【聖祭】赤狐とスリと現状
狐野径
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シナリオID:382
オープニング
●
ロスガリア大陸に住まうものたちにとって、12月は大きな意味を持つ。この時期に執り行われる祭りや催しを、聖霊節と呼ぶ。
その由来はハーフリングの英雄、ジド・ルウがその身をエーテルと成して世界に穿たれた大穴を塞ぎ、彼に小さな神々が続いたことが、今年までの平穏の礎を作った――という逸話に拠る。詳細な時期が定まっていないのは、この頃に暦が存在していなかったため、神代における『冬の時代』、という比喩的表現を、文字通りに解釈したためであるとされる。
由来はともあれ、ジド・ルウの英雄的行為を称え、名を失った神々に祈りを捧げることから始まった聖霊節は、様々な土地の風習や営為と重なった結果、亡き祖先や、近しい人々への思いを捧げることや、想い人と過ごす特別な時期――という習慣が定着して久しく、特別信仰心の無いものであっても神殿や家庭でモミの木や柊を飾り立てて祈りを捧げる。街をあげて催しを行い、厳しい冬の中でもとっておきのごちそうを食すこの時期は、収穫祭に続く特別な時節といえた。
赤白の服装も今代まで続く伝統の一つとなっており、そこかしこに仮装をした人物も目立つ。
――さて。今年も、各地で慰霊祭が執り行われようとしてた。
●旅人、現る
水上都市アキュアリスタに到着した一人の旅人がいる。しっかりとコートを着込んだ小柄な若い男だ。端正な顔立ちなのだが、どこか近づきがたい眼光の鋭さがある。
ウル・ヘルバは帽子をかぶり直す。帽子の端からは赤茶の髪がピンピンと踊る。コートから見える尻尾からすると、髪ではなく耳なのかも知れない。
「とうとう来たぜ」
楽しげに口角を上げる。
水が引き、遺跡が見えるタイミングも迫る。滞在中にそれは見られそうだ。
宿泊予定の宿に向う。
街は祭りモードであり、楽しげでもある。飲食物の屋台、雑貨を売るところなど様々なものに溢れている。
「植物はあるといいがな……水上都市だとどうだろうなぁ」
寒いしコートの前もきちんと締めた。
人混みで子どもにドンとぶつかられた。
「いってーな」
「ごめんよー」
子どもは立ち去ろうとしたが、ウルと紐でつながっている。
ウルはスーと目を細める。
「てめぇ、何やってんだ」
「な、なんだよ!」
ウルは紐を勢いよくたぐり寄せた。
子どもはしっかりと先端についているモノを握りしめているため、紐に引っ張られ、ウルの足元に転がる。
「うわああ」
ウルはしゃがむと、子ども手をつかんだ。
「で、ここだとどこに突き出すんだっけなぁ」
「は、はなせよ! 言いがかりだよ!」
「はぁあん? 大体、ぶつかった時、財布すったのはてめぇじゃねーか」
「うっ、うううっ」
ウルはすごむ。
子どもが怯えて泣き始めた。
路上の異質になり、人が避けはじめる。
「出すとこに出すかね」
「ぼ、ぼくは何もしてないもん!」
「してんじぇねーか! 余罪もあるんじゃねぇか?」
「ふえええええええええええええええええ」
子ども、パニックをおこし、とりあえず泣いた。
ウルは溜息が出た。
「このくらいで怯えるようじゃ、生き延びれねぇんじゃねーの?」
ウルは呆れたついでに放免しようとしたが、頭に石が当たった。
「……って!」
子どもが数人石を投げ、建物の陰に隠れる。
「……てめーらあっ」
「うわああああああああああああ」
子どもたちがちりぢりに逃げる。
「こいつがどうなってもいいのかっ!」
と、ウルが吠える。
なお、最初から見ていないとどう考えてもウルは悪人だった。
領主の所に来ている陳情の中に、孤児院の窮状をどうにかして欲しいというのもあった。
今後どうにかすることも含め、状況を冒険者に確認してもらうことにしていた。
領主の元の人だけでなく、第三者が関わる必要があると考えたからだった。
そして、依頼を受けた人は該当の孤児院に向う。
さて、冒険者たちは遺跡見物など観光や、仕事で水上都市にやってきているのだろう。
そのような中、とある通りの真ん中で大人が子どもを捕まえているのが見える。
ウルとスリの子どものやりとりを最初から見て居てもいいし、最後だけ見てもいい。
この状況、どう収めるか? 放置するのか?
聖霊節、ある日の物語――。
ロスガリア大陸に住まうものたちにとって、12月は大きな意味を持つ。この時期に執り行われる祭りや催しを、聖霊節と呼ぶ。
その由来はハーフリングの英雄、ジド・ルウがその身をエーテルと成して世界に穿たれた大穴を塞ぎ、彼に小さな神々が続いたことが、今年までの平穏の礎を作った――という逸話に拠る。詳細な時期が定まっていないのは、この頃に暦が存在していなかったため、神代における『冬の時代』、という比喩的表現を、文字通りに解釈したためであるとされる。
由来はともあれ、ジド・ルウの英雄的行為を称え、名を失った神々に祈りを捧げることから始まった聖霊節は、様々な土地の風習や営為と重なった結果、亡き祖先や、近しい人々への思いを捧げることや、想い人と過ごす特別な時期――という習慣が定着して久しく、特別信仰心の無いものであっても神殿や家庭でモミの木や柊を飾り立てて祈りを捧げる。街をあげて催しを行い、厳しい冬の中でもとっておきのごちそうを食すこの時期は、収穫祭に続く特別な時節といえた。
赤白の服装も今代まで続く伝統の一つとなっており、そこかしこに仮装をした人物も目立つ。
――さて。今年も、各地で慰霊祭が執り行われようとしてた。
●旅人、現る
水上都市アキュアリスタに到着した一人の旅人がいる。しっかりとコートを着込んだ小柄な若い男だ。端正な顔立ちなのだが、どこか近づきがたい眼光の鋭さがある。
ウル・ヘルバは帽子をかぶり直す。帽子の端からは赤茶の髪がピンピンと踊る。コートから見える尻尾からすると、髪ではなく耳なのかも知れない。
「とうとう来たぜ」
楽しげに口角を上げる。
水が引き、遺跡が見えるタイミングも迫る。滞在中にそれは見られそうだ。
宿泊予定の宿に向う。
街は祭りモードであり、楽しげでもある。飲食物の屋台、雑貨を売るところなど様々なものに溢れている。
「植物はあるといいがな……水上都市だとどうだろうなぁ」
寒いしコートの前もきちんと締めた。
人混みで子どもにドンとぶつかられた。
「いってーな」
「ごめんよー」
子どもは立ち去ろうとしたが、ウルと紐でつながっている。
ウルはスーと目を細める。
「てめぇ、何やってんだ」
「な、なんだよ!」
ウルは紐を勢いよくたぐり寄せた。
子どもはしっかりと先端についているモノを握りしめているため、紐に引っ張られ、ウルの足元に転がる。
「うわああ」
ウルはしゃがむと、子ども手をつかんだ。
「で、ここだとどこに突き出すんだっけなぁ」
「は、はなせよ! 言いがかりだよ!」
「はぁあん? 大体、ぶつかった時、財布すったのはてめぇじゃねーか」
「うっ、うううっ」
ウルはすごむ。
子どもが怯えて泣き始めた。
路上の異質になり、人が避けはじめる。
「出すとこに出すかね」
「ぼ、ぼくは何もしてないもん!」
「してんじぇねーか! 余罪もあるんじゃねぇか?」
「ふえええええええええええええええええ」
子ども、パニックをおこし、とりあえず泣いた。
ウルは溜息が出た。
「このくらいで怯えるようじゃ、生き延びれねぇんじゃねーの?」
ウルは呆れたついでに放免しようとしたが、頭に石が当たった。
「……って!」
子どもが数人石を投げ、建物の陰に隠れる。
「……てめーらあっ」
「うわああああああああああああ」
子どもたちがちりぢりに逃げる。
「こいつがどうなってもいいのかっ!」
と、ウルが吠える。
なお、最初から見ていないとどう考えてもウルは悪人だった。
領主の所に来ている陳情の中に、孤児院の窮状をどうにかして欲しいというのもあった。
今後どうにかすることも含め、状況を冒険者に確認してもらうことにしていた。
領主の元の人だけでなく、第三者が関わる必要があると考えたからだった。
そして、依頼を受けた人は該当の孤児院に向う。
さて、冒険者たちは遺跡見物など観光や、仕事で水上都市にやってきているのだろう。
そのような中、とある通りの真ん中で大人が子どもを捕まえているのが見える。
ウルとスリの子どものやりとりを最初から見て居てもいいし、最後だけ見てもいい。
この状況、どう収めるか? 放置するのか?
聖霊節、ある日の物語――。
解説
●目的など
チンピラに捕まった子ども……の図に見える現状が目の前にある。
お祭り季節だし、孤児院で楽しんでもいい。
依頼を受けているならば、孤児院の状況はきちんとみききして伝える必要がある。
道を踏み外しかかっている点をどうするか……もある……。
なお、このシナリオ参加の冒険者は【通りすがり】か【領主の依頼を受けている】のどちらかとなる。
●NPC(PL情報も含む)
・ウル・ヘルバ 男、22歳。ハーフビースト成人男性としては小柄。
口は悪いとか、眼光鋭いとかあるけれども、つきあえば、道理も理解するし、良い人……なはず。
「売られた喧嘩は買うっ!」とか「ちいせーとか言うなっ!」とかはある。
・子どもたち 10歳前後、男4人、女2人。
孤児院に所属しているのだけれども、人の良い院長のため稼がないといけないと思ったらしい。
基本、あちこち手伝って、野菜をもらったりしているらしい。
何等かのきっかけで「もっと稼ぐ方法が必要だ」「スリだ!」となった模様。
●孤児院
子どもは外で何かやらかした子たち以外にもおり、総勢10人。よちよち歩きの子もいる。
孤児院の院長 50歳くらいの品の良い女性。
おっとりしすぎで、何でも許すタイプ。
副院長が引き締め役、職員2人が普通な感じなのでバランスは良い。
ただ、孤児院の育て方としては良いけれども、お金、足りてないのも事実。
聖霊節を少しでも楽しませたいと、飾りつけはしても、料理まで手は回らない。
院長「どうすればいいのかしらねぇ」
副院長「寄付を募るにしても……」
院長「何か手仕事できればいいのだけど」
そんな一コマがあるとかないとか。ちなみに、彼女らは領主に陳情していない。
※プレイングには、
たまたま現状を見て割って入った場合【通りすがり】
【領主の依頼】を受けているか、を記載していただくこと助かります。
記載がないと、【通りすがり】という判断で対応いたします。
なお、どちらでもあっても報酬は変わりません。
マスターより
こんにちは、狐野径です。
突っ込まれる前に突っ込みます。
狐野のNPC、キツネですね。
はははー。
……定住……。
さて、状況をどうにかすること、楽しむこと大切です。
ただ、今回はスリ未遂ですが、ウルじゃなければ成功していた状況を放置することは危険です。
孤児院の状況は領主の耳にも入っているようですが……。
さてさて、どういたしますか? 冒険者の皆さま。
よろしくお願いします。
リプレイ
●状況をどうにかしよう
ストレガ・L・リベルガストラとSpeak Easyは領主の依頼を受け、該当の孤児院に向っていた。
「話を聞くのはそれなりに得意だからね」
「うむ、頼むのだ」
ストレガとSpeak Easyは別々に聞き込みをする予定だったが、騒ぎが目に入った。
「子どもが石投げて、逃げる? 僕はそっちを追うよ」
「私は被害者がいる方にいくのだ」
それぞれ、子どもの方に向かった。
ロサード・シュナイダー、キャロル・エタームおよびルオはそれぞれ、たまたま道におり、ウル・ヘルバと子どものやりとりを最初から見ることになった。
ロサードはげんなりしながら見ていた。
(おそらく、悪いのは子ども。泣けばなんとでもなるというクソガキは見ていて不愉快)
子どもを助けようと違う子どもたちが石を投げたのを見て、大人の庇護下にいない子どもたちの可能性を考えた。
殺気立ってしまっていたが、そのまま声を掛けるとこじれるため、状況を整理しつつ冷静さを取り戻す。
ルオは聖霊節の見物で来ているため「面倒事に首を突っ込むのはごめんだ」という思いもあった。
商店の人が子どもを知っているのかなんともいえない顔をしているし、自分自身が通るのにも困る。それならば状況を収めたいところだ。
キャロルはこの街の生まれであり、祭りで飲食しつつ楽しんでいたところだった。
騒ぎから、彼女自身が貧しさも知っているため、色々考える。
被害者が役所等に訴えれば子どもたちの未来は不穏なものとなる。一方で、犯罪はよくないため、何もしないこともおかしい。
そのような三者三様の考えや気持ちのもと、ほぼ同時にウルたちのところに来て声を掛けた。
「私は見ていたよ、二人とも落ち着こう」
ロサードは怖がらせないような声音を意識する。そして、子どもの肩に連れの栗鼠のリスさんを載せた。
子どもは栗鼠にドキドキしつつも、気持ちがほぐれたようだ。
「おいガキ、スリを失敗して捕まったからには神妙にするんだな。こういう用心深いヤツの紐を切るためにナイフくらい用意するんだな」
ルオの言葉に子どもはびくっと身を震わせると、栗鼠が落ち着けというように頬を叩く。
「お兄さんは旅の人? ついてなかったわね」
キャロルに、ウルの目が向けられた。あまりの不機嫌そうな顔に、キャロルは苦笑するしかなかった。
シャンテ・フーケも騒ぎを最初から見ていた。
「パッと見てこの状況、狐の人が子どもを人質にでも取っているように見えるのはまずいなぁ」
ハーフビーストに対して心情を悪くされると面倒でもある。
「仕方がない、首を突っ込むことにしよう」
捕まっている子どもを助けようとして石を投げていた子どもたちがいた。そちらにシャンテは向った。
●まずは話そう
シャンテとSpeak Easyは石を投げた子どもたちをそれぞれ引き留める。
「こんな人通の多いところで石投げるとか、さすがに危ないんじゃないかい?」
シャンテは投げられた石を手に、流れ弾的な石が当たった風にやってきた。
「仲間を置いて逃げるのは駄目だよ。捕まった子があの怖い人に食べられたら大変だろう?」
Speak Easyに言われ、子どもは涙目になる。
「とはいえ、石を投げるということは、見捨てて逃げることはないのかもしれない?」
「なるほど、そういうこともあるね」
シャンテの言葉にSpeak Easyはうなずく。
「で、なぜ、石を投げたんだい?」
「だって……」
子どもはシャンテの言葉にもじもじして言わない。捕まえられていないことを良いことに逃げる隙を伺っているようにも思える。
「実際、狐の人に当てたところ見ているよ」
シャンテがにっこりと微笑んだ。
Speak Easyは会話中、子どもたちの様子を見ていた。
「その格好を見るに、きみたちは孤児院の子どもだろう?」
そして、孤児院の名前を言うと、子どもたちは互いにひっつき合って震える。
「なぁに、悪いようにしないさ。少し、話しをしよう」
「うん、そうだよ。あっちも?」
「そうだ。僕の連れもいるんだよ」
「孤児院にも話を聞いた方が良いだろうしね」
子どもたちはなんともいえない顔をしている。
「君たちが、お世話になっている人たちに胸を張って言えないなら、やらない方がいいんじゃないかなかなぁ」
「それに、こんな稼ぎ方したら、いずれ報復される」
Speak Easyとシャンテが静かに注意を示した。
子どもたちはうなずき、二人についていく。
ストレガが「何があったのだ?」と声を掛けた。
「スリをしたということで、もめているんだ」
ロサードが答えた。
「何だって?」
ストレガが驚く横で、ルオが子どもに状況を聞いていた。
「お前、名前は? 親はどこだ?」
ルオの言葉に子どもは泣き止み、そっぽを向く。
「……スラムか孤児院か」
「……」
黙り込んだ。
その横で、ウルはため息をついている。
「孤児院? どこのなのだ?」
ストレガが慌てる。子どもがぼそり言った名前に困惑が浮かぶ。話を聞きに行く途中の孤児院であり、困窮の程が透けたからだ。
「私は最初から見ていないから、確認したいのだ。だから、貴殿の財布貸して欲しい」
「は?」
ストレガの言葉にウルが素頓狂な声を上げる。
「スキルで確認するのだ」
「あー、そういうことか。まあ」
しぶしぶとウルは渡す。
ストレガは【残留思念感応】を用いて財布に残されたウルや子どもの思念を読み取り、そこから思い描いたイメージを【念写】する。
ウルの財布は、子どもの手でポケットから引っ張られ、外に飛び出していた。
悪事を公開された子どもたちは青くなり、呻いた。
キャロルは孤児院の名前を聞いて、記憶から引っ張り出す。
「孤児院で何があったの?」
黙っている子どもに話しかける。
「……お金、なくて……それで、稼がないとって思って」
キャロルは溜息を一つ吐いた。
「とりあえず、孤児院の人とは話さないと……。最悪、孤児院ぐるみでやっているかもしれないとなるよ」
「そんなことしてないもん!」
子どもが反論した。
「それにしても、大人が関わることだ。孤児院の大人と話をする必要があるだろうな、解決には」
ルオが淡々という。
「うー」
「呻くところではない。この人たちが言うとおりだ。詳細を報告する必要もあるし、必要なら援助を申し出るとかしないとならない」
ロサードは努めて厳しくならないように言う。
「貴方はどうする? 料理がおいしい店なら紹介できるわよ」
キャロルが言うと、ウルは「乗りかかった船だから行く」と答えた。
「この子らを役所なりに突き出すのではな……」
「状況だな。孤児院の様子によっちゃあ、突き出す方がいいだろう」
ストレガの言葉を遮るようにウルがいう。
「温情を掛けてやってほしいのだ」
「まー、見てからな」
ストレガはウルの返答にうなずいた。
そして、うなだれる子どもたちを連れて冒険者たちは孤児院に向うのだった。
この間、互いに自己紹介はしておく。
Speak Easyは別ルートで聞き込みをするとして、孤児院前で別れた。
●孤児院にて
Speak Easyは孤児院の周りで、評判等を聞く。聞き込みをしていると、領主に孤児院の窮状を伝えた人がいるというのは分かった。
院長や養育にあたる大人たちは穏やかで、愛情を持って育てているということは伝わった。
おかげで子どもたちも他人思いの良い子に育っているという。
「とはいえ、穏やか過ぎて、院長が金銭的な所にあくせくしなさすぎる」
答えてくれた幾人かは異口同音に言う。
Speak Easyは考える。他人のことを考えることは良いが、したことは問題だ。
「領主には言った方がいいね。あとは、院長たちの人柄とかかな」
Speak Easyは孤児院に向った。
孤児院の様子は、こざっぱりしているが、どこか寒々しい。
建物は補修もされてきれいに使われているが、物が少ない。
冒険者と子どもたちが到着すると、大人が「どうかしたの」と慌てる。
ウルが余りにも不機嫌そうなので、シャンテが「眉間のしわ」と話しかける。
「そうだよ。あ、私は子どもたちと話をしているから」
キャロルは「建物の中に入ろう」と促した。
ロサードとストレガ、ルオが事情を話し、院長たちと会うこととなった。
院長の部屋に入る女性が二人いる。
「冒険者の方々、何かあったんですか?」
椅子に座る院長がおろおろし、その後ろに、神経質そうな副院長はどっしりと構えて控えている。
「実は、ここの子がスリをしたんだ」
ロサードが見た状況を話す。
院長は真っ青になる。
「そ、それで子どもは」
「皆戻ってきている」
ルオが言うと、院長はホッとするが、次の言葉を発せないようだ。何を言うべきか困っている感じだ。
「被害者と私たちと一緒に来た冒険者が、子どもたちは見ているのだ」
ストレガが言うと「被害者が来ているんですね」と副院長が確認する。
「でもなんで……」
院長が言う横で副院長が頭痛を抑えるような仕草をした。
「副院長が思っている通りだと思う」
ロサードの指摘に副院長がやりきれない顔になる。
「たくさんの子どもたちを立派に育てるのはお金が掛かって当然」
「ああ、そうだ。生きていくためには金はどうしても必要だ」
ロサードとルオは続ける。
「子どもたちに必要以上にお金の心配をさせるのは監督者として失格だ」
「子どもたちを働かせるにしたって、稼ぎはたかが知れている。貴方たちも子どもたちの世話で稼ぎに出る所ではないだろう」
「領主へ陳情するのはなぜしなかった?」
「自分たちで用意できないならば、領主や金のある奴のすがるしかあるまいよ」
院長と副院長は驚くやらうなずくやらが精一杯のようだ。
「でも、領主様、忙しいでしょうし、うちより困る人がいるならばそちらに手を差し伸べていただきたいわ」
「いや、待ってくれなのだ」
ストレガはおっとり言う院長に何をどう伝えるか考えた。
「実は市井のお優しい方々から、孤児院が困っているから支援を受けられるようにして欲しいと、領主へ陳情があったのだ」
院長と副院長はただただ驚く。
ロサードとルオは納得した顔になる。ストレガとSpeak Easyが何か意味ありげな行動を取っているのだから。
「スリは良くないが、全うに稼ごうともしていたのだ。ルオ殿が言ったように、稼ぎはたかが知れている……考えた結果がスリだったのだ……」
ストレガの言葉に院長が涙をこぼす。
「わたくしが至らないばかりに……建物があって、服もきちんとあって、食べられるから大丈夫かと思っていたのが……」
「周りに頼るべきは頼り、子どもたちには誰かに助けていただいたかをきちんと伝えて、感謝の心を育む……それも子どもたちにしてあげられる教育の一つ」
ロサードは一旦言葉を切り、続ける。
「自分たちのためなら、他の誰かから何かを奪えばいいという身勝手な思考は悲しすぎる。それとも、ここの領主は、孤児院が窮状を訴えても何もしてくれないと思っている?」
そうではない、ということはストレガたちが受けている依頼から分かる。
ロサードは大きく息を吐いた。大人が的確な状況をつかめない状態が一番の問題だったのだと。
院長は一息つき「子どもたちを叱り、被害者には頭を下げます」といい、ウルたちのいる部屋に向う。
冒険者一行もついていく。
不機嫌なウルがいるため、子どもたちはびくびくしている。
「報復されなかったのは、この狐の人が、意外と大人だったからだよ」
シャンテが言うと、子どもたちは震える。
「ああぁ? 余計なことを言うな」
ウルが居心地悪そうにする。
「苛立っているね、ウルさん」
シャンテが自分の眉間を指さし言う。
「こういう顔だよ!」
「……いや……うん」
シャンテは言葉を飲み込む。
キャロルは子どもたちに話しかける。
「院長さんとは後で話す事になるとは思うよ」
子どもたちはしょんぼりする。
「自分たちがしたことで、孤児院がつぶれるかもしれないんだよ」
子どもたちは驚く。
「お金がなくてもつぶれるけど、スリをしてしまうと、孤児院がつぶれるだけでなくて、皆が次の道を見つけることも大変になるよ」
シャンテとウルがうなずく。
「私も貧乏だったけどね……。他の人に迷惑掛けることをすると保護者の責任になるのよ。今回のことだって、キミたちがスリをしたお金を院長に渡せば、院長が子ども使ってスリをさせているように見えるのよ」
子どもたちはおろおろし始める。
「そうなったらどう思う?」
子どもたちは半泣きだ。
「ったく」
ウルが不機嫌に言うと、子どもたちがビクッと怯える。
「何をやってはいけないか、今一度考えることが大切だよ」
シャンテが促した。
涙にで声を詰まらせた院長に代わり、副院長がしっかりと子どもたちを叱る。
子どもたちは謝罪する、ウルと冒険者に。
●今後について
冒険者たちは孤児院を出る前に提案などしていく。
「子どもだと稼ぎはたかが知れているが、労働の価値を知る必要はある」
ルオの言葉に子どもたちはうなずく。
「たとえば、お菓子や雑貨を作って、大通りで売るのはどうだ? 元手の掛からないもので始めたら良い」
「お祭りの時期だし、お金にならなくても寄付の種なんていくらでもあると思うわ」
キャロルが言う。
「たとえば、ゴミ拾いとかね。出店も出てるし、ゴミのポイ捨てなんかはたくさんあるからね。自分たちが役に立つ所を見せないと寄付なんてもらえないわよ」
寄付にせよ、少額でも稼ごうとするにしても、一つずつ地道にやっていくしかない。
「早速だけど、これからの時間ゴミ拾いとかしてみる? ご褒美に出店で何か買ってあげようかしら? 私からの寄付としてね」
「寄付というより、ちょっとした仕事だ」
ロサードの指摘に、子どもたちは「ゴミ拾いもお仕事?」と問う。
「時と場合による。今回は、あくまで街のためにする、ということになるだろう」
ロサードの言葉に子どもたちは首を縦に振る。
「そうだね、ウルに迷惑掛けただけでなく、通りのど真ん中で色々やっていたからね。祭りの間のゴミ拾いはいいかもね」
Speak Easyはうなずいた。
「やっているのを見たら、僕が甘い物でも土産に持ってきてあげようかな」
Speak Easyがつぶやくと、キャロルが「そうだね」と同意する。
「じゃ、俺は行くぜ」
ウルが溜息をつく。
「で、ガキ、もう、やるなよ。次は、ないからな」
子どもは「ひっ」といいながらうなずいた。
「なんで恫喝するかな」
シャンテはウルに突っ込む。
「さて、私も行くのだ。領主に報告なのだ」
ストレガが院長に「頼るのも一つなのだ」と諭し、立ち去るのだった。
ストレガとSpeak Easyは領主に報告に向った。
「――というわけなのだ」
「子どもたちは反省しているよ」
ストレガとSpeak Easyの説明に領主は耳を傾けた。
役割も終え、二人は立ち去る。
ストレガと別れたSpeak Easyは賑やかな街に向う。路銀にゆとりもできたし、のんびり見て回ることにするのだった。
ストレガ・L・リベルガストラとSpeak Easyは領主の依頼を受け、該当の孤児院に向っていた。
「話を聞くのはそれなりに得意だからね」
「うむ、頼むのだ」
ストレガとSpeak Easyは別々に聞き込みをする予定だったが、騒ぎが目に入った。
「子どもが石投げて、逃げる? 僕はそっちを追うよ」
「私は被害者がいる方にいくのだ」
それぞれ、子どもの方に向かった。
ロサード・シュナイダー、キャロル・エタームおよびルオはそれぞれ、たまたま道におり、ウル・ヘルバと子どものやりとりを最初から見ることになった。
ロサードはげんなりしながら見ていた。
(おそらく、悪いのは子ども。泣けばなんとでもなるというクソガキは見ていて不愉快)
子どもを助けようと違う子どもたちが石を投げたのを見て、大人の庇護下にいない子どもたちの可能性を考えた。
殺気立ってしまっていたが、そのまま声を掛けるとこじれるため、状況を整理しつつ冷静さを取り戻す。
ルオは聖霊節の見物で来ているため「面倒事に首を突っ込むのはごめんだ」という思いもあった。
商店の人が子どもを知っているのかなんともいえない顔をしているし、自分自身が通るのにも困る。それならば状況を収めたいところだ。
キャロルはこの街の生まれであり、祭りで飲食しつつ楽しんでいたところだった。
騒ぎから、彼女自身が貧しさも知っているため、色々考える。
被害者が役所等に訴えれば子どもたちの未来は不穏なものとなる。一方で、犯罪はよくないため、何もしないこともおかしい。
そのような三者三様の考えや気持ちのもと、ほぼ同時にウルたちのところに来て声を掛けた。
「私は見ていたよ、二人とも落ち着こう」
ロサードは怖がらせないような声音を意識する。そして、子どもの肩に連れの栗鼠のリスさんを載せた。
子どもは栗鼠にドキドキしつつも、気持ちがほぐれたようだ。
「おいガキ、スリを失敗して捕まったからには神妙にするんだな。こういう用心深いヤツの紐を切るためにナイフくらい用意するんだな」
ルオの言葉に子どもはびくっと身を震わせると、栗鼠が落ち着けというように頬を叩く。
「お兄さんは旅の人? ついてなかったわね」
キャロルに、ウルの目が向けられた。あまりの不機嫌そうな顔に、キャロルは苦笑するしかなかった。
シャンテ・フーケも騒ぎを最初から見ていた。
「パッと見てこの状況、狐の人が子どもを人質にでも取っているように見えるのはまずいなぁ」
ハーフビーストに対して心情を悪くされると面倒でもある。
「仕方がない、首を突っ込むことにしよう」
捕まっている子どもを助けようとして石を投げていた子どもたちがいた。そちらにシャンテは向った。
●まずは話そう
シャンテとSpeak Easyは石を投げた子どもたちをそれぞれ引き留める。
「こんな人通の多いところで石投げるとか、さすがに危ないんじゃないかい?」
シャンテは投げられた石を手に、流れ弾的な石が当たった風にやってきた。
「仲間を置いて逃げるのは駄目だよ。捕まった子があの怖い人に食べられたら大変だろう?」
Speak Easyに言われ、子どもは涙目になる。
「とはいえ、石を投げるということは、見捨てて逃げることはないのかもしれない?」
「なるほど、そういうこともあるね」
シャンテの言葉にSpeak Easyはうなずく。
「で、なぜ、石を投げたんだい?」
「だって……」
子どもはシャンテの言葉にもじもじして言わない。捕まえられていないことを良いことに逃げる隙を伺っているようにも思える。
「実際、狐の人に当てたところ見ているよ」
シャンテがにっこりと微笑んだ。
Speak Easyは会話中、子どもたちの様子を見ていた。
「その格好を見るに、きみたちは孤児院の子どもだろう?」
そして、孤児院の名前を言うと、子どもたちは互いにひっつき合って震える。
「なぁに、悪いようにしないさ。少し、話しをしよう」
「うん、そうだよ。あっちも?」
「そうだ。僕の連れもいるんだよ」
「孤児院にも話を聞いた方が良いだろうしね」
子どもたちはなんともいえない顔をしている。
「君たちが、お世話になっている人たちに胸を張って言えないなら、やらない方がいいんじゃないかなかなぁ」
「それに、こんな稼ぎ方したら、いずれ報復される」
Speak Easyとシャンテが静かに注意を示した。
子どもたちはうなずき、二人についていく。
ストレガが「何があったのだ?」と声を掛けた。
「スリをしたということで、もめているんだ」
ロサードが答えた。
「何だって?」
ストレガが驚く横で、ルオが子どもに状況を聞いていた。
「お前、名前は? 親はどこだ?」
ルオの言葉に子どもは泣き止み、そっぽを向く。
「……スラムか孤児院か」
「……」
黙り込んだ。
その横で、ウルはため息をついている。
「孤児院? どこのなのだ?」
ストレガが慌てる。子どもがぼそり言った名前に困惑が浮かぶ。話を聞きに行く途中の孤児院であり、困窮の程が透けたからだ。
「私は最初から見ていないから、確認したいのだ。だから、貴殿の財布貸して欲しい」
「は?」
ストレガの言葉にウルが素頓狂な声を上げる。
「スキルで確認するのだ」
「あー、そういうことか。まあ」
しぶしぶとウルは渡す。
ストレガは【残留思念感応】を用いて財布に残されたウルや子どもの思念を読み取り、そこから思い描いたイメージを【念写】する。
ウルの財布は、子どもの手でポケットから引っ張られ、外に飛び出していた。
悪事を公開された子どもたちは青くなり、呻いた。
キャロルは孤児院の名前を聞いて、記憶から引っ張り出す。
「孤児院で何があったの?」
黙っている子どもに話しかける。
「……お金、なくて……それで、稼がないとって思って」
キャロルは溜息を一つ吐いた。
「とりあえず、孤児院の人とは話さないと……。最悪、孤児院ぐるみでやっているかもしれないとなるよ」
「そんなことしてないもん!」
子どもが反論した。
「それにしても、大人が関わることだ。孤児院の大人と話をする必要があるだろうな、解決には」
ルオが淡々という。
「うー」
「呻くところではない。この人たちが言うとおりだ。詳細を報告する必要もあるし、必要なら援助を申し出るとかしないとならない」
ロサードは努めて厳しくならないように言う。
「貴方はどうする? 料理がおいしい店なら紹介できるわよ」
キャロルが言うと、ウルは「乗りかかった船だから行く」と答えた。
「この子らを役所なりに突き出すのではな……」
「状況だな。孤児院の様子によっちゃあ、突き出す方がいいだろう」
ストレガの言葉を遮るようにウルがいう。
「温情を掛けてやってほしいのだ」
「まー、見てからな」
ストレガはウルの返答にうなずいた。
そして、うなだれる子どもたちを連れて冒険者たちは孤児院に向うのだった。
この間、互いに自己紹介はしておく。
Speak Easyは別ルートで聞き込みをするとして、孤児院前で別れた。
●孤児院にて
Speak Easyは孤児院の周りで、評判等を聞く。聞き込みをしていると、領主に孤児院の窮状を伝えた人がいるというのは分かった。
院長や養育にあたる大人たちは穏やかで、愛情を持って育てているということは伝わった。
おかげで子どもたちも他人思いの良い子に育っているという。
「とはいえ、穏やか過ぎて、院長が金銭的な所にあくせくしなさすぎる」
答えてくれた幾人かは異口同音に言う。
Speak Easyは考える。他人のことを考えることは良いが、したことは問題だ。
「領主には言った方がいいね。あとは、院長たちの人柄とかかな」
Speak Easyは孤児院に向った。
孤児院の様子は、こざっぱりしているが、どこか寒々しい。
建物は補修もされてきれいに使われているが、物が少ない。
冒険者と子どもたちが到着すると、大人が「どうかしたの」と慌てる。
ウルが余りにも不機嫌そうなので、シャンテが「眉間のしわ」と話しかける。
「そうだよ。あ、私は子どもたちと話をしているから」
キャロルは「建物の中に入ろう」と促した。
ロサードとストレガ、ルオが事情を話し、院長たちと会うこととなった。
院長の部屋に入る女性が二人いる。
「冒険者の方々、何かあったんですか?」
椅子に座る院長がおろおろし、その後ろに、神経質そうな副院長はどっしりと構えて控えている。
「実は、ここの子がスリをしたんだ」
ロサードが見た状況を話す。
院長は真っ青になる。
「そ、それで子どもは」
「皆戻ってきている」
ルオが言うと、院長はホッとするが、次の言葉を発せないようだ。何を言うべきか困っている感じだ。
「被害者と私たちと一緒に来た冒険者が、子どもたちは見ているのだ」
ストレガが言うと「被害者が来ているんですね」と副院長が確認する。
「でもなんで……」
院長が言う横で副院長が頭痛を抑えるような仕草をした。
「副院長が思っている通りだと思う」
ロサードの指摘に副院長がやりきれない顔になる。
「たくさんの子どもたちを立派に育てるのはお金が掛かって当然」
「ああ、そうだ。生きていくためには金はどうしても必要だ」
ロサードとルオは続ける。
「子どもたちに必要以上にお金の心配をさせるのは監督者として失格だ」
「子どもたちを働かせるにしたって、稼ぎはたかが知れている。貴方たちも子どもたちの世話で稼ぎに出る所ではないだろう」
「領主へ陳情するのはなぜしなかった?」
「自分たちで用意できないならば、領主や金のある奴のすがるしかあるまいよ」
院長と副院長は驚くやらうなずくやらが精一杯のようだ。
「でも、領主様、忙しいでしょうし、うちより困る人がいるならばそちらに手を差し伸べていただきたいわ」
「いや、待ってくれなのだ」
ストレガはおっとり言う院長に何をどう伝えるか考えた。
「実は市井のお優しい方々から、孤児院が困っているから支援を受けられるようにして欲しいと、領主へ陳情があったのだ」
院長と副院長はただただ驚く。
ロサードとルオは納得した顔になる。ストレガとSpeak Easyが何か意味ありげな行動を取っているのだから。
「スリは良くないが、全うに稼ごうともしていたのだ。ルオ殿が言ったように、稼ぎはたかが知れている……考えた結果がスリだったのだ……」
ストレガの言葉に院長が涙をこぼす。
「わたくしが至らないばかりに……建物があって、服もきちんとあって、食べられるから大丈夫かと思っていたのが……」
「周りに頼るべきは頼り、子どもたちには誰かに助けていただいたかをきちんと伝えて、感謝の心を育む……それも子どもたちにしてあげられる教育の一つ」
ロサードは一旦言葉を切り、続ける。
「自分たちのためなら、他の誰かから何かを奪えばいいという身勝手な思考は悲しすぎる。それとも、ここの領主は、孤児院が窮状を訴えても何もしてくれないと思っている?」
そうではない、ということはストレガたちが受けている依頼から分かる。
ロサードは大きく息を吐いた。大人が的確な状況をつかめない状態が一番の問題だったのだと。
院長は一息つき「子どもたちを叱り、被害者には頭を下げます」といい、ウルたちのいる部屋に向う。
冒険者一行もついていく。
不機嫌なウルがいるため、子どもたちはびくびくしている。
「報復されなかったのは、この狐の人が、意外と大人だったからだよ」
シャンテが言うと、子どもたちは震える。
「ああぁ? 余計なことを言うな」
ウルが居心地悪そうにする。
「苛立っているね、ウルさん」
シャンテが自分の眉間を指さし言う。
「こういう顔だよ!」
「……いや……うん」
シャンテは言葉を飲み込む。
キャロルは子どもたちに話しかける。
「院長さんとは後で話す事になるとは思うよ」
子どもたちはしょんぼりする。
「自分たちがしたことで、孤児院がつぶれるかもしれないんだよ」
子どもたちは驚く。
「お金がなくてもつぶれるけど、スリをしてしまうと、孤児院がつぶれるだけでなくて、皆が次の道を見つけることも大変になるよ」
シャンテとウルがうなずく。
「私も貧乏だったけどね……。他の人に迷惑掛けることをすると保護者の責任になるのよ。今回のことだって、キミたちがスリをしたお金を院長に渡せば、院長が子ども使ってスリをさせているように見えるのよ」
子どもたちはおろおろし始める。
「そうなったらどう思う?」
子どもたちは半泣きだ。
「ったく」
ウルが不機嫌に言うと、子どもたちがビクッと怯える。
「何をやってはいけないか、今一度考えることが大切だよ」
シャンテが促した。
涙にで声を詰まらせた院長に代わり、副院長がしっかりと子どもたちを叱る。
子どもたちは謝罪する、ウルと冒険者に。
●今後について
冒険者たちは孤児院を出る前に提案などしていく。
「子どもだと稼ぎはたかが知れているが、労働の価値を知る必要はある」
ルオの言葉に子どもたちはうなずく。
「たとえば、お菓子や雑貨を作って、大通りで売るのはどうだ? 元手の掛からないもので始めたら良い」
「お祭りの時期だし、お金にならなくても寄付の種なんていくらでもあると思うわ」
キャロルが言う。
「たとえば、ゴミ拾いとかね。出店も出てるし、ゴミのポイ捨てなんかはたくさんあるからね。自分たちが役に立つ所を見せないと寄付なんてもらえないわよ」
寄付にせよ、少額でも稼ごうとするにしても、一つずつ地道にやっていくしかない。
「早速だけど、これからの時間ゴミ拾いとかしてみる? ご褒美に出店で何か買ってあげようかしら? 私からの寄付としてね」
「寄付というより、ちょっとした仕事だ」
ロサードの指摘に、子どもたちは「ゴミ拾いもお仕事?」と問う。
「時と場合による。今回は、あくまで街のためにする、ということになるだろう」
ロサードの言葉に子どもたちは首を縦に振る。
「そうだね、ウルに迷惑掛けただけでなく、通りのど真ん中で色々やっていたからね。祭りの間のゴミ拾いはいいかもね」
Speak Easyはうなずいた。
「やっているのを見たら、僕が甘い物でも土産に持ってきてあげようかな」
Speak Easyがつぶやくと、キャロルが「そうだね」と同意する。
「じゃ、俺は行くぜ」
ウルが溜息をつく。
「で、ガキ、もう、やるなよ。次は、ないからな」
子どもは「ひっ」といいながらうなずいた。
「なんで恫喝するかな」
シャンテはウルに突っ込む。
「さて、私も行くのだ。領主に報告なのだ」
ストレガが院長に「頼るのも一つなのだ」と諭し、立ち去るのだった。
ストレガとSpeak Easyは領主に報告に向った。
「――というわけなのだ」
「子どもたちは反省しているよ」
ストレガとSpeak Easyの説明に領主は耳を傾けた。
役割も終え、二人は立ち去る。
ストレガと別れたSpeak Easyは賑やかな街に向う。路銀にゆとりもできたし、のんびり見て回ることにするのだった。
マスターコメント
ご参加ありがとうございました。
ハーフビーストの置かれた状況とか、心情考えどきどきしました。そう考えるとウル、何も考えていないため、考えていないことはいいことかさて……と考えさせられたからです。
孤児院には力添え、厳しくとも温かい言葉をありがとうございました。
領主や周囲の人たちの気持ちも考え、次のステップに進めるに違いありません。
では、ご縁があれば、またお会いしましょう!
ショートシナリオ易しい 報酬:少ない6 / 4〜8人
2020年12月29日 11時37分54秒 公開
大成功
参加者
- シュナイダー ロサード
ストレガ・L・リベルガストラ
シャンテ・フーケ
キャロル・エターム
ルオ
Speak Easy
相談掲示板
キャロル・エターム 通りすがりだけどちょっともめてるようだから割り込ませてもらったわ。 よろしくね。
ストレガなのだ。宜しくなのだ。 ウォレットチェーン、大事。 サイコメトリーとかあるから財布触って事情確認とかできるのだ。
No.3
ロサード・シュナイダー。 よろしく。 …。思うところがあって首を突っ込ませてもらうことにした。 具体的にどう働きかけるかは…今からかんがえる(うーんうーん
ヒーラーのシャンテだよ、どうぞよろしく。 んー、見覚えのある狐が騒ぎを起こしてる……? と、暇潰しに名簿を眺めるのが趣味な猫が通りすがりに首を突っ込ませてもらうよ。
シーフのスピーク・イージーだよ。よろしくね。 ふぅむ、今の所はみんな【通りすがり】なのかな。 となると1人は【領主の依頼】を受けている人が居た方が良いし、ヤツガレは孤児院の視察に行こうかな。 報告に今回の騒動も含めたいところだし、【通りすがり】の人たちとは騒動解決後に孤児院で合流できたら嬉しいなぁ。 【領主の依頼】だけど、これは『視察しに来ました』って伝えて大丈夫なんだよね…?
私も【領主の依頼】を受けている事で書いておくのだー スリが出ている事も現状把握になるのだ
ルオだ。 ぎりぎりだが参加させてもらった。 俺は【通りすがり】のていで行く。