【CP】悪いヤツらを追い払え!

棟方ろか

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シナリオID:506

オープニング

「何度お越し頂いても返答は変わりません。お断りします」
 帝国テタール伯の末娘リュシエンヌはここ数日、同じような問答を繰り返していた。
「こっちは善意で援助しようってんだ。問題なんか無いだろう」
 横柄に告げたのは、難民援助組織の遣いだと自称する男たちだ。先日は王国貴族の遣いと名乗る者が。以前は支援団体を騙る者たちが訪れたこともあり、難民たちにとって、起こっている出来事は見慣れた光景に近い――見慣れてはいても、歓迎はできなかった。
 見守る人々から見ても、彼らの言動は嫌悪感を抱くもの。その上、難民の中でも逞しい男たちが出払っている隙に彼らは訪れている。得体の知れぬ男たちに近付かれる恐怖を、後ろで女性や子ども、老人たちは覚えていた。だからこそリュシエンヌは頑として立ちはだかり、彼らを阻む。
「お断りする理由を詳(つまび)らかにしても良いのですけど……」
「へえ、聞いてやるよ。言ってみたらどうだ、お嬢ちゃん」
 片眉を上げてリュシエンヌを見下す男だが、彼女は揺らがない。
「まずあなた方の態度が、困っている人を助けたい、という善意のものとは思えません!」
 少女の発言に一人が眉をひくつかせると、もう一人が前へ出た。
「嬢ちゃん。困ってる奴は放っておけないなんて理由だけで、大人が動くと思ってんの?」
 世の中、純粋な善意ばかりでないことは今のリュシエンヌにもわかる。だからこそ他の難民たちと相談し、協力して支援の話をいくつも断ってきた。目の前の男たちが体言しているように、厚意が感じられない人物は多い。
 言い返そうとしたリュシエンヌの耳に、後方から聞き慣れた声が響いて来る。リュシー、と愛称を呼びながら走って来るのは、外出していた顔なじみの難民(おとこ)たちだ。難民の中でも体格の良い大人数名の帰還に、来訪者は舌打ちと共に足早に去っていく。
「大丈夫か!? また変な奴らが来てるって聞いたが……あいつらか」
 慌てて戻ってきたのだろう。呼吸が荒い難民仲間たちを、リュシエンヌはいつもの笑顔で出迎えた。
「はい。でももうお帰りになったので、良しとしましょう!」
「そうか? いや、良くはないだろ。ったく、俺らが離れてる時を狙って来てんのかあ?」
「うーん。前に見た奴と違うな。どんだけの人が難民キャンプ(ココ)に目をつけてるんだ」
 男性たちのため息が重なる。先ほどのような人たちの対応に追われ、日々の作業にも既に支障が出ていた。
「はあ。せめて悪さを企ててやってくる人数が減ってくれりゃ……」
「! それですっ!! それですよ!!!」
 一人が零した呟きに、リュシエンヌは今日一番の大声をあげた。

●依頼
「セルニカクーアの件もありましたから、援助のお話に慎重になっている部分もあるのは確かです」
 数ヶ月前、支援団体セルニカクーアを名乗る男たちが、働き手になる難民の子らを連れていこうとした事件もあった。もちろん冒険者によって無事阻止したが、近くの難民たちに動揺が走ったのも事実だ。
「……で、今回の依頼はなんだ? 強引な男たちの鼻を明かせ、と?」
 冒険者のひとりが口を開くと、リュシエンヌはふふと吐息で笑う。
「ある意味そうかもしれませんね。暫くの間、彼らのような方々を追い払って頂きたいのです」
「追い払う? 叩き返せばいいの?」
「あっ、いえ! 手はなるべく出さずお帰り頂くように……それと」
 リュシエンヌは内緒話をするかのように、冒険者たちの輪へ顔を寄せる。
「今後、善意のない方々がここへ来るのを諦めてくださるような、そんな追い払い方をお願いします」
 つまり、次から次へとやってくる悪徳団体や偽りの使者を追い返すだけでなく、彼らが難民キャンプを利用しようと企むのを『避ける』方向へ仕向けて欲しいと言う。何せ、あの手の申し出は後を絶たない。
 今回の依頼をきっかけに『難民を助けたいという気持ちのない相手』の訪問が少しでも減れば、難民たちも作業に集中しやすい。リュシエンヌもやりたいことは山ほどあるため、連中に時間を取られずに済む。
「あのっ、冒険者さん、そういうことでお願い……してもよろしいですか??」
 顔を覗き込むように尋ねてくるリュシエンヌへ、冒険者たちの出した答えは――。

解説

●成功条件 ・次々と訪れる「悪いヤツら」を追い払う ・援助を申し出てくる「悪いヤツら」が今後減るよう対処する ※両方を満たすのが当シナリオの成功条件となります。 ●詳細  オープニング冒頭のような連中が次々とやってくるので、追い払ってください。  ついでに「こんな所、二度と来るか!」「悪さするのやめるか……」などと相手に思わせればOK!  怖がらせるも良し。話術などで怯ませるも良し。見守る難民たちに、手助けしてもらうも良し。  以上はあくまで一例なので、皆様の発想で悪人を懲らしめて頂ければと! ●悪いヤツらについて  今回登場するお相手さんは、すべて『難民を助けたい気持ちなんて微塵もない悪いヤツ』です。  難民たちにとって悪党でしかないため、遠慮なく追い返してくださいね。  かれらは団体や組織、商人、貴族の遣いなどいろいろな肩書を『自称』して訪れます。 ●NPC リュシエンヌ・テタール  帝国伯爵貴族の末娘で、帝国難民。15歳の箱入り娘。  追い払う場に同行し、皆様の対処法を学ばせて頂きますね。 他の帝国難民たち  様々な境遇、立場の難民たち。  働ける男たちは出払っているので、ここには怪我人や女性、幼い子ども、老人ばかりです。  皆様からの指示や要望が無ければ、状況を見守ります。

マスターより

 ご縁がございましたら、よろしくお願いいたしますね。

リプレイ

 レヴァーレ・クアルムはキャンプの外で当たりをつけて動いていた。くたびれたマントで身を包み、仲間たちとは離れて潜伏する者を探す。男衆が出払ったのを見計らったように来るのなら、キャンプ周辺に監視者がいると彼は考えていた。
(まあ、そこまでするなんて真っ当な連中じゃないな)
 用意周到と呼ぶべきか判断に迷ったが、厄介な相手には違いないとレヴァーレは右へ左へ視線を流す。顔を動かさずとも、視界にさえ入れば不穏当な動きを見せるものはわかりやすい。たとえ動いていなくても、レヴァーレの意識から逃れられる者など居やしない。
(どんな時でも、どんな所にも……弱い立場の人間を食い物にしようとす考える輩はいるものだな)
 現実の苦々しさをも噛み締めながら、彼はひとり捜索を続ける。
 キャンプ周辺を歩いていた冒険者は、他にもいた。
 オゴスは堂々と前を見据えながらも、音なき足取りで潜伏者を捜索する。キャンプでは目立つ風貌だ。内情を得に来た男の目にも、彼の姿は鮮明に映りこむ。ゴブリンがいると知ったからか、潜む男の眉間は険しい。オゴスには対処がしやすかった。
「この程度の犬しか用意できない弱小組織、手を引いた方が身のためですよ」
「ヒィッ!?」
 いつの間にかオゴスの姿が傍にあったため、男が驚愕して跳ねる。首に巻いた布を整えるオゴスの巨躯を間近で知り、みるみるうちに男の顔面が青白くなる。叫びたい衝動を抑え、悪人はオゴスの元からまろびでる。
 一目散に逃げ帰るその姿は、目撃した難民たちからしても、あまりにも情けないものだった。
 同じ頃、別の所には女のみで形成された一群がいて。
「そうかそうか、君たちにも複雑な事情があるんだね」
「わぁ!?」
 突如耳元で囁かれ、女が飛びのく。いつ忍び寄ったのか、気配も持たずに佇むイーサリアルは、困惑する彼女をよそにうんうんと共感を示すばかりだ。そして彼の様相は、驚いた女たちの表情を一変させる。
「いやあ、綺麗な人が支援の申し出にきてくれるなんて、俺は実に幸運だ」
「へえ。話のわかる坊やね」
 まんざらでもないのか、彼女たちが色めき立つ。イーサリアルは眦を和らげた。
「どうかな、今からじっくり俺と君とで交流を深めていくのは」
「交流? 私たちはキャンプと手を組むために……」
「まずは互いを知ることから始めるのが大事だと思うんだ」
 厄介な権力者が噛んでいないなら、動きやすい。イーサリアルが巧みな話術で彼女たちのやる気を削いでいくのを、難民たちは面白そうに見物していた。

●
 気さくな素振りで訪れた男の肩を掴むディアンの手に、さほど力は入っていない。入ってはいないが、簡単に逃しはしないという意思が篭っているのを、男はひしひしと感じているだろう。頬が少しばかりひくついている。
「話に来たんだろ? さぁ遠慮すんな、座ってくれよ」
 交渉の席を整えたディアンの所へ、レヴァーレが戻ってきた。
 よお、とディアンが片手を挙げればレヴァーレは首肯のみで返し、そして。
「ってぇ、放せ、放せよ!」
 キャンプ近くに潜んでいた男を、聴衆の前へ押し出す。当然、来訪者たる男たちの目の前でもあった。
「その方はどちら様です?」
 目を丸くしたリュシエンヌに、レヴァーレは肩を竦める。
「やはり、テタールさんの知っている難民ではないんですね」
 少女が迷わず頷き、話を合わせると連中はぎょっとした。
 レヴァーレが告げた事実は、難民たちが聞いてもわかりやすい。つまり捕縛したこの男は、キャンプの状況が拝める近場に潜み、好機を得ようと監視していた不審者だ。レヴァーレの報告を素直に受け入れた難民たちは、疑いの視線で一味を射抜く。
「善意の方々、もしやとは思いますが、こんな不審者がお仲間だったり……しないですよね?」
「仲間だと!? ンなワケあるか! 知らねぇよ、こんなヤツ!」
 否定は徒(あだ)となる。男の過剰な反応は潔白を示すどころか、難民たちの目へ強い疑惑を点した。
「知らない? おかしいですね」
「ああ、おかしいな」
 レヴァーレとディアンが、口端をもたげて仕上げに取り掛かる。
「善意の方々(アンタたち)が到着した途端に、この不審者はキャンプから退避しようとしたんですよね」
 言いながらレヴァーレは男を一瞥する。レヴァーレの生み出す光の球に纏わり付かれ、逃げるのも侭ならなかったのが、余程衝撃だったのだろう。レヴァーレに笑顔で制された男は、悔しげに呻くことしかできていない。
「……まるで仕事を終えたかのように」
 連ねた言が、とどめとなった。
 一方キャル・イルセインは、対話に励む仲間たちの隙をつく者がいないか注視していた。弱きに付け入る人ならば、冒険者の男たちを避けても不思議ではない。そして彼女の懸念は現実となる。
 ディアンたちとの交渉に務める男らと異なる一派が、別の方角から訪れていた。荒くれと称するのが相応しい精悍な男たちの前へ、キャルは立ちはだかる。今だけは物怖じしない。するわけにはいかない。
「貴女が帝国テタール伯のお嬢さんですか? じゃあ話は早い」
 何故かキャルをリュシエンヌと勘違いしたらしく、屈強な男たちは露骨に口角を上げる。物言いこそ装っているが、彼らの中には、値踏みするようにキャルや難民の女性たちを見回す奸物もいて、周りから不安の気配が匂い立つ。思わずキャルの瞳が揺れる程に。
(ここの人たちは、常にこうした悪意の目に晒されてる……)
 キャルはぐっと拳を握り締めて、まず彼らが何者かを尋ねた。
 すると一人が一礼し、自分たちは難民を援助するために組まれた団体だと告げる。
「あの……援助の申し出なら、一定の基準を設けてるから……」
「審査が通れば手を取り合えるってことですね。で、肝心の基準は?」
 自称団体員の眼(まなこ)が輝く。良い意味ではない方向に。
「あなたたちの足で難民が住んでいた家を回って、宝物とかを持ってきてもらえる、かな?」
「つまり帝国領内を回れと?」
 そうよ、とキャルが間を置かずに紡げば、彼らの態度も曇り始めた。彼らは帝国領の状況を想像できている。かの帝国軍人も敗走せざるを得なかった敵(クリーパー)が跋扈している地。腕に自信がない限り、赴けと言われても簡単には頷けない。
 しかも繊細な見目のキャルが平然と伝えるものだから、誰もがは青褪めた。修羅場をくぐり抜けた帝国人の気質を、垣間見た感覚でいるのだ――キャル自身は大森林の出だが。
「さすがに帝国へ足を運ぶのは……」
「え……っと、できないの?」
 キャルの澄んだ眼差しに貫かれ、男がたじろぐ。
「回収できた物を、出来高として分ける算段なんだけど」
「もっと他に条件があるでしょう。我々は支援するための組織です。力で解決するわけじゃない」
 暴力に走りそうな外見で、いけしゃあしゃあと言ってのける。
 そこへ、通り掛かったイーサリアルがひょっこり顔を出す。
「あんまり女性諸氏(レディたち)を哀しませると、王国内でも角が立ちそうだ」
「そんな筈ありません。我々はただ慈善活動の一環として……」
「王国だけじゃない。難民援助を標榜する組織が異様に増えて、都市同盟でも懸念されてる」
 イーサリアルの弁は、一味へ躊躇をもたらす。
「条件が呑めないなら、穏便に済ますのが一番だと思うぞ。何事も動き難くなるからな」
 明けの空に似た瞳でじいっと捉えられ、男たちは舌打ちを最後に引き下がる。
 一段落したと理解してイーサリアルへ礼を告げようとしたキャルだが、影も形もなくなっていた。

●
「おいおいもう諦めるのか? せっかく準備してきた時間が勿体ないだろう?」
 ディアンの言葉運びは相手へ発破をかけるものだが、善意から交渉を成功させたい者とは違う彼らにとって、これは恐怖に近い。語気に含んだ威圧感で、男たちの眉間に谷が築かれつつあった。
 ディアンの突き出した書面も効果覿面で、交渉が長引けば男たちにも焦りが出始める。
「報酬が無くても断るわけないよなぁ? 善意で来てくれてるんだろ?」
「う、ぐ……確かにその通りなンだが、しかしな」
 ディアンの計画通り、彼らへ恐怖心は植え付けた。知恵者や弁が立つ相手から『厄介な交渉を迫られる』と判れば、男たちも後退りするしかない。悪事を企ててのこのこやってくる彼らの獲物は、頭も立場も弱い難民に絞られるのだから。
 するとそこでレヴァーレがぽつりと唇を動かす。
「先ほどから気になっていたんですよね。アンタの訛り」
 口調に混ざる音を頼りに、記憶を引き出す時間を作って。
「ジラーストン伯領の出身でしょ? わかりますよ」
「知らないな。適当なこと言うんじゃない、そもそも何が言いたいのかも……」
 レヴァーレの探る目つきに怯んだのか、訪問者の喋りも早まる。だからここぞとばかりにレヴァーレは微笑を傾けた。男もさすがに、血の気の引いた顔を逸らすしかない。
「あそこには仕事の関係でよく行っていたんですよ。なんだか懐かしくなってしまって」
「ナ、ナニ言ってやがる……」
「カステナ区のパン屋さんはご健在ですか? 近々また伺うつもりなんですよね」
 故郷を知られている恐さが如何なるものかは、レヴァーレたちの眼前で男が証明してくれた。
 尚も抗おうとした輩だが――。
「邪魔ですよ」
 不意に届いたのはオゴスの声。彼は悪者連中とディアンたちの間に割り込んだ。一党から文句もあがったが、オゴスに睨まれただけで男らの気勢は萎む。
「このキャンプに目をつけてるのは、そちらみたいな三下だけじゃあないんでねえ」
「三下だと!? ふざけたことを!」
 鈍いのかゴブリンを恐がらないのか、グループの一人が歩み出る。果敢にもオゴスの胸倉を掴もうとした若者へ、先にオゴスが触れる。しかも男の頬を片手でがっしりと挟む形で。
「おおっと。虫歯を見つけました。こりゃひどい。金槌とペンチが必要だ」
 反論すら許さぬオゴスの行いに、わし掴みにされた男の双眸が震える。言葉にならない悲鳴が喉から込み上げるばかりで、もはや涙目だ。大の大人が泣き出さないうちに解放すると、あっという間に若者は走り去った。一方、彼と徒党を組んだ仲間たちは、固まったまま動けずにいる。
 騒然とした現場で、ふん、とオゴスが鼻で笑う。
「ここを標的(ターゲット)にしているのは事実ですよ。冒険者共が介入を続けようと変わりませんから」
「なんだ、アンタは。どこの者(モン)だ」
 ディアンの問いに、オゴスは素っ気なく呟く。
「わざわざお伝えする必要は無いでしょう。……すぐに解りますしね」
 ――機は熟した。
 互いの双眸が重なるや、オゴスとディアンが同時に地を蹴る。ぶつかりあう両者に、難民を守るべくリュシエンヌも立ち上がった。犯罪に手を染めた者と息を揃えての取っ組み合いだ。そんな三人の行く末を見守るのは元からいる難民と、小悪党たちで。
「今だ!」
「はいっ!」
 ディアンがオゴスを突き飛ばして叫べば、間髪入れずリュシエンヌが攻める。
 目的はひとつ。衆目を集める中で、オゴスを打ち倒す光景を悪党へ見せ付けるためだ。
「な、なんだあの小娘……ただの小娘じゃねぇのか」
「嘘だろ? まさかあんなのがキャンプにゴロゴロいるのか?」
 少女(リュシエンヌ)が大きなゴブリンを倒す様に、悪者一行は恐れをなして逃げ出すしかなかった。
 彼らが立ち去った後には歓声が湧き、ディアンたちは難民たちに囲まれる。

 依頼の仲間とリュシエンヌにのみ知らされていたオゴスの作戦は、功を奏した。
 難民に囲まれる仲間たちを遠目に、こっそり立ち去るオゴスの元へ、一人の少女が駆け寄る。
「ありがとうございますオゴスさん! お怪我はありませんか?」
 手酷くするつもりはなくても、つい力が入ってしまったと話すリュシエンヌへ、オゴスは静かにかぶりを振る。
「お二方が良い具合に成敗してくださったおかげで、無事です。では、一足先に失礼しますね」
「でも……」
「長く留まるのもご迷惑かと思いますので」
 悪者を演じきったオゴスは、振り向かずに去っていく。
 リュシエンヌは彼の背中が見えなくなるまで、その場から離れることができなかった。

●
「にしてもよく知ってたな、訛り」
 ディアンがレヴァーレへ関心を寄せると、当人は小さく吐息で笑って。
「少し聞いただけで詳しくはなかったんですが、正解して良かったです」
「えっ、でもお仕事で通ってたと……」
 隣でリュシエンヌがぱしぱしと瞬(まじろ)ぐ。
「ああ、あれは嘘ですよ」
 レヴァーレがさらりと答えた分、信じ込んでいたリュシエンヌは驚きを隠せない。
 だが表情はコロコロと変化し、すぐに彼女の目線は彷徨い出す。
「どうした嬢ちゃん? 腹でも痛むか?」
「……ええと、ディアンさんが交渉事に明るいのは少々意外でして」
 明け透けなリュシエンヌに、ディアンは大口を開けて笑う。
「今時の傭兵はな、書面の管理から交渉事まで熟せないとやってけねぇんだぜ」
「大変なんですね、傭兵さんって」
 言い終えた少女の視線は、ふとキャンプの出入口を辿る。
「やあ、なんだか浮かない顔をしているね」
 リュシエンヌへそう声をかけたのはイーサリアルだ。
「はい、その……いえ、考え事をしてただけなので」
「ならいいんだ。まあ大丈夫だと思うよ、オゴスくんなら」
 ぱち、とリュシエンヌが大きく瞬いた。
「気にしすぎて君の顔が曇ると、向こうも気になるからね。うまくいったことを今は喜ぼう」
「……はいっ」
 そこへディアンも二度ほど頷いてみせる。
「だよな。悪さしようとする連中もだいぶ減っただろうし」
 そうですね、と頷きを連ねたのはレヴァーレだ。
「今回ので懲りて敵が少なくなれば、面倒もなくていいです」
「やりたいことも、きっと進めやすくなるよ」
 キャルが繋げた辺りで実感を覚えたのか、リュシエンヌはくすぐったそうに頬を緩めた。
 そして冒険者たちの集まりから、少しばかり離れたところでは。
「守ってくださってありがとう、キャルさん」
「ありがとね、おねえちゃん!」
 彼女が背に庇っていた女性や子どもが、次々と声をかけてくる。けれどヒューマンたちから感謝を重ねられるのは、やはり慣れない。キャルは「あの」とか「その」と口ごもったかと思いきや後退り、荷車の陰へ身を寄せてしまう。
「えっと……よかったわ。難民の皆さんに、その……被害が出なくて」
 荷車に隠れつつキャルが答えると、女性や子どもたちはぱっと笑みを咲かせた。
 キャルが最優先したのは、難民たちに危害が及ばぬこと。だからこそ無事に終えられたと実感したら、ふっと心身が楽になった気がする。仲間や難民の賑わいを自分の眼で確かめたことで、彼女の肩の荷も、漸くおりようとしていた。

マスターコメント

 お疲れ様でした! 様々な手法で悪いヤツらをやっつけられて、無事終了です。  これで変な訪問者もかなり減ることでしょう。難民の皆さんも安心して過ごせます。  ご参加いただきありがとうございました!
ショートシナリオ

ショートシナリオ普通 報酬:標準5 / 4〜5人

2021年02月05日 01時48分22秒 公開

成功

相談掲示板

  1. リュシエンヌ・テタール

    引き受けていただき、ありがとうございます! あらためましてご挨拶を。リュシエンヌと申します。 皆さん、よろしくお願いいたしますね。

  2. ディアン

    ウォーリアの傭兵、ディアンだ。 よろしく頼むぜ諸君! 今回は単純な戦いだけじゃなく、畜生連中が今後近づきにくくなるよう知恵を絞らなきゃいかん訳だ…まずは各々思いつく案をバンバン出していって、その中から使えそうなものを拾って改良していくか!

  3. No.3

    やあ、君がリュシエンヌ?素敵な名前だね。君自身はもっと素敵だけど…え?あ、依頼の話? そうかそうか、それは困ったね…しかも今後のために穏便にお引き取り願わないと角が立ちそうだ。とはいえ、別に権力者が背後にいるわけじゃない、あくまで自称の連中なら多少はやりやすいかもね。 人を丸め込むなら賄賂……と言いたいところだけど、今回はなしに1票。後々たかられちゃ面倒だし。 これはちょっと時間がかかるんだけど、任せてもらえれば面倒臭い連中の素性を洗って”【交渉】“に持ち込ませてもらうよ。長期的に見ても効果的じゃないかな。ま、いわゆる相手の弱みを握るというやつ。金も人手もいるから濫用はできないけど…

  4. オゴス

    オゴスと申します。ホブゴブリンのシーフです。どうぞよろしくお願い致します。 連中の素性を洗っての交渉、良い案ですね。 こういう連中でも、面倒事は避けたいと思うんです。 すでに難民キャンプがとても面倒なことになってて、関わるとリスクがあると誤解させちまうのはどうでしょう? 俺が考えているのは、何か胡散臭い新興の宗教が流行っているという設定で一芝居うつとかですね。 ……このウソが普通の人にまで広まると、難民キャンプの評判が悪くなりそうなのが懸念点ですが。

  5. レヴァーレ・クアルム

    レヴァーレ・クアルムと申します、よろしくお願いしますね。 個人的な考えなのですが、難民の中でも動ける男性陣が出払っている時にやってくるとなるとどこからか監視されているのではないかなぁと。 空振りに終わる可能性もあるのですが捜索して、首尾よく捕まえられれば……例えばそいつらをやってくる連中の前に突き出して「まさかこんな後ろ暗い輩とつるんでいませんよね?」とでも言って牽制できないかと思うのですが。 >素性 そうですね、そこが連中の痛い所になるかはわかりませんが少なくともどういう立場なのかというのは知っておいて損はないと思います。 俺も手伝える事があればご協力しますよ。 >ウソ オゴスさんの懸念は俺も考えていたところで……ヘタをすると逆手に取られて広められてキャンプの皆さんが追い詰められる、という状況もあり得るかなと。 やるとすればそうですね……授恵者として目覚める人が増えていて冒険者ギルドの介入が今後多くなるとか、悪いイメージではない方向ならあるいは?

  6. オゴス

    ……海産物を崇める邪教を難民キャンプに流行らそうかと思いましたが、やはりこの案はやめておきます。 海の生き物の神を信仰してる方々へのご迷惑になりますし、難民キャンプにも妙なイメージがついちまいますからね。 代わりに、犯罪者の集団がすでに難民キャンプに目をつけていて、ライバルとなる他の悪いヤツらを追い払おうとしてる。 ってな筋書きのウソを広めるのを提案します。 イーサリアルさんの案とも組み合わせやすいかと。 まだアイディア出しの段階だと思うので、皆さんの意見もお聞きしたいです。

  7. No.7

    ふふ、人間、後ろ暗いところは必ずあるはずさ。なければ悪巧みなんてしないからね。じゃあ…それは調査が得意な面子で進めるとして… 確かに難民の立場を考えると、あんまり都市の人々と溝ができるような噂は望ましくないな。ただでさえ、あまり好意的ではない人もいる… 難民の心象を落とさず、かつ悪者には近づかないでもらう、か。 悪者だけに効くようなお香でもなんでも、あればな〜。これが獣なら獣よけのものがあるけどね。…獣…。体の大きい猟犬を何頭か借り入れてお留守番してもらう、とか? レヴァーレくんの言う通り、もし周囲に見張りが潜んでいるなら、彼らの鼻で見破れそうだ。 >オゴス あるいは、難民キャンプよりも実入りのいい商売情報をでっち上げて、そっちに流れるように工作する、とかかな。どうだろう。

  8. キャル・イルセイン

    キャルよ。よろしくね! 難民キャンプには必要なものしかないし… あの…帝国領に行けば逃げてきた人が住んでた空き家があるからそこに取りに行って欲しいと言えば、来なくなると思うわ。たぶん危険だと思うけど、悪い人なら喜んで行かないかな?

  9. ディアン

    今のところ依頼の日程は決められてないし、俺らで手分けしてこの2つの手段を試してみてぇな。 ・後をつけて訪問相手の素性や住処を探る  →交渉時に「お前達の正体は掴んでる」と匂わせる警戒材料になる ・周辺を探って、この難民キャンプが見張られている可能性を探る  →いなければ安心、いれば捕まえるなりの対処を考える あと、交渉時に俺らの姿を見て撤退することがないように入り口の封鎖役を決めたり、暴力の範囲に入らないような力加減で彼らの肩を"掴んで椅子に座らせる"ってのはどうだ? >偽の情報 「実入りのいいでっちあげの商売情報」は賄賂と同じく逆に危険かもしれん。 レヴァーレも言うように、もしその情報を信じて一時は来なくなるとしても、これが嘘だとわかったらこいつらが難民キャンプに来る"新しいきっかけ"になる可能性もある。 それならいっそ、「今後はギルドがここに関わるから、交渉時は必ずギルドの人間に素性を調べられる可能性がある」という情報を匂わせた方が牽制になりそうだ。

  10. ディアン

    "ここに来たら必ず厄介な交渉を逆に迫られる、迫る相手がいる"という情報を広める毒に仕立て上げる…これを成功目標に立てりゃ、色々と方法を考える為の基点になるはずだ。 キャルの発案である「今まさに危険な帝国領へ足を踏み入れて資材を回収してくる役」も使えそうだな。 そういう連中には必ず書面を突き出して、"善意で来てくれた"奴らにはこの役を押し付ける。「善意で来てくれてるんだから、当然手伝ってくれるよなぁ?」 「善意なんだから報酬なんてあるわけないだろ?」 威圧交渉を逆に仕掛けてくるような難民キャンプに、わざわざ近づこうとするような奴らは減るだろうよ。

  11. レヴァーレ・クアルム

    >犯罪者が狙っている 個人的にはアリかなと。 連中が怯まなくても冒険者である俺達が今回キャンプにやってきた事、周囲を探る事、今後冒険者ギルドが積極介入する事(ブラフ)等々の理由付けとしても自然で都合がいいと思いますので。 >猟犬 用意ができるなら、とは思いますが……可否がなんとも判断できませんし、あくまで案のひとつとして挙げるくらいに留めた方が良いかと思います。 >帝国領へ〜 交渉材料としてはアリ、でしょうか。 問題は本当に嬉々として連中が行ってしまう場合ですかね……虚実織り交ぜて、村の方角だけは教えつつ存在しない物品の回収を依頼するとか微妙に手が届きそうな嘘がいいのかなと個人的に思います。 威圧交渉については……俺達が依頼を終えて居なくなった後だと、屈強な方々以外のテタールさんを始めとするキャンプの留守を守る方々には難しそうに思います。 また少し考えますが、やはり俺達がいない(オープニングのような)状況でもできるだけ誰でも再現性のある対策ができるようする事が肝要かと。

  12. ディアン

    >俺達がいなくなった後 そうそう、それを考えての威圧交渉って訳だ。 一発目に強烈な印象を与えて置いて、二度目以降もリュシエンヌ達が書面を活用した相手への交渉を継続させれば、厄介な噂は本当だったと更に広めていけるからな。

  13. No.13

    なるほどね… っと、ごめん。ちょっと急に仕事が入っちゃってプレイングは今書いたのが最終稿になりそうだ。とりあえずレヴァーレくんと相手の素性を探り交渉に持ち込む…ってことだけ書いておこうと思う。問題がなければ。 運が良ければ編集のチャンスはありそうだけどギリギリになりそうだ…(仕事に戻りつつ

  14. オゴス

    俺は悪い奴らに「どこかの犯罪組織の下っ端」として認識されるよう振舞ってみましょうか。 冒険者ギルドの介入ブラフに役立てば幸いです。 行動としては、キャンプ周辺の様子を探る、今は自分がお話中だからと他の悪い交渉者を追い払う、暴力は使わず悪い奴らへの牽制、ってのを予定しています。 スキル枠に余裕がある方がいればテレパスで連絡できると助かります。 枠が厳しければ、リアルタイムでの連絡はできませんが、難民キャンプの人にメモを渡して、って手段も考えてます。 メモのやりとりを目撃されても、俺が悪人風の笑顔を浮かべて渡していれば、まあすぐに嘘がバレることはないかと。

  15. レヴァーレ・クアルム

    >威圧交渉 テタールさんのような女性や怪我をされた方が威圧感を出せるか、と思ったのですが……俺達が関わっていると思わせられればそれでも大丈夫そうでしょうか。 わかりました、そちらはおまかせします。 >テレパス 申し訳ない、習得しておらず、またSPも足りないので俺の方では無理ですね……。 >探索、相手の素性の調査 俺は直接交渉よりもこちらに注力しようと考えています。 特にキャンプ周辺の探索をメインに、本職のシーフではありませんが看破とサーマルアイでどうにか探ってみます。 何かしら発券できれば、人なら捕縛、物なら回収を試みてキャンプに戻る予定で。 直接の対応についてはタイミングが合えば俺も当たらせて頂きたいと思いますが、基本はおまかせする形になってしまうかと思います……方向修正が必要であればどうにか対応しますのでご指摘頂ければ幸いです。

  16. オゴス

    >威圧交渉 なるほど。今後のことも見据えての威圧ですか。こういう方向性もありだと思います。 ディアンさんの威圧は迫力がありそうだ。悪人共も災難ですね。 >一芝居 もう出発も近いので微妙なラインですが、一応思いついたことを書いておきます。 悪い奴らとはいえ直接暴力を振るうわけにはいきませんが、犯罪者を装った俺をとっちめて叩き出す、ってのはどうでしょう? 一線を越えて難民キャンプに手を出した犯罪者が痛い目にあった、というウワサが広まるようにド派手な芝居を打って……。 ……皆さんに本気で攻撃されたら死んでしまいますので、手加減していただいてですね、はい……。

  17. レヴァーレ・クアルム

    >オゴスさん 芝居をうつというのも面白そうですね。 俺達同士だと擦り合わせが時間的に難しいとういうのもそうですが、やはりキャンプ自体が手を出すとまずいと思わせるならテタールさんにお願いしてみるのはどうでしょうか? 普段から連中の相手をしていて顔が知れているなら尚の事効果があるのでは、と思います。

  18. オゴス

    >レヴァーレさん たしかにリュシエンヌさんの強さをアピールできれば、今後の悪人襲来を減らせそうですね。 良いお知恵をありがとうございます。行動に取り入れてみますね!

  19. ディアン

    >オゴス お、なら俺もその一芝居に協力させてもらおうか! テレパスは俺も使えっから、オゴスを追い払うタイミングや段取りを連絡取り合いながら良い感じに見せつけてやろうぜ! >レヴァーレ 情報収集はそっちの得意分野ってことか、ならそこら辺はやり方含めてあんたに任せるぜ! 俺は交渉時の流れをある程度仕上げておくから、その時の会話に説得力を持たせるための事前情報に期待させてもらおう!

  20. オゴス

    >ディアンさん それはありがたいです! よろしくお願いします。 テレパスだとリアルタイムでやりとりできるから便利ですよね。

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0