本は流され、秋の空
真柄 葉
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シナリオID:124
オープニング
海上貿易の中継地点として発展してきたこの街は、港を中心とする海手と、商業区や住宅区が広がる山手の二つに分かれている。海運を担う船乗りたちで港は大いに賑わい、商業区では様々な地域から持ち込まれた商品を並べる商人達がしのぎを削っていた。
●
秋のこの時期は、時折吹く山おろしが街を横断し、青く澄んだ大海へと吹き抜けていく。
その日は特に風の強い日だった。
「お待たせいたしました。ご検分ください」
三階建ての建物の一室。初老の紳士がマホガニー製の高級机の上に年季の入った桐箱を置いた。
「それでは失礼いたします」
老紳士に目礼した冒険者ギルド職員ホリー・アッテンボローは絹の手袋をはめると、そっと木箱の蓋をずらす。
現れた中身は古い本だった。
「これはがお話にあった本ですか」
「はい、とある商人の元に持ち込まれたものです。どうやら本自体が紋具の様なのですが、効果は現時点で不明です」
老紳士の説明にホリーはもう一度本に視線を落とした。紋具に必ずある触媒を探す。
すると背表紙に緑色をした宝石の様な触媒を見つけた。
「商人さんは効果が不明なものを買い取られたのですか?」
「はい、本自体が貴重な上、古い物であったので価値があるだろうと買い取ったそうです。その時は紋具だとは知らなかったとか」
「なるほど……」
いくら本が貴重品であっても、目利きもできないのであれば、その商品に手を出すべきではないだろう。そんなことは素人であるホリーでもわかる。
「まだ駆け出しの若い商人なのです。この本にかなりの額を支払ったらしく、どうしても鑑定し価値を確かにしたいと私に相談を持ち掛けてきました。ですが私にもこの価値がいかほどのものであるか判別がつかなかったため、冒険者ギルドへ依頼を出した次第です」
本を眺め難しい顔をしていたホリーに、老紳士が更に説明を続けた。
「お話は分かりました。では、この本は一旦お預かりし、冒険者ギルドにて調査・鑑定の依頼を出しますね」
「はい、よろしくお願いいたします」
丁寧に桐の蓋を閉じたホリーに、老紳士は頭を下げる。
「そういえば、その商人さんは今どちらに? お預かりしたことをご報告しておこうかと思うのですが」
「ははは、外で待っておりますよ。心配で仕方ないのでしょう」
驚くホリーに老紳士はにこやかに告げる。
「そうですか。ではご挨拶を」
そう言ってホリーは部屋を辞した。
●
「よろしくおねがいしますぅっ!!!!」
腰を直角に折り曲げホリーを出迎えたのは、くすんだ金髪を乱暴に切りそろえた若い男だった。
「貴方が商人さんですね」
「はい! どうか、どうかよろしくお願いします! この本に価値を付けてやってください!!」
商人は頭だけを上げ、すがる様な目でホリーを見つめる。
「い、いえ、私が鑑定する訳ではないので……」
「はい、それは重々承知しております! ですが、なにとぞ……なにとぞお口添えをっ!!」
「いえ、ですから私はギルドの職員であって、この本を鑑定するのはですね――」
「よろしくおねがいしますぅっっ!!!」
必死すぎて半分パニックに陥っている商人が、懇願する様にホリーの手を取った。
「えっ、あっ、ちょ、ちょっとっ!」
両手を取りぶんぶんと上下に振る商人。だが、その時ホリーの手には――。
「「あっ……」」
桐箱が音を立て地面に落下した。
「あーっ!! 本がっ!」
箱から飛び出た本を急いで拾い上げようと、商人が表紙に手を触れる。まさにその瞬間。
「えっ」
表紙に刻まれた溝に沿って走る緑の光。それは紋具の効果発動の合図だった。
本はまるで命を吹き込まれたようにふわりと浮き上がる。
「えっ、えっ……?」
呆然とする二人を他所に、本は足元から目線の高さへ、そして身長を越えた。
「ま、まってくれええっ!!」
商人が必死に手を伸ばすも、本はまるで綿や羽根かのようにするりするりと手から逃げていく。
そうこうしているうちに、本はどんどんと上昇していき、ついには左右に並ぶ建物の屋根も越えた。
そして、そこで風に囚われた。
羽根のような軽さで舞う本は、この時期特有の山おろしに流され始める。
「えっ! 待って、そっちは――!!」
地上から商人が必死で追いかけるも、日中の大通りは人混みでまともに走れない。どんどん風に流されていく本との距離は開くいっぽうだった。
「このままじゃ……!」
本と商人を交互に見つめ、ホリーは視線を巡らせる。
「あった、冒険者ギルド!」
そして、目的の看板を見つけたホリーは、大通りに面したその建物に駆け込んだ。
●ギルド支部
石造りの商店跡を改修されて造られたネルストの冒険者ギルド支部。
街の活気に合わせるように内部は冒険者でにぎわっていた。
「すみません! 少しカウンターに失礼します!」
そんな賑わう店内に息を切らし駆け込んできたホリーは一目散にカウンター内へ入ると、ギルド員証を受付嬢に見せ席を譲ってもらう。
そして、ホリーは手元にあった白紙の依頼用紙に筆を走らせ、あっという間に完成させると立ち上がり大声で叫んだ。
「緊急の依頼です! どなたか受けていただける冒険者の方はいらっしゃいますか!!」
見慣れぬギルド員の大声に、室内の冒険者達が何事だと注目する。
「このままでは貴重な本が失われてしまうのです! どなたかお願いします!」
ホリーは注目してくれた冒険者達に向け、大きく頭を下げた。
解説
マスターより
リプレイ
「魔本かぁ。言い得て妙だけど、たぶん紋具だろうね」
秋空を見上げるシャンテ・フーケに、ヨル・スレイマンが答えた。
「うーん……何というか、確かに珍しいんだろうけど役には立たなそうな紋具だね」
サニー・フォン・オルライトは、腕を組んで首をかしげる。
「確かに役には立たないだろうな。しかし、一体何の効果がかけられてるんだ? 浮遊の魔法なんて聞いたことが無いが」
サニーの横で同じ様に首をかしげる海神・江流。
「きっと渡り鳥の魔法だね! 108年の生と経験がそう言ってるよ!」
そんな二人に、市場で調達してきた鯖サンドを頬張りながら、サフィラ・アズラク・ナハルハルアリーブが答えた。
「そんな魔法があるのか……?」
「世界は広いからね。きっとどこかにあるんじゃないかな」
「え? ないの?」
「世の中は不思議に満ちているんだよ、お二人さん」
「お、おう……?」
サフィラの言葉に納得出来たような、出来てない様な……二人は更に首をかしげる。
「待たせたな。さて、追いかけるとするか」
最後のメンバー、シスル・ノーティラスがギルドから現れ、いよいよ捕獲作戦がスタートした。
●
昼下がりの通りは人混みで溢れていた。
「ホリー君、あれって結構な価値のある本なのかな?」
ごった返す人の波を器用によけながら進むヨルがホリーに問いかける。
「まだ、はっきりはしていない、んですけど、かなりのものだと」
ホリーはそんなヨルについていくのがやっとで、息を切らしながら答えた。
「そうか、なら捕まえないとね」
「あの本、どうも風の吹く方向に流されているって感じだけど、このまま行くと海だよね?」
共に並走するシャンテが人混みの隙間から見え隠れする海を指さす。
「ああ、海だね。流石に海まで出ると捕まえようがなくなる。サフィラ君の言ってた通り、本当に渡り鳥になってしまうよ」
ヨルは義骸の下ではははと軽快に笑った。
「それはともかく、ここじゃ俺達に手伝えることは少ない。あの四人に任せて先を急ごう」
と、ヨルは左右の建物の屋根を軽快に駆ける仲間達を指さした。
「四人? 三人だけど?」
「……あれ?」
シャンテのいう様に屋根には三人しか確認できない。
「サフィラ君どこいったんだ?」
はてと首を傾げたヨル。さて、当のサフィラはというと――。
「おっちゃん、それは高いよー!」
「おいおい、うちの商品はどれも一級品なんだぞ!」
釣り具の露店に居た。
「んー、まぁいっか。じゃこれ! 代金はギルドにツケといてー!」
と、魚用のタモを手に取ったサフィラは、店主にひらひらと手を振り通りへと消えた。
●
通り沿いに立ち並ぶ建物の屋根を、4人は疾駆していた。
「あんな飛んで行っちゃうような本、回収しても買い手つかないんじゃないのかな?」
「にゃはは、読んでたら一緒に飛んでいっちゃったりして」
「うわぁ、それシャレになんないよ」
サニーとサフィラが不安定な足場など気にもせず、和気藹々と屋根を走る。
「まぁ、本ってだけで高級品だし、金にはなると思うぜ。それこそ飛ぶ本なんて見たこともねーし、馬車一式――いや下手したら、リブラネスタに家が建つかもな」
「「家が建つ!?」」
シスルの試算に二人の声がハモった。
一方、通りの反対側の屋根では――。
「風の強弱がひどいな。本が随分風にもて遊ばれている」
一人分かれて屋根を疾走する江流が、【天眼】で本の行く先を予想するが。
「これじゃ、軌道を読むのは難しい……うーん」
ひらひらと羽ばたく本は、まるで木の葉か綿毛の様に風に弄ばれている。
「バラバラに行ってたんじゃ、逃してしまうかもしれないな……」
駆けながらも江流は考える。風の流れと地形と、俯瞰した視点からの情報。
「おーい! そっちの誰か、手を貸せないか! ちょっと提案があるんだ――!」
何か考えを思いついたのか、江流は反対を走る3人に声をかけた。
戻って、3人側では。
「なるほど、挟み撃ちかぁ。面白そう! あたしやるよー!」
江流の提案に答えたのはサフィラだった。
「二人は?」
「うーん、私は失敗した時の為に、あの鐘楼に先回りしておこうかな」
「えー! 失敗する前提?」
「保険だって保険。本が飛んでいっちゃって困ってる人がいるからね。失敗はできないってだけだよ」
「なるほどな……よし、あたしも先で防衛線を張っておこうかね」
ぷぅと頬を膨らませるサフィラを他所に、サニーとシスルの二人は海の方角を見る。
「サニーが鐘楼なら……あたしはもうちょっと先まで行くか」
「先って――あの灯台?」
と、遠くに見える真っ白な灯台を指さすサニー。
「それか、船のマストだな」
「なるほどね。それじゃ、善は急げ。作戦、頑張ってね!」
「サフィラ――死ぬなよ」
「にゃ! なんかフラグ的ななんかなんかを感じる!!」
と、二人はサムズアップで別れを告げた。
●
「ナハルハルアリーブさん、そっちの準備はいいか!」
「にゃ! いつでもこーい!!」
対岸からの声にサフィラが拳を振り上げる。
「よし。それじゃ――いくよ!」
対岸同士ほぼ同じ位置から本に向け跳躍した二人。
跳躍の頂点に差し掛かったと同時に【エアーライド】で宙を蹴る。
「まてーーー!!」
サフィラが調達した必殺のタモを振り――Miss!
「こっちだ! こいっ!」
江流がマントを広げ本を受け止め――Miss!
「くっ……もう一度だ!」
入れ替わりで反対の建物へと渡った二人は、再び同時に跳躍する。
「こんどこそーー!!」
サフィラがタモを横薙ぎに――Miss!
「これは、力づくじゃだめだ。何か方法を考えないと……」
手を出さず通り過ぎただけの江流。
本は意志でもあるのか、捕まえようと手を伸ばす度、ひらりひらりと避けていく。
再び対岸へと渡った二人は、今度は合図なく同時に飛んだ。
「もーー! なんで! こんなに! すばっしっこいのっ!!」
数打て作戦に切り替えたサフィラがタモをぶんぶんと振り回す――Miss! Miss! Miss!!
「ダメだ、闇雲に振り回しても逃げられるだけ――」
「にゃーー!! うざーーーーーーー!!!!」
完全にタモ狂戦士と化したサフィラに江流の声は届かない。更にタモを振り回し本を無我夢中で追いかける。
「ま、待って、ナハルハルアリーブさん!! ちょ! 前、前――!!」
もちろん、同時に飛んだ江流も本を狙っているわけで。
「……にゃ?」
声に気付いた時には、サフィラの顔の前に江流の顔あり――。
ゴッチーーーン!!
「あ、ぶつかったね。落ちてきたよ」
「いやいや、冷静に分析してる場合じゃないだろう!」
ひゅーと落ちてくる二人を目で追うシャンテに、ヨルがツッコんだ。
「これは、ちょっとまずいね……」
落下予測点には通りを行き交う人々が。このままでは落ちてくる二人に巻き込まれ大惨事になる。
『すまない、少しだけ道を開けてくれ! 人が落ちてくる!!』
ヨルが咄嗟に【サウンドボマー】で人混みを割る。
「シャンテ君、サフィラ君を頼むよ!」
「うん、任された!」
シャンテは獣めいた動きでヨルを追い越し着地点へと滑り込むと、すかさず跳躍。落ちてくるサフィラを空中でキャッチし、そのままふわりと着地した。
「ふぅ。ヨルさん、こっちは無事だよ。そっちは――無事みたいだね」
サフィラを抱きながら視線を振ったシャンテ。隣ではヨルが江流を受け止めていた。
きゅーっと目を回す二人をホリーに預け、二人は更に海へ向け駆ける。
●
「さってと」
この先で待つと言ったシスルを見送り、サニーは鐘楼を見上げた。
「焦らずゆっくり行こうね」
あえて階段を使わず外壁を【壁歩き】でてくてくと昇っていく。
ゆっくりとのんびりとまるで散歩をするように。
「んー、この辺りかな?」
鐘楼を中ほどまで登った所で、サニーは人差し指を唾で湿らせ、空に突き立てた。
「……風よし、高さよし、距離は――届くかな」
サニーはバックパックを取り出し、無造作に空へと突きだす。
本はゆっくりとバッグへと近づいてくる。
(入れ――)
瞳を閉じ、指先の感触に全集中。
本が――バックを掠めた。
「あー、ダメかぁ! でも、まだまだ!」
瞳を開いたサニーは更に海へと流されていく本を見送りながらも、次の行動へと出た。
●
「随分と高くに舞い上がってしまったね」
倉庫街に到着したシャンテとヨル。
【天眼】を駆使するヨルが空を指さす。本は随分と小さく見えた。
「あのままじゃ、届かないけどどうしようか」
「うーん、これは予想なんだけど、港に並ぶ倉庫達にぶつかって風が上昇したんだと思うんだ」
「ふーむ……それじゃ、その風に運ばれて本が高くに舞い上がったのかな?」
「たぶんね」
「倉庫を越えればまた風が下を向く?」
「きっとね」
二人は到底届かない高みにある本を見上げる。
「ただ、落ちてくるまでに少し時間がありそうだ」
「なら、今のうちだね」
シャンテはそう言うと倉庫の屋根に視線を移した。
「どこか登れる場所は――」
シーフでない自分が屋根に上るのは困難だ。しかし、仲間のシーフ達は別の場所を担当している。折角捉えられるチャンスが少しでもあるのなら、それを無駄にはできない。
「あ、あれは」
連なる倉庫の一つに外部階段を見つけたシャンテ。
「あれなら屋根まで上れそうだね」
シャンテの視線を追ってヨルも気付いた。
「チャンスは一度だとおもう。下降気流に乗って本が下りてきた時だ。ただ、風がどう吹くかは予想しづらいから、賭けになるよ?」
「僕は、わりと運がいい方なんだ」
それだけ言うとシャンテは駆け出した。
シャンテは倉庫の外部階段を駆け上がると、一気に屋根へと躍り出る。
見上げた空にはふわふわと浮かぶ本が滞空していた。
「いつ落ちてくる……」
飛び出すタイミングを計る為、シャンテはじっと本を見つめ、行く先を見定める。
その時、本が再び風に遊ばれた。
「ズレた!」
シャンテは隣の倉庫の屋根を目指し駆ける。下からもヨルの声が行先を伝えてきた。
「もう、ここしかない――!」
シャンテは我が身も顧みず、倉庫の屋根から跳躍した。
広げたマントに【念動力】を使い、風に抗いながら、落ちてくる本の下へと潜り込ませようと手を伸ばす。
「届けっ!」
しかし、本は無情にもシャンテの広げたマントの上をすべるように逃げて行った――。
――ぼふんっ!!
「シャンテ君!」
豪快に小麦袋の山へダイブしたシャンテに、ヨルが駆け寄った。
「いっつぅ……僕は大丈夫。それより本をお願い」
「ああ、わかったよ」
シャンテの無事を確認したヨルが再び走り出す。
「……あー、だめだったか」
見上げれば、本はついに海へと差し掛かっていた。
●
「すまん! マストを借りるぜ!」
水夫たちの頭を飛び越え、シスルが甲板へと上がった。
陸を見れば本がふわふわとこちらに向かって流れてくる。
「シャンテ達もだめだったか」
シスルは静索に足を掛けると、軽快に駆け登っていく。
「流れてくる方から見ると……あっちのマストか」
シスルはヤードを走り、飛ぶ。【エアーライド】を発動させ、別の船のマストに飛び移ると本の正面に立った。
●
「あっ、惜しい!」
「もう少し右だ!」
甲板では、何度も本に逃げられながらも懸命に追うシスルを、合流したシャンテやサニー、江流とサフィラが見上げていた。
一人ヨルだけは、万が一の為に突堤の灯台へと駆けている。
「ノーティラスくん、手分けしよっ!」
「にゃ! あたしもいくよー!」
サニーとサフィラの二人がシスルを倣いマストを駆け登る。
「スレイマンさんもいないし、俺は下から指示を出すよ」
「僕も登りたい所だけど、サポートに回った方がよさそうだ」
【天眼】でサポートする江流と、シャンテの二人は甲板に残った。
●
「サニー! そっち行った!」
「任せてっ!」
港には、停泊している帆船のマストが数多く林立している。
シスル、サニー、サフィラの三人は、【天眼】を使う江流の指示で四方八方と飛び回るが――。
「それじゃ、ダメだ。やっぱり何かで掴もうとするとするすると逃げてしまう」
江流が苦々しく口にする。
その時、本が突然急上昇した。
「上昇気流!? なんでいきなり!」
江流が吹き上げる風に声を上げる。
船が密集する港で、風は船体同士の隙間を通り、互いにぶつかり上昇気流を生んだのだ。
「あれは……!」
天へと昇っていく本を見つめていたシャンテが何かを閃いた。
「あれだ! 皆、本は上空で一度停止するはずだ! その時を狙って!」
先ほど自らが経験したものと同じだ。そう思い、シャンテが叫んだ。
「上空でって……高すぎだろ!」
シャンテの声に、シスルが空を見上げる。
本の位置は例えマストの天辺に登ってもなお届かない。
「それでも、行くっきゃないでしょ! あの本を待ってる人がいるんだから!――ナハルハルアリーブくん! 私を足場に飛んで!」
「にゃ!?」
驚くサフィラを他所に、サニーはマストの頂上付近まで登り、腰の前で両手を組んだ。
「それできっと届くはずだから! 行くよ!」
サフィラの返事を待たずサニーが跳躍。【エアーライド】で宙を蹴った瞬間――。
「無茶は嫌いじゃにゃいぜ」
言いながらサフィラがサニーの組んだ手に足を掛け更に跳躍。そして、到達点でサフィラが【エアーライド】で更に宙を蹴った。
「にゃーー! これで、終わりだぁ!!」
空中で加速を得たサフィラがタモを伸ばし、滞空する本に迫る。あと少し――だが、後数cm足りない!
「このっ!!」
その瞬間、サフィラがタモを――投げた。
「よし、掴まえた! ……た?」
空になった手をワキワキさせサフィラが首をかしげる。
本はタモをひっかけたまま、高度を落としながらふらふらと海へと流される。
「まずい、もう海だ!」
「あたしが行く!」
江流の声に答えた、シスルがヤードを蹴った。
【エアーライド】で宙を蹴り加速したシスルの手が、タモの柄に届く。
「よし、いい子だ」
シスルはタモの柄を手繰り寄せると、素早く網の部分を絞り本を閉じる。
「あとは頼んだ!」
そして、そのまま甲板に向けて放り投げた。
どぼーん、どぼーん、ざばーんっ!!
「3人共、無事か!!!」
江流が船縁に駆け寄って落水したシスルに呼びかける。
「――ぷはっ! 大丈夫だ! それより、本は!」
海面へと上がってきたシスルが答える。
「ここにあるよ!」
シスルが投げた本は、シャンテがしっかりと受け止めていた。
●
灯台に向かっていたヨルが落水音を聞き、港に振り返った。
「誰か落ちた……? あぁ、どうやらうまくいったようだね」
速度を落とし、立ち止まったヨルは仮面の外し額に浮いた汗をぬぐう。
「無事に取れてよかったよ」
秋の風が素顔に心地よかった。
マスターコメント
ショートシナリオ普通 報酬:標準6 / 4〜6人
2020年11月03日 21時38分56秒 公開
相談掲示板
緊急の依頼です! どなたか受けていただける冒険者の方はいらっしゃいますか!! このままでは貴重な本が失われてしまうのです! どなたかお願いします! (大きく頭下げ――)
え、本が飛んでる?紋具なのそれ? 面白いなぁ、俺の靴にもそういう紋具の機能つかないかな… あ、依頼の方、受けさせてもらうよ。 シーフの海神 江流だ。宜しく頼むね。 回収できそうなポイントは5箇所あるみたいだけど、流石に一人につき5箇所全部でトライできる時間はないって事になるのかな? 本は飛んで逃げてるし、一回逃したら追いつけるかもわからないもんなぁ。
ほぇ…本が、空を、とんでる… (呆然と本が飛んでる光景を眺め) にゃ、シーフのサフィラだよっ! 今回はエアーライドとか壁歩きとかが役に立ちそうだから、屋根から本を追っかけるよ!
うーん、このシーフ率 あ、サニー・フォン・オルライトだよ。よろしくねー
……本が? へぇ、そんなことがあるんだねぇ……。 っとと、ヒーラーのシャンテ・フーケだよ。 汎用スキルとか、道具などを使って上手く捕まえられればいいんだけど。 ……それにしても、空飛ぶ本と追いかけっことはね。
シーフのシスルだ。よろしく。 ……は? 本が? 飛ぶ? いやまあ世の中いろんなことが起きるよな。飛ぶ……飛ぶのか……そうか…… あたしもエアーライドと壁歩きを使って上から攻めるつもりだぜ。 ポイントごとに分担ずるのがいいんかね。それぞれのポイント間の距離は気になるとこだけど。
すごいな。昨今の本は飛ぶのか⋯⋯。 ともあれあれを集める。了承した。ま、これだけいるんだ、なんとかなるよ(ホリー君に手を振って)。 っと、ヒーラーのヨルだよ。宜しく。 5ヶ所全部は難しそうだなと思ったかな。 1で本を取る動作をした場合、その時点で1度本に追いつかれるだろうから、2の地点で挑戦するのは難しくなりそうだなって⋯⋯感じかと思うので、直後を避けるようにするなら複数箇所もいけそう? もちろん挑戦を確実にするために一直線に走るのもいいと思うけど! そっちの方が挑戦できる確率は上がる。人手が多い方が回収率は上がる。 ⋯⋯という感じなのかなーと思ったね。できることも違うし、上手く分担できたらいいな。
うーん、屋根を走れるシーフがこれだけいるなら分散したほうがいいのかなっ?(かくり) あたしは①の民家の屋根をひたすら追いかけまわす予定だけどっ!
同じポイントで仕掛ける人数が多すぎると空中でゴッツンコ(激突) なんて事もあるのかも知れないし、事前に誰が何処で仕掛けるか分かってた方が手厚いかもね。 俺も壁歩きとエアーライドはあるのでその辺を活かすとして。此方も①で仕掛けてみるかなぁ。 その後は疾風足で必死に追いかけてみて、届くようならセカンドトライ。 ところで、複数あると勝手に思ってたんだけど、本って一冊だけなのかな?
うーん、多分一つなんじゃない? 流石にこんなのが二つも三つもないと思うけどなぁ・・・・・・多分 あ、そういえばさ。エアーライドって最初に足場さえ確保出来ちゃえばそこから浮き上がって移動できると思うんだよ 何が言いたいのかって言うと、二人組で肩車とかしてエアーライド使用→その人を足場にして更にエアーライド使用とかで高さ稼げないかなーって ちなみにどこで仕掛けるかは考え中かなー
OPの描写だと一冊だけっぽいけど…? ねぇねぇ、ホリー!本って一冊だけだよね? 空中でごっつんこはコメディ的には面白いかもしれないけど避けたいよねっ 同じ場所で仕掛けるにしてもサニーの二段ジャンプのように協力して仕掛けないとだねっ! そういえば、エアーライドで跳べるのは最大で1mみたいだから二段ジャンプで2mは稼げるみたい!
そうなんだよね。 OP見返してたら複数あるようには書いてなかったなと思って確認できたらな、と。 一冊を追いかけるとなると、尚の事に仕掛けが被らないようにと、見失わないように注意しとかないとかな。
①は既に2人向かうようだし、僕は③に向かおうかな。 バランス感覚のスキルは持ってるし、捕まえるときの布やロープとかも用意しておこうかな、とは思ってるよ。 そのポイントで逃しちゃったら、それこそ移動して次のポイントに向かうって感じかな? あと、移動が重要って話だし、装備品を少なめにして移動力を上げておくといいかもしれないね。
サフィラさん、本は一冊ですよ! あれです、ほら! あの浮かんでる――あー! また流されてるー!
>ホリーさん サフィラさんに代わり回答感謝。 しかし、依頼書作成のスピードが尋常でなかった。 特技に速記とか持ってらっしゃる? さておき(・w・)」」オイトイテ ①で仕掛けるに高度は足りてるみたいだから、二段ジャンプを仕掛けるなら他のポイントが良さそうな感じだね。 屋根からエアーライドしてアプローチしてみよう。 一番手だし失敗しても、予想以上に軽くて簡単に掴みにいけないみたいだぞ。 ってのを後のトライの参考になるように伝えられたらいいだろうかね。
ん、ギルド職員に質問できんのか。 >ホリー 各ポイント間の距離が知りてーんだけど。1から5のふわっとした距離感でもいい。 ……こう、いろんな意味で不都合のない範囲で構わねーから。 まあ、つっても全部のポイント無理に押さえなくても、ある程度ばらけてればいいような気はしてるけどな。 あたしは今んとこポイント4で考えてる。壁歩きでマストを駆け上がるつもりだぜ。 人混みは屋根に上がって疾風足も使えばある程度回避できっかな?
にゃー、回答ありがとうだよーっ! って現在進行形で流されてるんだねー (呑気に流される本を眺めながら) どうしよっか…もし協力できるなら、江流といっしょに本の捕獲にチャレンジしたいけど…!
〉サフィラさん お、合わせるかい? こっちは装備してるマントを構えてそこに飛び込んでくるように進路に先回りしてみるつもりだよ 風に流されるくらい軽いから、勢いつけすぎるとウナギみたいに逃げちまいそうだからね あれなら挟み撃ちにしてみるとか (ゴッツンコフラグ(
>海神さん 速記っていうほどの技術ではないですけど、ギルドに努めて長いですからね。年の功ってやつです、はは……。 >シスルさん えっと、たぶんこの屋根に上れば屋根伝いに広場まで行けて、そこから鐘楼があって――。 (各ポイントの距離感は、それなりーな感じです。 一人で全個所網羅するのは、ちょーっと大変かもしれませんね。)
俺もなんとなく複数冊だと思ってたね! ホリー君はありがとうね。 一冊ならシスル君の言うように満遍なくいく必要はないかもだ。いくつかポイントを絞って成功率を上げるでもいい。 んー、例えば人混みをなんとかしたり、本を見失わないようにみてたりみたいな行動もありかもしれないね。 とりあえず天眼を持って行こうかな。登ったりは基本任せて、ポイント間のアクシデントに備える係、みたいな感じで考えてみたい。屋根に登る時に踏み台になることもできるかもだけど。
ホリーは回答ありがと。それなりーね。了解。 ……ま、こーゆーのはそーゆーもんだよな(何)。 今はこんな希望かね。発言拾っただけだから、違うとかあったら自分で訂正しろよ。 ①屋根:サフィラ、江流 ②鐘楼: ③倉庫:シャンテ ④船:シスル ⑤灯台: 遊撃:ヨル ある程度ばらけちゃいるよな。 最終ラインの灯台の担当がいねーけど、そこに行くまでに捕まえりゃいいって話でもあるか。 今んとこあたしが防衛線の一番最後だし、できるだけ行動範囲広くして灯台近くまで寄れるように頑張ってみるつもりだぜ。 ヨルが近くにいたら踏むかもな。
にゃ!シスルはまとめありがとー! あたしは道具屋さんから魚釣り用のタモを借りて疾風足で追いかける感じだよっ! じゃあ、あたしが江流の所まで追いこんではさみ打ちにしよう!(ごっつんこフラグ成立)
ん、じゃあ私は余ってる2に向かおうかな もしかしたら1に居るサフィラ君や江流君、3に居るシャンテ君達と合流できるかもね
シスル君はまとめありがとうね。 そしたら俺も可能な限り灯台は目指そう。足が早そうなシスル君が行ってくれるならそれだけで心強さもあるけど。 上手く回収しないとね。当日はよろしく頼むよ。