【限狐】混沌の箱
真柄 葉
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シナリオID:277
オープニング
人の裏、街の裏、心の裏――。
様々な欲望と野望が渦巻く混沌の街では、今日も数知れない影が蠢いていた。
「では例のものを見せていただきましょうか」
「ふふふ……残念ながらここにはない」
「なんと。一体どういう事でしょうか? それでは約束が違いますが」
「まずは金だ。悪いが代金を頂いてからじゃないと渡さない主義なんでね」
ぐふふと卑屈な笑みを浮かべながら、貿易商トムソン・ディーブは相手をねめつける。
「ふむ……仕方ありませんね。――おい」
一方、取引相手は実に紳士的な態度で、供の者に声をかけた。
「――ではご検分ください」
「うほぉ……!!」
供の者が広げた鞄の口からは、眩いばかりの硬貨の輝きが見えた。
貿易商は鼻息荒くその輝きに目を奪われている。
「……ご希望いただいた額に多少の色を足しております。これでご満足いただけるかと」
「ええ、ええ!! もちろんですとも!」
途端に口調を整えた貿易商は、取引相手に向け何度も手を擦る。
「それはよかった。では、早速こちらも商品を見分したいのですが」
一方の取引相手は紳士的な態度を崩さず、貿易商に向け恭しく礼をする。
「ええ、もちろんですとも! すぐに取ってまいります! もう少しだけお待ちいただけますか!」
と、貿易商は取引相手の元を辞そうとして――。
「しかし、あれを何にお使いになるんで? たかが植物の――」
「貴方が知る必要のない事ですよ」
笑みを張り付けた顔で取引相手が貿易商の言葉を遮った。
「そ、そうですな。私の役目は運ぶ事。ははは、何も聞いておりませんぞ!」
取引相手の笑顔に、冷や汗の止まらない貿易商は急いで商品のある場所へ向かう――。
●
そんな怪し気な会話が行われていた路地近くでは――。
「なぁなぁ、これなんだと思う?」
「箱だろ?」
箱にかけられた布を剥ぎ取り、現れたそれを覗き込む子供達。
異様に頑丈に造られた木箱を、なんだこれと眺めたり突いたり。
箱は目立たないようにと布がかけられていたのだが、それが逆効果だった。
「いや、箱なんだけどさ。何が入ってるのかなって」
「食い物か?」
「うーん、そんな匂いはしないんだよね」
「開けてみる?」
「鍵かかってるよ?」
「そんなもん壊せば済むだろ」
「壊すって言ってもなぁ。けっこう頑丈に釘が打ち付けてあるよ? 釘抜持ってる奴いる?」
「持ってなーい」
「なーい」
「俺もないなぁ」
「しゃぁない、取ってくるか」
「別にここで開けなくてもいいんじゃない? 橋の下とか目立たないところ行こうよ」
「んー、食い物じゃなかったらいらないしなぁ」
「売れるんじゃない?」
「中身もわからないのにか?」
子供たちが箱を前にどうしようかと相談している間に――。
「お、おい! おまえら何をやってる!! それは俺様のだぞ!!」
「やべ、見つかった!」
あの貿易商が箱を取りに来た。
子供達は蜘蛛の子を散らすように一斉に逃げ出す。
一人は路地の奥へ。一人は壁を器用に上り路地向こうへ。また一人は壁に出来た小さな穴に潜り込み。別の一人は貿易商の脇を抜けて逃げ出した。
「ま、待て! それを置いていけ!! お、おいぃぃぃ!!!!」
貿易商の悲痛な叫びが背後から聞こえる。
それもそのはず、子供達の一人が咄嗟に箱を掴み持ち去ったのだから――。
●
「あー、持ってきちゃった」
別の場所で再び合流した子供達。真ん中に置かれた箱を見下ろし途方に暮れる。
「うーん、どうしよっか。返しに行く?」
「いやぁ、めっちゃ怒ってたよ? たぶん殴られる」
「うえー、それは嫌だなぁ」
「なぁ、はらへったよー」
「俺もー」
「ほんと、逃げたから余計腹減ったよな……」
子供たちは騒がしく鳴き続ける腹を押さえる。
「とりあえず隠しとこうか。こんなの持ったまま歩いてたら怪しまれるし」
「そだな。じゃ、この辺に隠しといてっと――」
ゴールディが首都シルバード。今日も、その裏では様々な欲望と混沌が蠢いていた――。
解説
マスターより
リプレイ
「おやじ、もう一杯!」
アーテミシアが空のジョッキを掲げ、奥へ追加を要求する。
「ね、ねぇアーシア。昼間っからこんな所に入ってていいの……?」
同じテーブルにはララベル・サン・ディーベルが居心地悪そうに座っていた。
「いーんだよ。欲しい大体情報は集まったからな」
と、アーテミシアは机にスラムの地図を広げた。
「ここが貿易商のおっさんが箱を奪われた場所だ」
「うん、ここからそう遠くない」
「で、ガキどもが逃げたって方向がこっちだ」
「樹海の方か……そっちまで行かれるとだいぶ厄介だね」
アーテミシアはララベルを連れ立ち、居住区の店々で犯人の情報を集めていたのだ。
「で、ガキどもの拠点が――ここ」
と、アーテミシアは地図の一点を指さした。
「すごい、もうわかったんだ!」
「――と、こことこことこことここ――」
驚くララベルを他所に、アーテミシアは地図をトントンと何か所も指差していく。
「え……あ、えっ、多すぎないっ!?」
「だろ? めんどくせぇ仕事になるからな。今のうちに腹ごしらえってわけだ」
そう言うと、アーテミシアは運ばれてきたおかわりを一気に煽った。
●
――ドンっ。
「いってぇな。気ぃ付けやがれ!!」
「いや~、ごめんごめん。この辺りは慣れなくてよそ見していたよ~」
肩を怒らせる男に、ハインツは脳天気に答えた。
「舐めてんのか、お前!」
その態度が気に食わなかったのか、男はハインツに食って掛かる。
「でも、よそ見してたおかげで、いいもの拾ったんだ~」
「なに……? お、おい、それ!」
「うん~? どうしたの~?」
「俺の財布じゃねぇか!」
「あ、そうなんだ。よかったね~」
慌てる男にハインツはにっこりと微笑む。
「か、返せ!」
「うん、いいよ~。でも――」
「な、なんだ……」
差し出していた財布を引っ込めたハインツは。
「ちょっと聞きたいことがあるんだよね~」
なにを聞かれるのかと警戒する男に口元を少しだけゆがめた。
●
マントを頭からすっぽりとかぶり、まるでいわくあり気ななりをして。
きょろきょろと挙動不審な仕草で、辺りを伺い。
ヴィノニスはスラムを歩いていた。
(……居るわね)
鋭敏な耳に大人ではない小さな足音が聞こえる。
一つ、二つ、三つ。
ヴィノニスは聴覚に集中し、背後の気配を探った。
(さぁ、いらっしゃい)
フードに隠れた口元がいやらしく歪む。
小さな足跡が駆け出した。
――トンッ
「きゃっ」
後ろから軽く当たられただけでヴィノニスは足をもつれさせ転んだ。
「ねぇちゃん! ここでそんなふうにしてたら、わるい虫がよってくるよ!」
呆然と見上げるヴィノニスに向かって、少年が得意げにそう言う。
「わるいけど、これはもらってくぜ!」
そして、いつの間にか手の中に納まっていたポーチを服の中に隠すと、仲間達と逃げ出した。
「……ふふふ、いいわ。うん、悪くないわ」
顔は覚えた。三人共薄汚れてはいたけど、立派な『少年』だった。
ヴィノニスは自然と吊り上がる頬を両手でもみほぐしながら立ち上がり。
「さぁ、悪い子はどこかしら?」
遠ざかっていく足音にじっと耳を傾けた。
●
「――さて」
ろくに掃除もされていない路地の奥でアーテミシアがふと足を止めた。
「ここが一つ目だな」
目の前には道を塞ぐ様に建てられた木製の小屋がある。
「完全に道を塞いでるね」
「反対側にも出口があるパターンだろうな。ベル、裏に回れるか」
「もちろんっ!」
建物の屋根を指さしたアーテミシアに、ララベルが大きく頷いた。
「よし、それじゃ30秒後に行動開始だ」
アーテミシアの声と共に、ふっとララベルの気配が消える。
【ハイディング】で隠蔽状態となったララベルは音もなく壁を伝い屋根を越えた。
「んじゃ、やりますか。何匹いやがるかな」
ララベルの姿が完全に見えなくなったことを確認したアーテミシアは、大きく息を吸い込むと。
『出てこい、ガキども!!』
【シーザーロア】を小屋に向けて発した。
――ガシャガシャゴンゴロバタン!!?
「ははっ、ビンゴだな。んじゃ、後はよろしくな、ベル」
と、小屋の住人の慌てように満足したアーテミシアは、見えない友人に話しかけた。
「に、逃げろ!」
「なんだったの一体!?」
「いいから! 裏から逃げ――」
「はい、全員ストップだよ!」
裏口から出てきた子供達は4人。その誰もが後ろから追い立てられるように小屋から這出てくる。
そんな子供達に、どんと大の字に立ち塞がったのはララベルだった。
「驚かせてごめんね。追いかけっことかになって怪我をさせたら悪いかなって思って、こんな方法を取っちゃったんだ」
びくびくと震える子供達を刺激しないように、ララベルは出来るだけ優しく話しかける。
「君達に危害を加えるつもりはないんだ。ただちょっと、教えて欲しい事があるんだ」
と、ララベルは警戒と怯えの混じる子供達に向け、干し肉と一緒に一枚の紙を見せた。
「僕達はこの絵の箱を探してるんだ」
「あ、これって……」
「しー!!」
「あわわ!?」
子供達の反応は様々だったが、ララベルはニコリと微笑みながら続ける。
「お礼はちゃんとするから、教えてくれると嬉しいな」
と、更に何枚かの干し肉を取り出し、子供達へ差し出した。
●
「居た。あの子ね」
路地の角から通りの様子を伺う少女を見つけたアヴェラ・ウッチェロは、自らも物陰に身を潜め辺りを観察する。
「一人……いえ、後ろに二人いるわね」
【超聴覚】で音を拾い、アヴェラは角の奥に更に二つの息遣いを感じた。
「今捕まえてもしらを切られるわね。ちょっと気は進まないけど、犯行時を押さえる方が確実ね」
飛び出していけば簡単に捕まえられるだろう。しかし、しらを切られれば目的のモノにたどり着けない可能性がある。
「狙いは――あの露天商かしら」
子供達の視線の先では、何を売っているのかもよくわからない露天商が大欠伸をしていた。
と、少女が動いた。
たたたっと音もなく駆け寄ると、涙目を擦る露天商の死角へと滑り込む。
そして、ぐっと伸びをする露天商の隙をついて、何かの品に手を伸ばした。
「そこまでよ」
しかし、商品を掴んだ少女の手は横から延びた手によって捕まる。
一瞬にして距離を詰めたアヴェラが少女の腕をつかんだのだ。
「は、離してっ!」
「な、なんだ!? お前、何やってんだ!!」
腕を掴まれたまま暴れる少女に、露天商がようやく気付いた。
「このコソ泥が!」
「まだ何も盗ってないわ」
と、少女に拳を振りかざす露天商に、アヴェラは少女から取り戻した品物を渡す。
「こんな所で商売してるのに気を抜く方が悪いわ」
凍てつく様な瞳に見つめられ露天商が小さく悲鳴を上げる。
「命があっただけ良しとしなさい」
そんな露天商にもう一度だけ視線を注ぎ、アヴェラは少女を連れて路地へと消えていった。
●
「へへ、悪いな兄ちゃん」
「なに、安いもんだ」
受け取った硬貨をそそくさと懐にしまった男は、さっさとその場を立ち去った。
「さて、あの路地の先か」
ジル=クィネルは男の去った方角と反対方向の路地に目を遣る。
薄暗く汚れた路地。今にも何か出てきそうな雰囲気がプンプンしている。
「テン、いけるか?」
ジルの問いかけに肩に乗る相棒が小さく鳴く。
「よし、頼んだぞ」
その言葉を合図に、テンは示された路地へと消えていった。
(そうだ。その先だ)
通りの壁に背を預け、ジルはじっと目を閉じた。
エーテルリンクで結ばれた相棒に、ジルは指示を出していく。
(そこを右に折れろ。いいぞ)
閉じた瞼の裏に浮かぶのは、テンが見た路地裏の映像。
(そこだ。上を見ろ)
行き止まりとなった場所から視線を上げる。
丁度2階ほどの高さの場所に、不自然に張り出したところがあった。
(登って中を確認するんだ――よし、やっぱりいやがったな)
テンの瞳に映る人影。アジトの一つだと思われるその場所に3人の子供達が寝ころんでいた。
(よし、テン。軽く尻でも噛んでやれ)
路地裏から悲鳴が聞こえる。
「うまくいったな」
ククと小さく笑い、ジルは移動を開始した。
「うわぁぁっ!」
子供達は突然現れた獣に追い立てられ、路地を駆けてくる。
「おっと、どこへ行く気だ?」
しかし、路地の出口はジルによって塞がれていた。
「あ……」
前方に怖そうな奴。後ろから獣。子供達はどうしていいのかわからず、へたりと座り込む。
「あ、わりぃ。泣かせるつもりはなかったんだ」
ついには泣き出す子供達を見て、ジルはぽりぽりと頭を掻いた。
「なぁ、お前達、腹減ってるだろ?」
そんな子供達に向け、ジルは鞄からパンを取り出す。
「ちょっと探し物しててな。教えてくれたらこれをやるぜ?」
疑いの目と期待の眼。半々の感情が揺れる子供達に、ジルはにっと人好きのする笑顔で微笑んだ。
●
スラム街での聞き込みから、ハインツはようやくそれらしき子供達を見つけた。
しかし、声をかけようと近づいた途端、その子供達は一目散に逃げていく。
「あー、逃げっちゃった。どうしよっかな~。うーん。ま、いっか~」
と、ハインツは逃げていく子供の一人に目をつけると――。
「はいっと」
【捜波】を発動。子供にマーキングを施した。
(ん~、ここかな)
大人では見落としてしまいそうな建物同士の細い隙間の奥から反応を感じ、ハインツが音もなく忍び寄る。
(それじゃ~、いくよ~)
と、大きく息を吸い込むと――。
『おい、もうだいじょうぶだ。あいついなくなったぞ!』
【声帯模写】で別の少年の声を真似て叫んだ。
「ふぅ……怖かった。あのチビ、いったいな――」
――ガシッ
「チビではないんだよね~。ドワーフじゃ、これで普通なんだよ~?」
仲間の声と思ったのか、ひょこっと頭を出したハーフリングの少年の首根っこを掴み、ハインツは穴から引っ張り出す。
「こ、この! だましたな!」
「ふふふ~、ここじゃ騙される方が悪いんでしょ~?」
「くっそぉ!」
じたばたと暴れる少年に、ハインツは話しかける。
「それじゃ、案内してもらおうかな~」
「え、案内?」
「連行の方がいい~?」
と、首をかしげながら問いかけるハインツに、子供たちはぶんぶんと頭を振った。
「そう、じゃ案内してもらえるかな、箱のある場所に」
にっこりと微笑むハインツに、子供たちはさらに頭を振ったのだった。
●
路地の奥、塀に開けられた穴の先から、子供達に息遣いが聞こえる。
「この重さ……金目のものかも!」
「なぁなぁ、開けてみようぜ!」
と、子供達は早速戦利品へと手を伸ばした。
ガサゴソとポーチを漁り、中に詰められているものを取り出していく。
「……紙? なんか変なのかいてあるけど……読めない」
「こっちの紙には模様が描かれてるけど……なんだこれ?」
「紙なんかより、食べ物とかお金は!」
「うーん、無いなぁ」
「えー……ハズレか」
「あら、ハズレとは随分ね」
突然かけられた声に、子供達はびくりと肩をすくませた。
「ふふ……こんにちは」
小柄な体で穴を抜けたヴィノニスが、驚く子供達ににこやかに挨拶する。
「だ、だれだ!」
子供の一人が勇気を振り絞り声を上げた。
「あら、もう忘れたの? さっきあんなに熱い触れ合いをしたのに」
「な、なんだ、触れ合いって……!」
「ふふ……知りたいの?」
びくつく少年の顎をヴィノニスがグイッと持ち上げ、舌を舐めずる。
「教えてあげるわよ? たっぷりと……忘れられなくなるまで、ね」
●
スラムのとある空き家。
長年使われておらずボロボロに傷んだ床の上を、先導する少女の後に続きアヴェラが歩く。
「こんな所に隠したのね」
「う、うん……」
事前の情報収集では判明しなかったアジト。隠していたのか、それとも突発的に使ったのか。
(後者のようね)
床は長年降り積もった埃で覆われていた。
「それで箱は何処なのかしら?」
「え、えっと……怒らない?」
「ええ、怒らないわ。約束する」
怯える少女にアヴェラはニコリと微笑む。
「お、ウッチェロの方が速かったのか」
と、空き家の戸から現れたのは子供達を連れたジルだった。
「今着た所よ。その子達もお仲間?」
「そうみたいだな」
二人が話している間にも、子供達は駆け寄り一塊になる。
「とりあえず、ここにあるみたいよ」
「らしいな――」
「うわぁぁぁーーん!」
と、二人が話しているとまた別の子供達が駆け込んできた。
「な、なんだっ」
「敵襲!」
「違うわよ。私よ」
身構えた二人の元に、やけに艶やかなヴィノニスがやってくる。
「……なんか、めちゃくちゃ怯えてるぞ? 一体何したんだ?」
「別に何も?」
駆けこんだ子供達を見たジルの問いかけに、ヴィノニスは何気なく答えた。
「ここか~……って、先客がいた~」
そんな空き家へ更なる来訪者。子供達を連れたハインツだった。
「みんな! そうか、皆も捕まえたんだねっ」
「なんだ、結局合流か」
最後にララベルとアーテミシアも空き家へと姿を現した。
●
空き家に集められた子供達は、冒険者の見守る中、床の下から例の木箱を引っ張り出す。
「こ、これだよ」
ゴブリンの少年が取り出した箱を、冒険者の前へ差し出した。
「ありがとうな。それじゃ、これは約束の品だ。喧嘩せずに分けるんだぞ」
箱を受け取ったジルは子供達に向け、大量に買い込んであった食料を渡す。
「考えることは皆一緒なのね」
と、アヴェラもパンを差し出すと、それに続き皆が用意した食べ物を次々と子供達へ渡した。
沢山の食べ物に囲まれ目を輝かせる子供達を横目に――。
「それじゃ、開けるわよ」
【探波】で中身を確認し危険はないと判断したアヴェラが、蓋に手をかける。
頑丈な造りの箱がゆっくりと開いた。
「香辛料? の割にはそんな感じの匂いはしないけど」
ヴィノニスのいう様に、箱の中に入っていたのは香辛料かどうかも怪しい黒い粒だった。
「いや、なんかの種だな、これ」
粒の一つを取り上げたアーテミシアが、爪で器用に外皮を剥く。
「種が香辛料? そういうものもあるのかな?」
アーテミシアの手を覗きこみ問いかけるララベル。
「どうだろうな。あるにはあるんじゃねぇか?」
「うーん、違法な品……という訳ではないかな~?」
「流石に判断がつかないわね。もし禁制品とかだったら依頼人を、とも思ってたけど――これは返すしかないかしら」
ハインツの意見に頷いたアヴェラは、再び蓋をそっと閉めた。
冒険者達は箱を回収し終え、空き家を出た。
残った子供達の身を案じる者もいたが、現状を打破しえる妙案は浮かばず、仕事の方向性などのアドバイスをするにとどまる。
ありがとうと何度も頭を下げ手を振る子供達に後ろ髪を引かれつつも、冒険者達はスラム街を後にしたのだった――。
マスターコメント
ショートシナリオ普通 報酬:標準6 / 4〜6人
2020年12月05日 00時04分13秒 公開
相談掲示板
ジルだ。よろしくな。
ウォリアーのアーテミシアだ。宜しくな
僕は、シーフのララベル・サン・ディーベル。 みんな、よろしくね!
ヴィノニスと言います。 ふふ……かわいらしい子供たち。やんちゃしたい年ごろですものね。 少し遊びに付き合ってあげればいいのね? どんな方法で楽しませてくれるのかしら。楽しみね。
シーフのアヴェラよ。よろしくお願いするわ。 ふふ、逃げるなら全力で追うまでだわ。
とりあえず少し進めっか ぶっちゃけ箱を買い取るって言ったら素直に渡しそうだけどな 嵩にかかって値段の吊り上げてくるかもしれねえが。
>買い取る 有効な手だと思うよ、大事な物なのは分かられてしまってるから、ずっと追われるかも?とか話したら、金額交渉も出来るかもと…なので、持ってっちゃった子達が、誰なのかそしてどこに居るのかを特定するのが、肝心かな? >追跡方法 箱のあった場所からの足跡、臭いなどで追う。 その時刻に何かを持って逃げるようにしてた人の、目撃情報を集める…から絞っていけたらかな?(目撃情報は、上手くスラムの人を乗せて話して貰えるコツとかいるのかもだけど)
買い取る方向で進めるの? 値段の吊り上げの可能性もあるのと、今後のためにならないから出来れば盗みは盗みとして懲らしめておいたほうがいいような気がするのよね。 これで味を占めてギャング化されても困るかなって思うのよ。 根本的な原因は貧しさにあるから、その辺りを解消させるような対案を出してあげないと子供たちもなかなかうんとは言わないでしょうけど。 土地勘とか目端が利く点をうまく活用して、簡単な仕事が割り振れればいいかなぁなんて考えているわ。
イチバン手間がかからねえってだけさ 盗みはいけないってキレイゴトでメシが食えるなら、そのガキ連中だってやらねえよ 後腐れのないアイディアがあるならそっちでも構わねえしな。 逃げるのを追いかけるなら当然2・3手に分かれたほうがいいだろうな。 依頼人から街の地図は最低分捕って置いたほうが良さそうだぜ
確かに、買い取りは手っ取り早いけど、ヴィノニスさんの言う通り、味を占める可能性を考えると、 彼らが自ら食べていけるような手段を得られるのがおそらくベストなのよね……。 足を使った運び屋とか、ハーフリングの子達には罠を作れる手先の器用さから簡単な工作系の仕事とかかしら。 一応、捕まえた後、そのあたりを提案してみるわ
追跡方法としちゃララベルがあげてくれてるのが適当かねえ。 スラムってことでそれこそ金を握らせて聞き出すか、 力づくかとか工夫は必要そうだが。