【豆充】甘い物語に添える、ひと時の
水繰潤
コメント 7
シナリオID:538
オープニング
辺境都市にある小さな街、エクトール。
学術都市であるヴェルクリエに近い事もあってか、この街は希少品である本を扱う店が多く『本の街』とも呼ばれる事があるエクトールに生まれ育った者たちは識字率も他に比べると少々高い傾向にある。子供向けの読み聞かせなどのイベントも盛んだ。
物語が好きな子供達や女性達の中で特に人気なのは『バレン王子とタイン王女』の物語だろう。
そんな街の中に珈琲豆と茶葉を扱う茶屋がある。地元民にはちょっとした人気の店で、その内装は本の街らしく店の中がぐるりと本棚に囲まれている。
父と娘で経営するこの店の客層は程々に裕福な者達も多く、ある者は甘味のお供に、ある者は日々の癒しの為にと、嗜好品として良質な茶葉や珈琲豆を求めて通ってくる。
茶葉や豆だけを求める客もいれば、好きな本を棚から手に取り読書をしながらティータイムを楽しむ客もいる。
そんな茶屋の看板娘であるハーフリングの少女ルルは、ギルドを訪れていた。
「冒険者さんに、協力を頂きたくて……! お茶や珈琲の新商品を作るために、少し力を貸してほしいのよ」
彼女は先日、こんな噂を耳にした。
――迷宮都市エドゥノーグのダンジョンから、突如大量のカカオ豆が得られるようになった。
エドゥノーグにも程近いこの街に報せが入るのは早かった。そしてルルも商人の娘である、反応しないはずがなかった。
チョコレートを贈り合って結ばれたという『バレン王子とタイン王女』の童話に乗ってキャンペーンを張るエドゥノーグの商人も増えるはずだと、これからチョコレートが普及する可能性をいち早く察知した。
「カカオ豆とチョコレートが普及したら、チョコレートのお供にお茶や珈琲は必要でしょう!」
特に珈琲はまだ嗜好品としてはやや高価なものだ。お茶と並んでチョコレートとも相性が良いし、商売を抜きにしても茶屋の娘としてもっと多くの人に飲んで欲しい。
この機会に、チョコレート一緒に楽しんで欲しいのよ、と意気込み勇んでやってきたという訳だった。
●
「依頼を受けてくれてありがとう」
後日、依頼を引き受け店を訪れた冒険者たちに、カウンターのテーブルを示して説明をする。
ずらりと並んでいるのは、紅茶葉にオレンジピール、乾燥させたハーブなど。
続いてルルはある物を取り出して見せると、彼女の掌に乗った白い袋のようなものには糸が付いている。
糸を摘まむとぷらんと袋が揺れた。袋の中には紅茶葉が入っているようだ。
「これは木綿の糸で作った紅茶葉や挽いた珈琲豆を入れる小さなバッグよ、私が作ったの」
その形は魚の形や星型、ハート型まで様々だ。
このティーバッグをカップに入れ、お湯を注いで気軽に1杯分の紅茶や珈琲を飲むのだという。実際にカップに星型のティーバッグを入れてお湯を注ぐと、琥珀色の海にぷかりと星が浮かんだ。
「これに好きな茶葉や珈琲豆を入れて、好きなティーバッグを作ってみて欲しいの。バッグは形も色々作ったし、茶葉には香りを付けたりハーブをブレンド出来るように用意してみたわ」
ティーバッグはまだ試作品なので、意見が貰えたら嬉しいのだそう。お茶や珈琲も実際に飲んでみてお気に入りのブレンドが見つかったら、今後参考にもしたいから是非教えて欲しいとルルは笑顔を向ける。
お茶菓子にチョコレートは勿論、クッキーなどの甘味も用意してあるので、一緒に楽しんで欲しいとも。
「ティーバッグは自分用に作ってもいいし、誰かの贈り物用に作ったものを持ち帰っても大丈夫よ」
作ったティーバッグに籠めた想いがあるのなら、それも伝えてあげれば喜ぶだろう。
店にある本も読み放題なので、ティーバッグを作ったらゆっくりティータイムを楽しんで欲しいとルルは微笑んだ。
学術都市であるヴェルクリエに近い事もあってか、この街は希少品である本を扱う店が多く『本の街』とも呼ばれる事があるエクトールに生まれ育った者たちは識字率も他に比べると少々高い傾向にある。子供向けの読み聞かせなどのイベントも盛んだ。
物語が好きな子供達や女性達の中で特に人気なのは『バレン王子とタイン王女』の物語だろう。
そんな街の中に珈琲豆と茶葉を扱う茶屋がある。地元民にはちょっとした人気の店で、その内装は本の街らしく店の中がぐるりと本棚に囲まれている。
父と娘で経営するこの店の客層は程々に裕福な者達も多く、ある者は甘味のお供に、ある者は日々の癒しの為にと、嗜好品として良質な茶葉や珈琲豆を求めて通ってくる。
茶葉や豆だけを求める客もいれば、好きな本を棚から手に取り読書をしながらティータイムを楽しむ客もいる。
そんな茶屋の看板娘であるハーフリングの少女ルルは、ギルドを訪れていた。
「冒険者さんに、協力を頂きたくて……! お茶や珈琲の新商品を作るために、少し力を貸してほしいのよ」
彼女は先日、こんな噂を耳にした。
――迷宮都市エドゥノーグのダンジョンから、突如大量のカカオ豆が得られるようになった。
エドゥノーグにも程近いこの街に報せが入るのは早かった。そしてルルも商人の娘である、反応しないはずがなかった。
チョコレートを贈り合って結ばれたという『バレン王子とタイン王女』の童話に乗ってキャンペーンを張るエドゥノーグの商人も増えるはずだと、これからチョコレートが普及する可能性をいち早く察知した。
「カカオ豆とチョコレートが普及したら、チョコレートのお供にお茶や珈琲は必要でしょう!」
特に珈琲はまだ嗜好品としてはやや高価なものだ。お茶と並んでチョコレートとも相性が良いし、商売を抜きにしても茶屋の娘としてもっと多くの人に飲んで欲しい。
この機会に、チョコレート一緒に楽しんで欲しいのよ、と意気込み勇んでやってきたという訳だった。
●
「依頼を受けてくれてありがとう」
後日、依頼を引き受け店を訪れた冒険者たちに、カウンターのテーブルを示して説明をする。
ずらりと並んでいるのは、紅茶葉にオレンジピール、乾燥させたハーブなど。
続いてルルはある物を取り出して見せると、彼女の掌に乗った白い袋のようなものには糸が付いている。
糸を摘まむとぷらんと袋が揺れた。袋の中には紅茶葉が入っているようだ。
「これは木綿の糸で作った紅茶葉や挽いた珈琲豆を入れる小さなバッグよ、私が作ったの」
その形は魚の形や星型、ハート型まで様々だ。
このティーバッグをカップに入れ、お湯を注いで気軽に1杯分の紅茶や珈琲を飲むのだという。実際にカップに星型のティーバッグを入れてお湯を注ぐと、琥珀色の海にぷかりと星が浮かんだ。
「これに好きな茶葉や珈琲豆を入れて、好きなティーバッグを作ってみて欲しいの。バッグは形も色々作ったし、茶葉には香りを付けたりハーブをブレンド出来るように用意してみたわ」
ティーバッグはまだ試作品なので、意見が貰えたら嬉しいのだそう。お茶や珈琲も実際に飲んでみてお気に入りのブレンドが見つかったら、今後参考にもしたいから是非教えて欲しいとルルは笑顔を向ける。
お茶菓子にチョコレートは勿論、クッキーなどの甘味も用意してあるので、一緒に楽しんで欲しいとも。
「ティーバッグは自分用に作ってもいいし、誰かの贈り物用に作ったものを持ち帰っても大丈夫よ」
作ったティーバッグに籠めた想いがあるのなら、それも伝えてあげれば喜ぶだろう。
店にある本も読み放題なので、ティーバッグを作ったらゆっくりティータイムを楽しんで欲しいとルルは微笑んだ。
解説
▼出来る事
1:ティーバッグを作る
2:読書をしながらお茶や珈琲を楽しむ
どちらかをメインに絞っても良いですし、両方楽しんでも良いです。
本は全て写本になりますが、絵本や児童書から少しだけ難しい本まで、余程珍しかったり高価でなければ大体のジャンルがあります。
大人過ぎるセクシーな内容はマスタリング対象になる場合がありますのでご注意ください。
▼ティーバッグ
ルルお手製です。木綿の糸を丁寧に編み込んだ生地で作られています。金魚のような魚の形やハート型、星型など色々あります。
複雑すぎる形で無ければ大体は作れるので、ある程度はご自由に指定して頂いて問題ありません。
こんなのが欲しい、と要望を出すのもOKです。
ベースの紅茶葉(1種類、都市同盟南部原産品)に好きな素材を混ぜてフレーバーティーと作り、お好きなティーバッグに詰めるだけ。
素材はオレンジピール、レモンピール、ミント、ドライローズ、レモングラス…などなど、手ごろなハーブ類があります。珍しいものでなければメジャーなハーブはあります。
シンプルなお茶が好きな方は、ティーバッグを選ぶだけで何も混ぜなくても良いです。
紅茶がメインですが、珈琲がお好きな方用に挽いた珈琲豆もあります。紅茶と同様ブレンドしフレーバーコーヒーにできます。
▼茶屋
ハーフリングの少女、ルルが看板娘。ルルは文字を読み書き出来ます。
富裕層の客が多い店ですが、チョコがもっと幅広い層に浸透するのに合わせて、気軽にプレゼントしたり自分で楽しめる紅茶や珈琲を広めたいと思っています。
ギフトに出来る新商品を考案しています。
マスターより
お世話になります、水繰です。2つ目のシナリオはのんびりした時間を過ごせるものを。
チョコレートを食べるなら美味しい紅茶や珈琲を一緒に頂きたいですよね!
基本的に個別での描写になりますが、同行者様がいらっしゃる場合やアドリブ可の場合はその旨プレイングに記載をお願い致します。
また、極端に短いプレイングですと、描写が少なくなってしまう場合がございますのでご注意ください。
おひとりで楽しんでも、お連れ様とご一緒でも。
心情もたっぷり籠めて頂けたら嬉しいです。どうぞ皆さんなりの過ごし方や想いを教えてください。
ゆっくりのんびりとお好きなお茶や珈琲を作ったり、読書をしながら素敵なティータイムをお過ごしください。
リプレイ
●お茶とハーブの香りに包まれて
「素敵な催しですね。今日は私も楽しませていただきますね」
ルルに丁寧に挨拶をするシャロン・ラ・モリエール。
その隣で、甘くほろ苦い、そして時折花の様に店内を満たす香りに大福と狼の粽が鼻をひくつかせる。
紅茶や洋菓子はまだ大福には馴染みが薄いため、興味津々だ。
「はっ、ここはペットの入店大丈夫なのだ?」
「あらワンちゃん? 良い子は勿論歓迎よ」
ルルの言葉に、ほっと粽と顔を合わせて笑顔を浮かべる隣でイズレンディル・パラリムもルルと言葉を交わす。
「こういったことは素人なのですが、様々試して根気よく頑張ってみますね!」
「ええ、一緒に美味しいブレンドを見つけましょう! それじゃ早速、始めましょうか!」
カウンターに並べられたハーブや茶葉を前に、様々なアイディアの花が咲き始める。
「ハーブの種類は沢山あるのですね。他にはどのようなものがあるのでしょうか?」
「私はこの4つにしてみましたよ」
ハーブの入った容器を手に悩むイズレンディルに、シャロンは茶葉を魚型のティーバッグに詰め込みながら参考になればと自分のブレンドを提示する。
彼女が選んだのは百合茶にルイボス、レモングラス、カモミール。普段チョコレートに合わせるならばミルクティーをチョイスするところだが今日は口当たりがさっぱりするようにストレートを想定した組み合わせを選んだのだ。
「そのような組み合わせもあるのですね!」
イズレンディルが納得したように頷くと、柑橘系のハーブを中心に試行錯誤の末に決めたのはオレンジピール、レモングラスにマリーゴールド。お湯を注げば蜂蜜のような甘さと柑橘の香りがふわりと広がる。
「チョコレートに合う紅茶になっていれば良いのですが、いかがでしょうか?」
感想を聞きたいとイズレンディルが試飲を願い出れば、傍で作業をするエシギも意見を参考にしたいとブレンドしたお茶のミニカップを手にやってくる。
「こちらもどうでしょう、レモンバーベナとリンデンです」
目指したのは共にすっきりとした口当たりだが、エシギのお茶はイズレンディルのものとは少し違った甘い香りと爽やかさが調和していた。
ルルも交えて皆で少しずつ試飲をしながら意見を伝えあう。
「もう少しリンデンを増やしても良さそうです」
「こちらは少し苦みが強いでしょうか、ピールを減らしてみましょうか」
あとはどちらも配合のバランスを整えていくだけだ。読書中の皆にも振舞いながら、少しずつ丁寧に改良を重ねていく。
「ティーバッグの形は、商品にするのならフレーバーの内容が一目でわかるものにしてみてはどうでしょうか。僕のだったらレモンの香りがするので、輪切りレモンの形とか」
「いいわね、解り易さは大事だしそれも参考にするわ」
エシギは茶葉をティーバッグに詰め込みながら、アドバイスも忘れずに。
「贈り物用に頂いてよろしいでしょうか? 甘いお菓子に合う紅茶をお贈りしたいのです」
イズレンディルは完成したブレンドをシンプルな四角い形のティーバッグに詰めこむとルルに尋ねる。
お菓子をより美味しく食べられるように。よくお菓子作りをする友人へ送りたいのだと伝えれば、ルルは小さな袋を差し出した。
「あら、贈り物だったの! 勿論よ、これもオマケにどうぞ」
中身は小さなギフト用のチョコレート。お茶のお供に是非と。
誰かのために作った品には想いも沢山籠められているから、きっと喜んで貰えるはず。
「チョコレートに合うお茶、私も喜んで考えるわ」
小さい頃はヴェルクリエにパパやママと一緒にお買い物に来たり、バレン王子とタイン王女の童話も読み聞かせて貰ったと、花のように想い出を咲かせながらアルト=ミルドレッド=バ・ロッサはティーバッグ作りの準備をしていく。
「チョコレートと相性のいい、アーモンドナッツを砕いていれてみるとかどうかしら?」
「あら、素敵な発想……だけど大丈夫かしら! お手伝いしましょうか?」
ぎこちない手付きでアルトがアーモンドを砕いていく様子をはらはらしながら見守るルル。
「しゅ、淑女の嗜みとして料理くらい……私だって……」
力を入れすぎて時折アーモンドが吹き飛びルルがキャッチするという構図が発生するものの、暫しの奮闘の末、店の紅茶葉と百合茶にそれぞれアーモンドを加えた二種類が完成した。
試飲用にカップに淹れてみるとアーモンドの香ばしい香りが漂う。早速交互に試飲をしてみる。
紅茶葉との組み合わせは紅茶に良く合い、百合茶と合わせたものは甘みが強く引き立っている。
どちらのブレンドにするか悩ましい。
暫し悩んだ末に作成を終えたハート型のティーバックを手にして、アルトは微笑む。中身は百合茶とアーモンドのブレンドだ。
「もしティーバックが完成したら今度は買いに来るからね! 楽しみにしてるわ!」
「ええ、今度はアーモンドのナッツオイルを用意してみるわ、アルトさんのお蔭で浮かんだの。美味しいお茶を作って待ってるからね」
「マリアと言います。宜しくお願いしますね」
マリア・C・クロードはルルと挨拶を交わすと、ティーバッグとハーブを選び始める。
(平常心、平常心ですよっ…ラセリッ)
その隣でラセリ=リエ―ブルはやや緊張気味だ。バレン王子とタイン王女の童話も読んだことがあり、このイベントが恋愛色に繋がる事をちょっぴり意識してしまう。
マリアを想う故に中々あと一歩が踏み込むことが出来ずにいるが、今日は依頼の為にと自分に言い聞かせて彼女をモチーフにしたフレーバーを考案したいと、自分も並べられたハーブに目を向けた。
マリアは心身ともに元気でいて欲しいとラセリへの想いを込めて、疲労回復などに効果のあるタイムを紅茶葉に合わせている。
ティーバッグづくりの参考にするように時折ラセリに視線を向けながら、タイムを配合する度に試飲を行い、ラセリの好みの味になるように彼を想いながら試行錯誤を繰り返す。
作りながら、購入者がティーバッグをアレンジ出来るように提案をしたり気になる点があれば、その都度ルルにも細かく伝えていく。
――余り意識しすぎても迷惑なのでは? でもせっかくの機会ならば……。
隣でハーブを選びながらもマリアが気になって仕方がないラセリ。
ぐるぐる思考を巡らせながら、ふとマリアを方を見ると――ぱちっと彼女と視線が交わった。
「……マリア?」
「な、なんでもないっ!」
心臓が跳ねて顔が熱を帯びそうになるのを表に出さないよう抑え、平常心を保つようにラセリが首を傾げれば、マリアの方が慌てて顔をそらしてしまう。
目が合ってしまうのは、実はマリアもじっとラセリを見つめているからなのだが。
その後も視線が重なるたびに笑って誤魔化すマリアの言動にそわそわと落ち着かないながらも、ラセリは彼女を想いハーブを選んでいく。
ハート形のティーバッグには、甘く優しい香りのエルダーフラワーにローズヒップを詰め込んで。
「ペア向けイベント様の商品、でどうでしょう?」
完成品をルルにそっと耳打ちする。ペア向けというのは"表向き"の主張ではあるが、ラセリの様子を眺めていたルルは知っている。
これはラセリがマリアを想っての、世界でたったひとつの贈り物だ。
●本と柔らかな時に包まれて
ミツキ・アインホルンのテーブルに積まれているのは魔術書や戦術書、帝国以外の国史に関する本。
普段から読んでいるジャンルだ。
(私自身の力も、皆をより活かす為の頭脳も、そして帝国の外の知識についても。何もかも足りてないわ)
戦況を変えうる程の強大な力や、誰かを守る為の力を個として、皆を活かしより良い戦況へ導く頭脳を集団の一員として求め続ける。
「おっと、つい読みふけってしまったわね」
ルルによって温かいお茶が足された気配にすっかりのめり込んでしまっていた事に気付く。額が少し火照っているような気がする。
(せっかくだし、普段読まない物を読んですっきりさせましょう)
本棚と暫し睨めっこをして、悩んだ末に手にしたのは一冊の絵本。
子供向けの本なんて、触るのはいつぶりだろうか。
惹かれたのはきっと、先日小さい子と触れ合う仕事があったから。また機会が出来た時、お話できそうなものを頭に入れておいた方がいいかもしれないと絵本を開く。
それは幼い兄妹たちが、幸せの鳥を探して小さな冒険をする物語。
シンプルながらも子供が飽きないように、可愛らしい絵と共に展開されていく物語に、しっかりと教訓まで組み込まれている。
工夫ひとつひとつに驚嘆しながらミツキは絵本を読み進めていく。
「子供向けも、普通に面白いわね」
急に泣いたり笑ったり、何を言わんとしているのか解らなかったり――ふと、先日出逢った小さな女の子の姿をふと想い浮かべて。
また子供と触れ合う仕事が来ないかしら。なんて思わず楽しみになりながら、お茶のカップに口を付けた。
この街ならば東方大陸についての文献があるかもしれないと、海神・江流は不可思議な伝承やエーテルに関する本を棚から探し出す。
世にある数多の不可思議を1つ1つ紐解いていけば、いずれ自分の目的に到達できるかもしれない。
そんな事を考えながら、チョコを一粒口に運ぶ。
「……甘いな」
江流には少し甘さが強い。渋みが欲しくなり、濃いめに淹れた紅茶をお供に頁を捲っていく。
(これ、どうやって作ってるんだろう)
チョコを頬張りながら、ふと気になり始めた江流は読んでいた本を一度閉じてチョコについての文献を新たに探し始める。
『カカオを多めに使用するとほろ苦さが増す』
『カカオ粉末にミルクと砂糖を加えドリンクにする』
手元のチョコを食べ比べたり、寒い季節に良さそうだと頷いたり。
徐々にチョコの情報にのめり込み、当初の目的から脱線していくが……こういう日があってもいいだろう。
いつか何処かでこの知識が役立つ事があるかもしれないし、と本から顔を上げると紅茶のお代わりを注ぎに来たルルが手にしたティーバッグが目に入る。
「へぇ、便利なものだね」
「あっちで教室もしてるわよ」
しまった、そちらも見ておけば良かったかと考えてから、自分の思考が食べ物で満たされている事に気付く。
仙人は霞を食べて生きられると言うが、仮に仙人になれても自分は食の楽しみとは縁が切れないようだと新しいお茶を一口。
――そもそも霞って味するんだろうか。
数多の作家たちによって甘い言葉が紡がれた詩集を手に、アルフレッド・ラ・ギは紅茶と読書を楽しむ。
ティーバッグ作りといった手作業に関しては不得手であるが、茶とお菓子のマリアージュ、そしてそれを楽しむ環境づくりにおいては様々思考を巡らせている。
――チョコレートのお供にお茶や珈琲を。
これは甘味好きのアルフレッドとしては是非賛同したいうたい文句だ。
砂糖をたっぷり溶かし込んだ紅茶でぐっと飲んでどろどろの甘さに浸りたい、そして美しいお嬢さんと愛の詩を謡いながら燦燦と輝く太陽の下で茶を楽しみたいと詩集を片手にアルフレッドは語る。つまり。
「やはり茶とチョコレートを楽しむならオープンテラスで日傘を差し、といった趣向を凝らすことも大事だと思うんだよ、私はね?」
「あらそうね、テラス席を増設するのもいいかしら。パパと相談しなくちゃね」
お茶を足すためにティーポットを手にしてアルフレッドの席へとやってきたルルは、提案に頷く。
ペットと一緒に楽しみたいというお客も最近は増えたのだ。少しお洒落に外でお茶とお菓子を頂くというのも良いかもしれない。
「ああ、ルル殿も一緒にお茶でも如何かな?」
「ふふ、残念だけれど私はお仕事があるから、ごめんなさい」
にっこり笑顔でかわされながら、お茶のお代わりが注がれる。
勿論、紅茶には砂糖をスプーンに山盛り溶かし込んで。甘いティータイムが過ぎていく。
(知識を蓄えるのも好きだけど……)
紅茶づくりを終えて頁を捲りながら、シャロンは夢中になって本を読み進めていく。
今日はせっかくマザーに怒られずに、堂々と恋愛小説に触れられる機会。巷で話題のバレン王子とタイン王女の童話だって自由に読むことが出来る。
恋愛小説の展開も多岐に渡る。
ある日現れたイケメンに求愛されドギマギするような展開も悪くはないが、波乱に満ちた困難を乗り越え最後に結ばれる方がシャロンは好みだ。
姿勢を正して静かに座り読書をする姿は、まさに深窓の淑女といった様子だが、よく見ると本の展開に合わせて耳や尻尾が揺れているのが解る。
大人しく上品にふるまう内に隠された、流行に敏感で感情に素直な年相応の少女の姿がそこにあった。
紅茶からふわりと漂う果物の香りが鼻をくすぐる。チョコやクッキーと合わせれば、優しい甘さで満たされていく。
大福は先程作成した狼型のティーバッグを傍らにお茶の時間。バッグが狼というよりも丸っこくなってしまったのはご愛敬。
「ほわ~甘くておいしいのだ~」
桃や林檎をブレンドしたフレーバーティに、粽も大福が持参したオヤツを一緒に頬張って細やかなティータイム。
「和菓子に合う紅茶はあるのだ? こういうのなのだ」
「ワガシ?」
大福はいつも持ち歩いている煎餅を取り出しルルに手渡して見せる。
初めて見るお菓子に興味深々のルルと、お茶菓子の話が弾む。
「大福のうちもお店屋さんなのだ。お茶の葉も少しだけ置いてるのだ」
「あら本当! リョクチャもお菓子みたいに、紅茶とは少し違うのかしら」
緑茶と和菓子について説明すれば、ルルの表情はみるみる輝きに満ちていく。
「シャルガネに来たら遊びに来てほしいのだ。今度は和菓子と緑茶を御馳走するのだ♪」
「えぇ、必ず寄らせて貰うわ! 楽しみにしているわね」
「紋具の関連書がこんなに…!」
エシギは先ほど作ったお茶を傍らに。カップに浮かぶティーバッグを暫し眺めてから、静かに読書の時間へ移る。
作ったティーバッグは工房へのお土産に持ち帰ろうかと考えたが、自分で頂くことにしたのだ。
辞書を駆使しながら紋具に関する本に一通り目を通し、次に綺麗な装飾に惹かれて手に取った一冊を開けば、バレン王子とタイン王女の物語が始まる。
すっかり読書に夢中になってお菓子の事を忘れてしまっていた。
チョコを一粒頬張れば、甘さが口いっぱいに広がる。すっきりしたお茶で正解だったと、エシギは満足そうに笑って頷いた。
イズレンディルも、ティーカップを片手にエクトールの歴史や文化に関する本を選びテーブルへ。
本を読む事や知らない文化に触れる事は、いつでも心地の良いものだ。
茶葉が入った包みを見ると微笑を浮かべて。街の歴史の理解を深めながら、ゆったりとした時間が流れていく。
様々な想いと柔らかな時間を詰め込んで。
エクトールの街にある小さな茶屋は、冒険者たちの優しい時間に包まれていた。
「素敵な催しですね。今日は私も楽しませていただきますね」
ルルに丁寧に挨拶をするシャロン・ラ・モリエール。
その隣で、甘くほろ苦い、そして時折花の様に店内を満たす香りに大福と狼の粽が鼻をひくつかせる。
紅茶や洋菓子はまだ大福には馴染みが薄いため、興味津々だ。
「はっ、ここはペットの入店大丈夫なのだ?」
「あらワンちゃん? 良い子は勿論歓迎よ」
ルルの言葉に、ほっと粽と顔を合わせて笑顔を浮かべる隣でイズレンディル・パラリムもルルと言葉を交わす。
「こういったことは素人なのですが、様々試して根気よく頑張ってみますね!」
「ええ、一緒に美味しいブレンドを見つけましょう! それじゃ早速、始めましょうか!」
カウンターに並べられたハーブや茶葉を前に、様々なアイディアの花が咲き始める。
「ハーブの種類は沢山あるのですね。他にはどのようなものがあるのでしょうか?」
「私はこの4つにしてみましたよ」
ハーブの入った容器を手に悩むイズレンディルに、シャロンは茶葉を魚型のティーバッグに詰め込みながら参考になればと自分のブレンドを提示する。
彼女が選んだのは百合茶にルイボス、レモングラス、カモミール。普段チョコレートに合わせるならばミルクティーをチョイスするところだが今日は口当たりがさっぱりするようにストレートを想定した組み合わせを選んだのだ。
「そのような組み合わせもあるのですね!」
イズレンディルが納得したように頷くと、柑橘系のハーブを中心に試行錯誤の末に決めたのはオレンジピール、レモングラスにマリーゴールド。お湯を注げば蜂蜜のような甘さと柑橘の香りがふわりと広がる。
「チョコレートに合う紅茶になっていれば良いのですが、いかがでしょうか?」
感想を聞きたいとイズレンディルが試飲を願い出れば、傍で作業をするエシギも意見を参考にしたいとブレンドしたお茶のミニカップを手にやってくる。
「こちらもどうでしょう、レモンバーベナとリンデンです」
目指したのは共にすっきりとした口当たりだが、エシギのお茶はイズレンディルのものとは少し違った甘い香りと爽やかさが調和していた。
ルルも交えて皆で少しずつ試飲をしながら意見を伝えあう。
「もう少しリンデンを増やしても良さそうです」
「こちらは少し苦みが強いでしょうか、ピールを減らしてみましょうか」
あとはどちらも配合のバランスを整えていくだけだ。読書中の皆にも振舞いながら、少しずつ丁寧に改良を重ねていく。
「ティーバッグの形は、商品にするのならフレーバーの内容が一目でわかるものにしてみてはどうでしょうか。僕のだったらレモンの香りがするので、輪切りレモンの形とか」
「いいわね、解り易さは大事だしそれも参考にするわ」
エシギは茶葉をティーバッグに詰め込みながら、アドバイスも忘れずに。
「贈り物用に頂いてよろしいでしょうか? 甘いお菓子に合う紅茶をお贈りしたいのです」
イズレンディルは完成したブレンドをシンプルな四角い形のティーバッグに詰めこむとルルに尋ねる。
お菓子をより美味しく食べられるように。よくお菓子作りをする友人へ送りたいのだと伝えれば、ルルは小さな袋を差し出した。
「あら、贈り物だったの! 勿論よ、これもオマケにどうぞ」
中身は小さなギフト用のチョコレート。お茶のお供に是非と。
誰かのために作った品には想いも沢山籠められているから、きっと喜んで貰えるはず。
「チョコレートに合うお茶、私も喜んで考えるわ」
小さい頃はヴェルクリエにパパやママと一緒にお買い物に来たり、バレン王子とタイン王女の童話も読み聞かせて貰ったと、花のように想い出を咲かせながらアルト=ミルドレッド=バ・ロッサはティーバッグ作りの準備をしていく。
「チョコレートと相性のいい、アーモンドナッツを砕いていれてみるとかどうかしら?」
「あら、素敵な発想……だけど大丈夫かしら! お手伝いしましょうか?」
ぎこちない手付きでアルトがアーモンドを砕いていく様子をはらはらしながら見守るルル。
「しゅ、淑女の嗜みとして料理くらい……私だって……」
力を入れすぎて時折アーモンドが吹き飛びルルがキャッチするという構図が発生するものの、暫しの奮闘の末、店の紅茶葉と百合茶にそれぞれアーモンドを加えた二種類が完成した。
試飲用にカップに淹れてみるとアーモンドの香ばしい香りが漂う。早速交互に試飲をしてみる。
紅茶葉との組み合わせは紅茶に良く合い、百合茶と合わせたものは甘みが強く引き立っている。
どちらのブレンドにするか悩ましい。
暫し悩んだ末に作成を終えたハート型のティーバックを手にして、アルトは微笑む。中身は百合茶とアーモンドのブレンドだ。
「もしティーバックが完成したら今度は買いに来るからね! 楽しみにしてるわ!」
「ええ、今度はアーモンドのナッツオイルを用意してみるわ、アルトさんのお蔭で浮かんだの。美味しいお茶を作って待ってるからね」
「マリアと言います。宜しくお願いしますね」
マリア・C・クロードはルルと挨拶を交わすと、ティーバッグとハーブを選び始める。
(平常心、平常心ですよっ…ラセリッ)
その隣でラセリ=リエ―ブルはやや緊張気味だ。バレン王子とタイン王女の童話も読んだことがあり、このイベントが恋愛色に繋がる事をちょっぴり意識してしまう。
マリアを想う故に中々あと一歩が踏み込むことが出来ずにいるが、今日は依頼の為にと自分に言い聞かせて彼女をモチーフにしたフレーバーを考案したいと、自分も並べられたハーブに目を向けた。
マリアは心身ともに元気でいて欲しいとラセリへの想いを込めて、疲労回復などに効果のあるタイムを紅茶葉に合わせている。
ティーバッグづくりの参考にするように時折ラセリに視線を向けながら、タイムを配合する度に試飲を行い、ラセリの好みの味になるように彼を想いながら試行錯誤を繰り返す。
作りながら、購入者がティーバッグをアレンジ出来るように提案をしたり気になる点があれば、その都度ルルにも細かく伝えていく。
――余り意識しすぎても迷惑なのでは? でもせっかくの機会ならば……。
隣でハーブを選びながらもマリアが気になって仕方がないラセリ。
ぐるぐる思考を巡らせながら、ふとマリアを方を見ると――ぱちっと彼女と視線が交わった。
「……マリア?」
「な、なんでもないっ!」
心臓が跳ねて顔が熱を帯びそうになるのを表に出さないよう抑え、平常心を保つようにラセリが首を傾げれば、マリアの方が慌てて顔をそらしてしまう。
目が合ってしまうのは、実はマリアもじっとラセリを見つめているからなのだが。
その後も視線が重なるたびに笑って誤魔化すマリアの言動にそわそわと落ち着かないながらも、ラセリは彼女を想いハーブを選んでいく。
ハート形のティーバッグには、甘く優しい香りのエルダーフラワーにローズヒップを詰め込んで。
「ペア向けイベント様の商品、でどうでしょう?」
完成品をルルにそっと耳打ちする。ペア向けというのは"表向き"の主張ではあるが、ラセリの様子を眺めていたルルは知っている。
これはラセリがマリアを想っての、世界でたったひとつの贈り物だ。
●本と柔らかな時に包まれて
ミツキ・アインホルンのテーブルに積まれているのは魔術書や戦術書、帝国以外の国史に関する本。
普段から読んでいるジャンルだ。
(私自身の力も、皆をより活かす為の頭脳も、そして帝国の外の知識についても。何もかも足りてないわ)
戦況を変えうる程の強大な力や、誰かを守る為の力を個として、皆を活かしより良い戦況へ導く頭脳を集団の一員として求め続ける。
「おっと、つい読みふけってしまったわね」
ルルによって温かいお茶が足された気配にすっかりのめり込んでしまっていた事に気付く。額が少し火照っているような気がする。
(せっかくだし、普段読まない物を読んですっきりさせましょう)
本棚と暫し睨めっこをして、悩んだ末に手にしたのは一冊の絵本。
子供向けの本なんて、触るのはいつぶりだろうか。
惹かれたのはきっと、先日小さい子と触れ合う仕事があったから。また機会が出来た時、お話できそうなものを頭に入れておいた方がいいかもしれないと絵本を開く。
それは幼い兄妹たちが、幸せの鳥を探して小さな冒険をする物語。
シンプルながらも子供が飽きないように、可愛らしい絵と共に展開されていく物語に、しっかりと教訓まで組み込まれている。
工夫ひとつひとつに驚嘆しながらミツキは絵本を読み進めていく。
「子供向けも、普通に面白いわね」
急に泣いたり笑ったり、何を言わんとしているのか解らなかったり――ふと、先日出逢った小さな女の子の姿をふと想い浮かべて。
また子供と触れ合う仕事が来ないかしら。なんて思わず楽しみになりながら、お茶のカップに口を付けた。
この街ならば東方大陸についての文献があるかもしれないと、海神・江流は不可思議な伝承やエーテルに関する本を棚から探し出す。
世にある数多の不可思議を1つ1つ紐解いていけば、いずれ自分の目的に到達できるかもしれない。
そんな事を考えながら、チョコを一粒口に運ぶ。
「……甘いな」
江流には少し甘さが強い。渋みが欲しくなり、濃いめに淹れた紅茶をお供に頁を捲っていく。
(これ、どうやって作ってるんだろう)
チョコを頬張りながら、ふと気になり始めた江流は読んでいた本を一度閉じてチョコについての文献を新たに探し始める。
『カカオを多めに使用するとほろ苦さが増す』
『カカオ粉末にミルクと砂糖を加えドリンクにする』
手元のチョコを食べ比べたり、寒い季節に良さそうだと頷いたり。
徐々にチョコの情報にのめり込み、当初の目的から脱線していくが……こういう日があってもいいだろう。
いつか何処かでこの知識が役立つ事があるかもしれないし、と本から顔を上げると紅茶のお代わりを注ぎに来たルルが手にしたティーバッグが目に入る。
「へぇ、便利なものだね」
「あっちで教室もしてるわよ」
しまった、そちらも見ておけば良かったかと考えてから、自分の思考が食べ物で満たされている事に気付く。
仙人は霞を食べて生きられると言うが、仮に仙人になれても自分は食の楽しみとは縁が切れないようだと新しいお茶を一口。
――そもそも霞って味するんだろうか。
数多の作家たちによって甘い言葉が紡がれた詩集を手に、アルフレッド・ラ・ギは紅茶と読書を楽しむ。
ティーバッグ作りといった手作業に関しては不得手であるが、茶とお菓子のマリアージュ、そしてそれを楽しむ環境づくりにおいては様々思考を巡らせている。
――チョコレートのお供にお茶や珈琲を。
これは甘味好きのアルフレッドとしては是非賛同したいうたい文句だ。
砂糖をたっぷり溶かし込んだ紅茶でぐっと飲んでどろどろの甘さに浸りたい、そして美しいお嬢さんと愛の詩を謡いながら燦燦と輝く太陽の下で茶を楽しみたいと詩集を片手にアルフレッドは語る。つまり。
「やはり茶とチョコレートを楽しむならオープンテラスで日傘を差し、といった趣向を凝らすことも大事だと思うんだよ、私はね?」
「あらそうね、テラス席を増設するのもいいかしら。パパと相談しなくちゃね」
お茶を足すためにティーポットを手にしてアルフレッドの席へとやってきたルルは、提案に頷く。
ペットと一緒に楽しみたいというお客も最近は増えたのだ。少しお洒落に外でお茶とお菓子を頂くというのも良いかもしれない。
「ああ、ルル殿も一緒にお茶でも如何かな?」
「ふふ、残念だけれど私はお仕事があるから、ごめんなさい」
にっこり笑顔でかわされながら、お茶のお代わりが注がれる。
勿論、紅茶には砂糖をスプーンに山盛り溶かし込んで。甘いティータイムが過ぎていく。
(知識を蓄えるのも好きだけど……)
紅茶づくりを終えて頁を捲りながら、シャロンは夢中になって本を読み進めていく。
今日はせっかくマザーに怒られずに、堂々と恋愛小説に触れられる機会。巷で話題のバレン王子とタイン王女の童話だって自由に読むことが出来る。
恋愛小説の展開も多岐に渡る。
ある日現れたイケメンに求愛されドギマギするような展開も悪くはないが、波乱に満ちた困難を乗り越え最後に結ばれる方がシャロンは好みだ。
姿勢を正して静かに座り読書をする姿は、まさに深窓の淑女といった様子だが、よく見ると本の展開に合わせて耳や尻尾が揺れているのが解る。
大人しく上品にふるまう内に隠された、流行に敏感で感情に素直な年相応の少女の姿がそこにあった。
紅茶からふわりと漂う果物の香りが鼻をくすぐる。チョコやクッキーと合わせれば、優しい甘さで満たされていく。
大福は先程作成した狼型のティーバッグを傍らにお茶の時間。バッグが狼というよりも丸っこくなってしまったのはご愛敬。
「ほわ~甘くておいしいのだ~」
桃や林檎をブレンドしたフレーバーティに、粽も大福が持参したオヤツを一緒に頬張って細やかなティータイム。
「和菓子に合う紅茶はあるのだ? こういうのなのだ」
「ワガシ?」
大福はいつも持ち歩いている煎餅を取り出しルルに手渡して見せる。
初めて見るお菓子に興味深々のルルと、お茶菓子の話が弾む。
「大福のうちもお店屋さんなのだ。お茶の葉も少しだけ置いてるのだ」
「あら本当! リョクチャもお菓子みたいに、紅茶とは少し違うのかしら」
緑茶と和菓子について説明すれば、ルルの表情はみるみる輝きに満ちていく。
「シャルガネに来たら遊びに来てほしいのだ。今度は和菓子と緑茶を御馳走するのだ♪」
「えぇ、必ず寄らせて貰うわ! 楽しみにしているわね」
「紋具の関連書がこんなに…!」
エシギは先ほど作ったお茶を傍らに。カップに浮かぶティーバッグを暫し眺めてから、静かに読書の時間へ移る。
作ったティーバッグは工房へのお土産に持ち帰ろうかと考えたが、自分で頂くことにしたのだ。
辞書を駆使しながら紋具に関する本に一通り目を通し、次に綺麗な装飾に惹かれて手に取った一冊を開けば、バレン王子とタイン王女の物語が始まる。
すっかり読書に夢中になってお菓子の事を忘れてしまっていた。
チョコを一粒頬張れば、甘さが口いっぱいに広がる。すっきりしたお茶で正解だったと、エシギは満足そうに笑って頷いた。
イズレンディルも、ティーカップを片手にエクトールの歴史や文化に関する本を選びテーブルへ。
本を読む事や知らない文化に触れる事は、いつでも心地の良いものだ。
茶葉が入った包みを見ると微笑を浮かべて。街の歴史の理解を深めながら、ゆったりとした時間が流れていく。
様々な想いと柔らかな時間を詰め込んで。
エクトールの街にある小さな茶屋は、冒険者たちの優しい時間に包まれていた。
マスターコメント
ご参加ありがとうございました。
皆さんの暖かい想いや、日常の姿に触れる事が出来て優しい気持ちになりました。
どれも本当に素敵なプレイングで、字数が足りなくなってしまったのですが少しでもお気に召していただけましたら幸いです。
ルルも素敵な案を沢山貰って、今後の商品の考案に役立てると喜んでいると思います。
素敵なご縁に感謝を。
ショートシナリオ易しい 報酬:標準10 / 4〜10人
2021年02月21日 00時15分17秒 公開
大成功
相談掲示板
シャロンです。 シスターをしております。よろしくお願いします。 お茶は紅茶に百合茶をブレンドして、スッキリ系のフレーバーをつけて、ストレートでいただければと思います。 本は恋愛小説を読みたいですね。
アルトよ ティーバック作りもお茶を嗜むのも楽しみにしてるわ
エシギです、よろしくお願いしますね。 紋具や加工技術の参考書が読めればと思っています。 ティーバッグ作りも初めてなので、折角でしたら色々試行錯誤してみたいです。
エルフのイズレンディル・パラリムと申します。 顔出しが遅くなってしまいすみません。宜しくお願い致します。 本への興味も強いのですが、折角ですのティーバック作りにチャレンジしてみたいと思います。 初めての経験なので私も試行錯誤です。 手間取ってしまうと思いますので、もし良ければ作りながら作り方の相談もさせてください。
アルフレッドだ、知己の者は久方ぶり、初の者は初めまして、よろしく頼むよ 私は楽しむ方に集中しておこうかなと思う
大福なのだ。こっちは相棒の粽(ちまき)。よろしくお願いしますなのだ~。 粽みたいなカッコイイ狼型の袋作れないか聞いてみるのだ
海神江流だよ。宜しくね。 こっちは本に集中、かな? お茶がいただけるようならご相伴には預かりたい所。