ずっとずっと、むかしから
北上辰巳
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シナリオID:490
オープニング
むかしむかし、フィルエスがまだ魔の樹海と呼ばれていた頃のお話しです。
強大なクリーパーを倒すために立ち上がった、勇敢なエルフの若者たち。
彼らが樹海を進んでいると、背後から不気味な物音が。
ばきりばきり、がさがさ。
自分たちに協力してくれる蜂たちならば、このような音は立てません。
警戒し、武器に手をかけたエルフたちは背後の森を睨み……。
そこから現れたのは、とても大きく、けれど痩せこけてしまった、真っ赤な毛並みの熊だったのです。
熊を目にしたエルフたちはとても驚きましたが、襲いかかってくる様子はありません。
お腹を空かせているのでしょうか、ふらふらと歩み寄ってくる熊は今にも倒れてしまいそう。
熊が恐ろしい猛獣であることを若者たちも知ってはおりましたが、あまりにも弱り切った姿はとても哀れです。
そこで一人の心優しいエルフは、樹海に生える大きな葉っぱを一枚貰って、地面に敷いたその葉の上に、壺から取り出した黄金色の蜜を垂らしていきます。
蜂たちから分けてもらった栄養タップリの蜜を差し出された熊は、無我夢中でそれを舐め始めます。
その様子を見て、安心したエルフたちは、熊へクリーパーの居ない樹海の外の方角を教えてから、再び樹海の奥を目指していきました。
……そして、すべての戦いが終わった後。
クリーパーを倒し、けれども自分たちもまた致命傷を負った若者たちに、一つの影が忍び寄ります。
倒れ、呻き声を上げるばかりの彼らを見つめる赤い獣は、ぎらりと光る牙を、倒れる彼らの首筋へ向けて――。
●攫われた友人
「我々の集落から攫われた熊を、救出していただきたい」
リーンエスの冒険者ギルド支部。
そこを尋ねた、落ち着いた雰囲気のエルフの男の第一声は実に簡潔だった。
「敵の数は8、弓を持った男を筆頭に恐ろしい強さを持っていた……まず間違いなく、授恵者だろう」
フィルエスにあったという彼の集落を襲った賊は、圧倒的な強さを持って人々を蹂躙していったという。
だが、ある程度の物資を奪った敵は、それまでの暴虐が嘘かのように逃げ去ったのだという。
「その直前に攫われたのが、始めに話した熊なのだ。まず、殺されてはいない筈」
何かしらの毒を使われたのだろう、敵の矢が刺さった途端に眠りこけてしまったというその熊を捕獲した相手は、最初からそれが目的だったのではないか……そのように男は語る。
それを聞き、幾人かの冒険者は露骨に怪訝な表情を浮かべてみせる。
突如襲ってきた賊に攫われた熊がまだ殺されてはいないと断言し、その熊一頭のために安くない金をギルドに払い冒険者を雇いたいという。
どうにも話が不自然ではないか、と冒険者に問われれば、依頼者のエルフは渋々という様子で情報を付け加えていく。
「あまり、広めたくはない話だが。件の熊はただの獣ではない……我々の父祖を救った聖獣なのだよ」
曰く、『混沌の残滓たる大腐樹』とエルフたちの戦いが激化していった時代。
クリーパーとの戦いに傷つき倒れていったフィルエスの戦士たちの前に現れた、後に『紅熊』と名付けられる一頭の赤い熊。
その熊が戦士たちに嚙みつけば、死にゆくばかりだと思っていたエルフたちの傷は、たちどころに癒えていったのだという。
「1000年近い昔の話ゆえ、どこまでが真実かは定かではない……だが、我々の森に熊の姿をした魔獣が住んでいて、その一族が治癒の術を使えるのは確かなのだ」
攫われたのは、一頭で森を彷徨っていたところを保護されていた子熊だという。
わざわざ毒矢を用いて生け捕りにした点を考えれば、ただの熊ではないと知った上での襲撃であり、だからこそ殺されてはいないだろうと依頼者は考えていたのだ。
「逃走方向はこのリーンエスだったが、授恵者の集団とはいえ、大型の獣を運んでの道程だ。恐らく、まだこの街には辿り着いていない筈」
今からフィルエスへの道を辿れば、おのずと熊を攫った賊に出くわすだろう。
人の多いこの地に逃げ込まれる前に敵を迎え撃ち、熊を救出するというのが今回の仕事というわけだ。
敵も授恵者というのなら、手ごわい戦いになる。
緊張した面持ちで段取りを話し合おうとする冒険者たちへ、依頼人がなにやら小袋を差し出してくる。
「これは、条件というわけではないんだが……是非、この匂い袋を持って行って欲しい。これがあれば、あの子も君たちが味方だと理解できるだろう」
ほのかに甘い香りを放つその袋を差し出しながら、男は語る。
攫われた魔獣を『あの子』と呼ぶその声色は深い慈しみに満ちたものであり……冒険者がそれを受け取ったことを確認してから、彼は深々と頭を下げる。
「どうか、よろしくお願いする。私や、あの子が生まれる前からの――大切な友を、救ってほしい」
●お友達はご立腹
がしゃん、がしゃんっ!
車輪をつけられた檻が中からの衝撃で揺れるたび、檻を引く馬の怯えが大きくなっていく。
大森林から目的のものを奪って逃げるこの道中、人の多いリーンエスにさえ逃げ込めればひとまずは追手を撒けるだろうが、思った以上に歩みが遅い。
その原因は分かり切っている、のだが……。
「あ、兄貴っ! この熊の暴れっぷりやべーっすよ!? 馬もビビりきってるし……そもそも檻が壊されそうだ!」
「うるさい、黙って手綱握ってろ! コイツを手懐けさえすれば、俺らはもっと成り上がれるんだ!」
予想より早く睡眠毒が抜けてしまったのか、目を覚ました熊が檻をしきりに揺さぶってくるにつれ、リーダー格の男の焦燥が募っていく。
あのエルフの村には大した戦士は居なかったものの、あまり時間をかければ外部から助けを呼んでくるだろう。
そうなれば折角の計画が台無しだ、どうにかしてこの獣を大人しくさせなくては。
「いや、こうなったら、この場でやるか……?」
1時間はかかるエーテルリンクは無理だろうが、構うものか。
そもそも、魔獣相手に通じるかわからないやり方よりも、もっとシンプルに考えればいい。
要は、逆らってはいけない強者が誰かを、このけだものに教えられれば良いのだから。
部下たちにも命じて、騒がしい檻へと武器を向けさせる。
殺しさえしなければいいのだと、男もまた弓に矢をつがえ……。
「……ッ、誰だ!?」
瞬間、その矢は檻とは真反対の方向へと放たれる。
矢が突き刺さる地面のさらに先、そこに立っているのは自分たちと同じように武装した集団の姿があった。
「くそ、遅かったか……仕方ない、こっちから片付けるぞ!」
素早く前へ出る戦士たちの背を見ながら弓使いの激が飛ぶ。
救う者と攫う者、力を授かった者同士の戦いが、此処に始まろうとしていた。
「――クマァ! クマクマ、グマァ!!」
普通の獣ではありえない珍妙な鳴き声を上げる、もっとも怒れる者。
彼は、そのどちらでもなかったが。
解説
マスターより
リプレイ
(あれは、どういうことだ……?)
緊急の魔獣奪還任務。
そのターゲットたる授恵者集団との会敵を経て、真っ先に違和感に気づいたのはナハシュである。
この場の授恵者の中でも、群を抜く瞬発性を誇るシーフクラス。
襲撃を受け僅かながら浮足立った敵方や、ナハシュとは異なる使命のため駆け出したティトに対して、味方と足並みを揃える為に隠匿のエーテルを帯びた彼には、多少の意識の余裕があったのだ。
金の瞳を細め、音や風の流れを身体全体で読み取る事で戦場を俯瞰する。
それぞれに弓を構える仲間たち、その前へ進み出るのは身体にエーテルを漲らせるリディリディ・トゥラ・イェレミース。
シューターより間合いが短くなる彼女を守る為に、鎧と盾で守りを固めるリーリエ=V=ノイエエールデが傍に立ち、エリザ・A・ミシャールの意を受けたゴリラ、シアは後衛全体の盾となるように前傾の戦闘態勢を取る。
明確な敵意を向けてくる彼女たちに気を取られる相手は、静かに潜伏するナハシュとティトに気づく様子はない。
実に順調、事前に知ることができた敵の構成に対抗する作戦通りに皆が動けている。
だが、略奪者たちは。
3人のウォーリアの内、此方を迎え撃つべく2人が前進し、残る1人は杖を構えた女魔術師を守るように盾を構える。
真っ先に落としたいヒーラーたちは戦士の影に隠れてしまうが、こちらが側面を取るように動けば十分に射線が通るはずだ。
ウォーリアに追従するようなシーフの動きも事前に想定できた範囲。
この場合の、問題は。
「――っ、リーリエ! シューターが突っ込んでくるっ!」
「はい……これは!」
同じクラスとしての知識、敵の行動の意味を正しく理解したエリザの叫びに応じて、リーリエの槍にエーテルが込められていく。
振りかぶる獲物から放たれる力は、敵の心をかき乱し注意を引きつける、仲間を守る為の術。
だが、リーリエがそれを撃ちだすよりも早くにシューターの矢が……リディリディへと放たれる。
「これは……テテリカ、あれって!」
「あの頭目、前に出るタイプか! 急ごう、敵も集中攻撃をしてくるぞっ!」
イネス・エレディアの視線の先で、盾を構えるリーリエがリディリディを狙う矢を弾き落とす。
反撃の代わりに撃ちだされるシーザーロアがシューターに当たろうとも、最初から接近してきていた敵の動きに大きな変化はない。
そして、首領に続くように駆ける3人の視線は、依然リディリディへの殺意で満ちている。
テテリカの危惧する通り、敵も打たれ弱い魔術師を集中攻撃しようと……速やかに冒険者の誰かを殺めようと考えたのは、明らかであった。
「ですが、リーリエさんが攻撃を引き付けるのであれば、シューターの射程を警戒する必要はありませんね!」
「ああ、先手必勝……ありったけぶち込んでやろうじゃないか!」
2本の矢を纏めて矢筒から取り出すエリザの隣では、エルナ・クルプファルツの番える矢の輝き、煙幕を作る為のエーテルが別の物へと変質していく。
敵の攻撃がリディリディへ、そして、それを庇うリーリエへと集中するのであれば、相対的に自分たちへ向けられる脅威は減る。
また、時間をかけるほどにリーリエたちの消耗が積み重なっていく事を考えれば、今は敵への攻撃を最優先に考えるべきだ。
そして、もふもふなくまさんを攫う、森の獣をいたずらに害する輩であろうとも、敵集団は授恵者として十分以上の力量を備えていた。
だからこそ、一切の容赦はしない。
エルナ、イネス、テテリカの3者から放たれる光の矢がヒーラーたちの頭上で衝突すれば、それらは一気に炸裂し、おびただしいエーテルの礫となって敵へと襲いかかる。
癒し手たちの着こんだ革鎧が切り裂かれ、光の雨の中で悲鳴と鮮血が舞おうとも、冒険者たちの攻撃は緩まない。
一呼吸の間にエリザが放つ2本の矢が正確に敵を射抜く様を見据えるリディリディは、その瞳を揺らしながらもエーテルを収束させていく。
(悠長にしていたら、ノイエエールデさんが持たない……!)
ヒューマンの矢も、ドワーフかハーフリングと思しき鎧の戦士が握る斧も、リーリエがいなければ自分に向けられたもの。
そのもしもを考えれば、背筋に走る冷たいものは止まらない。
だが、リーリエが自分の役目を全うする限り、それはもしもでしかなく。
それで終わらせる為に、リディリディも己の役割を果たすのだ。
「ぐ、がああっ!?」
エーテルの雨を、二連の矢を耐えたヒーラーにキャスターの魔矢が突き刺さる。
崩れ落ちる相棒にもう一人が目を向けた次の瞬間、彼もまた激痛に顔を歪め、振り返る。
その視線の先に居るのは、エーテルを身に纏った素早い動きで既に間合いを離したナハシュ。
だが、生命を蝕む刃での鮮やかな奇襲を放った彼の表情もまた、僅かに歪んだものだ。
「まだ動くぞ! 倒しきる前に回復されている!」
戦場に響くテテリカの叫び通り、2人のヒーラーには確かな痛手を与えたものの、その戦闘能力を奪うにはまだ足りない。
もう一度攻撃を集中させれば、この2人が落ちることは間違いないだろう……だが、本当にそれでいいのだろうか?
テテリカは回復の術をもってリーリエの援護に回るべきか? 敵キャスターとて放置はできない、対抗手段を持つナハシュが抑えるべきではないか?
だが、そうして攻撃の手を緩めてヒーラーを落とし損なえば、それこそジリ貧。
最初の攻防から、次なる手を間違えれば、戦況は一気に不利へと傾くだろう。
「くっ、シアはリーリエに合流してくれっ、アタシがヒーラーを……?」
判断を誤ってはいけない、その思いの下、戦況を正しく理解しようと全体を見渡そうとしたエリザの声に、僅かな困惑が滲む。
『それはそうだろう』とは思っていたが、その度合いが予想を遥かに超えていた。
並々ならぬ怒りを滾らせる獣の眼差しと目が合った彼女は、後日そう思い返したという。
●むかしから、そうだったのだから
紅熊という種族ではなく、この事件の中心に居る『彼』の特徴を語るなら。
彼は、あまり賢くはなかった。
言語という概念を理解する知能そのものは優れていると言っていいが、個体の性格として短絡的なのだ。
うっかり母親と逸れた事に始まり、明らかに異種族であるエルフにのこのこ着いていく。
何の疑問も持たぬまま集落でのびのび暮らし、襲撃してきた授恵者の目の前に呑気に現れ攫われる。
端的に言えば彼は考えなしであり、拉致され檻に入れられた現在でも、複雑な思考は有さない。
とりあえず檻から出て、閉じ込めた嫌な奴らを引っ叩いて帰ろう、程度に考えていた。
「よしよし……皆で助けに来たよ、ついて、来て」
そんな彼の前に耳の長い人たちと同じ匂いのティトが現れた時。
彼は、状況を見たままに捉えた。
この白くて小さいのは自分の友達だ。檻を開けてくれるし、間違いない。
白いのと一緒に現れた連中も友達なのだろう、微かだが友達の匂いが漂ってくる。
はちみつの匂いは自分たちを助けてくれる友達の匂いなのだと、遠い記憶の母が教えてくれたのだ。
その友達に、檻の近くにいた2人の嫌な奴が武器を向けている。
ちょっと離れたところでは、赤い友達がたくさんの嫌な奴にいじめられている。
それに気づいた瞬間、彼は閉じ込められた苛立ちすら忘れ――この上なくブチ切れた。
●報い
「うわぁっ!?」
皆が戦っている間に、持てる力を総動員して紅熊の檻までたどり着き、彼を解放したティトは、次の瞬間、思わず悲鳴を上げてしまった。
檻まで開けばエーテルでの潜伏も無理が出る、2人の敵から向けられた攻撃のうち、キャスターによる魔法の矢を躱す彼女だが、その後の体勢がわずかに崩されてしまう。
故にもう1人、ウォーリアの槍は到底躱せぬと痛みへの覚悟を決めた彼女だったが……。
「グマァァァ!!!」
「な、がぁっ!?」
その槍が彼女を貫くよりも前に、檻から飛び出た魔獣に飛びつかれたウォーリアが勢いよく地面に叩きつけられる。
紅熊は子供とは言えども、彼の体躯はティトを超える程には大きく、筋肉の塊であるその体重は見た目以上のパワーを生む。
全身に頑丈な鎧を着こんでいた上から、その重量に押しつぶされてしまった哀れな賊は、ちょうど頭部を打ち付けるような体勢で倒されてしまった事も災いし、一撃で昏倒してしまったのだ。
「くそ、何やってやがる!」
「ティトさん! よし、これなら……!」
敵の頭目とエルナ、両陣営においてとりわけ優れた戦術眼を持つ2人が対照的な声色で叫ぶ。
それは、片方は最後方に置いていたキャスターが一気に危機的状況に置かれた憔悴の声であり、もう一方は期待以上の働きをしてみせた味方を賛辞する喜色に満ちた声である。
護衛であるウォーリアが倒されたことで、檻近くの戦いはティトと紅熊で敵の魔術師を相手する非常に有利な状況となった。
そして、主戦場であるこちら側でも、キャスターの攻撃に警戒を払わずに済む利点は大きい。
「エリザさんは片方に集中してください、私がもう一方を狙いますから……ナハシュさん!」
「りょーかい、俺は前衛どもだな!」
エルナの指示と同時に、短剣を握るナハシュが敵前衛の背後を突く形で駆けていく。
敵のヒーラーたちは消耗が激しく、片方には自分のエーテルによる毒まで与えている。
完全な数の優位を取れた今、必要以上の戦力を割く意味はないとのエルナの判断をすべての冒険者が信頼し、動き出す。
「リーリエっ、大丈夫か、今治療する!」
「助かります、クマさんも無事なんですね!」
敵と渡り合っていたリーリエへと、テテリカによる治癒のエーテルが放たれる。
主に追従するかのように放たれる大鼬の魔力がウォーリアの1人の体勢を大きく崩せば、もう片方の戦士へとゴリラが肉薄し、その攻撃を引き付ける。
そして、釘付けにされた彼らには、リディリディの魔法を防ぐ手立ては残っていない。
もっとも身軽なシーフですら、リーリエの槍を受けた脚では戦線を離脱することはできずに、ナハシュとの対峙を余儀なくされる。
「畜生、こんな筈じゃあ……!」
「どんな筈かは知らないけど、賊風情がフィルエス大森林を土足で踏み荒らした報い、受けてもらうわ!」
局所的な数の優位を失い、ヒーラーたちはエリザとエルナの矢に今度こそ倒れ伏す。
顔を青くして叫ぶシューターではあるが、イネスからしてみれば、自分が攫った魔獣に反撃を受けたのだからまさしく自業自得。
彼らが犯した罪を簡潔に示す言葉と共に放たれる二連の矢は、狙い通りに敵のリーダーを射抜き、その身を地面に縫い付けるのであった。
●暫く蜂蜜の匂いが取れませんでした
「さて、首を晒すならどこがいいかしら。やっぱりグランスパーダ?」
「待ってください、そうしたら何の情報も……」
「冗談よ……実際に被害を受けた氏族が裁くのが筋だもの」
縛り上げられ、紅熊が入っていた檻に押し込められた賊を見やり呟くイネスに、エルナが苦笑する。
見事依頼を成功させ、ひとまずはギルドに敵を拘束してもらう為に帰路に着く冒険者の面々。
テテリカが見つけてきた賊の馬に檻を引かせながら歩く道中は、行きとは違いもう1頭が無理やりついてきていた。
「クマクマ、クーマクマ、クママ!」
「心配と不安……逸れたら自分みたいに攫われると思っているみたいですね」
「その犯人は檻の中なんだが……先にギルドに行くしかねぇか、依頼人は残ってるだろうしな」
「できれば手分けして早めに帰してやりたかったが……エルフ達が心配しているぞ」
何故か冒険者の方を心配して着いてくる紅熊へ、ナハシュとテテリカが呆れながらも受け答えをしていく。
「それにしても元気だね……ぼくを庇って結構キャスターに攻撃されてたと思うんだけど」
「クックマ、クママクマ、クマ!」
「褒められて喜んでるみたいですけど……このジェスチャーは蜂蜜ですかね? 蜂蜜を飲めば平気、ってことでしょうか?」
「ウホ……!」
「参考にしようとするなシア、恐らくだが思い込みだぞ」
何かを飲むようなポーズと共にティトを安心させようとする熊に、横を歩くシアが関心を示しエリザに窘められる。
なお、もう1体のペット、テテリカのベニテングに関してはその名前を気に入った紅熊により、半ば無理やり彼の頭の上に乗せられていた。
「……よし、出来ました。匂い袋に入っていた巣蜜、全員分を集めたら結構な量になりますね」
「ならさっさと渡しましょう……害はなくても、このまま街に入ったら人食い熊扱いされるわよ」
そして、匂い袋の中身を瓶に移していたリディリディの声に合わせて、イネスが改めて紅熊の口元を見やる。
「あの、そろそろリーリエさんを降ろしてあげてもらってもいいでしょうか……?」
「ベアー……」
「まだ心配してくれてますけど、食欲に負けてますね。もう大丈夫ですよ、クマさん」
エルナに視線を合わせつつ、器用に二足歩行で歩く紅熊。
子供特有の短い脚はそれでもしっかり大地を踏みしめ、その両腕は大切な友達を優しく抱きしめる。
敵シーフから受けた毒、戦闘終了後に倒れてしまった彼女を救うべく名乗りを上げた赤き魔獣。
今の今まで紅熊に抱えられ、頭を甘噛みされながらも熊の感情を伝える通訳役となっていたリーリエは、此処にようやく解放されるのだった。
●むかしから、これからも
「メドゥの指先、ねぇ……」
後日、冒険者ギルドにて。
報酬の受け渡しと、賊の尋問結果を聞く為に集まった面々の表情は険しかった。
ナハシュの呟きに、エリザもまた小さなため息を吐く。
正統派のエルフとは言い難い自分でも聞き覚えのあった魔獣の噂。
それを知り、賊を差し向けた黒幕として名が出たのは、悪名高い授恵者組織であった。
「ある種の入団試験だったと……彼らの『上』に位置する存在は健在でしょうね」
「それでやる事がフィルエス大森林からの魔獣拉致……ふざけた真似してくれるじゃない」
「ああ、元が断たれなければ、また同じ事が起きかねない」
エルナもイネスもテテリカも、問題の解決が長期化しかねない事を理解し、声色を暗くする。
「……まあ、クマさんに関してはきっと大丈夫ですから」
しかし、今回に限れば足がつきにくい、フィルエスのエルフ以外に知られていない存在である事が狙われた理由だったらしい。
ギルドに来る途中、その『解決策』を見かけたリディリディの声色は存外に明るい。
彼女が仲間をギルドの外に連れだせば、今回の依頼人の姿が。
傍らにある荷車からは、交易用らしき蜂蜜の樽が積まれている。
それを引き、件のエルフと共にこれからこの街を何度も訪れるのだろう獣は、もう知られざる魔獣ではなく。
赤髪と白髪の少女たちを捕まえている彼は、冒険者たちの姿を見つけ、嬉しそうに奇妙な鳴き声を上げるのだった。
マスターコメント
ショートシナリオ普通 報酬:標準8 / 6〜8人
2021年02月03日 10時34分19秒 公開
参加者
エリザ・A・ミシャール
エルナ・クルプファルツ
ナハシュ
- イェレミース トゥラ リディリディ
テテリカ
リーリエ=V=ノイエエールデ
ティト
イネス・エレディア
相談掲示板
エルフのシューター、イネス・エレディアよ、よろしくお願いするわ。 賊風情がフィルエス大森林を土足で踏み荒らした報いは受けてもらうわ。 こっちの構成は後衛より、かつヒーラーなしね。 紅熊の仔に頼るばかりになってもいけないし、回復量はあまり望めないけれど一応ヒールは持って行くつもりよ。
エルヴンシューターのエルナです!皆様よろしくお願いしますね! もふもふくまさんを攫うなんて許せませんね! 参加メンバーのクラス内訳は ウォーリア×1名 シーフ×2名 キャスター×1名 シューター×4名(物理弓×1名、魔法弓×3名) 遠距離かつ魔法攻撃中心のメンバー構成でしょうか! 敵も攻撃は遠距離が主力の構成の様なので、近づかずに撃ち合いをするのが基本になりそうな気がしますね! 遮蔽の無い荒野が戦場みたいなので、濃煙などのスキルで敵の射線を切りつつ、敵ヒーラーやウォーリアから倒していく感じが良さそうかななんて思いました!
よろしく。俺はテテリカ、シューターだ。 エルナの言うように敵ヒーラーやウォーリアはもちろん、他にも射程のある敵シューターやキャスターも厄介だな。 ……対人戦において厄介でない相手などいないか。 射線を切るなら濃煙の方だな。俺も用意できる。 ただ敵キャスターにラピッドショットを撃とうか、とも考え中だ。ハリケーンウォールは早めに潰しておきたい。 ハリケーンウォールがなかったとしても、キャスターを攻撃できるので、むしろ好都合だ。 煙幕を扱うシューターが充分いるようなら、俺はラピッドショットをセットしていこうと思う。
No.4
その・・・、よろしくお願いします。 キャスターのリディリディといいます・・・。 クルプファルツさんはまとめをありがとうござます。 えっと、遮蔽状態になるということでしょうか。 それなら【爆】の付いたストーンブラストや爆炎は射線が取れないので持ち込まない方が良いのでしょうね。
シューターのエリザだ。 既に挙げられている通り、魔法弓の扱いが主体になると思う。 遅れてきて言うのもなんだが、煙幕は今回あまり効果が薄いんじゃないかい? というのも、向こうはシューターが1にキャスターが1。 それに対して、こっちはシューターが4にキャスターが1だ。 射線が通らないことによるデメリットはこちらの方が大きいように思える。 その上、煙幕を張るにしても一行動使ってしまうしね。 それよりは、きちんと相手のどこから崩すかを共通認識したうえで、射程の利を取って集中砲火で回復を使い切らせて落としていく方が最終的な被害は少なくなるように感じたね。 キャスターのエーテルバリアとハリケーンウォール、ウォーリアのカバーリングを使い切らせて、シーフのダブルエッジにシューターのペットも加えて手数で押し切っていくのはどうかな。
シーフのティトです。よろしく…。 相手とフェアに戦うなら、 ヒーラーを先に倒した方がいいと思う。 相手が鈍重でこちらがイニシアティブを取れそうだから、電撃的に相手の回復手段を潰せば主導権を握れそう。 長引けばこちらが先にスタミナ切れしそう、かな… あと、敵ウォーリアの人数が3人だから、 四方から攻めれば一箇所は穴ができ…るとはいわないけど攻めやすいと思う、よ。 もちろん、射線は外すのが前提で、ね。 あとは、くまさん。 最悪の場合は敗色になるかもしれないけど、 くまさんを救出できれば禍根は残るとしてもとりあえず依頼はおっけーぽいから、ランダムを待たずに救出に人員を差し向けてもいい…かもしれない、ね。
どれが正解っていうのはないし、難しいわね…… こっちはヒーラーなしの攻撃偏重の構成だし、それを活かすならミシャールの言うように標的を合わせた上で積極的に攻めていく方がいいと思うわ。8人で攻撃すれば防御スキルやカバリングでどうこうできるものではないし。 【濃煙炸弾】は視線を切れるのは強いけれど相手に移動されれば視野が開けるものだし、使うのであれば視野を切った隙に隠蔽状態からの攻撃でキャスターやシューターを落とす、紅熊の仔を解放する等の一手を入れたいわ。
カバーリングは1ラウンドに1回までの制限があったか。 敵ヒーラーに3人のウォーリアがついていたとしても、こちらが4回以上攻撃できればダメージを与えられそうだな。 ペットの攻撃なども加えれば攻撃回数は稼ぎやすいと思う。
だーすまねえ!!シーフのナハシュだ、よろしく。 俺も基本としてはミシャ―ルの言う感じのが良いんじゃねえかと思うな。 特に言われてる通り、ヒーラーは序盤速攻で落とせるなら落としておきてえところだ。 ウォリアーのうち1人はキャスター付きらしいからフリー枠は2人、 ただその間火力特化のキャスターや向うのシューターを野放しってのは確かにこえぇから、対策としてどちらかを濃霧で遮るのは悪くねえとも思うわ。移動低下やなにかしらで相手の足を止めた上で、ってのは必要だろうが。
ウォーリアのリーリエです。 宜しくお願いしますね。 ヒーラーを先に倒すのに賛成です。 こちらは射撃攻撃が多く遠距離戦闘では優位に立てそうですし、私は相手の接近にあわせて迎撃するようにしようと思います。
明日の夜には出発だったねぇ。 射程有利をとりつつ、ヒーラーを優先して集中砲火で落としていく方針で大丈夫そうかい? あと、直前で悪いんだがシーフか……誰か、身軽な者にくまの救出をお願いしたい。 ほっといても出てくるって話だが、いつになるか分からない要素を考慮にはいれたくないんだ。 後方からの射撃支援はこっちに任せてもらって、持ち前の機動力で手早く檻を壊してくれる奴がいるといいんじゃないかと思う。ナハシュかティトか……頼めるかい?
ヒーラーから集中攻撃ですね!分かりました! >くまさん 確かに、万一の保険の意味でも早い段階で開放した方が良さそうかもですね! 戦闘に協力してもらうかはその時の状況次第になるでしょうか! 救出は同じくシーフの方にお願いできればなと思います!
うんわかった、よ。 ぼくはくまさんを救出してくる、ね。
ヒーラーを集中砲火だな。了解した。 その後はキャスター、シューターの順に弓で狙おうと思う。 ティトはくまの救出に向かうんだな。ありがとう、気をつけて。
オーケーオーケー、じゃあそんな感じで動いておくぜ! 初動はヒーラーを優先的に、あとはキャスターに魔乱印撃っとくなら持って行くかね。 他はウォリアー系の足止めとかまあ程よくやれるようにしておこうと思う。 熊の方はありがとよ、お任せするわ。
No.16
相談に出れず、作戦をすっかりおまかせしてしまってすみません。 方針は了解しました。 まずはヒーラーを、次にキャスターを狙うことにします。 可能ならキャスターの護衛に付いているウォーリアごと魔法の範囲に入れるようにしますね。
まずはヒーラーからね、了解よ。 私も範囲攻撃で他の敵を巻き込めるなら巻き込んでいくつもり。 キャスターかキャスターを倒すのに邪魔になりそうなウォーリアあたりを巻き込めたらいいのだけれど。