【死軍】託すもの
京乃ゆらさ
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シナリオID:240
オープニング
『この砦をもって、死者の兵団を撃滅する』
ヴァイセントラフ砦の方針は、そのように定まった。相手の足は遅く、たどり着くまでにはまだしばらくの猶予があるだろう。しかし、難民でごった返す今の砦が戦えるようになるのと奴らの到着のどちらが早いか、いまだに予断を許さぬ状況だった。
冒険者ギルドにもすぐに依頼がならびはじめる。敵を探るもの、敵を減らすもの、味方の支援を行うもの。冒険者の対応力の高さを示すような、多種多様な依頼が。
●【急募】志願者を志願させない方法
「――要するに、貴方たちには敵軍が姿を現す前に砦から避難してもらいたいんです」
着ている服も様々な小集団を相手に説明しているのは、帝国軍下士官ウィルオル・サマネッリ。しっかりと落ち着いた低音の声色とは裏腹に、青年下士官の表情は両方の眉尻が下がってひどく情けない。
しかしそれも仕方のないことなのかもしれない。何故なら、
「だーから何で俺らが避難しないといけねぇ!? 俺も戦うっつってんだ! 志願兵も募集してんだろ!? だったらいいじゃねぇか!!」
「いや、確かに募集してますが……」
「じゃあいいじゃねぇか! 戦って、戦って、もしそれでおっ死んでも文句なんざ言わねぇしよ。なぁみんな!?」
「おう! 何がいけねぇんだ!!」
「ですからさっき説明したように、志願者全員を採用するにはこの砦が狭すぎるのが一点、そして貯蔵してある武具の数の問題が一点、他にも……」
「知るか! そいつをどうにかすんのが軍の役割だろ!」
「えぇぇ……」
戦意の高すぎる避難民を抑える命令を受けたからだ。
もちろん志願者全員を組織して戦えるのが最善だ。が、そんなことができるのは時間と空間と装備と金と食糧と指揮する人員と、いざという時に退却できる余裕がある場合くらいであろう。
訓練期間が一週間足らずで、狭い砦に篭らざるを得ず、予備の装備が十全でない現状では、志願者といえども無制限に採用すると混乱して逆に戦力が低下しかねない。
そもそも今ウィルオルの前にいる小集団の中には細工師や機織り職人、パン職人等、戦争にはあまり役に立たぬが帝国の文化を担う者たちが交じっているとの話。一般人を選別するのはあまりよろしくないとはいえ、できれば避難を優先してもらいたい人々だった。
(とんだ貧乏くじを引かされた……)
上からの命令とはかくも理不尽なものなのである。
ウィルオルは意気軒昂に詰め寄ってくる避難民たちをどうにか両手で抑える一方で、必死に考えを巡らせる。
巡らせて、巡らせて、巡らせて――ウィルオル史上最も知恵を絞り尽くした結果、
「…………、じ、実は貴方たちには後方支援をお願いしたいんです……」
彼は、命令の遂行を諦めた。
冒険者たちが砦の一角を通りかかったところ、とある一室から妙な熱気が流れ込んでくるのを感じた。
今の砦は数万のゾンビどもとの戦いを前に盛り上がっている場所も少なくないが、その熱気とも少し違う。何かこう、村人総出で葡萄を収穫して歌いながらフミフミしている時のような、収穫祭で串焼きを売る時のような、そんな熱気だ。
(何をしているんだ?)
ふと疑問に思い、なんとなくそちらの方へ向かってみた冒険者たちは、拒絶する間もなくその熱気に巻き込まれることになった。
「だッ、助げでぐだざあああああああああああああああああああああああ!!!?」
恥も外聞もなくがばぁっと脚に縋りついてきた青年下士官によって……。
●思いを託す
「つまり、彼らを抑える為に物作りを手伝ってほしいと」
説明された冒険者が問うと、未だにべそべそと半泣きの――よほどストレスを溜めているのだろうか――ウィルオル青年が頷く。
「物作りだけじゃなくていいんです。とにかく、せめて前線に行かないように抑えられれば……」
「砦から退避させるのは諦めたが、最低限ここに留めたいということか」
「はい。俺のクビ、かかってます」
切実であった。
(不憫な……)
そう同情したりしなかったりした冒険者たちは、ひとまず何ごとか考えてみた。
思いのたけを吐き出してもらいながら、お守りやら何やらを一緒に作るのはいいかもしれない。鏃の整備のように、備品のメンテナンスを頼むのもアリかもしれない。砦の空堀よりさらに外に落とし穴を掘ってもらう、いや防衛として考えれば投擲用の石を探してもらうだけでも有用か?
役に立っている感が重要、なのだろうか。
逆に何かしらの手段で平時を思い出してもらうのも手かもしれない。落ち着いてしまえば誰も好き好んで戦闘に巻き込まれたくはないだろう。
幾つかの方向性は浮かぶが、なかなか面倒、いや疲れる、もとい難しそうな問題であった。そして何より、
「お願いじまずぅぅうぅ……ッ!!」
問題を解決するべきウィルオル青年こそが、面倒なことになっていた。
(今なら前線に放り込んだら嬉々として戦い死んでいきそうだな)
ともあれ細々とした作業を一般人に手伝ってもらうのは砦としても助かるだろう。
それにお守り等のように託される思いを形として持っておけば兵の被害も少しは減るかもしれない。最後の最後、死力を尽くす時に独力で立ち上がることができる者ばかりではないのだから。
そう考えるとこの場には託すべきものがあるのではないか。
冒険者たちは不運な青年下士官を見つめ、どうすべきか考えることになった。
解説
マスターより
リプレイ
「やるからには、キミ達、作業に基準を設けよう」
手を叩いたベゴニアが告げたのは、人々を地獄に叩き落す言葉だった。
熱意を傾ける先を求めていた人々に作業をしてもらう事に決めた冒険者達。お守り製作、パン製作、備品整備、防衛強化の4班に分かれて和やかに始めんとしていた矢先にこれを言えるのは、教職経験のおかげかもしれない。
「お守りは500、パンは帝国軍標準糧食準拠で1000」
「!?」
「備品整備は倉庫3つ、石は2000だ」
「!?!?」
声なき悲鳴と惑うような何十の視線に曝され、ベゴニアはしたり顔で指を立てる。
「これはキミ達が望んだ事だよ。キミ達が後方を支え、私達が前で戦う。そういう話だ。なに、眠らなければ達成できるよ」
「無茶な!」
「無茶というのは嘘なんだよ。さぁ時間がない、始めよう!」
長杖を一息に振り下すベゴニア。がぁんと大音量が響くや、硬直が解けたように人々が動き出す。誰もが熱意と焦燥を浮かべているのを見、ベゴニアは秘かに口角を緩めた。
(限界まで努力してこそ達成感を得られる。彼らに必要なのはそれだ)
飴と鞭の鞭役を担う。心は痛むが立派に務めようではないか。と決意を固めているとセツリと目が合った。
(心配させたようだね。まぁ問題ないよ)
微笑すれば、彼女は目礼して周囲に言う。
「皆さん、これも戦いです。戦いとは敵が来る前から始まっているのですよ」
「ッ!? そ、そういう事か!」
元々戦意旺盛な彼らだけに、これで盛り上がらない筈がない。
セツリの援護に感謝しながらベゴニアは薄い胸を張り、退室していくウィルオルに声をかけた。
「ウィルオルさん、キミの将来はこれに懸かっている。解っているね?」
「はい……」
哀愁漂う背中に、ベゴニアはかつての自分を見た。
●求道者
「なんだなんだ、避難民を抱えていると聞いて食糧を持ってきたのに、活気があって結構じゃないか」
ガッコウは酒やチーズ等を詰め込んだ背嚢を背負いウィルオルと砦各所を回っていた。
「まぁ……。活気ありすぎる人もいますけど」
「泣き喚くよりはずっと良い。それに帝国が慕われている証だろう」
はは、と渇いた笑みを浮かべる青年にはガッコウも同情せざるを得ない。
「だといいですが……と、失礼します!」
ウィルオルが作業に必要な素材と道具を輜重係に申請する。欲しいのは布切れ等の余り物だけに大した確認もない。
備品係に案内された先で物を漁りつつ、ガッコウは声をかけた。
「上は彼らが戦いたがっていると知っていたのではないか。そして困難であるが故にお前さんに任せた」
「え。俺、厄介払い?」
「違う。こんな砦に務め、難しい仕事を任される。責任感を買われてる証拠さ」
「うぅーん……」
(納得しないか)
首を捻る青年を見てガッコウは手段を変えてみる。
「お前さんは何故帝国軍に?」
「え、まぁ……あー、帝国って実力主義なんですけど」
「ああ」
「何か出世できそうじゃないですか。それで。まぁこんなんなったんですけど」
どうも根が深そうだ。せめて自由に吐き出せる場でもあればいいのだが。
必要な素材を荷台に入れ、各班の許へ向かう。途中、ガッコウは連絡用らしきビッグオウムが到着しているのを見かけた。そちらへ寄る。
「すまないが砦内部の配達にそいつは使えるか?」
「無理だ。運航予定が詰まっている」
「それもそうか……」
空を自由に駆る大鳥は戦いの前こそ多忙を極める。ガッコウは礼を言い、瞑目して深呼吸すると鋭く息を吐いた。
「走るぞ、ウィルオル! 俺達の到着を皆が待ってる」
「うぇぇ!?」
●歌うたい
妙に息の荒いガッコウらを見送り、レティシア・レインフィールは細工師に向き直った。
「お守り、とは決まりましたけれど、どのような物がよろしいのでしょうか」
木箱には布切れや木切れ、糸、針、筆等が入っている。それを机に置くとイナシャは腕を組み、
「どんな模様が良いか、意見はあるかい?」
「どんな、ねぇ」
人々は顔を見合せ首を捻る。当然だ。細工の着想は普段目にする物の量と質で決まる。故にレティシアは「僭越ながら」と口火を切る事にした。
「布や板に花を描くのは如何でしょう」
「花?」
「えぇ。できればこの辺りで希望だとか勝利だとか、良い謂れのある花を」
「なるほどね。希望、勝利。あと貴方を守る、困難に打ち克つなんて花もあるよ。水辺に群生してる黄色いのさ」
「あぁ、あの小さい!」
イナシャが説明すると奥様方が盛り上がる。それ程に身近で、且つ良い謂れの花なら丁度良いだろう。
レティシアは早速イナシャに花の絵を描いてもらい、それを参考に布に刺繍していく。
気付けば周囲も静かに刺繍や絵を始めており、中でもイナシャなど既に3つ目に取り掛かっていた。見れば彼女のそれは精緻にして鮮烈で、こんなに差が出るのかと唖然としてしまう。
(淑女の嗜み程度では敵いませんね。せめて心を込めて……皆様の力になるように)
もしかしたら兵が最期に見るのがお守りかもしれない。誰にも死んでほしくはないけれど、避けられぬ死があるのなら、せめて最期を心安らかに迎えてほしい。
戦いの最中に難しい事も、解っているけれど。
「それは豊穣の歌だね?」
突然訊かれ、初めてレティシアは自分が歌を口ずさんでいた事に気付いた。
「え、えぇ。失礼致しました」
「いや、いいさ。そうか……もう秋も終りなんだねぇ」
ぽつりと零すイナシャの横顔は哀切に満ちている。レティシアは手元に視線を落し、針を刺しつつ提案した。
「作業しながら皆様で歌いましょうか。きっと捗ります」
砦の一角に歌が響く。収穫を祝い愛を育む優しい歌が。
●悪巧み
穏やかに作業が進む班があれば碌でもない班もある。それがアレン・ボールドウィンの加わった備品整備班だ。
「おうい、追加持ってきたぞ!」
「助かる。左の樽は点検した分だ、持ってけい!」
「おう! お、すげえ溜まってんじゃねえか!」
「そんくれえ朝飯前よ、ガハハ!」
「爺さん! 喋ってないで指示くれ!」
「何だ、アレン!?」
いや碌でもない訳ではない。作業自体は進んでいる。いるが……。
「今度は盾だ! 裏の革が剥がれかけてる。こっち来てくれ!」
アレンが叫んで倉庫奥にロディコを呼び寄せる。爺がそちらへ向かうと、盾の陰に隠れるように中腰になって盾を見る――フリをした。
アレンが囁く。
「で、どうよ。実はガッコウ辺りにも声かけてる」
「だがベゴニアの嬢ちゃんが許してくれるか?」
「あ? おいおい爺さん、隠れて飲むからいいんだろ」
いかにも悪ガキ臭い笑みをアレンが意識して浮かべると、ロディコは堪え切れぬように喉奥で笑った。
「誰に物言ってやがる、小僧。なら俺も声かけてくらぁ!」
片手を上げて去る酒飲みの背は少しばかり侠気を感じる。アレンは負けじと男気を見せるべく声を張った。
「どうしても歪んで戻らねぇ鏃は持ってきてくれ! この俺の力を見せてやるぜ!」
作業と共に悪巧みも進む。
そして秘事とは心の垣根を取っ払ってくれるのだ。
●本心
セツリはホルツの指導を受けながら黙々と生地を捏ねていた。
パン作りの難易度には様々な要因があろうが、今この場で最も困難な原因となっているのは――量だ。単純に量が多い。あまりに恐ろしい難敵であった。
「水とバターは少なめに。塩、砂糖、ナッツで変化を付けていきましょう」
「はい」
捏ねる。捏ねる。捏ねる。
捏ね捏ね捏ねる捏ね捏ねる。
こねこねこねこねこねこねこねこ!
「も、もういいです! 暫く置きますよ」
「はい」
一心不乱に捏ねていたら制止された。セツリは生地を寝かせる間に休憩――ではなく酒の肴を作ろうと考える。先程来たガッコウらに打診されたし、気分転換にも丁度良かった。
手軽に芋の香草炒めと油茹で、野菜の柑橘漬けくらいか。
片手間に作り終えた時には生地も良い頃合いで、セツリは指示に従い着々と作っていく。
生地を捏ね、整形し、焼成。捏ね、整形し、焼成。いつになっても終らぬ作業を続ける傍ら、ぽつりと口を開いた。
「ホルツさんは毎日これを続けてこられたのですね」
「……えぇ。大変でしたが、良い日々でした」
「部外者にご教示いただき、ありがとうございます」
我知らず尾が揺れた。専門家に教えを請える機会など、どんな分野でもそうはない。故に嬉しくなったのだが、同時にセツリは「これで兵という専門家に従ってくれないか」とも考える。
押しまくるような説得ではない。ただ、自分というものを思い出してほしいだけ。そんなセツリの思いは果たして、
「……やっぱり……好きなんだよなぁ。だから僕は教えるし、砦の人にも美味しく食べてもらいたいんです」
彼に何事かを考えさせる契機になったようだった。
セツリは石窯を見つめたまま、避難民らの言葉を聞いた時からずっと思っていた事を言う事にした。
「……何もできないのは、悔しいですよね」
彼らの言う「戦いたい」は戦いたい訳じゃない。
胸を掻き毟りたくなる無力感。言葉にならないそれを拾い上げると男は息を呑んで顔を歪め、震えるように首肯した。
●くわーん
「よーし、マイラさん! こっちは荷台1個満杯だよ!」
クレア・エクレールが投石用の石を積んだ荷台を曳いていくと、マイラは快哉を叫んだ。
「やるじゃーんクレちん! ウチも頑張らんばねぇ!」
「えっへへ! 負けないよー!」
砦に帰って所定の一角に荷台を置くと、クレアは外へ舞い戻った。
空は既に茜色に染まっている。夜に外で作業するのは流石に危ない。なら頑張って今のうちに離れた所の石を拾うべきで、クレアはくわーんと鳴いて気合を入れた。
(……あれ? ボク何でキラキラしてない物拾ってるんだろ?)
いやダメだ、考えてはいけない!
心を無に。クレアの心は半日にして既に自己防衛が働いていた。脳裏を過った疑問を忘却し、クレアは落し穴班に寄ってみた。
彼らの進捗も良い。何せ多少なりともゾンビに直接危害を加えられる物を作るのだ。自分が敵を倒せるという事実は何よりの励みになる。ヴィントに家族がいた人がいれば酷かもしれなかったが、幸いここにはいないようだった。
「上に張る布もあるから掘り終ったら布張って土かけようね!」
「うっす!」
クレアに返す男の顔は汗と土に塗れていたが、いかにも充実感に満ちている。
それを見て自分まで楽しくなり、クレアはマイラの許へ駆けた。
彼女と共に石を拾いながらふと実感する。
石1個で城壁を上る敵複数を巻き込んで落せる。そう考えれば掌大の石を拾う毎に心が軽くなるような心地がした。そしてその思いはきっと授恵者より彼女らの方が強い。
「この石1つで砦を10秒守れたりするんだよねぇ」
「お? 良い事言うー、クレちん。名言だよ!」
「そう思うと石拾いも戦いみたいに大変だけど頑張れるよね!」
「石拾いも戦い! クレちん師匠は言う事が違いますな!」
「師匠!? むむ、人生は戦だ、弟子よ、各々が戦うべき所で戦わねばならぬ!」
「ははぁー!」
「えっへへ! でも本心だからね今の。真面目なやつ!」
「そっかぁ。クレちん冒険者だもんね?」
頬を緩めるマイラを見てクレアは首を傾げる。我ながら結構良い話をした筈。だのに何故か締まらない。何で?
「あの、ボク大事な話、したよ? ボクにはボクの、マイラさんにはマイラさんの戦場があるんだよ?」
「わかる。ウチの戦場は畑やんねぇ。敵は虫、鹿、天気!」
「あれあれ?」
そういう話だっけ?
首をカクカクするクレアだが、まぁいいかと思い直す。これはこれでマイラの日常で、自分にとってもお喋りは日常だ。そして他愛ない日常が人を生かすのだ。
「……マイラさんの作ったお野菜、食べてみたいな」
「いいよぉ、家帰れたらねぇ」
マイラの言葉は重く、しかし悲壮感がない。
軽い彼女はきっと強い人だ。だからクレアは約束を交した。互いに生き抜く約束を。
●夜は眠らない
作業は夜が更けても続き、多くが疲労困憊して大休止に入った。そこで動き出したのが、奴らだ。
「倉庫だ。行きゃ判る」
奴らは囁く。そして――!
「ッかぁ――! っぱコレよ! 仕事の後は酒だ!!」
アレンが麦酒を一気飲みして口元を拭うと同志が口々に賛同の声を上げる。
倉庫の一角、木箱によって周囲と隔絶された空間はアレン達の楽園となっていた。参加者は他にガッコウやウィルオル、ロディコ等。肴を作ってきたセツリもそのまま参加している。
一頻り飲んで食ったアレンが爺さんの隣に座る。
「爺さん、随分控えめだな?」
「ふん。騒いで量を飲むだけが酒の楽しみじゃあねえ、小僧」
「そりゃそうだ」アレンがにやりと笑ってグラスを置き、「昼間はさんきゅーな、爺さん」
無言で返すロディコの目はどこも見ていない。ただぼうと正面を向いている。
「作業の1つ1つが誰かの助けに繋がるって思うと、感慨深いよな」
「……誰かの、な」
アレンはそこに自棄を見た。死ぬ気――はないにしろ死んでもいいと思っている。拳を握り締め、アレンは爺から目を外した。
「その助けになった誰かがまた誰かを助けて、そのまた誰かが……ってよ、続いていくかもしれねえ。それって凄ぇよな」
爺は何も言わない。
説得は無理かもしれないな。アレンは思う。
「そうして誰かが懸命に生きた証もひっくるめて、消えねぇように残し続けたいよな」
「生きた証、か」
宴の喧噪が何故か遠く感じる。アレンは酒と肴を持ってきて、言葉もなくロディコの傍で飲み続けた。
「ほら、もっと飲んで食べろ。セツリがお前さんの為に料理を作ってくれたぞ」
一方ひたすらウィルオルの相手をしているのがガッコウとセツリだ。ガッコウが宥めすかし、セツリが制御する。完全に接待だが、接待された事のない青年にはコレが効いた。
“共にある”事を重視した2人の攻勢に未熟な彼が陥落しても誰も責められまい。何しろ人の善性を信ずる2人の接待力は相当なもの。故に彼が泣き疲れてセツリの膝を借りようとしたのも仕方ないのだ。なおガッコウに制止された。
「人間たるもの節度を忘れてはならない」
「うっ」
バツが悪そうな顔で床に転がった青年に、いかにも人間臭い奴だと笑い、ガッコウはさらりと告げる。
「あぁそうだ。お前さんも次の戦い、生き残れよ。そしてまた飲み交そう」
ガッコウらしい純粋な思いに、ウィルオルはまた泣いた。
――と、そこで全てが終っていれば美談で済んだやもしれない。が、
「25時から作業再開だから、程々にね?」
当然の如く悪巧みを把握していたベゴニアの宣告が、宴を絶望に染めたのだった……。
<了>
避難民らは心境の変化でもあったか、暗黒の2日を越えた後で近隣町村に向かう事になった。
彼らが砦を退去する時、見送りに出たベゴニアは深々と頭を下げた。
「必ず、砦を守ってみせると誓います」
数日後に戦場になるとは思えぬ、温かな日差しが彼らを照らしていた。
マスターコメント
ショートシナリオ難しい 報酬:標準6 / 4〜6人
2020年11月30日 12時26分01秒 公開
相談掲示板
やぁ、キャスターのベゴニアだよ。 皆、今回はよろしくお願いするよ。 さて……うん、難しいといえば難しい問題だね。 避難民の人達の熱意は買いたいとは思うけれど、 実際問題として兵として戦って貰うのは無理なわけだし。 そうだね、個人的には仕事をしてもらって役にたってもらって、 満足して砦を旅立ってもらいたいかな。 全体の人数は中心になった5人だけじゃなくて、そこそこの数は居るみたいだし、 労働力として考えるのであれば、結構な工数になるかもしれない。 例えばだけれど、普通にやったら絶対に完成しない量の仕事をお願いして、 それこそハイテンションの徹夜仕事でようやく完成する感じにして、 夜があけて昇る朝日を眺めながら仕事のお礼を言えば、 すがすがしいやりきった感と徹夜の疲れから、満足して退避してくれないかな。 もちろん、お願いする仕事は実際に今度の戦いに役にたつ事じゃないとダメだけれど。 保存のきくパンを大量に作るとか、武器の整備とか、色々だね。
ヒーラーのセツリです、よろしくお願いします。 そう、ですね。とりあえずある程度の発散は必要そうに思います。 あとは、兵士の方や授恵者のような「戦える人」からの言葉ではなく、身内というか同じ立場の方からの言葉なら冷静になりやすいのでは、と。 使える時間は一日二日で、この小集団以外の方々は避難済みだとするとそちらから言葉を取るのは難しいでしょうが……小集団の中でも説得しやすそうな方にまず納得していただいて、そこから他の方たちの説得に協力してもらう流れというか。
お初にお目にかかります。レティシア・レインフィールと申します。 ヒーラーとして、お役に立てる事が出来ましたら幸いです。 ボールドウィン様とは、確か迷宮都市でお話をさせて頂いた事がございましたね。 今回は同じ依頼を受けた者として、よろしくお願い致します。 方針、および目標としては 達成感を得て皆様に出来れば円満に避難して頂く事、でしょうか? あとは、ウィルオル様に労いも。 全体的な作戦自体はベゴニア様が仰っている形でよろしいのですけれど セツリ様が仰るように、同時進行で説得を行うのも重要なのではないかと存じます。 今回の件はロディコ様という方が主導なさっているようですけれど 恐らくこの方は、ご家族の方の仇を討ちたいとお考えなのでしょうね。 その点についても、考慮した上でお声掛けが出来ればよろしいのですけれど……。 あとは、一度冷静になって頂く為にも 戦いとはどういったものなのか、直接ご覧頂くのもよろしいのではないかと存じます。 例えば鍛錬という名目で、模擬戦のようなものを行う形となるでしょうか。 実際に戦いをご覧になった事がおありになる方は少ないでしょうから 僅かでも戦いの空気に触れたら、考えを改めて頂ける方もいらっしゃるかもしれません。
俺はガッコウ、ヒーラーをしている。 ・何か仕事を与えて満足させる ・説得して落ち着かせる この二つを同時に行っていければ理想だな ベゴニアが言ったパンを山ほど作らせるってのはパン職人には有効だろう 一方で、農家の娘は流されてるだけみたいだし、説得しやすそうな気がするな 二日取れるようだから夜に酒盛りできるぐらいの酒があれば 鍛冶屋の爺も崩しやすくなる気がするが、その辺の事情どうなんだろうな… >模擬戦 良いと思う 危なくなるが、スキルを使って派手にやりゃ怖気づくかもしれんな なに、ヒーラーは沢山いるし怪我は治してやるさ …で、誰がやる?(
ウォーリアのアレン・ボールドウィンだ。よっしくな。 >レティシア あー! あん時の別嬪さんな。 酔ってたから記憶がおぼろげだが、なんとな~く覚えてるぜ! こっちこそ、よろしく頼むな! 満足させるのと、説得を同時進行ってのに賛成するぜ。 模擬戦は怖い思いさせちまわねぇか心配ってのがあるが、案の一つとしてはアリかね。 出来れば前向きに落ち着いてほしいモンだけどよ。 >仕事 デスマーチの達成感はスゲェだろうな! 避難民をざっくりグループ分けして、それぞれ違う分野の仕事を任せればいいんじゃね? メインの避難民は職業がハッキリしてっから、そいつらを各分野のリーダーにするって感じで。 >説得 一番落としたいのは主導者のロディコだよなぁ。 酒を酌み交わしつつ語り合うのはすげぇイイと思うぜ。 赤ワイン、エールあたりを自前で用意すりゃ、砦の事情関係なく少人数での酒盛りくらいは実現できるんじゃねーかな。 俺的には次点でマイラも説得できりゃいいなーって思うぜ。 何しろウェイ系だからな。 場の流れをイイ感じに導いてくれそうじゃね? わかんねぇけど。
>仕事 達成感や役に立った感を出すなら、得意分野をお願いするにこしたことはないでしょうね。 ふと、「協力」という形で私達やウィルオルくんも手伝い、指示してもらうというのもありかと思いました。「それぞれの得意分野において、熟練した人の指示を守ることの大事さ」を「指示する側」から体験してもらうというか。 そうすれば、「では戦いに関しては、兵士の方々の指示に従うのが正しいのでは」と考えてもらえるのではと。 >説得 リーダー格のロディコさんか、流されているのと空気を作れそうなマイラくんがいいのではという意見に賛成です。 お酒を飲んでの話は、ロディコさんにはかなり有効そうですが……一応戦に備えているわけで、どこまで物資を融通していただけるか、ですね。 >模擬戦 脅しのようになってしまっても困るので、少し迷うところですが…… あくまで、兵士の方々の訓練としてやるのを「見てみますか?」という体でなら賛成、としておきます。 ヒーラーが何人かいる状況なので、多少無茶なこともできるタイミングではありますし。
>仕事 もしリーダーをお任せするのでしたら、仮案となりますがこのような形となるでしょうか? お守り作成:イナシャ様 保存食作成:ホルツ様 備品メンテナンス:ロディコ様 防衛強化(落とし穴作成・投擲用の石収集):マイラ様 セツリ様が仰るように、得意分野の方の指示に従う大切さを感じて頂くのもよろしいかと存じます。 >説得 お酒に関しては、自前で用意なさるのであれば問題は無いかと存じます。 例えば、気分転換として密かに一杯だけ楽しまれようとしていたところを見付けられたので 口止め料として付き合って頂く、という流れでしたら警戒もなさらないのではないでしょうか。 あとは、先程も申し上げましたけれどロディコ様が仇を討ちたいと考えていらっしゃる場合 代わりに仇を討つとお約束をさせて頂くだけでは、ご納得頂けない可能性がございますね。 もしロディコ様も鍛冶師の方でしたら、何か武器をお借りして それを以って仇を討つ、というお約束も出来たのですけれど……。 >日常 平時を思い出して頂くという方法もございますが これに関しても各々の得意分野を試すのもよろしいかと存じます。 例えば私ですと、休憩時間に歌を披露させて頂く形となるでしょうか。
挨拶がおくれちゃってごめんね。 シーフのクレアだよ、よろしくー! 満足させるのと、説得を同時進行ってのは賛成ー。 で、お仕事には関してはレティシアさんも挙げてくれる各分野得意そうな人達にリーダーを任せるのも賛成だよっ。 ロディコさんの気持ちを変えつつ、マイラさんに空気作って貰えたら確かに全体の流れが変わりそうな気がするね。 ボク個人としてはマイラさんと罠づくりとか石拾いしつつ、避難を検討して貰えるように話振ってみようかなーって考えてるよ。
>仕事 私はホルツさんに食料作りを教えてもらいつつ手伝ってみましょうか。 ロディコさん説得にお酒の席を設けるのならば、こちらで作った食べ物も持ち込んで合流してみるとか?
それでは、私はイナシャ様と共にお守り作りのお手伝いをさせて頂きますね。 材料や道具はウィルオル様にお願いすれば調達してくださるようですので その際、少しお話も出来たらと考えております。 >保存食作り ホルツ様はパン職人をなさっているので、主にパンを作られる事になるのでしょうけれど 希望者を募って、砦周辺で材料を調達するのもよろしいかもしれません。 例えば狩りや釣り、あとは木の実などの採取ですね。 日持ちしない物に関しては、そのまま食事用としても利用出来ますし。 もし、調理よりもそちらの方が得意な方がいらっしゃれば そういった動き方もよろしいのではないでしょうか。 あとは防衛強化担当のマイラ様の所でも 投擲用の石を探されるのと一緒に採取も出来そうですね。
そんじゃあ俺は備品のメンテナンスを手伝うとすっかな。 それから酒! 持てるだけ持っていくぜ!
すまない。ちょっと発言から間が空いたね。 私はどうしようかな……。 単体の場所を手伝うんじゃなくて全体の製作進行管理でもしようか。 何がどこに何個必要だから、これだけ作って欲しいとか。 デスマーチだけれども、予定した終了時間に偶然ちょうど終わるように調整しよう。 >保存食づくり 基本的な材料に関しては、すでに砦にある物を使った方が良いだろうから、 砦周辺の狩りや採取に関しては、それが得意な人に仕事を割り振る、 という感じでお願いするのが良いのかな。 できる限り、各人が得意そうな分野の仕事をしてもらった方が良いだろうし。 各仕事のリーダーに関しては、 レティシアさんの案で良いと思うよ。
おのおの担当はついていて、まとめ役も買ってくれているようだし 俺はウィルオルを慰めるついでに調達の手伝いをしていようか 一人じゃ4グループも支えきれまい 酒は俺も持っていくから夜はパーっとやろう。セツリの創作食料も期待しておく
創作料理……なんだか期待がかかったようなので、頑張ってみますか。 出発も近いですが、考えてみましょう。
全体の基本方針(仕事を任せつつ説得)とか、リーダーの分担とかって誰か書いてるか? 今んとこ書いたっていう宣言ねぇっぽいし、一応俺の方で書いとくな。 被るようなら俺のは消しちまうから、教えてくれると助かるぜ。 >ガッコウ さんきゅー! 酒が増えるぜぇ〜!!!
連投ごめんな。 とりあえず、こんな感じで書いといたぜ。抜けとか変なとこあったら言ってくれ。 朝までに書き込みあればギリギリ対応できっかも。たぶん。おそらく。 ―――――― ■全体 避難民に仕事を任せつつ、各自説得し避難を促す >仕事 ・達成感を与えるのが狙い ・適性や希望に基づき避難民をグループ分けし分野別の仕事を割り振る ・ロディコらを各分野のリーダーとし指示を仰ぐ ・冒険者、ウィルオルも指示に従い作業従事 >リーダー お守り作成:イナシャ 保存食作成:ホルツ 備品整備:ロディコ 防衛強化(罠作成、物資集め等):マイラ
ボールドウィン様、ありがとう存じます。 とても助かります。 仕事かリーダーの内、どちらかを私が担当してもよろしいのですけれど 時間的にボールドウィン様の修正が難しそうですね。 もう暫くは私はこちらを確認しておりますので もし必要であればお声掛けをしてくださいませ。
ありがとなレティシア。 今から大きく修正すんのはちっとばかし難しいんで、全体に関する記述はそのままにしとくぜ。 あとは現地でよろしくな!