えたらどうかな」
「そうだね。ヘレンもたまにはいい事言うじゃないか」
そう言ってイズルが振り向くと、台車に大の字に寝転がって次々乗せられるひよこを毛布代わりに堪能するヘレンの姿。
仕事が終わってから=私にもっとぴよの洗礼を下さい。
「確かにいつまでも愛くるしい姿見ていたくなるよな。オレもちょっと混ざりたいもんな」
「レオネベルさん、一緒に堪能しよう」
ひよこにまみれながら、すっと伸びるヘレンの腕。
そこにイズルの手によって新たなひよこがどさどさ追加された。つっこまれると思いきや、もはや呆れ顔になっちゃってる。
「ありがとう。これで安心して眠れるよ……ぐぅ」
「いや、仕事しようよ。レオネベルさん、ごめんね」
申し訳なさそうに謝るイズルに対してレオネベルはお日様のように笑顔を浮かべた。
「いやー、すごくわかるぜこの辺り埋め尽くすくらいの数がいるんだから、どうせ休憩や交代も必要だし、いいんじゃねーか?」
「レオネベルさん、神……!」
にっこり笑うレオネベルにヘレンはきらきらと感謝の瞳を向けると、そのまま至福の顔のままひよこに埋もれていった。
「はあ、仕方ないなぁ。エフィ。このままじゃ終わらなさそうだし、ヘレンが言った通り、早めに仕事終わったら飼うのを考えるよ」
「本当!? まかせて、まかせて、すっぐに終わらしちゃうから! レオネベルさん、行きましょう!!」
エフィルミアはジャンプして小躍りすると、レオネベルの手を引いてひよこの海へと飛び込んでいった。
●
「はぁ、はぁ。これで……全部っ」
どこまでも続くぴよの海は今やほとんど木箱の中。残るは台車に乗せた分を仕舞えばおしまい。
「それじゃ、お昼寝ターイム」
レオネベルは腕を昼下がりのぽかぽか春空に向かって突き上げながら、そのままぽてりっとひよこの海に埋もれた。ほっぺたに触れる羽毛のもふもふ。飛び込んできたレオネベルに興味津々と覗き込むまんまるお目目。ぬくもりたっぷりのふかふかに全身が包まれる幸せ。
「幸せだよぉ」
くりっとしたレオネベルの目もふんにゃりしてしまっている。
「うんうん、良かった。お疲れ様」
その横でまったり担当(イズルに怒られてから、ちゃんとお手伝いはしてたよ!)のヘレンがレオネベルににっこり微笑んで出迎える。
「ふふ、ありがとっ。エフィルミアもイズルもやすもーぜ!」
「はーい!」
元気に、それでいてひよこを踏んだりしないようにするっと飛び込むエフィルミアの体が台車に倒れると黄色い羽がぽふん。改めて飛んできたエフィルミアに歓迎のぽふぽふだ。いっぱいがんばったものね。ヘレンがちょっとばかり幸せのおすそ分け。
「ああー、幸せすぎるよー。はあ、ずっとこのままでいたい……」
できるだけ密集地のふわもこ担当をしていたエフィルミアでも最後は一番の密集地を堪能できるのは最大の幸せ。
「ありがとう」
イズルはちょっとだけ照れ臭そうに笑うと、両手の中に収めたひよこに目を落とした。エフィルミアの願いとは裏腹にイズルはそう思う程度で、よし飼おう! と意気揚々にはなってくれない。
「確かにふかふかで柔らかくて、温かいな」
「でしょ! ぜっっったい、雀亭をもっと素敵にしてくれると思うんだけど……ダメ?」
「……ちゃんとお世話する?」
「するする」
二つ返事が逆に怪しい。と思われていることにエフィルミアは気づいているだろうか。ちょっぴり眉をひそめて考え込むイズルにレオネベルの瞳が加わった。
「あー、その。掛け合うならオレもやるぜ? 一羽くらい飼えたら、ほら、冒険が楽しいって思うし」
「だよね、だよね!」
エフィルミアがこくこく頷く横でヘレンがふにゃっと声を上げた。
「ひよこをペットとして連れまわすのは難しそう……」
「ぐ、そ、そうだよな。でも……ぐぐぐ」
ほかのペットよりひよこ可愛いのに。
ひよこの守り手たるレオネベルにはなんとも辛い現実。
それでも諦めきれない顔に息を吐きだしたのはイズルだった。
「どこから来たのかわからないヒヨコだし……まあ依頼主を通してどこかに本当の飼い主がいないかとか、もらってもいいかとか、聞いてみても、いいかな?」
一人だけならともかく。みんなが望むならやってみてもいいかな。なんて考えるのは自分でもちょっと甘いとは思うけれど。
「やったー!!」
「これで家に帰っても幸せの続きが……思い残すことは、ない」
みんなの幸せな顔を見ていたら、それも悪くないかな。
「よーし、この後のことも決まったし、改めて休憩っ」
「イズルも寝よう」
あの広い広いふわもこが消えてしまったのは残念なことだけど、誰にも迷惑をかけずに気ままにお昼寝を堪能できるのはもっと嬉しい。
「帰ってからも、よろしく」
ヘレンの一言にひよこ達が応える。
ぴよぴよ
ぴいぴい
ふわふわもこもこの中で、包まれる幸せの中で、昼下がりの草原の風が吹いていく。
(ちなみにお持ち帰りは許可されました)
ぴよぴよ
ぴいぴい
黄色い絨毯はもふもふ動く。てちてちと動くひよこ達は無邪気に歩き回り、仲間とぶつかったり転んだり。見ているだけでかわいらしい。こくりこくりと眠る様は春の日差しの下で心まで温かく安らかな眠りにいざなってくれそう。
そんな風景が視界にいっぱい。埋め尽くす限りのひよこ。ぴよぴよ。ふわふわ。
「ここが天国か!!!????」
レオネベルは湧き上がる喜びの衝動を押さえつけるのに精いっぱいだった。普段は少年を装うライオンのハーフビーストだと言っても、この衝動には抗いがたい。
だってかわいいんだもん。
ダメだ。口元がによによしちゃう。
いやいや、落ち着けオレ。自分一人ならともかく、今日は他の仲間たちだっているのだから。
「じゃあ任務開始しようか」
イズル・M・ヴォルゴールは眉を下げてレオネベルにそう声をかけた。
ほら彼ら、彼女たちだって可愛いと思いながらも仕事で来たのだから、真面目にやらないとっ。レオネベルはきりっと顔を整えるとおもむろにブランケットを取り出した。
「ブランケットをもってきたんだ。この上にヒヨコをのせて一気に運ぼうぜ」
「いいアイデア。じゃあ俺は台車借りてくるよ。ブランケットですくいあげて台車に移していこう。最後に藁を敷いた木箱に。いいね?」
イズルの言葉にエフィルミアとヘレン・ワーグナーも頷いた。
「わかった。それじゃブランケットの反対側はヘレン、頼んだぜ」
「いいよ。任された」
あれ、おっとりマイペースのヘレンがこんなに協力的だなんて。
レオネベルと頷きあい、それぞれブランケットの両端をもって一気にすくい上げる作戦をとるらしいヘレンの様子にイズルは少し気になった。
「それじゃあ行くぜ」
ひよこの海にもふもふダイブする興奮に浮足立ちながら、レオネベルとヘレンは走り、そしてブランケットをすっと地面に……。
「すぅっ」
すぅっと。
ヘレンは五体投地するかのように指先、頭からひよこの海へすぅっとダイビングして、すぅっと幸せの野へと旅立った。平たく言うと、もふもふに埋もれて即ぐっすり。すぅすぅ……すやすや。
「あー、ずるい」
それが目的じゃないですか。
ヘレンのことだから何処かで寝るだろうなーとは思っていたけれど、まさか真正面からやるとは。
「先手必勝をまさかヘレンに取られてしまうとは不覚ですねっ」
今までやったもん勝ちを実行してきたエフィルミアにはちょっとショックではあったけれど、あそこまで大胆にサボりを入れられる自信はない。でもエフィルミアもふわふわもこもこを堪能するためにお仕事に来たわけで。
エーテルをちょっと込めたエフィルミアはそのまま大きくジャンプしてひよこの密集地へと飛び込んだ。
しゅとっ。
「レオネベルさん。代わりに私がお手伝いしますねっ」
「すっげーな。足の踏み場も見えないくらいのひよこの隙間を飛んでくるなんて!」
エフィルミアの華麗で針の穴を通すようなジャンプと着地に目をキラキラさせるレオネベルの素直な言葉に、エフィルミアは慎ましやかにほほ笑んだ。
「シーフの回避力を甘く見ちゃいけませんよ! 密集地帯でもひよこを踏んづけたりはしません! まさに万能……! シーフ最強!」
ちょっと小鼻が膨らんでどやってるのが見え隠れするのは内緒。
「それじゃ、せーの」
ブランケットが持ち上げられる。ブランケットの中にはふかっふかのひよこ達。
ひなたぼっこをして太陽の香りいっぱい。
「ふあああ~、し、幸せすぎる……」
持ち上げて眼前にいっぱいのひよこ達にレオネベルは頬を緩ませた。
顔をうずめたら絶対気持ちよさそう。
「はやく、台車に移そうぜ。それで一緒に休憩だ」
「そうですねっ」
ブランケットの端を持ったままの両腕が作るスペースにひよこ達は隙間を埋めるがごとくよじ登っては腕や胸の隙間にはさまって落ち着くふわっふわのひよこ。感触がまた最高。
よちよち。
ぴい。
「ふわわわ。こ、こんなに可愛い生き物が世界に存在していたなんて……!!」
もふもふしながら、ついでにお金までもらえる依頼なんてと思ってやってきたエフィルミア。今やその強かな思考はすっかり溶けてしまっていた。
「い、イズルママー!! 雀亭で飼っていい? ちゃんと世話するから!!」
お金出しても飼いたい! に変わっていってしまった。
うん、よくわかる。
ヘレンは頭や頬をひよこ埋め尽くされながら、エフィルミアの発狂ボイスにふかーく頷いていた。
●
ひよこを両手に差し出してうるうるしたお目目で懇願するエフィルミアの可愛さは異常だが、女ばっかりの家族で育ってきたイズルにはそんなものは通用しなかった。
「誰がママなんだよ。俺はお前のママじゃない!」
だいたいこの手の『お願い』がどんな結果になるのかイズルはよく知っている。
今はもこもこかわいいヒヨコでも、いずれ精悍な目つきで真っ赤なトサカをもった鶏に化けるのだ。朝も晩もこけっここけっけ、けっこーと騒がされ、餌やりに忙しく動くのはイズルだけ。飼いたいと言った本人はどこにも見えない。
そう。
決まってエラい目に合わされるのは自分なんだもの。
過去の記憶にちりちりと胸を焼かれる。
「ダメ」
「飼って」
「ダメ」
「飼ってかってー!」
「ダメダメダメ」
「かってかってかってーーーーーーーー!!」
「ダメダメダメダメダメダメダメダメ」
かってとダメの押し問答が続くのを止めたのはイズルが持ってきた台車からの声だった。
「飼うにしても、まず仕事終わってから考えたらどうかな」
「そうだね。ヘレンもたまにはいい事言うじゃないか」
そう言ってイズルが振り向くと、台車に大の字に寝転がって次々乗せられるひよこを毛布代わりに堪能するヘレンの姿。
仕事が終わってから=私にもっとぴよの洗礼を下さい。
「確かにいつまでも愛くるしい姿見ていたくなるよな。オレもちょっと混ざりたいもんな」
「レオネベルさん、一緒に堪能しよう」
ひよこにまみれながら、すっと伸びるヘレンの腕。
そこにイズルの手によって新たなひよこがどさどさ追加された。つっこまれると思いきや、もはや呆れ顔になっちゃってる。
「ありがとう。これで安心して眠れるよ……ぐぅ」
「いや、仕事しようよ。レオネベルさん、ごめんね」
申し訳なさそうに謝るイズルに対してレオネベルはお日様のように笑顔を浮かべた。
「いやー、すごくわかるぜこの辺り埋め尽くすくらいの数がいるんだから、どうせ休憩や交代も必要だし、いいんじゃねーか?」
「レオネベルさん、神……!」
にっこり笑うレオネベルにヘレンはきらきらと感謝の瞳を向けると、そのまま至福の顔のままひよこに埋もれていった。
「はあ、仕方ないなぁ。エフィ。このままじゃ終わらなさそうだし、ヘレンが言った通り、早めに仕事終わったら飼うのを考えるよ」
「本当!? まかせて、まかせて、すっぐに終わらしちゃうから! レオネベルさん、行きましょう!!」
エフィルミアはジャンプして小躍りすると、レオネベルの手を引いてひよこの海へと飛び込んでいった。
●
「はぁ、はぁ。これで……全部っ」
どこまでも続くぴよの海は今やほとんど木箱の中。残るは台車に乗せた分を仕舞えばおしまい。
「それじゃ、お昼寝ターイム」
レオネベルは腕を昼下がりのぽかぽか春空に向かって突き上げながら、そのままぽてりっとひよこの海に埋もれた。ほっぺたに触れる羽毛のもふもふ。飛び込んできたレオネベルに興味津々と覗き込むまんまるお目目。ぬくもりたっぷりのふかふかに全身が包まれる幸せ。
「幸せだよぉ」
くりっとしたレオネベルの目もふんにゃりしてしまっている。
「うんうん、良かった。お疲れ様」
その横でまったり担当(イズルに怒られてから、ちゃんとお手伝いはしてたよ!)のヘレンがレオネベルににっこり微笑んで出迎える。
「ふふ、ありがとっ。エフィルミアもイズルもやすもーぜ!」
「はーい!」
元気に、それでいてひよこを踏んだりしないようにするっと飛び込むエフィルミアの体が台車に倒れると黄色い羽がぽふん。改めて飛んできたエフィルミアに歓迎のぽふぽふだ。いっぱいがんばったものね。ヘレンがちょっとばかり幸せのおすそ分け。
「ああー、幸せすぎるよー。はあ、ずっとこのままでいたい……」
できるだけ密集地のふわもこ担当をしていたエフィルミアでも最後は一番の密集地を堪能できるのは最大の幸せ。
「ありがとう」
イズルはちょっとだけ照れ臭そうに笑うと、両手の中に収めたひよこに目を落とした。エフィルミアの願いとは裏腹にイズルはそう思う程度で、よし飼おう! と意気揚々にはなってくれない。
「確かにふかふかで柔らかくて、温かいな」
「でしょ! ぜっっったい、雀亭をもっと素敵にしてくれると思うんだけど……ダメ?」
「……ちゃんとお世話する?」
「するする」
二つ返事が逆に怪しい。と思われていることにエフィルミアは気づいているだろうか。ちょっぴり眉をひそめて考え込むイズルにレオネベルの瞳が加わった。
「あー、その。掛け合うならオレもやるぜ? 一羽くらい飼えたら、ほら、冒険が楽しいって思うし」
「だよね、だよね!」
エフィルミアがこくこく頷く横でヘレンがふにゃっと声を上げた。
「ひよこをペットとして連れまわすのは難しそう……」
「ぐ、そ、そうだよな。でも……ぐぐぐ」
ほかのペットよりひよこ可愛いのに。
ひよこの守り手たるレオネベルにはなんとも辛い現実。
それでも諦めきれない顔に息を吐きだしたのはイズルだった。
「どこから来たのかわからないヒヨコだし……まあ依頼主を通してどこかに本当の飼い主がいないかとか、もらってもいいかとか、聞いてみても、いいかな?」
一人だけならともかく。みんなが望むならやってみてもいいかな。なんて考えるのは自分でもちょっと甘いとは思うけれど。
「やったー!!」
「これで家に帰っても幸せの続きが……思い残すことは、ない」
みんなの幸せな顔を見ていたら、それも悪くないかな。
「よーし、この後のことも決まったし、改めて休憩っ」
「イズルも寝よう」
あの広い広いふわもこが消えてしまったのは残念なことだけど、誰にも迷惑をかけずに気ままにお昼寝を堪能できるのはもっと嬉しい。
「帰ってからも、よろしく」
ヘレンの一言にひよこ達が応える。
ぴよぴよ
ぴいぴい
ふわふわもこもこの中で、包まれる幸せの中で、昼下がりの草原の風が吹いていく。
(ちなみにお持ち帰りは許可されました)
マスターコメント
代筆対応にて納品させていただきました。
大変長らくお待たせいたしましたことを深くお詫び申し上げます。
ショートシナリオ易しい 報酬:少ない4 / 4〜8人
2021年04月16日 08時44分58秒 公開
大成功
参加者
相談掲示板
シーフのエフィルミアです!よろしくお願いしますっ。 大事に優しくひよこを運びましょうっ。 思う存分ふわふわもこもこを堪能しながら!
あいむひゅーまん・・・うぉーりあのヘレン・ワーグナー。 ひよこと一緒に寝たいのできたよー
No.3
ひよこと聞いて…!! ウォーリアのレオだ。すごい数のひよこだな…楽しみ…いや、仕事をちゃんとしねぇとな!
ヒーラーのイズルです。よろしくおねがいします。 どこまで道具を申請していいかわからないが、手押し車とか借りて効率的に手早く回収したいな。 一緒に頑張ろう!
手押し車・・・それは考えてなかった(でっかい武器の上にでも乗せるつもりだった
手押し車…!さすがイズルくん賢い! 効率を考えると手押し車…いえ、でもせっかくなので時間をかけて じっくりとふわふわもこもこを堪能したい気持ちも…!(ぐぬぬ)