いきなり大団円!!~after~
龍川那月
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シナリオID:257
オープニング
●
冒険者ギルドに所蔵されている報告書の中から手に取った報告書をめくりながら貴方は息を吐く。
(夢の中とはいえ凄い経験だな)
その内容は『夢の中で超大型クリーパーを倒す』というもの。超大型クリーパーといえば、神代の時代にいた強力な授恵者でも数百人規模でなければ対抗できなかった非常に強力な敵だ。そんな敵と戦う機会どころか倒す機会など、どんなに願っても巡り合えるものではない。
(それに、平和な世界か……)
夢の話だから当然なのだが、件のクリーパーが倒された後の世界については書かれていない。だが、今より平和な世界なのだろうことは容易に想像がついた。
晩秋の温かな木漏れ日の元、そんな世界に思いをはせる。
(そんな世界を創った立役者になれたら……)
そのまま貴方はうつらうつらと意識を夢の中へと落としていくのだった。
●
(ここは……)
周囲を見回すとそこはさっきまでいた冒険者ギルドだった。
(いつの間にか寝ていたのか)
そんなことを思いながら、頭を数度振る貴方の元にギルド職員がやってきた。
「そろそろ決まりましたか?」
「あぁ……それが……」
はっきりしてくる頭と共に貴方はここで何をしていたのか思い出した。
超大型クリーパーを倒し、障壁の隙間を完璧に塞ぐことに成功した貴方は、仲間と共に多額の報酬と称賛、そして何でも望みを1つだけ叶えてもらえる権利を得た。ある者はその権利である地方を治める貴族になり、ある者は己の信じる神を布教するため故郷に教会を建てた。そして自分はというと……まだ悩んでいる。
叶えたい望みはある。だが、
「いきなり何でも叶うと言われると困ってしまって……」
「まあ期限があるものじゃないですし、決まったら教えてくださいね」
と言われても、権利を手にしてもう1週間。決めていないのは自分だけだ。
「よし、決めた」
平和になった世界で1つの望みを胸に貴方は口を開いた。
冒険者ギルドに所蔵されている報告書の中から手に取った報告書をめくりながら貴方は息を吐く。
(夢の中とはいえ凄い経験だな)
その内容は『夢の中で超大型クリーパーを倒す』というもの。超大型クリーパーといえば、神代の時代にいた強力な授恵者でも数百人規模でなければ対抗できなかった非常に強力な敵だ。そんな敵と戦う機会どころか倒す機会など、どんなに願っても巡り合えるものではない。
(それに、平和な世界か……)
夢の話だから当然なのだが、件のクリーパーが倒された後の世界については書かれていない。だが、今より平和な世界なのだろうことは容易に想像がついた。
晩秋の温かな木漏れ日の元、そんな世界に思いをはせる。
(そんな世界を創った立役者になれたら……)
そのまま貴方はうつらうつらと意識を夢の中へと落としていくのだった。
●
(ここは……)
周囲を見回すとそこはさっきまでいた冒険者ギルドだった。
(いつの間にか寝ていたのか)
そんなことを思いながら、頭を数度振る貴方の元にギルド職員がやってきた。
「そろそろ決まりましたか?」
「あぁ……それが……」
はっきりしてくる頭と共に貴方はここで何をしていたのか思い出した。
超大型クリーパーを倒し、障壁の隙間を完璧に塞ぐことに成功した貴方は、仲間と共に多額の報酬と称賛、そして何でも望みを1つだけ叶えてもらえる権利を得た。ある者はその権利である地方を治める貴族になり、ある者は己の信じる神を布教するため故郷に教会を建てた。そして自分はというと……まだ悩んでいる。
叶えたい望みはある。だが、
「いきなり何でも叶うと言われると困ってしまって……」
「まあ期限があるものじゃないですし、決まったら教えてくださいね」
と言われても、権利を手にしてもう1週間。決めていないのは自分だけだ。
「よし、決めた」
平和になった世界で1つの望みを胸に貴方は口を開いた。
解説
このシナリオは夢オチシナリオです。
OPでもある様に、超大型クリーパーを倒した報酬として何でも叶う権利が、今あなたの手の中にあります。
(夢の中では今回参加されたPC様が倒したことになっています。超大型クリーパーの姿や戦いの様子にご興味があれば「いきなり大団円!!」を参照して下さい。参照しなくても問題はありません)
なお、夢なので、不老不死や変身能力を得る等、現実世界では不可能なことも叶います。
リプレイは原則個別描写となります。参加者様同士で一緒に行動する場合はその旨プレイングにお書きください。
マスターより
お世話になっております。龍川那月です。
今回は前回のシナリオの後日談になります。
と言っても、直接的な繋がりはありませんので、前回参加されていない方も大丈夫です。
貴方の望みは何ですか?
リプレイ
夢を見る。己が平和にした世界の夢を
●
「くそっ、分かっちゃいたが全く歯が立たないな」
何十度目かの復活を果たしたケン・Z・ブラッドリーは、己の武器を見る。
意識が途切れる瞬間、自分より彼方に吹き飛んでいた刃は綺麗なままの姿でそこにあった。
「ご丁寧に武器やスキルまで戻るってのがいい」
彼が望んだのは、己が倒した黒龍型の超大型クリーパーとの再戦。
実力で倒すことなど無理であることは、前回嫌というほど思い知らされた。それでもケンは再戦を望んだ。
「なんでってそりゃ、この間は俺の実力じゃないからな」
理由を問われたケンの回答は実にシンプルだった。職員はそういうものかと首をかしげていたがそれでもいい。そうケンは思う。
「蘇生以外の加護はつけるなよ? これ以上余計なことすんなら……」
そこから後は、殺気に満ちた彼の目が語る。その様子に職員は肩をすくめるとパチンと指を鳴らした。
一瞬の闇の後、彼は神殿の入り口にいた。
それから何度この景色を見ただろう。炎に焼かれ、爪に切り裂かれ、巨躯につぶされ、尾で柱に叩きつけられ、数えきれない程倒れここに戻された。死ぬ瞬間の痛みも苦しみも覚えている。それでも、ケンの心は折れなかった。
得物を手に持ち黒龍の前に立。
黒龍の攻撃は徐々に見切れるようになってきている。問題は己の攻撃が全く通用しないことだ。しかし、動物の姿を模しているのであれば頭部は他の部位より弱いはず。そう思い、全ての攻撃を頭部に集中させてきた。
「いくぞっ!!」
シーザーロアと衝撃刃を叩きつけ、黒龍の巨躯を駆け上がった。眉間に刃を突き立てる。金属音を立て切っ先がこぼれた。
「まだだっ!」
そのまま、刀身をねじ込む。刹那、黒龍の血が見えた。次の瞬間、身体が地面に叩きつけられる。
気が付くと、神殿の入り口だった。
「さぁて……あれを倒せるようになるまでどれくらいかかるかなぁ……」
傷は付けられた。途方もない時間がかかるかもしれないが、倒せないわけではない。確かな手ごたえを感じながらケンは神殿の中へと再び入っていくのだった。
●
「Talara、絵、描きたい」
「なら、紙と筆、思いっきり描ける場所を……」
しかし、Talaraは首を横に振った。それならばと、貰ったのは数本の筆。
「これで書いている間、貴女は自由ですよ」
何を言われているのかよくわからなかったが、彼女は平和な世界を描きに旅に出た。
「お城、描く」
最初にやってきたのは城下町。Talaraは早速、貰った筆を使ってみることにした。城壁や道に彼女に筆が走り、彩りが生まれていく。暫くすると見回りの憲兵がやってきたが、何も言わずに通り過ぎていった。
「すごい、Talara、止められない」
筆は勢いを増し、くすんだ白に草木の緑が駆け巡った。
「本当、止められなかった……」
満足したTalaraが次のキャンバスと定めたのは深い森の中にある湖のほとりだった。
周囲を見回しながら、筆を取った。
Talaraは知っている。自然は憲兵以上に厳しい。しかし、今日は様子が違う。動物もクリーパーも亜人も襲ってこない。
「森、描く」
嬉しくなって、Talaraは紙に筆を走らせる。すぐに紙は足りなくなり、近くの岩にも筆を走らせていく。
「あ」
勢い余って彩りが湖の方へはみ出してしまった。水には描けない。折角いいものが描けそうだったのに、と思いつつ別の岩に描こうと筆を止める。しかし、水の上の彩りは消えなかった。風が湖面を騒がせても、指で波紋を作っても彩りはそこにあった。
「水、描ける!」
Talaraは嬉しくなって、そのまま湖面に色を描き続けた。
「空、描く!」
Talaraがやってきたのは高い山の上だった。水に描けたのなら空にだって描けるかもしれない。そう思ったのだ。
1度でいいからやってみたかった。広大な空というキャンパスに、抜ける様な青を、ふわりと浮かぶ白を、温かな赤を、全てが眠る黒を、曲線すら美しい虹色を、描いてみたかった。
筆に色を乗せ、すっと空に向かって動かしてみると、そこに一筋の色が生まれる。Talaraの筆と同じ色だ。
Talaraは夢中で描いた。移り行く空に思いつく限りの全ての色を乗せていく。
「どこまでも描く、美しく描く、全部、全部、全部、Talaraの夢!!」
そう、夢。
Talaraは頭の片隅でこれが夢だと気が付いている。空に描くことなど誰にも、何にも出来ない。だから、もう少しだけこの夢が続けばいいとTalaraは祈りながら筆を動かし続けた。
●
「私の願いは、首刈帝クジリンーネ様との手合わせと武の指南です♪」
「クジンリーネ様ですか?」
首をかしげる職員にザンカ・クジンは一族が崇める首刈帝のことを熱く語る。
「わかりました。手合わせ出来ればいいんですね」
そう言うと、職員は円形の闘技場へザンカを案内した。前方にいるのは肖像画で何度も見た首刈帝本人だ。
「まぁ! まぁ! あれこそクジンリーネ様本人です! 本当に手合わせできるなんて! 力及ぶとは思っていませんが、全力で胸を借り、もとい刈りましょう♪ では、よろしくお願いします♪」
ザンカがそう頭を下げた時だった。クジンリーネの姿が消えたのは。
「っ!!」
足元から見舞われる鋭い切り上げ。狙われたのはザンカの首だった。すんでのところで身を逸らしたザンカは刃を構えた。
「そうこなくては!」
跳躍。刹那、鋭い斬撃を帝に振り下ろす。その刃を帝はいとも容易く受け止めた。礼にとばかりに繰り出されるのは横薙ぎの一閃。躱しきれないザンカの腕から血の花が咲く。
無言のまま刃と刃が合わさる音が何度も響く。それは手合わせなどというぬるいものではなかった。2人が狙うは互いの首。それは純粋な殺し合いだった。
「勝つ気のない勝負程つまらなく、失礼なものはありません♪ クジンリーネ様も分かっていらっしゃるんですね♪」
武芸の応酬に乱れる呼吸を整え、もつれる足を叱咤する。今まで積み上げてきた全てをぶつけてもなお首刈帝の首がひどく遠い。
どれほど刃を交えただろうか。疲労のせいか体が重い。全身から流れる血で目の前が揺れる。だが、ザンカは心から楽しそうに笑う。
「あはは! 最高です!! やはり私はまだまだ未熟! お恥ずかしい限りです! ですが! だからこそまだまだ強くなれるはず! さぁ! さぁ! もっと! もっと戦いましょう!」
次の一手を繰り出すべく踏み込んだ瞬間、ザンカの首がふわりと浮いた。
「あら……? 夢……ですか?」
気が付くと、そこは冒険者ギルドだった。確かに離れたはずの首も繋がっている。
「報告書を読んでいる内に寝ちゃったみたいですね」
残念、と肩をすくめザンカは冒険者ギルドを後にする。
(夢だったのは残念ですけど、全て自力で極めるというのもまた……面白い♪)
●
「本当にそれでいいんですか?」
アレン・ボールドウィンの望みを聞いた職員が確認する。
「すんげえ活躍して、歴史に名を遺すってのが俺の野望みたいなもんだったけど、もう達成しちまったしな。今やるべきことは一つだぜ」
へへっと照れたように笑うアレンの顔は誇らしげだ。
「故郷がお好きなんですね」
「俺が冒険者になったのだって、村おこししてぇってのがなかったわけじゃねえからな。で、出来るのか?」
「勿論。というか、その願いならもう叶ってますよ」
職員が一通の封書を差し出す。それはエルフの男性からの手紙だった。
『英雄アレン・ボールドウィンの故郷で育った野菜を食べたら博打で大儲けできました!』
「アレンさんの故郷は世界を救った英雄生誕の地として知らない人はいませんよ。そこで作られている作物もその品質の高さが評判を呼んで、世界中で愛される逸品なんです」
職員の言葉にアレンは市場へ駆け出す。そこにはアレンの故郷で栽培された野菜が所狭しと並んでいた。
「おっ、そこのお兄さん。この【クールでファビュラスでファンタスティックなグッドルッキングオニオン】通称クーグルオニオン、お一つどうだい? これからの時期、独り身は寂しいだろ。この間もクーグルオニオンを食べた若い子が彼氏が出来たってはしゃいでたからね。これを食べれば彼女が出来るかもしれないよ。っと、それはさておいても、クーグルオニオンは、煮てよし焼いてよし生で食べてもよし。あの村の野菜の中でも最高傑作さ。さあ買っとくれ」
店主がそう話しかけてくる。
他にも、どこかの王族が美味しさのあまりもうこの村の野菜しか食べないと言ったとか、ある騎士団がクーグルオニオンを食べていたら凶悪なクリーパーを無傷で撃退出来る程強くなったとか、市場はアレンの村の作物の話題で持ちきりだ。
「よっしゃー!」
喜びのガッツポーズをあげると、そこは冒険者ギルドだった。貰ったはずの手紙も、先程まで話していたギルド職員もいない。
「夢か!!!」
がっくりと肩を落とすアレン。
「ん、でも……これって凄い縁起のいい夢じゃん。もしかして予知夢だったりしてな!!」
そう、きっと予知夢。そう納得してアレンは新しい依頼を探し始めるだった。
●
「おらぁ、と、都会のべっぴんさんだなっで、年の近いお友達さ一緒に、お、お茶飲んで……それから、お馬さんだ似合うスタイル良くてカッコいい王子様とな、仲良ぅなっで、んでな、それから、それから……」
ぐぅぅぅぅぅぅ~~~
指折りつつ願い事を言っていたカンナ 三木の手が止まる。うぅとお腹をさすり、視線を指に戻すとその向こうに数えきれない程たくさんのおにぎりと塊肉が目に入った。その横には泳げるほど大きな鍋に入ったお汁粉に様々な魚料理や色々なホールケーキまで置いてあるではないか。
「こんただ、いっぱいの料理、どうしただ?」
この後宴会でもあるのかと尋ねると、全てカンナのために用意したのだという答えが返って来た。一瞬の間の後、カンナの顔が喜びに輝く。
「だべさぁ!! こんないっぱい食ってええだべさぁ!! 夢みだいだぁ!!!」
飛びつくように両手におにぎりをつかむと、その艶やかな白に歯を入れる。噛んだ瞬間、ほろっと解けていく米。米の甘さと塩のしょっぱさが絶妙に融合した味に舌が震える。
「んんっ! こんだにお塩きいたおぬぎり、田植えの時しか食えねぇだぁ! それにこんなにも!! おら幸せもんだぁ……」
おにぎりを口へと運んでいく手が止まらない。そんな彼女の手が次に伸びたのは肉だった。もう一方の手は引き続きおにぎりに伸びていたが。
泉のようにとめどなく溢れてくる肉汁が、下にある鉄板で美味しそうな音をたてている。カンナはその塊肉にフォークを突き刺した。柄を通して伝わってくる弾力が彼女をさらに破顔させる。かぶりつくと、筋のない柔らかな肉は確かな噛み応えを残しつつすんなりと受け入れてくれる。そして広がる多量の肉汁と旨味。噛めば噛むほど広がる肉の味に頬が緩んでいく。
(魚も食わんと!)
衝動的に湧き上がる使命感にも似た感情に突き動かされるまま魚料理を口に頬張る。そこからは無我夢中だった。おにぎり、おにぎり、肉、おにぎり、魚、おにぎり、肉……。衝動のままに食べ続ける。
「んだぁぁ……こんなくっでえぇだなんで……いわれだことなん一度もねぇべ……おいしいだぁぁ……」
舌馴染みのいい庶民的な味わいに、都会でも味付けは変わらないんだなと思いながら、カンナはデザートへと進む。
汁粉を椀に盛り、ホールケーキを引き寄せる。
故郷では塩以上に貴重だった甘味が大量に目の前にある。全てカンナのものだ。
イチゴの乗ったケーキを口に入れてみる。しっとりとした生地に、濃厚な甘さのクリームとイチゴのほのかな酸味が口の中に広がる。
「都会生まれだとこんなおいしいものみんな食ってるんだなぁ……うらやましいだぁ……けんど、こんなに食べれるのはおらだけなんだべ………」
うっとりしながら食べ進める。食べても食べてもなくならないご馳走を前にカンナは幸せだった。
ぐぅぅぅぅぅぅ~~~
何故、お腹が鳴るのだろう。そう思って瞬きをするとご馳走が消えていた。目の前にあるのは自分の涎で出来た水たまりだけ。
「んだ……。夢だったべか?……あんだけ食ったのに、お腹全然いっぱいになってないだ……絵に描いた餅ってやつだべ………」
がっくり肩を落とすカンナ。彼女の悲しさを表すようにもう一度お腹が大きくなった。
●
「どんな願いでも一つだけ叶う……かぁ。うーん、あ、そうだ! この私の大活躍を冒険譚の歌にするってのはどう?」
ピコーン☆と頭の上に電球が浮かんだニーラ・メッコが指を立てる。
「それでね、吟遊詩人が何年も何年も語り継ぐのよ! そう! 伝説のエルフの勇者! ニーラ・メッコの物語をね!」
それは名案ですね、と早速職員が連れてきた吟遊詩人を前にニーラは冒険譚を語り始めた。
「超大型クリーパーとはどんな戦いを繰り広げられたのですか?」
物語を書き留めながら吟遊詩人が尋ねる。
「何度も何度も『もうダメだぁ』と思いかけたけどー、『世界のみんなの笑顔を守るため!』と思ったらなんだか急に力が湧いちゃってみんなの心がひとつになった感じ? それでバーン☆ってやって、ドーン☆ってやったら、勝てちゃったんだよねぇ」
吟遊詩人は感動にむせび泣きながらうんうんと頷く。
「歌にするだけではもったいない。私の友人に劇作家がおります。その者にこの話を伝えてもよろしいでしょうか」
「演劇? もちろん、いいわよ」
「ありがとうございます。きっと感動の嵐が吹き荒れるでしょう」
吟遊詩人の言葉通り、ニーラの冒険譚を題材にした演劇は大成功を迎え、冒険譚が世界中に広まるとともに、劇も各地で上演されるようになった。
「キャー! ニーラ様よ!! 握手してー!!」
「ニーラ様! サインください!!」
英雄ニーラを一目見ようと旅先ではいつも黒山の人だかりが出来、取材依頼の嵐が起きる。
「講演?」
「はい、ニーラ様から直接話を聞きたいって人をいっぱいいると思うんです」
「いやぁ、そうかなぁ……」
はははと笑うニーラに相手は絶対そうだ、と真剣な顔で頷いた。
「それなら旅を続けながら出来ますし、どうでしょうか?」
そう言う旅もいいなぁとニーラはこれからの道中に夢を膨らませる。
(……!)
何かの気配を察知してニーラは周りを見回した。ニーラに毛布をかけようとしていた職員が驚いた表情をしている。
「……やっぱり夢オチじゃない!」
貰った水を飲んで落ち着いたニーラは机をどんと叩いた。こんなことが最近あった気がする。いや、それはもういい。済んだことだ。
「でも、それならそれで、もっといい夢見させてくれてもいいじゃない!!」
ニーラの叫びが冒険者ギルドに響いた。
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「くそっ、分かっちゃいたが全く歯が立たないな」
何十度目かの復活を果たしたケン・Z・ブラッドリーは、己の武器を見る。
意識が途切れる瞬間、自分より彼方に吹き飛んでいた刃は綺麗なままの姿でそこにあった。
「ご丁寧に武器やスキルまで戻るってのがいい」
彼が望んだのは、己が倒した黒龍型の超大型クリーパーとの再戦。
実力で倒すことなど無理であることは、前回嫌というほど思い知らされた。それでもケンは再戦を望んだ。
「なんでってそりゃ、この間は俺の実力じゃないからな」
理由を問われたケンの回答は実にシンプルだった。職員はそういうものかと首をかしげていたがそれでもいい。そうケンは思う。
「蘇生以外の加護はつけるなよ? これ以上余計なことすんなら……」
そこから後は、殺気に満ちた彼の目が語る。その様子に職員は肩をすくめるとパチンと指を鳴らした。
一瞬の闇の後、彼は神殿の入り口にいた。
それから何度この景色を見ただろう。炎に焼かれ、爪に切り裂かれ、巨躯につぶされ、尾で柱に叩きつけられ、数えきれない程倒れここに戻された。死ぬ瞬間の痛みも苦しみも覚えている。それでも、ケンの心は折れなかった。
得物を手に持ち黒龍の前に立。
黒龍の攻撃は徐々に見切れるようになってきている。問題は己の攻撃が全く通用しないことだ。しかし、動物の姿を模しているのであれば頭部は他の部位より弱いはず。そう思い、全ての攻撃を頭部に集中させてきた。
「いくぞっ!!」
シーザーロアと衝撃刃を叩きつけ、黒龍の巨躯を駆け上がった。眉間に刃を突き立てる。金属音を立て切っ先がこぼれた。
「まだだっ!」
そのまま、刀身をねじ込む。刹那、黒龍の血が見えた。次の瞬間、身体が地面に叩きつけられる。
気が付くと、神殿の入り口だった。
「さぁて……あれを倒せるようになるまでどれくらいかかるかなぁ……」
傷は付けられた。途方もない時間がかかるかもしれないが、倒せないわけではない。確かな手ごたえを感じながらケンは神殿の中へと再び入っていくのだった。
●
「Talara、絵、描きたい」
「なら、紙と筆、思いっきり描ける場所を……」
しかし、Talaraは首を横に振った。それならばと、貰ったのは数本の筆。
「これで書いている間、貴女は自由ですよ」
何を言われているのかよくわからなかったが、彼女は平和な世界を描きに旅に出た。
「お城、描く」
最初にやってきたのは城下町。Talaraは早速、貰った筆を使ってみることにした。城壁や道に彼女に筆が走り、彩りが生まれていく。暫くすると見回りの憲兵がやってきたが、何も言わずに通り過ぎていった。
「すごい、Talara、止められない」
筆は勢いを増し、くすんだ白に草木の緑が駆け巡った。
「本当、止められなかった……」
満足したTalaraが次のキャンバスと定めたのは深い森の中にある湖のほとりだった。
周囲を見回しながら、筆を取った。
Talaraは知っている。自然は憲兵以上に厳しい。しかし、今日は様子が違う。動物もクリーパーも亜人も襲ってこない。
「森、描く」
嬉しくなって、Talaraは紙に筆を走らせる。すぐに紙は足りなくなり、近くの岩にも筆を走らせていく。
「あ」
勢い余って彩りが湖の方へはみ出してしまった。水には描けない。折角いいものが描けそうだったのに、と思いつつ別の岩に描こうと筆を止める。しかし、水の上の彩りは消えなかった。風が湖面を騒がせても、指で波紋を作っても彩りはそこにあった。
「水、描ける!」
Talaraは嬉しくなって、そのまま湖面に色を描き続けた。
「空、描く!」
Talaraがやってきたのは高い山の上だった。水に描けたのなら空にだって描けるかもしれない。そう思ったのだ。
1度でいいからやってみたかった。広大な空というキャンパスに、抜ける様な青を、ふわりと浮かぶ白を、温かな赤を、全てが眠る黒を、曲線すら美しい虹色を、描いてみたかった。
筆に色を乗せ、すっと空に向かって動かしてみると、そこに一筋の色が生まれる。Talaraの筆と同じ色だ。
Talaraは夢中で描いた。移り行く空に思いつく限りの全ての色を乗せていく。
「どこまでも描く、美しく描く、全部、全部、全部、Talaraの夢!!」
そう、夢。
Talaraは頭の片隅でこれが夢だと気が付いている。空に描くことなど誰にも、何にも出来ない。だから、もう少しだけこの夢が続けばいいとTalaraは祈りながら筆を動かし続けた。
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「私の願いは、首刈帝クジリンーネ様との手合わせと武の指南です♪」
「クジンリーネ様ですか?」
首をかしげる職員にザンカ・クジンは一族が崇める首刈帝のことを熱く語る。
「わかりました。手合わせ出来ればいいんですね」
そう言うと、職員は円形の闘技場へザンカを案内した。前方にいるのは肖像画で何度も見た首刈帝本人だ。
「まぁ! まぁ! あれこそクジンリーネ様本人です! 本当に手合わせできるなんて! 力及ぶとは思っていませんが、全力で胸を借り、もとい刈りましょう♪ では、よろしくお願いします♪」
ザンカがそう頭を下げた時だった。クジンリーネの姿が消えたのは。
「っ!!」
足元から見舞われる鋭い切り上げ。狙われたのはザンカの首だった。すんでのところで身を逸らしたザンカは刃を構えた。
「そうこなくては!」
跳躍。刹那、鋭い斬撃を帝に振り下ろす。その刃を帝はいとも容易く受け止めた。礼にとばかりに繰り出されるのは横薙ぎの一閃。躱しきれないザンカの腕から血の花が咲く。
無言のまま刃と刃が合わさる音が何度も響く。それは手合わせなどというぬるいものではなかった。2人が狙うは互いの首。それは純粋な殺し合いだった。
「勝つ気のない勝負程つまらなく、失礼なものはありません♪ クジンリーネ様も分かっていらっしゃるんですね♪」
武芸の応酬に乱れる呼吸を整え、もつれる足を叱咤する。今まで積み上げてきた全てをぶつけてもなお首刈帝の首がひどく遠い。
どれほど刃を交えただろうか。疲労のせいか体が重い。全身から流れる血で目の前が揺れる。だが、ザンカは心から楽しそうに笑う。
「あはは! 最高です!! やはり私はまだまだ未熟! お恥ずかしい限りです! ですが! だからこそまだまだ強くなれるはず! さぁ! さぁ! もっと! もっと戦いましょう!」
次の一手を繰り出すべく踏み込んだ瞬間、ザンカの首がふわりと浮いた。
「あら……? 夢……ですか?」
気が付くと、そこは冒険者ギルドだった。確かに離れたはずの首も繋がっている。
「報告書を読んでいる内に寝ちゃったみたいですね」
残念、と肩をすくめザンカは冒険者ギルドを後にする。
(夢だったのは残念ですけど、全て自力で極めるというのもまた……面白い♪)
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「本当にそれでいいんですか?」
アレン・ボールドウィンの望みを聞いた職員が確認する。
「すんげえ活躍して、歴史に名を遺すってのが俺の野望みたいなもんだったけど、もう達成しちまったしな。今やるべきことは一つだぜ」
へへっと照れたように笑うアレンの顔は誇らしげだ。
「故郷がお好きなんですね」
「俺が冒険者になったのだって、村おこししてぇってのがなかったわけじゃねえからな。で、出来るのか?」
「勿論。というか、その願いならもう叶ってますよ」
職員が一通の封書を差し出す。それはエルフの男性からの手紙だった。
『英雄アレン・ボールドウィンの故郷で育った野菜を食べたら博打で大儲けできました!』
「アレンさんの故郷は世界を救った英雄生誕の地として知らない人はいませんよ。そこで作られている作物もその品質の高さが評判を呼んで、世界中で愛される逸品なんです」
職員の言葉にアレンは市場へ駆け出す。そこにはアレンの故郷で栽培された野菜が所狭しと並んでいた。
「おっ、そこのお兄さん。この【クールでファビュラスでファンタスティックなグッドルッキングオニオン】通称クーグルオニオン、お一つどうだい? これからの時期、独り身は寂しいだろ。この間もクーグルオニオンを食べた若い子が彼氏が出来たってはしゃいでたからね。これを食べれば彼女が出来るかもしれないよ。っと、それはさておいても、クーグルオニオンは、煮てよし焼いてよし生で食べてもよし。あの村の野菜の中でも最高傑作さ。さあ買っとくれ」
店主がそう話しかけてくる。
他にも、どこかの王族が美味しさのあまりもうこの村の野菜しか食べないと言ったとか、ある騎士団がクーグルオニオンを食べていたら凶悪なクリーパーを無傷で撃退出来る程強くなったとか、市場はアレンの村の作物の話題で持ちきりだ。
「よっしゃー!」
喜びのガッツポーズをあげると、そこは冒険者ギルドだった。貰ったはずの手紙も、先程まで話していたギルド職員もいない。
「夢か!!!」
がっくりと肩を落とすアレン。
「ん、でも……これって凄い縁起のいい夢じゃん。もしかして予知夢だったりしてな!!」
そう、きっと予知夢。そう納得してアレンは新しい依頼を探し始めるだった。
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「おらぁ、と、都会のべっぴんさんだなっで、年の近いお友達さ一緒に、お、お茶飲んで……それから、お馬さんだ似合うスタイル良くてカッコいい王子様とな、仲良ぅなっで、んでな、それから、それから……」
ぐぅぅぅぅぅぅ~~~
指折りつつ願い事を言っていたカンナ 三木の手が止まる。うぅとお腹をさすり、視線を指に戻すとその向こうに数えきれない程たくさんのおにぎりと塊肉が目に入った。その横には泳げるほど大きな鍋に入ったお汁粉に様々な魚料理や色々なホールケーキまで置いてあるではないか。
「こんただ、いっぱいの料理、どうしただ?」
この後宴会でもあるのかと尋ねると、全てカンナのために用意したのだという答えが返って来た。一瞬の間の後、カンナの顔が喜びに輝く。
「だべさぁ!! こんないっぱい食ってええだべさぁ!! 夢みだいだぁ!!!」
飛びつくように両手におにぎりをつかむと、その艶やかな白に歯を入れる。噛んだ瞬間、ほろっと解けていく米。米の甘さと塩のしょっぱさが絶妙に融合した味に舌が震える。
「んんっ! こんだにお塩きいたおぬぎり、田植えの時しか食えねぇだぁ! それにこんなにも!! おら幸せもんだぁ……」
おにぎりを口へと運んでいく手が止まらない。そんな彼女の手が次に伸びたのは肉だった。もう一方の手は引き続きおにぎりに伸びていたが。
泉のようにとめどなく溢れてくる肉汁が、下にある鉄板で美味しそうな音をたてている。カンナはその塊肉にフォークを突き刺した。柄を通して伝わってくる弾力が彼女をさらに破顔させる。かぶりつくと、筋のない柔らかな肉は確かな噛み応えを残しつつすんなりと受け入れてくれる。そして広がる多量の肉汁と旨味。噛めば噛むほど広がる肉の味に頬が緩んでいく。
(魚も食わんと!)
衝動的に湧き上がる使命感にも似た感情に突き動かされるまま魚料理を口に頬張る。そこからは無我夢中だった。おにぎり、おにぎり、肉、おにぎり、魚、おにぎり、肉……。衝動のままに食べ続ける。
「んだぁぁ……こんなくっでえぇだなんで……いわれだことなん一度もねぇべ……おいしいだぁぁ……」
舌馴染みのいい庶民的な味わいに、都会でも味付けは変わらないんだなと思いながら、カンナはデザートへと進む。
汁粉を椀に盛り、ホールケーキを引き寄せる。
故郷では塩以上に貴重だった甘味が大量に目の前にある。全てカンナのものだ。
イチゴの乗ったケーキを口に入れてみる。しっとりとした生地に、濃厚な甘さのクリームとイチゴのほのかな酸味が口の中に広がる。
「都会生まれだとこんなおいしいものみんな食ってるんだなぁ……うらやましいだぁ……けんど、こんなに食べれるのはおらだけなんだべ………」
うっとりしながら食べ進める。食べても食べてもなくならないご馳走を前にカンナは幸せだった。
ぐぅぅぅぅぅぅ~~~
何故、お腹が鳴るのだろう。そう思って瞬きをするとご馳走が消えていた。目の前にあるのは自分の涎で出来た水たまりだけ。
「んだ……。夢だったべか?……あんだけ食ったのに、お腹全然いっぱいになってないだ……絵に描いた餅ってやつだべ………」
がっくり肩を落とすカンナ。彼女の悲しさを表すようにもう一度お腹が大きくなった。
●
「どんな願いでも一つだけ叶う……かぁ。うーん、あ、そうだ! この私の大活躍を冒険譚の歌にするってのはどう?」
ピコーン☆と頭の上に電球が浮かんだニーラ・メッコが指を立てる。
「それでね、吟遊詩人が何年も何年も語り継ぐのよ! そう! 伝説のエルフの勇者! ニーラ・メッコの物語をね!」
それは名案ですね、と早速職員が連れてきた吟遊詩人を前にニーラは冒険譚を語り始めた。
「超大型クリーパーとはどんな戦いを繰り広げられたのですか?」
物語を書き留めながら吟遊詩人が尋ねる。
「何度も何度も『もうダメだぁ』と思いかけたけどー、『世界のみんなの笑顔を守るため!』と思ったらなんだか急に力が湧いちゃってみんなの心がひとつになった感じ? それでバーン☆ってやって、ドーン☆ってやったら、勝てちゃったんだよねぇ」
吟遊詩人は感動にむせび泣きながらうんうんと頷く。
「歌にするだけではもったいない。私の友人に劇作家がおります。その者にこの話を伝えてもよろしいでしょうか」
「演劇? もちろん、いいわよ」
「ありがとうございます。きっと感動の嵐が吹き荒れるでしょう」
吟遊詩人の言葉通り、ニーラの冒険譚を題材にした演劇は大成功を迎え、冒険譚が世界中に広まるとともに、劇も各地で上演されるようになった。
「キャー! ニーラ様よ!! 握手してー!!」
「ニーラ様! サインください!!」
英雄ニーラを一目見ようと旅先ではいつも黒山の人だかりが出来、取材依頼の嵐が起きる。
「講演?」
「はい、ニーラ様から直接話を聞きたいって人をいっぱいいると思うんです」
「いやぁ、そうかなぁ……」
はははと笑うニーラに相手は絶対そうだ、と真剣な顔で頷いた。
「それなら旅を続けながら出来ますし、どうでしょうか?」
そう言う旅もいいなぁとニーラはこれからの道中に夢を膨らませる。
(……!)
何かの気配を察知してニーラは周りを見回した。ニーラに毛布をかけようとしていた職員が驚いた表情をしている。
「……やっぱり夢オチじゃない!」
貰った水を飲んで落ち着いたニーラは机をどんと叩いた。こんなことが最近あった気がする。いや、それはもういい。済んだことだ。
「でも、それならそれで、もっといい夢見させてくれてもいいじゃない!!」
ニーラの叫びが冒険者ギルドに響いた。
マスターコメント
ご参加とプレイング、誠にありがとうございました。
皆様の願いが現実で叶う日をお祈りしながら書かせていただきました。
少しでもご満足いただける内容になっていれば幸いです。
ショートシナリオ易しい 報酬:無し6 / 4〜6人
2020年12月10日 15時33分31秒 公開
大成功
相談掲示板
特に相談することがあるかわからんがとりあえず ウォーリアーのケンだ よろしくな
ん、ウォーリア、Talara。 挨拶、大事。よろしく。
んだぁ、おらぁカンナ ミツキっでいうだぁ
キャスターのニーラ・メッコです。 よろしくね! なにをお願いしようかなぁ。
アレン・ボールドウィンだ。よっしくな。
ごめんなさいね! ご挨拶が遅れてしまいました! というかギリギリですね♪ ザンカ・クジンと申します♪ どうぞよろしくね!